(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二次巻線は、前記巻芯部の前記一端側から前記他端側に向かって順に割り付けられた第1及び第2のブロックを含み、前記第2のブロックの幅は前記第1のブロックのそれよりも狭い、請求項3に記載の昇圧トランス。
前記二次巻線は、前記巻芯部の一端側において多層の巻線の下り勾配の段差を形成した後、前記段差に沿って巻き上りと巻き下りを繰り返しながら、前記巻芯部の前記一端側から前記他端側に向かって徐々に巻き進むバンク巻き構造である、請求項1又は2に記載の昇圧トランス。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラのストロボを充電するストロボ充電回路には昇圧トランスが用いられている。昇圧トランスは、共通のコアに巻回された一次巻線及び二次巻線からなり、出力側の二次巻線の巻数が入力側の一次巻線よりも大きいことにより、入力電圧よりも大きな出力電圧を得ることができる。したがって、キセノンランプ等のストロボ発光部に対して数百ボルトの高電圧を供給することができる。
【0003】
図9は、ストロボ充電回路の構成の一例を示す回路図である。
【0004】
図9に示すように、ストロボ充電回路10は、電池等の直流電源21、一次巻線及び二次巻線を有する昇圧トランス(フライバックトランス)T
1、昇圧トランスT
1の一次側に流れる電流を制御するFET(Field Effect Transistor)22、FET22のゲート端子とグランドとの間に接続されたゲート抵抗R
1、FET22のゲート端子にPWM信号を供給するコントローラIC23、昇圧トランスT
1の二次側の出力を整流する整流ダイオードD
1、整流ダイオードD
1を介して二次巻線に接続された充電用のメインコンデンサC
1、メインコンデンサC
1の充電レベルを検出するための分圧抵抗R
21,R
22から構成される。
【0005】
充電開始時には、コントローラIC23がPWM信号を出力し、これによりFET22がスイッチング制御されて所定間隔でオンオフ動作を繰り返す。この場合、PWM信号がハイレベルのときにFET22がオンになり、FET22のオン抵抗と昇圧トランスT
1の一次巻線の直流抵抗に応じた電流が流れ出す。
【0006】
そして、PWM信号がローレベルになると、FET22がオフになり、一次巻線に流れていた電流に応じて二次巻線に電流(フライバックパルス)が発生し、二次巻線の端子間には巻線比に応じた高電圧が誘起される。このフライバックパルスは整流ダイオードD
1で整流されて、メインコンデンサC
1に与えられる。これにより、メインコンデンサC
1に電荷がチャージされ、充電電圧レベルが上昇する。
【0007】
一方、メインコンデンサC
1の充電電圧は2つの抵抗R
21,R
22によって分圧され、分圧信号はコントローラIC23にフィードバックされる。コントローラIC23はこの分圧信号をA/D変換し、分圧信号からメインコンデンサC
1の充電電圧レベルを監視し、所定の電圧レベルに達した時点でPWM信号の出力を停止して充電動作を完了する。
【0008】
図10は、従来の昇圧トランスの巻線構造を示す模式図である。
【0009】
図10に示すように、従来の昇圧トランス20は一次巻線16及び二次巻線17を有し、これらは共通のコア15に巻回されている。ここで、一次巻線16には二次巻線17よりも大きな電流が流れることから、その直径は二次巻線17のそれよりも太い。また、二次巻線17の巻数は一次巻線16よりも多く、巻線比は例えば1:10に設定される。そのため、コア15にまず二次巻線17を多層整列巻きし、二次巻線17の外側に一次巻線16を単層整列巻きする方法が好ましく採用されている。この方法によれば、多層の二次巻線17の外周面が比較的平坦となるので、その上に一次巻線16を容易に巻回することができ、一次巻線16の巻崩れを防止することができる。
【0010】
特許文献1には、一次巻線と二次巻線とを重ねて巻回した昇圧トランスにおいて、一次/二次巻線間に絶縁材からなる複数の壁状体を介在させた構成が記載されている。二次巻線の各層間に絶縁層を介在させると、二次巻線に浮遊容量が発生し、高周波高電圧の立ち上がり時間を鈍らせてしまうという問題が生じる。しかし、この構成によれば、壁状体間に気体層が設けられることから、一次巻線と二次巻線との間の隙間を狭くすることができ、2次電圧の立ち上がり特性を改善させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図10に示した従来の昇圧トランス20では、一次巻線16の最終ターンの巻き崩れが問題となる。上記のように、昇圧トランス20の二次巻線17はその巻数が多いことから、コアの巻回範囲内で複数回(同図では2回)折り返して多層の巻線構造となっており、多層の二次巻線17の上に一次巻線16が単層整列巻きされている。ここで図示のように、一次巻線16の最終ターン16xの巻き崩れが起こり、最終ターン16xが二次巻線17の最初の折り返し点U
0に接触又は近接すると、この折り返し点U
0が巻き始め側の高電圧部分に近いので、一次巻線16の低電圧部分と二次巻線17の高電圧部分とが接触または近接することになる。つまり、一次巻線16と二次巻線17との間の大きな電位差によって、コロナ放電や絶縁破壊を誘発するおそれがある。
【0013】
また、一次巻線16の最終ターン16xが巻き崩れて二次巻線17の下層の巻線に接触又は近接すると、二次巻線17のフライバックパルスにリンギングノイズ(波形振動)が発生する現象が見られる。リンギングノイズは、コントローラIC23の誤動作の原因となる。つまり、コントローラIC23はフライバックパルスの分圧を取り込んで充電完了タイミングを監視するので、リンギングノイズの影響を受けてそのタイミングを見誤り、通常よりも早く、あるいは通常よりも遅く充電を完了させるおそれがある。
【0014】
メインコンデンサC
1の充電時間がある程度かかることを見込んで、PWM信号のパルスの立ち上がりから一定時間(例えば200ns)を経過してから充電完了タイミングを監視させることも可能である。この方法は、リンギングノイズの振幅変動が上記一定時間(200ns)以内に収束する場合には効果的であり、リンギングノイズの影響を回避できる。しかし、一定時間経過後もリンギングノイズが残る場合には、コントローラIC23による充電完了制御が正しく行われないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明による昇圧トランスは、巻芯部を有するコアと、前記巻芯部に巻回された一次巻線と、前記一次巻線とともに前記巻芯部に巻回され、前記一次巻線よりも直径が細くかつ巻数が多い二次巻線とを備え、前記二次巻線は、前記巻芯部上に多層巻きされ、前記一次巻線は、前記巻芯部に巻回された前記二次巻線上に重ねて単層整列巻きされ、前記二次巻線は、前記巻芯部の一端側から1層目を巻き始め、前記一端側から他端側に向かって巻き進める途中に位置する第1の折り返し点で折り返して多層に巻回された第1の巻線部と、前記第1巻線部よりも前記他端側に位置する第2の折り返し点で折り返して多層に巻回され、前記第2の折り返し点の上方で巻き終わる第2の巻線部を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、一次巻線の端末部が巻き崩れて、二次巻線の第2の折り返し点における最上層よりも下層の巻線と接触又は近接したとしても、絶縁破壊等の問題がなく、またトランスの2次側の大きなリンギングノイズが発生することもない。したがって、信頼性の高い昇圧トランスを提供することができる。
【0017】
前記コアは、前記巻芯部の両端にそれぞれ設けられた一対の鍔部をさらに含むドラムコアであり、前記一対の鍔部の内側の側面と前記一次巻線の端部との間に空きスペースが設けられており、前記空きスペースの幅は前記一次巻線の線径よりも広いことが好ましい。このような構成の場合、鍔部に邪魔されることなく一次巻線を容易に巻回することができる。一方、この構成では鍔部によって巻線の巻崩れが防止されないが、上記のように、1次巻き崩れたとしても上記問題が発生しないので、本発明による効果が大きいものとなる。
【0018】
本発明において、前記二次巻線は、前記巻芯部上で複数のブロックに分割され、各ブロックは、前記一端側から他端側に向かって1層目が巻回され、当該ブロックの終端位置で折り返して多層に巻回され、当該ブロックの最上層の巻き終わり位置から次のブロックの1層目の巻き始め位置につながることが好ましい。この構成によれば、二次巻線の第2の折り返し点における最上層よりも下層の巻線と接触又は近接したとしても、絶縁破壊等の問題がなく、またトランスの2次側の大きなリンギングノイズが発生することもない。したがって、信頼性の高い昇圧トランスを提供することができる。
【0019】
本発明において、前記複数のブロックの数が3つ以上であることが好ましい。ブロック数を多くするほど、2次巻線が1次巻線と接触又は近接する最上層よりも下層の部分の電位を低くすることができる。したがって、より信頼性の高い昇圧トランスを実現できる。
【0020】
前記二次巻線は、前記巻芯部の前記一端側から前記他端側に向かって順に割り付けられた第1及び第2のブロックを含み、前記第2のブロックの幅は前記第1のブロックのそれよりも狭いことが好ましい。この構成においても、2次巻線が1次巻線と接触又は近接する最上層よりも下層の部分の電位を低くすることができる。したがって、より信頼性の高い昇圧トランスを実現できる。
【0021】
前記二次巻線は、前記巻芯部の一端側において多層の巻線の下り勾配の段差を形成した後、前記段差に沿って巻き上りと巻き下りを繰り返しながら、前記巻芯部の前記一端側から前記他端側に向かって徐々に巻き進むバンク巻き構造であることが好ましい。この構成においても、2次巻線が1次巻線と接触又は近接する最上層よりも下層の部分の電位を十分に低くすることができる。したがって、より信頼性の高い昇圧トランスを実現できる。
【0022】
本発明において、前記二次巻線は3層構造であることが好ましい。この構成によれば、巻芯部の一端側から巻き始め、他端側で巻き終わることができ、さらに昇圧トランスとしての所望の巻線比を確保することがきる。また、3層の巻線構造の場合には、一次巻線の端末部が巻き崩れたときの絶縁破壊やリンギングノイズ等の問題が顕著に表れることから、上記構成を採用することにより、信頼性の高い昇圧トランスを提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、二次巻線の巻き終わり側における、最上層よりも下層(特に1層目から2層目への折り返し点付近)の巻線の電圧を低くすることができる。したがって、一次巻線が巻き崩れたとしても二次巻線の高圧部分との接触又は近接を回避することができ、信頼性の高い昇圧トランスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態による昇圧トランスの構成を示す略斜視図である。また、
図2は、
図1の昇圧トランスの巻線構造を示す略断面図である。
【0027】
図1及び
図2に示すように、この昇圧トランス1は、巻芯部3及び巻芯部3の両端に設けられた一対の鍔部4A,4Bを有するドラムコア2と、板状コア5と、ドラムコア2の巻芯部3に巻回された一次巻線6及び二次巻線7とを有している。
【0028】
特に限定されるものではないが、ドラムコア2の材料としては、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト等の磁性体を用いることが好ましいが、アルミナ等の非磁性体を用いてもよい。特に限定されるものではないが、ドラムコア2の外形寸法は3.2mm(長さ)×2.5mm(幅)×1.2〜2.4mm(高さ)であってもよく、板状コア5の寸法は3.2mm(長さ)×2.5mm(幅)×0.4〜0.6mm(厚み)であってもよい。
【0029】
鍔部4A,4Bの表面には端子電極が設けられている。各端子電極は、鍔部の底面から外側側面にかけて連続的に形成された略L字状の導体パターンである。ドラムコア2がMn−Zn系フェライト等の導電体である場合には、ドラムコア2の表面にパラキシリレン等の絶縁コーティングが施され、絶縁性表面上に端子電極が形成される。
【0030】
ドラムコア2の一方の鍔部4Aには端子電極8A,9Aが設けられており、他方の鍔部4Bには、鍔部4Aと同様に、端子電極8B,9Bが設けられている。そして、一次巻線6の一端は端子電極8Aに継線されており、二次巻線7の一端は端子電極9Aに継線されている。また詳細は明示されていないが、一次巻線6の他端は端子電極8Bに継線されており、二次巻線7の他端は端子電極9Bに継線されている。昇圧トランス1の入力側端子は端子電極8A,8Bであり、出力側端子は端子電極9A,9Bである。
【0031】
ドラムコア2の巻芯部3には一次巻線6及び二次巻線7が巻回されている。ここで
図2に示すように、二次巻線7は巻芯部3上に直接巻回されており、一次巻線6は二次巻線7上に重ねて単層整列巻きされている。すなわち、一次巻線6は、多層の二次巻線7の外周面に直接巻回されており、両者の間に特別な絶縁層は介在しない。
【0032】
特に限定されるものではないが、一次巻線6及び二次巻線7の材料としては導電率の高いCu等を用いることが好ましい。また、導線にはエナメル等の絶縁被覆が施されていることが好ましい。
【0033】
二次巻線7の直径は20〜40μmであることが好ましく、25〜30μm程度であることが特に好ましい。一方、一次巻線6には二次巻線7よりも大きな電流が流れることから、その直径は二次巻線7よりも太いことが好ましい。具体的には、二次巻線7の直径は50〜80μmであることが好ましく、50〜70μmであることが特に好ましい。
【0034】
特に限定されないが、一次巻線6の巻数は17ターンであり、二次巻線7の巻数は170ターンである。これにより、トランスの巻線比は1:10となり、二次巻線7の両端に高電圧を誘起させることができる。
【0035】
二次巻線7は、巻芯部3上にいわゆる「ブロック巻き」により巻回されている。ブロック巻きはセクション巻きとも呼ばれるもので、多層の巻線を複数のブロックに分け、ブロックごとに多層巻線を完成させながら巻き進める方式である。例えば図示のようにブロック数が2の場合、巻芯部3の左半分の領域(第1ブロックB
1)において二次巻線7が1層目からn層目(nは正の整数、ここではn=3)まで多層に整列巻きされた後、右半分の領域(第2ブロックB
2)に移り、左半分の領域と同様に、1層目からn層目まで多層に整列巻きされる。
【0036】
巻芯部の一端側から巻き始め、他端側で巻き終わるためには、二次巻線7の層数nは奇数であることが好ましく、3層(n=3)であることが特に好ましい。
【0037】
二次巻線7の各層の巻数は上層ほど少ないほうが巻き崩れにくく安定であるが、1層目の巻数が多すぎると上下層間の巻数のバランスを欠き、二次巻線7の範囲が無駄に広くなる。また、一次巻線6が巻回される下地面の面積を広く確保するためには、二次巻線7の最上層(3層目)の巻数はできるだけ多いほうが良い。以上の点を考慮すると、二次巻線7の1〜3層目の巻数はそれぞれ59ターン、56ターン、55ターンとすることが好ましい。あるいは、1〜3層目の巻数をそれぞれ60ターン、56ターン、54ターンとしてもよい。
【0038】
図3は、
図2の昇圧トランス1の巻線構造を詳細に示す略断面図である。
【0039】
図3に示すように、二次巻線7は、第1ブロックB
1の多層巻線と、第2ブロックB
2の多層巻線からなる。
【0040】
第1ブロックB
1では、巻芯部3の一端側3Aから巻き始め、他端側3Bに向かって一層目が巻回され、巻芯部3の軸方向(長手方向)の中間地点P
1(第1の折り返し点)で折り返して、一端側3Aに向かって2層目が巻回され、さらに一端側3Aの巻き始め付近で再び折り返して、他端側3Bに向かって3層目が巻回され、3層目が中間地点P
1まで巻回されることにより、第1ブロックB
1の多層巻線が完成する。
【0041】
第2ブロックB
2では、再び1層目から始まり、中間地点P
1から他端側3Bに向かって1層目が巻回され、他端側3Bの端部付近(折り返し点U
1)で折り返して、中間地点P
1に向かって2層目が巻回され、さらに中間地点P
1で再び折り返して、他端側3Bに向かって3層目が巻回され、3層目上で所望の巻数(170ターン)を巻き終えることにより、第2ブロックB
2の多層巻線が完成する。このように、二次巻線7の巻き始め位置は巻芯部3の一端側3Aの一層目であり、巻き終わり位置は他端側3Bの最上層であって、折り返し点U
1の上方ある。
【0042】
鍔部4A,4Bの内側の側面Wと一次巻線6の端部との間には、空きスペースFが設けられている。この空きスペースFは、側面Wから二次巻線7の端部の位置までのマージンと、二次巻線7の巻数を上層ほど少なくすることによる上下層間の端部の位置のずれによって生じたものである。側面Wに対するマージンは、鍔部4A,4Bに邪魔されることなく二次巻線7を容易に巻回できるようにするために確保されている。
【0043】
しかし、空きスペースFの幅が一次巻線6の直径よりも広い場合には、鍔部4A,4Bが一次巻線6の巻き崩れを抑えることができない。
図3中の破線で示すように、一次巻線6の最終ターン6xが巻き崩れて空きスペースに落ち込んだ場合には、二次巻線7の第2ブロックB
2の1層目から2層目への折り返し点U
1(第2の折り返し点)と接触又は近接する。二次巻線7上の電位は、一端側3Aの巻き始めの位置で最も高く、巻き進むにつれて徐々に低くなり、他端側3Bの巻き終わりの位置で最も低い。よって、一次巻線6の低圧部分が二次巻線7の高圧部分に接触又は近接することになる。
【0044】
図4(a)及び(b)は、
図9に示した従来の昇圧トランス20の二次巻線7の等価回路である。また、
図5(a)及び(b)は、第1の実施形態による昇圧トランス1の二次巻線7の等価回路図である。
【0045】
図4(a)に示すように、従来の昇圧トランス20の二次巻線7は、1層目の巻線によるインダクタンスL
1、2層目の巻線によるインダクタンスL
2、3層目の巻線によるインダクタンスL
3の直列回路である。また、二次巻線7には寄生容量C
S1,C
S2が発生している。そして、一次巻線16の最終ターン6xが巻き崩れたときに二次巻線7と接触又は近接する位置は、1層目から2層目への折り返し点U
0である。
【0046】
図4(b)に示すように、二次巻線7のインダクタンスL
1側の一端に電圧Vを印加し、インダクタンスL
3側の他端を接地した場合、各インダクタンスL
1〜L
3にはそれぞれ約V/3の電圧がかかり、折り返し点U
0の電位は2V/3となる。したがって、例えばV=330[V]のとき、折り返し点U
0の電位は220[V]となり、非常に高電圧である。
【0047】
これに対し、
図5(a)に示すように、本実施形態による昇圧トランス1の二次巻線7は、第1ブロックB
1の1層目の巻線によるインダクタンスL
1、2層目の巻線によるインダクタンスL
2、3層目の巻線によるインダクタンスL
3、第2ブロックB
2の1層目の巻線によるインダクタンスL
4、2層目の巻線によるインダクタンスL
5、3層目の巻線によるインダクタンスL
6の直列回路である。また、二次巻線7には寄生容量C
S1,C
S2,C
S3,C
S4が発生している。そして、一次巻線6の最終ターン6xが巻き崩れたときに二次巻線7と接触又は近接する位置は、第2ブロックB
2の1層目から2層目への折り返し点U
1である。
【0048】
図5(b)に示すように、二次巻線7のインダクタンスL
1側の一端に電圧Vを印加し、インダクタンスL
6側の他端を接地した場合、各インダクタンスL
1〜L
6にはそれぞれ約V/6の電圧がかかり、折り返し点U
1の電圧は約V/3となる。したがって、例えばV=330[V]のとき、折り返し点U
1の電位は110[V]となり、
図4に示した従来の昇圧トランス20よりも低電圧となる。
【0049】
二次巻線7には寄生容量C
S1〜C
S4が発生しているが、寄生容量C
S2とC
S3が直列接続された状態となるので、二次巻線7の全体的な寄生容量を低下させることができる。寄生容量が低下するとインピーダンスの共振点が高周波側にシフトし、高調波成分のインピーダンスが下がるので、より大きな電流を流すことができる。したがって、ストロボのチャージ時間を短くすることができる。
【0050】
このように、本実施形態の昇圧トランス1においては、一次巻線6の最終ターン6xが巻き崩れたときに接触又は近接する二次巻線7の最上層よりも下層の巻線部分は、第2ブロックB
2の1層目から2層目への折り返し点U
1(第2の折り返し点)である。この折り返し点U
1は、従来の昇圧トランス20よりも巻終わり側に近いので、その電位を低くすることができる。したがって、絶縁破壊やリンギングノイズを抑制することができ、信頼性の高いトランスを提供することができる。
【0051】
図6は、本発明の第2の実施形態による昇圧トランスの構成を示す略断面図である。
【0052】
図6に示すように、この昇圧トランス11は、二次巻線7がブロック巻きされ、多層巻線が3つのブロックに分かれている点にある。ブロック数が3の場合、巻芯部3の左側の領域(第1ブロックB
1)において二次巻線7が1〜3層目まで多層に整列巻きされ、次いで中央の領域(第2ブロックB
2)に移り、第1ブロックB
1と同様に1〜3層目まで多層に整列巻きされ、さらに右側の領域(第3ブロックB
3)に移り、第1及び第2ブロックB
1,B
2と同様に、1層目からn層目まで多層に整列巻きされる。その他の構成は第1の実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0053】
第2の実施形態において、一次巻線6の最終ターン6xが巻き崩れたときに接触又は近接する二次巻線7の最上層よりも下層の巻線部分は、第3ブロックB
3の1層目から2層目への折り返し点U
2(第2の折り返し点)である。この折り返し点U
2は、第1の実施形態による昇圧トランス1のそれよりも巻き終わり側に近いので、折り返し点U
2の電位をさらに下げることができる。したがって、絶縁破壊やリンギングノイズをさらに抑制することができ、信頼性の高いトランスを提供することができる。
【0054】
図7は、本発明の第3の実施形態による昇圧トランスの構成を示す略断面図である。
【0055】
図7に示すように、この昇圧トランス12は、二次巻線7がブロック巻きされ、多層巻線が2つのブロックに分かれているが、各ブロックの幅が不均等であり、第2ブロックB
2よりも第1ブロックB
1の幅が広い点にある。その他の構成は第1の実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0056】
第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、一次巻線6の最終ターンが巻き崩れたときに接触又は近接する二次巻線7の最上層よりも下層の巻線部分は、第2ブロックB
2の1層目から2層目への折り返し点U
3(第2の折り返し点)である。この折り返し点U
3は、第1の実施形態による昇圧トランス1のそれよりも巻き終わり側に近いので、折り返し点U
3の電位をさらに下げることができる。したがって、絶縁破壊やリンギングノイズをさらに抑制することができ、信頼性の高いトランスを提供することができる。
【0057】
図8は、本発明の第4の実施形態による昇圧トランスの構成を示す略断面図である。
【0058】
図8に示すように、この昇圧トランス13は、二次巻線7がいわゆる「バンク巻き」により巻回されていることを特徴としている。バンク巻きとは、巻芯部3の一端側3Aにおいて多層の巻線による下り勾配の段差を形成した後、下り勾配の段差に沿って巻き上げと巻き下げを繰り返しながら、巻芯部3の他端側3Bに向かって徐々に巻き進む巻回方式のことである。その他の構成は第1の実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施形態による二次巻線7は3層構造であり、巻芯部3の一端側3Aから他端側3Bに向かって1層目を5ターン巻回した後、折り返して、一端側3Aに向かって2層目を2ターン巻回し、さらにその上に3層目を1ターン巻回する。2層目の1ターン目は1層目の3−4ターン上に巻くようにし、2層目の2ターン目は1層目の2−3ターン上に巻くようにする。そして3層目の1ターンは2層目の1−2ターン上に配置される。これによって、図中の多層巻線の右側には上層から下層に向かって下り勾配の段差が形成される。
【0060】
その後、1ターン巻回するごとに下り勾配に沿って1段ずつ巻き下げ、一番下の段まで巻いたところでその隣りにさらに1ターン巻回し、再び折り返して、1ターン巻回するごとに下り勾配に沿って1段ずつ巻き上げ、以下これを繰り返す。したがって、他端側の最終的な折り返し点U
4(第2の折り返し点)の手前に多数の折り返し点(第1の折り返し点)が存在している。他端側3Bの巻き終わり位置では、多層巻線の下り勾配の段差を解消すればよく、本実施形態では最上層で他端側3Bに向かって1ターン巻回するだけでよい。なお、バンク巻きの巻き方には様々なパターンがあるが、本発明はそれらの様々なパターンを適用可能である。
【0061】
第4の実施形態においては、一次巻線6の最終ターン6xが巻き崩れたときに接触又は近接する二次巻線7の最上層よりも下層の巻線部分は、上下方向に何度も折り返した後の最終的な折り返し点U
4である。この折り返し点U
4は、第1〜第3の実施形態による昇圧トランスよりも巻き終わり側に非常に近いので、折り返し点U
4の電位をさらに下げることができる。したがって、絶縁破壊やリンギングノイズをさらに抑制することができ、信頼性の高いトランスを提供することができる。
【0062】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の説明を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることはいうまでもない。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、ドラムコアを用いた昇圧トランスを例に挙げたが、本発明のコアはドラムコアに限定されず、種々のコアを用いることができる。また、一次巻線及び二次巻線の層数及び巻数も上記実施形態に限定されない。