(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記加熱ヒータを構成する補助加熱部の加熱量が過大になると、第1熱交換器において、熱媒体の温度が冷媒の温度を超えてしまう場合があり、この場合には冷媒が熱媒体へ放熱できなくなるため、冷媒回路が動作しなくなる。このような事態を避けるためには、補助加熱部の加熱量を強制的に低下させなければならず、そうなると対象流体の温度を目標温度に素早く近づけることできないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷媒回路の冷凍サイクルの動作を継続させながら、補助加熱部を動作させて対象流体の温度を目標温度に素早く近づけることある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、放熱器として機能する第1熱交換器(12)の1次側流路(12a)が接続された蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(50)と、前記第1熱交換器(12)の2次側流路(12b)と第2熱交換器(22)とが接続され且つ前記第1熱交換器(12)と前記第2熱交換器(22)との間を熱媒体が循環して前記第2熱交換器(22)で前記熱媒体が対象流体を加熱する熱媒体回路(20)とを備え、前記第1熱交換器(12)は、前記熱媒体回路(20)の熱媒体を前記冷媒回路(50)の冷媒によって100℃以上に加熱するヒートポンプシステムである。
【0008】
そして、このヒートポンプシステムは、前記対象流体を加熱する補助加熱部(1)と、前記対象流体の温度の目標値よりも小さな閾値を設定し且つ前記対象流体の温度が前記閾値よりも小さいときに前記補助加熱部(1)の動作を許可し、前記対象流体の温度が前記閾値以上のときに前記補助加熱部(1)の動作を禁止する第1動作を行う動作制御部(40)とを備えている。
【0009】
更に、前記動作制御部(40)は、前記補助加熱部(1)の動作を禁止してから前記対象流体の温度が目標値に到達するまでの到達時間(t1)を記憶し、該到達時間(t1)が目標到達時間(t0)よりも長い場合に前記閾値を前記対象流体の温度の目標値に近づけ、該到達時間(t1)が目標到達時間(t0)よりも短い場合に前記閾値を前記対象流体の温度の目標値から遠ざける第3動作を行う。
【0010】
第1の発明では、前記補助加熱部(1)と前記熱媒体回路(20)との両方で対象流体が加熱される。従来とは違い、前記補助加熱部(1)の熱が、前記熱媒体回路(20)の熱媒体を介さずに直接的に対象流体へ放出される。
【0011】
また、所定の目標値へ向かって対象流体を加熱する場合において、対象流体の温度が閾値に達するまでの間、前記冷媒回路(50)及び前記補助加熱部(1)が動作する。その後、対象流体の温度が閾値に達すると、前記補助加熱部(1)のみが停止する。前記補助加熱部(1)が停止すると前記冷媒回路(50)のみの動作となるため、前記熱媒体から前記対象流体への加熱量が減り、対象流体の温度上昇が緩やかになりながら、対象流体の温度が目標値へ近づく。
【0012】
更に、前記到達時間(t1)が前記目標到達時間(t0)よりも長い場合に、前記閾値が大きくなって、補助加熱部(1)の停止が前回よりも遅くなる。一方、前記到達時間(t1)が前記目標到達時間(t0)よりも短い場合に、前記閾値が小さくなって、補助加熱部(1)の停止が前回よりも早くなる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記動作制御部(40)は、前記補助加熱部(1)の動作を許可しているときに、前記対象流体の温度が
前記閾値に近づくように前記補助加熱部(1)の加熱容量を調整する第2動作を行う。
【0014】
第2の発明では、対象流体の温度が閾値に近づくに連れて、前記補助加熱部(1)の加熱容量が徐々に減少し、対象流体の温度が閾値に達したときに前記補助加熱部(1)が停止する。ここで、前記動作制御部(40)で加熱容量を減少させない場合に比べて、前記補助加熱部(1)が停止したときの前記補助加熱部(1)の加熱容量が低いので、前記補助加熱部(1)の残熱が少なく、対象流体の温度がオーバシュートせずに目標値へ近づく
。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、補助加熱部(1)で直接的に対象流体を加熱するように構成したので、従来とは違い、前記第1熱交換器(12)において、該第1熱交換器(12)へ流入する熱媒体の温度が冷媒の温度を超えてしまうという不具合が生じなくなる。したがって、冷媒回路(50)の動作を継続させながら、補助加熱部(1)を動作させることが可能となり、対象流体の温度を目標温度に素早く近づけることができる。
【0016】
そして、対象流体と目標値の温度差が小さくなると、補助加熱部(1)を停止して前記冷媒回路(50)と前記熱媒体回路(20)のみを動作させる。このように、対象流体の温度が目標値に達する前に、補助加熱部(1)を停止させることにより、対象流体の温度のオーバシュートを抑制することができる。
【0017】
更に、補助加熱部(1)が起動する度に、前回の到達時間(t1)を記憶し、その到達時間(t1)と目標到達時間(t0)とを比較して、目標温度(Tobj)の許容誤差(Terr)を変更するようにしたので、到達時間(t1)を目標到達時間(t0)に近づけることができる。
【0018】
また、前記第2の発明によれば、対象流体の温度が閾値に近づくに連れて、前記動作制御部(40)により前記補助加熱部(1)の加熱容量を徐々に減少させるようにしたので、前記動作制御部(40)で加熱容量を減少させない場合に比べて、前記補助加熱部(1)が停止したときの前記補助加熱部(1)の加熱容量を低く抑えることができる。これにより、前記補助加熱部(1)の停止時の残熱が少なくなり、対象流体の温度をさらにオーバシュートさせずに目標値へ近づけることができる
。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
本実施形態のヒートポンプシステム(10)は、産業用として用いられるものであり、熱媒体を100℃以上に加熱するものである。
図1に示すように、ヒートポンプシステム(10)は、冷媒回路(50)と熱媒体回路(20)とコントローラ(動作制御部)(40)と加熱ヒータ(補助加熱部)(1)を備えている。
【0022】
冷媒回路(50)は、冷媒が循環して二段圧縮式の冷凍サイクルを行うものである。冷媒回路(50)は、低段側圧縮機(11a)および高段側圧縮機(11b)と、放熱器(第1熱交換器)(12)と、膨張弁(13)と、蒸発器(14)とが順に冷媒配管によって接続されている。本実施形態では、冷媒として、R245faが用いられている。
【0023】
低段側圧縮機(11a)および高段側圧縮機(11b)は、図示しないが、全密閉型で構成され、圧縮部とその圧縮部を回転駆動するモータとを収容したケーシング内が吸入圧力の雰囲気になる、いわゆる低圧ドーム型に構成されている。つまり、各圧縮機(11a,11b)では吸入冷媒がケーシング内に流入し、圧縮部で圧縮された冷媒がケーシング内に流出することなくケーシング外へ直接吐出される。各圧縮機(11a,11b)は、運転回転数が可変に構成されている。両圧縮機(11a,11b)は、互いに直列に接続されて冷媒を二段圧縮するものであり、冷媒の圧縮機構を構成している。
【0024】
放熱器(12)は、冷媒流路(1次側流路)(12a)および熱媒体流路(2次側流路)(12b)を有している。冷媒流路(12a)は、流入端が高段側圧縮機(11b)の吐出側と接続され、流出端が後述する過冷却熱交換器(15)と接続されている。
【0025】
膨張弁(13)は、開度が調節可能な電子膨張弁で構成されている。
【0026】
蒸発器(14)は、冷水流路(14a)および冷媒流路(14b)を有している。冷媒流路(14b)は、流入端が膨張弁(13)と接続され、流出端が低段側圧縮機(11a)の吸入側と接続されている。一方、蒸発器(14)の冷水流路(14a)は冷水回路(30)に接続されている。蒸発器(14)では、冷水流路(14a)を流れる冷水回路(30)の水と冷媒流路(14b)を流れる冷媒とが熱交換し、水が冷却される。
【0027】
また、冷媒回路(50)には、過冷却熱交換器(15)とインジェクション通路(19)が設けられている。過冷却熱交換器(15)は、放熱器(12)と膨張弁(13)との間に接続されており、高温流路(15b)および低温流路(15a)を有している。インジェクション通路(19)は、流入端が放熱器(12)と過冷却熱交換器(15)との間に接続され、流出端が低段側圧縮機(11a)と高段側圧縮機(11b)との間に接続されている。インジェクション通路(19)には流量調整弁(16)が設けられている。流量調整弁(16)は、通過する冷媒を減圧する作用も有している。
【0028】
過冷却熱交換器(15)の高温流路(15b)は、流入端が放熱器(12)と接続され、流出端が膨張弁(13)と接続されている。過冷却熱交換器(15)の低温流路(15a)は、インジェクション通路(19)における流量調整弁(16)の下流側に接続されている。過冷却熱交換器(15)では、高温流路(15b)を流れる放熱器(12)の出口冷媒と低温流路(15a)を流れる前記出口冷媒の分岐冷媒とが熱交換し、高温流路(15b)の出口冷媒が過冷却され一方、低温流路(15a)の分岐冷媒が蒸発する。インジェクション通路(19)は、過冷却熱交換器(15)で蒸発した分岐冷媒を、低段側圧縮機(11a)と高段側圧縮機(11b)の間の中間圧の冷媒、即ち圧縮機構における圧縮途中の冷媒と合流させるものである。
【0029】
熱媒体回路(20)は、ポンプ(21)と加熱熱交換器(第2熱交換器)(22)と放熱器(12)の熱媒体流路(12b)とが順に接続された閉回路で構成されている。熱媒体回路(20)には熱媒体(例えば、水や油)が封入されている。ポンプ(21)によって熱媒体が熱媒体回路(20)内を循環する。放熱器(12)では、冷媒流路(12a)を流れる冷媒回路(50)の高圧冷媒と熱媒体流路(12b)を流れる熱媒体回路(20)の熱媒体とが熱交換し、熱媒体が加熱される。加熱熱交換器(22)は、温水を貯留する恒温槽(23)内に設けられている。この温水が本願発明の対象流体である。尚、この対象流体は水に限定されず、例えば油や空気であってもよい。
【0030】
この加熱熱交換器(22)では、放熱器(12)で加熱された熱媒体が恒温槽(23)内の水と熱交換し、恒温槽(23)内の水が一定温度に加熱される。また、この恒温槽(23)内には、該恒温槽(23)の水温を検出する水温度センサ(43)が設けられている。この水温度センサ(43)の検出値はコントローラ(40)へ入力される。
【0031】
加熱ヒータ(1)は、例えばシーズヒータで構成されている。加熱ヒータ(1)は恒温槽(23)内に配置され、該恒温槽(23)の水を加熱する。
【0032】
コントローラ(40)は、冷媒回路(50)、熱媒体回路(20)及び加熱ヒータ(1)の動作を制御する。コントローラ(40)の制御動作の1つとして、急速加熱制御がある。この急速加熱制御は、恒温槽(23)の水温(To)を短時間で効率よく目標温度(Tobj)まで加熱する制御である。この動作が、本発明の動作制御部(40)の第1動作である。
【0033】
コントローラ(40)は、この急速加熱制御を行うための第1目標設定部(45)、第2目標設定部(48)、閾値設定部(46)、制御部(47)及び調整部(49)を備えている。
【0034】
第1目標設定部(45)は、恒温槽(23)の水の目標温度(Tobj)を設定するものである。ユーザーによって目標温度(Tobj)が第1目標設定部(45)へ入力される。第2目標設定部(48)は、目標温度(Tobj)の許容誤差(Terr)を設定するものである。ユーザによって許容誤差(Terr)が第2目標設定部(48)へ入力される。閾値設定部(46)は、第1目標設定部(45)の目標温度(Tobj)から第2目標設定部(48)の許容誤差(Terr)を減算した値を閾値(Tobj-Terr)に設定する。制御部(47)は、水温度センサ(43)の水温(To)と閾値設定部(46)の閾値(Tobj-Terr)とを比較して加熱ヒータ(1)のON/OFF制御を行う。調整部(49)は、いわゆる学習機能によって第2目標設定部(48)で設定された許容誤差(Terr)を変更するものである。
【0035】
−運転動作−
〈冷媒回路及び熱媒体回路の運転動作〉
両圧縮機(11a,11b)が駆動されると、低段側圧縮機(11a)で圧縮された冷媒は高段側圧縮機(11b)で更に圧縮されて高圧冷媒となる。高段側圧縮機(11b)から吐出された高圧冷媒は、放熱器(12)で熱媒体回路(20)の熱媒体と熱交換して凝縮し、熱媒体が100℃以上(例えば、120℃)に加熱される。放熱器(12)で凝縮した高圧冷媒は、一部がインジェクション通路(19)に流れ、残りが過冷却熱交換器(15)の高温流路(15b)に流れる。インジェクション通路(19)に流れた高圧冷媒は、流量調整弁(16)で減圧された後、過冷却熱交換器(15)の低温流路(15a)に流れて高温流路(15b)の高圧冷媒と熱交換する。これによって、高温流路(15b)の高圧冷媒は過冷却される一方、低温流路(15a)の冷媒は蒸発して中間圧の過熱ガス冷媒となる。高温流路(15b)の高圧冷媒は、過冷却されたことによって冷媒のエンタルピーが減少する。
【0036】
過冷却熱交換器(15)で過冷却された高圧冷媒は、膨張弁(13)で減圧されて低圧冷媒となる。低圧冷媒は、蒸発器(14)に流れて、冷水回路(30)の熱源水と熱交換して蒸発し、熱源水が冷却されて冷水となる。蒸発器(14)に流れる低圧冷媒は上述したように過冷却された分だけエンタルピーが減少しているので、蒸発器(14)の蒸発能力(冷却能力)が増大する。蒸発器(14)から流出した冷媒は、低段側圧縮機(11a)に吸入されて再び圧縮される。低段側圧縮機(11a)から吐出された冷媒は、インジェクション通路(19)からの中間圧の過熱ガス冷媒と合流して高段側圧縮機(11b)に吸入される。
【0037】
熱媒体回路(20)では、放熱器(12)で加熱された熱媒体が加熱熱交換器(22)に流れて恒温槽(23)の水と熱交換し、水が加熱されて温水となる。
【0038】
〈コントローラの急速加熱制御〉
この急速加熱制御は、主に、恒温槽(23)の水を常温から加熱するとき、又は、恒温槽(23)の水が急速に低下してしまいヒートポンプの容量制御では対応できないときに行われる。この急速加熱制御を、
図2の制御フロー図に基いて説明する。
【0039】
まず、ステップST1で、加熱ヒータ(1)をONするか否かを判定する。この判定は恒温槽(23)の水温に基いて行われる。加熱ヒータ(1)をONしない場合にはステップST2へ移る。そして、加熱ヒータ(1)をONする判定が行われるまで、ステップST1からステップST2までの処理が繰り返される。一方、ステップST1で加熱ヒータ(1)をONする判定が行われると、ステップST3へ移る。このステップST3の処理は、コントローラ(40)の制御部(47)が行う。
【0040】
ステップST3では、現在の水温(To)と閾値(Tobj-Terr)とを比較する。現在の水温(To)が閾値(Tobj-Terr)よりも低い場合にはステップST4へ移る。一方、現在の水温(To)が閾値(Tobj-Terr)以上の場合にはステップST2へ戻り、加熱ヒータ(1)がOFFされる。尚、現在の水温(To)が閾値(Tobj-Terr)以上の状態が継続している間、加熱ヒータ(1)がOFFされる。
【0041】
ステップST4では、加熱ヒータ(1)がONの状態を継続する処理が行われる。その後、ステップST1へ戻り、ステップ1からステップ4までの処理が繰り返される。
【0042】
図4に示すように、恒温槽(23)の水温(To)が閾値(Tobj-Terr)に達するまでの間、前記冷媒回路(50)及び前記加熱ヒータ(1)が動作する(
図4のB区間)。尚、
図4の最初のB区間が恒温槽(23)の水を常温から加熱している区間であり、その次のB区間が、急速に低下してしまったときに恒温槽(23)の水を加熱している区間である。
【0043】
その後、対象流体の温度が閾値に達すると、前記加熱ヒータ(1)のみが停止する(
図4のA区間)。前記加熱ヒータ(1)が停止すると前記冷媒回路(50)のみの動作となるため、前記熱媒体から前記恒温槽(23)の温水への加熱量が減り、恒温槽(23)の水温(To)の上昇が緩やかになりながら目標温度(Tobj)へ近づく。
【0044】
〈コントローラの学習機能制御〉
次に、コントローラ(40)の調整部(49)が行う学習機能制御について説明する。尚、この学習機能制御が本発明の動作制御部(40)の第2動作である。
【0045】
調整部(49)は、加熱ヒータ(1)を停止してから恒温槽(23)の水温(To)が目標温度(Tobj)へ達するまでの前回の到達時間(t1)を記憶している。また、調整部(49)は予め目標到達時間(t0)が設定されている。そして、次式(1)により、許容誤差(Terr)を演算する。尚、Terr(n-1)は前回の許容誤差である。
【0046】
Terr(n)=(1+(t0/t1))×(Terr(n-1)/2)・・・・式(1)
ここで、前回の到達時間(t1)が目標到達時間(t0)の2倍であった場合には、許容誤差(Terr)を0.5倍にすることが考えられるが、式(1)では、外乱を考慮して許容誤差(Terr)を0.75倍となる。許容誤差(Terr)が小さくなれば閾値(Tobj-Terr)が大きくなって、前回に比べて加熱ヒータ(1)の停止が遅くなる。また、前回の到達時
間(t1)が目標到達時間(t0)の0.5倍であった場合には、オーバシュートを防ぐため、許容誤差(Terr)を2倍にすることが考えられるが、式(1)では、外乱を考慮して許容誤差(Terr)を1.5倍となる。許容誤差(Terr)が大きくなれば閾値(Tobj-Terr)が小さくなって、前回に比べて加熱ヒータ(1)の停止が早まる。
【0047】
コントローラ(40)の調整部(49)では、加熱ヒータ(1)が起動する度に、前回の到達時間(t1)を記憶し、式(1)に基いて許容誤差(Terr)を変更する。これにより、到達時間(t1)が目標到達時間(t0)に近づく。到達時間(t1)と目標到達時間(t0)とが一致すれば、許容誤差(Terr)の変更は行われない。
【0048】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、加熱ヒータ(1)で直接的に対象流体を加熱するように構成したので、従来とは違い、前記冷媒回路(50)の放熱器(12)において、該放熱器(12)へ流入する熱媒体の温度が冷媒の温度を超えてしまうという不具合が生じなくなる。したがって、冷媒回路(50)の動作を継続させながら、加熱ヒータ(1)を動作させることが可能となり、恒温槽(23)の水温(To)を目標温度(Tobj)に素早く近づけることができる。
【0049】
そして、恒温槽(23)の水温(To)と目標温度(Tobj)との温度差が小さくなると、加熱ヒータ(1)を停止して前記冷媒回路(50)と前記熱媒体回路(20)のみを動作させる。このように、対象流体の温度が目標値に達する前に、加熱ヒータ(1)を停止させることにより、恒温槽(23)の水温(To)のオーバシュートを抑制することができる。また、加熱ヒータ(1)と冷媒回路(50)の加熱効率を比較すると、冷媒回路(50)の方が加熱効率が高いため、冷媒回路(50)のみの運転により、ヒートポンプシステムの運転効率を高めることができる。
【0050】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0051】
前記実施形態では、恒温槽(23)の水温(To)が閾値(Tobj-Terr)以上になると加熱ヒータ(1)を停止させていたが、
図3の制御フロー図に示すように、水温(To)が閾値(Tobj-Terr)に近づくように、加熱ヒータ(1)の加熱容量を入力電圧値としてPI制御又はPID制御で調整してもよい。
図3の制御フロー図について説明する。尚、
図3のステップST5からステップST7までの処理は、
図2のステップST1からステップST3までの処理と同じなので説明を省略する。
【0052】
図3のステップST8では、現在の水温(To)から閾値(Tobj-Terr)の減算値がゼロになるように、加熱ヒータ(1)の変更値(α)が算出される。そして、ステップST9において、加熱ヒータ(1)の入力電圧値に変更値(α)を加えた値を前記加熱ヒータ(1)へ入力する。
【0053】
これにより、恒温槽(23)の水温(To)が閾値(Tobj-Terr)に近づくに連れて、前記加熱ヒータ(1)の入力電圧が徐々に減少し、恒温槽(23)の水温(To)が閾値に達したときに前記加熱ヒータ(1)が停止する。ここで、前記調整部(49)で入力電圧を減少させない場合に比べて、前記加熱ヒータ(1)が停止したときの前記加熱ヒータ(1)の入力電圧が低いので、前記加熱ヒータ(1)の残熱が少なく、恒温槽(23)の水温(To)がさらにオーバシュートせずに目標温度(Tobj)へ近づけることができる。
【0054】
なお、補助加熱部(1)は電気ヒータ、IHヒータ、蒸気熱源、ガス炊きの熱源等で構成することもできる。