(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、伝熱促進材として金属フィンを用いる方法では、反応速度を向上させようとすると金属フィンの表面積を増大させる必要があり、これにより、吸着材の密度が低下するという問題がある。
また、伝熱促進材として、単に、炭素繊維等の繊維状の熱伝導性材料を用いるのみでは、吸脱着反応の反応速度向上の効果が充分に得られない場合がある。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、吸着材成形体と熱媒体との間の熱交換の効率に優れ、吸着材成形体における吸脱着反応の反応速度が向上された熱交換型反応器及び吸着式ヒートポンプを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
即ち、第1の発明である熱交換型反応器は、吸着材成形体を収容可能な反応室、及び、熱媒体が流通する熱媒体流路が交互に配置されている筐体と、前記反応室に収容され、前記熱媒体との間で熱交換する伝熱面を有し、吸着質が吸着されるときに放熱し吸着質が脱着するときに蓄熱する吸着材、及び、軸心の方向が前記伝熱面に対して交差する繊維状の熱伝導性材料を含有する吸着材成形体と、を備える。
第1の発明では、繊維状の熱伝導性材料は、軸心の方向が前記伝熱面に対して45°以上であり、吸着材成形体に含有される繊維状の熱伝導性材料のうちの80個数%以上は、軸心の方向が前記伝熱面に対して70°以上である。
【0006】
第1の発明では、粉末状の吸着材と比較して吸着材の密度が高い吸着材成形体が用いられ、この吸着材成形体と熱媒体との間で、該吸着材成形体の伝熱面を介して熱交換が行なわれる。詳細には、吸着材への吸着質の吸着反応に伴い吸着材成形体から熱媒体へ熱が放熱され、かつ、吸着材からの吸着質の脱着(脱離)反応に伴い熱媒体から供給された熱が吸着材成形体に蓄熱される。ここで、吸着材成形体を含む反応室と熱媒体流路とが交互に配置されていることにより、前記熱交換の効率が向上する。
更に、吸着材成形体中に、軸心の方向(即ち、繊維状の熱伝導性材料の長さ方向)が伝熱面に対して交差する繊維状の熱伝導性材料が含まれていることにより、吸着材成形体の内部と熱媒体との間の熱交換の効率が向上する。この熱交換により、吸着時には吸着材成形体の内部から熱媒体に向けて吸着熱が効率よく放出され、かつ、脱着時には熱媒体から吸着材成形体の内部に向けて脱着熱が効率よく供給されるので、吸着熱及び脱着熱により吸脱着反応が阻害される問題が軽減される。
更に、吸着材成形体中に、繊維状の熱伝導性材料ではなく金属フィンを用いた場合と比較して、吸着材の密度を高く維持することができる。
以上により、第1の発明によれば、吸着材成形体における吸脱着反応の反応速度を向上させることができる。
【0007】
これに対し、吸着材と繊維状の熱伝導性材料とを含有する吸着材成形体を用いた場合であっても、繊維状の熱伝導性材料の軸心の方向と伝熱面とが交差しない場合(即ち、軸心の方向と伝熱面とが平行である場合)には、吸着材成形体の内部と熱媒体との間の熱交換の効率が向上し難いため、反応速度向上の効果が不充分となる。
【0008】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記繊維状の熱伝導性材料は、軸心の方向が前記伝熱面に対して45°以上であることが好ましい。これにより、吸着材成形体の内部と熱媒体との間の熱交換の効率がより向上し、前記反応速度がより向上する。
【0009】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記吸着材成形体に含有される繊維状の熱伝導性材料のうちの80個数%以上は、軸心の方向が、前記伝熱面に対して70°以上であることが好ましい。
ここで、「吸着材成形体に含有される繊維状の熱伝導性材料のうちの80個数%以上は、軸心の方向が、前記伝熱面に対して70°以上である」とは、吸着材成形体に含まれる大部分(80個数%以上)の繊維状の熱伝導性材料の軸心の方向が、前記伝熱面に対して略垂直(70°以上)となるようにある程度揃っていることを意味している。
これにより、熱媒体と吸着材成形体の内部との熱交換の効率がより向上するので、吸脱着反応の反応速度がより向上する。
更に、熱伝導性材料の軸心の方向がランダムである場合と比較して、吸着材成形体を作製する際のスプリングバックを抑制できるので、吸着材成形体中における吸着材の密度をより向上させることができる。ここで、スプリングバックとは、吸着材成形体を成形する際、加圧により一旦減少した吸着材成形体の体積が、圧を開放したときに戻る現象をいう。
【0010】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記熱伝導性材料は、アスペクト比が10以上であることが好ましい。これにより、熱媒体と吸着材成形体の内部との熱交換の効率をより向上させることができ、吸脱着反応の反応速度をより向上させることができる。
【0011】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記吸着材成形体が前記反応室の壁面と接触する平板状の吸着材成形体であり、前記伝熱面が前記壁面との接触面であることが好ましい。これにより、吸着材成形体と熱媒体との間での熱交換をより効率よく行なうことができるので、吸脱着反応の反応速度がより向上する。
【0012】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記熱伝導性材料が、無機材料であることが好ましい。これにより、熱媒体と吸着材成形体の内部との熱交換の効率をより向上させることができ、吸脱着反応の反応速度をより向上させることができる。
【0013】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記熱伝導性材料が、炭素繊維であることが好ましい。これにより、熱媒体と吸着材成形体の内部との熱交換の効率をより向上させることができ、吸脱着反応の反応速度をより向上させることができる。
【0014】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記吸着材が、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、及び粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、軸心の方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上であることが好ましい。これにより、熱媒体と吸着材成形体の内部との熱交換の効率をより向上させることができ、吸脱着反応の反応速度をより向上させることができる。
【0016】
第1の発明に係る熱交換型反応器では、前記吸着材成形体中における前記熱伝導性材料の量が、前記吸着材成形体の全量に対し、1体積%〜30体積%であることが好ましい。
前記熱伝導性材料の量が1体積%以上であることにより、熱伝導性材料による伝熱の効果をより向上させることができる。
前記熱伝導性材料の量が30体積%以下であることにより、吸脱着反応に関与する吸着材の密度がより高く維持される。
前記含有量は、より好ましくは1体積%〜20体積%であり、特に好ましくは5体積%〜20体積%である。
【0017】
次に、第2の発明である吸着式ヒートポンプは、第1の発明である熱交換型反応器を備える。
第2の発明である吸着式ヒートポンプは、吸着材成形体における吸着質の吸脱着反応の反応速度が高い熱交換型反応器(第1の発明)を備えており、前記反応速度が低下した場合における熱のロスが抑制されるので、熱の利用効率に優れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸着材成形体と熱媒体との間の熱交換の効率に優れ、吸着材に対する吸着質の吸脱着反応の反応速度が向上された熱交換型反応器及び吸着式ヒートポンプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る熱交換型反応器及び吸着式ヒートポンプについて、図面を参照しながら説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換型反応器を備えた吸着式ヒートポンプを模式的に示した図である。
図1に示すように、吸着式ヒートポンプ100は、本発明の実施形態に係る熱交換型反応器である熱交換型反応器20と、蒸発凝縮器40と、熱交換型反応器20と蒸発凝縮器40とを接続する配管10と、を備えて構成されている。
これにより、蒸発凝縮器40から熱交換型反応器20に供給されたアンモニアガス(NH
3)を熱交換型反応器20中の吸着材成形体に吸着させたり、熱交換型反応器20中の吸着材成形体から脱着(脱離)したアンモニアガス(NH
3)を蒸発凝縮器40に回収できるようになっている。吸着式ヒートポンプ100は、この熱交換型反応器20−蒸発凝縮器40間の圧力差に応じ、両者の間でアンモニアガス(NH
3)が行き来することによって作動する。吸着式ヒートポンプの作動原理の詳細については、例えば、「伝熱 Journal of the Heat Transfer Society of Japan Vol.45,No.192」(社団法人日本伝熱学会、2006年7月)の第20ページ〜第21ページを参照することができる。
なお、この実施形態は、吸着質としてNH
3を用いた実施形態であるが、NH
3に代えて、水、低級アルコール(例えば、炭素数1〜6のアルコール)等のその他の吸着質を用いてもよい。
【0022】
図2は、
図1における熱交換型反応器20を模式的に示した図である。
図2に示すように、熱交換型反応器20は、筐体22と、筐体22に設けられた複数の熱媒体流路26と、筐体22に設けられた複数の反応室24と、各反応室24内に収納された積層体30と、を有して構成されている。
筐体22内では、反応室24と熱媒体流路26とが交互に配置されている。反応室24と熱媒体流路26とは隔壁を隔てて互いに分離されている。これらの構成により、外部から供給され外部に排出される熱媒体M1と反応室24内の吸着材成形体との間で効率よく熱交換を行えるようになっている。この実施形態では、反応室24、熱媒体流路26は、それぞれ扁平矩形状の開口端を有する角柱状空間とされている。この実施形態では、熱交換型反応器20は、反応室24の開口方向(NH
3の流れ方向)と熱媒体流路26の開口方向(熱媒体の流れ方向)とが側面視で直交する、直行流型の熱交換型反応器として構成されている。
【0023】
熱交換型反応器20において、反応室24や熱媒体流路26の個数には特に限定はなく、熱交換型反応器20に対し入出力する熱量や、吸着材成形体の伝熱面の面積を考慮して適宜設定される。
また、筐体22の材質としては、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、等)等の、熱伝導性が高く、かつ、吸着質(NH
3等)に対して耐食性を有する材質が好適である。
【0024】
図2に示すように、積層体30は、2枚の吸着材成形体(吸着材成形体32A及び吸着材成形体32B;以下、これらをまとめて「吸着材成形体32A及び32B」ともいう)と、吸着材成形体32A及び32Bに挟持された支持体34と、から構成されている。
図2では、積層体30の構成を見やすくするために、吸着材成形体32Aと、支持体34と、吸着材成形体32Bと、を分離して図示している。
但し、積層体の構成としては、このような吸着材成形体/支持体/吸着材成形体の3層構成を少なくとも有する構成であればよく、3層構成以外にも、例えば、吸着材成形体と支持体とが交互に配置され、かつ、最外層が吸着材成形体であるその他の構成(例えば、吸着材成形体/支持体/吸着材成形体/支持体/吸着材成形体の5層構成、等)であってもよい。
また、反応室24には、積層体に代えて、吸着材成形体が単体として収納されていてもよい。該反応室24に吸着材成形体が単体として収納される場合、吸着質の流路が設けられた吸着材成形体を用いることなどにより、反応室24内に、配管10との間で吸着質を流通できる流路が確保されていることが好ましい。
【0025】
吸着材成形体32A及び32Bは、それぞれ、熱媒体M1との間で熱交換する伝熱面を有し、NH
3(吸着質)が吸着されるときに放熱しNH
3(吸着質)が脱着するときに蓄熱する吸着材、及び、軸心の方向が前記伝熱面に対して交差する繊維状の熱伝導性材料を含有する。
この実施形態では、吸着材成形体32Aが平板状の成形体であり、吸着材成形体32Aの一方の主面が伝熱面Sとなっており、この伝熱面Sと反応室24の内壁とが接している(吸着材成形体32Bの構成についても同様である)。
【0026】
以下、本発明における吸着材成形体(例えば吸着材成形体32A及び32B)について更に説明する。
【0027】
−吸着材−
前記吸着材成形体は、吸着材を少なくとも1種含有する。
前記吸着材としては吸着質を吸脱着できる材料であれば特に限定はない。前記吸着材としては多孔体が好ましい。
前記多孔体としては、吸脱着反応の反応性をより向上させる観点からは、10nm以下の細孔を持つ多孔体が好ましい。
前記細孔のサイズの下限としては、製造適性等の観点から、0.2nmが好ましく、3nmがより好ましい。
前記多孔体としては、吸脱着反応の反応性をより向上させる観点より、平均1次粒子径50μm以下の1次粒子が凝集して得られた1次粒子凝集体である多孔体が好ましい。
前記平均1次粒子径の下限としては、製造適性等の観点から、1.0μmが好ましい。
【0028】
前記吸着材の具体例としては、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等が挙げられる。
前記活性炭としては、BET法による比表面積が800m
2/g以上4000m
2/g以下(より好ましくは、1000m
2/g以上2000m
2/g以下)である活性炭が好ましい。
前記メソポーラスシリカとしては、BET法による比表面積が500m
2/g以上1500m
2/g以下(より好ましくは、700m
2/g以上1300m
2/g以下)であるメソポーラスシリカが好ましい。
前記ゼオライトとしては、BET法による比表面積が50m
2/g以上1000m
2/g以下(より好ましくは、100m
2/g以上1000m
2/g以下)であるゼオライトが好ましい。
前記シリカゲルとしては、BET法による比表面積が100m
2/g以上1500m
2/g以下(より好ましくは、300m
2/g以上1000m
2/g以下)であるシリカゲルが好ましい。
前記粘土鉱物としては、非架橋の粘土鉱物であっても、架橋された粘土鉱物(架橋粘土鉱物)であってもよい。前記粘土鉱物としては、セピオライト、スメクタイト系粘土(サポナイト、モンホリロナイト、ヘクトライト、等)、4−珪素雲母、雲母、バーミキュライト等が挙げられる。中でも、セピオライトが好ましい。
【0029】
吸着材成形体は、前記吸着材(好ましくは前記多孔体)を一種単独で含んでいてもよいし二種以上を含んでいてもよい。
本実施形態においては、作動温度等の作動条件に合わせて、吸着材(好ましくは前記多孔体)の種類を適宜選定することができる。
【0030】
前記吸着材成形体中における吸着材の充填密度は、0.10g/mL〜0.80g/mLが好ましい。充填密度が0.10g/mL以上であると、吸脱着反応に関与する吸着質の量をより多くすることができる。充填密度が0.80g/mL以下であると、吸着材成形体中における吸着質の移動抵抗をより低減できる。
【0031】
前記吸着材成形体中における吸着材の含有量は、吸脱着反応の反応性向上の観点より、前記吸着材成形体の全量に対し、50体積%以上であることが好ましく、60体積%以上であることがより好ましく、70体積%以上であることが特に好ましい。
【0032】
−繊維状の熱伝導性材料−
前記吸着材成形体は、軸心の方向が吸着材成形体の伝熱面に対して交差する繊維状の熱伝導性材料を少なくとも1種含有する。
【0033】
前記吸着材成形体に含有される吸着材は、一般的に熱伝導率が低いため(一般的な吸着材の熱伝導率は、例えば0.05W/(m・K)〜0.25W/(m・K)である)、吸着材を含む吸着材成形体では、吸脱着反応に伴う吸着熱及び脱着熱により吸着材の温度が変化し、これにより平衡関係が変化してその後の吸脱着反応が阻害される場合がある。
この点に関し、本発明では、前記吸着材成形体に、軸心の方向が吸着材成形体の伝熱面に対して交差する繊維状の熱伝導性材料を更に含有させることにより、この繊維状の熱伝導性材料を通じ、吸着材成形体の内部と熱媒体(例えば熱媒体M1)との間での熱交換が効率よく行なわれる。この熱交換により、吸着時には吸着材成形体の内部から熱媒体に向けて吸着熱が効率よく放出され、かつ、脱着時には熱媒体から吸着材成形体の内部に向けて脱着熱が効率よく供給される。従って、本発明によれば、吸着熱及び脱着熱により吸脱着反応が阻害される問題が軽減され、吸着材成形体における吸着質の吸脱着反応の反応速度が向上する。
【0034】
前記繊維状の熱伝導性材料のアスペクト比(繊維長/繊維径)としては、上記効果をより効果的に奏する観点より、10以上が好ましく、15以上がより好ましい。
また、前記アスペクト比は、吸着材の充填密度をより高く維持する観点からは、500以下が好ましく、300以下がより好ましく、100以下が特に好ましい。
【0035】
前記繊維状の熱伝導性材料の繊維長には特に制限はないが、10μm〜1000μmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましく、100μm〜300μmが特に好ましい。
前記繊維状の熱伝導性材料の繊維径には特に制限はないが、0.01μm〜100μmが好ましく、0.1μm〜100μmがより好ましく、1μm〜50μmが特に好ましい。
【0036】
前記繊維状の熱伝導性材料としては、上記効果をより効果的に奏する観点より、無機材料が好ましく、金属繊維及び炭素繊維(カーボンファイバー(Carbon Fiber);以下、「CF」ともいう)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
金属繊維及び炭素繊維について、好ましいアスペクト比及び好ましい繊維長は、それぞれ上述した範囲である。
前記金属繊維としては、アルミニウム繊維、銅繊維、等が挙げられる。
前記繊維状の熱伝導性材料としては、炭素繊維が特に好ましい。
【0037】
前記炭素繊維の中でも、特に好ましくは、アスペクト比が10〜500で、繊維長が10μm〜500μm(より好ましくは100μm〜300μm)の炭素繊維である。
【0038】
前記繊維状の熱伝導性材料の軸心の方向の熱伝導率は、前記吸着材の熱伝導率よりも高ければ特に制限はないが、例えば、1.0W(m・K)以上とすることができ、2.0W/(m・K)以上が好ましい。
【0039】
前記吸着材成形体中において、前記熱伝導性材料の軸心の方向は、吸着材成形体の伝熱面に対して交差していること以外には特に限定はなく、複数の熱伝導性材料の軸心の方向が、前記伝熱面に対してランダムな方向となっていてもよい。
但し、前記熱交換の効率をより向上させ、吸脱着反応の反応速度をより向上させる観点からは、前記吸着材成形体の好ましい形態は、前記繊維状の熱伝導性材料として、軸心の方向が前記伝熱面に対して45°以上である繊維状の熱伝導性材料を少なくとも含む形態である。この形態の吸着材成形体には、軸心の方向が前記伝熱面に対して45°未満である繊維状の熱伝導性材料が含まれていてもよい(例えば、繊維状の熱伝導性材料の軸心の方向が伝熱面に対してランダムな方向となっている場合等)。
ここで、繊維状の熱伝導性材料の軸心の方向が伝熱面に対して45°以上であるとは、
軸心の方向と伝熱面とのなす角のうち、最小の角度が45°以上であることを意味する(下記の「70°以上」や「80°以上」の意味についても同様である)。
【0040】
本発明において、前記熱交換の効率をより向上させ、吸脱着反応の反応速度をより向上させる観点からみた特に好ましい形態は、前記吸着材成形体に含有される大部分の繊維状の熱伝導性材料の軸心の方向が、前記伝熱面に対して略垂直となるように、ある程度揃っている形態である。
具体的には、前記吸着材成形体に含有される繊維状の熱伝導性材料のうちの80個数%以上(好ましくは90個数%以上、より好ましくは95個数%以上)は、軸心の方向が、前記伝熱面に対して70°以上(より好ましくは80°以上)となっている形態が特に好ましい。
更に、この形態では、熱伝導性材料の軸心の方向がランダムである場合と比較して、吸着材成形体を作製する際のスプリングバックを抑制できるので、吸着材成形体中における吸着材の密度をより向上させることができ、前記反応速度を更に向上させることができる。
なお、軸心の方向と伝熱面とのなす角は、理想的には90°(垂直)であるが、必ずしも正確に90°(垂直)である必要はない。
【0041】
前記吸着材成形体中における前記熱伝導性材料の量は、前記吸着材成形体の全量に対し、1体積%〜30体積%が好ましく、1体積%〜20体積%がより好ましく、5体積%〜20体積%が特に好ましい。
前記含有量が1体積%以上であると、前記熱伝導性材料による効果がより効果的に奏される。
前記含有量が30体積%以下であると、吸脱着反応に関与する吸着質の量をより多くすることができる。
【0042】
−その他の成分−
前記吸着材成形体は、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、バインダー、造孔材、等が挙げられる。
前記バインダーとしては、水溶性バインダーの少なくとも1種であることが好ましい。
前記水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、トリメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。中でも、トリメチルセルロースが好ましい。
前記バインダーの含有量は、前記吸着材成形体の全量に対し、1〜5体積%であることが好ましく、1〜2体積%であることがより好ましい。
【0043】
−吸着材成形体の作製方法−
また、前記吸着材成形体を作製(成形)する方法については特に制限はなく、前記吸着材及び前記熱伝導性材料を含む混合物(例えばスラリー)を、加圧成形、押し出し成形等の公知の成形手段により成形する方法が挙げられる。
前記成形の圧力としては、例えば、20MPa〜100MPaが挙げられ、20MPa〜40MPaが好ましい。
【0044】
前記吸着材成形体に含有される繊維状の熱伝導性材料のうちの80個数%以上の軸心の方向が前記伝熱面に対して70°以上である吸着材成形体を作製する方法としては、例えば、以下に示す第1の方法及び第2の方法が挙げられる。
以下に示す第1の方法及び第2の方法は、押し出し成形による前記吸着材成形体の成形では、繊維状の熱伝導性材料の軸心の方向が押し出し方向と略平行な方向に揃い易いという性質を利用した方法である。
ここで、「熱伝導性材料の軸心の方向が押し出し方向と略平行」とは、軸心の方向と押し出し方向とのなす角が30°以下(好ましくは20°以下)であることを指す。
第1の方法は、まず、押し出し成形により、熱伝導性材料の軸心の方向が押し出し成形時の押し出し方向と略平行な方向に揃っている柱状の成形体を作製し、次いで、得られた柱状の成形体を押し出し成形時の押し出し方向に対して垂直な複数の平面で切断することにより、平板状の成形体として吸着材成形体を得る方法である。
第2の方法は、まず、押し出し成形により、熱伝導性材料の軸心の方向が押し出し成形時の押し出し方向と略平行な方向に揃っている平板状の成形体を複数作製し、得られた複数の平板状の成形体を重ね合わせて接着して柱状の成形体を得、得られた柱状の成形体を押し出し成形時の押し出し方向に対して垂直な複数の平面で切断することにより、平板状の成形体として吸着材成形体を得る方法である。
【0045】
次に、
図2に示すように、積層体30は、支持体34を含んでいる。
この支持体34は、該支持体34の面に沿った方向(
図2中の白抜き矢印の方向)にNH
3(吸着質)を流通させるための部材である。このような支持体34として、例えば、多孔体プレートを用いることができる。
この支持体34により、2枚の吸着材成形体間にNH
3の流路を確保できるので、配管10から供給されたNH
3を、吸着材成形体32A及び32Bの広い範囲に供給できる。更に、吸着材成形体32A及び32Bの広い範囲に吸着したNH
3を、支持体34を介して配管10に向けて放出できる。
【0046】
また、
図1に示すように、吸着式ヒートポンプ100において、熱交換型反応器20と配管10とは、熱交換型反応器20中の複数の反応室24と配管10とを気密状態で連通するヘッダ部材28(例えば、マニホールド等)を介して接続されている。これにより、複数の反応室24と配管10との間で気密状態でアンモニアを流通できるようになっている。
なお、
図1では、熱交換型反応器20の構成を見やすくするために、前記ヘッダ部材28、下記ヘッダ部材29A、下記ヘッダ部材29B、下記熱媒体配管27A、及び下記熱媒体配管27Bを、二点鎖線で表している。
【0047】
また、
図1に示すように、熱交換型反応器20は、ヘッダ部材29A(例えば、マニホールド等)を介して熱媒体配管27Aに接続されるとともに、ヘッダ部材29B(例えば、マニホールド等)を介して熱媒体配管27Bに接続されている。熱交換型反応器20内の複数の熱媒体流路26は、該ヘッダ部材29Aにより気密状態で熱媒体配管27Aに連通されるとともに、該ヘッダ部材29Bにより気密状態で熱媒体配管27Bに連通されている。これにより、熱媒体配管27A及び熱媒体配管27Bを通じ、熱交換型反応器20内の熱媒体流路26と吸着式ヒートポンプ100の外部(熱利用対象)との間で熱媒体M1を流通できるようになっている。
熱媒体M1としては、エタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱媒体として通常用いられる流体を用いることができる。
【0048】
また、
図1に示すように、吸着式ヒートポンプ100における配管10にはバルブV1(弁)が設けられており、バルブV1の開閉により、熱交換型反応器20側と蒸発凝縮器40側とのアンモニア圧の差を調節できるようになっている。これにより、熱交換型反応器20側のアンモニア圧と蒸発凝縮器40側のアンモニア圧との差をより効果的に保持できる。即ち、バルブV1を閉じた状態を維持することによりアンモニア圧の差を長時間保持することができ、その後バルブV1を開くことにより一方から他方にアンモニアを輸送できる。
【0049】
本実施形態において、蒸発凝縮器40の構成には特に制限はなく、公知の蒸発凝縮器の構成とすることができる。また、本実施形態では、蒸発凝縮器40に代えて、蒸発器及び凝縮器を用いてもよい。
【0050】
また、吸着式ヒートポンプ100には、装置内を排気するための排気手段、装置内のアンモニア圧を測定するための圧力測定手段等が接続されていてもよい。
また、本実施形態に係る熱交換型反応器は、吸着式ヒートポンプに限らず、その他の熱輸送システムにも用いることができる。その他の熱輸送システムの例としては、少なくとも、本発明の熱交換型反応器と、化学蓄熱材を含む熱交換型反応器と、が配管で接続された構成の熱輸送システムを挙げることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって限定されるものではない。なお、以下において、「wt%」は質量%を示し、「vol%」は体積%を示す。
以下の実施例のうち、実施例2、3は、それぞれ参考例2、3と読み替える。
【0052】
〔実施例1〕
≪NH
3脱着速度の測定≫
<吸着材成形体aの作製>
まず、吸着材としての粉末状の活性炭(平均一次粒子径5μm、BET法による比表面積2000m
2/g)60質量部と、繊維状の熱伝導性材料としてのカーボンファイバー(CF)(ミルド品(日本グラファイトファイバー(株)製XN−100);繊維長200μm、繊維径10μm、アスペクト比20)40質量部と、トリメチルセルロース5質量部と、水100質量部と、を混合しスラリーを得た。
得られたスラリーを、20mm×3mmの開口部を有する金型を用いて押し出し成形(押し出し圧力40MPa)し、20mm×20mm×厚さ3mmのサイズの平板状の成形体を7枚作製した。
次に、7枚の平板状の成形体を、厚さ方向に重なるように接着剤(カルボキシメチルセルロース(CMC))によって接着し、柱状の成形体を得た。
得られた柱状の成形体を、押し出し成形における押し出し方向に対して垂直な複数の平面で切断し、厚さ3mmの平板状の成形体を得た。得られた平板状の成形体の一辺を削ってサイズを調整し、20mm×20mm×厚さ3mmのサイズの吸着材成形体aを得た。吸着材成形体aにおいて、20mm×20mmの面を伝熱面とした。
吸着材成形体aにおいて、活性炭の充填密度は0.32g/mLであり、吸着材成形体a全体に対するCFの比率は10体積%である。
【0053】
得られた吸着材成形体aを厚さ方向に切断し、得られた断面を光学顕微鏡(倍率3000倍)によって観察した。
図3は、吸着材成形体aの断面光学顕微鏡像である。
図3中には、伝熱面Sと、CFの軸心のおよその方向(両側矢印)と、を示した。
図3に示すように、吸着材成形体aに含まれる大部分のCFは、軸心の方向が伝熱面Sに対して略垂直となる方向に揃っていた。詳細には、吸着材成形体aに含有されるCFのうちの95個数%以上は、軸心の方向が、前記伝熱面に対して70°以上であった。
【0054】
<熱交換型反応器の作製>
吸着材成形体aを用い、
図2に示した熱交換型反応器20と同様の構成の熱交換型反応器を作製した。詳細を以下に示す。
まず、反応室24を2室有する筐体22(材質:SUS304)を準備した。
次に、上記吸着材成形体a(2枚)によって支持体34を挟んだ構造の積層体30を作製し、得られた積層体30を各反応室24内に収納した。支持体34としては、20mm×20mm×厚さ0.5mmのステンレス製多孔体シートを用いた。
【0055】
<NH
3脱着速度の測定>
上記熱交換型反応器を用い、
図1に示す吸着式ヒートポンプ100において、蒸発凝縮器40をNH
3チャンバーに置き換えた構成の実験機を準備した。この実験機では、NH
3チャンバーにNH
3ガスボンベを接続し、実験機内(NH
3チャンバー、熱交換型反応器の反応室、及び配管の中;以下同じ。)にNH
3を供給できるようにした。更に、NH
3チャンバーに真空ポンプ及び圧力計を接続し、NH
3チャンバー内のNH
3圧を調整したり、実験機内を排気できるようにした。
この実験機では、熱交換型反応器の容積を6.0mLとし、NH
3チャンバー容積を2.2Lとした。
【0056】
NH
3脱着速度の測定は以下のようにして行なった。
まず、準備段階として、バルブV1を開いた状態で、熱交換型反応器20の熱媒体流路26に、液温6℃、流量60mL/minの水(熱媒体M1)を流通させるとともに実験機内にNH
3を供給し、反応室24内の吸着材成形体aに対しNH
3を吸着させた。この操作を吸着平衡に達するまで行なった。その後、バルブV1を閉じ、NH
3チャンバー内のNH
3圧を2atmに減圧した。
次に、上記液温及び液量の水(熱媒体M1)の流通を維持したままバルブV1を開き、反応室24内の吸着材成形体aから脱着(脱離)したNH
3を、NH
3チャンバーに輸送した。
このNH
3の輸送によるNH
3チャンバー内の圧力上昇を観測することにより、NH
3の脱着反応の反応速度(反応時間と脱着率との関係)を求めた。ここでは、バルブV1を開いた時からの経過時間を反応時間とした。
測定結果を
図6に示す。
図6及び
図7では、本実施例1の測定結果について、便宜上、「CF略垂直」と併記する。
【0057】
≪吸着材成形体の熱伝導率の測定≫
吸着材成形体aの作製と同様の方法により、φ20mm×厚さ2mm、φ20mm×厚さ3mm、φ20mm×厚さ4mmの3種類の熱伝導率測定用サンプル(吸着材成形体)を作製した(いずれのサンプルにおいても、φ20mmの面が伝熱面である)。
各サンプルについて、定常法により、厚さ方向(伝熱面に対して垂直な方向)の熱伝導率をそれぞれ測定し、各サンプルにおける測定結果の平均値を本実施例1における厚さ方向の熱伝導率とした。
測定結果を
図7に示す。
【0058】
〔実施例2〕
≪NH
3脱着速度の測定≫
実施例1で用いたスラリーを、20mm×3mmの開口部を有する金型を用いて押し出し成形(押し出し圧力40MPa)し、20mm×20mm×厚さ3mmのサイズの吸着材成形体bを作製した。
吸着材成形体bにおいて、活性炭の充填密度は0.32g/mLであり、吸着材成形体b全体に対するCFの比率は10体積%である。
得られた吸着材成形体bについて、実施例1における吸着材成形体aと同様にして、光学顕微鏡観察を行なった。
図4は、吸着材成形体bの断面光学顕微鏡像である。
図4中には、伝熱面Sと、CFの軸心のおよその方向(両側矢印)と、を示した。
図4に示すように、吸着材成形体bでは、軸心の方向が伝熱面Sと交差するCFが含まれてはいるものの、いずれのCFにおいても、軸心の方向と伝熱面Sとのなす角が30°以下となっていた。
【0059】
次に、実施例1における吸着材成形体aを、上記吸着材成形体bに変更したこと以外は実施例1と同様にしてNH
3脱着速度の測定を行なった。
測定結果を
図6に示す。
図6及び
図7では、本実施例2の測定結果について、便宜上、「CF略水平」と併記する。
【0060】
≪吸着材成形体の熱伝導率の測定≫
吸着材成形体bの作製と同様の方法により、φ20mm×厚さ2mm、φ20mm×厚さ3mm、φ20mm×厚さ4mmの3種類の熱伝導率測定用サンプル(吸着材成形体)を作製した(いずれのサンプルにおいても、φ20mmの面が伝熱面である)。
各サンプルを用い、実施例1と同様にして厚さ方向の熱伝導率を測定した。
測定結果を
図7に示す。
【0061】
〔実施例3〕
≪NH
3脱着速度の測定≫
実施例1で用いたスラリーを加圧成形(成形圧力40MPa)し、20mm×20mm×厚さ3mmのサイズの吸着材成形体cを作製した。
吸着材成形体cにおいて、活性炭の充填密度は0.32g/mLであり、吸着材成形体c全体に対するCFの比率は10体積%である。
得られた吸着材成形体cについて、実施例1における吸着材成形体aと同様にして、光学顕微鏡観察を行なった。
図5は、吸着材成形体cの断面光学顕微鏡像である。
図5に示すように、吸着材成形体cでは、CFの軸心の方向がランダムな方向となっていた。吸着材成形体cには、軸心の方向が伝熱面に対し45°以上であるCFも含まれていた。
【0062】
次に、実施例1における吸着材成形体aを、上記吸着材成形体cに変更したこと以外は実施例1と同様にしてNH
3脱着速度の測定を行なった。
測定結果を
図6に示す。
図6及び
図7では、本実施例3の測定結果について、便宜上、「CFランダム」と併記する。
【0063】
≪吸着材成形体の熱伝導率の測定≫
吸着材成形体cの作製と同様の加圧成形により、φ20mm×厚さ2mm、φ20mm×厚さ3mm、φ20mm×厚さ4mmの3種類の熱伝導率測定用サンプル(吸着材成形体)を作製した(いずれのサンプルにおいても、φ20mmの面が伝熱面である)。
各サンプル(CF10vol%;活性炭の充填密度0.32g/mL)を用い、実施例1と同様にして厚さ方向の熱伝導率を測定した。
更に、スラリーに含まれる活性炭及びCFの量を、活性炭40質量部及びCF60質量部に変更し、上記と同様の熱伝導率の測定を行なった(CF15vol%;活性炭の充填密度0.26g/mL)。
更に、スラリーに含まれる活性炭及びCFの量を、活性炭30質量部及びCF70質量部に変更し、上記と同様の熱伝導率の測定を行なった(CF18vol%;活性炭の充填密度0.19g/mL)。
測定結果を
図7に示す。
【0064】
〔比較例1〕
実施例2において、吸着材成形体bを作製するスラリーに、CFを含有させず、活性炭の量を100質量部に変更したこと以外は実施例2と同様の測定を行なった。
比較例1の吸着材成形体における活性炭の充填密度は0.52g/mLである。
測定結果を
図6及び
図7に示す。
図6及び
図7では、本比較例1の測定結果について、便宜上、「CFなし」と併記する。
【0065】
図6は、実施例1〜3及び比較例1における、NH
3の脱着反応の反応時間とNH
3の脱着率との関係を示すグラフである。
横軸の時間(sec)は、NH
3の脱着反応の反応時間であり、具体的には、バルブを開いた時からの経過時間(秒)である。
縦軸の脱着率(−)は、実施例1における反応時間300secでのNH
3の脱着量を1.0とし、実施例1における反応時間0secでのNH
3の脱着量を0.0としたときの相対値である。ここで、NH
3の脱着量は、NH
3チャンバー内の圧力増加に基づいて求めた。
【0066】
図6に示すように、伝熱面に対して軸心の方向が交差するCFを含む吸着材成形体を用いた、実施例1(CF略垂直)、実施例2(CF略水平)、及び実施例3(CFランダム)では、CFを含まない吸着材成形体を用いた比較例1(CFなし)に対し、NH
3の脱着速度が向上していた。
実施例1〜3の中でも、軸心の方向が伝熱面に対して45°以上であるCFを含む吸着材成形体を用いた実施例1及び3では、NH
3の脱着速度が大きいことが確認された。
更に、実施例1及び3のうち、吸着材成形体に含有されるCFのうちの95個数%以上の軸心の方向が伝熱面に対して70°以上である実施例1では、NH
3の脱着速度が極めて大きいことが確認された。
【0067】
図7は、実施例1〜3及び比較例1における、吸着材成形体中の活性炭充填密度と、吸着材成形体の厚さ方向の熱伝導率(W/(m・K))と、の関係を示すグラフである。
図7に示す熱伝導率は、
図6に示したNH
3の脱着速度とよく対応しており、実施例1〜3(中でも実施例1及び3、特に実施例1)における熱伝導率が高かった。これにより、厚さ方向(伝熱面に対し垂直な方向)の熱伝導率が向上するにつれ、NH
3のアンモニア脱着速度が向上することが確認された。
特に、実施例1では、活性炭の高い充填密度(0.32g/mL)を維持した状態で、厚さ方向(伝熱面に対し垂直な方向)について大きな熱伝導度が得られることが確認された。このことが、実施例1においてNH
3の脱着速度を顕著に向上させている理由であると考えられる。
【0068】
上記実施例では、NH
3の脱着反応の反応速度(脱着速度)を評価したが、NH
3の吸着反応の反応速度(吸着速度)についても上記実施例と同様の結果が得られることはいうまでもない。