【実施例】
【0035】
以下において、「%」及び「部」は特に断らない限り、それぞれ「重量%」及び「重量部」を意味するものとする。
【0036】
(実施例1)
表1に示す配合割合(%)で各原料を用い、次のようにしてハードグミキャンディを作製した。まず、砂糖、水飴及びブドウ糖液糖を100℃で加熱混合し、これにゼラチンを水に膨潤させて60℃で加熱することにより調製したゼラチン水溶液及びグリセリンを添加してキャンディベースを作製した。得られたキャンディベースに、洋菓子用米粉(商品名:リ・ファリーヌ、群馬製粉(株)製)、小麦ファイバー(不溶性食物繊維、商品名:Vitacel(商標名)小麦ファイバー、(株)Fiニュートリション製)及びアラビアガムを添加し、さらにミント系香料及び光沢剤(商品名:3073、カポール社製)を適量添加して60℃で混合してグミキャンディ液を調製した。得られたグミキャンディ液を断面寸法8mm×8mmの型に充填した後、およそ60℃で乾燥して水分値を11%に調整し、平均高さ4mmのハードグミキャンディを作製した。
【0037】
実施例1のハードグミキャンディに関しての物性試験結果を
図1及び
図2に示す。
図1は、実施例1〜2及び比較例1における貯蔵弾性率(G’)の測定結果を示すグラフである。
図2は、実施例1〜2及び比較例1における損失正接(tanδ)の測定結果を示すグラフである。
図1及び
図2において、「▲」は実施例1を示し、「●」は実施例2を示し、「*」は比較例1を示す。
【0038】
図1及び
図2によれば、実施例1のハードグミキャンディは、角周波数10rad/s、25℃での測定値が貯蔵弾性率(G’)1.35×10
5Paかつ損失正接(tanδ)1.0であった。これにより、いずれも本発明に規定された貯蔵弾性率:0.8×10
5〜2.0×10
5Pa、かつ損失正接(tanδ):0.9〜1.1の範囲にあることが示されている。
【0039】
実施例1で作製したハードグミキャンディに関して歯付きの有無を確認するために、パスティーユらしい食感としてRicola社のパスティーユ(以下「Rパスティーユ」とする)を基準に訓練されたパネラー5名により「食感」と「歯付きの改善」に関して評価を行った。
【0040】
食感に関しての評価は、次の基準に従って実施した。
◎:Rパスティーユよりもさらに弾力が増し、一度で噛み切れないような硬さであり、非常に良好な食感である。
○:Rパスティーユと同等の弾力を有し、一度で噛み切れないような硬さであり、良好な食感である。
△:Rパスティーユよりも弾力が低下し、一度で噛み切れるような硬さであり、食感が良好でない。
×:Rパスティーユよりも弾力が非常に弱く、一度で容易に噛み切れるような硬さであり、食感が悪い。
【0041】
また、歯付きに関しての評価は、次の基準に従って実施した。
◎:歯付きがほとんどなく、歯付き性が大幅に改善されている。
○:歯付きが少なく、歯付き性が比較的改善されている。
△:歯付きがあり、歯付き性が改善されていない。
×:歯付きが起こり易く、歯付き性が悪い。
【0042】
上記評価は、「◎」及び「○」が5人のパネラー中4人以上であった場合に合格基準としており、弾力及び/又は歯付き性に改善が認められなかったこれ以外の評価は不合格とした。基本的には、食感及び歯付きが共に「○」以上の評価であれば、本発明の目的を達成していると考えられる。食感及び歯付きに関しては、かなり改善されていた。結果を、表1に示す。
【0043】
(実施例2)
表1に示す配合割合(%)で各成分を用いる以外は、実施例1と同様にして、水分値11%、及び、
図1及び
図2に示されるとおり、角周波数10rad/s、25℃での測定値が貯蔵弾性率(G’)0.87×10
5Paかつ損失正接(tanδ)1.1のハードグミキャンディを作製した。実施例2のハードグミキャンディの貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)は、本発明に規定された範囲内であった。
【0044】
実施例2では、洋菓子用米粉の量を引き上げることによって、食感と歯付きの向上を確認した。表1に示されているとおり、うるち米由来の米粉の量を変化させても5〜20%の範囲であれば食感は維持され、歯付きも改善されている。
【0045】
(実施例3)
表1に示す配合割合(%)で各成分を用いる以外は、実施例1と同様にして、水分値11%、及び、角周波数10rad/s、25℃での測定値が貯蔵弾性率(G’)1.43×10
5Paかつ損失正接(tanδ)1.1のハードグミキャンディを作製した。
表1に示されているとおり、実施例3はアラビアガムの配合割合が典型的なパスティーユと同等に調整された処方である。小麦ファイバーの量も実施例1,2よりも増加させているが、食感及び歯付きに関して改善が認められている。
【0046】
(比較例1)
表1に示す配合割合(%)で各成分を用いる以外は、実施例1と同様にして、水分値11%、及び、
図1及び
図2に示されるとおり、角周波数10rad/sでの測定値が貯蔵弾性率(G’)2.45×10
5Paかつ損失正接(tanδ)1.7のグミキャンディを作製した。
表1に示されているとおり、比較例1はアラビアガムの配合割合が典型的なパスティーユと同等に調整された処方であるが、米粉と不溶性食物繊維とを含んでいない。したがって、対照(コントロール)であるため、パスティーユの食感は維持されるが、歯付きに関しては改善が認められなかった。
【0047】
比較例1の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)は、いずれも本発明に規定された範囲外であった。特に、損失正接(tanδ)は大きくかけ離れた値であった。パスティーユの物性の特徴は、比較例1のように0.1〜100rad/sの測定の間に損失正接(tanδ)が1.0を大きく超えることである。この結果は、比較例1のパスティーユ及び実施例1〜2の低水分ハードグミキャンディが、完全にゲル化を生じていないために固体の物性だけでなく、液性の物性も併せ持つことを示している。これは、従来のゼラチンリッチのグミキャンディ(tanδ<1)とは異なっており、非常に特異的な物性である。
【0048】
(比較例2)
表1に示す配合割合(%)で各成分を用いる以外は、実施例1と同様にして、水分値11%、及び、角周波数10rad/s、25℃での測定値が貯蔵弾性率(G’)1.13×10
4Paかつ損失正接(tanδ)0.6のグミキャンディを作製した。
表1に示されているとおり、比較例2はアラビアガムの配合割合が低い処方であるが、本発明における前提条件であるパスティーユの食感にもなっていない。
【0049】
(比較例3)
表1に示す配合割合(%)で各成分を用いる以外は、実施例1と同様にして、水分値11%、及び、角周波数10rad/s、25℃での測定値が貯蔵弾性率(G’)1.20×10
5Paかつ損失正接(tanδ)0.7のグミキャンディを作製した。
表1に示されているとおり、比較例3は不溶性食物繊維を含有しない処方であり、アラビアガムの配合割合は2%以上であるため弾力のある食感を維持している。しかも、洋菓子用米粉が配合されているため歯付きも少々改善は認められたものの依然としてある程度の歯付きが存在しているため、合格基準には達しない。
【0050】
(比較例4)
表1に示す配合割合(%)で各成分を用いる以外は、実施例1と同様にして、水分値11%、及び、角周波数10rad/s、25℃での測定値が貯蔵弾性率(G’)0.74×10
5Pa及び損失正接(tanδ)0.7のグミキャンディを作製した。
表1に示されているとおり、比較例3は洋菓子用米粉の配合割合が本発明に規定されている範囲を下回る処方であり、歯付きが改善されていないため、良好な結果は得られなかった。
【0051】
【表1】
【0052】
(実施例4〜9)
表2に示す配合割合(%)で各成分を用いる以外は、実施例1と同様にして、ハードグミキャンディを作製した。すなわち、実施例4〜9に関しては、米粉の種類と不溶性食物繊維の種類をそれぞれ変更して、食感と歯付きを調査したが、実施例1〜3と同様に食感と歯付き防止効果に関して良好な結果が認められた。また、実施例4〜9のハードグミキャンディの水分値、及び、角周波数10rad/s、25℃での測定値である貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を下記表3に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
(実施例10)
ミント系香料の全使用量の一部を、ミントを封入した食品用マイクロカプセル(商品名:香料カプセル、(株)日本カプセルプロダクツ製)に変更する以外は、実施例1と同様にして、水分値11%、角周波数10rad/s、25℃での測定値である貯蔵弾性率(G’)1.36×10
5Paかつ損失正接(tanδ)1.0の低水分ハードグミキャンディを作製した。なお、ミントの配合割合が0.1%になるように、ミント系香料及び食品用マイクロカプセルのそれぞれの配合割合を調整した。得られた低水分ハードグミキャンディは、一度で噛み切れないような硬くて弾力のある食感を有し、長時間咀嚼しても歯付きがほとんど起こらなかった。
【0056】
従来のパスティーユは、ハードな食感(硬くて弾力のある食感)を持っているために、口中清涼食品を好む人々にとってはタブレット又はガムの代替食品として好まれている。しかも、爽快感を強化した食品としての存在はしばしばガムやタブレットよりも高く評価されている。しかしながら、歯付きが生じるために、食べるシチュエーションが限定されてしまい、場合によってはガムやタブレットのほうが好まれ、パスティーユはしばしば敬遠される傾向があった。
【0057】
今回、本発明を成し遂げることによって、ハードな食感を有しかつ爽快感を著しく強化した食品でありながら、歯付きがほとんど起こらないため時と場所を選ばずに食べることができる低水分ハードグミキャンディが得られた。また、本発明の低水分ハードグミキャンディは、パスティーユと同等又はそれ以上に噛み応えがあり、ガムやタブレット等よりも覚醒する力が強いために、睡眠からの目覚め時や運転中、受講中等のいかなるときにも非常に効果的な覚醒機能を発揮することが可能である。
【0058】
また、うるち米由来の米粉、不溶性食物繊維及びアラビアガムをそれぞれ所定の配合割合で用いることにより、弾性貯蔵率(G’)及び損失正接(tanδ)が所定の範囲にある本発明の低水分ハードグミキャンディが得られることが明らかとなった。そして、弾性貯蔵率(G’)及び損失正接(tanδ)が所定の範囲にある場合には、硬くて弾力のあるハードな食感が得られるだけでなく、従来のパスティーユとは異なり、歯付き性が大幅に改善され、咀嚼中にほとんど歯付きしないことが明らかとなった。