(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車載用リチウムイオン二次電池に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
なお、図面において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0012】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、複数の電池セルC1〜C9を並設して構成した蓄電モジュールとしての電池モジュール20と、電池セル間を電気的に接続する平板状のバスバー30と、ボルト40,41を有している。各電池セルC1〜C9は角型電池セルであり、電池セルC1〜C9の本体部21が薄い四角箱型をなしている。本体部21は、電槽(缶)と、電槽内に収容される正極とセパレータと負極とを積層して構成された電極組立体と、を有する。電池セルC1〜C9の本体部21はY方向において並設して配置され、隣接する電池セルの本体部21は側面が接触する状態で固定されている。
【0013】
各電池セルC1〜C9は、本体部21の上面から正極用の電極端子22と負極用の電極端子23が上方に突出している。
図1において、電池セルC1は、本体部21において左側に正極用の電極端子22が配置され、右側に負極用の電極端子23が配置されている。電池セルC2は、本体部21において左側に負極用の電極端子23が配置され、右側に正極用の電極端子22が配置されている。以下、電池セルC3は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が、電池セルC4は本体部21の左側に負極用の電極端子23が右側に正極用の電極端子22が、電池セルC5は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が配置されている。電池セルC6は本体部21の左側に負極用の電極端子23が右側に正極用の電極端子22が、電池セルC7は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が配置されている。電池セルC8は本体部21の左側に負極用の電極端子23が右側に正極用の電極端子22が、電池セルC9は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が配置されている。
【0014】
電池セルC1〜C9は、本体部21の上面において台座(ナット)24を電極端子22,23が貫通する状態で配置されている。
バスバー30は、Y方向に延びている。バスバー30は隣接する電池セルの電極端子22,23に締結されている。即ち、バスバー30の一端側においてバスバー30の上側からボルト40がバスバー30を貫通して電極端子22に螺入され、ボルト40によりバスバー30が電池セルの電極端子22に締結されている。バスバー30の他端側においてバスバー30の上側からボルト41がバスバー30を貫通して電極端子23に螺入され、ボルト41によりバスバー30が電池セルの電極端子23に締結されている。
【0015】
このようにして、セル間接続用導電部材としてのバスバー30により、隣接する電池セルの電極端子同士を電気的に接続して、各電池セルC1〜C9が直列接続されている。
バスバー30と電極端子22,23との接続構造について
図2,3,4を用いて詳しく説明する。
【0016】
図3に示すように、バスバー30は本体部31が直線的に延びる銅製の平板よりなり、長辺方向であるY方向において両端部には円形の貫通孔32が形成されている。なお、
図3等において便宜上バスバー30の片側の先端部のみ図示するが、他方の先端部においても同様な構成となっている。貫通孔32にボルト40,41が通る。このように、バスバー30は、両方の端部が電極端子22,23との接続部となっている。
【0017】
図2に示すように、電池セルC1〜C9は、本体部21の天板50に貫通孔51が形成されている。
銅製またはアルミ製の電極端子22,23は同一構成をなしている。
図2に示すように、電極端子22,23の本体部60は立設する柱状をなし、下端には鍔部61を有する。
図2に示すように、電極端子22,23の本体部60が、電池セルC1〜C9の本体部21の内部から天板50の貫通孔51を通して天板50から上方に突出している。電極端子22,23の本体部60の外周面と天板50の貫通孔51との間には絶縁樹脂カラー52およびシール材53が配置され、絶縁樹脂カラー52およびシール材53により電極端子22,23と天板50とは絶縁されている。電極端子22,23の本体部60の外周面は雄ねじが形成され、電極端子22,23の本体部60における天板50から上方に突出している部位に台座(ナット)24が螺入されている。この台座(ナット)24により電極端子22,23が天板50に締結固定されている。電極端子22,23の本体部60の上部は台座(ナット)24より上方に突出している。電極端子22,23の本体部60の上面にバスバー30が配置されている。
【0018】
図4に示すように、電極端子22,23の本体部60の上面がバスバー30との接触面60aであり、この接触面60aの中央には上面(接触面60a)に開口する雌ねじ穴62が形成され、雌ねじ穴62は下方に延びている。
図2に示すように、雌ねじ穴62に対し、バスバー30を貫通するボルト40,41のねじ部43が螺入されている。
【0019】
図3に示すように、バスバー30の本体部31の下面が電極端子22,23との接触面31aであり、この接触面31aには突条33,34が形成されている。各突条33,34は、それぞれバスバー30の延設方向であるY方向に直線的に延びている。両突条33,34は、貫通孔32を挟んで形成され、貫通孔32から等距離に位置している。
【0020】
図4に示すように、電極端子22,23の本体部60の上面、即ち、バスバー30との接触面60aには、バスバー30の突条33,34に対応する凹部63,64が形成されている。各凹部63,64はそれぞれY方向に直線的に延び、電極端子22,23の本体部60の上面に開口している。両凹部63,64は、中央の雌ねじ穴62を、X方向において挟むように形成されている。
【0021】
図2に示すように、電極端子22,23の本体部60の凹部63にバスバー30の突条33が係合しているとともに電極端子22,23の本体部60の凹部64にバスバー30の突条34が係合している。
【0022】
図2,4に示すように、電極端子22,23の本体部60における台座(ナット)24から突出する部位には2本のスリット65,66が等角度で(180°毎に)形成されている。スリット65,66は電極端子22,23の本体部60の上面、即ち、バスバー30との接触面60aから垂直方向において、台座(ナット)24の上面位置に相当する所定深さに形成されている。このスリット65,66により電極端子22,23の雌ねじ穴62の開口部はX方向に拡開することができるようになっている。
【0023】
ボルト40,41は同一構成をなしている。
図2に示すように、ボルト40,41におけるねじ部43と頭部44との間にはテーパ部45が形成され、テーパ部45は上側ほど径が大きくなっている。
【0024】
図2(b)に示すように、電極端子22,23の本体部60の凹部63での内径側の側面63aとバスバー30の突条33の内径側の側面33aとが密接している。同様に、電極端子22,23の本体部60の凹部64での内径側の側面64aとバスバー30の突条34の内径側の側面34aとが密接している。これは次のように密接させている。
図5,6に示すように、ボルト40,41のねじ部43を電極端子22,23の本体部60の雌ねじ穴62に螺入してバスバー30を締め付けるが、その際にテーパ部45により電極端子22,23における雌ねじ穴62の開口部が変形してX方向に拡開して、
図2に示すように、拡開部67が形成される。この拡開部67は上側ほど多く開く。これにより、電極端子22,23の凹部63,64がバスバー30の突条33,34に密着している。
【0025】
次に、電池セル間の接続方法、即ち、リチウムイオン二次電池10の電極端子22,23へのバスバー30の組付け工程について説明する。
図5に示すように、絶縁樹脂カラー52およびシール材53により電極端子22,23と天板50とを絶縁した状態で電極端子22,23の本体部60における天板50から上方に突出している部位に台座(ナット)24を螺入して台座(ナット)24により電極端子22,23を天板50に締結する。
【0026】
そして、電極端子22,23の本体部60の上面にバスバー30を配置する。このとき、電極端子22,23の本体部60の凹部63にバスバー30の突条33を係合するとともに電極端子22,23の本体部60の凹部64にバスバー30の突条34を係合する。このとき、突条33,34と凹部63,64とはガタがある。
【0027】
引き続き、ボルト40,41のねじ部43をバスバー30の貫通孔32を通して電極端子22,23の本体部60の雌ねじ穴62に螺入していく。すると、
図5で示すようにボルト40,41のテーパ部45が電極端子22,23の本体部60の雌ねじ穴62の開口端に接触する。更にボルト40,41を電極端子22,23の本体部60の雌ねじ穴62に螺入していくと、
図6に示すように電極端子22,23の本体部60の雌ねじ穴62の上端部が拡開する。この拡開により、最終的には
図2(b)に示すように、電極端子22,23の本体部60の凹部63での内径側の側面63aとバスバー30の突条33の内径側の側面33aとが密接するとともに電極端子22,23の本体部60の凹部64での内径側の側面64aとバスバー30の突条34の内径側の側面34aとが密接する。
【0028】
これにより、バスバー30を上下方向だけでなく水平方向においても電極端子22,23と密接し、接触面積が増加して接触抵抗を小さくできる。即ち、上下方向においては多少の寸法誤差(公差)があってもボルト締結により面同士が密接する。一方、水平方向においては電極端子22,23の本体部60の上部の拡開による水平方向の力が作用して水平方向にも面同士が密接する。
【0029】
次に、作用について説明する。
電極端子22,23の本体部60の上部における台座(ナット)24より上方に突出する部位には拡開用の垂直方向に延びるスリット65,66が形成されているとともに、締結部材としてテーパ付きボルト40,41が用いられている。そして、バスバー30をボルト締結する時に電極端子22,23の本体部60の上部が拡開され、これに伴い電極端子22,23の本体部60の凹部63,64もX方向において互いに離間する方向に移動される。その結果、バスバー30の突条33,34に対し電極端子22,23の凹部63,64が密着する。つまり、バスバー30の突条33,34の側面33a,34aと電極端子22,23の凹部63,64の側面33a,34aとが密接する。
【0030】
バスバー30の突条33,34が電極端子22,23の凹部63,64に係合しており、バスバー30が回り止めされる。具体的には、バスバー30で電池セル間を接続する工程においてボルト40,41の螺入によるバスバー30の締結時にボルト40,41の頭部44が回転する際にバスバーが回転することを防止できる。これにより、隣接する電池セルとの間で短絡やスパークが発生することが防止される。
【0031】
また、バスバーの締結時にスリット65,66を付けた電極端子の上部が変形してバスバー30の突条33,34が電極端子22,23の凹部63,64に絞め込まれるので、車載用のリチウムイオン二次電池10において振動によるバスバー締結用のボルトの緩みが防止される。詳しくは、バスバーの組み付け後も、凹部63,64が突条33,34に対して外側に力を加え、電動式産業車両や自動車搭載時の振動や温度の上下に起因する緩みが発生しない。その結果、バスバー30と電極端子22,23との間の接続抵抗が上昇することもない。
【0032】
また、電極端子22,23については円柱状で真っ直ぐな雌ねじ穴を有する構成としたまま六角ボルトをテーパ付きの雄ねじを有する構成としており、バスバーと接触する電極端子などの寸法を変更することなく、凹部63,64と突条33,34の接触によるバスバーと電極端子との接触面積が増加する。その結果、両者の接続抵抗を減少させることができ、電池出力電圧や電力供給容量等の諸特性を向上させることができる。
【0033】
また、電極端子22,23の上面にはバスバーの突条33,34と係合する凹部(受け溝)63,64を形成するので、その分だけ電極端子に用いる金属材料(銅またはアルミ)の使用量を節約することができる。
【0034】
以上のごとく上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)蓄電装置としてのリチウムイオン二次電池10の構成として、バスバー30は、電極端子22,23との接触面31aに形成された突条33,34を有する。電極端子22,23は、バスバー30との接触面60aに開口する雌ねじ穴62、および、バスバー30との接触面60aに形成され突条33,34が係合する凹部63,64を有するとともに、雌ねじ穴62の開口部を拡開するためのスリット65,66を有する。雄ねじ部品としてのボルト40,41におけるねじ部43と頭部44との間にテーパ部45を有する。ボルト40,41のねじ部43を電極端子22,23の雌ねじ穴62に螺入してバスバー30を締め付ける際にテーパ部45により雌ねじ穴62の開口部が拡開して電極端子22,23の凹部63,64をバスバー30の突条33,34に密着させた。その結果、バスバー30において電極端子22,23との接触面31aに形成された突条33,34が、電極端子22,23においてバスバー30との接触面60aに形成された凹部63,64に係合するので、バスバー30を回り止めすることができる。また、電極端子22,23における雌ねじ穴62の開口部が拡開して電極端子22,23の凹部63,64がバスバー30の突条33,34に密着しているので、バスバーと電極端子間の接続抵抗を小さくすることができる。
【0035】
(2)突条33,34は直線的に延び、複数個所に設けられているので、安定してバスバー30を回り止めすることができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0036】
・
図7に示すように、ボルト40,41におけるねじ部43と頭部44の間にテーパ部45を形成するとともに電極端子22,23の雌ねじ穴62の開口部において段差70を形成してもよい。他にも、
図8に示すように、電極端子22,23の雌ねじ穴62の開口部にテーパ部68を形成するとともに、ボルト40,41のねじ部43と頭部44の間に段差71を形成してもよい。
【0037】
要は、雄ねじ部品としてのボルト40,41におけるねじ部43と頭部44との間、および、電極端子22,23における雌ねじ穴62の開口部の少なくとも一方にテーパ部を有する構成であればよい。
【0038】
・
図9(a),(b)に示すように、バスバーの本体部31の下面の突条33,34については、同一断面形状であるため、押し出しあるいは引き抜き形成した部材を図中のカットラインLcで切断してバスバーを形成することもできる。なお、ボルトが通る貫通孔32は別途形成する。
図9(a)においては突条33,34はY方向に延びており、
図3と同様な構成となる。
図9(b)においては突条33,34はX方向に延びている。つまり、突条は電流が流れる方向(Y方向)に延びていても、電流が流れる方向に直交するX方向に延びていてもよい。要は、突条の延設方向は問わない。
【0039】
・電極端子の雌ねじ穴の開口部を拡開できるようにすべく設けるスリットは、
図4では180°毎に2本のスリット65,66を設けたが、スリットを120°毎に3本を設けたり、スリットを90°毎に4本を設ける等してもよい。
【0040】
・電極端子は、母材としての銅またはアルミに対しニッケルめっき等で防錆してもよい。
・蓄電装置はリチウムイオン二次電池であったが、これに限定されることなく、他にも例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、キャパシタ等であってもよい。
【0041】
・蓄電装置(リチウムイオン二次電池10)を搭載する車両は問わない。例えば、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車、産業車両等に搭載するとよい。
・車載用以外の蓄電装置に適用してもよい。