(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の歩行者用エアバッグ装置は、フードパネルの裏面側にケースを配置させていることから、ケースが薄く、破断予定部を破断させることによって形成される突出用開口も、大きな開口面積を確保しがたかった。また、上記特許文献1に記載の歩行者用エアバッグ装置では、ケースの破断予定部が、フードパネルに沿って配置されて、エアバッグの上方を覆う上壁の領域に形成されていることから、破断予定部を、膨張するエアバッグによって迅速に破断させ難く、また、ケースの後方におけるカウルの部位には、カウルから上方に突出するように配置されるワイパが、ケースに近接して配置されることから、エアバッグを、迅速に展開膨張させる点に改善の余地があった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の歩行者用エアバッグ装置では、ケースが、2つのヒンジ部を有して、エアバッグの展開膨張時に、底壁を後端側を下方に向けるように傾斜させつつ、後壁を下方に開くように構成されていることから、エアバッグの展開膨張時に、突出用開口を大きく確保できるものの、ケースが板金製であり、2つのヒンジ部を有し、かつ、折り畳まれたエアバッグの上方はフードパネルのインナパネル自体によって塞がれる構成であることから、ケースの防水性を確保し難かった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便に良好な防水性を確保できて、かつ、エアバッグを、迅速に膨張可能な歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置は、車両のフードパネルの後端近傍における裏面側に搭載され、フードパネルの後端を上昇させるフード跳ね上げ装置とともに作動される構成として、
膨張完了時に、カウルの上方とフロントピラーの前面とを覆うエアバッグと、
折り畳まれたエアバッグを収納するケースと、
エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
を備えた歩行者用エアバッグ装置であって、
ケースが、合成樹脂製として
、エアバッグの上下前後の四方を覆う天井壁、底壁、前壁、及び、後壁を備えて構成され、
インフレーターが、ケース内の前記底壁の前端の上面側に配置されるとともに、ケースの底壁を貫通して下方に延びる取付部を備えて構成され、
エアバッグが、ケース内のインフレーターの後方に折り畳まれて収納され、
フードパネルに、ケースの前方からインフレーターの直下付近まで後方に延びる支持部材が、配設され、
支持部材が、ケースの底壁を貫通した取付部を貫通させる貫通孔を有し、貫通孔に貫通させた取付部に締結具を締結させて、インフレーターとケースの底壁とを取付固定する構成とし、
ケースが、
後壁における上端近傍に、エアバッグの膨張時に破断可能な破断予定部を、配置させるとともに、
底壁の下面側における支持部材への固定部位の後縁近傍に、破断予定部の破断時、破断予定部の下方における後壁の部位と底壁とを下方に回転可能に撓むヒンジ部を、配置させて、
構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、ケースにおいて、エアバッグの膨張時に破断される破断予定部が、後壁における上端近傍に配置され、ケースの底壁において、インフレーターとケースとを固定させる支持部材への固定部位の後縁近傍に、破断予定部の破断時に、破断予定部の下方における後壁の部位と底壁とを下方に回転可能に撓むヒンジ部が、配置されている。そして、エアバッグの展開膨張時に、破断予定部を破断させた後のケースにおいて、底壁が、膨張するエアバッグに押圧される後壁に伴って、ケース前端のインフレーター直下付近に配置されたヒンジ部を起点として、後壁に連なる後端側を下方に向けるように、大きく開くこととなる。そのため、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、ケースの底壁と後壁とが、膨張するエアバッグによって、ケースの後下側を大きく開口させるように押し開かれることとなり、フードパネルの裏面側に配置されて、ケース自体が上下の幅寸法を小さく設定されていても、エアバッグ突出用の開口を大きく確保できて、エアバッグが、この突出用の開口から、迅速に展開膨張することとなる。さらに、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、ケースは、合成樹脂製として、エアバッグの上下前後の四方を、簡易に全周にわたって覆うことができて、簡便に、良好な防水性を確保することができる。
【0010】
したがって、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、簡便に良好な防水性を確保できて、かつ、エアバッグを、迅速に膨張させることができる。
【0011】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置は、フードパネルの後端を上昇させるフード跳ね上げ装置とともに作動される構成であることから、インフレーターの作動時に、フード跳ね上げ装置が作動して、フードパネルの後端側とともに上昇移動した状態で、エアバッグが、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、ケースの後壁の上端近傍に配置される破断予定部を破断させて、ケースを押し開き、後方に向かって突出することとなる。そのため、カウルから上方に突出するワイパが、近接して配置されていても、エアバッグは、ワイパとの干渉を抑制されて、膨張することとなる。
【0012】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置において、ケースを、底壁と後壁との交差角の拡大を抑制可能な剛性を有する構成とすれば、エアバッグの展開膨張時に、膨張するエアバッグによって押し開かれる底壁と後壁との部位が、後壁を底壁に対して拡開されるように変形することを抑制でき、フードパネルの後方に配置されるカウルの部位に当接した際に、後壁が、カウルに支持された状態として、先端(上端)を後方に向けるように、前後方向に対して傾斜して配置されることとなる。そのため、この後壁によって、膨張するエアバッグを、後上方に向かって円滑に突出させるように、案内させることができて、好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の歩行者用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Mは、
図1に示すように、車両Vのフードパネル10の後端10c近傍における裏面側において、左右のフロントピラー5L,5Rの間となる車両Vの左右方向の中央側となる位置に、配置されるもので、フードパネル10の後端10cを上昇させるフード跳ね上げ装置20とともに作動される。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて、説明する。
【0015】
実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ6(
図1参照)には、歩行者との衝突を検知可能な図示しないセンサが、配設されており、センサからの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサからの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、エアバッグ装置Mのインフレーター40を作動させるように構成されている。また、フード跳ね上げ装置20の後述するアクチュエータ23も、作動回路による車両Vの歩行者との衝突検知時に、インフレーター40の作動と略同時に作動されて、フードパネル10の後端10cを押し上げ(
図9参照)、フードパネル10の後端10cとカウル7との間にエアバッグ突出用の隙間OSを形成することとなる(
図10,11参照)。
【0016】
フードパネル10は、
図1に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左縁10d側と右縁10e側とにおける後端10c近傍に配置されるヒンジ部13により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、実施形態の場合、アルミニウム(アルミニウム合金)等の板材からなり、
図3,4に示すように、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、を備えている。フードパネル10は、後述するフロントウィンドシールド4に合わせて、
図1に示すように、後端10cを、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。また、実施形態のフードパネル10は、裏面側にエアバッグ装置M(ケース28)を取り付けるために、後端10c側における左右の中央側の裏面側を凹ませるように形成される凹部10gを、備えている(
図4参照)。
【0017】
フードパネル10の後方には、
図3,4に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部4a側に連ならせるように、配設されている。このカウル7も、フードパネル10の後端10cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して構成されている。また、カウル7の部位には、
図1に示すように、ワイパ8が、配設されている。このワイパ8は、
図4の二点鎖線に示すように、カウルルーバ7bから上方に突出するように、配設されている。フロントウィンドシールド4の左右の外方には、
図1に示すように、フロントピラー5L,5Rが、配設されている。実施形態では、フロントウィンドシールド4は、下縁側にかけて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して、構成されている。フードパネル10は、フード跳ね上げ装置20の作動時に、後端10cを押し上げられることとなるが(
図9参照)、この後端10cの上昇移動時には、フードパネル10の前端10f側は、前端10fに配置されている通常閉塞用の図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
【0018】
ヒンジ部13は、フードパネル10の後端10c側における左縁10dと右縁10eとに配設され(
図1,2参照)、それぞれ、ボディ1側の部材であるフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ3に固定されるヒンジベース14と、フードパネル10側に固定されるヒンジアーム16と、を備えて構成されている(
図2,3参照)。各ヒンジアーム16は、
図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース14側の元部端16aが、支持軸15を利用してヒンジベース14に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム16は、
図2,3に示すように、元部端16aから離れる先端16b側に、先端16bからフードパネル10の下面に略沿うように延びる連結板部17を、備える構成とされ、この連結板部17が、フードパネル10の後端10cにおける下面側に、溶接等を利用して結合されている。また、ヒンジアーム16の先端16b付近には、
図3に示すように、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部16cが、形成されており、この切欠凹部16cの周囲の部位が、フード跳ね上げ装置20におけるアクチュエータ23の作動時においてピストンロッド25がフードパネル10の後端10cを押し上げた際に、塑性変形する塑性変形部16dとされて、フードパネル10の後端10cの上昇を許容することとなる(
図9参照)。各支持軸15は、
図2,3に示すように、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配置されている。そして、フードパネル10を開く際には、フードパネル10の前端10f側(
図1参照)を前開きで上昇させれば、各支持軸15を回転中心として、フードパネル10を前開きで開くことができる(
図3の二点鎖線参照)。
【0019】
フード跳ね上げ装置20は、
図1〜3に示すように、エアバッグ装置Mの左右両側であって、フードパネル10の後端10c側における左縁10d,右縁10eの下方となるヒンジ部13の下方に配設されている。各フード跳ね上げ装置20は、
図3に示すように、アクチュエータ23と、アクチュエータ23をボディ側のフードリッジリインホース2に取り付ける取付ブラケット21と、を備えている。取付ブラケット21は、アクチュエータ23を保持可能な断面略U字形状として、フードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに対してボルト22止めされている。アクチュエータ23は、駆動源として、図示しないガス発生器を使用しており、取付ブラケット21に保持されるシリンダ24と、シリンダ24から上方へ突出するように配設されるピストンロッド25と、を備えている。このアクチュエータ23では、シリンダ24の下端側に内蔵される図示しないガス発生器を作動させて発生する作動ガスにより、シリンダ24内に収納されるピストンロッド25の図示しないピストンを押し上げて、ピストンロッド25を上昇移動させる構成である。そして、アクチュエータ23の作動時に、上昇移動するピストンロッド25の上端25aが、フードパネル10の後端10cの下面側に配設されるヒンジアーム16の先端16b側に設けられる連結板部17の下面に当接することとなり、この上昇移動するピストンロッド25の上端25aによって、
図9に示すように、フードパネル10の後端10cが上方に押し上げられて、カウル7とフードパネル10の後端10cとの間に、膨張するエアバッグ45を突出させるための隙間OSが形成されることとなる(
図10,11参照)。
【0020】
エアバッグ装置Mは、
図4に示すように、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター40と、エアバッグ45とインフレーター40とを収納するケース28と、を備えている。
【0021】
ケース28は、合成樹脂製として、少なくとも折り畳まれたエアバッグ45の上下前後の四方を覆う天井壁29、底壁30、前壁31、及び、後壁32を備える構成とされている。実施形態の場合、ケース28は、
図1に示すように、フードパネル10の後端10cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して構成されている。また、ケース28は、折り畳まれたエアバッグ45の四方を全周にわたって覆うように、構成されるとともに、上下方向の幅寸法を、フードパネル10の裏面側に取り付けた際に、底壁30の下面側をフードパネル10におけるインナパネル10bの下面側と略面一とするような寸法に、設定され、前後の幅寸法を大きくした扁平状とされている(
図3参照)。そして、実施形態の場合、ケース28は、
図3に示すように、底壁30における前端30a側の部位の下面側を、フードパネル10に配設される支持部材11に支持されるようにして、インフレーター40から延びる後述するボルト(取付具)41aとナット(締結具)42とを、利用して、インフレーター40とともに支持部材11に取付固定されて、フードパネル10の裏面側に取り付けられている。支持部材11は、板状として、フードパネル10におけるインナパネル10bの下面側から後方に延びるように形成されるもので、ケース28の前方からインフレーター40の直下付近まで後方に延びるように、配置されている。なお、実施形態では、支持部材11は、ケース28の下面側の左右の略全域にわたって、連続的に配置されている。そして、支持部材11には、インフレーター40から延びるボルト41aを挿通可能可能な貫通孔11aが、形成されている。この支持部材11は、後端11bを、インフレーター40の後縁近傍に位置させるように、構成されている。
【0022】
また、ケース28において、後壁32の上端32a近傍となる後壁32と天井壁29との交差部位付近(コーナ部付近)には、エアバッグ45の膨張時に破断可能な破断予定部34が、形成されている。破断予定部34は、後壁32の上端32a近傍を、前面側から断面略楔形状に凹ませるようにして、左右の略全域にわたって連続的に形成されている。そして、破断予定部34の破断時には、
図10,11に示すように、破断予定部34の下方における後壁32の部位と底壁30とが、底壁30の前端30a側の部位を起点として、下方に回転するように開くこととなる。実施形態のエアバッグ装置Mでは、支持部材11が、インフレーター40の下方となる前端側の部位において、ケース28の底壁30の下面側を支持するように構成されていることから、ケース28の底壁30において、支持部材11の後端11bより僅かに後側に位置する部位(底壁30の下面側における支持部材11への固定部位の後縁近傍の部位)が、破断予定部34の破断時に、後壁32と底壁30とを下方に回転可能に撓むヒンジ部35を、構成することとなり、後壁32と底壁30とは、このヒンジ部35の部位を起点として、下方に回転することとなる。また、実施形態では、ケース28は、破断予定部34の破断時における後壁32と底壁30との回転移動時に、後壁32と底壁と30との境界部位付近(後壁32の下端32b側)を、カウルルーバ7bに当接させるように、構成されている(
図10,11参照)。
【0023】
実施形態の場合、ケース28は、前壁31、天井壁29、後壁32、及び、底壁30を備えるケース素材37と、ケース28の左右の側壁を構成する別体の蓋部材38と、から構成されている(
図2,3参照)。ケース素材37は、
図5のAに示すように、前壁31、天井壁29、後壁32、底壁30を連ならせるように構成されている。そして、ケース素材37は、底壁30の前端30a側の部位に重ねられて、底壁30とインフレーター40との間に配置される固定片37aと、前壁31と底壁30との境界部位付近を連続的に凹ませるようにして形成される折曲起点37cと、を有し、破断予定部34の部位と、前壁31と底壁30との境界部位付近の折曲起点37cとで、折り曲げ、前壁31の下端から延びる固定片37aを、底壁30に重ねることにより、略四角筒状として構成されている(
図5のB参照)。蓋部材38,38は、ケース素材37と別体の合成樹脂製として、ケース素材37を折曲させて略四角筒状とした左右両端側の開口部分を閉塞可能に、構成されている。そして、ケース28は、ケース素材37を折曲させて略四角筒状とした左右両端側の開口部分を、蓋部材38,38によって閉塞させることにより、防水性を確保している。固定片37aには、インフレーター40のボルト41aを挿通可能な取付孔37bが形成され、底壁30の前端30a側には、インフレーター40のボルト41aを貫通可能な貫通孔33が、形成されている。そして、実施形態の場合、ケース28は、エアバッグ45の展開膨張時に、底壁30と後壁32とを、略直交させた状態を維持して、底壁30と後壁32との交差角の拡大を抑制可能な剛性を有し、かつ、ヒンジ部35の部位で撓み可能なように、適度な剛性を有したポリプロピレン(PP)等から形成されている。実施形態では、ケース素材37においても、底壁30と後壁32とは、略直交するように、構成されている(
図5のA参照)。
【0024】
インフレーター40は、
図1に示すように、実施形態の場合、左右方向に沿って2個配置されるもので、それぞれ、軸方向を左右方向に略沿って配置されて、外形形状を略円柱状としてたシリンダタイプのものを使用している。詳細には、各インフレーター40は、左右方向の一端側(実施形態の場合、左右の外方側)に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を配設させて構成されるもので、左右方向の他端側(左右の内方側)から延びる図示しないリード線を介して、作動回路と電気的に接続されている。また、各インフレーター40は、
図4に示すように、外周側を覆うように配置されるリテーナ41から下方に延びるように形成される取付部としてのボルト41aを、ケース28の底壁30と支持部材11とを貫通させて、支持部材11の貫通孔11aに貫通されているボルト41aに、締結具としてのナット42を締結させることにより、ケース28の底壁30とともに、支持部材11に取り付けられる構成である。また、各インフレーター40は、図示しないガス吐出口を有した左右の外方側の端部側を、クランプ43を使用して、エアバッグ45の後述するガス流入口部51に、連結されている(
図6の二点鎖線参照)。
【0025】
エアバッグ45は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する袋状として構成され、
図6に示すように、膨張完了時の形状を、正面側から見て、左右に幅広とした略U字形状に形成されている。エアバッグ45は、膨張完了時に、フロントウィンドシールド4の下部4aに沿うように左右方向に略沿って配置されるカウルカバー部46と、カウルカバー部46の両端から後方に延びるように構成されてフロントピラー5L,5Rの前面5aを覆う2つのピラーカバー部50,50と、カウルカバー部46の前縁側から突出するように形成されてインフレーター40と接続される2つのガス流入口部51,51と、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ45は、
図6〜8に示すように、外形形状を略同一として、膨張完了時に下面側に配置される下側壁部45aと、上面側に配置される上側壁部45bと、の周縁相互を、ガス流入口部51の先端51a側を除いた全周にわたって、縫合糸を用いて縫着(結合)させて、袋状とされている。
【0026】
カウルカバー部46は、膨張完了時に、カウル7からフロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域の上面側を、ワイパ8も含めて覆うように構成されるもので、膨張完了形状を、フードパネル10の後端10cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲した棒状として、構成されている。実施形態の場合、カウルカバー部46は、
図6,7に示すように、内部にテザー53を配置させて、前側部位47と後側部位48とに、前後で2分割されている。テザー53は、カウルカバー部46の前後の略中央において、カウルカバー部46の湾曲形状に略沿って湾曲して配置されるもので、前側部位47と後側部位48とは、それぞれ、前後の幅寸法を左右の全域にわたって略同一として構成されている。
【0027】
ピラーカバー部50は、平らに展開した状態の幅寸法(左右の幅寸法)を、平らに展開した状態のカウルカバー部46の幅寸法(前後の幅寸法)より、僅かに小さく設定されるとともに、長さ寸法を、
図1の二点鎖線に示すように、フロントピラー5L,5Rの前面5aを略全域にわたって覆い可能な寸法に、設定されている。ピラーカバー部50は、膨張完了形状を、フロントピラー5L,5Rの前面5aを覆い可能な略円柱状として、構成されている。
【0028】
ガス流入口部51は、カウルカバー部46の前縁側から前方に突出するように形成されるもので、先端51a側を、インフレーター40を接続可能に開口させて構成されている。実施形態の場合、ガス流入口部51は、先端51a側を左右の内方に向けるように屈曲させて、左右対称形として、構成されている(
図6参照)。
【0029】
カウルカバー部46内に配置されるテザー53は、カウルカバー部46の領域内において、前後の略中央となる位置に、左右方向に沿った略全域にわたって連続的に配置される帯状として、上縁側と下縁側とを、それぞれ、エアバッグ45における上側壁部45bと下側壁部45aとに、縫合糸を用いて縫着させることにより、連結されている(
図7参照)。このテザー53は、カウルカバー部46の膨張完了時の厚さを規制して、膨張完了時のカウルカバー部46により、カウル7からフロントウィンドシールド4の下部4aにかけての上面側を前後で広く覆うことができるように、配置されている。実施形態の場合、テザー53は、上下で2分割されて、2枚のテザー用基布55,55から、構成されている(
図8参照)。また、テザー53には、前側部位47と後側部位48とを連通させる多数の連通穴部54が、形成されている。詳細には、各連通穴部54は、テザー53を構成する各テザー用基布55に、それぞれ、形成されている。実施形態では、エアバッグ45及びテザー53は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布にガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布から、形成されている。
【0030】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、エアバッグ45をケース28内に収納可能に折り畳み、折り畳み完了後には、エアバッグ45を折り畳んで形成される折り完了体の周囲を、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、くるんでおく。このとき、ガス流入口部51の先端51aは、ラッピング材から露出させておく。そして、リテーナ41に保持させた状態のインフレーター40を、クランプ43を用いてガス流入口部51の先端51aと接続させておく。その後、インフレーター40のボルト41aをケース28の底壁30から突出させるようにして、インフレーター40とエアバッグ45とをケース28内に収納させ、底壁30から突出しているボルト41aを、フードパネル10から延びている支持部材11の貫通孔11aに貫通させて、ナット42止めすれば、エアバッグ装置Mをフードパネル10の裏面側に取り付けることができる。そして、インフレーター40を図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0031】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、フード跳ね上げ装置20のアクチュエータ23が、ピストンロッド25によりフードパネル10の後端10cを押し上げるように作動されて(
図9参照)、フードパネル10の後端10cとカウル7との間に、エアバッグ突出用の隙間OSが形成されることとなる(
図10,11参照)。略同時に、インフレーター40が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ45が膨張することとなり、膨張するエアバッグ45が、ケース28の破断予定部34を破断させて、後壁32と底壁30とを下方に回転させるように押し開き、後壁32と底壁30とを回転移動させて形成される突出用開口28aから後斜め上方に向かって突出しつつ、カウル7の上面とフロントピラー5L,5Rの前面とを覆うように、膨張を完了させることとなる(
図1の二点鎖線及び
図11参照)。
【0032】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース28において、エアバッグ45の膨張時に破断される破断予定部34が、後壁32における上端32a近傍に配置され、ケース28の底壁30において、インフレーター40とケース28とを固定させる支持部材11への固定部位の後縁近傍(ケース28の底壁30において、支持部材11の後端11bより僅かに後側に位置する部位)に、破断予定部34の破断時に、破断予定部34の下方における後壁32の部位と底壁30とを下方に回転可能に撓むヒンジ部35が、配置されている。そして、エアバッグ45の展開膨張時に、破断予定部34を破断させた後のケース28において、底壁30が、膨張するエアバッグ45に押圧される後壁32に伴って、ケース28の前端のインフレーター40直下付近に配置されたヒンジ部35を起点として、後壁32に連なる後端30b側を下方に向けるように、大きく開くこととなる(
図10,11参照)。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース28の底壁30と後壁32とが、膨張するエアバッグ45によって、ケース28の後下側を大きく開口させるように押し開かれることとなり、フードパネル10の裏面側に配置されて、ケース28自体が上下の幅寸法を小さく設定されていても、エアバッグ45を突出させるための突出用開口28aを大きく確保できて、エアバッグ45が、この突出用開口28aから、迅速に展開膨張することとなる。さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース28は、合成樹脂製として、エアバッグ45の上下前後の四方を、簡易に全周にわたって覆うことができ、簡便に、良好な防水性も確保することができる。
【0033】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、簡便に良好な防水性を確保できて、かつ、エアバッグ45を、迅速に膨張させることができる。
【0034】
また、実施形態のエアバッグ装置Mは、フードパネル10の後端10cを上昇させるフード跳ね上げ装置20とともに作動される構成であることから、インフレーター40の作動時に、フード跳ね上げ装置20が作動して、フードパネル10の後端10c側とともに上昇移動した状態で、エアバッグ45が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、ケース28の後壁32の上端32a近傍に配置される破断予定部34を破断させて、後壁32と底壁30とを押し開き、後方に向かって突出することとなる。そのため、カウル7から上方に突出するワイパ8が、近接して配置されていても、エアバッグ45は、ワイパ8との干渉を抑制されて、膨張することとなる。
【0035】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース28を、底壁30と後壁32との交差角の拡大を抑制可能な剛性を有する構成としていることから、エアバッグ45の展開膨張時に、膨張するエアバッグ45によって押し開かれる底壁30と後壁32との部位が、後壁32を底壁30に対して拡開されるように変形することを抑制でき、フードパネル10の後方に配置されるカウル7の部位(カウルルーバ7b)に当接した際に、
図10,11に示すように、後壁32が、カウルルーバ7bに支持された状態として、先端(上端32a)を後方に向けるように、前後方向に対して傾斜して配置されることとなる。そのため、この後壁32によって、膨張するエアバッグ45を、後上方に向かって円滑に突出させるように、案内させることができる。その結果、膨張しつつ後方に向かって突出するエアバッグ45が、カウルルーバ7bから上方に突出するように配置されるワイパ8と干渉することを、一層抑制することができる(
図10参照)。勿論、このような点を考慮しなければ、ケースとして、エアバッグの展開膨張時に、後壁が底壁に対して拡開されるように変形するような構成の物を使用してもよい。なお、底壁と後壁との交差角の拡大を抑制可能な剛性の確保には、ケースの材料自体を変更する以外に、ケース素材自体(底壁と後壁)の厚さ寸法を大きくしたり、さらには、ケースに、底壁の下端側と後壁の後端側とを連結するような三角板状の補強用のリブを、左右方向に断続的に設ける構成としてもよい。
【0036】
また、実施形態では、ケースの底壁を、支持部材の上面側に配置させているが、ケースの底壁は、支持部材の下面側に配置させる構成としてもよい。この場合、ヒンジ部は、底壁において、インフレーターのボルト(取付部)を貫通させている挿通孔周縁であって、ボルトに締結されたナット(締結具)で固定された固定部位の近傍の部位から、構成されることとなる。さらに、実施形態では、ケースを、折り畳まれたエアバッグの四方を全周にわたって覆うようなケース素材を折曲させて、構成しているが、ケースの構成はこれに限られるものではなく、ケースとして、例えば、合成樹脂製の2つの部材の所定箇所を溶着や接着させることにより、折り畳まれたエアバッグの四方を全周にわたって覆うように構成してもよい。