特許第6069999号(P6069999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069999
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】水質測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20170123BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G01N21/33
   G01N33/18 106E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-204354(P2012-204354)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-59214(P2014-59214A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 俊直
(72)【発明者】
【氏名】檀 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 基
(72)【発明者】
【氏名】堀 健人
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−019764(JP,A)
【文献】 特開平05−296929(JP,A)
【文献】 特開昭50−118775(JP,A)
【文献】 米国特許第04839529(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/33
G01N 33/18
G01N 21/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水を自然落下させるノズルと、前記落下した試料水により形成される水柱の側方に該水柱から離間して配置された発光部と受光部とを備え、前記発光部からの光を前記水柱に照射した結果、前記受光部が受光する光に基づき前記試料水を測定する水質測定装置において、
前記発光部および前記受光部を覆う開閉可能なシャッター部と、
前記シャッター部の開閉を制御する制御部と、
前記ノズルの上流に設けられた水位センサ、フローコントローラまたは流量計と、
を備え
前記シャッター部は、前記水質測定装置の電源が投入された当初は閉じられており、
前記制御部は、前記水位センサ、フローコントローラまたは流量計からの信号を受け、試料水のレベルが所定量に達していない“オフ”から所定量に達している“オン”となったか否か、または、試料水のレベルが初めから所定量に達している“オン”であるか否かを判断し、“オン”であること、または、“オフ”から“オン”になったものと判断すると、所定時間経過後に前記シャッター部を開くように制御し、かつ、前記信号に基づいて試料水が中断または所定量以下となり不足したと判断すると、直ちに前記シャッター部を閉じるように制御することを特徴とする水質測定装置。
【請求項2】
前記ノズルの上流に配置され、差圧により前記試料水を前記ノズルへ移送するために前記試料水を一時的に貯留するヘッドタンクを備え、
前記水位センサは、前記ヘッドタンクに貯留された前記試料水の量を検出することを特徴とする請求項1に記載の水質測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質測定装置であって、特に、試料水を自然落下させて水質を測定する水質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上下水、環境水、工場排水等を測定するために現場に設置され、試料の測定を自動的に行う水質測定装置が開発され製造されている。このような水質測定装置では、長期間、安定して信頼性の高い測定を、メンテナンスフリーで維持したいという要求がある。
【0003】
しかし、特に、光学的手段により試料の測定を行う装置は、検出部(発光部および受光部)の汚れの影響を受けやすい。このため、検出部が直接試料に接することのない、非接触式の水質測定装置が実用化され、その一態様として、流水落下式の水質測定装置が存在する。
【0004】
特許文献1は、ノズルから流水落下する被検液柱に対し光源からの光を透過させ受光セルで受光し、受光結果に基づいて液体濃度を測定する液体濃度測定装置を開示している。また、特許文献2も、ノズルから被検体液を空中に落下させ、落下途中の被検体液に光を照射し、受光した光量と予め求めた特性関係に基づいて被検体液中の水質濃度を測定する水質測定方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−72690号公報
【特許文献2】特開平6−82367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような水質測定装置においては、自然落下する試料水が流れ始める場合、または、一定流量で流れていた試料水の流量が減少して水柱の形が崩れる場合、それぞれのタイミングでノズルの先端から試料水が飛び散ってしまうことがある。また、ノズル内を洗浄する際には、ノズルの先端から洗浄液や汚水が飛び散ってしまうことがある。
【0007】
このような場合、ノズルの先端部よりも下方に配置されている発光部および受光部にこの飛沫がかかってしまうため、飛沫による汚れが原因で測定結果に誤差が生じるという問題がある。
【0008】
本発明は、ノズルの先端から飛び散る試料水や洗浄液などの飛沫による検出部の汚れを防止し、安定して信頼性の高い測定を行うことができる水質測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、試料水を自然落下させるノズルと、前記落下した試料水により形成される水柱の側方に該水柱から離間して配置された発光部と受光部とを備え、前記発光部からの光を前記水柱に照射した結果、前記受光部が受光する光に基づき前記試料水を測定する水質測定装置において、前記発光部および前記受光部を覆う開閉可能なシャッター部と、前記シャッター部の開閉を制御する制御部と、前記ノズルの上流に設けられた水位センサ、フローコントローラまたは流量計と、を備え、前記シャッター部は、前記水質測定装置の電源が投入された当初は閉じられており、前記制御部は、前記水位センサ、フローコントローラまたは流量計からの信号を受け、試料水のレベルが所定量に達していない“オフ”から所定量に達している“オン”となったか否か、または、試料水のレベルが初めから所定量に達している“オン”であるか否かを判断し、“オン”であること、または、“オフ”から“オン”になったものと判断すると、所定時間経過後に前記シャッター部を開くように制御し、かつ、前記信号に基づいて試料水が中断または所定量以下となり不足したと判断すると、直ちに前記シャッター部を閉じるように制御することを特徴とする水質測定装置を提供する。
【0011】
請求項記載の発明は、前記ノズルの上流に配置され、差圧により前記試料水を前記ノズルへ移送するために前記試料水を一時的に貯留するヘッドタンクを備え、前記水位センサは、前記ヘッドタンクに貯留された前記試料水の量を検出することを特徴とする請求項1に記載の水質測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノズルの先端から試料水や洗浄液などの飛沫が飛び散るタイミングに応じてシャッターにより発光部および受光部を覆うため、試料水等の飛沫による検出部の汚れを防止することができる。このため、飛沫による検出部の汚れに起因する測定誤差が排除され、安定して信頼性の高い測定を行うことができる水質測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る水質測定装置の概要を説明する概略構成図である。
図2図1の水質測定装置において、ヘッドタンクを備えた場合を説明する概略図である。
図3図1の水質測定装置において、流量計を備えた場合を説明する概略図である。
図4図1の水質測定装置における、シャッターの動作タイミングを説明するタイミングチャートである。
図5図1の水質測定装置における、シャッター動作の一例を説明するフローチャートである。
図6図1の水質測定装置における、シャッターと洗浄の動作タイミングを説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態に係る水質測定装置1は、一例として、紫外吸光光度法(UVA:Ultra Violet Absorbing)を使用するもので、ノズルから試料水を自然落下させ、この試料水に直接光を当てて、可視光線と紫外線の吸光度を測定する落下流水2波長吸光度方式の水質自動計測器(有機汚濁モニター)を具体例として説明する。
【0019】
しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、自然落下させた試料水を非接触で光学的に測定する装置であれば、どのような装置に対しても適用することができる。このような装置としては、例えば、測定対象の観点からは濁度計や色度計のような水質測定装置があり、測定方式の観点からは、散乱光や蛍光を測定して水質を分析する装置などがある。
【0020】
本発明の一実施形態に係る水質測定装置1は、図1に示すように、試料水が供給されるノズル51と、このノズル51の内側を洗浄する洗浄ワイパー52と、ノズル51からの落下した試料水により形成される水柱に、可視光線または紫外線を照射するLED等の光源とこれを保護するセル窓からなる発光部12と、この水柱に照射された光の透過光を受光するフォトダイオード等の受光素子とこれを保護するセル窓からなる受光部13と、発光部12の発光を制御し、受光部13からの透過光に基づく信号を受け、試料水の水質を判断するCPU11を有している。なお、CPU11には、後述する制御部が含まれている。
【0021】
また、水質測定装置1は、入力機能をもった液晶表示パネル等の表示操作部14と、発光部12および受光部13を覆いかくす開閉可能なシャッター部T1,T2と、このシャッター部T1,T2をCUP11に含まれる制御部(以下「制御部11」という。)からの制御信号に基づいて駆動するモータ等のシャッター駆動部Rと、測定した試料水の水質等の情報を出力する出力部15と、後述する水位センサ23を有している。
【0022】
なお、シャッター駆動部Rとシャッター部T1,T2の間は、例えば、アームとシャフトで接続され、シャッター駆動部Rが駆動することにより、シャッター部T1,T2は同時に開閉動作を行うようになっている。
【0023】
さらに、水質測定装置1は、ノズル51に試料水を安定的に供給する手段として、図2に示すようなヘッドタンク22をノズル51の上流に備えている。ヘッドタンク22をノズル51よりも高い位置に配置することにより、差圧によって安定的に試料水をノズル51に移送することができる。ヘッドタンク22には、水位センサ23が設けられており、水位センサ23からの検出信号は制御部11に送られ、後に詳述するシャッター部T1,T2の開閉動作のトリガとされる。なお、ヘッドタンク22には、一定の差圧を保つために、一定量を超えた試料水を排水させるためのオーバーフロー管24が設けられている。
【0024】
なお、水質測定装置1において、ノズル51に試料水を安定的に供給する手段としては、図3に示すように、ノズル51の上流にフローコントローラー25を備えることもできる。そして、このフローコントローラー25から、その流量に基づく信号を制御部11に送り、シャッター部T1,T2の開閉動作のトリガとすることができる。
【0025】
さらに、フローコントローラー25の代わりに、図示しない定流量バルブと流量計を配置し、この流量計の検出信号を制御部11に送り、シャッター部T1,T2の開閉動作のトリガとすることもできる。
【0026】
また、ヘッドタンク22とノズル51との間に、流量計を配置し、この流量計の検出信号を制御部11に送り、シャッター部T1,T2の開閉動作のトリガとすることもできる。
【0027】
次に、水質測定装置1のシャッター動作の一例を、図4および図6のタイミングチャートと、図5のフローチャートを用いて、以下に詳細に説明する。
【0028】
上述のように、水質測定装置1は、ノズル51に試料水を安定的に供給するようになっているから、通常は、ノズル51の先端から自然落下する試料水は、乱れなくきれいな形の水柱となる。しかし、自然落下する試料水が流れ始めるときや、一定流量で流れていた試料水の流量が減少して水柱の形が崩れたときには、ノズル51の先端から試料水が飛び散ってしまうことがある。
【0029】
そこで、シャッター部T1,T2は、ノズル51の先端部からの飛沫により発光部12または受光部13が汚れ、測定上の誤差を生じさせる不具合を防止するために、効果的なタイミングで開閉されることが望ましい。
【0030】
従って、シャッター部T1,T2は、試料水の飛沫が大きく生じる試料水の出始めには閉じられ、その後、水柱の形(流量)が安定したら開かれるようにされ、試料水の中断時または試料水が所定量以下となる不足時には直ちに閉じられることが望ましい。
【0031】
水質測定装置1の制御部11は、その記憶領域に格納されたプログラム等に基づき、図4のタイミングチャートおよび図5のフローチャートに示すように水質測定装置1を制御する。
【0032】
すなわち、電源が投入された当初はシャッター部T1,T2を閉じている。制御部11は、電源投入により起動され、図2に示すヘッドタンク22の水位センサ23からの信号、または、図3に示すフローコントローラー25或いは図示しない流量計からの信号を受け、試料水のレベルが所定量に達していない“オフ”(水不足)から、所定量に達している“オン”(水あり)となったか(または初めから“オン”か)どうかを判断する(S11)。
【0033】
制御部11は、“オン”であることまたは“オフ”から“オン”になったものと判断すると、所定時間(例えば10秒)経過後、制御信号をシャッター駆動部Rに送って、閉じていたシャッター部T1,T2を開く(S12)。
【0034】
これにより、試料水の流れが不安定で飛沫が生じやすい試料水の流れはじめの時間は、シャッター部T1,T2が閉じられ、発光部12または受光部13の飛沫による汚れを防ぐことができ、試料水の流れが安定するのに伴い、シャッター部T1,T2が開かれて、タイミングよく本来の試料水の水質の測定を開始することができる。
【0035】
さらに、水質測定装置1の制御部11は、図2のヘッドタンク22の水位センサ23または図3のフローコントローラ25或いは図示しない流量計からの信号に基づいて、試料水が中断または所定量以下となり不足した“オフ”(水不足)と判断すると(S13)、直ちに制御信号をシャッター駆動部Rに送ってシャッター部T1,T2を閉じる(S14)。
【0036】
これにより、試料水の中断または不足により、ノズル51の先端部から飛沫が飛ぶおそれがあるときには、直ちにシャッター部T1,T2が閉じられ、発光部12や受光部13の飛沫による汚れを防ぐことができる。
【0037】
また、シャッター部T1,T2が閉じられている間は、発光部12からの光は受光部13に届かないため、試料水の水質を測定することができない。このため、水質測定装置1は、シャッター部T1,T2の開閉状態を示す信号を出力し、測定状態を報知するようになっていることが望ましい。
【0038】
そこで、図4のタイミングチャートに示すように、試料水の断水または不足によりシャッター部T1,T2が閉じている間は、制御部11は、シャッター部T1,T2が閉状態であることを示す信号を出力部15等に出力する。この信号は、出力部15等に接続された外部のモニタ装置やPCや表示装置に送られ、現在、シャッターが閉じられているため測定ができない等の水質測定装置1の状況をユーザに知らせることができる。
【0039】
さらに、他の実施形態として、シャッター部T1,T2の開閉動作を、洗浄ワイパー52を用いてノズル51内を洗浄する洗浄タイミングに応じて開閉するように構成することもできる。すなわち、制御部11は、図6のタイミングチャートに示すように、あらかじめ定められた洗浄周期により、或いは表示操作部14等から洗浄命令信号を受けて洗浄を開始する場合、これに応じて、モータ等のシャッター駆動部Rに制御信号を送って、シャッター部T1,T2を閉じ、その後、洗浄ワイパー52を上下動させてノズル51内の洗浄を開始する。
【0040】
これにより、水質測定装置1は、洗浄に先立ってシャッター部T1,T2を閉じるため、洗浄により飛び散った洗浄液や汚水等の飛沫が発光部12や受光部13のセル窓等を汚して、測定結果に誤差を生じさせるという不具合を回避することが可能となる。
【0041】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能である。また、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1…水質測定装置、11…CPU(制御部)、12…発光部、13…受光部、14…表示操作部、15…出力部、23…水位センサ、R…シャッター駆動部、T1,T2…シャッター部、51…ノズル、52…洗浄ワイパー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6