特許第6070715号(P6070715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070715
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170123BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-544106(P2014-544106)
(86)(22)【出願日】2012年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2012078079
(87)【国際公開番号】WO2014068686
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】成田 哲深
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】川波 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】原 英則
(72)【発明者】
【氏名】香月 貴光
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−037246(JP,A)
【文献】 特開2009−126319(JP,A)
【文献】 特開2005−304172(JP,A)
【文献】 特許第4142879(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42 − 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスイッチング素子、インダクタ、ダイオードおよびコンデンサを有し、前記第1のスイッチング素子のオン・オフによって、直流電源から供給される電力を前記インダクタから前記ダイオードを介して前記コンデンサに蓄積するチョッパ部と、
前記チョッパ部の出力に接続されるインバータ部と、
前記ダイオードに逆並列に接続される第2のスイッチング素子と、
前記チョッパ部を制御して前記直流電源の電圧よりも絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成し、前記インバータ部を制御して前記直流電源の電圧よりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成して、前記インバータ部から交流電圧を出力させる制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記チョッパ部を制御して前記直流電源の電圧よりも絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成する期間に、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子を交互にオンにし、前記インバータ部を制御して前記直流電源の電圧よりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する期間に、前記第2のスイッチング素子をオンにし、前記インバータ部から交流電圧の出力を停止させる場合に、前記第2のスイッチング素子をオンにすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記インバータ部から出力する交流電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、
前記インバータ部から出力する交流電流が所定値以上の場合に、前記インバータ部から交流電圧の出力を停止させることを特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2のスイッチング素子は、FETであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、供給される直流電圧よりも高い交流電圧を生成して出力する装置として、チョッパ部とインバータ部とを組み合わせた電力変換装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の電力変換装置では、チョッパ部によって昇圧された直流電圧をインバータ部によってPWM制御して交流電圧に変換し、交流電動機へ出力するように制御部によって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4142879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電力変換装置では、チョッパ部によって昇圧された直流電圧をインバータ部によってPWM制御して交流電圧に変換することから、電力変換効率の点で課題がある。
【0006】
実施形態の一態様は、電力変換効率を向上させつつ、直流電圧から交流電圧への電力変換を精度よく行うことができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る電力変換装置は、第1のスイッチング素子、インダクタ、ダイオードおよびコンデンサを有するチョッパ部と、インバータ部と、第2のスイッチング素子と、制御部とを備える。チョッパ部は、前記第1のスイッチング素子のオン・オフによって、直流電源から供給される電力を前記インダクタから前記ダイオードを介して前記コンデンサに蓄積する。インバータ部は、前記チョッパ部の出力に接続される。第2のスイッチング素子は、前記ダイオードに逆並列に接続される。制御部は、前記チョッパ部を制御して前記直流電源の電圧よりも絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成し、前記インバータ部を制御して前記直流電源の電圧よりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成して、前記インバータ部から交流電圧を出力させる。そして、前記制御部は、前記チョッパ部を制御して前記直流電源の電圧よりも絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成する期間に、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子を交互にオンにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るチョッパ電圧の波形を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る出力電圧の波形を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る電力変換装置が行う通常時運転の動作を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る電力変換装置が行う非常時運転の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電力変換装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態に係る電力変換装置1の構成を示す図である。図1に示すように、電力変換装置1は、チョッパ部2と、インバータ部3と、制御部5とを備える。
【0011】
制御部5は、チョッパ部2を制御して直流電源の電圧(以下、「電源電圧Vin」と記載する)を昇圧させ、電源電圧Vinより絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成させる。また、制御部5は、インバータ部3を制御して、チョッパ部2を介して入力される電源電圧Vinより絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成させる。制御部5は、かかる制御により、電源電圧Vinを交流の出力電圧Voutへ変換してインバータ部3から出力させる。
【0012】
かかる制御部5では、インバータ部3が電源電圧Vinより絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成している期間に、チョッパ部2からインバータ部3へ電源電圧Vinをそのまま入力する。そのため、チョッパ部2で昇圧した直流電圧をインバータ部3で交流電圧へ変換する場合に比べ、インバータ部3におけるスイッチングロスが低減される。さらには、チョッパ制御中はインバータ部3のスイッチング制御が行われないために、インバータ部3のスイッチングロスも低減する。
【0013】
また、インバータ部3が電源電圧Vinより絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成している期間では、チョッパ部2のスイッチング制御が行われない。このため、チョッパ部2で常時スイッチングを行って一定の直流電圧をインバータ部3へ出力させ、インバータ部3のスイッチングによって交流電圧波形の全体を生成する場合に比べて、チョッパ部2のスイッチング回数を低減可能である。したがって、チョッパ部2のスイッチングロスも低減する。
【0014】
ところで、電力変換装置1では、チョッパ部2によって電源電圧Vinよりも絶対値が高い部分の交流電流波形を生成する期間に、低負荷状態や無負荷状態となる場合がある。かかる場合に、例えば、チョッパ部2によって単純に電源電圧Vinを昇圧して交流電圧波形を生成させると、昇圧した電力が負荷によって消費されず、交流電圧波形の生成精度が低下することがある。
【0015】
そこで、電力変換装置1では、低負荷状態や無負荷状態になった場合であっても、交流波形の生成精度が低下することを抑制する構成とした。以下、電力変換装置1について具体的に説明する。
【0016】
図1に示すように、チョッパ部2は、直流電源に対して直列に接続されるインダクタL1およびスイッチング素子SWa(第1のスイッチング素子の一例に相当)を備える。なお、スイッチング素子SWaには、保護ダイオードD1が逆並列に接続される。
【0017】
また、チョッパ部2は、インダクタL1とスイッチング素子SWaの一端との間にアノードが接続されるダイオードD2と、ダイオードD2に逆並列に接続されるスイッチング素子SWb(第2のスイッチング素子の一例に相当)と、ダイオードD2のカソードとスイッチング素子SWaの他端との間に接続されるコンデンサC1とを備える。
【0018】
なお、チョッパ部2の構成は、図1に示す構成に限定されるものではなく、アノードがインダクタL1側に接続され、カソードがコンデンサC1側に接続されるダイオードD2と、ダイオードD2に逆並列に接続されるスイッチング素子SWbを備える構成であれば他は任意の構成であってもよい。
【0019】
チョッパ部2の出力には、インバータ部3が接続される。インバータ部3は、フルブリッジ接続された4つのスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4と、各スイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4に、それぞれ一つずつ逆並列に接続される4つの帰還ダイオードD3、D4、D5、D6を備える。
【0020】
かかるインバータ部3は、出力にフィルタ部4が接続され、チョッパ部2から出力される電圧(以下、「チョッパ電圧Vbst」と記載する)を交流の出力電圧Voutへ変換して、フィルタ部4の出力側に接続される負荷(図示せず)へ出力する。なお、フィルタ部4は、2つのインダクタL2、L3とコンデンサC3とを備え、インバータ部3から出力されるパルス電圧を平滑化して交流の出力電圧Voutとしている。
【0021】
チョッパ部2およびインバータ部3を制御する制御部5は、チョッパ部2のスイッチング素子SWaをオン・オフさせることによって、直流電源から供給される電力をインダクタL1からダイオードD2を介してコンデンサC1に蓄積させる。かかるスイッチングによってチョッパ電圧Vbstは、電源電圧Vinよりも高くなる。なお、チョッパ部2へ直流電源から供給される電圧は、コンデンサC2によって平滑化される。
【0022】
制御部5は、チョッパ部2を制御して電源電圧Vinよりも絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成する期間に、スイッチング素子SWaおよびスイッチング素子SWbを交互にオンにする。これにより、電力変換装置1では、電源電圧Vinよりも絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成する期間に低負荷状態や無負荷状態になっても、チョッパ電圧Vbstが不必要に高くなったコンデンサC1の電荷をスイッチング素子SWbおよびインダクタL1を介して直流電源側へ逃がすことができる。
【0023】
したがって、電力変換装置1によれば、電源電圧Vinよりも絶対値が高い部分の交流電圧波形を生成する期間に低負荷状態や無負荷状態になっても、交流電圧波形の生成精度が低下することを抑制することができる。
【0024】
また、制御部5は、インバータ部3を制御して電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する期間にも、スイッチング素子SWbをオンにする制御を行う。これにより、電力変換装置1は、電力変換効率をさらに向上させることができる。
【0025】
具体的には、制御部5は、インバータ部3によって電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する期間に、チョッパ部2に対するスイッチング制御を停止して、チョッパ電圧Vbstを電源電圧Vinに維持する。このとき、スイッチング素子SWbがオフの場合、電源電圧Vinは、ダイオードD2を介してインバータ部3へ出力されるため、ダイオードD2において電力損失が生じる。
【0026】
そこで、制御部5は、インバータ部3によって電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する期間に、ダイオードD2よりも電力損失の少ないスイッチング素子SWbをオンにし、スイッチング素子SWbを介して電源電圧Vinをインバータ部3へ出力させる。これにより、電力変換装置1では、ダイオードD2を介して電源電圧Vinをインバータ部3へ出力する場合に比べて電力変換効率をさらに向上させることができる。
【0027】
ここで、図2図4を参照し、かかる電力変換装置1の動作の一例について、さらに詳細に説明する。図2は、実施形態に係るチョッパ電圧Vbstの波形を示す図であり、図3は、実施形態に係る出力電圧Voutの波形を示す図である。また、図4は、実施形態に係る電力変換装置1が行う通常時運転の動作を示す図である。
【0028】
ここで、図2図4に示すチョッパ部スイッチング期間は、チョッパ部2における2つのスイッチング素子SWa、SWbを交互にオンさせることで、チョッパ部2によって電源電圧Vinよりも高い部分の交流電圧波形を生成させる期間である。
【0029】
一方、図2図4に示すインバータ部スイッチング期間は、チョッパ部2におけるスイッチング素子SWaをオフ、スイッチング素子SWbをオンの状態に維持させ、インバータ部3を制御して電源電圧Vinよりも低い部分の交流電圧波形を生成させる期間である。
【0030】
また、図4に示す正弦波は、制御部5へ外部から入力される出力電圧指令Voutである。また、図4に示す駆動信号Sb、Sa、S1、S2、S3、S4は、制御部5から各スイッチング素子SWb、SWa、SW1、SW2、SW3、SW4へそれぞれ出力される信号である。
【0031】
図4に示すように、チョッパ部2では、出力電圧指令Voutの絶対値が電源電圧Vinよりも高い期間(以下、「チョッパ部スイッチング期間」と記載する)に、スイッチング素子SWa、SWbが交互にオンする。このとき、制御部5は、デューティー比が(Vout−Vin)/Voutとなる駆動信号Saをスイッチング素子SWaへ出力する。
【0032】
また、制御部5は、出力電圧指令Voutの値が電源電圧Vinよりも高いチョッパ部スイッチング期間に、スイッチング素子SW1、SW4をオンの状態に維持させ、スイッチング素子SW2、SW3をオフの状態に維持させる。また、出力電圧指令Voutの正負反転値が電源電圧Vinよりも高いチョッパ部スイッチング期間に、スイッチング素子SW2、SW3をオンの状態に維持させ、スイッチング素子SW1、SW4をオフの状態に維持させる。これにより、図2に示すように、チョッパ電圧Vbstの波形は、チョッパ部スイッチング期間に、電源電圧Vinよりも絶対値が高い部分の交流電圧波形となる。
【0033】
ここで、チョッパ部スイッチング期間に、負荷が極めて低い低負荷状態や無負荷状態となる場合がある。かかる場合に、実施形態のチョッパ部2におけるスイッチング素子SWb(図1参照)が設けられていなければ、コンデンサC1に蓄積された電荷が負荷によって消費されず、余分な電荷がコンデンサC1に残留してしまう。
【0034】
この場合、例えば、図2に一点鎖線で示すように、チョッパ電圧Vbstが実線で示す出力電圧指令Voutに沿った所望の交流電圧波形よりも高くなる。そして、このように不必要に高いチョッパ電圧Vbstによって生成される交流電圧波形と、インバータ部3によって生成される交流電圧波形とを合成した場合、合成部分に段差が生じて滑らかに合成されず、出力電圧Voutの精度が低下する。
【0035】
そこで、電力変換装置1では、チョッパ部2に、スイッチング素子SWbを設け、チョッパ部スイッチング期間に、チョッパ部2のスイッチング素子SWaをオフさせると同時にスイッチング素子SWbをオンさせる構成とした。これにより、負荷が低負荷状態や無負荷状態となった場合に、不必要に高いチョッパ電圧VbstとなったコンデンサC1の電荷を、チョッパ部2のスイッチング素子SWbおよびインダクタL1を介して直流電源側のコンデンサC2へ逃がすことができる。
【0036】
これにより、電力変換装置1では、チョッパ部スイッチング期間に、図2に実線で示すような所望の交流電圧波形を生成することができる。したがって、電力変換装置1によれば、電力変換効率を向上させつつ、直流電圧から交流電圧への電力変換を精度よく行うことができる。
【0037】
一方、図4に示すように、チョッパ部スイッチング期間以外の期間であるインバータ部スイッチング期間に、制御部5は、チョッパ部2のスイッチング素子SWaをオフにし、スイッチング素子SWbをオンにする。
【0038】
そして、制御部5は、インバータ部スイッチング期間に、インバータ部3の各スイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4に対して、直流交流変換で一般に用いられるPWM制御(図4参照)を行うことで電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する。なお、図4に示すインバータ部3のPWM制御は一例であり、これに限定されるものではない。
【0039】
そして、電力変換装置1では、図3に示すように、インバータ部3によって生成された電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形と、チョッパ部2によって生成された電源電圧Vinよりも絶対値が高い部分の交流電圧波形とを合成して出力電圧Voutの電圧波形を生成する。
【0040】
このように、電力変換装置1では、インバータ部スイッチング期間に、チョッパ部2に対するスイッチング制御を停止させた状態でインバータ部3によって電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する。
【0041】
これにより、実施形態に係る電力変換装置1では、チョッパ部で常時スイッチングを行って一定の直流電圧を出力させながら、インバータ部のスイッチングで交流電圧波形の全体を生成する場合に比べて、チョッパ部2のスイッチング回数を低減することができる。したがって、実施形態に係る電力変換装置1によれば、チョッパ部2におけるスイッチングロスを低減することができる。さらには、チョッパ制御中はインバータ部3のスイッチング制御が行われないために、インバータ部3のスイッチングロスも低減する。
【0042】
また、電力変換装置1では、インバータ部3によって電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する期間に、チョッパ部2のスイッチング素子SWbをオンとする。これにより、電力変換装置1では、電源電圧Vinよりも低い部分の交流電圧波形を生成する期間に、ダイオードD2経由ではなく、スイッチング素子SWb経由でインバータ部3へ電源電圧Vinを出力することができる。
【0043】
このように、電力変換装置1では、電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する期間に、ダイオードD2よりも電力損失の小さなスイッチング素子SWbを介してインバータ部3へ電源電圧Vinを提供するので、電力変換効率をさらに向上させることができる。
【0044】
ここで、図1へ戻り、電力変換装置1が備える他の構成要素の説明を続ける。また、以下では、図5を合わせて参照しながら、電力変換装置1が備える他の構成要素に関連して行う電力変換装置1の動作の一例について説明する。図5は、実施形態に係る電力変換装置1が行う非常時運転の動作を示す図である。
【0045】
図1に示すフィルタ部4の出力側に設けられる電流検出部6は、電力変換装置1から負荷へ供給される交流電流の電流値を検出して過電流検知部7へ出力する。電流検出部6は、たとえば、磁電変換素子であるホール素子を利用した電流センサである。
【0046】
過電流検知部7は、電流検出部6から入力される電流値と所定の閾値とを比較し、電流検出部6から入力される電流値が閾値を超えた期間に、Highレベルの過電流検知信号Sdを制御部5へ出力する処理部である。
【0047】
なお、過電流検知部7は、電流検出部6から入力される電流値が閾値を超えない期間に、Lowレベルの過電流検知信号Sdを制御部5へ出力する。また、電圧検出部8は、チョッパ電圧Vbstの電圧値を検出して制御部5へ出力する回路素子である。
【0048】
そして、制御部5は、過電流検知部7からHighレベルの過電流検出信号Sdが入力された場合、電力変換装置1による負荷への電力供給を停止させることで、負荷および電力変換装置1の破損を防止する。
【0049】
例えば、図5に示すように、制御部5は、時刻Tで過電流検知部7によって過電流が検知される前の期間には、図4に示す動作と同様に通常時運転を行う。そして、制御部5は、時刻Tで過電流検知部7によって過電流が検知された場合、全てのスイッチング素子SWa、SWb、SW1、SW2、SW3、SW4をオフし、電動機への過電流の供給を停止させる。これにより、電動機への過電流の供給を停止されるので、過電流による電動機の破損を防止することができる。また、過電流によるインバータ部3の破損も防止することができる。
【0050】
このとき、全てのスイッチング素子SWa、SWb、SW1、SW2、SW3、SW4をオフするため、フィルタ部4のインダクタL2、L3および電動機のインダクタに蓄えられたエネルギーが帰還ダイオードD3、D4、D5、D6を介してチョッパ部2に入力される。そして、かかるエネルギーがコンデンサC1に蓄積され、チョッパ電圧Vbstが異常上昇することがある。かかるチョッパ電圧Vbstの異常上昇は、電力変換装置1の破損の原因となる。
【0051】
そこで、制御部5は、時刻T1でチョッパ電圧Vbstが所定の閾値Thに達した場合、チョッパ部2のスイッチング素子SWbをオンさせる。これにより、電力変換装置1では、異常上昇したチョッパ電圧Vbstを電源電圧Vinまで低下させることができるので、過電流による破損を防止することができる。
【0052】
また、実施形態に係る電力変換装置1に用いるスイッチング素子SWbとしてFET(Field Effect Transistor)などのユニポーラ系デバイスを用いる場合、電源電圧Vinよりも絶対値が低い部分の交流電圧波形を生成する期間に、ダイオードD2よりも電力損失の小さなスイッチング素子SWbを介してインバータ部3へ電源電圧Vinを提供することが可能となるため、損失低減の効果がより大きい。
【0053】
このようにして、交流電動機やパワーコンディショナへの適応において重要な、高い電力変換効率と電力変換精度を両立した電力変換装置を提供できる。
【0054】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 電力変換装置
2 チョッパ部
3 インバータ部
4 フィルタ部
5 制御部
6 電流検出部
7 過電流検知部
8 電圧検出部
SWa、SWb、SW1、SW2、SW3、SW4 スイッチング素子
Sb、Sb、S1、S2、S3、S4 駆動信号
Sd 過電流検知信号
Vin 電源電圧
Vbst チョッパ電圧
Vout 出力電圧
Vout 出力電圧指令
図1
図2
図3
図4
図5