特許第6070004号(P6070004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070004
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】超音波探傷装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/22 20060101AFI20170123BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G01N29/22
   G01N29/265
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-207251(P2012-207251)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62781(P2014-62781A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐古 崇
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 宗宏
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−194784(JP,A)
【文献】 実開昭60−104764(JP,U)
【文献】 特開昭61−243358(JP,A)
【文献】 特開2008−122090(JP,A)
【文献】 特開2008−139191(JP,A)
【文献】 特開平06−242089(JP,A)
【文献】 特開平06−347250(JP,A)
【文献】 特開平03−293560(JP,A)
【文献】 特開昭56−141555(JP,A)
【文献】 特開平10−096713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0048576(US,A1)
【文献】 特開平04−164249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が貯留された水槽(14)と、中実な被探傷材料(12)を水槽(14)内に水に浸漬した状態で支持する支持台(18)と、該支持台(18)で支持された被探傷材料(12)に向けて超音波を照射する探触子(54)とを備えた超音波探傷装置において、
前記被探傷材料(12)の長手方向に沿って移動可能な移動体(42)と、
前記移動体(42)に対して上下方向に移動可能に支持されると共に、被探傷材料(12)の長手方向および上下方向の夫々と直交する左右方向に移動可能に支持され、かつ該左右方向に延在する軸線回りに回転可能に支持されて前記探触子(54)が配設された倣い手段(52)と、
前記倣い手段(52)に配設され、前記支持台(18)に支持された被探傷材料(12)に当接して回転可能な複数のローラ(60)と、
前記倣い手段(52)に当接することで、該倣い手段(52)がその基準姿勢から回転するのを規制する押圧部(68)とを備え、
前記支持台(18)で支持された被探傷材料(12)に対して前記ローラ(60)を当接した状態で前記移動体(42)を被探傷材料(12)の長手方向に移動する際に、前記倣い手段(52)と共に前記探触子(54)が被探傷材料(12)の外形に倣って上下方向、左右方向および前記軸線回りに変位可能に構成すると共に、前記ローラ(60)が前記被探傷材料(12)の始端または終端に近づいたときに前記押圧部(68)が前記倣い手段(52)に当接して、該倣い手段(52)がその基準姿勢から回転するのを規制するよう構成した
ことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
前記支持台(18)を昇降調節する調節手段(20)を備えた請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
前記移動体(42)に対して倣い手段(52)を上向きに付勢する付勢手段(48)を備えた請求項1または2記載の超音波探傷装置。
【請求項4】
前記被探傷材料(12)における長手方向の一端を把持する把持具(24)を有し、該把持具(24)を所定角度毎に回転するインデックス装置(26)を備えた請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に浸漬した被探傷材料に向けて超音波を発信して内部欠陥を検知する超音波探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被探傷材料の内部欠陥を検知する超音波探傷装置として、水槽に貯留した水に被探傷材料および探触子を浸漬した状態で、探触子を被探傷材料の長手方向に移動しつつ該探触子から被探傷材料に向けて超音波を発信して内部欠陥を検知する水浸式の超音波探傷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−280776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の探傷装置では、探触子を被探傷材料の長手方向および左右方向の軸線回りに回転自在に支持することで、自重によって被探傷材料に載っている探触子の姿勢が被探傷材料の外形に倣うように変化するよう構成されている。しかしながら、探触子を左右方向の軸線回りに回転自在に支持する構成では、被探傷材料が左右方向に曲がっている場合には、探触子が被探傷材料の曲がり倣って姿勢や位置を変えることができず、探触子と被探傷材料との相対位置が変化してしまい、探触子から発信される超音波の被探傷材料に対する入射位置がズレて超音波が屈折してしまい、精度のよい探傷ができなくなって探傷結果の信頼度を低下する問題があった。特に、丸棒鋼等のような中実な被探傷材料の場合では、超音波の入射位置のズレによる超音波の屈折の影響が探傷結果に大きく反映するため、被探傷材料と探触子との相対位置の変化によって探傷結果の信頼度が大きく低下する難点が指摘される。
【0005】
すなわち本発明は、前記従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、高精度で内部欠陥を検知し得る超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る超音波探傷装置は、
水が貯留された水槽と、中実な被探傷材料を水槽内に水に浸漬した状態で支持する支持台と、該支持台で支持された被探傷材料に向けて超音波を照射する探触子とを備えた超音波探傷装置において、
前記被探傷材料の長手方向に沿って移動可能な移動体と、
前記移動体に対して上下方向に移動可能に支持されると共に、被探傷材料の長手方向および上下方向の夫々と直交する左右方向に移動可能に支持され、かつ該左右方向に延在する軸線回りに回転可能に支持されて前記探触子が配設された倣い手段と、
前記倣い手段に配設され、前記支持台に支持された被探傷材料に当接して回転可能な複数のローラと、
前記倣い手段に当接することで、該倣い手段がその基準姿勢から回転するのを規制する押圧部とを備え、
前記支持台で支持された被探傷材料に対して前記ローラを当接した状態で前記移動体を被探傷材料の長手方向に移動する際に、前記倣い手段と共に前記探触子が被探傷材料の外形に倣って上下方向、左右方向および前記軸線回りに変位可能に構成すると共に、前記ローラが前記被探傷材料の始端または終端に近づいたときに前記押圧部が前記倣い手段に当接して、該倣い手段がその基準姿勢から回転するのを規制するよう構成したことを要旨とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、被探傷材料の長手方向に移動する移動体に対し、探触子を上下方向、左右方向および左右方向に延在する軸線回りに移動可能に支持するよう構成したので、被探傷材料に対して探触子を高精度で倣わせることができる。すなわち、被探傷材料と探触子との相対的な位置関係を一定に保ったまま被探傷材料の全長に亘って探傷することができ、高精度で内部欠陥を検知することができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記支持台を昇降調節する調節手段を備えたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、被探傷材料の支持台を昇降調節して探触子との相対的な位置関係を一定とし得るので、直径が異なる被探傷材料に対応し得る。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記移動体に対して倣い手段を上向きに付勢する付勢手段を備えたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、ローラを被探傷材料に当接して倣わせる際に、該被探傷材料に加わる倣い手段の重量の一部を付勢手段に担わせることができ、被探傷材料の外形に探触子をスムーズに倣わせ得る。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記被探傷材料における長手方向の一端を把持する把持具を有し、該把持具を所定角度毎に回転するインデックス装置を備えたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、被探傷材料を全周に亘って探傷することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る超音波探傷装置によれば、被探傷材料の内部欠陥を高精度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る超音波探傷装置を示す要部概略正面図である。
図2】実施例に係る超音波探傷装置の概略側断面図である。
図3】実施例に係る探触子の支持部分を一部破断して示す概略正面図である。
図4】実施例に係る探触子の支持部分を一部破断して示す概略側面図である。
図5】実施例に係る探触子と被探傷材料との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る超音波探傷装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0014】
図1,図2は、実施例に係る超音波探傷装置10の全体構成を示すものであって、実施例では、後述する支持装置16で支持された被探傷材料12の長手方向をX方向、該X方向と直交する左右方向をY方向、X方向およびY方向と直交する上下方向をZ方向、Y方向に延在する軸線回りの方向をM方向と指称する場合もある。また、実施例の超音波探傷装置10は、中実で断面円形の丸棒状の被探傷材料12の探傷に好適に用いられる。なお、被探傷材料12のX方向における後述する把持具24で把持される一端を始端、他端を終端と指称する場合もある。
【0015】
前記超音波探傷装置10は、図1,図2に示す如く、被探傷材料12を水が貯留された水槽14の内部に浸漬した略水平姿勢で支持する支持装置16を備える。この支持装置16は、水槽14の内部に昇降動自在に配設されて被探傷材料12のX方向に離間する複数の支持台18と、該支持台18を昇降調節するパワーシリンダ等の調節手段20とを備え、被探傷材料12の直径に応じて調節手段20によって支持台18を昇降調節することで、支持台18で支持された被探傷材料12の中心C0を、前記把持具24の回転中心と一致させ得るよう構成される。なお、複数の支持台18と調節手段20とは図示しないリンク機構等の連繋機構を介して接続されており、調節手段20を作動することによって全ての支持台18が同期して昇降移動するよう構成されている。また、調節手段20は制御手段64に接続されており、該制御手段64に入力された被探傷材料12の直径等のデータに基づいて制御手段64の制御下に調節手段20が作動制御されて、支持台18を昇降調節するよう構成される。
【0016】
前記支持台18は、図4および図5に示す如く、上面にY方向の中間に向けて下方傾斜する逆ハ字状となる2つの傾斜面からなる支持面18aが形成されており、該支持面18aに載置された被探傷材料12の中心C0が、支持台18のY方向の中央を通る鉛直線L上に位置するよう構成される。また、探傷する被探傷材料12の直径が変わった場合においても、該支持台18の支持面18aに被探傷材料12を載置することで、被探傷材料12の中心C0が常に鉛直線L上に位置するようになっている。
【0017】
なお、前記支持装置16は、後述する探触子54により被探傷材料12の内部欠陥を検知する探傷工程において、前記支持台18に載置された被探傷材料12に接触する後述するローラ60と干渉しない位置で該被探傷材料12を把持して位置固定する固定手段(図示せず)を備えている。
【0018】
前記水槽14におけるX方向の一端側に、図1に示す如く、被探傷材料12の始端部を把持可能な把持具24を開閉自在に備え、前記制御手段64により作動制御されるインデックス装置26が配設されている。このインデックス装置26は、把持具24を、被探傷材料12の始端部を把持可能な把持位置および始端部から離間する退避位置の間をX方向に移動するよう構成される。またインデックス装置26は、把持具24を所定角度単位毎に回転し得るように構成されており、被探傷材料12の始端部を把持した把持具24を所定角度単位で回転することで、該被探傷材料12を全周に亘って探傷し得るよう構成される。実施例では、後述する探触子54により一度に探傷可能な被探傷材料12の中心C0に対する測定角度θ(図5参照)は、約58度に設定されている。そして、インデックス装置26では、測定角度θより大きな60度が1回の回転角度(以後、インデックス角度という場合もある)に設定されて、被探傷材料12をインデックス角度回転する毎に探触子54で長手方向の全長に亘る探傷を実施する工程を7回繰り返すことで、該被探傷材料12の全周を探傷し得るよう構成してある。
【0019】
図1および図2に示す如く、前記水槽14の側部上方に位置する支持フレーム28に、上下に離間してX方向に沿って平行に延在する一対のガイドレール30,30が配設され、該ガイドレール30,30に移動基台32がX方向に沿って往復移動可能に支持されている。また支持フレーム28には、両ガイドレール30,30の間にラック34が平行に延在するよう配設されている。移動基台32に、前記ラック34に噛合するピニオン36を回転駆動する駆動手段としてのサーボモータ38が配設されており、該サーボモータ38を正逆回転することで、移動基台32をX方向に沿って往復移動するよう構成される。サーボモータ38は、前記制御手段64に接続されて、該制御手段64によって回転制御される。実施例では、ラック34、ピニオン36、サーボモータ38から、移動基台32をX方向に移動する移動機構が構成されている。
【0020】
前記移動基台32に、図2に示す如く、水槽14の上方に張出す張出し部32aが設けられており、該張出し部32aに、ピストンロッド40aを下方に向けた姿勢で昇降用シリンダ40が配設されている。昇降用シリンダ40は、前記制御手段64に接続されて、該制御手段64によって制御されるようになっている。また、前記ピストンロッド40aに移動体42が連結されており、該昇降用シリンダ40を正逆付勢することで、移動体42を昇降移動するよう構成される。移動体42には、超音波の発信および受信を行なう探触子54を備える探傷機構部43が昇降移動可能に支持されている。この探傷機構部43は、移動体42に対して昇降移動可能に支持される第1支持体46と、該第1支持体46に対してY方向およびM方向に移動可能に支持される第2支持体(倣い手段)52と、該第2支持体52に配設されて被探傷材料12に当接可能なガイドローラ組56,58および探触子54を備える。
【0021】
前記探傷機構部43の第1支持体46には、上面に複数のガイドロッド44が立設されており、各ガイドロッド44が、移動体42に穿設した通孔に摺動自在に挿通されて、第1支持体46は、移動体42に対して平行な姿勢を保ったまま昇降移動し得るよう構成される。また、図3,図4に示す如く、各ガイドロッド44における移動体42の上方に臨む上端に規制部44aが設けられると共に、該ガイドロッド44には、規制部44aと移動体42の上面との間に付勢手段としての圧縮バネ48が巻装されており、第1支持体46は複数の圧縮バネ48によって上方に向けて付勢されている。すなわち、第1支持体46を移動体42に対して複数の圧縮バネ48で支持することで、該第1支持体46の重量および該第1支持体46に配設される後述の第2支持体52,探触子54,ガイドローラ組56,58,固定用シリンダ66)の重量を合わせた総重量(探傷機構部43の重量)を略相殺して第1支持体46のZ方向のスムーズな変位を許容し得るよう構成してある。
【0022】
前記第1支持体46には、図4に示す如く、Y方向に離間して一対の支持部46a,46aが垂設されており、両支持部46a,46aに、Y方向に軸線を揃えた支持軸50が、Y方向に移動可能に支持されている。この支持軸50は、図示しないバネ等の弾性部材によって軸方向(Y方向)の中央が、前記支持台18に支持された被探傷材料12の中心C0を通る鉛直線L上に位置するように構成される。また支持軸50には、第2支持体52が一体的に移動自在に吊下げられると共に、該第2支持体52は支持軸50に対して回動自在に支持されている。すなわち、第2支持体52は、第1支持体46に対してY方向に移動可能で、かつY方向に延在する軸線回り、すなわちM方向に回転可能に支持されている。
【0023】
前記第2支持体52には、図3および図4に示す如く、前記支持軸50におけるY方向の中央の真下に、超音波の送受信面54aを下向きとした探触子54が一体的に移動するように配設されている。すなわち、前記移動体42に対して第1支持体46を介して吊下げ状態で支持された探触子54は、Y方向、Z方向およびM方向に移動可能になっており、被探傷材料12の外形に高精度で倣って変位し得るよう構成される。この探触子54は、前記制御手段64に接続されており、被探傷材料12の外面に対向する送受信面54aから被探傷材料12に向けて超音波を発信し、該超音波の反射波を送受信面54aで受信して、該受信信号を制御手段64に入力することで、内部欠陥を検知するよう構成される。
【0024】
前記探触子54の送受信面54aは、図5に示すように上側に凸となる円弧面に形成されると共に、該送受信面54aの円弧を形成する仮想円の中心C1を通る軸線がX方向に沿うように設定されており、前記昇降用シリンダ40によって移動体42(探傷機構部43)を後述するローラ60,60が支持台18に支持されている被探傷材料12に当接する位置まで移動することで、該仮想円の中心C1を被探傷材料12の中心C0と一致させ得るようになっている。そして、被探傷材料12の中心C0と送受信面54aの円弧の中心C1とを一致した状態で、該送受信面54aと被探傷材料12の外面との間は一定距離離間するよう構成される。なお、送受信面54aの仮想円の中心C1を被探傷材料12の中心C0と一致させた状態で、該送受信面54aから被探傷材料12に向けて発信される超音波によって探傷可能な測定角度θが、被探傷材料12の中心C0に対して約58度となるように送受信面54aの円弧が設定されている(図5参照)。
【0025】
前記第2支持体52には、探触子54の配設位置を挟んでX方向の両側に一対のガイドローラ組56,58が配設されている。各ガイドローラ組56,58は、Y方向に離間する一対のローラ60,60から構成される。両ローラ60,60の軸線は、下側に向かうにつれて相互に離間するよう傾斜して、該軸線回りにローラ60が自由回転するように配設されており、図4に示す如く、前記支持台18に支持されている被探傷材料12に対して各ローラ60は周面が斜めに当接した状態で回転するよう構成される。各ローラ60,60は、探触子54より下方において被探傷材料12に当接するように配設位置が設定されており、該ローラ60,60を被探傷材料12に当接した状態において、探触子54における送受信面54aと被探傷材料12の外面との離間距離を一定に保つよう構成される。また、各ローラ60,60の配設位置は、該ローラ60,60を被探傷材料12に当接した状態で、探触子54における送受信面54aの円弧の中心C1が被探傷材料12の中心C0と一致する位置に設定されている。なお、ローラ60,60は、第2支持体52に対して位置調節可能に配設されており、被探傷材料12の直径が変わった場合はローラ60,60を位置調節することで、探触子54における送受信面54aの円弧の中心C1を被探傷材料12の中心C0と一致させ得るよう構成される。実施例では、被探傷材料12の始端側(インデックス装置26側)に位置するガイドローラ組56を始端側ガイドローラ組と指称すると共に、被探傷材料12の終端側に位置するガイドローラ組58を終端側ガイドローラ組と指称する場合もある。
【0026】
前記第2支持体52には、前記支持台18に支持されている被探傷材料12のX方向の端部(始端および終端)を検知可能な検知センサ62が配設されており(図3参照)、該検知センサ62の検知信号は、制御手段64に入力されるようになっている。
【0027】
図3に示す如く、前記第1支持体46には、前記支持軸50の支持位置を挟んでX方向に離間する位置に、前記制御手段64によって作動制御される固定用シリンダ66が夫々配設されており、該固定用シリンダ66は、ピストンロッド66aを第1支持体46から下方に進退可能に構成されている。また、ピストンロッド66aの下端に押圧部68が設けられ、固定用シリンダ66を正逆付勢することで、押圧部68を第2支持体52に当接する固定位置と上方に離間する退避位置との間を移動するよう構成される。そして、両押圧部68,68を固定位置に位置させることで(図3の二点鎖線参照)、第2支持体52のM方向の回転を規制し得るよう構成される。なお、実施例では、両押圧部68,68でM方向の回転が規制された第2支持体52の姿勢を基準姿勢というものとする。
【0028】
前記制御手段64には、前記サーボモータ38の回転系に配設されたエンコーダ(図示せず)が接続されており、該制御手段64は、エンコーダからのパルス信号によって、探触子54の現在位置を常時監視し得るよう構成される。また制御手段64は、探触子54によって被探傷材料12の内部欠陥を検知する探傷工程に先立って行なわれる被探傷材料12の測長工程において、前記検知センサ62が被探傷材料12の始端および終端を検知した検知信号と前記エンコーダからのパルス信号(パルス数)とによって、被探傷材料12の長さを測定し得るよう構成してある。そして、制御手段64は、測定工程によって測定した被探傷材料12の長さを記憶し、該記憶した長さを基に、探傷工程においてガイドローラ組56,58が被探傷材料12の始端または終端に近づいたときに、前記固定用シリンダ66,66を付勢して第2支持体52がM方向に回転するのを規制する状態とするよう設定される。
【0029】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された超音波探傷装置10の作用につき説明する。
【0030】
(測定工程について)
図示しない供給装置によって被探傷材料12を前記水槽14の内部に供給して前記複数の支持台18上に載置する。前記制御手段64は、被探傷材料12の中心C0が前記把持具24の回転中心と一致するように、調節手段20を制御して支持台18の高さ位置を被探傷材料12の直径に応じて調節する。また、前記探傷機構部43を、前記検知センサ62が被探傷材料12の始端を検知しないX方向に離間した位置(図1においてインデックス装置26側に離間する位置)に位置させると共に、前記昇降用シリンダ40を付勢して検知センサ62が被探傷材料12を検知可能な高さ位置まで探傷機構部43(移動体42)を下降したもとで、前記サーボモータ38を回転駆動して前記移動基台32を被探傷材料12の終端側に向けてX方向に移動する。前記制御手段64は、検知センサ62が被探傷材料12の始端を検知した位置から終端を検知した位置までの前記エンコーダからのパルス信号に基づいて被探傷材料12の長さを計測して記憶する。また制御手段64は、検知センサ62が被探傷材料12の始端を検知した位置を原点位置として記憶する。
【0031】
(探傷工程について)
探傷工程では、先ず被探傷材料12における始端部の探傷を行なう。すなわち、測定工程で記憶された原点位置(被探傷材料12の始端)に基づいて、サーボモータ38を回転駆動して移動基台32を移動して、前記始端側ガイドローラ組56が原点位置より被探傷材料12の終端側の上方に臨むように位置決めする。そして、前記昇降用シリンダ40を付勢して、前記ローラ60,60が被探傷材料12に当接する位置まで探傷機構部43を移動する。このとき、探傷機構部43の重量によって縮んでいる前記圧縮バネ48が所定量だけ伸びる位置まで移動体42を下降することで、探傷機構部43の重量の一部が被探傷材料12に加わるようにして(探傷機構部43の重量の一部を圧縮バネ48の付勢力によって担わせる)、探傷機構部43が被探傷材料12の外形のZ方向の変位にスムーズに追従して移動体42に対して変位し得るようにする。また、ローラ60,60が被探傷材料12に当接した状態では、図5に示す如く、前記探触子54における送受信面54aと被探傷材料12との離間距離が一定に保持されると共に、該送受信面54aの円弧の中心C1が被探傷材料12の中心C0と一致する。
【0032】
前記押圧部68,68を退避位置に位置させた状態で、前記サーボモータ38を回転駆動して探傷機構部43(移動基台32)を被探傷材料12の始端側に向けて移動しつつ、前記探触子54の送受信面54aから被探傷材料12に向けて超音波を発信して探傷を実施する。前記押圧部68,68が退避位置に位置して第2支持体52のM方向の回転が規制されていない状態では、該第2支持体52、すなわち探触子54は、Y方向、Z方向およびM方向に変位可能であるので、前記ローラ60,60が被探傷材料12に当接しつつ移動することで、探触子54は被探傷材料12の外形に倣うように姿勢が変位し、前記送受信面54aは被探傷材料12の外面に対して一定の位置関係に保持される。具体的には、被探傷材料12のY方向の曲がりに対しては、前記第1支持体46に対して支持軸50と共に第2支持体52がY方向に変位することで、探触子54の送受信面54aと被探傷材料12とのY方向の相対的な位置関係は一定に保持される。また、被探傷材料12のZ方向の曲がりに対しては、前記移動体42に対して探傷機構部43がZ方向に変位すると共に、第2支持体52が支持軸50に対して回転することで、探触子54の送受信面54aと被探傷材料12とのZ方向の相対的な位置関係は一定に保持される。これにより、被探傷材料12の精度の高い探傷を行なうことができる。また、移動体42に対して第1支持体46を圧縮バネ48で支持し、探傷機構部43の重量の一部のみが被探傷材料12に加わるようにしているので、被探傷材料12が探傷機構部43の重量によって橈むのを防止すると共に探傷機構部43のZ方向のスムーズな変位が許容され、精度の高い倣いを実行し得る。なお、探傷工程において被探傷材料12に加わる探傷機構部43の重量については、昇降用シリンダ40による探傷機構部43の下降位置を調節することで変えることができる。
【0033】
前記制御手段64は、測定工程で設定された原点位置に基づいて、前記始端側ガイドローラ組56が被探傷材料12の始端から外れる直前において、前記固定用シリンダ66,66を付勢して押圧部68,68を第2支持体52に当接することで、該第2支持体52がM方向に回転するのを規制する。この状態で、探傷機構部43が更に被探傷材料12の始端側に移動すると、始端側ガイドローラ組56のローラ60,60が被探傷材料12から外れるが、第2支持体52は基準姿勢に保持されているので該第2支持体52が傾くことはなく、前記探触子54の送受信面54aと被探傷材料12との位置関係が変化しないので、被探傷材料12の始端部を高精度で探傷し得る。
【0034】
前記被探傷材料12の始端部の探傷を完了した後に、両ガイドローラ組56,58の各ローラ60,60が被探傷材料12に当接する位置まで探傷機構部43を移動すると共に、前記固定用シリンダ66,66を逆付勢して押圧部68,68を退避位置まで移動することで、前記第2支持体52のM方向の回転を許容する状態とする。そして、前記サーボモータ38の回転駆動により探傷機構部43を被探傷材料12の終端側に向けて移動しつつ、前記探触子54の送受信面54aから被探傷材料12に向けて超音波を照射して探傷を実施する。前記押圧部68,68により第2支持体52のM方向の回転が規制されていない状態では、該第2支持体52、すなわち探触子54は、Y方向、Z方向およびM方向に変位可能であるので、前記ローラ60,60が被探傷材料12に当接しつつ移動することで、探触子54は被探傷材料12に対して送受信面54aが一定の位置関係に保持されたまま移動する。これにより、被探傷材料12の精度の高い探傷を行ない得る。
【0035】
前記制御手段64は、前記エンコーダからのパルス信号と前記測定工程で測定された被探傷材料12の長さのデータとに基づき、終端側ガイドローラ58が被探傷材料12の終端から外れる直前に至ったとき、前記固定用エアシリダ66,66を付勢して押圧部68,68を第2支持体52に当接することで、該第2支持体52がM方向に回転するのを規制する。この状態で、探傷機構部43が更に被探傷材料12の終端側に移動すると、終端側ガイドローラ組58のローラ60,60が被探傷材料12から外れるが、第2支持体52は基準姿勢に保持されているので、探触子54の送受信面54aと被探傷材料12との位置関係が変化することはなく、被探傷材料12の終端部を高精度で探傷し得る。
【0036】
前記被探傷材料12の終端まで探傷を完了すると、前記制御手段64は探傷機構部43を上昇するように昇降用シリンダ40を付勢して、前記両ガイドローラ組56,58を被探傷材料12から離間すると共に、前記サーボモータ38を回転駆動して探傷機構部43を前述した被探傷材料12の始端部を探傷可能な位置まで移動して停止する。また、前記インデックス装置26の把持具24で被探傷材料12の始端部を把持すると共に、前記固定手段による被探傷材料12の固定を解除する。そして、把持具24を所定のインデックス角度だけ回転して、被探傷材料12における前記探触子54による探傷部位を変更し、該被探傷材料12を固定手段で位置決め固定する。被探傷材料12をインデックス角度回転した後、前記把持具24による把持を解除すると共に把持具24を被探傷材料12の始端から離間する退避位置まで移動した状態で、前述したと同様に探触子54による被探傷材料12の探傷を行なう。
【0037】
前記探触子54をX方向に移動して探傷する毎に被探傷材料12をインデックス角度回転する工程を所定回数(実施例では7回)繰り返すことで、該被探傷材料12の全周の探傷を完了する。
【0038】
実施例の超音波探傷装置10では、被探傷材料12の長手方向(X方向)に移動する移動体42に対して探触子54をY方向、Z方向およびM方向に変位可能に支持したので、前記ローラ60,60が被探傷材料12に当接して移動する際に、該被探傷材料12の外形に精度よく倣うように探触子54の姿勢が変位する。すなわち、被探傷材料12と探触子54の送受信面54aとの位置関係を一定に保持した状態で、該被探傷材料12を探傷することができ、高精度で内部欠陥を検知することができる。また実施例では、被探傷材料12の始端部および終端部の探傷に際し、第2支持体52のM方向の回転を規制するように構成したので、被探傷材料12の始端から終端まで精度のよい探傷を実施することができる。
【0039】
オーダー変更等によって被探傷材料12の直径が変わった場合は、前記制御手段64は、新たなオーダーに係る被探傷材料12の直径に応じて、前記調節手段20を制御して支持台18の高さを調節し、該支持台18に載置される被探傷材料12の中心C0を把持具24の回転中心と一致させる。これにより、把持具24の高さ位置を変更することなく該把持具24による材料始端部の把持が可能となり、被探傷材料12の直径が変わるオーダー変更に簡単に対応し得る。また、支持装置16の支持台18は、被探傷材料12を支持する支持面18aを2つの傾斜面から構成したので、被探傷材料12の直径が変わっても被探傷材料12の中心C0を前記鉛直線L上に位置させることができ、前記探触子54との位置関係を一定に保つことができる。
【0040】
〔変更例〕
本発明は、実施例の構成に限定されず、種々の変更が可能であり、例えば以下の構成を採用し得る。
(1) 実施例では、移動体に対してZ方向に移動可能に支持した第1支持体に、第2支持体をY方向およびM方向に移動可能に支持するよう構成したが、探触子を配設した支持体(倣い手段)を、移動体に対してZ方向、Y方向およびM方向に移動可能に支持する構成を採用し得る。
(2) 実施例では、移動体に対してZ方向に移動可能に支持した第1支持体に、第2支持体をY方向およびM方向に移動可能に支持するよう構成したが、移動体に対して第1支持体をY方向およびM方向に移動可能に支持し、該第1支持体に対して第2支持体をZ方向に移動可能に支持する構成を採用し得る。
(3) 実施例では、第1支持体に対して第2支持体をY方向およびM方向に移動可能に支持するよう構成したが、第1支持体に対して別の支持体をY方向およびM方向の何れか一方の方向に移動可能に支持し、該別の支持体に対して第2支持体を他の方向に移動可能に支持する構成を採用することができる。すなわち、探触子が配設された支持体が、Z方向、Y方向およびM方向に移動可能に支持される構成であればよい。
(4) 実施例では、移動基台(移動体)をX方向に移動する移動機構としてラックとピニオンとを用いた機構で説明したが、該移動機構はこれに限られるものではなく、チェンやベルト等の索体と回転体とを用いた機構、その他公知の各種機構を採用し得る。
(5) インデックス装置により被探傷材料を回転するインデックス角度は、探触子により一度に探傷可能な測定角度に依存するものであって、該測定角度より大きく設定されていればよい。また、インデックス装置により被探傷材料を回転する回数は、未探傷領域が発生しない回数であればよい。
(6) 実施例では、移動体を昇降移動する手段としてシリンダを用いたが、モータとボールネジとを組み合わせた手段等、移動体を昇降移動可能な各種の手段を採用し得る。また、昇降手段としてシリンダを用いる場合に、サーボモータを用いた昇降機構を別途設け、該サーボモータにより被探傷材料に加わる荷重の微調節を行なうようにしてもよい。
(7) 実施例では、被探傷材料を複数の支持台で支持するようにしたが、被探傷材料が橈まないように該被探傷材料を全長に亘って支持可能な1つの支持台を用いることができる。。
(8) 実施例では、探傷機構部の重量を相殺するように移動体に支持する付勢手段として圧縮バネを挙げたが、移動体に対して探傷機構部を引張りバネ(付勢手段)によって吊下げる構成を採用し得る。また付勢手段は、バネに限らずゴム等であってもよい。
(9) 実施例では、探触子がZ方向、Y方向およびM方向の3つの自由度を持つ構成としたが、更にZ方向に延在する軸線回りに回転可能に構成してもよい。例えば、第1支持体に対してZ方向に延在する軸線回りに回転可能に配設した回転盤に、支持軸を支持する支持体を設けた構成を採用し得る。
【符号の説明】
【0041】
12 被探傷材料,14 水槽,18 支持台,20 調節手段,24 把持具
26 インデックス装置,42 移動体,46 第1支持体,48 圧縮バネ(付勢手段)
52 第2支持体(倣い手段),54 探触子,60 ローラ,68 押圧部
図1
図2
図3
図4
図5