(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリエチレン系樹脂Aは、JIS K6922−2:2005に準拠して測定されたメルトマスフローレイト(MFRa)が、1〜50g/10分であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性積層体の製造方法。
前記ポリエチレン系樹脂Aは、JIS K6922−2:2005に準拠して測定された溶融温度が、80〜125℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡性積層体の製造方法。
前記ポリエチレン系樹脂Aは、高圧法低密度ポリエチレン50〜99重量%と、他のポリオレフィン1〜50重量%とを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡性積層体の製造方法。
前記エージング処理は、少なくとも2段階で行われ、前段で40℃以上の環境下に1時間以上放置した後、後段で加湿雰囲気に放置するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡性積層体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、温飲料用カップ、即席麺用容器等の断熱性を有する容器として、発泡ポリスチレン製等の容器が多く使用されていたが、発泡ポリスチレン容器は、廃棄時の環境への負荷が高い、印刷適性に劣るなどの欠点があり、他の素材への代替が検討されている。
【0003】
そこで、水分を含んだ紙基材の少なくとも一面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、加熱することにより、基材に含まれている水分を利用して合成樹脂フィルムを凹凸に発泡させる技術が考案された(例えば、特許文献1〜3参照)。しかし、このようにして得られる材料は、発泡層の厚みが薄く、断熱性が不十分であった。
【0004】
また、発泡層の厚い発泡体を得る手段として、発泡面の少なくとも一部を真空吸引して発泡セルの発泡層を厚くする手法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、容器胴部材及び底板部材からなり、容器胴部材及び底板部材の原紙の内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあると共に容器胴部材の原紙の外壁面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあり、この低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムを加熱処理して発泡してなる断熱紙容器が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
しかし、真空吸引により発泡層を厚くする手法は、真空吸引装置が必要であること、製造工程に真空吸引を施す工程を設ける必要があることからコストパフォーマンスに劣るといった問題があった。また、内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂を有する断熱紙容器では、発泡時に、発泡層の表面に大きな凸部が発生したり、発泡セルの結合や破泡、冷却時における発泡セルの収縮などの理由により表面に大きな凹部が生じるなどの理由により、表面外観が悪化しやすいといった問題があった。
【0006】
また、発泡外観の良好な発泡層を得る手法として、底板部材と胴部材とからなる紙製容器において、前記胴部材の少なくとも一方の壁面に、紙の表面側から低融点の熱可塑性樹脂の発泡内層と該熱可塑性樹脂の融点よりも例えば5℃より高い融点を有する熱可塑性樹脂の非発泡層外層からなる2層構造断熱皮膜が被着されている断熱容器が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0007】
しかし、上記の断熱容器では、発泡層の厚みが薄く、断熱性が不十分となるといった問題点があった。また、発泡性を向上させようとして、MFRを高くすると、発泡層の外観が不良となることや、押出ラミネート加工時の加工性が不安定となる等の問題があった。
【0008】
また、発泡外観の平滑性が良好な発泡層を得る手法として、上記の断熱容器の発泡層が少なくとも2層であり、(a)層/(b)層/基材層を含む積層体であって、(a)層が(b)層よりも格段に高い融点を有する熱可塑性樹脂からなる断熱容器が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0009】
しかし、上記の断熱容器では、高い融点を有する樹脂を最表面層に用いていることから、(A)層が発泡時に伸縮せず発泡浮きが発生するといった問題点や賦形時にヒートシール性が低下するなどの問題点があった。
【0010】
したがって、熱可塑性樹脂からなり、発泡層の厚みが厚く、断熱性に優れる上に、表面外観が優れ、加工性が良好な発泡加工紙及びこれを用いた断熱容器を、経済的安定的に製造できる発泡性積層体が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、紙を主成分とする基材層の一方の面に、少なくとも、ポリエチレン系樹脂Aからなる発泡性樹脂層(A)を積層し、前記基材層の他方の面に、ポリエチレン系樹脂Bからなる非発泡樹脂層(B)を積層してなる発泡性積層体であって、特定の後処理を行なうことにより、発泡性樹脂層(A)の表面が改質されたものであることを特徴とする発泡性積層体およびその製造方法に関する。
また、本発明は、上記発泡性積層体を用いてなる発泡加工紙及び断熱容器に関する。
以下、発泡性積層体の後処理法、層構成及び原料樹脂などについて、詳細を説明する。
【0028】
1.発泡性積層体
本発明は、紙を主成分とする基材層の一方の面に、少なくとも、ポリエチレン系樹脂Aからなる発泡性樹脂層(A)を積層し、前記基材層の他方の面に、ポリエチレン系樹脂Bからなる非発泡樹脂層(B)を積層してなる発泡性積層体であって、下記の(a)および/または(b)の後処理を行なうことにより、発泡性樹脂層(A)の表面が改質されたものである発泡性積層体である。
(a)発泡性樹脂層(A)の表面に対し、20W・min/m
2以上のコロナ処理を行う。
(b)前記発泡性積層体を、40℃以上の環境下に1時間以上放置する、エージング処理を行う。
【0029】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討した結果、発泡性樹脂層にコロナ処理、エージング処理を行なうことにより、発泡性樹脂層が表面に形成されている発泡性積層体の表面平滑性が向上することを見出した。即ち、例えば、前記公知文献では、発泡性樹脂層の上に積層する表面層に用いるポリエチレン樹脂(a)として、溶融温度が発泡性樹脂層に用いるポリエチレン系樹脂(b)より格段に高い樹脂を用いていたが、本発明では、ポリエチレン系樹脂Aからなる発泡性樹脂層(A)にコロナ処理および/またはエージング処理を行なうことにより、その後の発泡によって表面平滑性と断熱性に優れた発泡加工紙が得られる、発泡積層体となることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0030】
すなわち、本発明では、ポリエチレン系樹脂Aを含有する発泡性樹脂層(A)にコロナ処理および/またはエージング処理行なうことによって、発泡性樹脂層(A)の表面の改質、つまり、該表面の架橋を促し、該表面の粘度を向上させることにより、ポリエチレン系樹脂Aが溶融し発泡する際にセル成長が該表面に抑制されるため、発泡層の表面平滑性を向上させることができると考えられる。
【0031】
なお、本発明でいう「発泡性」及び「非発泡」とは、本発明で得られる積層体を用いて断熱容器等の成形体を形成した後に、加熱処理工程(約110℃〜約200℃)に供した際に、紙基材に含まれる水分等を利用して主に発泡する層を「発泡性」、主に発泡しない層を「非発泡」というものとする。樹脂層が発泡するかしないかは、後の加熱処理温度と樹脂層に用いられている樹脂の融点の高低により決まる。
【0032】
(1)発泡性樹脂層(A)
本発明の発泡性樹脂層(A)は、少なくともポリエチレン系樹脂Aを含有することが必要である。
本発明に使用されるポリエチレン系樹脂Aは、JIS K6922−2:2005に準拠して測定されたメルトマスフローレイト(MFRa)が、1〜50g/10分であることが好ましい。特に、5〜20g/10分の範囲であると、発泡性に優れるため好ましい。
【0033】
また、本発明に使用されるポリエチレン系樹脂Aは、JIS K6922−2:2005に準拠して測定された溶融温度が、80〜125℃であることが好ましい。特に、100〜110℃の範囲であると、ヒートシール性が良好になるため好ましい。
【0034】
本発明に使用されるポリエチレン系樹脂Aの密度は、発泡性に優れるため、870〜935kg/m
3の範囲であることが好ましい。より好ましくは890〜930kg/m
3の範囲である。
【0035】
上記の要件を満たす本発明のポリエチレン系樹脂Aとしては、高圧法低密度ポリエチレンA、エチレン・α−オレフィン共重合体A、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体などが挙げられる。特に高圧法低密度ポリエチレンを(A)層に用いた場合、発泡成長を抑制せず、発泡倍率を向上させることができ、表面平滑性に優れるため好ましい。
【0036】
エチレン・α−オレフィン共重合体Aに用いるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。
【0037】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体Aを得るための方法は特に限定するものではなく、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができる。
【0038】
本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレンAは、従来公知の高圧法ラジカル重合法により得ることができる。
【0039】
また、本発明を構成するポリエチレン系樹脂Aには、他のポリオレフィンを配合してもよい。このとき、発泡性に優れるため、混合比率は高圧法低密度ポリエチレンAが50〜99重量%、他のポリオレフィンが1〜50重量%であることが好ましい。
【0040】
高圧法低密度ポリエチレンAに混合されるポリオレフィンとしては、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテンなどが挙げられ、発泡性に優れることから、密度が850kg/m
3以上920kg/m
3未満のエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0041】
本発明のポリエチレン系樹脂Aには、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0042】
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂Aが二種以上のポリオレフィンからなる場合、その混合は、高圧法低密度ポリエチレンAのペレットとポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリエチレン系樹脂の融点〜200℃程度が好ましい。
【0043】
ポリエチレン系樹脂Aからなる本発明の発泡性樹脂層(A)の厚みは、良好な発泡厚みと発泡外観を得るために、加熱発泡前の積層時厚みとして30μm以上であることが好ましい。30μm未満では、発泡外観に劣るため好ましくない。
【0044】
本発明の発泡性樹脂層(A)は、基材上に形成された後、下記の(a)および/または(b)の後処理を行なうことにより、発泡性樹脂層(A)の表面が改質されたものであることが必要である。
(a)発泡性樹脂層(A)の表面に対し、20W・min/m
2以上のコロナ処理を行う。
(b)前記発泡性積層体を、40℃以上の環境下に1時間以上放置する、エージング処理を行う。
【0045】
後処理(a)において、発泡性樹脂層(A)の表面に対し行われるコロナ処理は、20W・min/m
2以上の放電量範囲で処理することが必要である。好ましくは30W・min/m
2以上、より好ましくは40W・min/m
2以上である。この処理を行なうことにより、本発明の積層体を後の加熱工程に供して発泡性樹脂層(A)を発泡させた際の、発泡性樹脂層(A)の発泡表面平滑性が著しく向上する。なお、一般に印刷に供する積層体において、印刷適性を向上させるために印刷前の積層体表面にコロナ処理を行なうことがあるが、本発明のコロナ処理は、こうした通常の印刷前コロナ処理よりも強い範囲でのコロナ処理である。上限は、強すぎても表面の特性向上変化が低下するため、80W・min/m
2以下、好ましくは75W・min/m
2以下、より好ましくは70W・min/m
2以下である。こうしたコロナ処理により、JIS K6768による濡れ張力が、処理前の値より30%程度向上する。
発泡性樹脂層(A)にコロナ処理を行う方法としては、フィルム表面にコロナ処理を行う通常の方法を採用することができる。具体的には絶縁された電極と誘電体ロールとの間に、発泡性樹脂層(A)を積層したフィルムを通し、発泡性樹脂層(A)面側から高周波高電圧を印加してコロナ放電を発生させるというものが採用できる。
【0046】
また、後処理(b)において、発泡性樹脂層(A)の表面の改質のために行われるエージング処理は、発泡性積層体全体を、40℃以上の環境下に1時間以上放置することが必要である。この処理を行なうことにより、樹脂表面の改質を促進する効果があり、本発明の積層体を後の加熱工程に供して発泡性樹脂層(A)を発泡させた際の、発泡性樹脂層(A)の発泡表面平滑性が著しく向上する。
温度の上限は、最低でも発泡層樹脂が発泡しない温度以下に制御する必要があり、好ましくは40〜100℃、より好ましくは40〜85℃、さらに好ましくは45〜80℃である。放置時間は、1時間以上、好ましくは6時間以上、更に好ましくは1日以上であるが、設定温度との関係により適宜制御することができ、例えば40℃であれば8時間以上、80℃であれば2時間以上とすると好ましい。
また放置時間の上限は、放置時間が長いほど改質効果は向上するため特に制限はないが、長期間放置しても向上の変化差が小さくなることから、適宜3ヶ月以内、好ましくは1ヶ月以内、更に好ましくは2週間以内として設定することができる。
エージング処理の雰囲気としては、大気中でよいが、その他の雰囲気でもよい。また通常の雰囲気下であっても、加湿雰囲気下であってもよく、加湿雰囲気下の場合の加湿度としては、相対湿度が55%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上となる範囲が好ましい。加湿雰囲気下で、積層体の紙基材に含まれる水分量が約5〜8%程度に保持したとき、後の加熱発泡工程に供した際に、紙基材に含まれる水分の作用により発泡性樹脂層(A)の発泡が良好に行なわれる。
【0047】
また、エージング処理は、段階的に行ってもよい。エージング処理を段階的に行う場合は、少なくとも2段階で行うことができ、例えば、初期エージングと後期加湿処理との2段階で行ってもよい。この場合、初期エージングとして、前段で40℃以上の環境下に1時間以上放置した後、後期加湿処理として、後段で加湿雰囲気に放置することができる。これにより、初期エージングの工程を簡素化し、かつ紙基材に含まれる水分を保つ効果も担保できる。この場合、初期エージングを通常の大気雰囲気中で行い、その後に、後期加湿処理を加湿雰囲気下で行なうことができる。
後期加湿処理の加湿度としては、空気中水分率が55%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上となる範囲が好ましい。温度は特に限定されないが、水蒸気雰囲気下となるため、25〜100℃の範囲の加温雰囲気下で行なうと好ましい。この後期加湿処理を行なうことにより、初期エージング処理中に失われた、積層体の紙基材に含まれる水分量を元に戻すことが可能となり、後の加熱発泡工程に供した際に、紙基材に含まれる水分の作用により発泡性樹脂層(A)の発泡が良好に行なわれる。
【0048】
また、コロナ処理とエージング処理は、それぞれ単独でもよいが、併用して行うこともできる。併用する場合は、順序としては、どちらを先に行ってもよいが、コロナ処理を先に行なった方が、コロナ処理による表面の架橋をエージング処理により、より促進する相乗効果があるため好ましい。
上記コロナ処理および/またはエージング処理により、ポリエチレン系樹脂Aを含有する発泡性樹脂層(A)の表面が改質され、該表面の架橋が促され、該表面の粘度が向上することにより、ポリエチレン系樹脂Aが溶融し発泡する際にセル成長が該表面に抑制されるため、発泡層の表面平滑性を向上させることができると考えられる。
また、上記コロナ処理とエージング処理とを併用することにより、更にその効果が促進されると考えられる。
【0049】
(2)基材層
本発明の積層体を構成する基材層は、紙を主成分とする基材層であることが必要である。本発明において紙を主体とする基材層とは、紙そのもの、及び紙に適宜加工したものも含む。
本発明においては、本発明の積層体を後の加熱工程に供することによって、主に紙に含まれる水分が加熱によって水蒸気となり、その作用によって発泡性樹脂層(A)を発泡させるものである。
【0050】
基材層に含まれる水分は、加熱により発泡性樹脂層(A)を発泡させるものであり、その水分量は5〜8wt%が発泡倍率を向上させることができ、積層体外観にも優れるため好ましい。
このような本発明の積層体を構成する基材層として、上質紙、カップ原紙、クラフト紙などの天然パルプを主成分とする紙(以下、単に「紙」と略す。)、合成繊維或は合成樹脂フィルムを擬紙化した所謂合成紙、発泡シート、ゼオライト、炭酸カルシウムなどの多孔性無機物からなるシートなどを例示することができ、基材中に含まれる水分量の調整が比較的容易なことから紙が好ましい。
基材に紙を使用する場合、水分量の調節が容易なことから、坪量は150〜500g/m
2、より好ましくは200〜400g/m
2であることが好ましい。
【0051】
(3)非発泡樹脂層(B)
本発明の積層体を構成する基材の他方の基材壁面には、ポリエチレン系樹脂Bからなる非発泡樹脂層(B)を形成、積層することが必要である。該非発泡樹脂層(B)の形成、積層は、従来公知の技術により、行うことができる。
このポリエチレン系樹脂Bは、基材の他方面に設けた発泡性樹脂層(A)を構成するポリエチレン系樹脂Aよりも、高密度で高い溶融温度を有する樹脂であり、積層体を後の加熱工程に供した際にも、主として発泡しない樹脂である。このポリエチレン系樹脂Bからなる非発泡樹脂層(B)を、基材の(A)層を設けた面とは反対側に設けることにより、加熱時に紙基材から発生した水蒸気が(B)層側ではなく(A)層側に作用することとなり、発泡性樹脂層(A)の発泡性が向上する。
ポリエチレン系樹脂Bには、高圧法低密度ポリエチレンB、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを挙げることができる。
【0052】
ポリエチレン系樹脂BのMFRは、1〜50g/10分の範囲であると、加工性に優れるため好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂Bの密度は、加熱時に溶融しない必要があるため、920〜970kg/m
3であることが好ましい。
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂Bには、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0053】
さらに、ポリエチレン系樹脂Bには、他のポリオレフィンを混合してもかまわない。
高圧法低密度ポリエチレンBに混合されるポリオレフィンとしては、エチレン・α−オレフィン共重合体B、ポリプロピレン、ポリブテンなどが挙げられ、加工性、非発泡からMFRが1〜50/10分の範囲、密度が920〜970kg/m
3であるエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0054】
さらに、このようなエチレン・α−オレフィン共重合体Bを得るための方法は特に限定するものではなく、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができ、このような共重合体は、市販品の中から便宜選択することができる。
【0055】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体Bに用いるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。
【0056】
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂Bに他のポリオレフィンを混合する時は、ポリエチレン系樹脂Bである例えば高圧法低密度ポリエチレンBのペレットと他のポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリエチレン系樹脂Bの融点〜300℃程度が好ましい。
【0057】
(4)その他の層
本発明の発泡性積層体においては、本発明の効果を損なわない範囲において、前記積層体の層間または最外層の一部または全部に、他の層があっても良い。すなわち、基材層と発泡性樹脂層(A)、または、さらに非発泡樹脂層(B)を設けた積層体の内及び/又は外層、あるいは該層間に一層または複数層のフィルム層、装飾層、補強層、接着剤層、バリア層等を設けてもよい。
上記装飾層としては、印刷された紙、フィルム、不織布、織布等が挙げられる。
また補強層とは、機械的強度を持たせるなどの役割を果たすものである。樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等でよい。
接着剤層を形成する樹脂としては、エチレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸等をグラフトした変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等ホットメルト、通常の接着剤等が挙げられる。
【0058】
また、バリア層を形成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着等の金属蒸着フィルム、金属箔等が挙げられる。
また、必要に応じて各層のいずれかに印刷等を施しても良い。印刷は、部分的または全面的に着色インキで印刷してもよい。また、必要に応じて発泡性インキを使用して、部分的または全面的に発泡部位を設けてもよい。印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。
【0059】
2.発泡性積層体の製造方法
本発明は、紙を主成分とする基材層の一方の面に、少なくとも、ポリエチレン系樹脂Aからなる発泡性樹脂層(A)を積層する発泡性樹脂層積層工程及び下記の(a)および/または(b)の後処理を行なう後処理工程からなることを特徴とする発泡性積層体の製造方法である。
(a)発泡性樹脂層(A)の表面に対し、20W・min/m
2以上のコロナ処理を行う。
(b)前記発泡性積層体を、40℃以上の環境下に1時間以上放置する、エージング処理を行う。
【0060】
本発明の発泡性積層体を得る手法としては、ポリエチレン系樹脂A及びポリエチレン系樹脂Bを基材に押出ラミネート加工し得る方法、シングルラミネート加工法やタンデムラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工法を例示することができる。押出ラミネート法における樹脂の温度は260〜350℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10〜50℃の範囲が好ましい。
【0061】
また、押出ラミネート加工において、ポリエチレン系樹脂Aを溶融状態で押出し層とした直後に、該層の基材接着面を含酸素気体又は含オゾン気体に曝し、基材と貼り合わせる手法を用いると、基材層との接着性に優れることから好ましい。含オゾン気体によりポリエチレン系樹脂Aと基材との接着性を向上させる場合は、オゾンガスの処理量として、1.5Nm
3/hrの流量、オゾン濃度が10g/Nm
3以上のオゾン雰囲気下で成形することが好ましい。
【0062】
上記1.の(1)に記載したとおり、基材層の一方の面に、少なくとも、ポリエチレン系樹脂Aからなる発泡性樹脂層(A)を積層し、前記基材層の他方の面に、ポリエチレン系樹脂Bからなる非発泡樹脂層(B)を積層した発泡性積層体を、(a)発泡性樹脂層(A)の表面に対し、20W・min/m
2以上のコロナ処理を行う、および/または、(b)前記発泡性積層体を、40℃以上の環境下に1時間以上放置する、エージング処理を行うことにより、本発明の発泡性積層体が製造される。
また、前記エージング処理は、少なくとも2段階で行われ、前段で40℃以上の環境下に1時間以上放置した後、後段で加湿雰囲気に放置するものであることが好ましい。
その他の層は、必要に応じて、上記後処理(a)および/または(b)の前に形成されても、後処理の後に形成されてもかまわない。
【0063】
3.発泡加工紙および断熱容器
本発明の発泡加工紙は、上記本発明の発泡性積層体を加熱し、主に紙基材に含有する水分を用いて発泡性樹脂層を発泡させて得られることを特徴とする。
本発明の発泡加工紙は、発泡層が厚く、優れた断熱性を示すものとなることから、発泡性樹脂層(A)を発泡させて形成された発泡セルの高さが、500μm以上であることが好ましい。
また、本発明の断熱容器は、上記本発明の発泡性積層体を用いて、発泡性樹脂層(A)が外側となるように容器形状を成形した後、加熱して発泡性樹脂層を発泡させて得られることを特徴とする。
【0064】
加熱発泡により本発明の発泡性積層体を用いて発泡加工紙または断熱容器を得る手法における加熱方法としては、熱風、電熱、電子線の他、本発明の発泡性積層体を容器状に成形し、高温の物体を内填して充填物の熱を利用するなど、任意の手段を使用できる。加熱では、オーブン内で回分式に行う手法、コンベアなどにより連続的に行う手法などにより行うことができる。
加熱温度、加熱時間は、使用する基材、および熱可塑性樹脂の種類に依存して変化するが、一般的に加熱温度は110〜130℃であり、加熱時間は10秒〜10分間である。
【0065】
本発明の断熱容器の製造方法の一例として、カップ状断熱容器の製造方法を以下に挙げる。まず、本発明の発泡性積層体を、ロール巻き原反もしくは連続的に繰り出して、該発泡性積層体から胴部材用ブランクと底板部材用ブランクを打ち抜きし、常用のカップ成型機で胴部材と底板部材を接合させてカップ状等に成型した後、回分式あるいは転送するベルトコンベヤーに輸送して熱風、マイクロ波、高周波、赤外線、遠赤外線等の照射手段を具備する加熱炉、オーブントンネル等で加熱発泡して断熱容器が成形される。
【0066】
本発明の発泡性積層体、発泡加工紙及び断熱容器は、コーヒー、スープなどの高温飲料用の紙容器、インスタントラーメンなどの即席食品用の容器等、断熱性を求められる容器に好適に使用される。特に、本発明の発泡性積層体、発泡加工紙及び断熱容器は、発泡後の発泡加工紙及び断熱容器表面の平滑性が優れ、発泡層が厚く、優れた断熱性を示すと共に、発泡外観及び賦形時のヒートシール性が良好であるため、表面の平滑性が求められる用途に好適に使用される。
また、本発明の発泡加工紙は、断熱容器の断熱・保温材料としてはもちろんのこと、緩衝材料、遮音材料、発泡紙等としても用いられ、スリーブ材、紙皿、トレー、滑り止め材、果物の包装材、発泡紙等の農業用、産業用、生活用資材等として活用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
1.測定方法
ポリエチレン系樹脂の諸物性は、以下に示す方法により測定した。
(1)メルトマスフローレイト(MFR)
JIS K6922−2に準拠して、190℃、2.16kgにて測定した。
(2)密度
試験温度23℃で、JIS K7112に準拠して、密度勾配管法で測定した。
(3)融点(溶融温度)
JIS K7121に準拠し、測定した。
ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打抜いてサンプルとした。
測定は、下記の条件で、第一昇温、降温、第二昇温の手順で実施し、第二昇温の最高ピーク高さの温度を融点(溶融温度)とした。
(a)装置:セイコーインスツルメンツ製DSC7020
(b)昇降温条件:
第一昇温:30℃から200℃までを10℃/分
降温:200℃から20℃までを10℃/分
第二昇温:20℃から200℃までを10℃/分
(c)温度保持時間:第一昇温後5分間、降温後5分
(d)サンプル量:5mg
(e)リファレンス:アルミニウム
(f)雰囲気:N
2 50mL/min
(4)基材の水分量
実施例により得られた発泡前の積層体を10cm×10cmに切り出し、50℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH−102型 エスペック製)に1週間保管し、重量変化が見られなくなったサンプルから重量減少量を計算し、水分量を求めた。
(5)発泡層の厚み
実施例により得られた積層体を10cm×10cmに切り出し、115℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH−102型 エスペック製)中で360秒間静置した後、取り出して空気中で室温まで冷却した。発泡後の積層体をサンプル取りし、発泡後の積層体の断面をハイブリッドデジタルマイクロウオッチャー(スカラ社製、HDM−2100)により断面写真を撮影した。断面写真から発泡層の厚みを測定し、10箇所で測定した平均の発泡層((A)層)の厚みを発泡層厚みとした。
(6)発泡表面の状態(表面平滑性)
実施例により得られた積層体を10cm×10cmに切り出し、115℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH−102型 エスペック製)中で360秒間静置した後、取り出して空気中で室温まで冷却した。得られた発泡体の表面の平滑性を目視で測定した。
目視での表面平滑性は、下記の評価基準で行った。
目視での表面平滑性評価 平滑性良好:○、やや平滑:△、表面凹凸多:×
(7)グロス(光沢度)
実施例により得られた積層体を10cm×10cmに切り出し、115℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH−102型 エスペック製)中で360秒間静置した後、取り出して空気中で室温まで冷却した。得られた発泡体の表面の光沢度をデジタル変角光沢計(UGV−4D、スガ試験機社製、受光角60°、反射角60°、標準91.2°)で測定した。
【0069】
2.実施例および比較例
(比較例1)
ポリエチレン系樹脂Aとして、MFRが14g/10分、密度が918kg/m
3、溶融温度が106℃である高圧低密度ポリエチレンを使用した。また上記樹脂層に対し、紙の基材層の逆側には非発泡のポリエチレン系樹脂Bとして、MFRが6g/10分、密度が942kg/m
3、溶融温度が130℃である中密度ポリエチレンを使用した。
【0070】
まず、ポリエチレン系樹脂Bを直径90mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーター(住友重機械モダン株式会社製)へ供給し、320℃の温度でTダイより押し出し、水分量が約5.6%、坪量320g/m
2である紙基材上に引き取り速度が100m/分、エアギャップ長さが120mmで40μmの厚さになるよう押出ラミネート成形を行った。
さらに、ポリエチレン系樹脂Aを90mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン株式会社製)へと供給し、320℃の温度、50m/分の引き取り速度、120mmのエアギャップ長さで、厚みが70μmとなるように上記積層体のポリエチレン系樹脂Bの樹脂層に対する基材層の裏側に押出ラミネートを行い、ポリエチレン系樹脂A(高圧法低密度ポリエチレン)、紙基材、ポリエチレン系樹脂Bの順に積層されてなる発泡性積層体を得た。
この発泡性積層体を室温で8日間保管した後に、115℃にて6分間加熱して発泡させ、発泡層の厚み、発泡表面の状態を評価した。発泡性評価の結果を表1に示す。表面平滑性に劣るが、発泡層高さは良好であった。
また、この発泡層の表面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(キーエンス社製、VK−9500)を用いて、倍率10倍にて撮影した写真を
図2に示す。
【0071】
(
参考例1)
比較例1と同様の手法により得た高圧法低密度ポリエチレンからなるポリエチレン系樹脂A、紙基材、ポリエチレン系樹脂Bの順に積層されてなる発泡性積層体の、ポリエチレン系樹脂A側の表面に後処理として、500mm幅のコロナ処理バーを用いて、加工速度50m/minの速度で1.5kWの出力でコロナ処理を行った。すなわち、60W・min/m
2の条件でコロナ処理を行なった。その後この発泡性積層体を室温で8日間保管した後に、115℃にて6分間加熱して発泡させ、発泡層の厚み、発泡表面の状態を評価した。結果を表1に示す。表面平滑性、発泡層高さともに良好であった。
【0072】
(比較例2)
比較例1と同様の手法により得た発泡性積層体を室温にて3ヶ月間保管した後に、加熱して発泡させ、発泡層の厚み、発泡表面の状態を評価した。結果を表1に示す。発泡層高さは良好であったが表面平滑性に劣る結果であった。
【0073】
(
参考例2)
参考例1と同様の手法によりコロナ処理を行った発泡性積層体を室温で3ヶ月間保管し、その後発泡性積層体を
参考例1と同様に加熱して発泡させ、発泡層の厚み、発泡表面の状態を評価した。結果を表1に示す。表面平滑性、発泡層高さともに良好であった。
【0074】
(
実施例1)
比較例1と同様の手法により得たコロナ処理を行っていない発泡性積層体をエージングオーブンにて50℃、6日間エージング処理を行なった後、恒温恒湿オーブンにて40℃、90%で1日間加湿した後に、
参考例1と同様に115℃にて6分間加熱して発泡させ、発泡層の厚み、発泡表面の状態を評価した。結果を表1に示す。発泡層高さは低めではあるが、表面平滑性は良好であった。
【0075】
(
実施例2)
参考例1と同様の手法により、コロナ処理を行った発泡性積層体をエージングオーブンにて50℃、6日間エージング処理を行なった後、恒温恒湿オーブンにて40℃、90%で1日間加湿した後に、
参考例1と同様に115℃にて6分間加熱して発泡させ、発泡層の厚み、発泡表面の状態を評価した。結果を表1に示す。発泡層高さは低めではあるが、表面平滑性は良好であった。
また、この発泡層の表面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(キーエンス社製、VK−9500)を用いて、倍率10倍にて撮影した写真を
図1に示す。
【0076】
【0077】
3.評価
以上のとおり、表1に示す結果から、
参考例1〜2、実施例1〜2と比較例1または2とを対比すると、本発明の発泡性積層体の特定事項である「(a)発泡性樹脂層(A)の表面に対し、20W・min/m
2以上のコロナ処理を行う、および/または、(b)前記発泡性積層体を、40℃以上の環境下に1時間以上放置する、エージング処理を行う」との要件を満たさない方法による比較例1または2に示す発泡性積層体は、目視および超深度カラー3D形状測定顕微鏡による表面平滑性、および光沢度が
参考例1〜2、実施例1〜2の発泡性積層体に対して見劣りしている。
これらの比較例に比べて、本発明による発泡性積層体は、
参考例1〜2、実施例1〜2に示すとおり、何れも発泡層総厚みが十分な上に、平滑性および光沢度が良好であることが確認された。
そのため、本発明の発泡性積層体、発泡加工紙及び断熱容器は、発泡後の発泡加工紙表面の平滑性が優れ、発泡層が厚く、優れた断熱性を示すと共に、発泡外観及び賦形時のヒートシール性が良好であり、経済性に優れた発泡積層体等であることが確認され、断熱性と同時に、表面平滑性が求められる容器に特に好適に使用することができるものである。