特許第6069790号(P6069790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6069790既設コンクリート構造物のせん断補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069790
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】既設コンクリート構造物のせん断補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   E04G23/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-55959(P2013-55959)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-181473(P2014-181473A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三好 俊康
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−057289(JP,A)
【文献】 特開2006−016893(JP,A)
【文献】 特開2007−204984(JP,A)
【文献】 特開2004−238848(JP,A)
【文献】 特開2011−214288(JP,A)
【文献】 特開2009−280959(JP,A)
【文献】 特開2013−124471(JP,A)
【文献】 特開2014−070388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 1/41
F16B 13/00−13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリート構造物の表面よりせん断補強鋼材挿入穴を形成し、該せん断補強鋼材挿入穴内に該穴の軸方向に長い細長のせん断補強鋼材を挿入するとともに、前記せん断補強鋼材挿入穴内に自己硬化性の充填材を注入することにより該せん断補強鋼材挿入穴内にせん断補強鋼材を埋設する既設コンクリート構造物のせん断補強方法において、
前記せん断補強鋼材挿入穴の形成に際し、該穴の奥部に開口部より径を大きくした拡径部を形成し、
前記せん断補強鋼材は、鋼製管からなるせん断補強鋼材本体部と、該本体部の先端に一体に備えられ内圧上昇によって外径が前記本体部より大きい径に拡大永久変形する加圧変形部とから構成され、
前記せん断補強鋼材を、前記せん断補強鋼材挿入穴内に挿入し、該せん断補強鋼材の前記加圧変形部を前記拡径部内に位置させ、
前記せん断補強鋼材を通して前記加圧変形部内に前記充填材を加圧注入することにより該加圧変形部を前記せん断補強鋼材挿入穴の前記開口部より大径に拡大させることを特徴としてなる既設コンクリート構造物のせん断補強方法。
【請求項2】
前記せん断補強鋼材の加圧変形部は、筒状材の外面を中心軸側に窪ませた凹部を軸方向に向けた配置に形成することにより、前記せん断補強鋼材本体部と同径又はこれより小径に形成されており、前記充填材の加圧注入により、前記凹部が外周側に広がり、前記せん断補強鋼材本体部より大きい径に拡大されるようにした請求項1に記載の既設コンクリート構造物のせん断補強方法。
【請求項3】
前記せん断補強鋼材の加圧変形部は、充填材の加圧注入によって拡大した形状が紡錘形である請求項1又は2に記載の既設コンクリート構造物のせん断補強方法。
【請求項4】
前記せん断補強鋼材の加圧変形部の先端開口部を、該加圧変形部が拡径されるための内圧より高い内圧によって離脱する蓋体をもって閉鎖しておき、
該せん断補強鋼材への前記充填材の加圧注入によって前記拡径部を拡径させた後に更に充填材による内圧を上昇させることによって前記蓋体を離脱させ、該蓋体が離脱した前記加圧変形部の先端開口よりせん断補強鋼材挿入穴内の空隙に充填材を充填させる請求項1〜3の何れか1に記載の既設コンクリート構造物のせん断補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設のコンクリート構造物内にせん断補強鋼材を埋め込むことにより、せん断抵抗を高める既設コンクリート構造物のせん断補強方法に関し、更に詳しくは既設コンクリート構造物に開けたせん断補強鋼材挿入穴内へのせん断補強鋼材の定着のための方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設コンクリート構造物の耐震補強方法として、構造物の表面からコンクリート厚さ方向にせん断補強鋼材挿入穴を形成し、その内部にせん断補強鋼材を埋め込むことによってせん断応力を高める方法が知られている(例えば特許文献1,2)。
【0003】
一般に、この種のせん断補強方法では、既設コンクリート構造物に形成したせん断補強鋼材挿入穴内に対するせん断補強鋼材の定着力を高めることによってせん断抵抗力を高めることができる。
【0004】
このため特許文献1では、せん断補強鋼材を挿入するためにコンクリート構造物に開けたせん断補強鋼材挿入穴の奥部に拡径部を形成し、その中央にせん断補強鋼材の先端にせん断補強鋼材より大径の定着部が形成され、これが拡径部の中央部分に埋めこまれることによって定着力を大きくしている。
【0005】
また、特許文献2においては、せん断補強鋼材挿入穴は、開口部を除いて最奥部まで等径に形成されているが、せん断補強鋼材の先端に、せん断補強鋼材より大径の定着部が一体に備えられ、これがせん断補強鋼材挿入穴内に埋め込まれることによって定着力を大きくしている点については同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4167510号公報
【特許文献2】特開2012-241432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような従来の既設コンクリート構造物のせん断補強方法では、せん断補強鋼材の先端に、該せん断補強鋼材より大径の定着部を一体に備えたものを、せん断補強鋼材挿入穴内に挿入するものであるため、既設コンクリート構造物に形成するせん断補強鋼材挿入穴の径をこの定着部より大きくする必要がある。
【0008】
このため、定着力増強のために定着部の径を大きくすればするほど、せん断補強鋼材挿入穴の径を大きくする必要があり、その形成作業に時間と費用を要し、且つ削孔には水が必要であり、水と混じった削り屑の量も多くなり、その処理費用も大きくならざるを得ないという問題があった。
【0009】
また、せん断補強鋼材の埋め込みのための充填材の注入は、せん断補強鋼材の挿入前にせん断補強鋼材挿入穴に注入しておく場合があり、この場合、せん断補強鋼材の挿入時に溢れ出す充填材の漏洩防止措置が必要である。
【0010】
また、充填材が注入されているせん断補強鋼材挿入穴内へのせん断補強鋼材の定着部付の挿入作業は、穴径が小さいと困難なものとなる等の問題があった。
【0011】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、せん断補強鋼材挿入穴の径をより小さいものとして穴の形成作業や削り屑処理作業を省力化し、また、せん断補強鋼材の挿入後のグラウト注入が容易かつ確実になされる既設コンクリート構造物のせん断補強方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、既設コンクリート構造物の表面よりせん断補強鋼材挿入穴を形成し、該せん断補強鋼材挿入穴内に該穴の軸方向に長い細長のせん断補強鋼材を挿入するとともに、前記せん断補強鋼材挿入穴内に自己硬化性の充填材を注入することにより該せん断補強鋼材挿入穴内にせん断補強鋼材を埋設する既設コンクリート構造物のせん断補強方法において、前記せん断補強鋼材挿入穴の形成に際し、該穴の奥部に開口部より径を大きくした拡径部を形成し、前記せん断補強鋼材は、鋼製管からなるせん断補強鋼材本体部と、該本体部の先端に一体に備えられ内圧上昇によって外径が前記本体部より大きい径に拡大永久変形する加圧変形部とから構成され、前記せん断補強鋼材を、前記せん断補強鋼材挿入穴内に挿入し、該せん断補強鋼材の前記加圧変形部を前記拡径部内に位置させ、前記せん断補強鋼材を通して前記加圧変形部内に前記充填材を加圧注入することにより該加圧変形部を前記せん断補強鋼材挿入穴の前記開口部より大径に拡大させることにある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記せん断補強鋼材の加圧変形部は、筒状材の外面を中心軸側に窪ませた凹部を軸方向に向けた配置に形成することにより、前記せん断補強鋼材本体部と同径又はこれより小径に形成されており、前記充填材の加圧注入により、前記凹部が外周側に広がり、前記せん断補強鋼材本体部より大きい径に拡大されるようにしたことにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記せん断補強鋼材の加圧変形部は、充填材の加圧注入によって拡大した形状が紡錘形であることにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1構成に加え、前記せん断補強鋼材の加圧変形部の先端開口部を、該加圧変形部が拡径されるための内圧より高い内圧によって離脱する蓋体をもって閉鎖しておき、該せん断補強鋼材への前記充填材の加圧注入によって前記拡径部を拡径させた後に更に充填材による内圧を上昇させることによって前記蓋体を離脱させ、該蓋体が離脱した前記加圧変形部の先端開口よりせん断補強鋼材挿入穴内の空隙に充填材を充填させることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る既設コンクリート構造物のせん断補強方法においては、請求項1に記載のように、上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、せん断補強鋼材挿入穴の形成に際し、該穴の奥部に開口部より径を大きくした拡径部を形成し、前記せん断補強鋼材は、鋼製管からなるせん断補強鋼材本体部と、該本体部の先端に一体に備えられ内圧上昇によって外径が前記本体部より大きい径に拡大永久変形する加圧変形部とから構成され、前記せん断補強鋼材を、前記せん断補強鋼材挿入穴内に挿入し、該せん断補強鋼材の前記加圧変形部を前記拡径部内に位置させ、前記せん断補強鋼材を通して前記加圧変形部内に前記充填材を加圧注入することにより該加圧変形部を前記せん断補強鋼材挿入穴の前記開口部より大径に拡大させるようにしたことにより、加圧変形部の拡径部内での膨張によってせん断補強鋼材の先端に定着部が形成され、これが拡径部内に係止されることとなり、せん断補強鋼材挿入穴の内径を小さくでき、該穴の形成が容易となるとともに、掘削屑も少なくなり、その処理のための費用が少なくなって、従来方法に比べてより低コストでの施工が可能である。
【0017】
本発明は、請求項2に記載のように、せん断補強鋼材の加圧変形部は、筒状材の外面を中心軸側に窪ませた凹部を軸方向に向けた配置に形成することにより、前記せん断補強鋼材本体部と同径又はこれより小径に形成されており、前記充填材の加圧注入により、前記凹部が外周側に広がり、前記せん断補強鋼材本体部より大きい径に拡大されるようにしたことにより、せん断補強鋼材挿入穴の拡径部内部での膨張変形が容易となり、作業効率が高く、低コスト化に寄与する。
【0018】
本発明は、請求項3に記載のように、せん断補強鋼材の加圧変形部は、充填材の加圧注入によって拡大した形状が紡錘形であることにより、加圧変形部の内部加圧による膨張変形が容易になされるものとなる。
【0019】
本発明は、請求項4に記載のように、せん断補強鋼材の加圧変形部の先端開口部を、該加圧変形部が拡径されるための内圧より高い内圧によって離脱する蓋体をもって閉鎖しておき、該せん断補強鋼材への前記充填材の加圧注入によって前記拡径部を拡径させた後に更に充填材による内圧を上昇させることによって前記蓋体を離脱させ、該蓋体が離脱した前記加圧変形部の先端開口よりせん断補強鋼材挿入穴内の空隙に充填材を充填させることにより、せん断補強鋼材とせん断補強鋼材挿入穴の隙間への充填材の充填が、最奥部からなされることとなり、充填性が高くなるとともに、充填材の漏洩を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るせん断補強方法によるせん断補強鋼材埋設状態を示す縦断面図である。
図2】本発明に使用するせん断補強鋼材の拡径部の膨張による拡径状態を示す半断側面図である。
図3】同上の拡径部先端のキャップ部分の他の例を示す縦断面図である。
図4】同上の拡径部先端のキャップ部分の更に他の例を示す縦断面図である。
図5】本発明に使用するせん断補強鋼材の拡径部の縮径状態を示す平面図である。
図6図5におけるA−A線断面図である。
図7】同B−B線断面図である。
図8】同C−C線断面図である。
図9】同D−D線断面図である。
図10】(a)〜(e)は、本発明方法の施工工程の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を、図面に示した実施例に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明方法によって施工されたせん断補強状態を示している。図において符号1は既設コンクリート構造物であり、2は既設コンクリート構造物1に形成したせん断補強鋼材挿入穴、3はせん断補強鋼材、4は充填材である。
【0023】
せん断補強鋼材挿入穴2は、既設コンクリート構造物1の鉄筋の無い部分に、例えば高圧水噴射によって形成したものであり、最奥部にその開口部側より径の大きい拡径部2bが形成され、それより開口部側はほぼ等径のストレート穴部2aとなっている。
【0024】
せん断補強鋼材3は、全長に亘って等径の鋼製管からなるせん断補強鋼材本体部11と、その先端に一体に備えた中空の加圧変形部12とから構成されている。加圧変形部12は、内部を加圧することによって拡径するように変形するものであり、拡径後の形状は図に示す如き紡錘形となっている。
【0025】
加圧変形部12の紡錘形に拡径後の形状は、図2に示すように、中心線方向の中央部分が、せん断補強鋼材挿入穴2のストレート穴部2aより径の大きい太径部13となっており、それより先端側は先細り状の先端側テーパ部14、せん断補強鋼材本体部11側が先端側テーパ部14とは対称形状の基端側テーパ部15となっている。
尚、拡径後の加圧変形部12は、図2に示す形状に限らず、せん断補強鋼材挿入穴2のストレート穴部2aより径の大きい径に拡張された形状であれば良い。
【0026】
基端側テーパ部15の最も細い基端部の外形がせん断補強鋼材本体部11の外形と等径に形成され、先端側テーパ部14の最も細い部分である先端部には、キャップ16によって閉鎖されている。
【0027】
キャップ16は、先端側テーパ部14の先端開口縁部外側に形成したフランジ17の外側を包み込むようにして密閉状態となるように固定されており、内圧が一定以上に達した際に外れる強度に形成されている。キャップの材料は、鋼製が好ましいが、高強度の合成樹脂材を使用してもよい。
【0028】
また、キャップ16の形状は、図2に示す単一材料による平皿型の他、図3に示すように頂面の中央を加圧変形部12内側に凹ませた形状とし、内圧上昇時に図3中の仮想線で示すように先端側に反転して膨らむようにしてもよい。また、図4に示すようにキャップ16に、その頂面内に補強板18を溶接により固定して、該キャップ16の強度を調整してもよい。
【0029】
加圧変形部12は、せん断補強鋼材挿入穴2内に挿入した後に充填材の加圧注入により膨張変形させるものであり、その膨張変形前の状態、即ち、せん断補強鋼材挿入穴2内に挿入する際の縮径された状態の形状は、図5図9に示すように、せん断補強鋼材本体部11と同径又はそれ以下の径に縮径された形状となっている。
【0030】
縮径時の加圧変形部12には、周方向の複数個所に軸方向に向けた凹部19が形成されている。この凹部19は、加圧変形部12の外周より半径方向に加圧して内面側に窪ませた形状、換言すれば内面側に窪ませた襞が形成された形状なっている。これによって前述した膨張時の紡錘形状を、せん断補強鋼材本体部11と略同径になるように縮径させた構造となっている。この凹部19は加圧変形部12の周方向の1箇所に設ける他、図示してないが等間隔に複数設けてもよい。
凹部は、せん断補強鋼材本体部及び先端との接続部で略窪みが無いように形成し、拡径後の直径が大きい部位ほど窪みを大きく形成し、該窪みが軸方向に漸増するように形成することが望ましい。
【0031】
せん断補強鋼材3は、せん断補強鋼材本体部11がせん断補強鋼材挿入穴2のストレート穴部2aより小径に形成され、加圧変形部12は、加圧膨張後の外形が、ストレート穴部2aより大きく、拡径部2bより小さい径となるように形成されている。
【0032】
加圧変形部12の形成は、一例として、該加圧変形部12が前述した膨張した状態の形状に形成しておき、これをせん断補強鋼材本体部11に溶接した後、凹部19を形成しつつ縮径方向に外周面を加圧することのよってせん断補強鋼材本体部11と同径又はこれより小さい径に縮径加工することによって形成する。この他、せん断補強鋼材本体部11に溶接する前に縮径加工を施し、これをせん断補強鋼材本体部11の先端に溶接してもよい。
【0033】
このせん断補強の施工は、既設コンクリート構造物1の表面よりせん断補強鋼材挿入穴2を穿設する。穿設に際しては図10(a)に示すように、軸方向前方側に穿孔用の高圧ジェット水を噴射する直進用ジェットノズル20を使用し、先ずストレート穴部2aを形成する。
【0034】
次いで、図10(b)に示すように回転しながら半径方向に高圧ジェット水を噴射する周方向ジェットノズル21を使用して拡径部2bを形成する。
【0035】
このようにしてせん断補強鋼材挿入穴2を形成した後、図10(c)に示すように、図5のように加圧変形部12をせん断補強鋼材本体部11とほぼ同径まで縮径させた状態のせん断補強鋼材3をせん断補強鋼材挿入穴2に挿入し、加圧変形部12を拡径部2bに到達させる。
【0036】
この状態で図10(d)に示すように充填材加圧注入ポンプ22を使用してせん断補強鋼材3内に充填材4を圧入する。この充填材圧入により加圧変形部12を図2に示す状態に膨張させる。この膨張作業後に更に充填材4の注入圧を高め、キャップ16を拡径部先端から離脱させる。これによって充填材4は、図10(e)に示すようにせん断補強鋼材3内を通してその先端より吐出され、せん断補強鋼材挿入穴2の最奥部から、該穴2とせん断補強鋼材3との隙間に高圧で注入される。
【0037】
尚、キャップ16を離脱させた後、充填材注入圧を下げ、注入速度を通常の充填材注入速度で充填させてもよい。また、使用する充填材4はセメント系、合成樹脂系を問わず、充填時に必要な流動性を有し、固化後に必要な定着力が発揮される自己硬化性のものであれば良い。
【0038】
上述の実施例では、キャップ16を内圧上昇によって離脱させることにより充填材4をせん断補強鋼材挿入穴2の最奥部からせん断補強鋼材3外周の隙間に充填するようにしているが、キャップ16が離脱する構造とせず、予めせん断補強鋼材挿入穴2内に充填材を注入した状態でせん断補強鋼材3を挿入することによってせん断補強鋼材3とせん断補強鋼材挿入穴2との隙間を充填材で埋めた状態とし、然る後、加圧変形部12を膨張させるようにしてもよい。また,予めせん断補強鋼材挿入穴2内にせん断補強鋼材3を挿入し,せん断補強材の内部に液体などにより加圧し,加圧変形部12を膨張させたあとに,せん断補強鋼材3外周の隙間に充填材を注入してもよい.
【符号の説明】
【0039】
1 既設コンクリート構造物
2 せん断補強鋼材挿入穴
2a ストレート穴部
2b 拡径部
3 せん断補強鋼材
4 充填材
11 せん断補強鋼材本体部
12 加圧変形部
13 円筒部
14 先端側テーパ部
15 基端側テーパ部
16 キャップ
17 フランジ
18 補強板
19 凹部
20 直進用ジェットノズル
21 周方向ジェットノズル
22 充填材加圧注入ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10