特許第6069921号(P6069921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069921
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】四方弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20170123BHJP
   F16K 27/04 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F16K11/065 Z
   F16K27/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-157555(P2012-157555)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-20412(P2014-20412A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】土屋 祐二
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−022315(JP,A)
【文献】 実開昭56−082362(JP,U)
【文献】 実開昭51−114747(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00−11/24;27/00−27/12
F25B 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に第1流路が接続され、下側に第2流路と第3流路と第4流路とが接続され、流体が流れる流路を切り替える四方弁であって、
前記四方弁は筒状容器の両端を密閉した形状であり下側に前記第2流路と前記第3流路と前記第4流路とが接続されたシリンダ部と、
前記シリンダ部の上側に設けられ前記第1流路が接続されるとともに前記シリンダ部と連通し、
その内部がシリンダ内部と接続する接続部とからなる筐体を備え、
前記接続部は、内部が前記第1流路側から前記シリンダ部側に向かって前記シリンダ部の長手方向に広がる形状を有しており、
前記筐体の内部を移動するように設けられ、前記第1流路から流入する高温の流体を前記第2流路に流出させるときに前記第4流路から流入する低温の流体を前記第3流路に流出させ、前記第1流路から流入する高温の流体を前記第4流路に流出させるときに前記第2流路から流入する低温の流体を前記第3流路に流出させるように流路を切り替える弁体とを備え、
前記弁体は、前記シリンダ部から前記接続部にまたがって配置され、前記弁体の壁面と前記接続部の内壁面とが当接し、前記接続部内に形成流路を形成することを特徴とした四方弁。
【請求項2】
前記形成流路を形成する前記接続部の内壁と前記弁体の壁面の少なくともいずれか一方に弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の四方弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空調装置に用いられるもので、冷媒が流れる流路の接続を切り替える四方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、空気調和装置等において、冷房運転と暖房運転を切り替えるべく冷媒が流れる流路を切り替えるために四方弁が用いられている。
【0003】
特許文献1は、構造が簡単で高温冷媒と低温冷媒が近接して流れても、両者間で熱漏洩による熱損失の発生を抑制し、冷暖房能力を向上させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−159882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、特許文献1が示す四方弁は、本体がシリンダ形状をもっているため、四方弁内部に形成される冷媒流路は必ずしも直線的な形状ではなく、シリンダ形状の内部構造に沿って冷媒が迂回する流路が形成される。このため、冷媒が四方弁内部で滞留してしまい、その結果、熱損失が増加する場合がある。
本発明は、冷媒の流れの滞留をなくし熱損失の発生を抑制できる四方弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための請求項1記載の発明は、上側に第1流路が接続され、下側に第2流路と第3流路と第4流路とが接続され、流体が流れる流路を切り替える四方弁であって、前記四方弁は筒状容器の両端を密閉した形状であり下側に前記第2流路と前記第3流路と前記第4流路とが接続されたシリンダ部と、前記シリンダ部の上側に設けられ前記第1流路が接続されるとともに前記シリンダ部連通し、その内部がシリンダ内部と接続する接続部とからなる筐体を備え、前記接続部は、内部が前記第1流路側から前記シリンダ部側に向かって前記シリンダ部の長手方向に広がる形状を有しており、前記筐体の内部を移動するように設けられ、前記第1流路から流入する高温の流体を前記第2流路に流出させるときに前記第4流路から流入する低温の流体を前記第3流路に流出させ、前記第1流路から流入する高温の流体を前記第4流路に流出させるときに前記第2流路から流入する低温の流体を前記第3流路に流出させるように流路を切り替える弁体とを備え、前記弁体は、前記シリンダ部から前記接続部にまたがって配置され、前記弁体の壁面と前記接続部の内壁面とが当接し、前記接続部内に形成流路を形成することを特徴とした四方弁である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記形成流路を形成する前記接続部の内壁と前記弁体の壁面の少なくともいずれか一方に弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の四方弁である。
【発明の効果】
【0008】
四方弁内に形成される形成流路を、冷媒が迂回することのない直線的な流路として形成する。これにより、冷媒は迂回することなく流れるため、冷媒の流れの滞留をなくし熱損失の発生を抑制できる四方弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る四方弁の外見を示す外形図。
図2】同じく一実施形態に係る四方弁の冷房運転時の動作の一例を示す断面図。
図3】同じく一実施形態に係る四方弁の暖房運転時の動作の一例を示す断面図。
図4】同じく一実施形態に係る四方弁を含む空気調和装置の冷房運転時の動作の一例を示す断面図。
図5】同じく一実施形態に係る四方弁を含む空気調和装置の暖房運転時の動作の一例を示す断面図。
図6】同じく四方弁の他の実施形態の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る四方弁の外観を示す外形図、図2は、同じく一実施形態に係る四方弁の冷房運転時の動作の一例を示す断面図、図3は、同じく一実施形態に係る四方弁の暖房運転時の動作の一例を示す断面図である。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る四方弁Aは、図1の外形図に示すように、一例として筒状容器の両端を密閉した形状であるシリンダ部16と、この上部に設けられシリンダ部16と連通する接続部17からなる筐体11を有している。接続部17は頂点側に第1流路12が接続され、シリンダ部16は底面側に第2流路13、第3流路14、第4流路15が接続されている。また、接続部17は、内部が第1流路12側からシリンダ部16側に向かってシリンダ部16の長手方向に広がる形状を有している。
【0012】
また、四方弁Aは、図2の冷房運転時の動作の一例を示す断面図、図3の暖房運転時の動作の一例を示す断面図に示すように、筐体11内を移動することで流路を切り替える弁体22を有している。また、弁体22は、一例として断熱性の材料とすることにより、第2流路13、第3流路14、第4流路15側に設けた流路23と第1形成流路R1との間の熱移動が効果的に防止され、熱損失を抑制することができるため、効率のよい冷房運転(暖房運転)が可能となる。弁体22は、例えば冷房運転時は、図2に示すように図面の左方向に弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とが当接するまでスライドする。これにより、接続部17内に第1形成流路R1が形成され、第1流路12と第4流路15を接続して低温の流体を流出させる。このとき、弁体22は、流路23を介して第2流路13と第3流路14を接続する。また、弁体22は、例えば暖房運転時は、図3に示すように図面の右方向に弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とが当接するまでスライドする。これにより、接続部17内に第2形成流路R2が形成され、第1流路12と第2流路13を接続して高温の流体を流出させる。このとき、弁体22は、流路23を介して第3流路14と第4流路15を接続する。
【0013】
また、弁体22は、シリンダ部16から接続部17にまたがって配置され、弁体22が、筐体11の内部を移動する際に弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とが当接し、接続部17内に形成流路R1,R2を形成する。弁体22はシリンダ部16内の長手方向両側に後述するピストン36、37が取り付けられている。形成流路R1が形成されたとき、シリンダ部16内では弁体22とピストン36との間で形成流路R3が形成され、また、形成流路R2が形成されたとき、シリンダ部16内では弁体22とピストン37との間で形成流路R4が形成される。
【0014】
次に、本発明の一実施形態である四方弁を空気調和装置に適用した場合の構成および動作について、図4および図5を用いて詳細に説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る四方弁Aを含む空気調和装置の冷房運転時の動作の一例を示す断面図、図5は、同じく一実施形態に係る四方弁Aを含む空気調和装置の暖房運転時の動作の一例を示す断面図である。
【0015】
図4および図5の空気調和装置において、空気調和装置は、一端が第1流路12に、他端が第3流路14に接続され、第3流路14から吸入したガス冷媒を圧縮し、高温高圧となったガス冷媒を第1流路12へ吐出する圧縮機42と、第1流路12を介して圧縮機42の吐出側に接続し、第2流路13を介して室内熱交換器45に接続し、第3流路14を介して圧縮機42の吸入側に接続し、第4流路15を介して室外熱交換器43に接続し、各流路の接続を切り替える四方弁Aと、一端が第2流路13に、他端が冷媒配管を介して膨張手段44に接続され、冷房運転時は蒸発器として機能し、暖房運転時は凝縮器として機能する室内熱交換器45と、一端が冷媒配管を介して室内熱交換器45に、他端が冷媒配管を介して室外熱交換器43に接続され、冷媒を減圧する膨張手段44と、一端が冷媒配管を介して膨張手段44に、他端が第4流路15に接続され、冷房運転時は凝縮器として機能し、暖房運転時は蒸発器として機能する室外熱交換器43とを有している。
【0016】
さらに、空気調和装置は、電磁弁41と第2流路、四方弁Aおよび第3流路14との間が、配管31、32、33、34により接続されている。詳しくは、電磁弁41は、配管31を介して第1流路12と、配管32を介してシリンダ部16の長手方向の一端(シリンダ空間35側)と、配管33を介してシリンダ部16の長手方向の他端(シリンダ空間38側)と、配管34を介して第3流路14と接続する電磁弁41を有しており、オン/オフ制御により配管31,32,33,34の接続を切り替える。詳しくは、電磁弁41がオフ制御のとき、配管31と配管32とが接続され、配管33と配管34とが接続される。また、電磁弁41がオン制御の時、配管31と配管33とが接続され、配管32と配管34とが接続される。
【0017】
このような構成をもつ空気調和装置において、以下に、冷房運転時の動作を図4を用いて説明する。図4に示される空気調和装置において、冷房運転時は、電磁弁41はオフであり、この結果、冷媒は、第1流路12から配管31の中を電磁弁41に向かって流れ、電磁弁41から配管32の中をシリンダ空間35に向かって流れ、四方弁A内のピストン36を左に押すことで弁体22を左に押して図4に示す位置に固定する。この時、図4に示す通り、対向する弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とは隙間なく当接している。この時の冷凍サイクルの冷媒の流れを以下に説明する。
【0018】
圧縮機42から吐出された高圧高温のガス冷媒は、第1流路12を介して四方弁Aに流入する。四方弁Aから第4流路15を介して室外熱交換器43に流入した高温高圧のガス冷媒は外気と熱交換を行って凝縮し、高圧の液冷媒となる。室外熱交換器43から冷媒配管を介して膨張手段44に流入した高圧の液冷媒は膨張手段44により減圧され低圧低温の気液二相状態の冷媒となる。膨張手段44から冷媒配管を介して室内熱交換器45に流入した低圧低温の気液二相状態の冷媒は、室内空気と熱交換を行って蒸発し低温低圧のガス冷媒となる。この低温低圧のガス冷媒は室内熱交換器45から第2流路13を介して四方弁Aに流入し、四方弁Aから第3流路14を介して圧縮機42に吸入され、再び圧縮される。
【0019】
ここで注目すべきは、対向する弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とは隙間なく当接しているため、第1流路12から流入する冷媒がピストン37側に流入することはないということである。よって、四方弁Aの筐体11と四方弁Aの内部に設けられた弁体22とにより形成される第1形成流路R1は直線状となり、筐体11内を流体が迂回する領域をもたない形状となる。このことから、上述した特許文献1が示すように、シリンダ形状の四方弁の中に形成された形成流路のように、冷媒がシリンダ内に充満し、冷媒が迂回することで、四方弁A内で冷媒が滞留を起こし熱損失を発生させるという不具合を回避することが可能となる。
【0020】
またさらに、図4に示すとおり、第1形成流路R1を形成する接続部17の内壁面18と、弁体22の壁面24とは略平行となるように形成されている。これにより、第1形成流路R1は、第1流路12と第4流路15を略最短で接続するための筒形状の形成流路であり、筐体内を流体が迂回する領域をもたない形状となるものである。
【0021】
次に、暖房運転時の動作を図5を用いて説明する。図5に示される空気調和装置において、構成は図4と変わることがないが、冷媒の流れは冷房運転の際と逆転することになる。
【0022】
すなわち、暖房運転時は、電磁弁41はオンであり、この結果、冷媒は、第1流路12から配管31の中を電磁弁41に向かって流れ、電磁弁41から配管33の中をシリンダ空間38に向かって流れ、四方弁A内のピストン37を右に押すことで弁体22を右に押して図5に示す位置に固定する。この時、図4に示す通り、対向する弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とは隙間なく当接している。この時の冷凍サイクルの冷媒の流れを以下に説明する。
【0023】
圧縮機42から吐出された高圧高温のガス冷媒は、第1流路12を介して四方弁Aに流入する。四方弁Aから第2流路13を介して室内熱交換器45に流入した高温高圧のガス冷媒は室内空気と熱交換を行って凝縮し、高圧の液冷媒となる。室内熱交換器45から冷媒配管を介して膨張手段44に流入した高圧の液冷媒は膨張手段44により減圧され低温低圧の気液二相状態の冷媒となる。膨張手段44から冷媒配管を介して室外熱交換器43に流入した低温低圧の気液二相状態の冷媒は、外気と熱交換を行って蒸発し低温低圧のガス冷媒となる。この低温低圧のガス冷媒は室外熱交換器43から第4流路15を介して四方弁Aに流入し、四方弁Aから第3流路14を介して圧縮機42に吸入され、再び圧縮される。
【0024】
同様にここで注目すべきは、図5に示すように、対向する弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とは隙間なく当接しているため、第1流路12から流入する冷媒がピストン36側に流入することはないということである。よって、四方弁Aの筐体11と四方弁Aの内部に設けられた弁体22とにより形成される第2形成流路R2は直線状となり、第1流路12と第2流路13を略最短で接続するための筒形状の形成流路であり、筐体11内を流体が迂回する領域をもたない形状となる。このことから、同様に、上述した特許文献1が示すシリンダ形状の四方弁の中に形成された形成流路のように、冷媒がシリンダ内に充満し、四方弁内で冷媒が滞留を起こし熱損失を発生させるという不具合を回避することが可能となる。
【0025】
またさらに、図5に示すとおり、第2形成流路R2を形成する接続部17の内壁面18と、弁体22の壁面24とは略平行となるように形成されている。これにより、第2形成流路R2は、第1流路12と第2流路13を略最短で接続するための筒形状の形成流路であり、筐体内を流体が迂回する領域をもたない形状となるものである。
【0026】
また、図6は、本発明による四方弁の他の実施形態の一例を示す断面図である。ここで、弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とに弾性部材であるパッキン51およびパッキン52が接着されている。このパッキンにより、対向する弁体22の壁面24と接続部17の内壁面18とが当接する際に、冷媒が当接面を通過することを防止する効果をより一層高めることができる。この結果、冷媒は筐体11および弁体22により形成された第1形成流路R1、または、第2形成流路R2の中のみを主に移動することにより、冷媒の流れの滞留をなくし熱損失の発生を抑制でき、ひいては冷暖房効率を向上させた空気調和装置を実現することが可能となる。
【0027】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
A…四方弁、11…筐体、12…第1流路、13…第2流路、14…第3流路、15…第4流路、16…シリンダ部、17…接続部、22…弁体、23…流路、31〜34…配管、41…電磁弁、42…圧縮機、43…室外熱交換器、44…膨張手段、45…室内熱交換器、51,52…パッキン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6