(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝熱部材と前記放熱部材との間における前記熱電モジュール及び前記電気回路が存在する空間を囲繞するよう配設される枠体を備える請求項1又は請求項2に記載の熱電ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような事情に基づいてなされたものであり、電気回路を熱電モジュールに近接して付設しつつ、電気回路を保護可能な熱電ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた発明は、
伝熱部材と、
前記伝熱部材と対向配設される放熱部材と、
前記伝熱部材及び前記放熱部材間に配設される熱電モジュールと、
前記熱電モジュールに電気的に接続される電気回路と
を備える熱電ユニットであって、
前記電気回路が、前記放熱部材における前記伝熱部材との対向面側に付設されていることを特徴とする。
【0008】
当該熱電ユニットにおいては、伝熱部材を熱源に近接又は接触させることで、伝熱部材及び放熱部材間に温度差が生じ、これらの間に配設された熱電モジュールによって発電が行われ、電力が電気回路に送電される。当該熱電ユニットは、この電気回路が熱電モジュールと同様に放熱部材における伝熱部材の対向面側に付設されるため、熱電モジュールと電気回路との配線距離を短縮でき、かつ放熱部材によって電気回路の温度上昇を抑制できる。その結果、当該熱電ユニットは、優れた発電能力と信頼性とを発揮できる。
【0009】
前記伝熱部材及び前記放熱部材の対向面のうち、少なくとも一方に突出部が形成され、前記突出部と、前記伝熱部材又は前記放熱部材との間に前記熱電モジュールが配設されるとよい。このように伝熱部材又は放熱部材の対向面に突出部を設けて熱電モジュールを配設することで、熱電モジュールの形状を変更することなく、伝熱部材と放熱部材との距離を拡大できる。その結果、放熱部材側に付設された電気回路と高温体である伝熱部材との距離を容易かつ確実に拡大でき、伝熱部材の放熱による電気回路の温度上昇を抑制して、当該熱電ユニットの信頼性をさらに向上させることができる。
【0010】
前記伝熱部材と前記放熱部材との間における前記熱電モジュール及び前記電気回路が存在する空間を囲繞するよう配設される枠体を備えるとよい。このように熱電モジュール及び電気回路の存在する空間を枠体で囲むことで、埃等の夾雑物の熱電モジュール及び電気回路への付着や侵入等を防止できる。その結果、電気回路の故障率を低下させて、当該熱電ユニットの信頼性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の熱電ユニットは、電気回路を熱電モジュールに近接して付設しつつ、電気回路を保護することができるため、優れた発電能力と信頼性とを発揮し、センサーノード等の電源として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の熱電ユニットの実施の形態を詳説する。
【0014】
<第一実施形態>
図1の熱電ユニット1は、伝熱部材2と、放熱部材3と、この伝熱部材2と放熱部材3との間に配設される熱電モジュール4と、この熱電モジュール4に電気的に接続される電気回路5とを備える。以下、この熱電ユニット1の構造を具体的に説明する。
【0015】
伝熱部材2は、平面視で長方形の略平板状であり、放熱部材3と対向する放熱部材対向面2aを有する。伝熱部材2の放熱部材対向面2aと反対側の面は、熱を受け取るために熱源に近接又は接触される。
【0016】
伝熱部材2の厚さとしては、熱源からの受熱と、熱電モジュール4及び放熱部材3の支持とが可能であれば特に限定されず、例えば0.5mm以上5mm以下とすることができる。伝熱部材2の平面積(放熱部材対向面2aの面積)は、熱電モジュール4を配置できれば特に限定されず、伝達する熱量や当該熱電ユニット1の設置場所に合わせて適宜設計することができ、例えば長辺が20mm以上100mm以下、短辺が18mm以上90mm以下とすることができる。
【0017】
伝熱部材2の材質としては、熱伝導性の高い金属やセラミックス等を用いることができるが、これらの中でも軽量で加工性のよいアルミニウムが特に好ましい。
【0018】
放熱部材3は、略平板状の基材部3aと、この基材部3aの一方の面に形成された放熱手段である放熱フィン3bとを有する。基材部3aは、平面視で長方形状であり、基材部3aの放熱フィン3bと反対側の面は、前記伝熱部材2と対向する伝熱部材対向面3cである。放熱フィン3bは、基材部3aと略垂直に接続された複数の柱状体からなり、熱電モジュール4を介して放熱部材3に伝わってくる熱を表面から空気中へ放熱するヒートシンクの機能を奏する。
【0019】
放熱部材3の基材部3aの厚さとしては特に限定されず、例えば0.5mm以上5mm以下とすることができる。また、基材部3aの平面積(伝熱部材対向面3cの面積)は、熱電モジュール4及び電気回路5を付設可能であれば特に限定されず、放熱量に合わせて適宜設計することができるが、当該熱電ユニット1の取扱い性の観点からは伝熱部材2の平面積と略等しくすることが好ましい。
【0020】
放熱フィン3bを構成する柱状体の形状は特に限定されず、円柱状でも角柱状でもよい。また、各柱状体からさらに小型のフィンを突出させてもよい。柱状体の直径(最大幅)、高さ、本数等は放熱量に合わせて適宜設計することができ、例えば柱状体の直径(最大幅)を5mm、高さを20mm、本数を72本とすることができる。
【0021】
放熱部材3の材質としては、伝熱部材2と同様に熱伝導性の高い金属やセラミックス等を用いることができ、これらの中でもアルミニウムを用いることが好ましい。また、放熱フィン3bは基材部3aと一体形成してもよく、基材部3aと別体で形成したものを接合してもよい。
【0022】
熱電モジュール4は、第一基板4a、第二基板4b、複数の配線電極4c、複数のP型半導体4d、複数のN型半導体4e及び2つの出力用電極4fを有する。第一基板4a及び第二基板4bは板状体であり、互いに対向して略平行に配設されている。第一基板4a及び第二基板4bの対向する面にはそれぞれ複数の配線電極4cがパターン形成されている。第一基板4aに形成される配線電極4cと第二基板4bに形成される配線電極4cとは、直方体状に形成され、第一基板4a及び第二基板4b間に架設されるP型半導体4d及びN型半導体4eを交互に直列接続する。1つの配線電極4cには、P型半導体4dとN型半導体4eとが1つずつ接続される。また、端部に形成される電気出力用の2つの出力用電極4fは、P型半導体4d又はN型半導体4eのどちらか一方のみが接続され、熱電モジュールの出力端子(プラス極及びマイナス極)を形成している。熱電モジュール4は、第一基板4aと第二基板4bとの間に温度差が生じると熱の移動による発電を行い、この発電される電力を出力用電極4fから取り出すことができる。なお、電極と半導体とは、例えば半田によって電気的に接続することができる。
【0023】
前記出力用電極4fにはリード線6が接続され、リード線6を電気回路5に接続することで、熱電モジュール4で発電した電力を電気回路5に送ることができる。出力用電極4fは、第一基板4a及び第二基板4bのどちら側に設けてもよいが、リード線6の長さを短縮するために放熱部材3に接合される第一基板4aに付設することが好ましい。
【0024】
第一基板4a及び第二基板4bの材質としては、電気的絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、熱伝導性の高いセラミックを用いることが好ましい。このようなセラミックとしては、例えばアルミナ、窒化アルミナ、炭化珪素等を挙げることができる。
【0025】
配線電極4c及び出力用電極4fの材質としては、電気伝導性を有するものであれば特に限定されず、例えばアルミニウム、ニッケル、銅、あるいはこれらの合金等を挙げることができる。これらの中でも加工性が高く電気伝導性に優れる銅が好ましい。また、銅にはニッケルや金がメッキされることが望ましい。
【0026】
P型半導体4d及びN型半導体4eは、公知の半導体素子を用いることができ、例えば、Bi
2Te
3系の半導体素子を用いることができる。また、熱電モジュール4が有する熱電素子の個数は、得られる温度差や所望する電力等にあわせて適宜設計することができる。
【0027】
熱電モジュール4のサイズとしては特に限定されず、例えば厚みを1mm以上5mm以下、長辺を10mm以上80mm以下、短辺を8mm以上70mm以下とすることができる。
【0028】
熱電モジュール4の伝熱部材2及び放熱部材3への配設方法は特に限定されず、例えば半田や接着剤等を用いて接合することができる。接着剤を用いて接合する場合は、熱伝導性の高いフィラー配合接着剤を用いることが好ましい。
【0029】
熱電モジュール4の伝熱部材2及び放熱部材3間における配設個所は特に限定されないが、伝熱効率の観点から、平面視でこれらの放熱部材対向面2a及び伝熱部材対向面3cの中央部に配設することが好ましい。
【0030】
電気回路5は、電気回路基板5aに機能素子5bが配設されたものであり、伝熱部材対向面3cに付設されている。この電気回路5としては、具体的には熱電モジュール4から発生する電圧を昇圧させる昇圧回路、電気を蓄電する蓄電回路、温度や湿度等を検知するモニター回路、モニターした情報を送信する送信回路や、その他のコントロール回路等を挙げることができる。ひとつの電気回路基板5aには複数の機能素子5bが配設されていてもよい。また、電気回路5は伝熱部材対向面3c上に複数を組み合わせて付設することができる。
【0031】
電気回路5の放熱部材3への付設方法は特に限定されず、電気回路基板5aに接着剤を塗布して伝熱部材対向面3cに接着する方法等を用いることができる。この接着剤としては断熱性の高い接着剤が好ましい。また、ネジ締めによる付設、はめこみによる付設でもよい。
【0032】
また、電気回路5への伝熱をさらに抑制するため、電気回路基板5aと放熱部材3との間に断熱材を介在させ、この断熱材を介して電気回路5を放熱部材3に付設することが好ましい。この断熱材としては、熱伝導性が低いものであれば特に限定されず、例えば繊維、樹脂、ゴム等を用いることができる。この断熱材は、電気回路基板5aへ接着してもよいし、電気回路基板5aに形成材料を塗布して形成してもよい。
【0033】
電気回路5の伝熱部材対向面3cにおける付設箇所は特に限定されず、熱電モジュール4の周辺に適宜付設することができる。
【0034】
熱電モジュール4の出力用電極4fと電気回路5とを電気接続するリード線6の接続方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば半田付け、圧着金具による接続、導電性接着剤による接着、ワイヤボンディング等を挙げることができる。
【0035】
当該熱電ユニット1は、熱電モジュール4と電気接続される電気回路5が、伝熱部材対向面3cに付設されているため、熱電モジュール4と電気回路5との接続距離を短縮して電力ロスを低減することができる。また、電気回路5の温度上昇を抑制し、電気回路5の熱による故障を防止することができる。
【0036】
<第二実施形態>
図2の熱電ユニット11は、伝熱部材12と、放熱部材3と、この伝熱部材12と放熱部材3との間に配設される熱電モジュール4と、この熱電モジュール4に電気接続される電気回路5とを備える。伝熱部材12以外は、前記
図1の熱電ユニット1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
伝熱部材12は、略平板状であるが、放熱部材3と対向する放熱部材対向面12aの中央部に突出部12bを有している。この突出部12bは、放熱部材3側に突出するように段差状に形成されている。熱電モジュール4はこの突出部12bと放熱部材3の伝熱部材対向面3cとに接合されて配設されている。電気回路5は、伝熱部材対向面3c上の突出部12bと対向しない領域に付設されている。
【0038】
突出部12bの厚さ(放熱部材対向面12aからの高さ)としては特に限定されず、例えば1mm以上20mm以下とすることができる。突出部12bの平面積としては、熱電モジュール4の第二基板4bの面積よりも大きければ特に限定されないが、伝熱性の観点からは電気回路5と対向する部分が少ないほど好ましいため、第二基板4bと略等しくすることが望ましい。
【0039】
当該熱電ユニット11は、伝熱部材12の突出部12bに熱電モジュール4を配設することによって、熱電モジュール4の形状変更を伴わずに、電気回路5と伝熱部材12との距離を拡大できる。その結果、伝熱部材12から放熱されて電気回路5に伝わる熱量を低減して、電気回路5の熱故障の防止効果を容易かつ確実に向上させることができる。また、電気回路5に使用される機能素子5bの高さが、熱電モジュール4の高さよりも大きい場合であっても、機能素子5bが伝熱部材12に接触することを防ぐことができる。
【0040】
<第三実施形態>
図3の熱電ユニット21は、伝熱部材2と、放熱部材23と、この伝熱部材2と放熱部材23との間に配設される熱電モジュール4と、この熱電モジュール4に電気接続される電気回路5とを備える。放熱部材23以外は、前記
図1の熱電ユニット1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
放熱部材23は、前記
図1の熱電ユニット1の放熱部材3と同様に、略平板状の基材部23aの一方の面に放熱フィン23bを形成した部材である。ただし、この放熱部材23は、伝熱部材2と対向する伝熱部材対向面23cの中央部に突出部23dを有している。この突出部23dは、伝熱部材2側に突出するように段差状に形成されている。熱電モジュール4はこの突出部23dと伝熱部材2の放熱部材対向面2aとに接合されて配設されている。電気回路5は、伝熱部材対向面23cにおける突出部23d以外の領域に付設されている。
【0042】
突出部23dの厚さ及び平面積は、前記
図2の熱電ユニット11の突出部12bと同様とすることができる。
【0043】
当該熱電ユニット21は、放熱部材23の突出部23dに熱電モジュール4を配設することによって、熱電モジュール4の形状変更を伴わずに、電気回路5と伝熱部材2との距離を拡大できる。その結果、伝熱部材2から放熱されて電気回路5に伝わる熱量を低減して、電気回路5の熱故障の防止効果を容易かつ確実に向上させることができる。また、電気回路5に使用される機能素子5bの高さが、熱電モジュール4の高さよりも大きい場合であっても、機能素子5bが伝熱部材2に接触することを防ぐことができる。
【0044】
<第四実施形態>
図4の熱電ユニット31は、伝熱部材2と、放熱部材3と、この伝熱部材2と放熱手段3との間に配設される熱電モジュール4と、この熱電モジュール4に電気接続される電気回路5と、熱電モジュール4及び電気回路5を囲む枠体7とを備える。枠体7以外は、前記
図1の熱電ユニット1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
枠体7は、筒状体であり、伝熱部材2と放熱部材3との間における熱電モジュール4及び電気回路5が存在する空間を囲繞するように配設されている。枠体7は、伝熱部材2の放熱部材対向面2a及び放熱部材3の伝熱部材対向面3cに接続されている。
【0046】
枠体7の高さは、放熱部材対向面2a及び伝熱部材対向面3c間の距離に略等しい。枠体7の断面形状は、熱電モジュール4及び電気回路5を囲むことができれば特に限定されないが、強度向上性や放熱性の観点から、その周縁が放熱部材対向面2a及び伝熱部材対向面3cの周縁と略一致する形状とすることが好ましい。
【0047】
枠体7の材質としては特に限定されないが、伝熱部材2の熱が枠体7を介して放熱部材3に伝わると、伝熱部材2と放熱部材3との温度差が低下し熱電モジュール4の発電量が減少するため、これを防止できる熱伝導性の低い材質が好ましく、例えば樹脂等を用いることができる。また、枠体7は一体形成された筒状体であってもよいし、複数の板状体を組み合わせて構成してもよい。
【0048】
枠体7は、枠体7内部の温度上昇を抑えるために、放熱用の孔を有しているとよい。さらに、この放熱用孔は放熱部材3に近接する位置に設けることが好ましい。放熱用孔を放熱部材3に近づけて形成することで、伝熱部材2の温度低下を抑制しつつ、電気回路5及び放熱部材3の温度低下を促進できる。
【0049】
枠体7を伝熱部材2及び放熱部材3に固定する方法は特に限定されず、例えば接着剤を用いて枠体7の上下面を放熱部材対向面2a及び伝熱部材対向面3cに接合する方法等を用いることができる。
【0050】
当該熱電ユニット31は、前記枠体7が熱電モジュール4及び電気回路5を囲んでいるため、外部から侵入する埃等の夾雑物の付着による熱電モジュール4及び電気回路5のショートを防ぎ、回路の故障や誤動作を防止することができる。また、伝熱部材2と放熱部材3とが枠体7を介して接合されるため、当該熱電ユニット31は高い構造強度及び取扱い性を有する。
【0051】
<その他の実施形態>
本発明の熱電ユニットは前記実施形態に限定されるものではない。前記各実施形態では、放熱手段として放熱フィンを用いたが、本発明の放熱手段はこれに限定されず、例えばファンを用いた強制空冷手法や、液体を用いた冷却手法や、流体(冷媒)を強制循環させる冷却手法を用いることも可能である。
【0052】
さらに、伝熱部材及び放熱部材の対向面(平面形状)は長方形状に限定されるものではなく、円形状や、他の多角形状とすることも可能である。
【0053】
また、第二実施形態及び第三実施形態において、伝熱部材及び放熱部材の双方に突出部を形成してもよい。伝熱部材及び放熱部材にそれぞれ突出部を対向するように形成し、これらの突出部に熱電モジュールを配設することで、電気回路と伝熱部材との距離がさらに拡大され、電気回路の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0054】
さらに、第四実施形態において、上述のような筒状体を用いる代わりに、枠体として伝熱部材と放熱部材との間における熱電モジュール及び電気回路が存在する空間を囲うように複数の柱を配設してもよい。このような枠体を用いることで、夾雑物の侵入をある程度防ぎながら当該熱電ユニットの放熱性及び構造強度を向上させることができる。