(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を
図1〜
図16に従って説明する。
図1に示すように、反射型マスク(マスク)10は、基板11の上面に、EUV(Extreme Ultra Violet)光の波長(例えば、13〜14nm)に対して高い反射率を有する多層反射膜12と、多層反射膜12上に形成され、EUV光を吸収(遮光)する吸収パターン21,22,23とを有している。基板11の材料としては、低熱膨脹係数(例えば、0±1.0×10
−7/℃程度の範囲)を有し、平滑性及び平坦性に優れた材料であることが好ましい。具体的には、基板11の材料としては、例えば低熱膨脹ガラス(SiO
2−TiO
2系ガラスなど)や石英ガラスを用いることができる。
【0011】
多層反射膜12は、例えば波長が13〜14nm程度のEUV光に対して反射率が60〜70%程度となるように形成されている。この多層反射膜12としては、屈折率の異なる元素が周期的に積層された反射膜を用いることができる。例えば、多層反射膜12としては、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜60周期(ペア)程度積層された多層反射膜が用いられる。具体的には、多層反射膜12としては、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)を交互に40周期程度積層したMo/Si多層膜が好適に用いられる。すなわち、多層反射膜12としては、MoとSiを合計80層程度積層したMo/Si多層膜が用いられる。ここで、1層のMo膜の厚さは例えば2.9nm程度とすることができ、1層のSi膜の厚さは例えば4.0nm程度とすることができる。なお、EUV光の波長領域で使用される多層反射膜12としては、例えばルテニウム(Ru)/Si多層膜、Mo/ベリリウム(Be)多層膜、Mo化合物/Si化合物多層膜、Si/ニオブ(Nb)多層膜、Si/Mo/Ru多層膜、Si/Mo/Ru/Mo多層膜、Si/Ru/Mo/Ru多層膜などを用いることもできる。
【0012】
吸収パターン21,22,23は、例えば波長が13〜14nm程度のEUV光に対して反射率が0〜20%程度となるように形成されている。このような吸収パターン21,22,23の材料としては、例えばタンタル(Ta)、タンタルホウ素合金(TaB)、窒化タンタル(TaN)やクロム(Cr)を用いることができる。ここで、タンタルは、EUV光の吸収係数が大きく、塩素で容易にドライエッチングが可能であるため、加工性に優れているという利点を有する。さらに、タンタルホウ素合金は、タンタルが有する利点に加えて、アモルファス化が容易であり、平滑性に優れた膜が得られるという利点を更に有する。また、タンタルホウ素合金は、膜応力の制御性にも優れているため、マスクパターンの寸法精度を高精度に形成できる材料である。なお、吸収パターン21,22,23の厚さは、露光光であるEUV光を十分に吸収できる厚さであれば良く、例えば30〜100nm程度とすることができる。
【0013】
図2に示すように、反射型マスク10(基板11)は、平面視略中央部に形成された回路パターン領域31と、その回路パターン領域31を囲むように枠状に形成されたスクライブ領域32と、そのスクライブ領域32を囲むように枠状に形成された遮光領域33とを有している。スクライブ領域32は回路パターン領域31よりも外側に形成され、遮光領域33はスクライブ領域32よりも外側に形成されている。なお、
図1に示すように、回路パターン領域31には上記吸収パターン21が形成され、スクライブ領域32には上記吸収パターン22が形成され、遮光領域33には吸収パターン23が形成されている。
【0014】
スクライブ領域32には、ロットを流すためのアライメントマークやプロセスモニタ等のパターンが形成される。遮光領域33には、その遮光領域33に形成された多層反射膜12の上面12A全面を被覆する吸収パターン23が形成されている。すなわち、遮光領域33では、遮光膜として機能する吸収パターン23がその遮光領域33全面に形成されている。
【0015】
回路パターン領域31には、所望の形状にパターニングして形成された吸収パターン21と、その吸収パターン21から露出された多層反射膜12とによって所望の回路パターンが形成されている。具体的には、回路パターン領域31では、吸収パターン21が所望の回路パターンに対応する形状(平面形状)にパターニングされて形成されている。なお、
図1では、回路パターン領域31に多数形成された吸収パターン21のうち特定の吸収パターン21Aが形成された部分のみを示している。この特定の吸収パターン21Aとは、回路パターン同士のピッチが大きい(例えば、ピッチが352nm以上(ウエハスケールでは88nm以上)の)パターン配置で形成された回路パターンのことである。このようなピッチの大きいパターンを以下、疎パターンとも言う。
【0016】
次に、吸収パターン21A及びその周辺構造について説明する。ここでは、まず、従来の疎パターンにおける問題点等を説明する。但し、本発明は疎パターンのみに適用されることを意味するものではなく、パターン間隔(ピッチ)が上記数値以下の場合であっても、同様の課題が発生する場合には有効である。
【0017】
図10(a)は、基板61上に多層反射膜62が積層され、その多層反射膜62上に疎パターン63が形成された従来の反射型マスク60を示しており、
図10(b)は、
図10(a)に示したマスク60を用いて露光するときの光強度分布を示している。この光強度分布では、疎パターン63に対応する位置、つまり中央部に大きな下に凸のピークが1つ現れている。また、
図10(c)は、
図10(a)に示したマスク60を用いて半導体ウエハ70の上面に形成されたレジスト膜を露光・現像した後のレジストパターン71を示している。ここでは、未露光部分をレジストパターン71として残すポジ型のレジスト膜を使用している。このとき、
図10(b)に示したしきい値(臨界値)THよりも低い強度の露光光で露光された部分は未露光部分となる。換言すると、
図10(b)に示した光強度分布で露光されたレジストを現像した場合、しきい値THを超える強度の露光光で露光された部分が開口部となるレジストパターン71が形成される。これにより、
図10(c)に示すように、
図10(a)に示した疎パターン63がレジストに転写され、疎パターン63に対応する1つのレジストパターン71が半導体ウエハ70上に形成される。そして、
図10(d)は、上記疎パターン63におけるCD−FOCUS曲線(実線参照)と、密パターンにおけるCD−FOCUS曲線(一点鎖線参照)とを示している。ここで、密パターンとは、回路パターン同士のピッチが小さいパターン配置で形成された回路パターン(つまり、密集して形成された回路パターン)のことである。
【0018】
上記CD−FOCUS曲線から、焦点深度(DOF:Depth Of Focus)の変化が、半導体ウエハ70上に形成されるパターンの寸法(ここでは、レジストパターン71の寸法)に及ぼす影響を把握することができる。このCD−FOCUS曲線において、縦軸はレジストに転写されたパターンの出来上がり線幅(CD:Critical Dimension)を示し、横軸はパターンを露光する際におけるフォーカスのずれを示している。密パターンのように、上に凸の放物線の傾斜が比較的緩やかである場合には、焦点深度は比較的広く、フォーカスマージンが比較的大きいことを意味している。一方、疎パターンのように、上に凸の放物線の傾斜が比較的急峻である場合には、焦点深度が比較的狭く、フォーカスマージンが比較的狭いことを意味している。すなわち、疎パターンは、密パターンに比べて、焦点深度が狭く、フォーカスマージンが狭くなる。このため、疎パターンの場合には、フォーカス変動に伴うレジスト寸法の変動が大きくなるという問題がある。
【0019】
なお、上記放物線の頂点にあたるフォーカス値のことをベストフォーカスといい、一般には、ベストフォーカスの際のレジスト寸法が最も大きくなる。そして、焦点深度の深さを比較検討する際には、ベストフォーカスのときのレジスト寸法に対して90%以上の寸法となるフォーカス範囲を実効的な焦点深度として比較検討に用いられる。
【0020】
EUVリソグラフィにおいて焦点深度及びフォーカスマージンを拡大する方法としては、従来のフォトリソグラフィで利用されている補助パターン(SRAF:Sub-resolution Assist Feature)技術をそのまま適用する方法が考えられる。
【0021】
図11(a)に示すように、SRAF技術では、疎パターン63(メインパターン)の周辺領域に、形成すべき所望の回路パターンにないパターンである補助パターン(SRAF)64が形成される。このSRAF技術では、補助パターン64自体が解像しないことが必要であるため、その補助パターン64は露光装置で解像されないサイズに形成される。詳述すると、補助パターン64を設けたマスク60Aを用いて露光するときの光強度分布は、
図11(b)に示すように、疎パターン63に対応する位置(中央部)に大きな下に凸のピークが現れ、そのピークの両側に、比較的小さな下に凸のピークが補助パターン64に対応して現れる。そして、補助パターン64に対応するピーク値がしきい値THよりも低くならないように、補助パターン64のサイズが疎パターン63よりも小さく設定される。換言すると、補助パターン64が疎パターン63(メインパターン)に比べて小さく形成されるため、その補助パターン64に対応して現れる光強度のピークは疎パターン63に対応して現れる光強度のピークよりも小さくなる。このような光強度分布で露光されたレジストを現像した場合には、補助パターン64がレジストに転写されず、疎パターン63のみがレジストに転写される。このため、
図11(c)に示すように、疎パターン63に対する1つのレジストパターン71のみが半導体ウエハ70上に形成される。そして、
図11(d)は、上記補助パターン64を設けた場合の疎パターン63におけるCD−FOCUS曲線(実線参照:SRAFあり)を、
図10(d)に示した疎パターンにおけるCD−FOCUS曲線(破線参照:SRAFなし)に重ねて示している。この
図11(d)から明らかなように、補助パターン64を設けたことにより、上に凸の放物線の傾きが緩やかになり、焦点深度及びフォーカスマージンが拡大されることが分かる。
【0022】
このように、EUVリソグラフィにおいてもSRAF技術を適用することにより、焦点深度及びフォーカスマージンを拡大することができる。しかし、実際のEUVリソグラフィでは、従来のフォトリソグラフィに比べて、疎パターン63(メインパターン)のサイズが大幅に小さくなる。このため、その疎パターン63よりも小さく、且つ、解像しない補助パターン64を作製するのは、マスク製造上極めて困難である。仮に、疎パターン63よりも小さく、且つ、解像しない補助パターン64を作製できたとしても、製造コストが大幅に増大するという問題が生じる。
【0023】
これに対し、
図3に示すように、本実施形態のマスク10では、吸収パターン21Aの周辺領域(近傍)に、上記補助パターン64の代わりに、凹部13が形成されている。この凹部13の幅は、
図11に示した補助パターン64に比べて大きくすることができ、例えば、吸収パターン21Aと同様のサイズとすることも可能である。具体的には、吸収パターン21Aの周辺領域において吸収パターン21から露出された多層反射膜12に凹部13が形成されている。各凹部13は、多層反射膜12の上面12Aから該多層反射膜12の厚さ方向の中途位置まで形成されている。すなわち、各凹部13は、その底面13Aが多層反射膜12の厚さ方向の中途に位置するように形成されている。これら凹部13は、吸収パターン21Aにおける焦点深度及びフォーカスマージンを拡大するために設けられている。すなわち、凹部13は、上述した補助パターン64と同様の機能を有している。このように、吸収パターン21Aと同等のサイズを有する凹部13に従来の補助パターン64と同様の機能を持たせることができるため、吸収パターン21Aを加工する際と同等の加工精度でSRAF技術を反射型マスク10に適用することができる。
【0024】
次に、吸収パターン21A及び凹部13の構造について詳述する。
図4に示すように、本例の吸収パターン21Aは、平面視略矩形状に形成されている。この吸収パターン21Aの幅L1(短手方向の長さ)は、例えば65〜120nm程度(ウエハスケールでは16〜30nm程度)とすることができる。この吸収パターン21Aの両側には、平面視略矩形状の凹部13が形成されている。これら凹部13は、露光装置で解像されないように形成されている。具体的には、凹部13は、露光装置で解像されないように、当該凹部13の幅L2(短手方向の長さ)、形成位置及び深さが設定されている。
【0025】
例えば、凹部13の幅L2は、吸収パターン21Aの幅L1と同等の長さに設定することができる。具体的には、凹部13の幅L2は、吸収パターン21Aの幅L1の0.8〜1.5倍程度の長さに設定することができる。より具体的には、凹部13の幅L2は、例えば72〜128nm程度(ウエハスケールでは18〜42nm程度)とすることができる。
【0026】
また、凹部13の形成位置、具体的には吸収パターン21A(メインパターン)との離間距離L3は、吸収パターン21Aの幅L1及び凹部13の幅L2と同等の長さに設定することができる。具体的には、上記離間距離L3は、例えば72〜128nm程度(ウエハスケールでは18〜42nm程度)とすることができる。
【0027】
図3に示した凹部13は、その底面13AにおけるEUV光に対する反射率が、多層反射膜12の上面12AにおけるEUV光に対する反射率(60〜70%程度)よりも小さく、且つ吸収パターン21Aの上面におけるEUV光に対する反射率(0〜20%程度)よりも大きくなるように、上面12Aから底面13Aまでの深さが設定されている。例えば、凹部13は、その底面13AにおけるEUV光に対する反射率が40〜50%程度となるように深さが設定されている。
【0028】
ここで、
図5に示すように、多層反射膜12は、その層数、具体的にはMo/Siの繰り返し数(周期数)が変化すると、EUV光に対する反射率が変化する。具体的には、多層反射膜12におけるMo/Siの繰り返し数が少なくなるほど、EUV光に対する多層反射膜12の反射率が小さくなる。そこで、本実施形態のマスク10では、
図3に示すように、多層反射膜12に凹部13を形成してその多層反射膜12におけるMo/Siの繰り返し数を少なくすることで、凹部13の底面13Aにおける反射率を多層反射膜12の上面12Aにおける反射率よりも小さくしている。具体的には、凹部13は、Mo/Siの繰り返し数が10〜15周期程度となるように、多層反射膜12の上面12Aから25〜30周期程度のMo/Siを除去(薄化)して形成されている。これにより、凹部13の底面13Aでは、EUV光に対して40〜50%程度の反射率を達成することができる(
図5参照)。
【0029】
また、
図6に示すように、多層反射膜12の一部に凹部13が形成されると、その凹部13の底面13Aと多層反射膜12の上面12Aとの間に段差が生じる。すると、底面13Aにおける光路長(実線参照)が上面12Aにおける光路長(一点鎖線参照)よりも長くなるため、多層反射膜12の上面12Aからマスク10の外部(
図6の上側)に放射される光と、底面13Aからマスク10の外部に放射される光の位相とに差が生じる(位相がシフトされる)。このため、多層反射膜12に凹部13を形成することによって、その凹部13の底面13AにおけるEUV光に対する反射率を小さくすることができる。
【0030】
なお、本例では、吸収パターン21Aの両側のみに凹部13を形成するようにしたが、例えば吸収パターン21Aの四方を囲むように凹部13を形成するようにしてもよい。
次に、
図7を参照して、反射型マスク10の作用を説明する。
【0031】
図7(a)は、
図3に示したマスク10を上下反転して示しており、
図7(b)は、
図7(a)に示したマスク10を用いて露光するときの光強度分布を示している。また、
図7(c)は、
図7(a)に示したマスク10を用いて半導体ウエハ40上に形成されたレジストを露光・現像した後のレジストパターン41を示している。さらに、
図7(d)は、凹部13を形成した場合の吸収パターン21AにおけるCD−FOCUS曲線(実線参照)を、
図10(d)に示した吸収パターン(つまり、SRAF64及び凹部13を形成していない場合の疎パターン63)におけるCD−FOCUS曲線(破線参照)に重ねて示している。
【0032】
図7(b)に示した光強度分布では、吸収パターン21Aに対応する位置、つまり中央部に大きな下に凸のピークが現れ、そのピークの両側に、比較的小さな下に凸のピークが凹部13に対応して現れている。詳述すると、凹部13の底面13Aにおける反射率が、多層反射膜12の上面12Aにおける反射率よりも低く、吸収パターン21Aの上面における反射率よりも高く設定されているため、凹部13に対応する下に凸のピークが吸収パターン21Aに対応する下に凸のピークよりも小さくなっている。そして、マスク10では、上述したように凹部13がレジストに転写されないように、つまり凹部13に対応して現れる光強度のピークがしきい値THよりも低くならないように、凹部13の幅、形成位置及び深さが設定されている。このような凹部13を形成することにより、
図7(b)に示すように、補助パターン64を設けた場合の光強度分布(
図11(b)参照)と同様の光強度分布を得ることができる。この
図7(b)に示した光強度分布で露光されたレジストを現像した場合には、しきい値THを超える強度の露光光で露光された部分が開口部となるレジストパターンが形成される。このため、
図7(c)に示すように、凹部13はレジストに転写されず、吸収パターン21Aのみがレジストに転写され、その吸収パターン21Aに対するレジストパターン41が半導体ウエハ40上に形成される。さらに、凹部13を形成したことにより、補助パターン64を設けた場合の光強度分布と同様の光強度分布を得ることができるため、
図7(d)に示すように、補助パターン64又は凹部13を形成しない場合(破線参照)に比べて、CD−FOCUS曲線における上に凸の放物線の傾きが緩やかになる。すなわち、凹部13を形成したことにより、対応する吸収パターン21Aにおける焦点深度及びフォーカスマージンを拡大することができる。換言すると、吸収パターン21Aの周辺領域に、EUV光に対する反射率を低下させ、且つ解像させない凹部13を形成することにより、その凹部13を従来の補助パターン64と同様に機能させることができる。
【0033】
次に、
図8及び
図9を参照して、上記マスク10を半導体装置の製造に適用した場合の一例を説明する。ここでは、吸収パターン21Aにより転写されるパターンとしてゲートパターン53を想定し、素子分離絶縁膜51により画定された活性領域50Aを有するシリコン基板(半導体ウエハ)50上にゲートパターン53を形成する場合を例示している。
【0034】
図8に示すように、シリコン基板50上には、ゲート絶縁膜52Aを介してゲート電極膜53Aが形成され、そのゲート電極膜53Aの上面全面を被覆するレジスト膜54Aが形成されている。このレジスト膜54Aを所望の形状にパターニングする際に、上記マスク10が利用される。すなわち、マスク10を用いてゲート電極膜53A上に形成されたレジスト膜54Aを露光する。具体的には、
図8に示すように、マスク10の照射面(多層反射膜12の上面12Aや凹部13の底面13A)に対して垂直方向から所定角度傾いた入射角(例えば、6°程度)で光源56からEUV光をマスク10に照射し、そのマスク10で反射された反射光をレジスト膜54Aに露光する。ここで、上記レジスト膜54Aとしては、未露光部分をパターンとして残すポジ型のレジスト膜が使用されている。このため、マスク10を用いてレジスト膜54Aを露光した後に現像すると、マスク10の吸収パターン21Aがレジスト膜54Aに転写され、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、吸収パターン21Aに対応する形状(つまり、平面視略矩形状)のレジストパターン54がゲート電極膜53A上に形成される。このとき、
図8に示したマスク10の凹部13は、解像限界以下となるように形成されているため、レジスト膜54Aには転写されない。さらに、吸収パターン21Aに凹部13を付加したことにより、吸収パターン21Aにおける焦点深度及びフォーカスマージンを拡大することができるため、その吸収パターン21Aに対応するレジストパターン54のサイズ(線幅)のばらつきを抑制することができる。
【0035】
続いて、レジストパターン54をエッチングマスクにして、ゲート電極膜53A及びゲート絶縁膜52Aを、素子分離絶縁膜51及び活性領域50Aが露出するまでエッチングする。これにより、
図9(c)及び
図9(d)に示すように、吸収パターン21A(
図3及び
図4参照)に対応する形状(つまり、平面視略矩形状)のゲートパターン53及びゲート絶縁膜52がシリコン基板50上に形成される。このときのゲートパターン53のサイズは、縮小投影によりマスク10の吸収パターン21Aのサイズの1/4程度になる。すなわち、吸収パターン21Aの幅L1(
図3及び
図4参照)が88nmである場合には、ゲートパターン53の幅L4(
図9(c)参照)が22nm程度となる。なお、ゲートパターン53及びゲート絶縁膜52を形成した後に、上記レジストパターン54は除去される。
【0036】
次に、反射型マスク10の製造方法について説明する。ここでは、吸収パターン21A及びその吸収パターン21Aの周辺構造(具体的には、凹部13)を製造する方法について説明する。
【0037】
図12(a)に示す工程では、まず、基板11上に多層反射膜12が積層された構造体を準備する。例えば、基板11上に、波長13.5nmのEUV光に対して反射率が60〜70%程度となるように設計されたMoとSiの40周期(40ペア)の積層構造を持つ多層反射膜12をスパッタリング装置により形成する。続いて、
図12(b)に示す工程では、多層反射膜12の上面12A全面を被覆するように吸収層20を形成する。これにより、マスク10を製造する際の元となるマスクブランクスが製造される。なお、吸収層20は、例えばスパッタリング装置により形成することができる。
【0038】
次いで、
図12(c)に示す工程では、吸収層20の上面全面を被覆するように、化学増幅型レジストである電子線レジスト80Aを形成する。例えば、吸収層20上に液状の電子線レジストを塗布し、所定の加熱処理を行うことにより電子線レジスト80Aを形成することができる。
【0039】
次に、電子線描画装置を用いて、電子線レジスト80Aに対して電子ビームで所望の回路パターンを描画する。続いて、PEB(Post Exposure Bake)工程及び現像工程を行って、
図12(d)に示すように、レジストパターン80を形成する。すなわち、レジストパターン80は、電子線リソグラフィによって形成される。
【0040】
次いで、レジストパターン80をエッチングマスクとして、吸収層20をエッチングする。具体的には、レジストパターン80から露出している吸収層20をエッチングし、その吸収層20を所定形状にパターニングする。これにより、
図12(e)に示すように、多層反射膜12上に吸収パターン21A(回路パターン)が形成される。この吸収層20のパターニングは、例えばフッ素系プラズマ又は塩素系プラズマ、もしくは必要な場合には上記両方のプラズマを用いたプラズマエッチングにより行うことができる。
【0041】
次に、
図13(a)に示す工程では、レジスト剥離洗浄により、
図12(e)に示したレジストパターン80を除去する。
続いて、
図13(b)に示す工程では、
図12(c)に示した工程と同様の製造工程により、多層反射膜12の上面12Aに、その多層反射膜12の上面12A全面及び上記吸収パターン21Aを被覆する電子線レジスト81Aを形成する。次いで、電子線リソグラフィによって電子線レジスト81Aをパターニングして、
図13(c)に示すように、凹部13となる部分の多層反射膜12を露出させる開口部81Xを有するレジストパターン81を形成する。
【0042】
次に、
図13(d)に示す工程では、レジストパターン81をエッチングマスクとして、多層反射膜12、つまりMo/Si多層膜をエッチングにより薄化し、多層反射膜12の所要箇所(吸収パターン21Aの周辺領域)に凹部13を形成する。このとき、例えば波長13.5nmのEUV光に対して反射率が40〜50%程度となるように多層反射膜12の薄化(凹部13の形成)が行われる。なお、多層反射膜12の薄化は、例えばフッ素系プラズマ又は塩素系プラズマ、もしくは必要な場合には上記両方のプラズマを用いたプラズマエッチングにより行うことができる。
【0043】
そして、
図13(e)に示す工程では、レジスト剥離洗浄により、
図13(d)に示したレジストパターン81を除去する。
以上の製造工程により、
図1等に示したマスク10を製造することができる。
【0044】
次に、
図14及び
図15を参照して、上記反射型マスク10の評価結果について説明する。
まず、評価用のサンプルを実施例1、比較例1及び比較例2の3種類作成した。具体的には、
図14(a)に示すように、実施例1のサンプルは、吸収パターン21Aに凹部13を付加したマスク10である。この実施例1のサンプルでは、吸収パターン21Aの幅を88nm(ウエハスケールでは22nm)、凹部13の幅を88nm(ウエハスケールでは22nm)に設定し、EUV光に対する反射率が50%となるように凹部13を形成した。また、
図14(b)に示すように、比較例1のサンプルは、疎パターン63に補助パターン64を付加したマスク60Aである。この比較例1のサンプルでは、疎パターン63の幅を88nm(ウエハスケールでは22nm)、補助パターン64の幅を40nm(ウエハスケールでは10nm)に設定した。また、
図14(c)に示すように、比較例2のサンプルは、補助パターン64や凹部13を形成せずに、疎パターン63のみを形成したマスク60である。この比較例2のサンプルでは、疎パターン63の幅を88nm(ウエハスケール22nm)に設定した。
【0045】
そして、3種類のサンプル、つまりマスク10,60A,60の各々について同じ条件で光強度分布を計算した。そのシミュレーション結果を
図14(a)〜(c)に示す。このシミュレーション結果において、横軸は位置を示しており、縦軸は光強度を示している。さらに、マスク10,60A,60の各々について、露光量及びフォーカスの値を変化させ、ベストフォーカスのときのレジスト寸法に対して90%以上の寸法となるフォーカス範囲を調べ、各マスク10,60A,60における焦点深度を評価した。その評価結果を
図15に示す。なお、焦点深度の値が大きいほど、フォーカスマージンが大きいことを意味している。
【0046】
図14(特に、
図14(a)、(b))の結果から明らかなように、実施例1のサンプルは、吸収パターン21Aに凹部13を付加したことにより、疎パターン63に補助パターン64を付加した比較例1のサンプルの光強度分布と同等の光強度分布を得ることができた。具体的には、実施例1のサンプルは、吸収パターン21Aに対応する光強度のピークと凹部13に対応する光強度のピークとの位置関係が、疎パターン63に対応する光強度のピークと補助パターン64に対応する光強度のピークとの位置関係と略同じになる光強度分布を得ることができた。このため、
図15に示すように、実施例1のサンプルは、比較例1のサンプルにおける焦点深度と略同じ値の焦点深度を得ることができた。そして、実施例1及び比較例1と比較例2とを比較すると、凹部13又は補助パターン64を設けることにより(実施例1、比較例1)、それら凹部13及び補助パターン64を設けない場合(比較例2)に比べ、焦点深度を大幅に拡大(改善)できることが確認された。すなわち、凹部13の形成によって、補助パターン64を形成した場合と同等の焦点深度の改善効果を得られることが確認された。
【0047】
次に、
図16を参照して、凹部13における反射率と焦点深度との関係を評価した結果について説明する。
図16は、凹部13の深さを変化させて凹部13におけるEUV光に対する反射率を変化させたときの焦点深度を測定した結果を示すグラフである。なお、測定した焦点深度は、上記実施例1のサンプルにおける吸収パターン21Aについて測定したものである。
【0048】
図16の結果から明らかなように、吸収パターン21Aの周辺領域に凹部13を形成することにより、焦点深度を増加させることができるのが確認された。さらに、凹部13における反射率を小さくするほど(凹部13を深く形成するほど)、焦点深度を増加させることができるのが確認された。例えば、凹部13における反射率を45%程度にした場合、凹部13を形成しない場合(反射率が70%)と比較して、焦点深度を1.4倍程度に改善することができる。
【0049】
但し、凹部13の反射率が小さくなりすぎると、露光処理時の条件にもよるが、本来不要である凹部13までもが解像されてしまう。
図16の測定例では、凹部13の反射率が40〜43%よりも低くなると、凹部13が解像された。この測定結果より、凹部13の反射率は、40%以上50%以下であること好ましく、45%以上50%以下であることがより好ましい。なお、このような凹部13の反射率は、実験及びシミュレーション等により、ある条件(露光条件やマスクの構造など)に対して凹部13の解像限界となる反射率を求め、上記ある条件に対して最適な反射率が設定される。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)吸収パターン21Aの周辺領域において吸収パターン21から露出された多層反射膜12に凹部13を形成するようにした。この凹部13の形成、つまり多層反射膜12の薄化により、凹部13の底面13Aにおける(吸収パターン21A近傍における)EUV光に対する反射率を小さくすることができる。これにより、吸収パターン21Aに対応する下に凸の光強度のピークの両側に、そのピークよりも小さいピークが現れる光強度分布、つまりSRAF技術を適用した場合と同様の光強度分布を得ることができる。したがって、凹部13又は補助パターン64を形成しない場合に比べて、吸収パターン21Aにおける焦点深度及びフォーカスマージンを拡大することができる。この結果、フォーカス変動に伴うパターン(レジストパターン41など)の寸法変動を抑制することができる。
【0051】
(2)凹部13の平面形状(例えば、幅L2)を、吸収パターン21Aの平面形状(例えば、幅L1)と同程度のサイズになるように形成した。これにより、吸収パターン21Aを加工する際と同等の加工精度で凹部13を形成することができる。さらに、このような加工精度で形成された凹部13によって、吸収パターン21Aにおける焦点深度及びフォーカスマージンを拡大することができる。すなわち、吸収パターン21Aを加工する際と同等の加工精度によって、SRAF技術と同様の機能を果たす凹部13を形成することができる。したがって、吸収パターン21Aのサイズが小さくなった場合であっても、凹部13を好適に形成することができ、さらに凹部13を形成することによる製造コストの増大を好適に抑制することができる。
【0052】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・
図17に示すように、基板11の下面に導電膜14を形成するようにしてもよい。この導電膜14の材料としては、例えば窒化クロム(CrN)を用いることができる。この導電膜14の形成により、EUV光の露光時に静電チャックを行うことができるようになる。
【0053】
・
図18に示すように、多層反射膜12と吸収パターン21,22,23との間に緩衝層15を形成するようにしてもよい。すなわち、基板11上に、多層反射膜12、緩衝層15、吸収パターン21,22,23を順に積層するようにしてもよい。緩衝層15の材料としては、例えばクロムを含む材料を用いることができる。クロムを含む材料としては、例えば窒化クロム、酸化クロム(CrO)、炭化クロム(CrC)、酸化窒化クロム(CrNO)を用いることができる。上記緩衝層15の形成により、吸収層20のエッチング時等に、緩衝層15の直下に形成された多層反射膜12を好適に保護することができる。
【0054】
・
図19に示すように、基板11の下面に導電膜14を形成し、多層反射膜12と吸収パターン21,22,23との間に緩衝層15を形成するようにしてもよい。