特許第6070164号(P6070164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070164
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   H02M3/28 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-279100(P2012-279100)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-124049(P2014-124049A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 利浩
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161117(JP,A)
【文献】 特表2007−509493(JP,A)
【文献】 特開2008−054478(JP,A)
【文献】 特開2007−116789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次巻線を介して直流電源に接続されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、
前記トランスの二次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して負荷に供給する第1整流平滑回路と、
前記トランスの三次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して前記制御回路に電源電圧として供給する第2整流平滑回路とを備えるスイッチング電源装置であって、
前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも低い第1の閾電圧以下の場合と前記起動電圧を超える場合とには、第1の定電流を起動電流として前記制御回路に供給すると共に、前記電源電圧が前記第1の閾電圧を超えて前記起動電圧以下の場合には、前記第1の定電流より大きい第2の定電流を前記起動電流として前記制御回路に供給する起動回路を具備し、
前記起動回路は、前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも高い第2の閾電圧を超えると、前記電源電圧の上昇に伴って前記第1の定電流を低下させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記第1の閾電圧は、前記制御回路の停止電圧よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
トランスの一次巻線を介して直流電源に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、前記トランスの二次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して負荷に供給する第1整流平滑回路と、前記トランスの三次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して前記制御回路に電源電圧として供給する第2整流平滑回路とを備えるスイッチング電源装置に設けられ、前記直流電源の投入時に起動電流を前記制御回路に供給する起動回路であって、
前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも低い第1の閾電圧以下の場合と前記起動電圧を超える場合とには、第1の定電流を起動電流として前記制御回路に供給すると共に、前記電源電圧が前記閾電圧を超えて前記起動電圧以下の場合には、前記第1の定電流より大きい第2の定電流を起動電流として前記制御回路に供給し、前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも高い第2の閾電圧を超えると、前記電源電圧の上昇に伴って前記第1の定電流を低下させることを特徴とする起動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子をオンオフするスイッチング動作によって電力変換を行うスイッチング電源装置に関し、特にスイッチング動作を制御する制御回路に起動電流を供給する起動回路を定電流回路で構成したスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置において、直流電源の投入時に、スイッチング動作を制御する制御回路に対して起動電流を供給する起動回路を定電流回路で構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のスイッチング電源装置は、図6に示すように、コンデンサC1と、起動回路1と、一次巻線P1、二次巻線S1及び三次巻線P2を有するトランスTと、例えばMOSFETからなるスイッチング素子Q10と、スイッチング素子Q10に流れる電流を検出する抵抗R10と、スイッチング素子Q10のオンオフを制御する制御回路3と、ダイオードD11及びコンデンサC11からなる第1整流平滑回路と、ダイオードD10及びコンデンサC10からなる第2整流平滑回路と、検出回路7とを備えている。
【0004】
コンデンサC1は、交流電源を整流平滑してスイッチング電源に入力する場合の平滑コンデンサなどで、スイッチング電源の入力部に付けられるコンデンサを等価的に表す。コンデンサC1により、スイッチング電源に入力された直流電源Eが遮断されても直ちに電圧がゼロにならない。起動回路1は、コンデンサC1の正側端子とトランスTの一次巻線P1の一端との接続点と、制御回路3の電源入力端子VCCとの間に接続され、直流電源Eが常時又は断続的に印加される。制御回路3は、起動電圧Von(例えば18V)で起動し、停止電圧Voff(例えば9V)で停止する。制御回路3は、検出回路7で検出された出力電圧Voutに基づいてスイッチング素子Q10をオン/オフさせることにより出力電圧を所定電圧に制御する。
【0005】
起動回路1は、抵抗R1と定電流回路CC1とスイッチSW1とダイオードD1とからなる直列回路と、比較器CPとを備えている。そして、抵抗R1と定電流回路CC1とスイッチSW1とダイオードD1とからなる直列回路が、コンデンサC1の正側端子とトランスTの一次巻線P1の一端との接続点と、制御回路3の電源入力端子VCCとの間に接続されている。比較器CPは、非反転入力端子がダイオードD1のカソードと制御回路3の電源入力端子VCCとの接続点に接続され、反転入力端子が基準電源Vr1に接続されている。そして、比較器CPの出力端子は、スイッチSW1の接点に接続されている。比較器CPは、ヒステリシス特性を有し、反転入力端子が制御回路3の起動電圧Von(例えば18V)になるとHレベルを出力し、出力がHレベルの状態から反転入力端子が制御回路3の停止電圧Voff(例えば9V)になるとLレベルを出力する。
【0006】
このように構成されたスイッチング電源装置の動作について図7を参照して説明する。
まず、時刻t1で直流電源Eが入力されると、起動回路1では抵抗R1を介して定電流回路CC1に入力電圧Vstが印加される。このとき、比較器CPの出力はLレベルであるため、スイッチSW1はオンしている。従って、定電流回路CC1により所定の定電流Ic(例えば2.5mA)が起動電流Istとして流れ、ダイオードD1を介してコンデンサC10が充電され、コンデンサC10の電圧が上昇する。コンデンサC10の電圧は、制御回路3の電源入力端子VCCに供給され、制御回路3の電源電圧Vccとなる。
【0007】
最初、電源電圧Vccは、制御回路3の起動電圧Von以下であるので、比較器CPの出力はLレベルであり、スイッチSW1はオンを継続する。時刻t2での電源電圧Vccが起動電圧Vonに達すると、制御回路3が起動する。制御回路3が起動されると、制御回路3から駆動信号Drvが送出され、スイッチング素子Q10がオンオフを開始する。このため、トランスTの一次巻線P1に断続的に直流電源Eが印加され、二次巻線S1に電圧が誘起する。二次巻線S1に発生した電圧はダイオードD11、コンデンサC11で整流平滑され、負荷5に出力電圧Voutが供給される。負荷5に供給される出力電圧Voutは、検出回路7で基準電圧と比較され、その誤差信号が制御回路3に入力される。制御回路3は、誤差信号に基づいたデューティの駆動信号Drvを生成し、スイッチング素子Q10をオン/オフさせる。
【0008】
また、時刻t2で電源電圧Vccが起動電圧Vonになると同時に、比較器CPの出力がLレベルからHレベルになり、スイッチSW1がオフする。これにより、起動回路1によるコンデンサC10の充電は停止され、以降、トランスTの三次巻線P2に発生した電圧をダイオードD10、コンデンサC10で整流平滑した直流電圧が制御回路3に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−333840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年は、制御回路3の起動を速くすると共に、低コスト化のため、電源電圧Vccを供給するコンデンサC10の小容量化が図られている。コンデンサC10を小容量化した場合、従来技術では、起動不良になってしまう虞がある。すなわち、従来技術では、電源電圧Vccが起動電圧Vonになると同時に、コンデンサC10への起動回路1による充電が停止され、トランスTの三次巻線P2に電圧が発生するまでの間は、コンデンサC10へ充電が行われない。従って、コンデンサC10を小容量化した場合には、制御回路3の起動に伴って電源電圧Vccが急激に低下して、制御回路3の停止電圧Voffを下回り、起動不良を起こしてしまうという問題があった。この場合には、制御回路3の起動と停止とが繰り返されることになる。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて従来技術の上記問題を解決し、起動不良を起こすことなく、電源電圧を供給するコンデンサを小容量化することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のスイッチング電源装置は、トランスの一次巻線を介して直流電源に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、前記トランスの二次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して負荷に供給する第1整流平滑回路と、前記トランスの三次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して前記制御回路に電源電圧として供給する第2整流平滑回路とを備えるスイッチング電源装置であって、前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも低い第1の閾電圧以下の場合と前記起動電圧を超える場合とには、第1の定電流を起動電流として前記制御回路に供給すると共に、前記電源電圧が前記第1の閾電圧を超えて前記起動電圧以下の場合には、前記第1の定電流より大きい第2の定電流を前記起動電流として前記制御回路に供給する起動回路を具備し、前記起動回路は、前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも高い第2の閾電圧を超えると、前記電源電圧の上昇に伴って前記第1の定電流を低下させることを特徴とする。
さらに、本発明のスイッチング電源装置において、前記第1の閾電圧は、前記制御回路の停止電圧よりも低く設定しても良い
た、本発明の起動回路は、トランスの一次巻線を介して直流電源に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、前記トランスの二次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して負荷に供給する第1整流平滑回路と、前記トランスの三次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して前記制御回路に電源電圧として供給する第2整流平滑回路とを備えるスイッチング電源装置に設けられ、前記直流電源の投入時に起動電流を前記制御回路に供給する起動回路であって、前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも低い第1の閾電圧以下の場合と前記起動電圧を超える場合とには、第1の定電流を起動電流として前記制御回路に供給すると共に、前記電源電圧が前記閾電圧を超えて前記起動電圧以下の場合には、前記第1の定電流より大きい第2の定電流を起動電流として前記制御回路に供給、前記電源電圧が前記制御回路の起動電圧よりも高い第2の閾電圧を超えると、前記電源電圧の上昇に伴って前記第1の定電流を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制御回路の起動後、トランスの三次巻線に発生する電圧が動作電圧まで立ち上がるまでの電源電圧の低下を抑制することができるため、動作電圧の安定を得ることができ、電源電圧充電用のコンデンサを小容量化しても、起動不良を起こすことがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るスイッチング電源装置の第1の実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。
図2図1の各部の信号波形及び動作波形を示す波形図である。
図3図1に示す制御回路の電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡している状態での各部の信号波形及び動作波形を示す波形図である。
図4】本発明に係るスイッチング電源装置の第2の実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。
図5図4の各部の信号波形及び動作波形を示す波形図である。
図6】従来のスイッチング電源装置の回路構成を示す回路構成図である。
図7図6の各部の信号波形及び動作波形を示す波形図である。
図8図6に示す制御回路の電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡している状態での各部の信号波形及び動作波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態のスイッチング電源装置は、図1を参照すると、コンデンサC1と、起動回路1aと、一次巻線P1、二次巻線S1及び三次巻線P2を有するトランスTと、例えばMOSFETからなるスイッチング素子Q10と、スイッチング素子Q10に流れる電流を検出する抵抗R10と、スイッチング素子Q10のオンオフを制御する制御回路3と、ダイオードD11及びコンデンサC11からなる第1整流平滑回路と、ダイオードD10及びコンデンサC10からなる第2整流平滑回路と、検出回路7とを備えている。
【0017】
第1の実施の形態のスイッチング電源装置は、図6に示す従来のスイッチング電源装置に対して、起動回路1aと制御回路3aとの構成のみが異なり、以下、起動回路1a及び制御回路3aの構成及び動作についてのみ説明する。
【0018】
起動回路1aは、抵抗R1〜R9と、ツェナーダイオードZD1〜ZD3と、MOSFETQ1、Q3、Q4と、ダイオードD1と、トランジスタQ2、Q5とを備えている。抵抗R1と、ツェナーダイオードZD1と、MOSFETQ1と、抵抗R3と、抵抗R4と、ダイオードD1とからなる直列回路が、コンデンサC1の正側端子とトランスTの一次巻線P1の一端との接続点と、制御回路3aの電源入力端子VCCとの間に接続されている。抵抗R1とツェナーダイオードZD1のカソードとが接続され、ダイオードZD1のアノードがMOSFETQ1のドレインに接続されている。MOSFETQ1のドレイン・ゲート間には、抵抗R2が接続されている。そして、MOSFETQ1のゲートとダイオードD1のアノードとの間には、ツェナーダイオードZD2が接続されている。
【0019】
また、MOSFETQ1のソースとダイオードD1のアノード間には、抵抗R3と抵抗R4とからなる直列回路が接続されている。そして、抵抗R4に流れる電流が定電流になるように、トランジスタQ2とツェナーダイオードZD3とからなる直列回路が、MOSFETQ1のゲートとダイオードD1のアノード間に接続されている。トランジスタQ2のベースは、抵抗R3と抵抗R4との接続点に接続され、トランジスタQ2のエミッタは、ツェナーダイオードZD3のカソードに接続されている。
【0020】
抵抗R4の両端には、抵抗R5とMOSFETQ3とからなる直列回路が接続されている。MOSFETQ3のゲートは、トランジスタQ2のエミッタとツェナーダイオードZD3のカソードとの接続点に接続され、MOSFETQ3のゲート・ソース間にはMOSFETQ4が接続されている。MOSFETQ4のゲートは、抵抗R6を介してMOSFETQ1のソースに接続されている。
【0021】
制御回路3aの電源入力端子VCCと接地端子GNDと間には抵抗R7と抵抗R8とからなる直列回路が接続されている。抵抗R8の端子間にトランジスタQ5のベース・エミッタが接続されている。トランジスタQ5のコレクタは、抵抗R9を介してMOSFETQ4のゲートに接続されている。
また、トランジスタQ5のベースと抵抗R8の接続点には、制御回路3aの停止信号出力端子OFFに接続されている。
【0022】
MOSFETQ1、Q4、抵抗R2、R3、R4、R6、トランジスタQ2は、第1の定電流回路を構成する。抵抗R6を介してMOSFETQ4のゲートにMOSFETQ1のソース電圧が加わると、MOSFETQ4がオン状態になる。MOSFETQ4がオン状態になると、MOSFETQ3がオフされ、トランジスタQ2のエミッタとダイオードD1のアノードとが接続される。これにより、抵抗R4の電圧降下をトランジスタQ2のベース・エミッタで検出し、MOSFETQ1のゲート電圧を、抵抗R4の電圧降下が一定になるように動作する。即ち、抵抗R4に流れる電流は定電流となり、前述の構成は第1の定電流回路となる。この時の電流値を第1の定電流Iaと規定する。
【0023】
第1の定電流が流れることで、ダイオードD1を介してコンデンサC10が充電され、電源電圧Vcc(制御回路3aの電源入力端子VCCと接地端子との間の電圧)が予め設定された第1の閾電圧V1を超えると、抵抗R7と抵抗R8とを介してトランジスタQ5がオンする。なお、第1の閾電圧V1は、制御回路3aの起動電圧Von(例えば18V)よりも低く、さらに制御回路3aの停止電圧Voff(例えば9V)よりも低い電圧に設定されている。トランジスタQ5のオンに伴い、抵抗R9を介してMOSFETQ4のゲート電圧が低下し、MOSFETQ4がオフされる。MOSFETQ4のオフに伴いMOSFETQ3がオン状態になり、抵抗R4は抵抗R5との並列抵抗接続となる。また、ツェナーダイオードZD3の電圧が上昇し、トランジスタQ2は、抵抗R4と抵抗R5との並列抵抗の電圧降下をツェナーダイオードZD3のツェナー電圧を介して検出する。これにより、抵抗R4と抵抗R5との並列抵抗に流れる電流は定電流となり、且つ、第1の定電流Iaよりも大きな電流値となる。この時の定電流値を第2の定電流Ibと規定する。従って、MOSFETQ1、Q3、抵抗R2、R3、R4、R5、トランジスタQ2、ツェナーダイオードD3は、第2の定電流Ibを供給する第2の定電流回路を構成することになる。
【0024】
なお、ツェナーダイオードZD2は、前述の第1の定電流回路及び第2の定電流回路が機能しなかった場合に、MOSFETQ1から過大な電流が流れないようにするため、抵抗R3及び抵抗R4に印加される電圧をクランプして電流制限を行う保護素子となる。
【0025】
図2は、図1の各部の信号波形、及び動作波形を示したもので、(a)は入力電圧Vst、(b)は制御電圧Vcc、(c)は出力電圧Vout、(d)はトランジスタQ5のon/off状態、(e)は起動電流Ist、(f)は駆動信号Drvをそれぞれ示している。
【0026】
時刻t11で直流電源Eが投入されると、直流電源Eから抵抗R1への入力電圧Vstが上昇する。これにより、MOSFETQ4のゲートに抵抗R6を介してMOSFETQ1ソース電圧が加わり、MOSFETQ4がオン状態になるため、起動電流Istとして第1の定電流Iaが流れ始める。
【0027】
コンデンサC10が第1の定電流Iaによって充電され、時刻t12で電源電圧Vccが第1の閾電圧V1を超えると、トランジスタQ5がオンする。トランジスタQ5がオンすると、起動電流Istが第1の定電流Iaよりも大きい第2の定電流Ibに切り替わり、第2の定電流IbによってコンデンサC10が充電される。
【0028】
コンデンサC10が第2の定電流Ibによって充電され、時刻t13で電源電圧Vccが起動電圧Vonを超えると、制御回路3aは起動する。制御回路3aは、起動すると、スイッチング素子Q10の駆動する駆動信号Drvを出力すると共に、停止信号出力端子OFFから停止信号を出力してトランジスタQ5をオフさせる。これにより、起動電流Istが再び第1の定電流Iaに切り替わる。すなわち、制御回路3aが起動された後も、起動回路1aから制御回路3aに第1の定電流Iaが供給される。これにより、第1の定電流Iaは、制御回路3aの起動後からトランスTの三次巻線P2に電圧が発生するまでの間に消費される電力に充当され、制御回路3aの起動に伴う電源電圧Vccの低下を緩和させることができる。従って、コンデンサC10の小容量化した場合でも、起動不良の発生を防止することができる。
【0029】
図3は、制御回路3aの電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡している状態での図1の各部の信号波形、及び動作波形を示したもので、(a)は入力電圧Vst、(b)は制御電圧Vcc、(c)は出力電圧Vout、(d)はトランジスタQ5のon/off状態、(e)は起動電流Ist、(f)は駆動信号Drvをそれぞれ示している。
【0030】
制御回路3aの電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡している状態で、時刻t21に直流電源Eが投入されると、直流電源Eから抵抗R1への入力電圧Vstが上昇する。これにより、MOSFETQ4のゲートに抵抗R6を介してMOSFETQ1ソース電圧が加わり、MOSFETQ4がオン状態になるため、起動電流Istとして第1の定電流Iaが流れ始める。しかし、制御回路3aの電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡しているため、電源電圧Vccは第1の閾電圧V1に達することがなく、MOSFETQ4がオン状態で維持され、第2の定電流Ibよりも小さい第1の定電流Iaがそのまま流れ続ける。従って、起動回路1aの損失は、直流電源E*第1の定電流Istで抑えることができ、起動回路1aの熱的破壊を防止することができる。
【0031】
なお、図8は、従来のスイッチング電源装置において、制御回路3の電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡している状態での図1の各部の信号波形、及び動作波形を示したもので、(a)は入力電圧Vst、(b)は制御電圧Vcc、(c)は出力電圧Vout、(d)はスイッチSW1のon/off状態、(e)は起動電流Ist、(f)は駆動信号Drvをそれぞれ示している。
【0032】
図6に示す従来のスイッチング電源装置において、制御回路3の電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡している状態で、時刻t31に直流電源Eが投入されると、
起動回路1では抵抗R1を介して定電流回路CC1に入力電圧Vstが印加され、定電流回路CC1により所定の定電流Ic(例えば2.5mA)が起動電流Istとして流れる。ここで、制御回路3の電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡しているため、コンデンサC10が充電されることなく、電源電圧Vccは、上昇せず0Vのままである。従って、定電流回路CC1から定電流Icが流れ続け、起動回路1の損失は、直流電源Eの電圧Vst×定電流Icとなり発熱が大きくなる。これにより、起動回路1、スイッチング素子Q10の損失が増大し、素子を破壊させることがある。
【0033】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、トランスTの一次巻線P1を介して直流電源Eに接続されたスイッチング素子Q10と、スイッチング素子Q10のオンオフを制御する制御回路3aと、トランスTの二次巻線S1に発生する電圧を整流及び平滑して負荷に供給する第1整流平滑回路(ダイオードD11、コンデンサC11)と、トランスTの三次巻線P2に発生する電圧を整流及び平滑して制御回路3aに電源電圧Vccとして供給する第2整流平滑回路(ダイオードD10、コンデンサC10)とを備えるスイッチング電源装置であって、電源電圧Vccが制御回路3aの起動電圧Von(停止電圧Voff)よりも低い第1の閾電圧V1以下の場合と起動電圧Vonを超える場合とには、第1の定電流Iaを起動電流Istとして制御回路3aに供給すると共に、電源電圧Vccが第1の閾電圧V1を超えて起動電圧Von以下の場合には、第1の定電流Iaより大きい第2の定電流Ibを起動電流Istとして制御回路3aに供給する起動回路1aを備えている。この構成により、電源電圧Vccが制御回路3aの起動電圧Vonを超えても第1の定電流Iaが制御回路3aに供給されるため、制御回路3aの起動後、トランスTの三次巻線P2に発生する電圧が動作電圧まで立ち上がるまでの電源電圧Vccの低下を抑制することができる。従って、動作電圧の安定を得ることができ、電源電圧Vcc充電用のコンデンサC10を小容量化しても、起動不良を起こすことがない。
【0034】
また、第1の実施の形態によれば、直流電源Eの投入時、電源電圧Vccが第1の閾電圧V1以下の時は、起動回路1aは第1の定電流Iaを流すので起動回路1aでのロスが少ない。そして、電源電圧Vccが第1の閾電圧V1を超えると、第1の定電流Iaより大きい第2の定電流Ibが制御回路3aに供給されるため、制御回路3aの起動が早くなる。
【0035】
さらに、第1の実施の形態によれば、電源電圧Vccが第1の閾電圧V1を超えたか否かを判断して、第1の定電流Ia或いは第2の定電流Ibの起動電流を選択するので、制御回路3aの電源入力端子VCCと接地端子GNDとの間が短絡された状態でも起動回路1aは熱的破壊に至らないという効果を有する。
【0036】
さらに、第1の実施の形態によれば、図示しない外部制御信号によるオンオフ制御や、出力電圧の過電圧等の異常時等によってスイッチング電源が動作を停止させても、起動回路1aが第1の定電流Iaを制御回路3aに供給するので、電源電圧Vccの低下を防止することができ、安定に停止状態を維持することができる。
【0037】
さらに、第1の実施の形態によれば、起動後の定常動作になったときに、起動回路1aが第1の定電流Iaを制御回路3aに供給するので、負荷5が無負荷又は軽負荷時においてスイッチング動作が間欠発振動作となり、トランスTの三次巻線P2からコンデンサC10への充電電流が不足しても、制御回路3aの電源電圧Vccを補う効果がある。
【0038】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態のスイッチング電源装置の起動回路1bは、図4を参照すると、第1の実施の形態のスイッチング電源装置の起動回路1aの構成に加え、ダイオードD2とツェナーダイオードZD4とを備えている。ダイオードD2は、ツェナーダイオードZD2と直列に接続され、ツェナーダイオードZD2のアノードとダイオードD1のアノードとの間に接続されている。ツェナーダイオードZD4は、ツェナーダイオードZD2のアノードとダイオードD2のアノードとの接続点と、制御回路3aの接地端子GNDとの間に接続されている。また、ツェナーダイオードZD4のツェナー電圧VZ4は、制御回路3aの起動電圧Von(例えば18V)よりも高い電圧値に設定され、第2の閾電圧V2として機能する。
【0039】
ダイオードD2とツェナーダイオードZD4とを設けることで、図5に示すように、時刻t14で電源電圧Vccが第2の閾電圧V2を超えると電源電圧Vccの上昇に応じて第1の定電流Iaの電流値が低下する。これは、MOSFETQ1のゲート電圧がツェナーダイオードZD2とDZ4との直列ツェナー電圧(VZ2+VZ4)でクランプされるためである。
【0040】
MOSFETQ1のソースとダイオードD1のアノードとの間の電圧を抵抗R3に流れる第1の定電流Iaで表すと、ツェナーダイオードZD2とDZ4との直列ツェナー電圧(VZ2+VZ4)は、
VZ2+VZ4=Vcc+VFD1+VBE2+R3×Ib+Vgs1となる。
ここで、VFD1はダイオードD1の順方向電圧、VBE2はトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧、Vgs1はMOSFETQ1のゲート・ソース間電圧である。
【0041】
従って、第1の定電流Iaは、
Ia=(VZ2+VZ4―(V3+VFD1+VBE2+Vgs1))/R3となり、電源電圧Vccの大きさにより低下する関係式であることがわかる。
【0042】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、起動回路1bは、電源電圧Vccが制御回路3aの起動電圧Vonよりも高い第2の閾電圧V2を超えると、電源電圧Vccの上昇に伴って第1の定電流Iaを低下させるように構成されている。この構成により、起動回路1bの消費電力を軽減することができる。また、スイッチング電源の停止時等に電源電圧Vccを停止電圧Voff以上に維持させる場合、制御回路3aの電源電圧Vccが第2の閾電圧V2より高いほど、起動回路1bからの電流は少なくてすむ。
【0043】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
例えば、第1の実施の形態に、電源電圧Vccと、制御回路3aの起動電圧Vonよりも高い閾電圧とを比較するコンパレータ等の比較回路を設け、電源電圧Vccが制御回路3aの起動電圧Vonよりも高い閾電圧を超えると、比較回路の出力に基づいて第1の定電流Iaを遮断させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、1a、1b 起動回路
3、3a 制御回路
5 負荷
7 検出回路
E 直流電源
C1、C10、C11 コンデンサ
R1〜R10 抵抗
Q1、Q3、Q4 MOSFET
Q2,Q5 トランジスタ
D1、D2、D10、D11 ダイオード
ZD1〜ZD4 ツェナーダイオード
T トランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8