(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グリップ部分の端部には、電池を内蔵したグリップエンドが着脱自在に装着され、当該グリップエンドが前記グリップ部分の端部に装着されると、前記電池から前記基板への給電が開始されることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ティー近傍にマイクロホンを配置して打撃の瞬間を特定する態様では、同様のサービスを複数の者に対して並列に提供する場合に、他のサービス利用者の打撃音に起因する誤動作が発生し易いといった問題がある。なお、特許文献1では、遮音板の設置や指向性の高いマイクロホンを使用することで、他のサービス利用者の打撃音に起因する誤動作の発生を回避することが提案されている。しかし、このような対策を施したとしても、他のサービス利用者の打撃音に起因する誤動作を確実に回避できる訳ではない。また、特許文献3に開示の技術のように、レーダを併用する態様であれば、他のサービス利用者の打撃音に起因する誤動作の発生を確実に回避することができるが、サービス提供のための装置が大掛かりになりすぎるといった問題がある。また、専門技術者でなければレーダの指向性を調整することは難しく、装置のメンテナンスを簡単に行えなくなる、といった問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、ゴルフクラブによるボールの打撃の瞬間を簡素な構成で確実に特定することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、中空のシャフト内の気体の圧力の変化または当該気体の振動を検出するセンサと、ヘッドによるボールの打撃を前記センサの出力信号から検出し、前記打撃に応じた信号を出力するデータ処理回路と、を前記シャフトのグリップ部分に内蔵させたことを特徴とするゴルフクラブ、を提供する。
【0008】
このようなゴルフクラブを用いてボールの打撃を行うと、打撃による衝撃がヘッドからシャフト内部の気体へと伝搬し、当該気体にはその衝撃に起因する振動或いは圧力の変化が生じる。シャフト内の気体の振動或いは圧力の変化は上記センサによって検出され、データ処理回路はセンサの出力信号に基づいてヘッドによるボールの打撃を検出し、当該打撃に応じた信号を出力する。フィッティングサービスやフォームチェックサービスの提供担当者の使用する機器では、この信号を受信することで、上記ゴルフクラブを用いて試し打ちを行ったサービス利用者についての打撃の瞬間を特定することができる。
【0009】
シャフト内の気体の圧力の変化または当該気体の振動を検出するセンサとしては、マイクロホンや流速センサ(或いは、流量センサ)を用いることが考えられる。シャフト内の気体はシャフトの側壁により外部から遮断されているため、他のサービス利用者の打撃に起因した振動等が当該気体に伝搬することはない。したがって、本発明のゴルフクラブによれば、他のサービス利用者による打撃音に起因する誤動作の発生を回避しつつ、そのゴルフクラブを用いて試し打ちを行ったサービス利用者についての打撃の瞬間を確実に特定することが可能になる。また、本発明のゴルフクラブの構成は、特許文献3に開示のようにレーダを併用した装置の構成に比較して簡素である。つまり、本発明によれば、ゴルフクラブによるボールの打撃の瞬間を簡素な構成で確実に特定することが可能になる。
【0010】
ウッドクラブである1番ウッド(所謂ドライバー)や、フェアウェイウッドである3番ウッド(所謂スプーン)、4番ウッド(所謂バッフィー)、5番ウッド(所謂クリーク)などに本発明を適用する場合、この種のゴルフクラブのヘッドは中空に形成され、内部に空洞を有していることが一般的であるため、当該ヘッド内部の空洞とシャフト内部の空洞とが連通するように加工を施しておくことが好ましい。ボールの打撃によりヘッド内部へ伝搬した衝撃を効率良くシャフト内部へと案内するためである。また、近年では、ミドルアイアンからショートアイアン該当のゴルフクラブのなかにもヘッド内部に空洞が設けられているユーティリティクラブと呼ばれるものがある。このように中空状のヘッドを有するユーティリティクラブに本発明を適用する場合も、ヘッド内部の空洞とシャフト内部の空洞とが連通するように加工を施しておくことが好ましいことは言うまでもない。
【0011】
より好ましい態様においては、前記センサおよび前記データ処理回路は同一の基板に実装されており、前記グリップ部分の内径よりもやや大きい外径を有する筒状の基板支持部材であって、前記シャフトの軸方向に延びる切欠きが壁面に設けられているとともに、前記基板を支持するための一対の溝部が前記壁面の内周側に設けられている基板支持部材をさらに有し、前記一対の溝部により前記基板を支持させた基板支持部材を前記グリップ部分に押し込んで成ることを特徴とする。このような態様においては、溝部により上記基板を支持した状態の基板支持部材をグリップに抜き差しすることで、センサおよびデータ処理回路の着脱を一括して行うことができる。したがって、このような態様によれば、上記溝部により上記基板を支持した状態の基板支持部材の抜き差しにより、試し打ち用とするゴルフクラブを容易に変更することが可能になる。
【0012】
別の好ましい態様においては、前記グリップ部分の端部には、電池を内蔵したグリップエンドが着脱自在に装着され、当該グリップエンドが前記グリップ部分の端部に装着されると、前記電池から前記基板への給電が開始されることを特徴とする。このような態様によれば、電池交換などのメンテナンス作業が容易になる、といった効果がある。また、上記電池として充電式のものを用いる場合には、本発明のゴルフクラブからグリップエンドを取り外し、このグリップエンドのみを充電器に接続して充電を行うことができる。このため、本発明のゴルフクラブそのものを充電器に接続して充電する場合に比較して、充電の際に広いスペースを必要としない、といった利点がある。
【0013】
さらに別の好ましい態様においては、各々前記シャフトに取り付けられ、スイング時の前記シャフトの動的挙動を表すデータを出力する複数の第2のセンサと、グリップ部分に内蔵された無線通信部(例えば、センサおよびデータ処理回路とともに同一の基板上に実装された無線通信部)を備え、前記データ処理回路は、前記複数の第2のセンサの各々の出力データを少なくとも所定時間分蓄積するメモリを含み、前記打撃を検出したことを契機として、当該打撃の検出時点から前記所定時間だけ遡った時刻までのデータを前記メモリから読み出し、当該データを所定の通信相手へ送信するように前記無線通信部を制御することを特徴とする。
【0014】
例えば、スイング時のシャフトの動的挙動としてシャフト各部の撓りの時間変化を計測する場合には、上記第2のセンサとして歪みゲージを用いれば良く、スイング時のシャフトの各部の加速度の時間変化を計測する場合には、上記第2のセンサとして加速度センサを用いれば良い。このような態様によれば、上記所定時間をアドレスからインパクトまでの平均的な時間長(例えば、2秒)に設定しておくことで、アドレスからインパクトまでのシャフトの動的挙動を示すデータをインパクトの検出を契機として所定の通信相手(例えばフィッティング担当者の使用する端末など)へ送信することが可能になり、特に、フィッティングサービスの提供支援に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態のゴルフクラブ10−n(n=1〜N)を含むフィッティング支援システム1の構成例を示すブロック図である。このフィッティング支援システム1は、ゴルフ用具販売店などに設置され、フィッティング担当者によるフィッティングサービスの提供を支援するためのシステムである。以下、本実施形態では、1番ウッド(所謂ドライバー)と呼ばれるゴルフクラブのフィッティングサービスへの適用例を説明する。1番ウッドは、競技規則において各プレイヤに対して使用が許可されているゴルフクラブのうちでは最も取り扱いが難しく、ヘッドおよびシャフトの組み合わせの最適化の重要性が極めて高いゴルフクラブだからである。
【0017】
図1に示すように、フィッティング支援システム1は、フィッティングサービスの利用者による試し打ちに使用されるゴルフクラブ10−n(n=1〜N:Nは2以上の整数)の他にフィッティング支援端末20を含んでいる。ゴルフクラブ10−n(n=1〜N)の各々は、ヘッドおよびシャフトの組み合わせが互いに異なる1番ウッドである。ゴルフクラブ10−n(n=1〜N)の各々は、実際の競技に使用可能なゴルフクラブに、ボールを打撃したときのシャフトの撓りを検出してフィッティング支援端末20へ無線で送信する撓り検出装置100を装着したものである。実際の競技に使用可能なゴルフクラブに撓り検出装置100を装着してゴルフクラブ10−nを構成したのは、競技時と同等の使用感をフィッティングサービスの利用者に体感させるためである。また、この目的を達成するために、撓り検出装置100は十分に小型軽量に構成されており、スイングの際の妨げとならないように装着されている。以下、ゴルフクラブ10−n(n=1〜N)の各々を区別する必要がない場合には、単に「ゴルフクラブ10」と表記する。
【0018】
フィッティング支援端末20は、ボールの打撃に使用されたゴルフクラブ10の撓り検出装置100から送信されてくるデータに基づいて当該クラブにおけるシャフトの撓りの時間変化を表すグラフ曲線(例えば、横軸を時間、縦軸を撓りとしてアドレスからフィニッシュまでの各時刻におけるシャフトの撓りプロットしたグラフ曲線)等の表示を行うタブレット端末である。フィッティング担当者はフィッティング支援端末20に表示されるグラフ曲線からシャフトの動的挙動を把握し、サービス利用者に適するクラブであるか否かを判断することができる。
【0019】
図2はゴルフクラブ10の外観を示す図である。
図2に示すように、ゴルフクラブ10は、一般的なゴルフクラブと同様に、ヘッド10aと、ヘッド10aに連接されたシャフト10bと、シャフト10bの後端部(ヘッド10a側とは反対側、すなわち、スイングの際にゴルフプレイヤが把持するグリップ部分)を覆うようにシャフト10bに取り付けられるグリップ10cと、グリップ部分に着脱自在に装着されるグリップエンド10dとを含んでいる。シャフト10bは、一般的なゴルフクラブにおけるものと同様、グリップ側からヘッド側に向うにつれて径が細くなる中空の略円筒状部材であり、金属やカーボン素材によって形成されている。前述したように、本実施形態のゴルフクラブ10は1番ウッドであり、ヘッド10aは内部に空洞を有する中空状に形成されている。本実施形態のゴルフクラブ10では、ヘッド10a内の空洞とシャフト10b内の空洞とが連通するように、ヘッド10a或いはシャフト10bの何れか(またはその両方)に加工が施されている。このような加工を施した理由については後に明らかにする。
【0020】
図3は撓り検出装置100の構成を示す図である。
図3に示すように、撓り検出装置100は、撓り検出センサ110−k(k=1〜7)、データ処理回路120、無線通信部130、電池140およびマイクロホン150を含んでいる。撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の各々はゴルフクラブ10のシャフト10bに接着されている。マイクロホン150、データ処理回路120および無線通信部130は一枚の基板に実装されてシャフト10bのグリップ部分に内蔵されている。そして、電池140はグリップエンド10dに内蔵されている。
【0021】
電池140は例えば3V出力のリチウム電池またはリチウム電池型蓄電池である。詳細については後述するが、本実施形態では、ゴルフクラブ10のグリップ部分にグリップエンド10dが装着されると、電池140は、上記基板(マイクロホン150、データ処理回路120および無線通信部130を実装した基板)と電気的に接続され、当該基板に実装されている各回路への給電を開始する。フィッティングサービスにおいては複数本(本実施形態では、最大6本)のゴルフクラブの各々による試し打ちを行わせ、シャフトの撓り具合の評価を行い、必要であればその評価結果に基づくアドバイス等をサービス利用者に与えるため、その所要時間は概ね一時間程度である。したがって、電池140の持続時間は1時間程度であることが好ましい。
【0022】
電池140をグリップエンド10dに内蔵させたのは、グリップエンド10dを交換することで、電池140の電池切れに簡便に対処できるようにするためである。また、電池140として充電式電池を採用した場合には、グリップエンド10dのみを充電器に接続して充電を行うことができ、ゴルフクラブ10を充電器に接続して充電する場合に比較して広いスペースを要しないといった利点がある。
【0023】
マイクロホン150は、シャフト10b内の気体の圧力の変化を検出するためのセンサである。ゴルフクラブ10を用いてサービス利用者がボールの試し打ちを行うと、打撃による衝撃がヘッド10aからシャフト10b内部の気体へと伝搬し、その衝撃に起因する圧力の変化が当該気体に生じる。マイクロホン150は、当該圧力の変化(シャフト内を伝搬する音波)を計測するためのものである。ゴルフクラブ10において、ヘッド10a内部の空洞とシャフト10b内部の空洞とが連通するように加工を施しておいたのは、ボールの打撃によりヘッド10a内部へ伝搬した衝撃を効率良くシャフト10b内部へと案内するためである。このような構成としたため、本実施形態では、
図4に示すように、1,000Hzから100,000Hzに亘る周波数帯域のいずれの周波数においても、ティー近傍にマイクロホンを設置した場合よりも高い音圧レベルで打撃音を計測することができる。
【0024】
本実施形態のゴルフクラブ10では、シャフト10b内の気体はシャフト10bの壁面によって外部から遮断されており、打撃音を検出するためのマイクロホン150もシャフト10bの壁面によって外部から遮断されている。このため、複数のサービス利用者に対して並列にフィッティングサービスを提供する場合であっても、他のサービス利用者による打撃音がマイクロホン150によって検出されることはなく、他のサービス利用者による打撃音に起因する誤動作の発生を確実に回避することができる。
【0025】
撓り検出センサ110−k(k=1〜7)は、スイング時のシャフト10bの動的挙動を計測するためのセンサ(マイクロホン150を第1のセンサとした場合の第2のセンサ)である。本実施形態では、撓りセンサ110−k(k=1〜7)として、その接着場所のシャフト10bの撓りの大きさに応じて電気抵抗が変化する歪みゲージが用いられている。本実施形態では、
図3に示すように、シャフト10bのスイング方向の側面においてヘッド10a側からグリップ10c側に向けて等間隔(例えば、150mm間隔)にX1〜X6の6箇所のセンサ取り付け位置が定められている。また、シャフト10bのスイング法線(スイングの際にヘッド10aが描く軌道を含む面の法線)方向の側面においては、X1に対応する位置Y1、X4に対応する位置Y4、X5に対応する位置Y5およびX6に対応する位置Y6の4箇所のセンサ取り付け位置が定められている。本実施形態では、これら10箇所のうちの7箇所に、撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の各々が1箇所に1つずつ接着される。具体的では、ゴルフクラブ10−n(n=1〜N)の各々において、X1〜X6およびY5の各々に撓り検出センサ110−kが接着されている。本実施形態では、シャフト10bに7個の撓り検出センサ110−kを装着したが、これより少ない個数(2〜6個)の撓り検出センサ110−kを用いても良く、また、8個以上の撓り検出センサ110−kを用いても良い。また、X2やX3に対応するスイング法線方向の位置をセンサ取り付け位置としても勿論良い。
【0026】
図5(a)はゴルフクラブ10のグリップ部分の軸方向の断面図であり、
図5(b)はグリップエンド10dを取り外したグリップ部分をグリップエンド方向から見た透視図である。
図5(a)および
図5(b)において符号160は、マイクロホン150、データ処理回路120および無線通信部130を実装した基板を示す。
図5(a)および
図5(b)に示すように、マイクロホン150は基板160の一端に設けられており、基板160はマイクロホン150の設けられた端部がヘッド10a側に向くように基板支持部材170によって支持されている。また、基板160には、
図5(a)に示すように、マイクロホン150、データ処理回路120および無線通信部130の他に、メス型USB(Universal Serial Bus)コネクタ162とねじ受けタップ164とが、マイクロホン150の設けられている側とは反対側の端部に設けられている。メス型USBコネクタ162は、グリップエンド10dが装着されたときに、グリップエンド10dに設けられているオス型USBコネクタ142に接続される。本実施形態では、メス型USBコネクタ162およびオス型USBコネクタ142を介して電池140から基板160への給電が行われる。
【0027】
図5(a)および
図5(b)のキャップ180は、基板支持部材170によって基板160を内蔵させたグリップ部分の開口部に装着される部材である。キャップ180は、グリップ部分の開口部と略同じ径を有する円盤状部材である。
図5(b)に示すように、キャップ180には、開口部180aとねじ孔180bが設けられている。開口部180aはグリップエンド10dから突出するオス型USBコネクタ142を通過させるために、ねじ孔180bは基板160のねじ受けタップ164をねじ止めするための皿ねじM2を通過させるために夫々設けられている。皿ねじM2によってねじ受けタップ164をねじ止めすることで、スイング時に基板160が基板支持部材170から脱落することが防止される。皿ねじM2によってキャップ180にねじ受けタップ164をねじ止めした状態では、基板160、基板支持部材170およびキャップ180を一体として、ドライバなどの治具を用いて簡便にシャフト10bのグリップ部分に着脱することができる。
【0028】
図6は、基板支持部材170の構成を示す斜視図である。基板支持部材170は、弾力性のある樹脂により形成された中空円筒状部材であって、シャフト10bの内径よりもやや大きい外径を有する。
図6に示すように、基板支持部材170の壁面には軸方向に延びる切欠きが設けられており、内周面には互い対向する一対の基板挿入溝172と同じく互いに対向する一対の基板ストッパ174とが設けられている(
図6では、一対の基板挿入溝172のうちの一方のみが図示されており、基板ストッパ174についても一方のみが図示されている)。
図5(a)に示すように、基板160の両端を基板挿入溝172の各々に差し込んだ状態の基板支持部材170をグリップ部分のシャフト10bに押し込むと、基板支持部材170の外径はシャフト10bの内径よりもやや大きいため、基板160は基板支持部材170に挟持された状態でシャフト10bのグリップ部分に内蔵される。
【0029】
基板支持部材170により基板160をグリップ部分に内蔵させた状態で、グリップエンド10dがグリップ部分に装着されると、オス型USBコネクタ142とメス型USBコネクタ162とが接続され、電池140から基板160への給電が開始される。データ処理回路120は、電池140からの給電が開始されると、フィッティング支援端末20との間に無線通信を行うための無線通信リンクを確立するように無線通信部130の作動制御を行う。無線通信部130は2.4GHz帯等の予め定められた周波数の通信電波を使用してフィッティング支援端末20と無線通信する無線通信モジュールである。
【0030】
データ処理回路120は、無線通信リンクの確立に成功すると、待機状態となり、撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の各々の計測結果(抵抗値(撓り)の大きさを表すアナログ信号)にA/D変換を施して蓄積する。そして、データ処理回路120は、ゴルフクラブ10によるボールの打撃をマイクロホン150の出力信号の変化に基づいて検出すると、当該打撃に応じた信号(本実施形態では、当該打撃から所定時間(本実施形態では、2秒)だけ遡った時刻以降の撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の各々の出力データ)をフィッティング支援端末20へ送信するように無線通信部130を制御する。本実施形態において、上記所定時間を2秒としたのは、打撃動作の始動(アドレス)から打撃(インパクト)までに要する時間は概ね2秒程度だからであり、アドレスからインパクトまでのシャフト10bの挙動を確実に捕らえることができるようにするためである。
【0031】
データ処理回路120は、
図3に示すように、プリアンプ120a、制御部120bおよびデータ蓄積用メモリ120cを含んでいる。データ処理回路120は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)により薄膜状に形成されたフレキシブル基板を介して撓り検出センサ110−k(k=1〜7)に接続されている。フレキシブル基板は軽量であるため、ゴルフクラブ10全体の重量バランスを大きく変化させないといった利点がある。また、フレキシブル基板を螺旋状に巻きつけるようシャフト10bに装着すれば、シャフト10bに沿って真っ直ぐにフレキシブル基板を延在させる態様に比較してスイング時に均等に応力が加わり、応力の偏在による破断を防止することができると期待される。
【0032】
プリアンプ120aは、撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の各々に対応するブリッジ回路と差動アンプとを含んでいる(
図2では、何れも図示略)。ブリッジ回路は、接続先の撓り検出センサ110−kの電気抵抗を計測するためのものであり、差動アンプはブリッジ回路により計測された抵抗値に応じた信号を後段の信号処理に適した信号レベルまで増幅して出力するためのものである。
【0033】
制御部120bは、例えばPSoC3などのマイクロコントローラである。制御部120bは、データ処理回路120の制御中枢として機能する。具体的には、制御部120bは、マイクロホン150の出力信号の変化に基づいて打撃の有無を判定する処理、無線通信部130の作動制御、およびデータ蓄積用メモリ120cへのデータの書き込み(或いは読み出し)を行う。制御部120bは、
図2に示すように、マルチプレクサ1202、A/Dコンバータ1204、CPU(Central Processing Unit)1206、IDメモリ1208および通信インタフェース1210を含んでいる。なお、マイクロホン150からの出力信号は、打撃があったことを示すパルス信号であっても良いし、収音した音の波形を表す信号であっても良い。
【0034】
マルチプレクサ1202は、プリアンプ120aによる増幅を経た信号を順次選択してA/Dコンバータ1204に与える。A/Dコンバータ1204は、プリアンプ120aによる増幅を経た信号に、分解能16bit、サンプリング周波数Fs=1kHzのΣΔ変換によるA/D変換を施して出力する。詳細については後述するが、A/Dコンバータ1204の出力データはデータ蓄積用メモリ120cに蓄積される。CPU1206は、各種信号処理を実行するとともに、データ蓄積用メモリ120cへのデータの書き込み、或いはデータ蓄積用メモリ120cからのデータの読み出しの制御を実行する。CPU1206により実行される信号処理の一例としては、A/Dコンバータ1204の出力データをデータ蓄積用メモリ120cに書き込む際に高周波成分などの雑音成分を除去するフィルタ処理が挙げられる。
【0035】
データ蓄積用メモリ120cは、例えばSRAMであり、撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の各々の検出結果を示す信号にA/D変換を施して得られるデータを、直近のものから所定時間(本実施形態では、2秒)だけ遡った時点のものまでを格納するリングバッファの役割を果たす。このような役割を果たすため、データ蓄積用メモリ120cは256kbitの記憶容量を有している。撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の各々による検出結果を示す信号に分解能16bitおよびサンプリング周波数Fs=1kHzのA/D変換を施して得られるデータの上記所定時間(2秒)分のデータ量は7×16×1000=224kbitとなるからである。
【0036】
制御部120bのIDメモリ1208は、例えばFlashメモリなどの不揮発性メモリである。このIDメモリ1208には、ゴルフクラブ10毎に固有のクラブ識別子が予め記憶されている。このクラブ識別子は、フィッティング支援端末20との無線通信において利用される。具体的には、フィッティング支援端末20は、通信相手のゴルフクラブから送信されてくるクラブ識別子によりその通信相手のゴルフクラブを一意に識別する、といった具合である。通信インタフェース1210は、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)またはRS232Cインタフェースである。この通信インタフェース1210には、無線通信部130が接続され、データ処理回路120から出力されるデータは通信インタフェース部1210を介して無線通信部130に与えられる。
【0037】
このような構成としたため、サービス利用者がゴルフクラブ10を用いて試し打ちを行うと、その打撃音がマイクロホン150によって検出され、制御部120bはマイクロホン150の出力信号の変化に基づいて打撃の発生を検出する。このようにして打撃の発生を検出した制御部120bは、当該打撃の検出時点から所定時間だけ遡った時刻以降の撓り検出センサ110−k(k=1〜7)の出力データをデータ蓄積用メモリ120cから読み出し、フィッティング支援端末20へ送信するように無線通信部130を制御する。フィッティング支援端末20は、上記データにしたがってシャフト10bの撓りの時間変化を表すグラフ曲線(
図7参照)を表示部に表示させる。フィッティング担当者は、このグラフ曲線を参照して上記試し打ちに使用されたゴルフクラブ10がサービス利用者に適しているか否かを評価し、その評価結果に基づくアドバイスを与えることができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のゴルフクラブ10では、打撃音を検出するためのセンサ(マイクロホン150)がシャフト10bに内蔵されているため、他のサービス利用者の打撃音に起因する誤動作を確実に回避することができる。また、本実施形態のゴルフクラブ10では、打撃を検出するためのセンサとしてマイクロホン150のみを用い、レーダを併用していないため、特許文献3に開示の技術に比較して構成が簡素になる。このように、本実施形態のゴルフクラブ10によれば、簡素な構成で打撃の瞬間を確実に捉えることが可能になる。
【0039】
以上本発明の一実施形態について説明したが、以下に述べるように変形しても勿論良い。
(1)上記実施形態では、1番ウッド(所謂ドライバー)と呼ばれる種類のゴルフクラブへの本発明の適用例を説明したがフェアウェイウッドである3番ウッド(所謂スプーン)、5番ウッド(所謂クリーク)等に適用しても良く、2番或いは4番ウッドに適用しても良い。また、アイアンと呼ばれる種類のクラブに適用することも可能である。なお、ミドルアイアンからショートアイアン該当のゴルフクラブの場合、ヘッド内部に空洞が設けられているとは限らないが、ヘッド内部に空洞が設けられている場合には、当該空洞とシャフト内の空洞とを連通させるような加工を施すことが好ましいことは上記実施形態と同様である。
【0040】
(2)上記実施形態では、シャフト10b内の気体の振動(或いは圧力の変化)を検出するためのセンサとしてマイクロホン150を用いたが、流速センサや流量センサを用いても良い。また、上記実施形態では、スイング時のシャフト10bの動的挙動を計測するための第2のセンサとして撓りセンサ110−kを用いたが、加速度センサを用いても勿論良い。また、上記実施形態では、スイング時のシャフト10bの動的挙動を計測するために第2のセンサ(撓りセンサ110−k)を複数用いたが、1つの第2のセンサによりスイング時のシャフト10bの動的挙動を計測するようにしても良い。
【0041】
(3)上記実施形態ではフィッティングサービスの提供の際に用いる試し打ち用ゴルフクラブへの本発明の適用例を説明した。これに対して、フォームチェックサービスを提供する際に用いる試し打ち用ゴルフクラブに本発明を適用することも可能であり、この場合は、上記第2のセンサ(上記実施形態では、撓りセンサ110−k)、プリアンプ120a、データ蓄積用メモリ120c、マルチプレクサ1202、A/Dコンバータ1204を省略しても良い。フォームチェックサービスの提供においては、打撃の瞬間を捉えることができれば良く、スイング時のシャフト10bの動的挙動を計測する必要はないからである。また、フォームチェックサービスの提供に本発明を適用する場合には、無線通信部130に換えて所定の波長の光を発する発光部をグリップ部分の外部に設け、当該発光部から発せられた光の受光を契機として撮像装置に打撃のタイミングを知らせても良い。この場合、上記所定の波長の光が「打撃に応じた信号」の役割を果たす。また、データ処理回路に放音部を設け、当該放音部に音を放音させることでサービス利用者に打撃の瞬間を通知しても良い。この場合、上記放音部に放音させる音が「打撃に応じた信号」の役割を果たす。
【0042】
(4)上記実施形態では基板160にメス型USBコネクタを設け、グリップエンド10dにオス型USBコネクタを設けたが、基板160にオス型USBコネクタを設け、グリップエンド10dにメス型USBコネクタを設けても良い。また、電池140と基板160との電気的な接続を他の種類のコネクタにより実現しても勿論良い。