(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面領域のガラス成分中のジルコニアの含有量が、前記中間領域のガラス成分中のジルコニアの含有量より30質量%以上多いことを特徴とする請求項1に記載のセラミック積層電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本実施形態によるセラミック積層電子部品を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るセラミック積層電子部品1の一例を示す斜視図である。本実施形態に係るセラミック積層電子部品1は、積層体4とその端面に端子電極7を備えている。
【0016】
図2は、
図1に示すセラミック積層電子部品1のI−I線における断面図である。
図2のセラミック積層電子部品1は、セラミックスからなる素体2と、複数の内部電極3とを含む積層体4を有し、換言すれば、素体2と内部電極3が積層された単位構造9を少なくとも1つ備えたものである。より具体的には、積層体4の一方の表面に露出した端部を有する内部電極3と、積層体4の他方の表面に露出した端部を有する内部電極3とが交互に積層されている。積層体4の両表面には、それらの表面を覆うように下地電極5が設けられている。下地電極5は、積層体4の一方の表面から露出した内部電極3の群、あるいは積層体4の他方の面から露出した内部電極3の群に電気的に接続されている。そして、下地電極5の表面には、めっき金属層6を備えている。
【0017】
端子電極7は、
図1及び
図2に示すように、積層体4の表面のうち、内部電極3(
図1での図示なし)の端部が露出している面を覆う端子電極主面7aと、その周囲の面の一部、すなわち端子電極主面7aから回り込むように側面の一部を覆う端子電極側面7bとから構成されている。さらに、端子電極7は、
図2に示すように、下地電極5とめっき金属層6から構成されている。下地電極5は、めっき金属層6を形成する際の下地になるとともに、端子電極7と積層体4との密着性を確保する。
【0018】
セラミック積層電子部品1の素体2は、セラミックス、具体的には、半導体セラミックス、誘電体セラミックス及び磁性体セラミックスからなる。
【0019】
内部電極3には、素体2との間での確実なオーミック接触を可能とする観点から、例えば、銀、パラジウム、ニッケル、銅、またはアルミニウムを主成分とする材料が用いることが好ましいが、特に材料に限定はない。
【0020】
下地電極5は、金属成分とジルコニアを含むガラス成分を有する構造となっている。このような構造は例えば、積層体4の内部電極3の端部が露出している表面部分へ導電性ペーストを塗布し、焼成することにより得られる。下地電極5を形成するための導電性ペーストとしては、主として、ジルコニアを含むガラス粉末(フリット)と、有機ビヒクル(バインダー)と、金属粉末とを含むものが挙げられ、導電性ペーストの焼成により、有機ビヒクルは揮散し、最終的にガラス成分および金属成分を含む下地電極5が形成される。なお、導電性ペーストには、必要に応じて、粘度調整剤、無機結合剤、酸化剤等種々の添加剤を加えてもよい。例えば、下地電極5は、金属成分として銀、銅、ニッケル、又は亜鉛の少なくとも1種を含む。
【0021】
下地電極5は、
図2に示すように、表面領域5aと下地電極の中間領域5bよりなる。本実施形態におけるガラス成分のジルコニアの含有量は、下地電極5の表面領域5aが中間領域5bの含有量より多い。ガラス成分のジルコニア含有量は、含有量を多くすると耐薬品性が高くなる。このため、下地電極5にめっきをする際にめっき液によりガラス成分が腐食して、めっき液が下地電極5を浸透して、セラミック積層電子部品の内部に侵入することを防止する効果を得られるのである。
【0022】
発明者らが鋭意検討した結果、セラミック積層電子部品の内部へのめっき液の主たる侵入箇所は、下地電極5を浸透していく経路であることを見出した。めっきの際には、金属元素以外のアルカリ金属等のカチオンが、めっき液中のめっきのための電界によって下地電極5の周辺に集まる。このため、下地電極5の周辺のめっき液は、高アルカリ性となってしまい、下地電極5のガラス成分を積極的に溶かし、下地電極5に積層体4に通じるオープンボイドが形成され、そのオープンボイドからめっき液が侵入する。このため、本発明によると、めっき液の主たる侵入箇所を効果的に遮断することが出来る。
【0023】
しかしながら、下地電極5に含まれる全てのガラス成分のジルコニア量を均一に多くすると、ガラス成分の軟化温度が上がり、焼結温度が高くなってしまう。このため、下地電極5を構成する金属の結晶粒径が大きくなり、粒界が粗雑になって、ここからめっき液が侵入する傾向があり、好ましくない。一方、下地電極5の表面領域5aのガラス成分のジルコニアの含有量のみを大きくすると、下地電極5全体のガラス成分の組成が下地電極の中間領域5bのガラス成分の場合と同じ温度で焼成することができる。また、下地電極5のめっき液によるガラス成分の溶出を抑制する耐薬品性は、下地電極5の表面領域5aのガラス成分の組成で決まるので、このような構成にすることで、焼成温度を上げずに、下地電極5の耐薬品性を向上することが出来るのである。
【0024】
下地電極5の表面領域5aの含有量は、中間領域5bの含有量より20質量%以上多いことが好ましく、30質量%以上多いとさらに好ましい。最も好ましいのは下地電極5の表面領域5aの含有量が中間領域5bの含有量より40質量%以上多いことである。
【0025】
下地電極5のガラス成分のジルコニア含有量を、中間領域5bより表面領域5aを多くする作製方法については、特に限定されないが、例えば次のような方法を用いることにより得ることができる。下地電極5となる導電性ペーストのガラス成分の組成にジルコニア量が多いもの(ペーストH)と少ないもの(ペーストL)の2種類を用意して、積層体4の内部電極3の端部が露出している端面に、ペーストH、ペーストL、ペーストHの順番で3回繰り返し塗布して、焼成する。
【0026】
下地電極5のジルコニア含有量は、下地電極5の深さ方向分布を次のような測定領域で測定して、評価することができる。
図3には、
図2に示すセラミック積層電子部品1の断面に下地電極5の測定領域8を示す。測定領域8は、断面において積層方向から見て積層体4の1/2の厚みで厚みの中心を含む領域とする。さらにこの測定領域8は、積層体4と接する線分Wと積層体4の積層方向に対して平行で積層体4から、めっき金属層6までの線分Wからの垂線Tで囲まれる領域である。
【0027】
次に、測定領域8についてEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて、ジルコニウム元素と下地電極5の金属成分の面分析測定を行う。線分W方向のジルコニウム元素の検出量はそれぞれ平均化し、T方向の分布を求める。また、同様にして金属成分検出量の厚みT方向の分布を求め、各深さでのジルコニウム元素の検出量を下地電極5の金属成分の検出量で割る。さらにジルコニウムの検出量に一定の係数をかけて、下地電極5のガラス成分に含まれるジルコニアの平均値が下地電極ペースト中のガラス成分に含まれる平均値と同じになるように係数を決定し、ジルコニウムの検出量×係数をガラス成分中に含まれるジルコニア(ZrO
2)の含有量とする。
【0028】
測定領域8における下地電極5の表面領域5aは、積層体4と下地電極5との界面からめっき金属層6までの厚さ、つまり下地電極5の厚さの1/6の厚さが積層体4側の表面領域5aであり、めっき金属層6との界面から下地電極5の厚さの1/6の厚さがめっき金属層6側の表面領域5aとなる。さらに、測定領域8以外の下地電極5では、この測定領域8で定めた表面領域5aを、延長しその領域を下地電極5の表面領域5aとすることができる。そして、表面領域5a以外の下地電極5を中間領域5bとする。
【0029】
下地電極5の表面領域5aと中間領域5bのジルコニアの含有量は、測定領域8における表面領域5aと中間領域5bのジルコニアの含有量の平均値をその領域での含有量とする。
【0030】
さらに、積層体4側の表面領域5aとめっき金属層6側の表面領域5aとのうちジルコニアの含有量が異なる場合は、ジルコニアの含有量が少ない方の値を、表面領域5aのジルコニアの含有量とする。
【0031】
めっき金属層6は、例えば、下地電極5側から積層形成されたニッケルめっき金属層6aおよびスズめっき金属層6bを含む2層構造を有する。ニッケルめっき金属層6aは、実装時に溶融状態のはんだと下地電極5との接触を防止して、はんだ食われを防止するものである。その厚さは例えば2μm程度である。ニッケルめっき金属層6aは、厚くするほどはんだ食われは抑制できるものの生産性が低下する。またニッケルめっき金属層6aを電気めっき法で形成する場合は、層を厚くし過ぎると応力が増大し、ニッケルめっき金属層6aと下地電極5との間、もしくは下地電極5と積層体4との間で剥離が発生する場合がある。
【0032】
ニッケルめっき金属層6aは好ましくは電気めっき法で形成される。めっき装置は電気バレルめっき装置が好ましく用いられる。この場合、バケットと称する不導通性の網籠にチップ及びメディアと称する金属球を投入し、これを回転させながらタンブラーと称する陰極をこの混合体の内部に挿入してめっきを行うことができる。
【0033】
ニッケルめっき液の種類はワット浴、もしくはスルファミン酸ニッケルめっき液が好ましく用いられる。ワット浴からの析出被膜は素地との密着性がよく、半光沢で耐食性がある。ワット浴の組成は、硫酸ニッケル六水和物200〜380g/L、塩化ニッケル六水和物30〜60g/L、ほう酸30〜45g/Lである。通常pH1.5〜5、温度40〜70℃で用いられ、pH調整剤は炭酸ニッケルが好ましく用いられる。
【0034】
スルファミン酸ニッケルめっき液の組成は、通常、スルファミン酸ニッケル四水和物350〜450g/L、ほう酸30〜40g/L、臭化ニッケル3〜10g/Lであり、pH4〜4.5、温度40〜60℃で用いられる。pH調整剤はワット浴と同様に炭酸ニッケルが用いられる。
【0035】
スズめっき金属層6bは、はんだの濡れ性を向上させる機能を有するものであり、その厚さは例えば4μm程度とされる。スズめっき金属層も好ましくは電気バレルめっきで形成される。
【0036】
スズめっき液にはpHが12以上のアルカリ性スズめっき液(スズ酸塩浴)、pHが2以下の酸性スズめっき液、pHが4〜8の中性スズめっき液があるが、セラミックス素体は耐薬品性に課題がある場合が多く、強アルカリ、強酸ともに素体が腐食されるので中性のスズめっき液が好ましい。
【0037】
中性スズめっき液の組成の例として、スズ塩としてメタンスルホン酸スズを40〜60g/L、導電塩としてメタンスルホン酸アンモニウムを30〜50g/L、キレート剤としてグルコン酸ナトリウムを150〜250g/L添加しアンモニアでpHを4に調整したものが挙げられる。
【0038】
パワーデバイス等のように、端子電極7に大電流が流れる場合は、めっき金属層6中、下地電極5とニッケルめっき金属層6aとの間に銅めっき金属層を設けることも好ましい。銅は電気抵抗が小さいので、端子電極の抵抗を下げて電子部品の使用時の発熱を抑えることが出来る。銅めっき金属層の厚さは、1〜4μmが好ましい。また銅めっき金属層の形成方法は電気めっきが好ましい。電気銅めっき液の組成の例としてpH8のピロリン酸銅めっき液が挙げられる。
【0039】
別の本実施形態のセラミック電子部品は、積層体4の露出面にガラス層を形成しており、これにより、めっき中のめっき液が積層体4の素体2を腐食して素体2の強度が低下することを防止することが出来る。また、ガラス層は絶縁体であるので、素体2の抵抗が低い場合に、電気めっき中にめっき金属層が、積層体4の露出面に析出することも防止出来る。
【0040】
素体2には亜鉛が含まれてもよい。この場合特に、素体2の耐薬品性が低くなる傾向にあるので、ガラス層を形成することがより好ましい。
【0041】
亜鉛を含む素体2の例として、半導体セラミックスであるバリスタやサーミスタでは素体2の主成分として、また、誘電体セラミックス及び磁性体セラミックスでは素体2の焼結助剤として亜鉛を含む低融点ガラスが好ましく用いられる。特に後者では、セラミック積層部品の小型化に伴い薄層化が進み、このためにさらに焼結温度を下げる要求が多くなっており、使用例も一段と増加している。
【0042】
特にセラミック積層部品の積層コイルやチップコンデンサー等では、その小型化のトレンドが顕著であり、この為材料への焼結温度を下げる要求が多い。このため焼結助剤として亜鉛を含む低融点ガラスを添加することが好ましく行われる。この場合特に焼結温度は低下するものの、素体2の強度及び耐薬品性は低下する傾向にある。
【0043】
ガラス層の形成方法は、スパッター法、電子ビーム蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法、ガラススラリーをスプレーして加熱する方法、ディップ法、ゾルゲル法等が挙げられる。
【0044】
ガラス層の組成は、耐薬品性を考慮してジルコニアを含むことが好ましい。またジルコニアの含有量は好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、10質量%以上が最も好ましい。また、アルカリ酸化物の含有量が10質量%以下、酸化亜鉛の含有量が5質量%以下であることが耐薬品性を向上する為に好ましく、同様の理由でガラスの融点は650℃以上であることが好ましい。後者はガラスの融点が高いほど耐薬品性が良好であることによる。また、アルカリ酸化物を含まない無アルカリガラスは耐マイグレーション性が高く、高温耐湿試験でガラス層の比抵抗が低下しないので好ましい。
【0045】
また、ガラス層の連続性を担保する為に、ガラス層は非晶質であることが好ましい。結晶化ガラスは焼成時にチップ同士の固着を防止出来るメリットがあるが、ガラス層が多孔質になる傾向があり、めっき中にめっき液が積層体の内部に侵入する可能性がある。
【実施例】
【0046】
〔実施例1〕
外形寸法が1.0×0.5×0.5mmである積層セラミックコンデンサチップの積層体4を210個作成した。ここで素体の材質はチタン酸ストロンチウム系であり、内部電極に挟まれる素体の厚さは2μmである。また、内部電極は銀/パラジウム合金により構成され、厚さは1μmである。また、積層体の表面はガラスで覆われていない。
【0047】
次に、銀粉が70質量%、ガラス粉が7質量%、残部はバインダと溶剤である下地電極ペーストを、焼成した後の積層体の内部電極が露出している面に乾燥後の厚さが6μmになるように塗布した。このガラス粉の組成は二酸化ケイ素(SiO
2)が53質量%、三酸化二ホウ素(B
2O
3)が15質量%、酸化ナトリウム(Na
2O)が12質量%、ジルコニア(ZrO
2)が15質量%、酸化亜鉛(ZnO)が3質量%、その他の成分が2質量%である。以降この下地電極ペーストをペーストHと略記する。
【0048】
さらにこの上に、銀粉が70質量%、ガラス粉が7質量%、残部はバインダと溶剤である下地電極ペーストを乾燥後の厚さが24μmになるように塗布した。このガラス粉の組成は二酸化ケイ素(SiO
2)が53質量%、三酸化二ホウ素(B
2O
3)が15質量%、酸化ナトリウム(Na
2O)が12質量%、ジルコニア(ZrO
2)が7質量%、酸化亜鉛(ZnO)が3質量%、その他の成分が10質量%である。以降この下地電極ペーストをペーストLと略記する。
【0049】
そしてさらにその上にペーストHを同じ厚さに塗布して680℃で10分間焼成(焼付け)し、下地電極を積層体に作製した。焼成後の下地電極の厚さはトータル30μmであった。言い換えると、下地電極には、積層体側のペーストとめっき金属側のペーストにペーストHを用い、その間にペーストLを用いていた。
【0050】
次に下地電極を焼付けしたあとのチップ100個を任意に抽出し、電気バレルめっきでニッケルめっき金属層を下地電極上に2μm、さらにその上にスズめっき金属層を4μm形成し、セラミック積層電子部品のチップを得た。ちなみにニッケルめっき液はpH4、液温度50℃のワット浴、スズめっき液はpH6の中性浴を用いた。
【0051】
端子めっき後のチップ(セラミック積層電子部品)を10個任意に抽出して、チップの中央部で積層方向に垂直方向で断面を得た。
【0052】
断面の下地電極部での、積層体の積層方向と同じ方向で、その中央部の幅250μmの領域を測定領域とした。この測定領域をジルコニウムと、下地電極の金属成分の銀の組成の面分析を行った。その銀元素に対するジルコニウム元素の質量%をガラス成分中のジルコニア含有量として、厚み方向で評価した。ちなみに、積層体の積層方向と同じ方向である幅方向では平均し、その厚み方向にジルコニア含有量とした。そしてさらに、10個のチップを平均した断面の下地電極部でのジルコニア含有量の分布を示す結果を
図5に示す。
【0053】
次に、積層体との界面から下地電極の厚さの1/6の深さの領域に相当する0〜5μmまでのジルコニア含有量の平均値を積層体側の表面領域のジルコニア含有量、めっき金属層との界面から下地電極の厚さの1/6から5/6までの領域に相当する5〜25μmまでの平均値を中間領域のジルコニア含有量とし、さらにめっき金属層との界面から下地電極の厚さの1/6の深さの領域に相当する25〜30μmまでの平均値をめっき金属側の表面領域のジルコニア含有量とした。そしてめっき金属層側の表面領域のジルコニア含有量と積層体側の表面領域のジルコニア含有量の小さい方を表面領域のジルコニア含有量とし、中間領域の含有量と比較した。結果を表1に示す。
【0054】
電気的絶縁性の高温付加試験には、端子めっき前のチップ100個と端子めっき後のチップそれぞれ100個のチップを用い155℃の雰囲気で、その端子電極間に5Vの電圧を連続的に印加し、絶縁抵抗の変化を評価した。155℃での端子間抵抗が10
7Ω以下に低下した時間のワイブルプロットより求めた平均時間を寿命時間とした。
【0055】
実施例1の端子めっき後のチップの寿命時間は2530時間であり、1000時間以上の長い寿命時間が得られた。また、端子めっき前のチップ100個の高温負荷試験における寿命時間を同様の方法で評価すると2470時間であった。このため、めっき後の寿命時間の低下は発生していないことが確認された。
【0056】
〔実施例2〕
実施例2では、ペーストHのガラス粉の組成を変更した以外は実施例1と同様に行った。ガラス粉の組成は、ジルコニアを13質量%に変更し、その他の組成は各成分の比率を変えずに調整した。その結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例3〕
実施例3では、ペーストHのガラス粉の組成を変更した以外は実施例1と同様に行った。ガラス粉の組成はジルコニアを11.5質量%に変更し、その他の組成は各成分の比率を変えずに調整した。その結果を表1に示す。
【0058】
〔実施例4〕
実施例4では、ペーストHのガラス粉の組成を変更した以外は実施例1と同様に行った。ガラス粉の組成はジルコニアを8.5質量%に変更し、その他の組成は各成分の比率を変えずに調整した。その結果を表1に示す。
【0059】
〔実施例5〕
実施例5では、ペーストHのガラス粉の組成を変更した以外は実施例1と同様に行った。ガラス粉の組成はジルコニアを8質量%に変更し、その他の組成は各成分の比率を変えずに調整した。その結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例6〕
実施例6では、ペーストHのガラス粉の組成を変更した以外は実施例1と同様に行った。ガラス粉の組成はジルコニアを7質量%に変更し、その他の組成は各成分の比率を変えずに調整した。その結果を表1に示す。
【0061】
〔実施例7〕
実施例7では、ペーストHのガラス粉の組成を変更した以外は実施例1と同様に行った。ガラス粉の組成はジルコニアを6.5質量%に変更し、その他の組成は各成分の比率を変えずに調整した。その結果を表1に示す。
【0062】
実施例1〜7の結果から下地電極の表面領域のジルコニアの含有量が中間領域の含有量より大きいと高温負荷試験の寿命時間が1000時間以上になることがわかった。また、下地電極の表面領域のジルコニアの含有量が中間領域の含有量より30質量%以上であると高温負荷試験の寿命時間がより長い2000時間以上得られることがわかった。
【0063】
〔実施例8〕
実施例8では、積層体の内部電極が露出している面にペーストHを6μm、ペーストLを9μm、ペーストHを6μm、ペーストLを9μm、及びペーストHを6μm塗布し、下地電極の焼付けを710℃で10分間行った以外は実施例1と同様に行った。ちなみにここでの焼付けの温度は、実施例1で行った680℃10分で下地電極の焼成が不十分であったので、その温度を上げた。この結果を表1に示す。
【0064】
寿命時間は2120時間であり、1000時間以上の寿命時間が得られた。中間領域に部分的にジルコニアの多い領域がある場合も、表面領域のジルコニアの含有量が中間領域の含有量より30%以上多いと、高温負荷試験の寿命次官が2000時間以上になることがわかった。さらに、断面の下地電極部でのジルコニア含有量の分布を示す結果を
図6に示す。
【0065】
〔実施例9〕
実施例9では、素体の材質をチタン酸ストロンチウム系から酸化亜鉛(ZnO)を主成分としたバリスタに変え、内部電極の材質をパラジウムとし、積層体の露出面にペーストHのガラス成分と同じ組成で厚さが3μmのガラス層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
【0066】
高温負荷試験の寿命時間は2830時間と良好であった。素体の耐薬品性が乏しい酸化亜鉛を主成分としたバリスタであっても、積層体の露出面にガラス層を形成し、さらに下地電極の表面領域のジルコニアの含有量が中間層の含有量より20%以上多いと、高温負荷試験の寿命を2000時間以上に出来ることが確認された。
【0067】
【表1】
【0068】
〔比較例1〕
比較例1では、下地電極をペーストLだけで30μmの厚さに作製した以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0069】
〔比較例2〕
比較例2では、下地電極をめっき金属層側のペーストにペーストHを用いる代わりにペーストLにした以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0070】
〔比較例3〕
比較例3では、下地電極を積層体側のペーストにペーストHを用いる代わりにペーストLにした以外は実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0071】
〔比較例4〕
比較例4では、下地電極のペーストにペーストLを用いず、ペーストHを重ね、焼付け温度を790℃に上げた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0072】
比較例1〜4より、下地電極の表面領域のジルコニアの含有量が中間領域の含有量より小さいと高温負荷試験の寿命時間が1000時間未満になることが確認された。
【0073】
【表2】