(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷却水は羽根部に保水されて、羽根部表面から気化することによって冷却されるので、羽根部の保水性を高める必要があるが、その場合、外装材としての強度を確保しつつ、保水性を高めなければならず、セラミック製の材料等では、その両立が難しいといえる。
また、ルーバーの重量が重いと、当該ルーバーを建物の高所に配置し難くなり、配置自由度の点で問題となる。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、冷却水の蒸発を促進することで冷却効果が高められた軽量な羽根部であって、外装材としての強度の確保と高い保水性との両立を図ることが可能な羽根部を有するルーバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなし、複数の通気孔が貫通形成された囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持されるシート状保水材と、
前記シート状保水材に給水する給水機構と、を有し、
前記シート状保水材の片面は、前記通気孔に対向して
おり、
前記囲い部材は長手方向を有し、前記囲い部材が区画形成する前記空間の長手方向は前記囲い部材の長手方向と揃っており、
前記シート状保水材は、該シート状保水材の長手方向を前記囲い部材の長手方向に揃えつつ前記空間に収容されており、
前記シート状保水材には、前記シート状保水材の形状を平坦に保つための保形部材が設けられており、
前記保形部材は、前記シート状保水材の前記長手方向に間欠的に複数並んで設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなし、複数の通気孔が貫通形成された囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持されるシート状保水材と、
前記シート状保水材に給水する給水機構と、を有し、
前記シート状保水材の片面は、前記通気孔に対向しており、
前記囲い部材は長手方向を有し、前記囲い部材が区画形成する前記空間の長手方向は前記囲い部材の長手方向と揃っており、
前記シート状保水材は、該シート状保水材の長手方向を前記囲い部材の長手方向に揃えつつ前記空間に収容されており、
前記シート状保水材には、前記シート状保水材の形状を平坦に保つための保形部材が設けられており、
前記保形部材は、透水性の樹脂繊維からなる網状体であることを特徴とする。
【0008】
また、建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなし、複数の通気孔が貫通形成された囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持されるシート状保水材と、
前記シート状保水材に給水する給水機構と、を有し、
前記シート状保水材の片面は、前記通気孔に対向しており、
前記囲い部材は長手方向を有し、前記囲い部材が区画形成する前記空間の長手方向は前記囲い部材の長手方向と揃っており、
前記シート状保水材は、該シート状保水材の長手方向を前記囲い部材の長手方向に揃えつつ前記空間に収容されており、
前記シート状保水材には、前記シート状保水材の形状を平坦に保つための保形部材が設けられており、
一対の前記シート状保水材同士は、互いに厚さ方向に重ね合わせられて接合されており、
前記シート状保水材同士の間に、前記保形部材が介装されて保持されていることを特徴とする。
【0009】
また、建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなし、複数の通気孔が貫通形成された囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持されるシート状保水材と、
前記シート状保水材に給水する給水機構と、を有し、
前記シート状保水材の片面は、前記通気孔に対向しており、
前記囲い部材は、前記長手方向の少なくとも一方端が開口した中空部材であり、
前記囲い部材は、前記長手方向に沿って複数並んで設けられ、
前記囲い部材毎に、前記シート状保水材がそれぞれ収容され、
前記長手方向に隣り合う囲い部材同士の間には、隙間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記囲い部材の上方には、前記給水機構の給水口部が設けられており、
前記給水口部から前記囲い部材内の前記シート状保水材に向けて水を落下供給することとしてもよい。
【0011】
また、前記シート状保水材は、水よりも比重が小さい材料で形成されていることとしてもよい。
【0012】
また、前記囲い部材が区画形成する前記空間には、前記シート状保水材と共に、配管が収容されており、
前記配管の一方の管端からは、前記建物の屋内空調に使用される熱媒体が送り込まれ、前記配管の他方の管端からは、前記熱媒体が送出されることとしてもよい。
【0013】
また、建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなす囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持されるシート状保水材と、
前記シート状保水材に給水する給水機構と、を有し、
貫通形成された外気との通気孔が、前記囲い部材に設けられており、
前記シート状保水材の一方側の片面、及び他方側の片面は、
前記通気孔に対向していることを特徴とする。
【0014】
また、建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなし、複数の通気孔が貫通形成された囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持されるシート状保水材と、
前記シート状保水材に給水する給水機構と、を有し、
前記シート状保水材の片面は、前記通気孔に対向しており、
前記囲い部材は、略断面コ字形状部材で形成されて、三つの側壁部と、一つの開口部とを有し、
前記開口部からの前記シート状保水材の飛び出しを防止する手段を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に示す発明は、請求項1乃至7の何れかに記載のルーバーであって、
前記シート状保水材は、水よりも比重が小さい材料で形成されていることを特徴とする。
上記請求項8に示す発明によれば、水よりも比重が小さい材料で形成されているので、羽根部の軽量化を図り易くなる。
【0016】
請求項9に示す発明は、請求項1乃至8の何れかに記載のルーバーであって、
前記囲い部材が区画形成する前記空間には、前記シート状保水材と共に、配管が収容されており、
前記配管の一方の管端からは、前記建物の屋内空調に使用される熱媒体が送り込まれ、前記配管の他方の管端からは、前記熱媒体が送出されることを特徴とする。
上記請求項9に示す発明によれば、配管内の熱媒体は、囲い部材内のシート状保水材を介して冷却されるので、当該熱媒体を建物の屋内空調に利用することができる。よって、屋内空調のエネルギー効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷却水の蒸発を促進することで冷却効果が高められた軽量な羽根部であって、外装材としての強度の確保と高い保水性との両立を図ることが可能な羽根部を有するルーバーを提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
===本実施形態===
図1は、本実施形態のルーバー10,10…が設けられた建物1の外観斜視図である。この例では、建物1は複数階の一例としての8階建てのビルであり、窓W,W…を有する外壁部3の屋外側には、外装材としてのルーバー10,10…が外壁部3に支持される形で設けられている。そして、これらルーバー10,10…により建物1の屋内への日差しが緩和されている。
【0020】
なお、
図1の例では、外壁部3において日差しを和らげたい部分に選択的にルーバー10を設けている関係上、不規則なパターンで配置され、また、ルーバー10,10…の高さ寸法も様々である。例えば、この例では、一つのルーバー10により、2階分、4階分、6階分、及び8階分の遮光を行うようにすべく、それぞれ、2階分の階高に相当する高さ寸法のルーバー10、4階分の階高に相当する高さ寸法のルーバー10、6階分の階高に相当する高さ寸法のルーバー10、及び全階たる8階分の階高に相当する高さ寸法のルーバー10が設けられている。但し、これらルーバー10,10…は、互いに高さ寸法が異なるだけであり、基本構成は同じである。
【0021】
図2は、本実施形態のルーバー10の斜視図である。なお、
図2では一部の構成を破断して示している。また、
図3Aは、後述する羽根部20を一部破断して示す拡大側面図であり、
図3Bは、
図3A中のB−B断面図である。
【0022】
図2に示すように、このルーバー10は、遮光用に略平板形状(略扁平形状)の複数の羽根部20,20…を有した縦型ルーバー10である。すなわち、羽根部20の長手方向を鉛直方向に向けながら、複数の羽根部20,20…が、建物1の外壁部3の壁面3aに沿って水平方向に間欠的に並んで配置されている。
なお、同壁面3aに対する各羽根部20の向きは、遮光条件に応じて適宜設定される。例えば、この例では、同壁面3aに対して羽根部20の幅方向が直交方向を向いているが、場合によっては、同壁面3aに対して各羽根部20の幅方向を平行に向けても良いし、同壁面3aに対して所定の傾き角で羽根部20の幅方向が傾斜するように各羽根部20を配置しても良い。
【0023】
各羽根部20は、当該羽根部20の外形をなす囲い部材22と、囲い部材22の内方に互いの長手方向を揃えた状態で収容・保持された保水性帯状部材28と、を有している。そして、各羽根部20の上方には、保水性帯状部材28に給水すべく給水機構30の給水口部31,31…が配置されており、更に、囲い部材22は、上端22eu及び下端22edが開口した無蓋無底箱体である。よって、当該上端22euの開口を導水口として用いて、上記給水口部31から水を囲い部材22内へ落下供給すれば、囲い部材22内の保水性帯状部材28の上から下へと、水が、自重や毛細管現象に基づいて拡散浸透する。そして、これにより、水が上下方向の略全域に行き渡って同略全域が冷却され、その結果、日射起因のルーバー10の高温化は防止される。ちなみに、給水機構30の給水口部31は、例えばノズルや点滴パイプであり、かかる給水口部31を、囲い部材22の上端22euに設けても良いし、羽根部20における上下方向の中間位置に設けても良い。
【0024】
また、
図2、
図3A、及び
図3Bに示すように、囲い部材22が具備する四つの側壁部22WL,22WL,22WS,22WSのうちで少なくとも互いに対向する一対の側壁部22WL,22WLには、複数の通気孔22H,22H…が貫通形成されており、更に、囲い部材22内の保水性帯状部材28の各片面A28(後述の保水性シート28sの片面のことでもある)は通気孔22H,22H…に対向している。よって、通気孔22H,22H…から取り込まれた外気は速やかに保水性帯状部材28の各片面A28に接触し、そして、当該外気の接触により、保水性帯状部材28の片面A28に保持された水の蒸発が促進されるので、その気化熱による保水性帯状部材28の冷却が効果的に行われ、その結果、ルーバー10の羽根部20の冷却効果が大きく向上される。
【0025】
更に、この保水性帯状部材28は、後述のように保水性シート28s(シート状保水材に相当)を基材28sとする。そして、当該基材28sはシート状なので、少なくともその両面にそれぞれ保水可能であり、つまり保水可能面積が広いため高い保水性を奏し得て、このことも冷却性の向上に寄与する。また、同基材28sがシート状であることから軽量化を図れ、これにより、羽根部20の総重量を軽くすることができて、その結果、かかる軽量なルーバー10は、建物1の高所配置に適したものとなる。
【0026】
囲い部材22は、既述のように四つの側壁部22WL,22WL,22WS,22WSを有する略扁平形状の箱部材であり、アングル等の不図示のステイ部材を介して壁面3aに支持されている。また、囲い部材22は、保水性帯状部材28を固定するための不図示の固定具を長手方向に間欠的に有している。そして、かかる固定具を介して保水性帯状部材28は囲い部材22に自重を支持され、これにより、囲い部材22内の中空空間に保水性帯状部材28は保持されている。かかる固定具の一例としては、番線等が挙げられるが、何等これに限らず、すなわち、保水性帯状部材28の自重を支持しつつ同部材28を囲い部材22に移動不能に固定可能な物であれば、適用可能である。
【0027】
囲い部材22の素材としては、例えば、鋼やアルミニウム等の金属や木、樹脂などが挙げられ、この例では、耐候性を高めるべく溶融亜鉛メッキ鋼が使用されている。但し、何等上述に限らず、つまり、囲い部材22内の中空空間に保水性帯状部材28を収容・保持しても変形しない程度の剛性を有した材料であって、外装材としての強度を有する材料であれば、上記以外の材料を用いても良い。
【0028】
また、囲い部材22は、各側壁部22WL,22WL,22WS,22WSに対応するサイズの各平板を箱状に連結することで作成されても良いし、又は、全ての側壁部22WL,22WL,22WS,22WSに相当する面積を有した一枚の平板を、囲い部材22の三つの角部に相当する各位置で屈曲するとともに、同平板の端縁同士を連結して残る一つの角部を形成することで、囲い部材22を作成しても良いし、或いは、二つの略断面コ字形状の部材23,23同士を、略断面ロ字形状になるように突き合わせつつボルト等の連結部材で連結固定することで作成しても良い。この例では、三番目の方法たる略断面コ字形状の部材23,23を用いる方法によって、囲い部材22を形成している。このような略断面コ字形状の部材23の一例としては、日鐵ファインフロア(商品名:日鐵住金建材(株)製)等を例示できるが、何等これに限らず、例えば鋼製平板を屈曲して作成しても良い。
【0029】
更に、囲い部材22は、羽根部20の長手方向の全長に亘り一体不可分に連続した一体物として構成されても良いし、或いは、
図4の斜視図に示すように羽根部20の全長を等分してなる所定長さの部材を囲い部材22の単位長さ部材22Uとし、かかる単位長さ部材22U,22Uを、羽根部20の全長に相当する長さになるまで長手方向に複数突き合わせて連結することにより、羽根部20の全長に相当する長さの囲い部材22に形成しても良い。この例では、単位長さ部材22Uは、階高1階分に相当する長さ(例えば、4メートル)を有し、当該単位長さ部材22Uを、対応する羽根部20の全長に相当する数だけ(
図4の例では二つ)積み上げて囲い部材22が形成されている。
【0030】
また、この例では、
図2、
図3A、及び
図3Bに示すように、保水性帯状部材28の各片面A28,A28は、それぞれ、囲い部材22の四つの側壁部22WL,22WL,22WS,22WSのうちで面積の大きい方の一対の側壁部22WL,22WLに対向している。そのため、前述したように外気による各片面A28,A28の水の蒸発を促進すべく、これら一対の側壁部22WL,22WLには複数の通気孔22H,22H…が形成されている。但し、何等これに限るものではない。例えば、これら通気孔22H,22Hに加えて、更に、小さい方の側壁部22WS,22WSに複数の通気孔22H,22H…を形成しても良い。
【0031】
更に、この例では、通気孔22Hの形状は、水平方向に長い横長矩形形状であり、当該横長矩形形状の通気孔22Hが、上下方向に複数並んで形成されているが、通気孔22Hの形状や配置パターンは何等これに限るものではなく、例えば真円等の円形形状であっても良いし、三角形や五角以上の多角形でも良い。また、
図2及び
図3Aの例では、水平方向については通気孔22Hが一つだけ設けられているが、水平方向に複数の通気孔を並べて配置しても良い。なお、かかる通気孔となり得る孔が予め形成された平板としてはパンチングメタル材等を例示できて、つまりパンチングメタル材を用いて囲い部材22を作成しても良い。
【0032】
図5Aは保水性帯状部材28の正面図であり、
図5Bは保水性帯状部材28の分解斜視図である。
保水性帯状部材28は、例えば、囲い部材22の単位長さ部材22Uの全長に相当する長さの帯状体であり、そして、既述の基材28sとしての一対の帯状の保水性シート28s,28s(シート状保水材に相当)と、これら保水性シート28s,28s同士の間に介装された保形部材29,29…と、を有している。
【0033】
各保水性シート28sは、例えば、上記単位長さ部材22Uの全長に相当する長さの透水性の不織布や織布であり、その構成繊維は、例えばポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂繊維などである。また、坪量は例えば200〜400(g/m
2)であり、望ましくは270(g/m
2)である。なお、望ましくは、保水性シート28sは、水よりも比重が小さい材料で形成されていると良く、そのようにすれば、羽根部20の軽量化をより図り易くなる。但し、透水性を有したシート状部材であれば、保水性シート28sは何等上記に限らない。
【0034】
保形部材29は、保水性シート28sの曲げ変形を規制してその形状を略平坦に保つ目的で、保水性シート28sに積層された平面視略矩形状のシート状網体である。そして、この例では、
図5A及び
図5Bに示すように、複数の保形部材29,29…が、保水性シート28sの長手方向に間欠的に所定ピッチで並んで配置されているが、場合によっては、保水性シート28sの長手方向の略全長に亘って連続して帯状に配置されていても良い。
【0035】
図5Bに示すように、保形部材29の幅寸は、保水性シート28sの幅寸よりも若干狭く、これにより、一対の保水性シート28s,28sは、それぞれ保形部材29よりも幅方向の両側にそれぞれはみ出した部分28s1,28s1を有しており、これらはみ出した部分28s1,28s1と、保形部材29,29同士の間の保形部材29が配置されない未配置部分28s2との両者において、一対の保水性シート28s,28s同士が額縁状に接合されて、これにより、保形部材29が一対の保水性シート28s,28s同士の間に脱落不能に保持されている。なお、上記はみ出した部分28s1,28s1及び保形部材29の未配置部分28s2での接合は、糸による縫い合わせでも良いし、接着剤による接着でも良いし、ステープラーによる固定でも良い。
【0036】
保形部材29は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の樹脂性網状体などであり、坪量は例えば500〜3000(g/m
2)で、望ましくは1000(g/m
2)である。但し、保形部材29は、このような網状体に限るものではない。すなわち、保水性シート28sに適度な曲げ剛性を付与してその形状を略平坦に維持し得るものであれば、適用可能であり、例えば軽石を敷き詰めたり、スポンジを固定等しても良い。
【0037】
また、かかる保形部材29は、必須構成ではない。すなわち、保水性シート28s自体の坪量を増やしたり、同シート28sの構成繊維に高剛性の素材を用いる等して、保水性シート28sの折れ返りや過度の折れ曲がりを防いでその形状を概ね平坦に保つことができるのであれば、保形部材29を設けなくても良い。また、そのようにした場合には、保形部材29の保持目的で保水性シート28sを一対たる二枚構成にする必要はなく、つまり、一枚構成の保水性シート28sで或る程度の曲げ剛性を確保できるのであれば、一枚構成にしても良い。但し、保形部材29を用いずに、保水性シート28sを複数枚積層してなる複層構成で、曲げ剛性の向上を図っても良い。
【0038】
ところで、上述の
図4の例では、囲い部材22を構成する複数の単位長さ部材22U,22Uを、その長手方向の端面22Ueにおいて隙間無く突き合わせていたが、何等これに限るものではない。例えば、
図6の概略側面図に示すように、長手方向に隣り合う単位長さ部材22U,22U同士の間に隙間G22をあけた状態で、長手方向の端面22Ue、22Ue同士を対向させて配置しても良い。この場合には、単位長さ部材22U毎にそれぞれ保水性帯状部材28(
図6中では不図示)が設けられ、保水性帯状部材28の長手方向の全長寸法が、単位長さ部材22Uの全長に相当する長さに概ね設定されることにより、各保水性帯状部材28は、それぞれ対応する単位長さ部材22Uの中空空間内に概ね完全に収容される。
【0039】
なお、かかる保水性帯状部材28は、汚損や紫外線劣化など経年劣化のおそれがあるため、定期的に新品に交換する必要があるが、その場合には、上記の隙間G22を利用することで交換作業を容易に行うことができる。すなわち、単位長さ部材22Uの上端22Ueの開口又は下端22Ueの開口から使用済みの保水性帯状部材28を引き抜く際や、同開口から新品の保水性帯状部材28を単位長さ部材22U内に差し込む際には、上記隙間G22を通して保水性帯状部材28を容易に抜き差しすることができる。但し、当該隙間G22が上下方向に狭い場合には、多少抜き差し作業を行い難くなることもあるが、
図5A及び
図5Bに示すように、保水性帯状部材28の長手方向に保形部材29,29…が間欠配置されていれば、保水性帯状部材28における保形部材29の未配置部分28s2,28s2…が曲げ変形の起点となって保水性帯状部材28を所定ピッチで間欠的に曲げることができるので、上記隙間G22を用いた保水性帯状部材28の抜き差し作業を容易に行うことができる。また、この隙間G22に給水機構30の給水口部31を配置しても良く、その場合には、単位長さ部材22U毎に給水口部31が配置されることになる。
【0040】
尚、上述の
図4の例において複数の単位長さ部材22Uが隙間無く突き合わされていても、各側壁部22WL,22WL,22WS,22WSのいずれかの一部に開口部を設けることにより、その開口から保水性帯状部材28の抜き差し作業が可能である。
【0041】
図7は、保水性帯状部材28aの変形例の説明図であり、囲い部材22内に収容状態の保水性帯状部材28aを横断面視で示している。
【0042】
上述の実施形態では、保形部材29としてシート状網体を用いていたが、この
図7の変形例では、保形部材29aとして複数の筒状網体を用いている点で主に相違する。すなわち、この変形例では、保水性帯状部材28aの幅方向に並ぶ複数の一例としての三本の筒状網体29a,29a,29aが、各筒軸を保水性帯状部材28aの長手方向(
図7中では紙面を貫通する方向)に沿わせて配置されており、そして、これら三本の筒状網体29a,29a,29aを一纏めに保水性シート28saが外方から覆うことにより、保水性帯状部材28aが形成されている。
【0043】
なお、保水性シート28saは、一枚もので三本の筒状網体29a,29a,29aを一斉に覆っても良いし、上述の実施形態のように、一対の保水性シート28s,28s同士の間に三本の筒状網体29a,29a,29aを挟み込むことで覆うようにしても良い。また、上述の実施形態の保形部材29のように、筒状網体29aを、保水性帯状部材28aの長手方向に間欠的に配置しても良いし、或いは、同長手方向の略全長に亘って連続して配置しても良い。この筒状網体29aの具体例としては、ヘチマロン(商品名:新光ナイロン(株)製)などが挙げられる。
【0044】
ところで、上述の実施形態では、保水性シート28sとして単層構造のシートを用いていたが、この変形例では、保水性シート28saに対して複層構造の一例として二層構造のシートを用い、これにより層L1,L2毎に機能分化を図っている点でも相違する。すなわち、筒状網体29aと当接する側の内層L1を、水の拡散浸透目的で導水層L1とし、他方、通気孔22Hを介して日光が当たる側の外層L2を、導水層L1の紫外線劣化防止目的で遮光層L2としている。なお、遮光層L2も透水性を有し、これにより、導水層L1の水が遮光層L2の表面に拡散浸透するので、これにより、通気孔H22から取り込まれる外気は、保水性シート28saの表面に保持された水に速やかに接触し、当該水を速やかに蒸発させることができる。
【0045】
このような導水層L1は、例えば、透水性を有するポリエステルやポリエチレンテレフタレート等の樹脂繊維から構成され、また、遮光層L2は、例えば、遮光性を有するビニロンやポリエチレン等の樹脂繊維から構成される。なお、このような二層構造の形成は、外層L2をなす遮光シートと、内層L1をなす導水シートとを貼り合わせることで実現しても良い。また、遮光層L2については、その目合が0.2〜1.0mm程度のものを使用すると良く、そうすれば、防虫効果を発揮し、水分に集まるダニ類・昆虫類の繁殖を防ぐこともできる。
【0046】
また、場合によっては、
図8の斜視図に示すように、各羽根部20の下方、または下部側方に隣接させて植栽基盤40Bを収容したプランター40を設置しても良い。このようにすれば、プランター40に、ヘデラやオオイタビ等のつる植物を植栽して当該植物に羽根部20の囲い部材22を登攀させることができて、これにより、かかる植物によって囲い部材22の側壁部22WLの壁面が覆われて羽根部20の緑化が図られ、当該羽根部20の緑化も、日照起因の羽根部20の高温化の抑制に寄与するようになる。なお、つる植物の登攀を補助すべく、囲い部材22の側壁部22WLの壁面に上下方向に沿わせつつワイヤやネット(不図示)を敷設しても良い。なお、かかるワイヤ42やネットは、
図8に示すように、水平方向に隣り合う羽根部20,20同士の間の空間(例えば中間位置)に配置されても良く、この場合には、羽根部20の側壁部22WLの壁面は蔓植物で覆われないが、その周辺近傍の緑化を図れるので、上述と同様の高温化抑制効果を奏し得る。
【0047】
また、給水機構30の給水口部31から保水性帯状部材28へ供給した水の未蒸発分は、羽根部20の下端部に到達して余剰水となるが、当該余剰水をプランター40に供給してつる植物の栽培に供しても良い。なお、
図8のようにプランター40を囲い部材22の下方に設けた場合には、余剰水はそのまま直接プランター40に落下供給されるが、他方、プランター40を囲い部材22の下部側方に設置する場合には、囲い部材22の下端部には、囲い部材22内の中空空間からプランター40の植栽基盤40Bへと余剰水を誘導するための導水管が設けられることになる。
ちなみに、羽根部20,20同士の間の空間は、防風効果によって風が弱められるので、特に高層階の植物にとっては、風ストレスが緩和され、また、羽根部20が冷却されているので、つる植物の日射による熱ストレスが緩和されており、よって、当該つる植物にとっても良好な生育環境になっている。
【0048】
図9は、羽根部20aの囲い部材22aの変形例の斜視図である。上述の実施形態では、二つの略断面コ字形状部材23,23を互いに突き合わせることにより、箱状の囲い部材22を形成していたが、この変形例では、略断面コ字形状部材23を一つだけ用いることにより、略断面コ字形状の囲い部材22aを形成している。すなわち、囲い部材22aは、概ね三つの側壁部23WL,23WS,23WSしか有さず、これにより、四側方のうちの一方は略全面に亘って開口しているが、かかる囲い部材22aが区画する空間に、保水性帯状部材28を収容して保持可能であれば、このように構成しても良い。ちなみに、
図9の例では、保水性帯状部材28を保持させる目的で、面積の大きい側壁部23WLの両脇に連続する面積の小さい方の一対の側壁部23WS,23WSには、それぞれ端縁にリブ部23b,23bが設けられている。すなわち、当該リブ部23b,23bによって保水性帯状部材28を引っ掛けることで、囲い部材22a外への保水性帯状部材28の飛び出しを防いでいる。
【0049】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0050】
上述の実施形態では、ルーバー10の一例として縦型ルーバー10を例示したが、何等これに限るものではなく、横型ルーバー10bとして構成しても良い。すなわち、
図10の斜視図に示すように羽根部20の長手方向を水平方向に向けながら、複数の羽根部20,20…が、建物1の外壁部3の壁面3aに沿って鉛直方向に間欠的に並んで配置されていても良い。また、この場合についても、同壁面3aに対する各羽根部20の向きは、遮光条件に応じて適宜設定される。例えば、同壁面3aに対して羽根部20の幅方向を直交させても良いし、又は、同壁面3aに対して各羽根部20の幅方向を平行に向けても良いし、或いは、同壁面3aに対して所定の傾き角で羽根部20の幅方向が傾斜するように各羽根部20を配置しても良い。ちなみに、この場合にも、給水機構30の給水口部31は、最上段の羽根部20の上方に配置されるが、当該羽根部20は水平方向に長いことから、複数の給水口部31が、水平方向に間欠的に配置されることになる。
【0051】
また、同
図10の例では、最上段の羽根部20の上方のみに給水口部31,31…が配置されており、給水口部31,31…から給水された水は、最上段の囲い部材22を上下方向に通過した後に、同囲い部材22の下面壁部22WLの通気孔22Hを介してその下方の隣に位置する囲い部材22の上面壁部22WLの通気孔22Hへと落下供給され、これを順次上方から下方へと繰り返すことによって下方に位置する囲い部材22,22…へと給水するように構成されているが、何等これに限るものではなく、例えば、羽根部20毎にその直上に給水口部31,31…を配置しても良い。
【0052】
上述の実施形態では、囲い部材22の一例として略直方体の箱体を例示したが、その形状は何等これに限らない。つまり、保水性帯状部材28を収容可能な空間を区画する部材であって複数の通気孔22H,22H…が貫通形成された部材であれば、これ以外の形状の部材でも良い。例えば、囲い部材22は円筒体でも良いし、断面形状が四角形以外の多角形の筒体でも良い。
【0053】
上述の実施形態では、囲い部材22(22a)内には、保水性帯状部材28しか収容せず、ルーバー10の冷却効果を、その周辺の屋外空間や屋内空間の暑熱環境の改善のみに利用していたが、何等これに限るものではない。例えば、囲い部材22(22a)内に、保水性帯状部材28とともに銅管や鋼管等の配管(不図示)を収容し、当該配管内に屋内空調用の熱媒体を流しても良い。すなわち、配管の一方の管端からは熱媒体が送り込まれ、他方の管端からは熱媒体が送出されるようにしても良い。このようにすれば、配管内の熱媒体は、同配管内を通過中に囲い部材22(22a)内の保水性帯状部材28の保水性シート28sと熱交換して冷却されるので、当該冷却後の熱媒体を建物1の屋内空調に利用することができる。よって、屋内空調のエネルギー効率を高めることができる。ちなみに、熱媒体は、液体でも気体でも良く、配管はアルミ管でも良い。また、囲い部材22(22a)内の配管を、つづら折り状に配置すれば、その流路長を長く稼ぐことができて、熱交換効率を高めることができる。