【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成24年6月15日に一般社団法人日本接着学会発行の「日本接着学会第50回年次大会講演要旨集」ならびに平成24年6月29日、6月30日にコラッセふくしまで開催された「日本接着学会第50回年次大会」において発表 (2)平成24年7月13日に公益社団法人高分子学会発行の「第58回 高分子研究発表会(神戸)予稿集」ならびに同日、兵庫県民会館で開催された「第58回 高分子研究発表会(神戸)」において発表 (3)平成24年7月5日に公益社団法人 高分子学会発行の「第57回高分子夏季大学講演予稿集」ならびに平成24年7月18〜20日に琵琶湖ホテルで開催された「第57回高分子夏季大学」において発表 (4)平成24年9月10日に一般社団法人 色材協会発行の「創立85周年記念 2012年度 色材研究発表会講演要旨集」ならびに平成24年9月20日、9月21日に大阪府立大学 中百舌鳥キャンパスで開催された「創立85周年記念2012年度 色材研究発表会」において発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1個の粒子中に、非イオン液体ポリマーとイオン液体ポリマーとが、少なくとも一部において相分離した状態で存在していることを特徴とするイオン液体ポリマー含有複合微粒子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のイオン液体ポリマー含有複合微粒子は、1個の粒子中に、非イオン液体ポリマーとイオン液体ポリマーとが少なくとも一部において相分離した状態で存在しているものである。すなわち、非イオン液体ポリマーと、イオン液体ポリマーとは共重合体を形成しているのではなく、粒子内の少なくとも一部において、それぞれ独立のポリマーとして存在している。
【0013】
存在形態としては、非イオン液体ポリマーが海、イオン液体ポリマーが島である海島構造、非イオン液体ポリマーがコア、イオン液体ポリマーがシェルであるコアシェル構造、両者が共存したコアシェル海島構造が挙げられ、このような相分離状態が1個の粒子の中に一部でもあれば、本願発明の複合粒子となる。上記の構造の中でも、イオン液体ポリマーが少量でもその諸機能を充分に発揮することのできるコアシェル構造の粒子が最も好ましい。コアシェル構造は、本発明の複合微粒子をフィルム化したとき等に、シェルが連続相を形成しやすく、帯電防止能や導電性を発揮しやすいためである。
【0014】
イオン液体ポリマーを得るためのイオン液体モノマーとは、下記式(1)で表され、常温で溶融塩であり、イオン伝導性を有する化合物である。
P
+Q
- …(1)
[式中、P
+はカチオンを、Q
-はアニオンを表し、P
+および/またはQ
-はラジカル重合性不飽和基を含む。]
【0015】
P
+がラジカル重合性不飽和基を含む場合のカチオンの具体例としては、1−メチル−3−ビニルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3−ビニルイミダゾリニウム、1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイミダゾリニウム、2−メチル−3−ビニルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1,4−ジメチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウムカチオン;1−メチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリウム、2−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,4−ジメチル−3−ビニルイミダゾリウム等のイミダゾリウムカチオン;1−メチル−3−ビニル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,3−ジメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等のテトラヒドロピリミジニウムカチオン;1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチル−1,4−または1,6−ジヒドロピリミジニウム等のジヒドロピリミジニウムカチオン;1−メチル−3−ビニルフォスフォニウムカチオン等のフォスフォニウムカチオン;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。また、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するアリサイクリックカチオンも使用可能である。
【0016】
Q
-がラジカル重合性不飽和基を含む場合のアニオンの具体例としては、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸およびこれらのエステルが挙げられる。
【0017】
P
+がラジカル重合性不飽和基を含む場合、Q
-はラジカル重合性不飽和基を持っていなくてもよく、そのようなアニオンの具体例としては、BF
4、PF
6、AsF
6、CF
3SO
3、C(CF
3SO
2)
3、N(CF
3CF
2SO
2)
2、N(CF
3SO
2)
2、N(FSO
2)
2等が挙げられる。
【0018】
Q
-がラジカル重合性不飽和基を含む場合、P
+はラジカル重合性不飽和基を持っていなくてもよく、そのようなカチオンの具体例としては、ラジカル重合性不飽和基を含有するP
+として例示したカチオンの中で、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を水素やアルキル基に置き換えたカチオンが挙げられる。
【0019】
非イオン液体ポリマーのシード粒子中で、イオン液体ポリマーを重合する際には、イオン液体ポリマーの特性を損なわない範囲(例えば、イオン液体モノマーと他のモノマーからなるモノマー成分(以下、イオン液体ポリマー用モノマー成分ということがある)100質量%中、50質量%以下)で、イオン液体モノマーではない他のモノマーを一部用いてもよく、このような併用可能な他のモノマーとしては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、およびこれらの塩基等を有するモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等の含窒素モノマー;メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エチレンおよびブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素類ならびに塩化ビニル等の脂肪族不飽和炭化水素類のハロゲン置換体;スチレンおよびα−メチルスチレン等の芳香族不飽和炭化水素類;ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0020】
本発明のイオン液体ポリマー含有複合微粒子のもう一つの必須成分は、非イオン液体ポリマーである。非イオン液体ポリマーとしては、熱可塑性ポリマーあるいは熱可塑性ポリマーを架橋した架橋熱可塑性ポリマーが好ましい。熱可塑性ポリマーや架橋熱可塑性ポリマーは、複合微粒子をフィルム化や他の形状に成形する際に、ハンドリング性が良好で、本発明の複合微粒子の用途展開を大幅に広げることができる。
【0021】
本発明では、後述するシード分散重合によって複合微粒子を製造するが、シード分散重合のシード粒子として機能するためには、非イオン液体ポリマーの表面張力の極性成分γ
tpと、イオン液体ポリマーの表面張力の極性成分γ
ipとの差γ
tp−γ
ip=Δγが14mN/m(室温)以下であることが好ましい。
【0022】
表面張力γ
Lは、接触角θを用いたYoung−Owensの式によれば、下記で表される。
【0024】
ここで、γ
sdは液体を載せて接触角を測定するときの固体(ポリマー)の表面張力の分散成分、γ
Ldは接触角の測定に用いた液体の表面張力の分散成分、γ
spは固体(ポリマー)の表面張力の極性成分、γ
Lpは接触角の測定に用いた液体の表面張力の極性成分である。表面張力が既知の2種の液体で接触角を測定し、連立方程式を解けば各成分の値が求まる。本発明では、水(γ
L=72.8、γ
Lp=51、γ
Ld=21.8)とヨウ化メチレン(γ
L=50.8、γ
Lp=1.3、γ
Ld=49.5)とを用いて求めた。このようにして求めた非イオン液体ポリマーの表面張力の極性成分γ
tpと、イオン液体ポリマーの表面張力の極性成分γ
ipとの差γ
tp−γ
ip=Δγが14mN/m以下であれば、後述するシード分散重合の際に、非イオン液体ポリマーのシード粒子の中にイオン液体ポリマー用モノマー成分が入り込みやすく、本発明の複合微粒子が得られやすいことが本発明者等に見出されている。Δγが14mN/m(室温)を超えるような非イオン液体ポリマーとイオン液体ポリマーの組み合わせは、シード分散重合の際に、シード粒子の中にイオン液体ポリマー用モノマー成分が入り込みにくくなって、イオン液体ポリマー用モノマー成分のみからなるポリマー粒子が多く生成するため好ましくない。
【0025】
非イオン液体ポリマーとしては、イオン液体ポリマーのγ
ipが比較的大きいことから、γ
tpの大きい比較的親水性のポリマーが好ましい。よって、非イオン液体ポリマーの合成の際には親水性が比較的高いモノマーを用いることが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好適である。これらは1種または2種以上を混合して、重合に供することができる。
【0026】
また、ポリマーのγ
tpが小さく、上記Δγが14mN/m以下にならない場合でも、コアをそのような疎水性ポリマーとして、シェルをΔγが14mN/m以下になるようなポリマーでシード粒子を構成することで、本発明の複合微粒子を得ることが可能である。
【0027】
非イオン液体ポリマーは、架橋熱可塑性ポリマーであってもよい。架橋熱可塑性ポリマーを合成するには、一分子中にラジカル重合性不飽和基を2個以上有する架橋性モノマーを、上記メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレートモノマーと共重合させればよい。
【0028】
架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;トリメチロールプロパンジ(またはトリ)(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル系モノマー;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの架橋性モノマーは、架橋熱可塑性ポリマーの原料モノマー100質量%中、10質量%以下の使用が好ましく、5質量%以下の使用がより好ましい。この程度の使用量であれば、Δγに影響を及ぼすことはない。
【0029】
次に、本発明の複合微粒子の製造方法について説明する。本発明では、複合微粒子をシード分散重合によって合成する。本発明で用いるシード分散重合とは、非イオン液体ポリマー粒子をシード粒子として溶媒中に分散させた状態で、溶媒にイオン液体ポリマー用モノマー成分を溶解させ、重合開始剤を添加して重合させる方法である。シード粒子中にイオン液体ポリマー用モノマー成分が吸収されてシード粒子の粒径が大きくなり、溶媒中に他の粒子(イオン液体ポリマー用モノマー成分のみのポリマー粒子)が分散していなければ、シード分散重合が起こったことを確認できる。
【0030】
シード粒子とイオン液体ポリマー用モノマー成分の使用量の比率は特に限定されないが、シード粒子とイオン液体ポリマー用モノマー成分の合計を100質量%としたときに、イオン液体ポリマー用モノマー成分を1〜75質量%とすることが好ましい。
【0031】
溶媒は、非イオン液体ポリマーやイオン液体ポリマーを溶解せず、イオン液体ポリマー用モノマー成分は溶解できるものを用いる必要があり、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類等を、単独でまたは混合して使用することができる。溶媒は、シード粒子とイオン液体ポリマー用モノマー成分の合計使用量1質量部に対し、1〜100質量部程度が好ましい。
【0032】
重合開始剤としては、従来公知のアゾ系化合物や過酸化物が使用可能である。例えば、アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)等が、過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。重合開始剤は、イオン液体ポリマー用モノマー成分100質量部に対し、0.1〜5質量部程度、用いることが好ましい。
【0033】
具体的なシード分散重合としては、溶媒中に非イオン液体ポリマー粒子を分散させ、イオン液体ポリマー用モノマー成分と重合開始剤を添加して重合を行う。機械的撹拌を行うことが望ましい。分散安定剤として、部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を用いて、分散安定性を高めてもよい。これらの分散安定剤は、溶媒100質量部に対し、0.1〜10質量部程度、使用することが好ましい。
【0034】
イオン液体ポリマー用モノマー成分は、最初に一括添加してもよく、何回かに分けて分割添加してもよく、滴下してもよい。コアシェル構造を作りやすいという点からは、分割添加か滴下が好ましく、この場合は重合開始剤と共に分割添加や滴下を行うことが好ましい。分割添加の場合は、イオン液体ポリマー用モノマー成分全量を5分割以上に分割して行うことが好ましい。
【0035】
重合は窒素等の不活性ガス雰囲気で行い、重合温度は10〜100℃程度、重合時間は、1〜100時間程度が好ましい。
【0036】
なお、シード粒子は、乳化重合で合成してもよいし、上記シード分散重合にならって分散重合(シード粒子の不存在下での分散重合)で合成してもよい。シード粒子の分子量は、Mwで10000〜30000程度が好ましい。なお、イオン液体ポリマーの分子量は、Mwで10000〜1000000程度が好ましい。
【0037】
シード粒子の粒径と、イオン液体ポリマー用モノマー成分の量を制御することで、本発明の複合微粒子の粒径を制御することができる。用途にもよるが、複合微粒子の平均粒径は0.1μm〜数十μm程度が好ましい。なお、本発明の平均粒径は、100個以上の複合微粒子のSEM写真を画像処理ソフト(「WinROOF」;三谷商事社製)で解析して、平均粒径dnと変動係数(CV)を算出したものである。
【実施例】
【0038】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0039】
<ポリスチレンシード粒子の合成>
ガラス管に、スチレン1g、アゾイソブチロニトリル0.01g、ポリビニルピロリドン(「ポリビニルピロリドンK−30」;ナカライテスク社から入手;Mw40,000)0.2g、エタノール6gを仕込み、窒素置換してから、ガラス管を密封し、60℃の水浴を備えた振盪器で、80サイクル/分で振盪させながら、24時間重合を行い、ポリスチレンのシード粒子を合成した。このシード粒子は、平均粒径dnが1.7μmであった。
【0040】
<[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミドの合成>
[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロライドの均一な水溶液中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド塩水溶液を等モルになるように添加し、イオン液体のアニオン交換を利用することで、疎水性イオン液体モノマーの[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホン)(下式[MTMA][TFSA])を合成した。生成物は、蒸留水にて充分に洗浄し、不純物を取り除いた。
【0041】
【化1】
【0042】
<ポリメチルメタクリレートシード粒子の合成>
ガラス管に、メチルメタクリレート0.6g、アゾイソブチロニトリル0.006g、前記ポリビニルピロリドン「K−30」0.06g、メタノール3.8g、水1.6gを仕込み、窒素置換してから、ガラス管を密封し、60℃の水浴を備えた振盪器で、80サイクル/分で振盪させながら、5時間重合を行い、ポリメチルメタクリレートのシード粒子を合成した。このシード粒子は、平均粒径dnが2.8μm、変動係数(CV)は3.4%であった。
【0043】
比較例1
ガラス管に、ポリスチレンシード粒子0.25g、[MTMA][TFSA]0.25g、アゾイソブチロニトリル0.0025g、エタノール2.5gを仕込み、窒素置換してから、ガラス管を密封し、60℃の水浴を備えた振盪器で、80サイクル/分で振盪させながら、10時間、シード分散重合を行った。その結果を
図1に示す。
図1(a)は、ポリスチレンのシード粒子のSEM写真であり、
図1(b)はシード分散重合後の粒子のSEM写真である。シード分散重合後の粒子の平均粒径は1.7μmであり、シード分散重合前後で変化がなく、また、
図1(b)から明らかなように、ポリスチレンのシード粒子よりも大きい粒子が認められることから、イオン液体モノマーである[MTMA][TFSA]単独のホモポリマーが生成していることがわかる。ポリスチレンのγ
tpは2.5mN/mであり、ポリ[MTMA][TFSA]のγ
ipは17.0mN/mであって、Δγが14.5mN/mであるため、シード分散重合の際に、ポリスチレンのシード粒子の中に、イオン液体モノマーである[MTMA][TFSA]が入り込めず、溶媒中で単独重合してしまったことが確認できた。
【0044】
実施例1
ガラス管に、ポリメチルメタクリレートシード粒子0.25g、[MTMA][TFSA]0.25g、「V−70」(和光純薬工業社製;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル))0.0025g、エタノール2.5gを仕込み、窒素置換してから、ガラス管を密封し、30℃の水浴を備えた振盪器で、80サイクル/分で振盪させながら、10時間、シード分散重合を行った。重合後、エタノールで遠心洗浄し、本発明の複合微粒子を得た。その結果を
図2に示す。
図2(a)は、ポリメチルメタクリレートのシード粒子のSEM写真であり、
図2(b)はシード分散重合後の複合微粒子のSEM写真である。シード分散重合後の粒子の平均粒径は3.4μm(変動係数4.3%)であって、シード分散重合前の2.8μm(変動係数3.4%)に比べて明らかに大きくなっており、ポリメチルメタクリレートのシード粒子の中にイオン液体モノマーである[MTMA][TFSA]が入り込んで重合したことが確認できた。ポリメチルメタクリレートのγ
tpは8.5mN/mであり、ポリ[MTMA][TFSA]のγ
ipは前記したとおり17.0mN/mであるので、Δγは8.5mN/mとなり、本発明の好適範囲である14mN/m以下だったことから、シード分散重合の際に、ポリメチルメタクリレートのシード粒子の中にイオン液体モノマーである[MTMA][TFSA]がうまく入り込んで重合したものと考えられる。
図3には、得られた複合微粒子の拡大SEM写真を示した。1個の粒子の中に点々と散らばる小さな黒い点と、粒子の周囲を縁取る黒い部分がポリ[MTMA][TFSA]であることから、ポリメチルメタクリレートが海、ポリ[MTMA][TFSA]が島である海島構造と、コアシェル構造の両方の構造を採っていることがわかる。
【0045】
実施例2
ガラス管に、ポリメチルメタクリレートシード粒子1.0g、[MTMA][TFSA]0.2g、前記「V−70」0.01g、エタノール10gを仕込み、窒素置換してから、ガラス管を密封し、30℃の水浴を備えた振盪器で、80サイクル/分で振盪させた。振盪開始から2時間後に、0.2gの[MTMA][TFSA]と前記「V−70」0.002gを加え、4時間後、6時間後および8時間後も同様に0.2gの[MTMA][TFSA]と前記「V−70」0.002gを加え、合計10時間、シード分散重合を行った。重合後、エタノールで遠心洗浄し、本発明の複合微粒子を得た。その結果を
図4、
図5に示す。
図4(a)は、ポリメチルメタクリレートのシード粒子のSEM写真であり、
図4(b)および
図5はシード分散重合後の複合微粒子のSEM写真である。シード分散重合後の粒子の平均粒径は3.3μm(変動係数7.5%)であって、シード分散重合前の2.8μmに比べて明らかに大きくなっており、ポリメチルメタクリレートのシード粒子の中にイオン液体モノマーである[MTMA][TFSA]が入り込んで重合したことが確認できた。また、
図5からわかるように、[MTMA][TFSA]を分割添加した場合、きれいなコアシェル構造の複合微粒子が得られた。