(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸素を含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、当該原料ガス供給手段からの原料ガスが流通されるガス流路を形成するガス流路形成部材と、当該ガス流路内に配置された、紫外線を放射する紫外線光源とを備え、当該ガス流路を流動する原料ガスに当該紫外線光源からの紫外線を照射することによって原料ガス中の酸素に紫外線を吸収させてオゾンを生成するオゾン発生器において、
前記紫外線光源は、波長200nm以下の紫外線を放射するエキシマランプよりなるものであり、
前記ガス流路において、紫外線光源が配置されている領域における原料ガスの流速が0.1m/s以上であることを特徴とするオゾン発生器。
前記紫外線光源を構成するエキシマランプが棒状であり、当該エキシマランプが、前記ガス流路におけるガス流通方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生器。
外部に排出されるオゾン含有ガスにおけるオゾン濃度が50ppm以下であり、居住空間用殺菌脱臭装置として用いられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のオゾン発生器。
【背景技術】
【0002】
従来、強い酸化力を有するオゾンは、例えば殺菌、脱臭、脱色、有機物除去、有害物質除去、化学物質合成などを目的として様々な分野で使用されている。
【0003】
オゾン(O
3 )を工業的に生成する方法の一つとして、例えば紫外線を用いた光化学反応方式が知られている。この光化学反応方式は、酸素(O
2 )を含有する原料ガスに対して、発光管内に放電空間を有する紫外線ランプなどの紫外線光源から放射される紫外線を照射することにより、原料ガス中の酸素に紫外線を吸収させすることによってオゾン生成反応を生じさせてオゾンを生成するものである。このような光化学反応方式においては、原料ガスとして、酸素と共に窒素を含有するガスを用いた場合であっても、例えば無声放電方式のように窒素酸化物(NO
x )が生成されることがなく、また放電が発光管内の放電空間でのみ発生するため、生成されたオゾンを含有するオゾン含有ガス中に電極起因の粉塵が混入することがない、という利点がある。
【0004】
光化学反応方式においては、一般に、紫外線光源として低圧水銀ランプが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、酸素を含有する原料ガスが流通するガス流路形成部材の内部、すなわち、ガス流路内に、棒状の低圧水銀ランプが配置されてなる構成のオゾン発生器が開示されている。
しかしながら、紫外線光源として低圧水銀ランプを用いたオゾン発生器においては、下記のような問題がある。
低圧水銀ランプから放射される光の代表的な波長は、185nmと254nmである。この波長185nmはオゾン生成波長であり、一方、波長254nmはオゾン分解波長である。そのため、低圧水銀ランプを紫外線光源として使用した場合には、オゾン生成反応とオゾン分解反応とが並列して発生し、さらには、オゾン分解反応で生じた酸素原子(O)がオゾンと反応することによってオゾン量が減少するため、効率的なオゾン発生が期待できない。
【0005】
このような問題に対して、近年では、紫外線光源として、オゾン生成波長を多く含む光を放射するエキシマランプを用いることが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
特許文献2には、紫外線光源としてエキシマランプを用いたオゾン発生器の或る種のものとして、棒状のエキシマランプを包囲するように、紫外線透過材料よりなる、二重管構造のガス流路形成部材が配置された構成のものが開示されている。このオゾン発生器においては、ガス流路形成部材に供給される原料ガスは、エキシマランプの電極に接触することのないように隔離された状態とされる。また、このオゾン発生器において、エキシマランプとしては、周波数1MHz〜20MHzの高周波発光型のものが用いられており、ガス流路形成部材の外周には、紫外線反射部材が配設されている。また、このオゾン発生器は、エキシマランプとガス流路形成部材との間隙に窒素ガスなどの冷媒を流通させることによってエキシマランプを空冷することのできるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のオゾン発生器の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のオゾン発生器の構成の一例の概略を示す説明図である。
このオゾン発生器10は、酸素ガスを含有する原料ガスに紫外線を照射することによって当該原料ガス中の酸素に紫外線を吸収させてオゾンを生成し、生成されたオゾンを含有するオゾン含有ガスを外部に排出するものである。
【0018】
オゾン発生器10は、長尺な直円筒状のガス流路形成部材11を備えており、このガス流路形成部材11においては、一端にガス導入口12Aが形成され、他端にガス排出口12Bが形成されている。また、ガス導入口12Aには、原料ガス供給手段20が接続されており、当該ガス流路形成部材11の内部には、円棒状のエキシマランプ30よりなる紫外線光源が、発光領域の全域が当該内部に位置するように配置されている。このエキシマランプ30は、ガス流路形成部材11の内径よりも小さい外径を有すると共に、当該ガス流路形成部材11の全長よりも短い発光長(発光領域の長さ)を有するものである。また、エキシマランプ30は、ガス流路形成部材11の内部において、当該エキシマランプ30の管軸(ランプ中心軸)がガス流路形成部材11の管軸と略一致するように支持部材(図示せず)によって支持されている。すなわち、エキシマランプ30は、管軸(ランプ中心軸)がガス流路形成部材11の管軸と略一致し、当該エキシマランプ30の外周面が全周にわたってガス流路形成部材11の内周面と離間し、当該外周面と当該内周面との間に環状空間が形成されるように配設されている。このようにして、ガス流路形成部材11の内部には、当該ガス流路形成部材11の内周面とエキシマランプ30の外周面とによって区画される環状空間(具体的には、円環状空間)と、この環状空間に連通する柱状空間(具体的には、円柱状空間)とよりなるガス流路形成空間により、原料ガス供給手段20から供給された原料ガスがガス排出口12Bに向かって流動するガス流路が形成されている。すなわち、エキシマランプ30は、ガス流路内に配置されている。
そして、ガス流路形成部材11には、エキシマランプ30の発光領域が配置する領域およびその近傍領域により、原料ガスにエキシマランプ30からの紫外線を照射するオゾン発生部が形成されている。また、オゾン発生部の上流側(ガス導入口12A側)には原料ガス流通部が形成され、一方、オゾン発生部の下流側(ガス排出口12B側)にはオゾン含有ガス流通部が形成されている。
この図の例において、エキシマランプ30は、ガス流路形成部材11の内部において、ガス導入口12Aの近傍位置に配置されている。
また、同図においては、オゾン発生器10におけるガスの流動方向が矢印で示されている。
【0019】
ガス流路形成部材11においては、オゾン発生部およびオゾン含有ガス流通部における内周面の全面、すなわち内周面におけるエキシマランプ30からの紫外線が照射された原料ガスに接触するオゾン接触領域がオゾンに対する耐性を有している。
この図の例において、ガス流路形成部材11は、塩化ビニル樹脂よりなることにより、内周面の全面がオゾンに対する耐性を有するものとされている。
【0020】
また、ガス流路形成部材11は、紫外線照射領域、すなわちオゾン発生部における内周面の全面が、紫外線反射能を有するものであることが好ましい。
ガス流路形成部材11が、紫外線照射領域において紫外線反射能を有するものであることにより、エキシマランプ30からの紫外線を有効に利用することができるため、より高い効率でオゾンを生成することができる。
【0021】
紫外線光源を構成するエキシマランプ30は、波長200nm以下の紫外線を放射するものである。
紫外線光源が波長200nm以下の紫外線を放射するエキシマランプ30よりなるものであることにより、原料ガスに対して、オゾン分解波長の紫外線(具体的には、波長254nmの光)が照射されることがない。そのため、紫外線光源からの紫外線が照射されることに起因して、生成されたオゾンが分解されることがない。しかも、エキシマランプ30には、大きなオゾン発生量を得るために、低圧水銀ランプのように、大きな投入電力が必要とされることがない。そのため、オゾン発生器10においては、高い効率でオゾンを生成することができる。
ここに、本発明において、「エキシマランプ」とは、Kogelschatz,Pure&Appl.Chem.Vol.62,No.9,1990,p1667−1674に示されているように、誘電体を介して50Hz〜数MHzの高周波電圧が印加されることによって生じる放電(誘電体バリア放電)を利用するランプである。
【0022】
このエキシマランプ30は、オゾン生成波長が200nm以下であることから、200nmより短い波長域で大きな放射を有するものであることが好ましい。
エキシマランプ30の好ましい具体例としては、中心波長172nmのキセノンエキシマランプが挙げられる。
【0023】
エキシマランプ30は、
図2に示すように、例えば石英ガラスなどの紫外線透過材料によって構成され、一端(
図2における右端)が封止され、他端(
図2における左端)にピンチシール法によって形成された扁平状の封止部42Aが形成された直円筒状の発光管41を備えている。この発光管41の内部には、キセノンガスなどの希ガスが封入されていると共に、コイル状の内部電極44が、発光管41の管軸に沿って伸びるように配設されている。この内部電極44は、内部リード45を介して封止部42Aに埋設された金属箔46に電気的に接続されており、金属箔46には、封止部42Aの外端面から外方に突出する内部電極用外部リード47の一端部が電気的に接続されている。また、発光管41の外周面には、網状の外部電極48が設けられおり、外部電極48には、封止部42Aに沿って伸びる外部電極用外部リード49の一端部が電気的に接続されている。そして、内部電極44と外部電極48とが、発光管41の内部空間および発光管41の管壁を介して対向する領域において、発光領域が形成されている。このようにして、発光管41の内部に放電空間が形成されている。
また、エキシマランプ30の封止部42Aには、セラミック製のベース部材51が装着されている。このベース部材51には、給電線52,53が配設されており、この給電線52,53には、それぞれ外部電極用外部リード49の他端部および内部電極用外部リード47の他端部が接続されている。
そして、エキシマランプ30は、内部電極44が、金属箔46、内部電極用外部リード47およびベース部材51の給電線52を介して高周波電源54に接続され、外部電極48が、外部電極用外部リード49およびベース部材51の給電線53を介して接地されている。
この図の例において、発光管41は、一端に排気管残部42Bを有するものである。
【0024】
原料ガスは、酸素を含有するものである。
この原料ガスとしては、オゾン発生器10の外部雰囲気を構成するガス、すなわち空気(周囲空気)などが用いられる。
この図の例において、原料ガスとしては、外部雰囲気を構成するガス(周囲空気)が用いられている。
【0025】
また、原料ガスは、ガス流路形成部材11の内部(ガス流路)、具体的にはオゾン発生部において、その湿度が30%RH以下であることが好ましく、更に好ましくは20%RH以下である。
ガス流路形成部材11の内部を流通する原料ガスの相対湿度が30%RH以下であることにより、後述の実験例(具体的には、実験例2)から明らかなように、より高い効率でオゾンを生成することができる。
【0026】
原料ガス供給手段20は、原料ガスを構成するガスの種類、および原料ガスに必要とされる湿度条件などに応じて適宜のものが用いられる。
具体的には、原料ガスとして外部雰囲気を構成するガス(周囲空気)を用いる場合には、オゾン発生器10の外部から外部雰囲気を構成するガスを取り込み、その外部雰囲気を構成するガスを、原料ガスとして、ガス流路形成部材11の内部に導入して流通させることのできるものが用いられる。
また、原料ガスとして、外部雰囲気を構成するガス(周囲空気)よりも湿度の低いガス(乾燥空気)を用いる場合には、オゾン発生器10の外部から外部雰囲気を構成するガスを取り込み、そのガスを除湿し、得られた乾燥空気を、原料ガスとして、ガス流路形成部材の内部に導入して流通させることのできるものが用いられる。
この図の例において、原料ガス供給手段20としては、送風機21のガス流入部22Aにフレキシブルダクト24が取り付けられてなる構成のものが用いられている。この原料ガス供給手段20は、送風機21のガス流出部22Bを介してガス流路形成部材11のガス導入口12Aに接続されており、フレキシブルダクト24の一端24Aによって外部雰囲気を構成するガス(周囲空気)を取り込むための取り込み口が形成されている。
【0027】
原料ガス供給手段20による原料ガスの供給条件は、ガス流路形成部材11の内部(ガス流路)において、原料ガスが所期の流速で流動するように、ガス流路形成部材11の内径やエキシマランプ30の外径などを考慮して適宜に定められる。
【0028】
ガス流路形成部材11の内部(ガス流路)において、エキシマランプ30が配置されている領域、具体的には、エキシマランプ30の発光領域が位置されている領域(以下、「光源配置領域」ともいう。)における原料ガスの流速(以下、「光源供給ガス流速」ともいう。)は、0.1m/s以上とされる。
ここに、光源配置領域における原料ガスの流速(光源供給ガス流速)とは、ガス流路形成部材11の内周面とエキシマランプ30の外周面とによって区画される環状空間における原料ガスの流速であって、ガス流路におけるガス流量をF〔cm
3 /s〕、光源配置領域のガス流通方向に垂直な断面の断面積をD〔cm
2 〕とするとき、下記の数式(1)で算出される値である。なお、断面積Dは、ガス流路形成部材11におけるエキシマランプ30が配置されている領域の当該ガス流路形成部材11の内部空間のガス流通方向に垂直な断面の断面積から、エキシマランプ30のガス流通方向に垂直な断面の断面積を差し引くことによって算出することができる。
【0029】
数式(1):
光源供給ガス流速=F/D
【0030】
光源供給ガス流速が0.1m/s以上であることにより、後述の実験例(具体的には、実験例1)から明らかなように、高い効率でオゾンを生成することができる。
その理由は、必ずしも明確ではないが、以下のように推測される。
オゾンは熱分解されるものであり、またエキシマランプ30は点灯に伴ってその温度が上昇するものである。そのため、イオン発生部において生成されたオゾンは、エキシマランプ30からの熱によって熱分解されるおそれがある。然るに、原料ガスが、光源供給ガス流速0.1m/s以上で流動することによれば、エキシマランプ30に沿って流動する原料ガスの流れによって、生成されたオゾンを熱分解が生じる前にオゾン発生部から移動させることができる。しかも、原料ガスの流れによって、エキシマランプ30が冷却されることから、エキシマランプ30からの熱によるオゾンの熱分解の発生が抑制される。その結果、エキシマランプ30からの熱によってオゾンが熱分解されることに起因するオゾン発生量の低下を十分に抑制することができる。
【0031】
また、オゾン発生器10においては、後述の実験例(具体的には、実験例1)から明らかなように、光源供給ガス流速が或る一定の値以上(具体的には、例えば2m/s以上)となることにより、安定したオゾン発生効率が得られることとなる。
【0032】
光源供給ガス流速は、例えば原料ガス供給手段20を構成する送風機21に対する入力電圧、フレキシブルダクト24の一端24Aによって構成された取り込み口における取り込み面積などによって調整することができる。
【0033】
このような構成のオゾン発生器10においては、原料ガス供給手段20により、外部雰囲気を構成するガス(周囲空気)が、原料ガスとして、ガス導入口12Aを介してガス流路形成部材11の内部に供給される。このガス流路形成部材11の内部に供給された原料ガスは、原料ガス流通部を流動し、ガス発生部に至る。そして、ガス発生部においては、ガス排出口12Bに向かって流動する原料ガスに対して、エキシマランプ30からの光(紫外線)が照射される。これにより、原料ガス中の酸素が紫外線を吸収することによってオゾン生成反応が生じてオゾンが生成される。このようにして原料ガスに紫外線が照射されることによって生成されたオゾンを含有するオゾン含有ガスが、オゾン含有ガス流通部を流通し、ガス流路形成部材11のガス排出口12Bからオゾン発生器10の外部に排出される。
【0034】
而して、オゾン発生器10においては、紫外線光源として、波長200nm以下の紫外線を放射するエキシマランプ30が用いられていることから、当該紫外線光源からの光(紫外線)にオゾン分解波長(254nm)の光が含まれることがない。そのため、紫外線光源からの光(紫外線)が照射されることに起因して、生成されたオゾンが分解されることがない。
また、エキシマランプ30がガス流路内に配置されていると共に、当該ガス流路におけるエキシマランプ30が配置されている領域(光源配置領域)における原料ガスの流速(光源供給ガス流速)が0.1m/s以上とされていることから、オゾン発生量の低下を十分に抑制することができる。その理由は、前述したように、原料ガスの流れの作用によって生成されたオゾンが熱分解することを抑制できるためであると推測される。
従って、オゾン発生器10によれば、高い効率でオゾンを生成することができる。
【0035】
また、オゾン発生器10においては、エキシマランプ30がガス流路におけるガス流通方向に沿って配置されていることから、より高い効率でオゾンを生成することができる。
【0036】
また、オゾン発生器10においては、ガス流路を流通する原料ガスの相対湿度を30%RH以下とすることにより、より高い効率でオゾンを生成することができる。
【0037】
このオゾン発生器10は、原料ガスの供給条件およびガス流路の形状(具体的には、ガス流路形成部材11の内径および全長、エキシマランプ30の外径および全長、並びにエキシマランプ30への電気入力等)などを調整することにより、外部に排出されるオゾン含有ガスのオゾン濃度を容易に制御することができる。
従って、オゾン発生器10は、外部に排出されるオゾン含有ガスのオゾン濃度を、人体に悪影響を及ぼすことのない濃度、具体的には50ppm以下にすることができるため、居住空間用殺菌脱臭装置として好適に用いることができる。このオゾン発生器10よりなる居住空間用殺菌脱臭装置によれば、住空間雰囲気を高い効率で殺菌脱臭処理することができる。
【0038】
以上、本発明のオゾン発生器について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、紫外線光源を構成する棒状のエキシマランプは、後述の実験例(具体的には、実験例1)から明らかなように、オゾン発生効率の観点から、原料ガスの流通方向に沿って配置されていることが好ましいが、原料ガスの流通方向に対して垂直に配置されていてもよい(
図5参照)。
エキシマランプが原料ガスの流通方向に対して垂直に配置されてなるオゾン発生器においては、エキシマランプは、発光領域の全域がガス流路形成部材の内部に位置するように配置される。また、エキシマランプは、発光領域がガス流路形成部材の内部に位置していれば、他の部分(具体的には、例えば両端部)がガス流路形成部材の外部に位置していてもよい。
【0039】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0040】
〔実験例1〕
この実験例1においては、原料ガスの流速(光源供給ガス流速)とオゾン発生量(得られるオゾン含有ガスにおけるオゾン濃度)との関係、および紫外線光源(エキシマランプ)の配置状態(ガス流路内における姿勢)とオゾン発生量(得られるオゾン含有ガスにおけるオゾン濃度)との関係を確認した。
【0041】
JIS B 8330の「送風記の試験および検査方法」に準拠して、
図3および
図4に示すような実験用オゾン発生器(以下、「オゾン発生器(A)」ともいう。)を作製した。
オゾン発生器(A)は、
図3に示されているように、直円筒状のガス流路形成部材11を備えており、このガス流路形成部材11においては、一端にガス導入口12Aが形成され、他端にガス排出口12Bが形成されている。また、ガス導入口12Aには、送風機21のガス流入部22Aにフレキシブルダクト24が取り付けられてなる構成の原料ガス供給手段20が、当該送風機21のガス流出部22Bを介して接続されている。また、ガス流路形成部材11のランプ配置部11Aにおいては、
図4に示すように、当該ガス流路形成部材11の内部に、
図2に示した構成のエキシマランプ30が、発光領域の全域がガス流路形成部材11の内部に位置するように、当該エキシマランプ30の管軸(ランプ中心軸)Cが当該ガス流路形成部材11の管軸(原料ガスの流通方向)に略一致して配置されている。
図3および
図4においては、オゾン発生器(A)におけるガスの流動方向が矢印で示されている。
【0042】
このオゾン発生器(A)において、ガス流路形成部材11は、内径100mm、全長1mの塩化ビニル樹脂製の直管2本が連結された、全長2mのものであり、2本の直管の継ぎ目には、厚み30mmの格子形状(格子寸法:10mm×10mm)の整流格子61が配置されている。また、エキシマランプ30は、ガス流路形成部材11の内部において、ガス導入口12Aから500mm離間した位置を中心として配設した(
図4(a)参照)。
また、原料ガス供給手段20において、送風機21としては、「DCブロワ:MBD12−24」(オリエンタルモーター社製))を用い、フレキシブルダクト24としては、内径100mm、全長2mのアルミニウム製のものを用いた。
また、エキシマランプ30としては、発光長90mm、排気管残部42Bの突出高さ5mmのキセノンエキシマランプであって、全長(エキシマランプ30の管軸方向の長さ)10mmのベース部材51が装着されたものを用いた。
【0043】
また、オゾン発生器(A)において、
図5に示すように、エキシマランプ30が、当該エキシマランプ30の管軸(ランプ中心軸)Cがガス流路形成部材11の管軸に垂直な方向(ガス流路形成部材11の内部における原料ガスの流通方向に対して垂直な方向)に伸びるように配置されていること以外は、当該オゾン発生器(A)と同様の構成の実験用オゾン発生器(以下、「オゾン発生器(B)」ともいう。)を作製した。
このオゾン発生器(B)において、エキシマランプ30は、ガス導入口12Aから500mm離間した位置において、ガス流路形成部材11を径方向に貫通し、発光領域がガス流路形成部材11の内部に位置し、ベース部材51(
図2参照)の一部および排気管残部42B(
図2参照)がガス流路形成部材11の外周面から突出するように配設されている。そして、ベース部材51および排気管残部42Bにおける突出部分は、アルミテープによって封止されている。
図5においては、オゾン発生器(B)におけるガスの流動方向が矢印で示されている。
【0044】
作製したオゾン発生器(A)およびオゾン発生器(B)の各々に対して、外部雰囲気を構成するガス(周囲空気)よりなる原料ガスを、種々の流速(光源供給ガス流速)となるように供給した。ここに、原料ガスの流速(光源供給ガス流速)の調整は、フレキシブルダクト24の一端24Aによって構成された取り込み口の一部を遮蔽すること、あるいは送風機21に対する入力電圧を調整することによって行った。そして、ガス流路形成部材11の内部のエキシマランプ30が配置されている領域において、流通する原料ガスの湿度(相対湿度)が26%RHであることを確認し、その直後にエキシマランプ30を点灯し、当該領域においてオゾン発生量を測定した。結果を
図6および
図7に示す。この
図6および
図7においては、オゾン発生器(A)に係る結果が四角プロット(□)で示されており、オゾン発生器(B)に係る結果が菱形プロット(◇)で示されている。
また、オゾン発生器(A)においては、エキシマランプ30の点灯中に、エキシマランプ30の発光管41の管壁の温度(ランプ管壁温度)を測定すると共に、当該エキシマランプ30から放射される光の光強度を測定し、発光管41の管壁の温度が40℃である場合の光強度(初期光強度)を100%としたときの相対強度(初期光強度に対する相対強度)を算出した。結果を
図8に示す。
図8においては、ランプ管壁温度に係る結果が円プロット(○)で示されており、初期光強度に対する相対強度に係る結果が菱形プロット(◇)で示されている。
【0045】
実験例1の結果から、紫外線光源として、波長200nm以下の紫外線を放射するエキシマランプを用いる場合には、ガス流路形成部材の内部(ガス流路)における、エキシマランプ(紫外線光源)が配置されている領域における原料ガスの流速(光源供給ガス流速)を、0.1m/s以上とすることにより、高い効率でオゾンを生成できることが確認された。しかも、光源供給ガス流速が一定の値以上(具体的には、2m/s以上)となることにより、安定したオゾン発生効率が得られることが確認された。
また、紫外線光源として棒状のエキシマランプを用いる場合においては、当該エキシマランプを、ガス流路形成部材の内部における原料ガスの流通方向に沿って配置することにより、より高い効率でオゾンを生成できることが確認された。
【0046】
具体的に説明すると、
図6から明らかなように、オゾン発生器(A)およびオゾン発生器(B)においては、いずれのオゾン発生器においても、光源供給ガス流速が2.0m/sに到達するまではオゾン発生量は徐々に増加するが、光源供給ガス流速が2.0m/sを超えると、オゾン発生量は、ほぼ一定の値に安定する。そして、
図7から明らかなように、光源供給ガス流速が0.05m/sのときにはオゾン発生量が約420mg/hであるのに対し、
図6から明らかなように、光源供給ガス流速が約0.1m/sのときのオゾン発生量は、オゾン発生器(A)では810mg/h、オゾン発生器(B)では710mg/hと劇的に増加する。
また、
図6および
図7から明らかなように、オゾン発生器(A)とオゾン発生器(B)とを比較すると、オゾン発生器(A)は、オゾン発生器(B)に比してオゾン発生量が大きくなっている。
その理由については、
図8に基づいて、以下のように推測される。
エキシマランプは、前述したように、発光管の管壁の温度が上昇すると、放射される光の光強度が減少するものである。
図8から明らかなように、光源供給ガス流速が1m/sに到達するまでは、流速が増加するに従って、発光管の管壁の温度が低下してエキシマランプから放射される光の光強度が徐々に増加する。一方、原料ガス流速が1m/sを超えると、発光管の管壁の温度の低下が徐々に減少し、エキシマランプから放射される光の光強度も徐々に安定する。そして、光源供給ガス流速が2m/sである場合には、発光管の管壁の温度は61℃、エキシマランプから放射される光の強度(相対強度)は99%に落ち着く。ここに、
図8には記載していないが、光源供給ガス流速が2m/sを超える場合においても、エキシマランプの管壁の温度、エキシマランプから放射される光の光強度(相対強度)は、光源供給ガス流速が2m/sの場合と殆ど変らなかった。
以上のことから、光源供給ガス流速を0.1m/s以上とすることによってオゾンを高い効率で生成できる理由は、前述した通りである。すなわち、原料ガスの流れにより、生成されたオゾンを熱分解が生じる前にエキシマランプ近傍から移動させることができると共に、エキシマランプを冷却することができることから、エキシマランプからの熱によってオゾンが熱分解することに起因するオゾン発生量の低下を十分に抑制できるためと推測される。一方、光源供給ガス流速が0.1m/s未満である場合においては、エキシマランプ近傍におけるオゾンの停滞が顕著となり、エキシマランプからの熱によるオゾンの熱分解の影響が大きくなることから、オゾン発生量の低下が著しくなると推測される。
また、光源供給ガス流速が一定の値以上(具体的には、2m/s以上)となることによって安定したオゾン発生効率が得られる理由は、エキシマランプから放射される光の光強度が一定の値で安定したためと推測される。
また、エキシマランプをガス流路内における原料ガスの流通方向に沿って配置することによってより高い効率でオゾンを生成できる理由は、エキシマランプをガス流路内における原料ガスの流通方向に垂直に配置する場合に比して、原料ガスが停滞しにくく、エキシマランプの熱によるオゾンの熱分解の影響が小さくなるためと推測される。
【0047】
〔実験例2〕
この実験例2においては、原料ガスの湿度(相対湿度)とオゾン発生量(得られるオゾン含有ガスにおけるオゾン濃度)との関係を確認した。
【0048】
実験例1において作製したオゾン発生器(A)を用い、種々の湿度(相対湿度)の空気、具体的には、乾燥空気、外部雰囲気を構成するガス(周囲空気)、および必要に応じて乾燥空気または周囲空気に超音波式加湿器からのミストを混合した調整ガスを、ガス流路形成部材の内部において、エキシマランプが配置されている領域における原料ガスの流速(光源供給ガス流速)が0.9m/sとなるように供給し、当該領域においてオゾン発生量を測定した。結果を
図9に示す。
【0049】
実験例2の結果から、原料ガスの相対湿度が30%RH以下である場合には、高い効率でオゾンを生成でき、特に原料ガスの相対湿度が20%RH以下である場合には、より高い効率でオゾンを生成できることが確認された。
その理由については、以下のように推測される。
一般に、水は酸素に比して波長200nm以下の紫外線に対する吸収係数が大きいものである。そのため、原料ガスにおいては、湿度が高くなるに従って、水分(水)に吸収される紫外線量が大きくなり、それに伴って酸素に吸収される紫外線量が小さくなってオゾン発生量が小さくなる。また、紫外線を吸収した酸素は、酸素原子に光分解され、その酸素原子が酸素と反応(結合)することによってオゾンを生成するものであるが、その一方で、光分解によって生じた酸素原子は、水分(水分子)と反応することによってヒドロキシラジカル(OHラジカル)生じさせるものでもある。そして、原料ガスが湿度の高いものである場合には、酸素の光分解によって生じた酸素原子と水分との反応(ヒドロキシラジカル生成反応)が、酸素原子と酸素との反応(オゾン生成反応)より支配的になってオゾン発生量が小さくなる。しかも、ヒドロキシラジカルはオゾンの分解に関与するものである。然るに、原料ガスを、相対湿度が30%RH以下の低湿度のものとすることによれば、原料ガスが水分を含有するものであることに起因するオゾン発生量の低下を十分に抑制することができる。
【解決手段】オゾン発生器は、酸素を含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、当該原料ガス供給手段からの原料ガスが流通されるガス流路を形成するガス流路形成部材と、当該ガス流路内に配置された、紫外線を放射する紫外線光源とを備え、当該ガス流路を流動する原料ガスに当該紫外線光源からの紫外線を照射することによって原料ガス中の酸素に紫外線を吸収させてオゾンを生成するものであって、前記紫外線光源は、波長200nm以下の紫外線を放射するエキシマランプよりなるものであり、前記ガス流路において、紫外線光源が配置されている領域における原料ガスの流速が0.1m/s以上であることを特徴とする。