特許第6070258号(P6070258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070258
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】3レベルインバータのスナバ回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/487 20070101AFI20170123BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20170123BHJP
【FI】
   H02M7/487
   H02M7/48 M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-32771(P2013-32771)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-165965(P2014-165965A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 祐樹
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−201247(JP,A)
【文献】 特開2004−080880(JP,A)
【文献】 特開平11−262240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/487
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流入出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、
前記直流電源回路の負極端と前記交流入出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、
前記電源中性点と前記交流入出力端の間に少なくとも2直列接続された、互いに逆の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子と、
前記少なくとも2直列接続された中性点クランプ用スイッチング素子の両端間に第1のスナバコンデンサおよび第1のスナバダイオードを直列接続し、該第1のスナバコンデンサおよび第1のスナバダイオードの共通接続点と前記直流電源回路の正極端の間に第1のスナバ抵抗を接続して構成された第1のスナバ回路と、
前記中性点クランプ用スイッチング素子の両端間に第2のスナバコンデンサおよび第2のスナバダイオードを直列接続し、該第2のスナバコンデンサおよび第2のスナバダイオードの共通接続点と前記直流電源回路の負極端の間に第2のスナバ抵抗を接続して構成された第2のスナバ回路と、
前記直流電源回路の正極端および正極側スイッチング素子の共通接続点と、前記交流入出力端の間に、第3のスナバコンデンサおよび逆阻止特性を有する第1のスイッチング手段を順次直列に接続し、前記第3のスナバコンデンサおよび第1のスイッチング手段の共通接続点と前記電源中性点の間に第3のスナバ抵抗を接続して構成された第3のスナバ回路と、
前記直流電源回路の負極端および負極側スイッチング素子の共通接続点と、前記交流入出力端の間に、第4のスナバコンデンサおよび逆阻止特性を有する第2のスイッチング手段を順次直列に接続し、前記第4のスナバコンデンサおよび第2のスイッチング手段の共通接続点と前記電源中性点の間に第4のスナバ抵抗を接続して構成された第4のスナバ回路と、
を備えたことを特徴とする3レベルインバータのスナバ回路。
【請求項2】
前記正極側スイッチング素子と前記一方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子のオン、オフ制御は、第1の期間に、互いに逆転関係で同時に制御され、前記他方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子は前記第1の期間にオン制御され、
前記負極側スイッチング素子と前記他方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子のオン、オフ制御は、前記第1の期間に続く第2の期間に、互いに逆転関係で同時に制御され、前記一方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子は前記第2の期間にオン制御され、
前記第1のスイッチング手段は前記第2の期間にオフ制御され、第1の期間にオン制御され、前記第2のスイッチング手段は前記第1の期間にオフ制御され、第2の期間にオン制御され、
前記第1および第2のスイッチング手段の各々のオン、オフの切り換えは、前記互いに逆の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子がともにオン制御されているタイミングで実行されることを特徴とする請求項1に記載の3レベルインバータのスナバ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3レベルインバータのスナバ回路に係り、特にA−NPC(Advanced−Neutral Point Clamped)方式3レベルインバータの、スナバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
3レベルインバータにおいては、従来のIGBTなどを代表とするスイッチング素子を4つ直列接続した方式(NPC方式)の3レベルインバータの他に、特許文献1などに示されるような、直流電源正極側「P」と交流入出力部「AC」間に接続されるスイッチング素子、前記交流入出力部「AC」と直流電源負極側「N」間に接続されるスイッチング素子、および直流電源中性点「M」と前記交流入出力部「AC」間に双方向に接続されるスイッチング素子による中性点クランプ方式(以下、A−NPC方式)の3レベルインバータが知られている。
【0003】
図8に、特許文献2に記載のA−NPC方式3レベルインバータにおける公知のスナバ回路を示す。図8において、直流電圧源E1,E2を直列接続して直流電源回路を構成し、該直流電圧源E1,E2の共通接続点は直流電源中性点Mとなっている。
【0004】
直流電圧源E1の正極端Pと直流電圧源E2の負極端Nの間には、主回路スイッチ正極側素子Tr1および主回路スイッチ負極側素子Tr4が直列に接続されている。前記主回路スイッチ正極側素子Tr1および主回路スイッチ負極側素子Tr4の共通接続点は交流入出力端ACとなっている。
【0005】
この交流入出力端ACと直流電源中性点Mの間には、主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr2(電流方向AC→M)および主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr3(電流方向M→AC)が電流制御方向が逆向きに直列接続されている。
【0006】
前記主回路スイッチ正極側素子Tr1および正極端Pの共通接続点と直流電源中性点Mの間には、スナバ用コンデンサ(サージ吸収用)C1およびスナバ用ダイオード(逆方向電流阻止用)D1が直列に接続されている。前記スナバ用コンデンサC1およびスナバ用ダイオードD1の共通接続点と直流電源中性点Mの間にはスナバ用抵抗R1が接続されている。
【0007】
前記主回路スイッチ負極側素子Tr4および負極端Nの共通接続点と直流電源中性点Mの間には、スナバ用コンデンサ(サージ吸収用)C4およびスナバ用ダイオード(逆方向電流阻止用)D4が直列に接続されている。前記スナバ用コンデンサC4およびスナバ用ダイオードD4の共通接続点と直流電源中性点Mの間にはスナバ用抵抗R4が接続されている。
【0008】
前記主回路スイッチの各素子Tr1〜Tr4は例えばIGBTによって構成され、前記正極側素子Tr1および負極側素子Tr4と中性点クランプ素子Tr2,Tr3をまとめて、スナバ用コンデンサC1,C4、スナバ用ダイオードD1,D4およびスナバ用抵抗R1,R4から成るスナバ回路によって保護している。
【0009】
このスナバ回路による保護方式では、スイッチング素子間の距離が短くリアクタンス成分が小さい3レベルインバータの用途で適用されている複数素子入りのIGBTモジュール(単相又は3相)をブリッジ回路として使用する等、1つのスイッチング素子で構成されているIGBTモジュールに比べて比較的少容量な定格が前提で使用されるスナバ回路である。このため、大容量のA−NPC方式の3レベルインバータでは、スイッチング素子の定格容量の制限を超えてしまい、複数素子入りのIGBTモジュールが使えないという問題があった。
【0010】
また、大容量の1つのスイッチング素子で構成されるIGBTモジュールを組み合わせてブリッジ回路として使用する場合には、IGBT素子間の距離が離れて素子間のリアクタンス成分が大きくなるため、図8のような主回路スイッチ正極側素子Tr1、主回路スイッチ負極側素子Tr4と中性点クランプ素子Tr2,Tr3をまとめて保護するスナバ回路方式では、サージ電圧の抑制が不十分となる。
【0011】
そこで、例えば図9に示すように主回路スイッチの正極側素子Tr1、負極側素子Tr4と中性点クランプ素子Tr2,Tr3とでスナバ回路を分ける必要がある。
【0012】
図9において図8と同一部分は同一符号をもって示している。図9において、主回路スイッチ正極側素子Tr1および正極端Pの共通接続点と交流入出力端ACの間にはスナバ用コンデンサC1およびスナバ用ダイオードD1が直列に接続されている。前記スナバ用コンデンサC1およびスナバ用ダイオードD1の共通接続点と直流電源中性点Mの間には、スナバ用抵抗R1が接続されている。
【0013】
主回路スイッチ負極側素子Tr4および負極端Nの共通接続点と交流入出力端ACの間にはスナバ用コンデンサC4およびスナバ用ダイオードD4が直列に接続されている。前記スナバ用コンデンサC4およびスナバ用ダイオードD4の共通接続点と直流電源中性点Mの間には、スナバ用抵抗R4が接続されている。
【0014】
前記中性点クランプ素子Tr2およびTr3の直列回路の両端間には、スナバ用コンデンサC2およびスナバ用ダイオードD2の直列回路と、スナバ用コンデンサC3およびスナバ用ダイオードD3の直列回路とが並列に接続されている。
【0015】
前記スナバ用コンデンサC2およびスナバ用ダイオードD2の共通接続点と前記正極端Pの間にはスナバ用抵抗R2が接続されている。
【0016】
前記スナバ用コンデンサC3およびスナバ用ダイオードD3の共通接続点と前記負極端Nの間にはスナバ用抵抗R3が接続されている。
【0017】
図9では、主回路スイッチ正極側素子Tr1のオフ時に、この正極側素子Tr1のコレクタ−エミッタ間に印加されるサージ電圧を抑制する目的でCRDスナバ(C1,R1,D1)が設けられ、主回路スイッチ負極側素子Tr4のオフ時に、この負極側素子Tr4のコレクタ−エミッタ間に印加されるサージ電圧を抑制する目的でCRDスナバ(C4,R4,D4)が設けられ、中性点クランプ素子Tr2のオフ時に、この中性点クランプ素子Tr2のコレクタ−エミッタ間に印加されるサージ電圧を抑制する目的でCRDスナバ(C2,R2,D2)が設けられ、中性点クランプ素子Tr3のオフ時に、この中性点クランプ素子Tr3のコレクタ−エミッタ間に印加されるサージ電圧を抑制する目的でCRDスナバ(C3,R3,D3)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開昭56−121374号公報
【特許文献2】特開2010−252548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
図9の回路において、正極側端子Pと負極側端子N間の主回路スイッチ正極側素子Tr1または負極側素子Tr4の片側がONすると、このONしたスイッチング素子とは反対側のスイッチングそしに、正極側端子P−直流電源中性点M間の直流電圧源E1の電圧V1[V]と直流電源中性点M−負極側端子N間の直流電圧源E2の電圧V2[V]の合計電圧が印加される。
【0020】
このときV1[V]=V2[V]=V[V]とすると、直流電源中性点Mに対してONしたスイッチング素子とは反対側のスイッチング素子のスナバ用コンデンサに2V[V]の電圧が充電される。その後に、この反対側のスイッチング素子をスイッチングによりONする際、当該スイッチング素子に(V1[V]+導体リアクトル分サージ)の電圧が発生するが、スナバ用コンデンサは前記のように2V[V]の電圧に充電されている。主回路スイッチ正極側素子Tr1を例に挙げると、この正極側素子Tr1がONした場合、直流電源中性点Mに対して反対側の主回路スイッチ負極側素子Tr4に合計電圧2V[V]の電圧が印加される。このとき、スナバ用コンデンサC4が2V[V]に充電される。その後、主回路スイッチ正極側素子Tr1がON→OFFで負極側素子Tr4をOFFする際、主回路スイッチ負極側素子Tr4に(V[V]+サージ)の電圧が印加されるが、スナバ用コンデンサC4が2V[V]に充電されており、主回路スイッチ負極側素子Tr4のサージ電圧<スナバ用コンデンサC4の電圧となる。
【0021】
このため、上記の例では主回路スイッチ負極側素子Tr4のサージ電圧がスナバ用コンデンサC4にて吸収されず、サージ電圧が抑制できない状態になる。このサージ電圧に起因して電磁ノイズが発生し、制御装置など周辺機器に対して悪影響を与える場合がある。また、スナバ回路のスナバコンデンサの定格電圧は最低でも2E[V]必要となり、コスト増になる。
【0022】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、スナバコンデンサの電圧上昇を押さえ、スナバコンデンサのサージ電圧の吸収動作を確実にさせることができる3レベルインバータのスナバ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するための請求項1に記載の3レベルインバータのスナバ回路は、電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流入出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、前記直流電源回路の負極端と前記交流入出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、前記電源中性点と前記交流入出力端の間に少なくとも2直列接続された、互いに逆の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子と、前記少なくとも2直列接続された中性点クランプ用スイッチング素子の両端間に第1のスナバコンデンサおよび第1のスナバダイオードを直列接続し、該第1のスナバコンデンサおよび第1のスナバダイオードの共通接続点と前記直流電源回路の正極端の間に第1のスナバ抵抗を接続して構成された第1のスナバ回路と、前記中性点クランプ用スイッチング素子の両端間に第2のスナバコンデンサおよび第2のスナバダイオードを直列接続し、該第2のスナバコンデンサおよび第2のスナバダイオードの共通接続点と前記直流電源回路の負極端の間に第2のスナバ抵抗を接続して構成された第2のスナバ回路と、前記直流電源回路の正極端および正極側スイッチング素子の共通接続点と、前記交流入出力端の間に、第3のスナバコンデンサおよび逆阻止特性を有する第1のスイッチング手段を順次直列に接続し、前記第3のスナバコンデンサおよび第1のスイッチング手段の共通接続点と前記電源中性点の間に第3のスナバ抵抗を接続して構成された第3のスナバ回路と、前記直流電源回路の負極端および負極側スイッチング素子の共通接続点と、前記交流入出力端の間に、第4のスナバコンデンサおよび逆阻止特性を有する第2のスイッチング手段を順次直列に接続し、前記第4のスナバコンデンサおよび第2のスイッチング手段の共通接続点と前記電源中性点の間に第4のスナバ抵抗を接続して構成された第4のスナバ回路と、を備えたことを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、スナバコンデンサの電圧がスイッチング素子の電圧を超えることがないため、スイッチング素子のサージ電圧をスナバコンデンサによって確実に吸収することができる。
【0025】
また請求項2に記載の3レベルインバータのスナバ回路は、請求項1において、前記正極側スイッチング素子と前記一方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子のオン、オフ制御は、第1の期間に、互いに逆転関係で同時に制御され、前記他方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子は前記第1の期間にオン制御され、前記負極側スイッチング素子と前記他方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子のオン、オフ制御は、前記第1の期間に続く第2の期間に、互いに逆転関係で同時に制御され、前記一方の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子は前記第2の期間にオン制御され、前記第1のスイッチング手段は前記第2の期間にオフ制御され、第1の期間にオン制御され、前記第2のスイッチング手段は前記第1の期間にオフ制御され、第2の期間にオン制御され、前記第1および第2のスイッチング手段の各々のオン、オフの切り換えは、前記互いに逆の耐圧方向に制御できる中性点クランプ用スイッチング素子がともにオン制御されているタイミングで実行されることを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、第1および第2のスイッチング手段の各々のオン、オフの切り換えは、両方の中性点クランプ用スイッチング素子がともにオン制御されているタイミングで実行されるので、スナバコンデンサの電圧上昇を確実に抑えることができ、これによりスナバコンデンサの電圧上昇を確実に抑えることが可能となり、これによってスナバコンデンサのサージ吸収動作がより確実となる。
【発明の効果】
【0027】
(1)請求項1、2に記載の発明によれば、スナバコンデンサの電圧がスイッチング素子の電圧を超えることがないため、スイッチング素子のサージ電圧をスナバコンデンサによって確実に吸収することができる。これによって、電磁ノイズ発生低減および周辺機器の誤動作防止が可能となる。
(2)請求項2に記載の発明によれば、スナバコンデンサの電圧上昇を確実に抑えることができ、これによりスナバコンデンサの電圧上昇を確実に抑えることが可能となり、これによってスナバコンデンサのサージ吸収動作がより確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例1の回路図。
図2】本発明の実施例1における上側スイッチ素子のスイッチング時の状態を表す回路図。
図3】本発明の実施例1におけるスナバのサージ吸収から回生までの動きを表す回路図。
図4】本発明の実施例1における電流阻止の状態を表す回路図。
図5】本発明の実施例1における下側スイッチ素子のスイッチング時の状態を表す回路図。
図6】本発明の実施例1における主回路スイッチとサブスイッチのタイムチャート。
図7】本発明の実施例2の回路図。
図8】従来のA−NPC方式のスナバ回路の一例を示す回路図。
図9】従来のA−NPC方式のスナバ回路の他の例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。図1は本発明の実施例1におけるスナバ回路の回路図を示し、図9と同一部分は同一符号をもって示している。
【0030】
図1において図9と異なる点は、スナバ用コンデンサC1と交流入出力端ACの間に、前記スナバ用ダイオードD1に代えて、サブスイッチS1および逆阻止ダイオードd1を直列に接続し、スナバ用コンデンサC4と交流入出力端ACの間に、前記スナバ用ダイオードD4に代えて、サブスイッチS4および逆阻止ダイオードd4を直列に接続した点にあり、その他の部分は図9と同一に構成されている。
【0031】
前記サブスイッチS1,S4はMOS−FETの他、サイリスタ、トランジスタ、IGBT等で構成してもよい。
【0032】
図2図5は実施例1の動作を説明するための回路図(図1と同じ回路図)であり、図6はタイムチャートである。まず図2に示すように、主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr3がONし、主回路スイッチ正極側素子Tr1および主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr2が互い違いにスイッチングしている期間(図2の主回路スイッチ正極側素子Tr1がスイッチングしている期間:第1の期間)は、サブスイッチS1をONし、サブスイッチS4をOFFとする。
【0033】
これによってスナバ用コンデンサC1、スナバ用抵抗R1および逆阻止ダイオードd1がCRDスナバとして作用し、主回路スイッチ正極側素子Tr1の電圧サージが吸収される。
【0034】
また、このときサブスイッチS4がOFFのためスナバ用コンデンサC4への充電が阻止され、スナバ用コンデンサC4に直流電圧源E1とE2の合計電圧が印加されることは防止される。
【0035】
具体的には、主回路スイッチ正極側素子Tr1がOFFすると(図2の主回路スイッチ正極側素子Tr1がスイッチングしている期間におけるOFFタイミング時)、図3に一点鎖線で示すように、主回路を構成する導体リアクトル分エネルギーがスナバ用コンデンサC1→サブスイッチS1→逆阻止ダイオードd1→交流入出力端ACの経路を通過し、スナバ用コンデンサC1がサージ電圧を吸収し、該コンデンサC1の電圧がE(V)よりも増加した場合、図3に点線で示すように、スナバコンデンサC1に吸収されたサージ電圧はスナバ用抵抗R1経由で放電し、直流電圧源E1に回生される。
【0036】
尚、サブスイッチS1自身の寄生逆並列ダイオードによる放電経路は、図4に一点鎖線で示すように逆阻止ダイオードd1により阻止されるため逆方向に電流は流れず、スナバ用コンデンサC1の電圧が制限抵抗(スナバ用抵抗R1)を経由せずに放電することはない。
【0037】
また、主回路スイッチ正極側素子Tr1がONしているとき(図2の主回路スイッチ正極側素子Tr1のスイッチング期間におけるONタイミング時)は、図4に点線で示すように、逆阻止ダイオードd1により阻止されるため、スナバ用コンデンサC1が主回路スイッチ正極側素子Tr1およびサブスイッチS1の寄生逆並列ダイオード経由で短絡することはない。
【0038】
次に図5に示すように、主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr2がONし、主回路スイッチ負極側素子Tr4および主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr3が互い違いにスイッチングしている期間(図5の主回路スイッチ負極側素子Tr4がスイッチングしている期間:第2の期間)は、サブスイッチS1をOFFし、サブスイッチS4をONとする。
【0039】
これによって図2図4の場合と同様に、スナバ用コンデンサC4、スナバ用抵抗R4および逆阻止ダイオードd4がCRDスナバとして作用し、主回路スイッチ正極側素子Tr4の電圧サージが吸収される。
【0040】
また、このときサブスイッチS1がOFFのためスナバ用コンデンサC1への充電が阻止され、スナバ用コンデンサC1に直流電圧源E1とE2の合計電圧が印加されることは防止される。
【0041】
尚、前記サブスイッチS1,S4の各々のON,OFFの切り換えは、主回路スイッチ正極側素子Tr1のスイッチング期間と、主回路スイッチ負極側素子Tr4のスイッチング期間との切り換わりで、かつ主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr2,Tr3がともにONのタイミングで実行される。
【0042】
すなわち、図2の主回路スイッチ正極側素子Tr1がスイッチングしている期間→図5の主回路スイッチ負極側素子Tr4がスイッチングしている期間(又は主回路スイッチ負極側素子Tr4がスイッチングしている期間→主回路スイッチ正極側素子Tr1がスイッチングしている期間)に切り換えるタイミングにおいて、主回路スイッチ中性点クランプ素子Tr2,Tr3がともにONとなる時刻Txに行う。
【0043】
これによって、スナバ用コンデンサC1,C4の電圧上昇を確実に抑えることができ、サージ吸収動作が確実なものとなる。
【0044】
尚、スナバ用コンデンサC1,C4の予備充電時は、スナバ用抵抗R1,R4が突入電流防止抵抗として働き、前記コンデンサC1,C4に過電流が流れることが防止される。
【0045】
図7は本発明の実施例2の回路図を示している。図7において図1と異なる点は、サブスイッチS1および逆阻止ダイオードd1の代わりに、逆阻止型サブスイッチ(例えばリバースブロッキングIGBT)S’1が接続され、サブスイッチS4および逆阻止ダイオードd4の代わりに、逆阻止型サブスイッチ(例えばリバースブロッキングIGBT)S’4が接続されている点にあり、その他の部分は図1と同一に構成されている。
【0046】
本実施例2においては、前記逆阻止ダイオードd1、d4が無くても逆阻止型サブスイッチS’1、S’4自体が前記d1、d4の逆阻止機能を有しているため、前記実施例1と同様の原理でスナバ動作、制御が行える。
【0047】
以上のように実施例1、2によれば、スナバ用コンデンサ(C1,C4)の電圧がスイッチング素子(Tr1,Tr4)の電圧を超えることがないので、スイッチング時にスナバ回路によりサージ電圧を吸収する動作が確実になり(スナバ回路の機能が有効になり)、電磁ノイズ発生低減および周辺機器の誤動作防止ができる。
【0048】
また、スナバ用コンデンサの低電圧化が可能になり(2E[V]の電圧が必要であったが、E[V]+導体リアクトル分サージまで下げられる)、スナバ用コンデンサの小型化およびコストダウンが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
E1,E2…直流電圧源
C1〜C4…スナバ用コンデンサ
D1〜D4…スナバ用ダイオード
d1、d4…逆阻止ダイオード
R1〜R4…スナバ用抵抗
Tr1…主回路スイッチ正極側素子
Tr2,Tr3…主回路スイッチ中性点クランプ素子
Tr4…主回路スイッチ負極側素子
S1,S4…サブスイッチ
S’1、S’4…逆阻止型サブスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9