(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したフラップバルブ機構を備えた給油装置では、パイプを組み付けるときに、Oリングや金属製のリテーナなどの部品を必要とし、構成が複雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の一形態として、燃料タンクへ燃料を供給するための給油装置が提供される。この給油装置は、上記燃料タンクに接続される燃料通路(10P)を有する燃料通路形成部材(20)と;上記燃料通路形成部材(20)の一端部に装着された開口形成部材(60)と、該開口形成部材(60)に装着され該開口形成部材(60)の注入口(62a)を開閉する開閉機構(70)とを備えたフラップバルブ機構(50)と;を備え、上記燃料通路形成部材(20)は、第1樹脂材料から形成されたパイプ形状の樹脂内層(28)と、該樹脂内層(28)の外面に積層され第2樹脂材料から形成された樹脂外層(29)とを有するパイプ本体(22)と、該パイプ本体(22)の開口端部に形成された溶着端(24)とを備え;上記開口形成部材(60)は、上記第1樹脂材料または上記第2樹脂材料のいずれか一方に溶着される第3樹脂材料から形成され、上記パイプ本体(22)の開口端部を覆うカバー部材(61)と、該カバー部材(61)の開口端部に形成され上記溶着端(24)に溶着する被溶着端(64)を有し;前記カバー部材(61)は、前記第3樹脂材料と、前記第3樹脂材料とは異なる第4樹脂材料と、の二色成形により構成されている。
本発明の他の形態として、燃料タンクへ燃料を供給するための給油装置が提供される。この給油装置は、上記燃料タンクに接続される燃料通路(10P)を有する燃料通路形成部材(20F)と;上記燃料通路形成部材(20F)の一端部に装着された開口形成部材(60F)と、該開口形成部材(60F)に装着され該開口形成部材(60F)の注入口(62Fa)を開閉する開閉機構(80F)とを備えたフラップバルブ機構(50F)と;を備え、上記燃料通路形成部材(20F)は、樹脂材料から形成されたパイプ形状のパイプ本体(22F)と、該パイプ本体(22F)の上部に形成された溶着端(24F)とを備え;上記開口形成部材(60F)は、上記注入口(62Fa)を有する注入口形成部材(65F)と、該注入口形成部材(65F)に形成された被溶着端(65Fc)を有し、上記被溶着端(65Fc)は、上記溶着端(24F)の樹脂材料に溶着する樹脂材料から形成されかつ上記溶着端(24F)に溶着されており;上記溶着端(24F)は、上記燃料通路形成部材(20F)の端面(20Fa)より軸方向で下方に配置され;上記溶着端(24F)は、上記燃料通路形成部材(20F)の外側面から径外方へ突設され;上記被溶着端(65Fc)は、上記燃料通路形成部材(20F)の端面(20Fa)から上記外側面までを接触しながら覆って上記溶着端(24F)に溶着されている。
本発明の他の形態として、燃料タンクへ燃料を供給するための給油装置が提供される。この給油装置は、上記燃料タンクに接続される燃料通路(10P)を有する燃料通路形成部材(20G,20J)と;上記燃料通路形成部材(20G,20J)の一端部に装着された開口形成部材と、該開口形成部材に装着され該開口形成部材の注入口を開閉する開閉機構とを備えたフラップバルブ機構と;を備え、上記燃料通路形成部材(20G,20J)は、樹脂材料から形成されたパイプ形状のパイプ本体と、該パイプ本体の上部に形成された溶着端(24G,24J)とを備え;上記開口形成部材は、上記注入口を有する注入口形成部材(65G,65J)と、該注入口形成部材(65G,65J)に形成された被溶着端(65Gc,65Jc)を有し、上記被溶着端(65Gc,65Jc)は、上記溶着端(24G,24J)の樹脂材料に溶着する樹脂材料から形成されかつ上記溶着端(24G,24J)に溶着されており;上記溶着端(24G,24J)は、互いに軸方向に対して所定間隔離れて配置されている第1溶着部(24Ga,24Ja)と第2溶着部(24Gb,24Jb)とを有し;上記第2溶着部(24Gb,24Jb)は、上記燃料通路形成部材(20G,20J)の端面より前記軸方向で下方に配置されている。
【0007】
(1)本発明の一形態は、燃料タンクへ燃料を供給するための給油装置である。給油装置は、燃料タンクに接続される燃料通路を有する燃料通路形成部材と、上記燃料通路形成部材の一端部に装着された開口形成部材と、該開口形成部材に装着され該開口形成部材の注入口を開閉する開閉機構とを備えたフラップバルブ機構と、を備え、上記燃料通路形成部材は、第1樹脂材料から形成されたパイプ形状の樹脂内層と、該樹脂内層の外面に積層され第2樹脂材料から形成された樹脂外層とを有するパイプ本体と、該パイプ本体の開口端部に形成された溶着端とを備え、上記開口形成部材は、上記第1樹脂材料または上記第2樹脂材料のいずれか一方に溶着される第3樹脂材料から形成され、上記パイプ本体の開口端部を覆うカバー部材と、該カバー部材の開口端部に形成され上記溶着端に溶着する被溶着端を有する。
【0008】
フラップバルブ機構は、溶着により燃料通路形成部材に一体に固定することができるから、組み付け作業が容易である。また、フラップバルブ機構は、複雑な機構である開閉機構を予めカバー部材に組み付けておけば、燃料通路形成部材の形状に制約されることなく、燃料通路形成部材に容易に一体化することができる。
燃料通路形成部材の溶着端とカバー部材の被溶着端との間が溶着によりシールされるので、Oリングなどのシール部材を用いることなく、高いシール性を確保することができる。燃料通路形成部材にカバー部材を組み付けるのに、爪などの係合機構を用いる必要がなく、燃料通路形成部材やカバー部材などの構成を簡単にできる。
【0009】
(2)他の形態かかる溶着端は、上記溶着端は、上記パイプ本体の開口端部から拡径されたフランジであり、上記被溶着端は、上記カバー部材の開口端部から拡径されたフランジである給油装置である。燃料通路形成部材とカバー部材とは、それぞれの溶着端と被溶着端で接着面積を増大したフランジで密着しているので、確実に溶着することができる。
【0010】
(3)他の形態にかかる第1樹脂材料は、ポリアミド(PA)またはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)であり、第2樹脂材料は、PAまたはEVOHに熱溶着する変性ポリエチレン(変性PE)であり、第3樹脂材料は、EVOH、PAまたは変
性PEのいずれか1種類から選択された材料である給油装置である。
【0011】
(4)他の形態にかかるフラップバルブ機構は、2つの注入口をそれぞれ開閉する開閉部材を上記カバー部材に開閉可能に支持している給油装置である。
【0012】
(5)他の態様において、燃料タンクへ燃料を供給するための給油装置において、上記燃料タンクに接続される燃料通路を有する燃料通路形成部材と、上記燃料通路形成部材の一端部に装着された開口形成部材と、該開口形成部材に装着され該開口形成部材の注入口を開閉する開閉機構とを備えたフラップバルブ機構と、を備え、上記燃料通路形成部材は、樹脂材料から形成されたパイプ形状のパイプ本体と、該パイプ本体の上部に形成された溶着端とを備え、上記開口形成部材は、上記注入口を有する注入口形成部材と、該注入口形成部材に形成された被溶着端を有し、上記被溶着端は、上記溶着端の樹脂材料に溶着する樹脂材料から形成されかつ上記溶着端に溶着されており、上記溶着端は、上記燃料通路形成部材の端面より軸方向で下方に配置されている給油装置である。
【0013】
(6)他の態様において、上記溶着端は、上記燃料通路形成部材の外側面から径外方へ突設され、上記被溶着端は、上記燃料通路形成部材の端面から上記外側面を覆って上記溶着端に溶着されている給油装置である。
【0014】
(7)他の態様において、上記溶着端は、上記燃料通路形成部材の内側面から径内方へ突設され、上記被溶着端は、上記燃料通路形成部材の上記内側面を覆って上記溶着端に溶着されている給油装置である。
【0015】
(8)他の態様において、上記溶着端と上記被溶着端とは、互いに間隙を隔てた複数の箇所で溶着されている給油装置である。
【0016】
(9)他の態様において、上記燃料通路形成部材は、パイプ形状の樹脂内層と、該樹脂内層の外面に積層され樹脂外層とを有し、上記樹脂外層は、導電性樹脂材料から形成されている給油装置である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施例
(1) 給油装置の概略構成
以下、本発明の第1実施例にかかる給油装置10について説明する。
図1は本実施例にかかる給油装置を示す断面図である。給油装置10は、自動車の燃料タンク(図示省略)に燃料を供給するための機構であり、燃料通路形成部材20と、燃料通路形成部材20の下部に接続されたチューブTBと、燃料通路形成部材20の上部に装着されたフラップバルブ機構50とを備えている。この構成により、給油時に給油ガンFGによりフラップバルブ機構50の開閉部材71が押されることで注入口62aを開いて、給油ガンFGから燃料通路形成部材20内に燃料を注入すると、燃料は、燃料通路形成部材20の燃料通路10Pを通じて、燃料タンクに供給される。以下、各部の構成について説明する。
【0019】
(2) 給油装置の各部の構成
(2)−1 燃料通路形成部材20の構成
図2は給油装置10を分解した断面図である。
図2において、給油装置10は、燃料タンク側に配置された燃料通路形成部材20と、燃料通路形成部材20の上部に装着されたフラップバルブ機構50とを備えている。燃料通路形成部材20は、パイプ本体22と、ノズルガイド部材40とを備えている。
【0020】
パイプ本体22は、2種類の樹脂材料を積層することで形成されており、ネック上部23と、ネック接続部25と、ブリーザ管26とを備えている。ネック上部23は、筒状の部材であり、その内壁に、開口形成部材60に溶着するためのフランジ形状の溶着端24を備えている。ネック上部23には、その内壁にノズルガイド部材40を装着するとともに、ノズルガイド部材40を係止するための段部22aおよび係合爪22bを備えている。ネック接続部25は、パイプ本体22の下部に縮径して一体に形成され燃料通路10Pの一部を構成する筒体であり、その外周部に環状突部25aを備えている。ネック接続部25に、チューブTB(
図1)を挿入することにより、チューブTBが環状突部25aで抜止された状態にて、ネック接続部25に接続される。ブリーザ管26は、ネック上部23の側壁から分岐した管体であり、その内側がブリーザ通路26Pとなっている。ブリーザ通路26Pは、燃料タンクに接続されており、給油時の燃料タンク内の燃料蒸気を燃料通路形成部材20へ戻して、給油をスムーズに行なわせる。
【0021】
パイプ本体22は、2種類の樹脂材料を積層することにより構成されており、すなわち、燃料通路10P側の樹脂内層28と、樹脂内層28の外面に積層された樹脂外層29とを備えている。樹脂内層28は、耐燃料透過性に優れた樹脂材料、例えば、ナイロンなどのポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などから形成されており、主に燃料の透過を抑えるバリア層として作用する。樹脂外層29は、機械的強度に優れた樹脂材料、例えば、ポリエチレン(PE)などから形成されており、主にパイプ本体22の機械的強度、耐衝撃性を確保する層として作用する。樹脂外層29として、ポリエチレンを用いた場合には、極性官能基としてマレイン酸変性した樹脂材料を用いることができる。変性ポリエチレンは、PAと化学接着により接合することから、樹脂内層28と接着する。
【0022】
ノズルガイド部材40は、給油ガンを燃料通路10Pへ導くための部材であり、パイプ本体22内に機械的な係合機構を介して装着されている。ノズルガイド部材40は、ガイド本体42と、ガイド本体42の上部に形成されたフランジ43と、ガイド本体42の下部に形成されたガイド縮径部44とを備え、これらをポリアセタール(POM)などの樹脂材料で射出成形により形成されている。ノズルガイド部材40の内側のスペースは、その上部が開口40Paに、その下部が開口40Pbになっている。係合機構は、ガイド本体42に形成された係合爪42aと、フランジ43に形成された係合段部43aとを備え、係合爪42aがネック上部23の内壁に形成された係合爪22bに係合するとともに、係合段部43aが段部22aに嵌合することにより、ノズルガイド部材40がネック上部23内に装着される。
【0023】
(2)−2 フラップバルブ機構50
フラップバルブ機構50は、燃料通路形成部材20の上部に装着された開口形成部材60と、開口形成部材60に開閉可能に支持された開閉機構70とを備えている。開口形成部材60は、カバー部材61を備えている。カバー部材61は、円筒状の側壁部62と、側壁部62の上部に傾斜して形成された上壁部63と、側壁部62の下部に形成されたフランジ形状の被溶着端64とを備えている。上壁部63には、給油ガンを挿入するための注入口62aが形成されている。被溶着端64は、燃料通路形成部材20のパイプ本体22の溶着端24に溶着により固定されている。なお、被溶着端64と溶着端24との溶着構造については、後述する。
【0024】
カバー部材61は、燃料通路形成部材20と同様に、2種類の樹脂材料を積層することにより構成されており、すなわち、燃料通路10P側の樹脂内層68と、樹脂内層68の外面に積層された樹脂外層69とを備えている。樹脂内層68は、耐燃料透過性に優れた樹脂材料、例えば、ナイロンなどのポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などから形成されており、主に燃料の透過を抑えるバリア層として作用する。樹脂外層69は、機械的強度に優れた樹脂材料、例えば、ポリエチレン(PE)などから形成されており、主にパイプ本体22の機械的強度、耐衝撃性を確保する層として作用する。樹脂外層69として、ポリエチレンを用いた場合には、極性官能基としてマレイン酸変性した樹脂材料を用いることができる。変性ポリエチレンは、PAと化学接着により接合することから、樹脂内層68と接着する。
【0025】
開閉機構70は、開閉部材71と、軸受部72と、スプリング73と、軸受部72およびスプリング73をカバー部材61に対して支持する支持部材74と、ガスケット75とを備えている。開閉部材71は、給油ガンの先端で押されて軸受部72を中心に回動することで注入口62aを開く。ガスケット75は、注入口62aの開口周縁部に装着されており、開閉部材71により押圧されることで、シールした状態で注入口62aを閉じている。
【0026】
(3) 給油装置10の製造方法
給油装置10を製造するには、まず、燃料通路形成部材20および開口形成部材60を射出成形により製造する。燃料通路形成部材20は、2種類の樹脂材料による2色の射出成形を行なうことにより製造する。最初の樹脂材料として樹脂外層29を形成するための変性ポリエチレンを射出し、その後、樹脂内層28を形成するためのポリアミドを射出する。変性ポリエチレンは、ポリエチレン(PE)に極性官能基、例えばマレイン酸変性された官能基を付加した樹脂材料であり、ポリアミド(PA)と射出成形時の熱により反応接着する。よって、樹脂内層28と樹脂外層29とは、2色成形により反応接着により溶着一体化している。開口形成部材60は、燃料通路形成部材20と同様に、2種類の樹脂材料により、変性ポリエチレンを射出して樹脂外層69を形成した後に、ポリアミドを射出することにより樹脂内層68を積層形成する。続いて、予め射出成形により形成したノズルガイド部材40を、パイプ本体22に組み付ける。すなわち、ノズルガイド部材40の係合爪42aおよび係合段部43aを、パイプ本体22の係合爪22bおよび段部22aにそれぞれ係合することにより、ノズルガイド部材40をパイプ本体22に組み付ける。続いて、開閉機構70を開口形成部材60に組み付ける。
【0027】
次に、開口形成部材60を燃料通路形成部材20に一体化するレーザ溶着工程を行なう。
図3は開口形成部材60を燃料通路形成部材20にレーザ溶着する工程を説明する説明図である。まず、燃料通路形成部材20を支持台(図示省略)に固定するとともに、開口形成部材60を燃料通路形成部材20の端部に載置する。このとき、開口形成部材60の被溶着端64を燃料通路形成部材20の溶着端24に合わせ、開口形成部材60を、チャック(図示省略)などにより固定する。なお、溶着端24には、環状の突起24aを予め形成し、さらに、カーボンブラックを0.1〜2.0重量部含有させることによりレーザ光の吸収を高めてもよい。
【0028】
続いて、レーザ照射装置LDを溶着端24、被溶着端64に向け、燃料通路形成部材20を支持した支持台を回転させつつレーザ光を突起24aに向けて照射する。これにより、レーザ光は、被溶着端64を透過し、溶着端24の環状の突起24aに当たる。溶着端24は、カーボンブラックを0.1〜2.0重量部含有しているので、レーザ光を吸収し、環状の突起24aの斜面を溶融するとともに、カバー部材61の内側表面を溶融する。溶融した部分の樹脂材料は、同じ樹脂材料(PA)であるから相溶し、冷却固化することにより溶着する。これにより、
図4に示すように給油装置10が得られる。
【0029】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(4)−1
図4に示すように、フラップバルブ機構50は、レーザ溶着により燃料通路形成部材20に一体に組み付けることができるから、組み付け作業が容易である。また、フラップバルブ機構50は、複雑な機構である開閉機構70を予めカバー部材61に組み付けて構成しているので、燃料通路形成部材20の形状に制約されることなく、フラップバルブ機構50を燃料通路形成部材20に容易に一体化することができる。
【0030】
(4)−2 燃料通路形成部材20の溶着端24とカバー部材61の被溶着端64との間がレーザ溶着により全周にわたってシールされるので、Oリングなどのシール部材を用いることなく、高いシール性を確保することができる。
【0031】
(4)−3 燃料通路形成部材20とカバー部材61とは、それぞれの溶着端24と被溶着端64で接着面積を増大したフランジ形状で密着しているので、確実に溶着することができる。すなわち、レーザ溶着の際に樹脂部材の間に間隙が生じていると、エネルギーが集中せずに、樹脂部材の溶融温度に達しにくいが、本実施例では、広い面積で密着しているので、溶着端24と被溶着端64とを確実に溶着することができる。
【0032】
(4)−4 燃料通路形成部材20にカバー部材61を組み付けるのに、爪などの係合機構を用いる必要がないため、燃料通路形成部材20やカバー部材61などの構成を簡単にできる。しかも、溶着端24または被溶着端64のいずれか一方に、断面三角形の環状の突
起(例えば、図3の突起24a)を形成することにより、シール機能を高めることができる。そして、レーザ溶着工程の際に、環状の突起24aにエネルギーが集中するので、レーザ溶着工程の短縮化、レーザ装置の小型化を実現することができる。
【0033】
(4)−5 パイプ本体22は、樹脂内層28と樹脂外層29とが異なった樹脂材料で形成されている。つまり、樹脂内層28が耐燃料透過性に優れるポリアミド(ナイロン)で形成され、樹脂外層29が機械的強度に優れるポリエチレンで形成されている。また、カバー部材61の樹脂内層68および樹脂外層69も、ポリアミド(ナイロン)とポリエチレンでそれぞれ形成されている。したがって、燃料通路10Pを囲む樹脂内層28,68により、燃料の外部への放出を低減できるとともに、外部に露出している樹脂外層29,69により、外部から及ぼされる衝撃に対して大きな変形の抵抗力を示すことができる。
【0034】
(4)−6 樹脂外層29,69は、変性ポリエチレンから形成されている。変性ポリエチレンは、ポリエチレン(PE)に極性官能基、例えばマレイン酸変性された官能基を付加した樹脂材料であり、ポリアミド(PA)と射出成形時の熱により反応接着する材料である。よって、樹脂内層28と樹脂外層29とは、2色成形による射出成形の際に、反応接着によりそれらの界面で溶着一体化している。樹脂内層28,68と樹脂外層29,69との界面がそれぞれ接着しているから、この間の耐燃料透過性を増すことができる。また、2色成形の際に、ポリエチレンを射出した後に、温度の高いポリアミドを射出するから、両者の接着性を増すことができる。
【0035】
B.第2実施例
図5は第2実施例にかかる給油装置10Bを示す断面図である。本実施例は、カバー部材61Bおよび開閉機構70Bの構成に特徴を有する。カバー部材61Bは、ナイロンなどのポリアミドから形成されている。また、開閉機構70Bは、開閉部材71Bのほかに、開口形成部材60Bの下部の注入口62Baよりタンク側に配置された注入口72Baを開閉する開閉部材81Bを備えている。開閉部材81Bは、ガスケット85Bにより注入口72Baをシールした状態で閉じる。この構成によっても、フラップバルブ機構50Bが2つの開閉
部材7
1B,8
1Bを開口形成部材60Bに組み付けて、燃料通路形成部材20Bに溶着されている。また、フラップバルブ機構50Bは、開閉部材81Bにより閉じられることでカバー部材61Bからの燃料透過を低減するとともに、カバー部材61Bを、機械的強度を重視したナイロンによる1層の樹脂層で形成することでカバー部材61Bの構成を簡単にしている。
【0036】
C−D.第3実施例
図6は第3実施例にかかる給油装置の要部を示す断面図である。本実施例は、溶着端および被溶着端の構成に特徴を有する。給油装置10Cにおいて、燃料通路形成部材20Cの溶着端24Cと開口形成部材60Cの被溶着端64Cとは、燃料通路形成部材20Cの軸方向に対して、給油ガンの挿入側、つまり車体の外側へフランジ形状で傾斜した構成を有している。この構成により、外力Fが溶着端24C、被溶着端64Cに及んだ場合に、剪断力を低減して、開口形成部材60Cが燃料通路形成部材20Cから外れ難くしている。
なお、
図6の第3実施例の変形例として、
図7に示すように、開口形成部材60Dの被溶着端64Dおよび燃料通路形成部材20Dの溶着端24Dを燃料タンク側へ傾斜した構成であっても、
図6と同様な効果を奏する。
【0037】
E.第4実施例
図8は第4実施例にかかる給油装置の要部を示す断面図である。本実施例は、開口形成部材60Eと燃料通路形成部材20Eとの溶着箇所に特徴を有する。燃料通路形成部材20Eは、樹脂内層28Eと樹脂外層29Eとから形成され、また、各々の端部のフランジで位置決めされている。燃料通路形成部材20Eの樹脂内層28Eと開口形成部材60Eのカバー部材61Eとが、側方からのレーザ照射により溶着端24E,被溶着端64Eで溶着されている。このように、溶着する箇所は、フランジに限らず、カバー部材61Eと燃料通路形成部材20Eとを強固に溶着できる箇所であればよい。
【0038】
F.第5実施例
図9は第5実施例にかかる給油装置10Fの上部を示す断面図、
図10は
図9の要部を拡大した断面図である。本実施例は、燃料通路形成部材20Fおよび開口形成部材60Fの構成に特徴を有する。燃料通路形成部材20Fは、燃料通路形成部材20Fの所定幅の円形の端面20Faより軸方向で下方(燃料タンク側)に溶着端24Fを備えている。溶着端24Fは、燃料通路形成部材20Fの外側面から径外方へ突設された円板形状である。燃料通路形成部材20Fは、ポリエチレンなどの単一の樹脂材料から形成されており、上述した実施例で説明した射出成形のほかに、他のパイプの成形方法、例えば、ブロー成形法、チューブ押出成形法で製造することができる。ブロー成形法により製造する場合には、樹脂材料でパリソンを形成して型成形することで製造する。また、チューブ押出により製造する場合には、樹脂材料を管状に押し出すことにより製造する。
【0039】
開口形成部材60Fは、カバー部材61Fと、注入口形成部材65Fとを備えている。カバー部材61Fには、開閉機構70Fが装着されている。注入口形成部材65Fは、開閉機構80Fを開閉可能に支持しており、注入口62Faを形成する開口形成部65Faと、開口形成部65Faの端部から円筒状に形成された開口支持部65Fbと、開口形成部65Faの外周部から拡径された被溶着端65Fcとを備えている。被溶着端65Fcは、燃料通路形成部材20Fの端面から外側面を覆う断面でL字形に形成されており、その先端面で溶着端24Fに溶着されている。
【0040】
本実施例によれば、注入口形成部材65Fの被溶着端65Fcが燃料通路形成部材20Fの溶着端24Fを覆うように位置決めされ、しかも、それらの溶着面積が燃料通路形成部材20Fの端部で溶着されるよりも大きい。したがって、注入口形成部材65Fが燃料通路形成部材20Fに強固に固定することができる。
また、注入口形成部材65Fは、被溶着端65Fcが燃料通路形成部材20Fの上部の端面から外側面にかけて覆っているので、給油ガンから受ける力や車両の衝突などの外力に対する支持力が大きく、機械的強度に優れている。
さらに、燃料通路形成部材20Fは、ブロー成形、押出成形などの製造方法を用いることによって、高い生産性で製造することができる。
【0041】
G.第5実施例の変形例
図11は第5実施例の変形例にかかる給油装置10Gの要部を示す断面図である。本変形例は、燃料通路形成部材20Gおよび開口形成部材60Gの構成に特徴を有する。燃料通路形成部材20Gは、2種類の樹脂材料を積層することにより、つまり樹脂内層28Gと樹脂外層29Gとを積層することにより構成されている。樹脂外層29Gは、導電性樹脂材料から形成されている。導電性樹脂材料としては、ポリエチレンを用いた場合には、金属フィラー(例えば、ステンレス、ニッケル、クロム、亜鉛、銅、アルミニウム、金、銀、マグネシウム、チタン、またはそれを組み合わせたフィラー)またはカーボン繊維などを添加することにより導電性を付与することができる。燃料通路形成部材20Gを樹脂で形成している場合に、帯電し易いが、樹脂外層29Gを導電性樹脂材料で形成することで、確実に除電することができるアース経路を実現することができる。
燃料通路形成部材20Gは、端面より下方に溶着端24Gを備えている。溶着端24Fは、燃料通路形成部材20Gの外側面から径外方へ突設された円板形状の第1および第2溶着部24Ga,24Gbを備えている。第1および第2溶着部24Ga,24Gbは、燃料通路形成部材20Gの軸方向に対して所定間隙離れて配置されている。燃料通路形成部材20Gは、上述した実施例で説明した射出成形のほかに、他のパイプの成形方法、例えば、ブロー成形法、チューブ押出成形法で製造することができる。
【0042】
注入口形成部材65Gの被溶着端65Gcは、開口形成部65Gaの外周部から拡径されて形成されている。被溶着端65Gcは、燃料通路形成部材20Gの端面から外側面を覆う断面でL字形に形成されており、その内側面で第1溶着部24Gaに溶着され、さらにその先端面で第2溶着部24Gbに溶着されている。
【0043】
本
変形例によれば、注入口形成部材65Gの一端部が燃料通路形成部材20Gの端面に溶着されるよりも溶着面積が大きく、しかも被溶着端65Gcが2箇所の第1および第2溶着部24Ga,24Gbに溶着されるから、注入口形成部材65Gを燃料通路形成部材20Gに強固に溶着することができる。また、溶着端24Gは、2箇所で溶着しているから、車両の衝突などの外力を受けても、同時に損傷し難く、高いシール力を得ることができる。しかも、樹脂外層29Gが導電性を付与するためにカーボンなどを混入した樹脂材料であっても、溶着端24Gと被溶着端65Gcとの溶着力を2箇所の溶着部により高めることができる。
【0044】
H−J.他の変形例
図12は第5実施例にかかる他の変形例を示す断面図である。
図12の変形例は、溶着端24Hおよび注入口形成部材65Hの被溶着端の形状に特徴を有する。溶着端24Hは、燃料通路形成部材20Hの端面より下方であって、燃料通路形成部材20Hの内側面から径内方へ突設されている。被溶着端65Hcは、燃料通路形成部材20Hの内側面から被溶着端65Hcの上面で位置決めされかつ密着した状態にて溶着端24Hに溶着されている。
【0045】
また、溶着端および被溶着端の形状および配置は、溶着強度を高めるためや、溶着のし易さなどを考慮して、種々の構成をとることができる。例えば、
図13に示すように、燃料通路形成部材20Jの側面には、溶着端24Jが形成されている。溶着端24Jは、円板形状の第1および第2溶着部24Ja,24Jbを備えている。第1溶着部24Jaは、燃料通路形成部材20Jの端面から内方へ円板状に突設されている。第2溶着部24Jbは、第1溶着部24Jaより軸方向で下方であって、燃料通路形成部材20Jの内側面から径内方へ円板状に突設されている。第1および第2溶着部24Ja,24Jbは、燃料通路形成部材20Jの軸方向に対して所定間隙離れて配置されている。
注入口形成部材65Jの外周部には、被溶着端65Jcが形成されている。また、注入口形成部材65Jの上部には、径方向外方へ拡張した拡張部65Jdが形成されている。さらに、注入口形成部材65Jの下部の外周隅部には、段部65Jeが形成されている。注入口形成部材65Jの上部は、拡張部65Jdの箇所で第1溶着部24Jaの上面で密着して位置決めされるとともに、被溶着端65Jcの上部が第1溶着部24Jaに溶着されている。また、注入口形成部材65Jの下部は、段部65Jeの箇所で第2溶着部24Jbに位置決めされるとともに、第2溶着部24Jbに溶着されている。なお、溶着端と被溶着端との溶着面積および箇所は、両部材の接触面のうち、溶着しやすい箇所や溶着強度などを考慮して適宜設定することができる。
【0046】
さらに、
図14の給油装置10Kのフラップバルブ機構50Kに示すように、燃料通路形成部材20Kの溶着端24Kと注入口形成部材65Kの被溶着端65Kcとの溶着面積S1は、燃料通路形成部材20Kの端面20Kaの溶着面積S2と比べて小さい構成であってもよく、溶着端24Kと被溶着端65Kcとのシール性および機械的強度などに応じて適宜設定することができる。
【0047】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。
上記実施例では、燃料通路形成部材と開口形成部材とを溶着する手段
として、レーザ溶着を用いたが、これに限らず、熱板などによる熱溶着や、超音波溶着などの手段であってもよい。