(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の中継ポイントにおいて受信した第1の無線通信を、異なる方式の第2の無線通信に変換して送信する中継装置と、前記第2の無線通信を用いてネットワークに接続するためのアクセスポイントと、を有する無線通信システムにおいて、
前記中継装置は、
前記第1の無線通信を送受信する第1の無線通信部及び前記第2の無線通信を送受信する第2の無線通信部と、
当該中継装置を自走させる自走手段と、
前記第1及び第2の無線通信部の無線通信の信号レベル又は信号速度を計測する第1の計測部と、
当該中継装置が自走する空間内における障害物の位置を計測する第2の計測部と、
前記自走手段により当該中継装置を自走させつつ、所定の計測ポイントにおいて前記第1及び第2の計測部にそれぞれ計測を行わせ、前記第1の計測部により計測された前記信号レベル又は前記信号速度が所定値以上であり、且つ、前記第2の計測部により計測された前記障害物の位置に近いポイントを最適な中継ポイントとして探索する探索制御部と、を有し、
前記探索制御部は、前記最適な中継ポイントを探索する際、前記第2の無線通信部を用いて、前記アクセスポイントに対する返信要求を送信させ、当該要求に対して前記アクセスポイントから返信があった場合、前記計測ポイントにおける前記第1の計測部で計測された計測値を低くするよう修正する、無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)第1の実施形態:
(1−1)中継装置の構成
(1−2)屋内計測処理
(1−3)ポイント探索処理
(1−4)中継処理
(2)第2の実施形態:
(3)その他の実施形態:
【0017】
(1)第1の実施形態:
(1−1)中継装置の構成
図1は、無線通信システム1を説明する図である。また、
図2は、中継装置10の構成を説明する構成図である。そして、
図3は、中継装置10により実行される処理を示すフローチャートである。
【0018】
図1に示す無線通信システム1では、中継装置10は、LAN(Local Area Network)側の端末97から送信される無線LAN方式の無線信号を受信した後、これを移動体通信方式の無線信号に変換し、WAN(Wide Area Network)側の基地局98に送信することができる。そして、基地局98では、この無線信号を所定の方式に変換し、インターネット網99に送信する。また、逆に中継装置10は、WAN側の基地局98から送信されてくる移動体通信方式の無線信号を受信し、これを無線LAN方式の無線信号に変換し、端末97に送信することができる。
【0019】
無線LAN方式は、例えば、IEEE802.11規格に対応した無線通信(例えば、Wi−Fi)に対応する。また、移動体通信方式は、携帯電話やスマートメディア等、移動しながらでも利用できる端末を対象とした通信全般を指し、例えば、LTE(Long Term Evolution)/3G又はLTE/4Gに対応する。以下、本実施形態では、無線LAN信号として、Wi−Fiを使用し、移動体通信信号としてLTE/3Gを使用する場合を例に説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0020】
図2に示すように、中継装置10は、メモリー11、部屋センサー12、コントローラー13、LTE用IF14、Wi−Fi用IF15、ドライバー16、自走機構17を備える。さらに、中継装置10は、現在の位置を検出する位置センサー18を備える。
【0021】
LTE用(第1の無線通信部)IF14は、LTE/3G方式の無線信号を受信及び送信するアンテナや、受信した無線信号を所定の通信フォーマットに変換する回路を備える。また、LTE用IF14は、コントローラー13に接続されている。LTE用IF14は、LTE/3G方式に対応した信号をアンテナを通じて受信すると、この信号を所定の通信フォーマットに変換し、コントローラー13に出力する。また、コントローラー13から所定の通信フォーマットの信号が入力すると、この信号をLTE/3G方式に対応した信号に変換し、アンテナを通じて外部に送信する。
【0022】
Wi−Fi用IF(第2の無線通信部)15は、Wi−Fi方式の無線信号を受信及び送信するアンテナや、受信した無線信号を所定の通信フォーマットに変換する回路を備える。また、Wi−Fi用IF15は、コントローラー13に接続されている。Wi−Fi用IF15は、Wi−Fi方式の信号をアンテナを通じて受信すると、所定の通信フォーマットに変換して、コントローラー13に出力する。また、Wi−Fi用IF15は、コントローラー13から所定の通信フォーマットの信号が入力すると、この信号をWi−Fi方式に対応した信号に変換し、アンテナを通じて外部に送信する。
【0023】
部屋センサー12は、例えば赤外線センサーであり、コントローラー13に接続されている。この部屋センサー12は、赤外線波を出力して、中継装置10の周囲の障害物の位置を示す位置情報Pを取得する。そして、検出された位置情報Pは、コントローラー13に出力される。
【0024】
メモリー11は、例えば、フラッシュメモリーであり、コントローラー13に参照される様々なデーターが記録されている。また、本実施形態では、メモリー11には、計測リストL1と、この計測リストL1に基づいて作成されるポイント参照リストL2が記録されている。
【0025】
位置センサー18は、中継装置10の現在の位置を計測する。位置センサー18は例えば加速度センサーやジャイロセンサーであり、中継装置10の現在の位置を2次元座標(x、y)として計測する。
【0026】
コントローラー13は、中継装置10の駆動を統合的に制御する。コントローラー13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備える集積回路により実現される。また、コントローラー13は、ROMに記録されたプログラムを実行することにより、通信状態計測部21、探索制御部22、中継制御部23の各部を機能的に備える。また、上記した、探索制御部22、中継制御部23による処理により、
図3に示す、各処理が実現される。
【0027】
通信状態計測部21は、LTE用IF14又はWi−Fi用IF15により受信された信号に応じて、通信状態Slte、Swifiを計測する。この通信状態Slteは、LTE/3G方式の無線通信の状態を示す値である。また、Swifiは、Wi−Fi方式の無線通信の状態を示す値である。
通信状態計測部21は、通信状態SlteとSwifiとを、無線通信におけるRSSI(受信信号強度)や、スループット(通信速度)、更にはエラーレートをもとに判断する。そのため、通信状態を示すRSSIやスループットが所定の閾値以上である場合や、エラーレートが所定の閾値以下である場合、通信状態が良好であると判断することができる。
以上により、通信状態計測部21により第1の計測部が実現される。
【0028】
探索制御部22は、屋内における無線通信を中継するのに適した中継ポイントを探索する。ここで、探索制御部22は、通信状態計測部21により得られた通信状態Slteと、通信状態Swifiとに加えて、部屋センサー12により得られる位置情報Pを用いて、最適な中継ポイントの探索を行う。即ち、探索制御部22は、部屋センサー12により得られる位置情報Pに基づいて、中継装置10が自走する屋内の障害物の位置をマッピングする。そのため、探索制御部22、部屋センサー12により第2の計測部が実現される。
【0029】
中継制御部23は、無線通信の中継を制御する。上記のように、中継装置10は、端末97と基地局98との間の通信を中継するために、Wi−Fi用IF15とLTE用IF14との間で行なわれる通信を制御する。また、中継制御部23は、中継処理中に無線通信の状態が悪化した場合に、中継装置10を他の中継ポイントに移動させるための制御も行う。
【0030】
探索制御部22及び中継制御部23は、ドライバー16を制御して、中継装置10の自走を制御する。ドライバー16は、コントローラー13に接続されており、探索制御部22又は中継制御部23から出力される制御信号により、自走機構17を駆動するための駆動信号を出力する。また、自走機構17は、例えば、車輪と、この車輪を回転させるためのモーターとを備える。
【0031】
次に、
図3を用いて、中継装置10による処理を説明する。
【0032】
まず、ステップS11では、探索制御部22により屋内計測処理が行われる。この屋内計測処理では、中継装置10が屋内を自走しつつ、屋内の形状を走査する。具体的には、探索制御部22は、部屋センサー12や位置センサー18を用いて屋内の障害物(本実施形態では壁)の位置を示す位置情報Pを計測する。また、屋内の走査に合わせて、探索制御部22は、屋内の一定間隔に位置するポイント(計測ポイント)の通信状態(Slte,Swifi)を計測させる。そして、計測された通信状態は、計測リストL1に記録される。
【0033】
ステップS12では、探索制御部22により、ステップS11で計測したポイントをもとに、最適な中継ポイントが探索される(ポイント探索処理)。即ち、まず、探索制御部22は、ステップS11により探索された計測ポイント(i)の中から通信状態の良好なポイントを選択する。次に、探索制御部22は、選択されたポイントと障害物の位置とをもとに、新たなポイント(中継ポイント(j))を設定する。例えば、中継ポイント(j)は、通信状態(Slte,Swifi)を示す、RSSI又はスループットが所定の閾値以上であり、かつ中継装置10が邪魔にならない壁近くや荷物、家具などの付近に設定される。これ以外にも、通信状態(Slte,Swifi)をエラーレートを用いて判断するものであってもよい。このステップで設定された中継ポイント(j)は、ポイント参照リストL2に記録される。
【0034】
ステップS13では、中継制御部23により、中継装置10により中継される無線通信の方式が判断される。
【0035】
ステップS14では、中継制御部23により、自走機構17を制御して設定された中継ポイントへの移動が行われる。即ち、中継制御部23は、自走機構17を駆動させて、ポイント参照リストL2に記録された中継ポイント(j)まで移動させる。
【0036】
ステップS15では、中継制御部23により、中継処理が行われる。また、本実施形態では、この中継処理において、通信状態の変化に応じて、最適ポイントの変更が行われる。
【0037】
(1−2)屋内計測処理
ここでは、
図3のステップS11において実施される屋内計測処理を説明する。
図4は、屋内計測処理を説明するフローチャートである。また、
図5は、中継装置10の自走ルートを説明する図である。そして、
図6は、中継装置10により取得される計測リストL1を示す図である。
【0038】
まず、ステップS111では、探索制御部22が、屋内の走査を開始させる。探索制御部22は、ドライバー16を制御して、自走機構17を駆動させて屋内の走査を開始する。本実施形態では、中継装置10が屋内をくまなく自走することで、屋内の形状が走査される。
【0039】
ステップS112では、探索制御部22は、屋内形状の走査を行う。例えば、探索制御部22は、部屋センサー12を用いて、所定間隔毎に設定されたポイント(計測ポイント(i))で、障害物(壁)の位置情報Pを取得する。
【0040】
ステップS113では、探索制御部22は、計測ポイント(i)における通信状態Slte、Swifiを取得する。例えば、
図5に示すように、探索制御部22は、計測ポイント(1)において、通信状態計測部21からLTE用IF14、Wi−Fi用IF15を通じて得られる通信状態Slte、Swifiを受信する。
【0041】
本実施形態では、各計測ポイント(i)において、LTE方式の無線通信とWi−Fi方式の無線通信の両方の通信状態Slte、Swifiを計測する。
これ以外にも、いずれかの方式の無線通信の通信状態を計測するものであってもよい。例えば、LTE/3G方式の無線通信は、屋外に基地局98が設置されているため、Wi−Fi方式の無線通信に比べて通信状態が悪いポイントが多くなる傾向がある。そのため、LTE/3Gの通信状態を示すSlteの値のみを計測するものであってもよい。
【0042】
ステップS114では、探索制御部22は、計測ポイント(i)における、座標(x、y)を取得する。即ち、探索制御部22は、位置センサー18を用いて、計測ポイント(i)の座標(x、y)を取得する。
【0043】
ステップS115では、探索制御部22は、計測リストL1を更新する。即ち、探索制御部22は、計測順序(i)に応じて、計測リストL1に、通信状態Slte、Swifi、座標(x、y)をそれぞれ記録していく(
図6)。ここで、計測順序(i)は、探索制御部22が計測を行った計測ポイント(i)の数(i=1〜N1)に対応する。
【0044】
ステップS116では、探索制御部22は、計測が終了した計測ポイント(i)の数が計測総数N1を上回るか否かを判断する。計測総数N1は、屋内計測処理により行われる、計測ポイントの総数を示す値である。
ここでは、計測ポイント(i)の数が計測総数N1に達していないため(ステップS116:NO)、ステップS117に進む。
【0045】
ステップS117では、探索制御部22は、計測ポイント(i)の数を示すカウンターに1をプラスし、ステップS112に戻る。
【0046】
そして、探索制御部22は、ステップS112〜S117の処理を繰返す。そして、計測ポイント(i)の数が計測総数N1に達した場合(ステップS116:YES)、
図3のステップS12に進む。
【0047】
上記した一連の処理により、
図5に示すように屋内において、屋内の形状が走査され、障害物の位置が把握される。また、屋内のN1個の計測ポイント(i)の、通信状態(Slte、Swifi)、座標が記録された計測リストL1が完成する。
【0048】
(1−3)ポイント探索処理
次に、
図3のステップS12により実行されるポイント探索処理を説明する。
図7は、ポイント探索処理を説明するフローチャートである。また、
図8は、ポイント参照リストL2の作成を示す図である。
【0049】
ステップS121では、探索制御部22は、計測リストL1から参照する参照番号(i)が、計測リストL1に記録された計測総数N1を超えているか否かを判断する。ここでは、参照番号(i)が計測リストL1の計測総数N1を越えていないため、ステップS122に進む。
【0050】
ステップS122では、探索制御部22は、計測リストL1の該当参照番号(i)に記録された通信状態(Slte、Swifi)を読み出す。探索制御部22は、計測リストL1の各値を、1から昇順に読み出す。
【0051】
ステップS123では、探索制御部22は、通信状態を閾値(T1、T2)と比較する。ここでは、通信状態をRSSI又はスループットをもとに判断するため、通信状態(Slte、Swifi)がそれぞれ閾値T1、T2以上であるか否かを判断する。閾値T1は、LTE/3Gを用いた無線方式における、最適なRSSI、又はスループットを示す値である。また、閾値T2は、Wi−Fiを用いた無線方式における最適なRSSI、又はスループットを示す値である。
一方、通信状態(Slte、Swifi)をエラーレートを元に判断する場合は、探索制御部22は、通信状態(Slte、Swifi)が所定の閾値以下となるか否かを判断する。
【0052】
本実施形態では、LTE/3G及びWi−Fiの両方式において、通信状態を判断する。これ以外にも、ステップS11において、通信状態Slteのみが検出されている場合は、ステップS123において、探索制御部22は、通信状態Slteのみを判断する構成としてもよい。
【0053】
通信状態が閾値を超える場合(ステップS123:YES)、ステップS124では、探索制御部22は、計測リストL1における該当参照番号(i)に記録された項目を並べ替えた新たなリスト(ポイント参照リストL2の元となるリスト)を作成する。例えば、探索制御部22は、各項目を、通信状態Slte、Swifiの値の大小に応じて並べ替える。例えば、大小関係が対比される計測ポイント(i)において、通信状態Slteと通信状態Swifiとの大小関係がそれぞれ異なる場合、通信状態Slteの大小関係を有線して項目の並べ替えをおこなってもよい。
【0054】
そして、ステップS125では、探索制御部22は、参照番号(i)を示すカウンターに1をプラスする。一方、通信状態が閾値を超えない場合(ステップS123:NO)、計測リストL1の並べ替えを行うことなく、ステップS125に進み、探索制御部22は、参照番号(i)を示すカウンターに1をプラスする。
【0055】
そして、ステップS121に戻り、参照番号(i)が計測リストL1の計測総数N1を超えるまで、ステップS121からS125の処理を繰返す。そのため、受信状態(Slte、Swifi)の値に応じて、並べ替えられた新たなリストが作成される。
【0056】
参照番号(i)が計測総数N1を超える場合(ステップS121:YES)、探索制御部22は、ステップS126に進む。このステップS126では、探索制御部22は、参照番号(i)を示すカウンターを初期化する。
【0057】
ステップS127では、探索制御部22は、候補番号(j)が、候補数N2を超えるか否かを判断する(j=1…N2)。候補番号(j)は、設定された中継ポイント(j)の数を示す。また、候補数N2は、設定される中継ポイント(j)の総数を示す。
【0058】
候補番号(j)が、候補数N2を超えない場合(ステップS127:NO)、ステップS128では、探索制御部22は、参照番号(i)に記録された位置情報P(座標(x、y))をもとに、屋内の障害物(壁)との距離を考慮した中継ポイント(j)の座標(x、y)を設定する。
図8(a)に示すように、探索制御部22は、計測ポイント(i)までの距離が距離D1以下であり、壁Wまでの距離が距離D2以下となる範囲に中継ポイント(j)を設定する。即ち、計測ポイント(i)からの距離がD1の範囲内の位置にあるポイントは、通信状態に大きな変化がないと考えることができる。また、障害物(壁)との距離がD2の範囲にあるポイントは、人の通行等の邪魔にならないと考えることができる。一例として、距離D2は距離D1に比べて小さい値となる。また、この中継ポイント(j)は、ステップS124で作成された新たなリスト(ポイント参照リストL2のもととなるリスト)に記録される。
【0059】
計測ポイント(i)において距離D1と距離D2との関係を満たすポイントが設定できた場合(ステップS129:YES)、ステップS130では、探索制御部22は、候補番号(j)を示すカウンターに1をプラスする。そして、ステップS131では、探索制御部22は、参照番号(i)を示すカウンターに1をプラスする。
【0060】
一方、計測ポイント(i)において距離D1と距離D2との関係を満たすポイントが設定できない場合(ステップS129:NO)、探索制御部22は、中継ポイント(j)を設定することなく、ステップS131に進む。例えば、計測ポイント(i)があまりにも対象物から離れすぎている場合、このポイントを中継ポイントから除外する。
【0061】
そのため、中継ポイント(j)は、通信状態のみならず、対象物との距離を考慮した位置に設定される。ここで、壁Wまでの距離D2が近い場所を中継ポイント(j)として設定すれば、屋内において人の通行の邪魔にならないポイントに中継ポイント(j)を設定することができる。
【0062】
そして、ステップS127に戻り、探索制御部22は、候補番号(j)が候補数N2を超えなければ(ステップS127:NO)、次の参照番号(i)に該当する計測ポイント(i)に基づいて中継ポイント(j)を設定する(ステップS128)。
【0063】
一方、ステップS127において、候補番号(j)が候補数N2を超える場合(ステップS127:YES)、探索制御部22は、ステップS132に進む。このステップS132では、設定された中継ポイント(j)の内j=1からN2までを最適な中継ポイントとして設定する。即ち、上位N2までの中継ポイント(j)が記録されたポイント参照リストL2が作成される(
図8(b))。
また、ポイント探索処理では、通信状態に応じて探索したポイントを、位置関係に応じて修正するため、計測を複数回行う必要がなく、探索に要する時間を短くすることができる。
【0064】
(1−4)中継処理
次に、
図3のステップS15において実施される中継処理を説明する。
図9は、中継処理を説明するフローチャートである。また、
図10は、中継ポイントの変更を説明する図である。
【0065】
図9のステップS151では、中継制御部23は、中継処理を開始する。例えば、この例では、中継装置10は、基地局98から送信されるLTE/3G方式の無線通信を受信し、Wi−Fi方式の無線通信に変換した後、端末97に送信する場合を例に説明を行なう。
【0066】
ステップS152では、中継制御部23は、無線通信の中継を終了するコマンドが入力されていないため(ステップS152:NO)、ステップS153に進む。
【0067】
ステップS153では、中継制御部23は、現在の中継ポイントにおける通信状態を閾値T3、T4と比較する。本実施形態では、LTE/3G方式及びWi−Fi方式の両方式を用いて中継を行うため、Slte、Swifiの両通信状態を監視している。閾値T3は、LTE/3G方式の無線通信の最適なRSSI又はスループットを示す値である。また、T4は、Wi−Fi方式の無線通信の最適なRSSI又はスループットを示す値である。上記のように、通信状態(Slte、Swifi)がRSSI又はスループットを示すものである場合、通信状態(Slte、Swifi)が閾値T3、T4以上であれば、通信状態が最適な状態であると言える。なお、通信状態は、通信状態計測部21により取得される。
無論、通信状態(Slte、Swifi)がエラーレートを示すものである場合、この通信状態(Slte、Swifi)がエラーレートの上限を示す閾値以下である場合、通信状態が最適な状態であると言える。
これ以外にも、LTE/3G方式又はWi−Fi方式のいずれかの無線状態のみを監視するものであってもよい。
【0068】
通信状態が閾値T3、T4以上である場合(ステップS153:YES)、現在の中継ポイントは最適であるので、この中継ポイントを維持する。即ち、中継装置10は、この中継ポイントから移動しない。
一方、通信状態が閾値T3、T4以下である場合(ステップS153:NO)、ステップS154では、この中継ポイントは最適な中継ポイントでなくなっているため、中継制御部23は、ステップS154に進む。
【0069】
ステップS154では、中継制御部23は、他の最適な中継ポイントが存在するか否かを、ポイント参照リストL2を参照して判断する。このポイント参照リストL2には、最適な中継ポイントとして、j=1〜N2までの中継ポイントが記録されているものとする。
【0070】
ポイント参照リストL2に他の中継ポイントが記録されている場合(ステップS154:YES)、ステップS155では、中継制御部23は、ポイント参照リストL2に記録された次の候補値(j+1)の座標(x、y)を参照して、中継装置10をこの座標(x、y)まで自走させる。そして、ステップS156では、中継制御部23は、ポイント参照リストL2の参照番号(j)を示すカウンターに1をプラスする。
【0071】
そのため、
図10に示すように、中継装置10は、中継ポイント(1)から中継ポイント(2)へ自走していく。ここで、中継装置10が中継ポイント(j)を移動する方法は、様々な方法が考えられる。例えば、
図10では、中継装置10は、中継ポイント(1)から中継ポイント(2)へ、直線状に自走していく。
【0072】
また、この移動先の中継ポイントにおいても、通信状態が閾値T3、T4以下である場合(ステップS153:NO)、中継制御部23は、ポイント参照リストL2を参照して、次の候補値に移動する(ステップS154)。上記例では、
図10に示すように、中継装置10は、中継ポイント(2)から中継ポイント(3)に移動していく。
【0073】
一方、中継ポイントの候補が存在しない場合、又は候補となる全ての中継ポイントで通信状態が閾値T3、T4以下の場合(ステップS154:NO)、中継制御部23は、屋内の中継ポイントを再度探索させる。即ち、中継制御部23は、
図3のステップS11にリターンし、探索制御部22に最適な中継ポイントを探索させる。そのため、探索制御部22は、
図3に示す、屋内計測処理(ステップS11)と、ポイント探索処理(ステップS12)とを実行し、新たなポイント参照リストL2を作成する。
【0074】
以上説明したように、この第1の実施形態では、屋内の中継ポイントを通信状態と、中継装置10における自走経路上の障害物との位置を用いて判断するため、屋内における最適な中継ポイントを探索することができる。
また、予め複数の中継ポイントを記録しておくことで、無線状態が悪化するたびに、中継ポイントの探索を行う必要がない。そのため、中継装置10は、中継処理を中断させる必要がない。また、中継装置10が行う探索回数を少なくすることができるため、消費電力を低くすることができる。
【0075】
(2)第2の実施形態:
以下、中継装置10における第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、屋内計測処理における中継ポイントを選択するための条件が異なる。
【0076】
図11は、第2の実施形態に係る中継装置10と他の装置との関係を示す図である。また、
図12は、第2の実施形態に係る屋内計測処理を示すフローチャートである。この
図12における処理も、第1の実施形態と同様、
図3のステップS11において実行される。
【0077】
図11に示すように、無線通信システム1では、壁等を挟んで他の無線LANルーター等のアクセスポイント200が存在している。上記のように、中継装置10は、端末97との間でWi−Fi方式の無線通信を行うが、近くにアクセスポイント200が存在すると、このアクセスポイント200から出力される電波が干渉し、中継装置10が行う無線通信の状態が悪くなる場合がある。より具体的には、中継装置10で使用する無線LAN方式の周波数帯とアクセスポイント200で使用する無線LAN方式の周波数帯が同じである場合、無線通信の干渉が生じる確率が高くなる。そのため、第2の実施形態では、このように他のアクセスポイント200が存在する場合に、このアクセスポイント200との距離を、中継ポイント(j)を探索するための条件に加える。
【0078】
まず、
図12のステップS211では、探索制御部22が、屋内の走査を開始する。屋内を走査する手法は、第1の実施形態と同様である。
【0079】
ステップS212では、探索制御部22は、屋内形状の走査を行う。このステップにおける処理も第1の実施形態と同様である。
【0080】
ステップS213では、探索制御部22は、計測ポイント(i)における通信状態を取得する。即ち、探索制御部22は、計測ポイント(i)において、通信状態計測部21かにより計測される通信状態Slte、Swifiを取得する。
【0081】
ステップS214では、探索制御部22は、計測ポイント(i)において、プローブリクエストを送信する。このプローブリクエストは、アクセスポイント200に対してESS−ID等の返信(プローブレスポンス)を要求するものである。
【0082】
そして、ステップS215では、探索制御部22は、プローブレスポンスを受信した場合(ステップS215:YES)、近くにアクセスポイント200が存在すると判断する。そのため、探索制御部22は、ステップS216に進む。例えば、探索制御部22は、ESS−ID等を参照して、プローブレスポンスの有無を判断する。
【0083】
ステップS216では、探索制御部22は、計測ポイント(i)により計測された通信状態を修正する。本実施形態では、無線LANのRSSI,スループットを示す通信状態Swifiの値を修正する。一例として、探索制御部22は、アクセスポイント200から出力される無線LAN信号の強度と、ステップS213で取得された通信状態Swifiと組み合わせた新たな通信状態Swifi'を設定する。この通信状態Swifi'は、アクセスポイント200から出力される無線信号の強度をその強さに応じて0から1までの数に正規化し、通信状態Swifiにかけ合わせることで設定される。即ち、無線信号が強い場合を「0」に近い値とし、無線信号が弱い場合を「1」に近い値とする。
これ以外にも、プローブレスポンスを受信した計測ポイント(i)では、通信状態を一律に低くするものであってもよい。また、通信状態としてエラーレートを使用する場合は、プローブレスポンスを受信した計測ポイント(i)において、計測された通信状態を元の計測値より高くなるように修正すればよい。
【0084】
一方、探索制御部22は、プローブレスポンスを受信しない場合(ステップS215:NO)、近くに他のアクセスポイント200が存在しないと判断する。そのため、通信状態Swifiを修正することなく、ステップS217に進む。
【0085】
図11において、アクセスポイント200から出力される無線LAN信号の強度が強い領域を「A」とする。即ち、領域Aにおいて、アクセスポイント200からの信号の干渉が強いとも判断することができる。そのため、領域Aに属する計測ポイント(1)、(2)では、通信状態Swifi’は、係数がかけ合わされることで元の通信状態Swifiに比べて小さな値となる。その結果、ステップS12に示すポイント探索処理において、この計測ポイント(i)での通信状態が閾値T1、T2以下(以上)となり、中継ポイント(j)に選択されない可能性が高くなる(ステップS123)。
【0086】
ステップS217では、探索制御部22は、計測ポイント(i)における、座標(x、y)を取得する。即ち、探索制御部22は、位置センサー18を用いて、計測ポイント(i)の座標(x、y)を取得する。
【0087】
ステップS218では、探索制御部22は、計測リストL1を更新する。即ち、探索制御部22は、計測順序(i)に応じて、計測リストL1に、通信状態Slte、Swifi(又は修正されたSwifi')、座標(x、y)をそれぞれ記録していく。
【0088】
ステップS219では、探索制御部22は、計測が終了した計測ポイント(i)の数が計測総数N1を上回るか否かを判断する。
計測ポイント(i)の数が計測総数N1に達していないため(ステップS219:NO)、ステップS220では、探索制御部22は、計測ポイント(i)の数を示すカウンターに1をプラスし、ステップS212に戻る。
【0089】
一方、計測ポイント(i)の総数が計測総数N1に達した場合(ステップS219:YES)、
図3のステップS12に進む。
【0090】
上記した一連の処理により、
図11に示すように屋内のN1個の計測ポイント(i)において、アクセスポイント200からの無線信号の強度が考慮された通信状態(Slte、Swifi')、座標が記録された計測リストL1が完成する。
【0091】
以下、このようにして完成された計測リストL1を用いて、
図3に示す、ステップS12において、最適な中継ポイントの探索処理が行われ、ポイント参照リストL2が作成される。
また、ステップS13では、中継制御部23により、今から行う無線通信の態様が判断される。
そして、ステップS14では、中継制御部23により、自走機構17を制御して最適な中継ポイント(j)への移動が行われる。
さらに、ステップS15では、中継制御部23により、装置間の中継処理が行われる。
【0092】
以上説明したように、この第2の実施形態では、他の装置からの無線信号の強度を考慮した最適な中継ポイントの探索が行われる。そのため、他の装置が近くに存在する場合でも、最適な中継ポイントを探索することができる。
【0093】
(3)その他の実施形態
屋内計測処理において、計測ポイント(i)をもとに、設定される中継ポイント(j)は1つに限定されない。通信状態が良好な計測ポイント(i)を中心として複数の中継ポイント(j)を設定するものであってもよい。
【0094】
また、屋内計測処理における、通信状態の計測方法は様々なものが存在する。例えば、
図4のステップS111において、通信状態が良好な計測ポイント(i)の周囲に凹部状の壁等が存在する場合、壁の凹部を中心に中継ポイント(j)を設定してもよい。
【0095】
また、第2の計測部により計測される障害物として壁を用いたことは一例に過ぎず、家具等であってもよい。
【0096】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。
即ち、上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用してもよい。
公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用してもよい。
公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用してもよい。