(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070387
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】スピーカ装置およびスピーカ装置に用いられるヘッドピース
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20170123BHJP
H04R 1/28 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
H04R1/02 103F
H04R1/28 310A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-91064(P2013-91064)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-216741(P2014-216741A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123940
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 辰一
(72)【発明者】
【氏名】平川 和明
【審査官】
大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−213103(JP,A)
【文献】
特開平06−197394(JP,A)
【文献】
特開平06−098392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きに設置されたスピーカユニットと、
前記スピーカユニットの上に設けられ、前記スピーカユニットが放音した音声を横方向に反射するリフレクタを有するヘッドピースと、
前記スピーカユニットと前記ヘッドピースとの間であり、且つ、前記スピーカユニットと前記ヘッドピースとの間の音声の伝搬を妨げない位置に、前記リフレクタに向けて設けられた発光素子と、
を備えたスピーカ装置であって、
前記ヘッドピースは、前記リフレクタを内蔵する略立方体形状の本体部を有し、
前記本体部の4つの側面のうち、隣接する2側面が切り欠かれて放音口とされ、他の2側面が前記音声の伝搬方向を規制する背板とされている
スピーカ装置。
【請求項2】
前記本体部は、前記スピーカユニットの口径と略同じ径で開口された底板を有し、
前記発光素子は、前記底板と前記スピーカユニットとの間であって、前記放音口側の角部に設けられている
請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記ヘッドピースは、前記本体部の下方の周囲に形成されたスカートをさらに有し、
前記発光素子は、前記スカートの内側に設けられている
請求項2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記リフレクタは、前記背板の下端角から、前記放音口の上辺に向けた2つの三角形を接合した形状の面である請求項2または請求項3に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
スピーカユニットの前面に設けられる音声反射用の部材であって、
略立方体形状の本体部と該本体部の下方に形成されたスカートを有し、
前記本体部は、
前記スピーカユニットの口径と略同じ径の開口部を有する底板と、
隣接する2側面を切り欠かいて設けられた放音口と、
他の2側面の壁面であり前記スピーカユニットが放音した音声の伝搬方向を規制する背板と、
前記背板の下端角から、前記放音口の上辺に向けた2つの三角形を接合した形状の面であるリフレクタと、
を備えているヘッドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカユニットを上向きに設けたスピーカボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にスピーカ装置は、ユーザに対する正面方向である前面にスピーカユニットが取り付けられた箱型のものが多かった。したがって、ユーザの眼に触れる前面は、スピーカユニットが露出しているか、ネット状のフロントグリルに覆われているかであった。スピーカユニットが放音する音声の伝搬を妨げてはいけないため、多くの装飾を施すことができなかった。このため、従来のスピーカ装置は装飾性に欠けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、スピーカユニットを上面や側面などに設ければ、ユーザの眼に触れる前面に自由に装飾を施すことができるが、そのような方向にスピーカユニットを設けると放音された音声が良い音質でユーザのところまで伝搬しなかった。また、上方や側方に向けて放音された音声を正面方向に反射させる部材を設けることも考えられるが、その部材によって却ってスピーカ装置を装飾的でなくしてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、この発明は、正面に居るユーザに良い音質で音声を伝搬でき、且つ、デザインの自由度を増したスピーカ装置、および、このスピーカ装置に用いられるヘッドピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスピーカ装置は、上向きに設置されたスピーカユニットと、スピーカユニットの上に設けられたヘッドピースと、スピーカユニットとヘッドピースとの間で音声の伝搬を妨げない位置に設けられた発光素子と、を備えている。ヘッドピースは、スピーカユニットが放音した音声を横方向に反射するリフレクタ
、および、このリフレクタを内蔵する略立方体形状の本体部を有し、発光素子は、リフレクタに向けて設けられている。
さらに、ヘッドピースは、本体部の4つの側面のうち、隣接する2側面が切り欠かれて放音口とされ、他の2側面が音声の伝搬方向を規制する背板とされている。
【0007】
本発明の他の形態では、
本体部は、スピーカユニットの口径と略同じ径で開口された底板を有し、発光素子は、底板とスピーカユニットとの間であって放音口側の角部に設けられている。さらに他の形態では、ヘッドピースは、本体部の下方の周囲に形成されたスカートをさらに有し、発光素子は、スカートの内側に設けられている。また、リフレクタは、背板の下端角から、放音口の上辺に向けた2つの三角形を接合した形状の面であってもよい。
【0008】
この発明のヘッドピースは、スピーカユニットの前面に設けられる音声反射用の部材であって、略立方体形状の本体部と該本体部の下方に形成されたスカートを有する。本体部は、スピーカユニットの口径と略同じ径の開口部を有する底板と、隣接する2側面を切り欠かいて設けられた放音口と、他の2側面の壁面であり
スピーカユニットが放音した音声の伝搬方向を規制する背板と、背板の下端角から放音口の上辺に向けた2つの三角形を接合した形状の面であるリフレクタとを備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、スピーカユニットがユーザの正面に向いていなくても音声をユーザ方向へ反射させて伝搬できるとともに、音の反射面を光で装飾的に照明することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】この発明の実施形態であるヘッドピースおよびスピーカユニットの斜視図
【
図3】ヘッドピースおよびスピーカユニットの三面図
【
図5】スピーカユニットから放音される音の進行方向およびLEDから照射される光の進行方向を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照してこの発明が適用されるスピーカおよびヘッドピースについて説明する。
図1は、この発明の実施形態であるスピーカ1の外観図である。同図(A)は正面図、同図(B)は左側面図である。この実施形態において、「スピーカ」の語は、発音体であるスピーカユニットとこのスピーカユニットを収容する筺体(スピーカボックス)とを有する装置の名称として用いる。
【0012】
図示のように、スピーカ1の筐体11は、略四角柱の形状をなしており、上方向に向けて若干幅が狭まる形状をなしている。すなわち、正確には四角錐台形をなしている。側面の垂直面に対する傾斜は2パーセントである。このスピーカ1は、同図に示されるように、面ではなく、辺(稜線)を正面に向けて設置される。また、スピーカユニット20,21,22は、上面および背面側に設けられており、正面側には設けられていない。正面側には、スピーカユニットに代えてLEDなどの装飾的な照明素子が設けられる。筐体11の底部には、棒状のピロー13が設けられている。このピロー13およびピロー13の下端に設けられた円板状のベース14によって、スピーカ1が支持される。このように、縦長の筐体11を備え、且つ、面でなく稜線(角方向)を正面に設置するスピーカは、その形状が特徴的であるとともに、部屋の隅に設置したときの収まりがよい。
【0013】
筐体11の背面側には、背面側のスピーカ21,22を覆うスピーカグリル12が設けられている。上向きに設けられたスピーカユニット20は、筐体11の上部に形成された空間であるスピーカボックス30の上端に固定されている。スピーカユニット20のさらに上には、本願発明のもう一つの実施形態であるヘッドピース10が設けられている。スピーカユニット20、スピーカボックス30およびヘッドピース10により、本願発明のスピーカ装置が構成される。
【0014】
図2は、上記スピーカ1からヘッドピース10およびスピーカユニット20を取りだした状態の斜視図である。
図3は、ヘッドピース10およびスピーカユニット20の三面図である。また、
図4は、ヘッドピース10の透視図であり、内部の回路基板40を示した図である。以下の説明において、左右方向の記述については、ユーザ視線でスピーカ1を正面から見た場合の左右を用いる。
【0015】
図2に示すように、ヘッドピース10は略直方体をなしている。ただし、ヘッドピース10は筺体11と一体の形状をなしているため、上方に向けて若干狭まっており、天板102の外径(対角線の長さ)は、底板103の外径よりも若干小さい。なお、ヘッドピース10は、放音口110を有する上部の本体部101と、下部のスカート106からなっており、本体部101の形状は略立方体である。ヘッドピース10の底板103には、その中央部に円形の開口部103Aが形成されている。開口部103Aの口径は、スピーカユニット20の口径とほぼ同じである。
【0016】
略立方体の本体部101は、4つの側面を有するが、そのうち正面側の2側面111、112は切り欠かれて放音口110として開口している。背側の2側面113、114には壁板が設けられており、音声が後方へ広がらないように規制する背板104となっている。本体部101の内側には、背板104である2つの側面113,114に挟まれた辺の下側の頂点105Cと、放音口110である(切り欠かかれた)2つの側面111、112の上辺とをつなぐ2つの三角形の面であるリフレクタ105(105A,105B)が形成されている。本体部101は略立方体であるため、リフレクタ105の左右の面105A、105Bは、それぞれ底板103などの水平面に対して約45度の角度をなしている。
【0017】
上述したように、ヘッドピース10の底板103の周囲には、下方に向けて、スカート106が形成されている。スカート106の高さは、ヘッドピース10全体の高さの四分の一程度である。スカート106の下端がスピーカユニット20のフランジ20Aと当接するように組み付けられる。組み付けられた状態で、スピーカユニット20とヘッドピース10とは、その中心軸を共有している。
【0018】
ヘッドピース10とスピーカユニット20は、一緒にネジ止めされ、筐体11に固定される。これにより、スピーカユニット20はスピーカボックス30の上端に取り付けられる。スピーカボックス30の上端は、スピーカユニット20のフランジ20Aの形状に開口しており、上にスピーカユニット20が取り付けられることにより、開口がふさがれて内部に閉空間が形成される。
【0019】
スピーカユニット20とヘッドピース10の底板103との間には、スカート106の高さ分の空間120が形成される。この空間120に、回路基板40が設けられる。回路基板40は、スピーカユニット20および底板103の開口部103Aの位置を避けて、手前左側すなわち開口した左側面111の下側近傍に設けられる。この回路基板40上にLED41が設けられる。LED41はヘッドピース10の手前中央すなわち正面側の先端部に設けられる。LED41をこの位置に設けたことにより、ユーザから直接見えることはない。ユーザが覗き込んでも天板102があるために見えることはない。
【0020】
図5は、ヘッドピース10内を伝搬する音の進行方向と光の進行方向とを示す図である。スピーカユニット20は、ヘッドピース10の下方且つ同じ中心軸で真上に向けて設置されており、ヘッドピース10のリフレクタ105の面は約45度であるため、スピーカユニット20から上方向に放音された音声は、図中の矢印201で示すようにリフレクタ105で反射されて左右の斜め前方に広がるように伝搬される。これにより、スピーカユニット20から音声が上向きに放音されても、リフレクタ105で反射されて損失少なく前方左右方向に伝搬することが可能になる。また、前面にスピーカグリルを設ける必要がなくなるため、前面のデザインの自由度も向上する。
【0021】
また、リフレクタ105を含むヘッドピース10は樹脂で成形されたものであり、平滑であるが鏡面ではない。すなわち、音波であれば正反射すると考えてよいが、光のように短い波長のものは乱反射すると考えられる。乱反射とは、入射した光があらゆる方向に反射することであり、あたかもそこが明るく(光っているように)見える現象である。LED41は、底板103の下の空間120の手前側に設けられているため、ユーザから見えることはない。そして、このLED41が点灯すると、図中の矢印202で示すようにヘッドピース10の内側、すなわち、天板102、背板104およびリフレクタ105が照明される。とりわけリフレクタ105が強く光を受けて乱反射を生じ明るく光る(なお、図中、乱反射光の矢印は省略している)。これにより、スピーカ1は、音楽を再生するのみでなく装飾的な雰囲気を演出することができる。
【0022】
なお、スピーカ1およびヘッドピース10は、以上説明した形状に限定されない。本願発明の趣旨を損なわない範囲で変形は自由である。
【符号の説明】
【0023】
1 スピーカ(装置)
10 ヘッドピース
11 筐体
20 スピーカユニット
40 回路基板
41 LED
101 本体部
102 天板
103 底板
103A 開口部
104 背板
105 リフレクタ