(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記壁体連結フーチングブロックを法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、下部の幅が上部の幅よりも大きく、前記壁体連結フーチングブロックは法線方向に張り出した下部張出し部を有し、前記間詰めフーチングブロックを法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、上部の幅が下部の幅よりも大きく、前記間詰めフーチングブロックは法線方向に張り出した上部張出し部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部と前記間詰めフーチングブロックの前記上部張出し部は略鉛直方向に配置された鋼製のアンカー部材で連結されていることを特徴とする請求項3に記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部の上面には略鉛直方向に突出した凸部または略鉛直方向に凹んだ凹部が設けられており、前記間詰めフーチングブロックの前記上部張出し部の下面には、前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部の上面に設けられた前記凸部または前記凹部と嵌合する凹部または凸部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記壁体連結フーチングブロックを法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、下部の幅が上部の幅よりも大きく、前記壁体連結フーチングブロックは法線方向に張り出した下部張出し部を有し、前記間詰めフーチングブロックの形状は、略法直方向に細長い略直方体形状であり、
前記壁体連結フーチングブロックと法線方向に隣り合うように前記間詰めフーチングブロックが配置されており、該間詰めフーチングブロックに隣接する前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部の上方には現場打ちコンクリートが打設されており、
前記間詰めフーチングブロックと前記現場打ちコンクリートとの境界面を挿通するように略法線方向にアンカー部材が設けられており、さらに、前記壁体連結フーチングブロックと前記現場打ちコンクリートとの境界面を挿通するように略法線方向にアンカー部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記壁体連結フーチングブロックおよび前記間詰めフーチングブロックの形状は、略法直方向に細長い略直方体形状であり、前記壁体連結フーチングブロックの法線方向と略直交する側面の下部には、該側面と略直交する方向に突出した凸部が設けられており、前記間詰めフーチングブロックの法線方向と略直交する側面の下部には、前記壁体連結フーチングブロックの前記側面の下部に設けられた前記凸部と嵌合する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記突出さや管の部位のうち前記壁体連結フーチングブロックのコンクリート部に埋め込まれた部位の外表面には、略水平方向に突出するようにダイヤフラムが設けられており、該ダイヤフラムに前記水平方向骨格部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記突出さや管は鋼管であり、前記ダイヤフラムは鋼板であり、前記水平方向骨格部材はI形の鋼材であることを特徴とする請求項8に記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記突出さや管と該突出さや管が差し込まれた前記壁体さや管との間隙にはグラウト材が充填され、前記芯材と該芯材が差し込まれた前記突出さや管との間隙にはグラウト材が充填され、前記芯材と該芯材が内部を挿通する前記壁体さや管との間隙にはグラウト材が充填されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記プレキャスト壁体は、その法線方向の両端部の壁厚がそれ以外の部位の壁厚よりも厚くなっており、前記プレキャスト壁体の前記両端部に前記壁体さや管が備えられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の重力式プレキャスト防潮堤。
前記プレキャストフーチングは、その下面に、略法線方向に延びる、下方に突出した突出部を有していることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の重力式プレキャスト防潮堤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、生コン使用量の低減に寄与するとともに、現場での施工性の向上と工期の短縮に寄与することができる重力式プレキャスト防潮堤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の重力式プレキャスト防潮堤により、前記課題を解決したものである。
【0011】
即ち、本発明に係る重力式プレキャスト防潮堤の第1の態様は、支持地盤に支持されて直接基礎となるプレキャストフーチングと、前記プレキャストフーチングの上方に配置され、面内方向に貫通する壁体貫通孔を有し、該壁体貫通孔の内面に壁体さや管を有するプレキャスト壁体と、前記プレキャストフーチングおよび前記プレキャスト壁体を連結する芯材と、を備えた重力式プレキャスト防潮堤であって、前記プレキャストフーチングは法線方向に分割されていて、前記プレキャストフーチングは、前記プレキャスト壁体との連結部を有する壁体連結フーチングブロックと、前記壁体連結フーチングブロック同士の間に配置される間詰めフーチングブロックとを有してなり、前記壁体連結フーチングブロックは少なくとも上方に開口した上方開口孔を有し、該上方開口孔の内面には前記壁体連結フーチングブロックのコンクリート部の上面よりも上方の位置まで延伸している突出さや管が備えられ、前記プレキャスト壁体の前記壁体さや管には前記突出さや管が差し込まれ、前記突出さや管には前記芯材が差し込まれ、前記突出さや管に差し込まれた前記芯材は、前記突出さや管の上端よりも上方に延伸していて前記壁体さや管の内部を挿通して前記プレキャスト壁体の天端付近に達しており、前記突出さや管は該突出さや管が差し込まれた前記壁体さや管と一体化しており、前記芯材は該芯材が差し込まれた前記突出さや管および該芯材が挿通する前記壁体さや管と一体化しており、前記壁体連結フーチングブロックは、その内部に、略法直方向に水平方向骨格部材を備えていて、前記水平方向骨格部材は前記突出さや管と連結されており、さらに、法線方向に隣り合う前記壁体連結フーチングブロックと前記間詰めフーチングブロックとは、法直方向の外力が前記プレキャスト壁体に作用して前記重力式プレキャスト防潮堤が転倒または滑動しようとする際に生じる力を相互に伝達できるように連結されていることを特徴とする重力式プレキャスト防潮堤である。
【0012】
ここで、法線方向とは、前記プレキャスト壁体の壁面の延長方向のことであり、前記重力式プレキャスト防潮堤の延びる方向(海岸線にほぼ沿う方向となることが多い。)のことである。
【0013】
また、法直方向とは、法線方向と直交する水平方向のことである。
【0014】
また、法直方向の外力とは、前記プレキャスト壁体の壁面(想定される外力を直接に受ける外面)に向かう方向の法直方向の外力のことである。
【0015】
また、「前記水平方向骨格部材は前記突出さや管と連結されており」とは、前記水平方向骨格部材が前記突出さや管と接触して直接的に連結されている場合だけでなく、他の部材を介して前記水平方向骨格部材が前記突出さや管と間接的に連結されている場合も含む概念である。
【0016】
本発明に係る重力式プレキャスト防潮堤の第2の態様は、支持地盤に支持されて直接基礎となるプレキャストフーチングと、前記プレキャストフーチングの上方に配置され、面内方向に貫通する壁体貫通孔を有し、該壁体貫通孔の内面に壁体さや管を有する複数のプレキャスト壁体と、前記プレキャストフーチングおよび前記複数のプレキャスト壁体を連結する芯材と、を備えた重力式プレキャスト防潮堤であって、前記プレキャストフーチングは法線方向に分割されていて、前記プレキャストフーチングは、前記プレキャスト壁体との連結部を有する壁体連結フーチングブロックと、前記壁体連結フーチングブロック同士の間に配置される間詰めフーチングブロックとを有してなり、前記壁体連結フーチングブロックは少なくとも上方に開口した上方開口孔を有し、該上方開口孔の内面には前記壁体連結フーチングブロックのコンクリート部の上面よりも上方の位置まで延伸している突出さや管が備えられ、前記プレキャスト壁体は、前記壁体貫通孔同士が連結するように鉛直方向に複数積み重ねられ、鉛直方向に複数積み重ねられた前記プレキャスト壁体のうち少なくとも最下段の前記プレキャスト壁体の前記壁体さや管には前記突出さや管が差し込まれ、該突出さや管には前記芯材が差し込まれ、前記突出さや管に差し込まれた前記芯材は、前記突出さや管の上端よりも上方に延伸していて前記壁体さや管の内部を挿通して、鉛直方向に複数積み重ねられた前記プレキャスト壁体の最上段の前記プレキャスト壁体の天端付近に達しており、前記突出さや管は該突出さや管が差し込まれた前記壁体さや管と一体化しており、前記芯材は該芯材が差し込まれた前記突出さや管および該芯材が挿通する前記壁体さや管と一体化しており、前記壁体連結フーチングブロックは、その内部に、略法直方向に水平方向骨格部材を備えていて、前記水平方向骨格部材は前記突出さや管と連結されており、さらに、法線方向に隣り合う前記壁体連結フーチングブロックと前記間詰めフーチングブロックとは、法直方向の外力が前記プレキャスト壁体に作用して前記重力式プレキャスト防潮堤が転倒または滑動しようとする際に生じる力を相互に伝達できるように連結されていることを特徴とする重力式プレキャスト防潮堤である。
【0017】
前記壁体連結フーチングブロックを法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、下部の幅が上部の幅よりも大きく、前記壁体連結フーチングブロックは法線方向に張り出した下部張出し部を有し、前記間詰めフーチングブロックを法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、上部の幅が下部の幅よりも大きく、前記間詰めフーチングブロックは法線方向に張り出した上部張出し部を有することが好ましい。
【0018】
前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部と前記間詰めフーチングブロックの前記上部張出し部は略鉛直方向に配置された鋼製のアンカー部材で連結されていてもよい。
【0019】
前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部の上面には略鉛直方向に突出した凸部または略鉛直方向に凹んだ凹部が設けられており、前記間詰めフーチングブロックの前記上部張出し部の下面には、前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部の上面に設けられた前記凸部または前記凹部と嵌合する凹部または凸部が設けられているように構成してもよい。
【0020】
前記壁体連結フーチングブロックを法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、下部の幅が上部の幅よりも大きく、前記壁体連結フーチングブロックは法線方向に張り出した下部張出し部を有し、前記間詰めフーチングブロックの形状は、略法直方向に細長い略直方体形状であり、前記壁体連結フーチングブロックと法線方向に隣り合うように前記間詰めフーチングブロックが配置されており、該間詰めフーチングブロックに隣接する前記壁体連結フーチングブロックの前記下部張出し部の上方には現場打ちコンクリートが打設されており、前記間詰めフーチングブロックと前記現場打ちコンクリートとの境界面を挿通するように略法線方向にアンカー部材が設けられており、さらに、前記壁体連結フーチングブロックと前記現場打ちコンクリートとの境界面を挿通するように略法線方向にアンカー部材が設けられているように構成してもよい。
【0021】
前記壁体連結フーチングブロックおよび前記間詰めフーチングブロックの形状は、略法直方向に細長い略直方体形状であり、前記壁体連結フーチングブロックの法線方向と略直交する側面の下部には、該側面と略直交する方向に突出した凸部が設けられており、前記間詰めフーチングブロックの法線方向と略直交する側面の下部には、前記壁体連結フーチングブロックの前記側面の下部に設けられた前記凸部と嵌合する凹部が設けられているように構成してもよい。
【0022】
ここで、側面の下部とは、当該側面の高さ方向の中心位置よりも下方の領域のことである。
【0023】
前記突出さや管の部位のうち前記壁体連結フーチングブロックのコンクリート部に埋め込まれた部位の外表面には、略水平方向に突出するようにダイヤフラムが設けられており、該ダイヤフラムに前記水平方向骨格部材が取り付けられているように構成してもよい。
【0024】
前記突出さや管を鋼管とし、前記ダイヤフラムを鋼板とし、前記水平方向骨格部材をI形の鋼材としてもよい。
【0025】
前記芯材は鋼管としてもよい。
【0026】
前記芯材を、鋼板からビルドアップして製作された鋼材としてもよいし、または形鋼としてもよい。
【0027】
前記突出さや管と該突出さや管が差し込まれた前記壁体さや管との間隙にはグラウト材が充填され、前記芯材と該芯材が差し込まれた前記突出さや管との間隙にはグラウト材が充填され、前記芯材と該芯材が内部を挿通する前記壁体さや管との間隙にはグラウト材が充填されているようにしてもよい。
【0028】
前記プレキャスト壁体は、その法線方向の両端部の壁厚がそれ以外の部位の壁厚よりも厚くなっており、前記プレキャスト壁体の前記両端部に前記壁体さや管が備えられているようにしてもよい。
【0029】
前記プレキャストフーチングは、その下面に、略法線方向に延びる、下方に突出した突出部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る重力式プレキャスト防潮堤は、生コン使用量の低減に寄与するとともに、現場での施工性の向上と工期の短縮に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10の斜視図である。
図1においては、重力式プレキャスト防潮堤10の内部の構造を示すため、一部の部位についてはコンクリートを描いていない。
図2は、本発明の実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10の鉛直断面図(壁体連結フーチングブロック14の法線方向の中心位置を通るようにプレキャスト壁体60の法線方向と直交する鉛直面で重力式プレキャスト防潮堤10を切断して得られた鉛直断面図)である。
図3は、重力式プレキャスト防潮堤10のプレキャストフーチング12の一部を構成する部材である壁体連結フーチングブロック14を示す斜視図であり、
図4は、プレキャストフーチング12の一部を構成する部材である第1の間詰めフーチングブロック16を示す斜視図であり、
図5は、プレキャストフーチング12の一部を構成する部材である第2の間詰めフーチングブロック18を示す斜視図である。
図6は、壁体連結フーチングブロック14に用いられているフーチング鋼材20を示す斜視図である。
図7は、プレキャストフーチング12をプレキャスト壁体60の法線方向と直交する水平方向から見た側面図である。
図8は、重力式プレキャスト防潮堤10のプレキャスト壁体60を示す斜視図であり、
図9は、プレキャスト壁体60に用いられている壁体鋼材62を示す斜視図である。
図10は、法線方向と平行な鉛直面でプレキャストフーチング12の壁体連結フーチングブロック14の部位を切断して得られた鉛直断面図である。
【0034】
(本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10の構成)
本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10は、プレキャストフーチング12と、4段に積まれたプレキャスト壁体60と、プレキャストフーチング12および4段に積まれたプレキャスト壁体60を連結する芯材80と、を備えてなる。本発明の実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10の延びる方向は、プレキャスト壁体60の法線方向(以下、単に法線方向と記すことがある。)であり、海岸線にほぼ沿う方向となることが多い。
【0035】
プレキャストフーチング12は、
図1に示すように、重力式プレキャスト防潮堤10の延びる方向(プレキャスト壁体60の法線方向)に分割されている。具体的には、プレキャストフーチング12は、プレキャスト壁体60との連結部を有する壁体連結フーチングブロック14と、壁体連結フーチングブロック14同士の間に配置される第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18とを有している。
【0036】
第1の間詰めフーチングブロック16は、
図1に示すように、プレキャスト壁体60の法線方向と直交する水平方向から見て、プレキャスト壁体60の中央部の下方に配置されており、第2の間詰めフーチングブロック18は、
図1に示すように、プレキャスト壁体60の法線方向と直交する水平方向から見て、プレキャスト壁体60の法線方向に隣り合うプレキャスト壁体60の隣り合う端部同士の下方に配置されている。
【0037】
壁体連結フーチングブロック14(
図3参照)は、工場で製作されるプレキャスト部材であり、
図6に示すフーチング鋼材20の周囲に所定の型枠を配置して工場でコンクリートを打設してコンクリート部30を形成して製作されるプレキャスト部材である。
【0038】
図3および
図7に示すように、壁体連結フーチングブロック14を法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、下部の幅が上部の幅よりも大きく、壁体連結フーチングブロック14は法線方向に張り出した下部張出し部14Aを有する。下部張出し部14Aの上面には、
図3に示すように、アンカーボルト40(
図10参照)が配置される連結用孔14Bが所定の間隔で設けられている。連結用孔14Bは、その長手方向が上下方向となるように設けられた孔である。
【0039】
第1の間詰めフーチングブロック16は、工場で製作されるプレキャスト部材である。
図4および
図7に示すように、第1の間詰めフーチングブロック16を法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、上部の幅が下部の幅よりも大きく、第1の間詰めフーチングブロック16は法線方向に張り出した上部張出し部16Aを有する。上部張出し部16Aには、
図4に示すように、アンカーボルト40(
図10参照)が配置される連結用孔16Bが所定の間隔で設けられている。連結用孔16Bは、上部張出し部16Aを上下方向に貫通する貫通孔である。
【0040】
第2の間詰めフーチングブロック18は、工場で製作されるプレキャスト部材である。
図5および
図7に示すように、第2の間詰めフーチングブロック18を法線方向と平行な鉛直面で切断して得られる断面形状は、上部の幅が下部の幅よりも大きく、第2の間詰めフーチングブロック18は法線方向に張り出した上部張出し部18Aを有する。上部張出し部18Aには、
図5に示すように、アンカーボルト40(
図10参照)が配置される連結用孔18Bが所定の間隔で設けられている。連結用孔18Bは、上部張出し部18Aを上下方向に貫通する貫通孔である。
【0041】
壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aと、第1の間詰めフーチングブロック16の上部張出し部16Aおよび第2の間詰めフーチングブロック18の上部張出し部18Aとは、
図1および
図7に示すようにお互いにかみ合う形状になっている。また、
図1および
図7に示すように、壁体連結フーチングブロック14、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18をお互いにかみ合うように配置すると、壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aの連結用孔14Bと第1の間詰めフーチングブロック16の上部張出し部16Aの連結用孔16Bとは位置が一致(連結用孔14Bと連結用孔16Bとが連通)し、壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aの連結用孔14Bと第2の間詰めフーチングブロック18の上部張出し部18Aの連結用孔18Bとは位置が一致(連結用孔14Bと連結用孔18Bとが連通)するように、連結用孔14B、16B、18Bは設けられている。
【0042】
図1および
図7に示すように、壁体連結フーチングブロック14、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18をお互いにかみ合うように配置した後、連通した連結用孔14Bと連結用孔16Bおよび連通した連結用孔14Bと連結用孔18Bにアンカーボルト40(
図10参照)を差し込み、さらにグラウト材44(
図10参照)を充填して、壁体連結フーチングブロック14、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18を連結して、プレキャストフーチング12を完成させる。アンカーボルト40は、その長手方向が略鉛直方向になる。
【0043】
壁体連結フーチングブロック14はフーチング鋼材20を有しており、フーチング鋼材20の突出さや管24を介してプレキャスト壁体60と強固に連結しているので、上方から加わるプレキャスト壁体60の重量を壁体連結フーチングブロック14の全底面積で地盤に伝えることができる。
【0044】
一方、第1の間詰めフーチングブロック16は上部張出し部16Aを有し、第2の間詰めフーチングブロック18は上部張出し部18Aを有していて、上部張出し部16A、18Aは壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aの上方に配置されて、下部張出し部14Aとのかみ合わせ構造を構成しているが、第1の間詰めフーチングブロック16の上部張出し部16Aおよび第2の間詰めフーチングブロック18の上部張出し部18Aは壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aの上方に配置されているため、プレキャスト壁体60および壁体連結フーチングブロック14の自重による鉛直方向下向きの荷重は、壁体連結フーチングブロック14から第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18には伝達されない。
【0045】
また、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18は、プレキャスト壁体60との連結部を有しないため、重力式プレキャスト防潮堤10の支持力の算出の際に、プレキャスト壁体60の自重による鉛直方向下向きの荷重が第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18に伝達され、その伝達された荷重が第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の底面から地盤に伝達されるものとして設計を行うと、危険側の設計となる。即ち、重力式プレキャスト防潮堤10の支持力の算出の際に、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18も重力式プレキャスト防潮堤10の支持力に寄与するものとして計算を行うと、危険側の設計となる。
【0046】
このため、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10においては、全体の自重に対する支持力は壁体連結フーチングブロック14のみで確保するように設計し、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の支持力への寄与はゼロとしている。
【0047】
他方、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10の転倒と滑動に対する設計計算において、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を見込むことができるように工夫した。
【0048】
具体的には、
図1および
図7に示すように、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18との連結にかみ合わせ構造を採用するとともに、該かみ合わせ構造の部位に略鉛直方向に鋼製のアンカーボルト40(
図10参照)を配置して、壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aと、第1の間詰めフーチングブロック16の上部張出し部16Aおよび第2の間詰めフーチングブロック18の上部張出し部18Aとを連結するようにした。
【0049】
重力式プレキャスト防潮堤10が法直方向の外力を受けて転倒しようとするときは、壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aが、第1の間詰めフーチングブロック16の上部張出し部16Aおよび第2の間詰めフーチングブロック18の上部張出し部18Aに引っ掛かるため、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を、転倒に対する安定モーメントの算出の際に計算に見込むことができる。このように、法直方向の外力によって重力式プレキャスト防潮堤10が転倒しようとする際には、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18とのかみ合わせ構造が、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18との間の力の伝達に効果を発揮する。
【0050】
重力式プレキャスト防潮堤10が法直方向の外力を受けて法直方向に滑動しようとするときは、アンカーボルト40を介して、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18との間で、法直方向の力がせん断力として伝達されるので、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を、重力式プレキャスト防潮堤10の滑動に対する抵抗として計算に見込むことができる。即ち、重力式プレキャスト防潮堤10の全体の地盤面との摩擦力の算出の際に、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を計算に含めることができる。このように、法直方向の外力によって重力式プレキャスト防潮堤10が法直方向に滑動しようとする際には、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18とのかみ合わせ構造の部位に略鉛直方向に配置された鋼製のアンカーボルト40が、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18との間の力の伝達に効果を発揮する。
【0051】
以上説明したように、重力式プレキャスト防潮堤10においては、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18とのかみ合わせ構造、および該かみ合わせ構造の部位に略鉛直方向に配置した鋼製のアンカーボルト40によって、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を、重力式プレキャスト防潮堤10の転倒と滑動に対する設計計算(想定される法直方向の外力(例えば津波の水平波力)に対する転倒と滑動についての設計計算)に見込むことができるようにした。
【0052】
重力式プレキャスト防潮堤10が法直方向の外力を受けて転倒しようとする際に、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を壁体連結フーチングブロック14に十分に伝達する観点から、壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aの厚さ(上下方向の高さ)は、壁体連結フーチングブロック14の厚さ(上下方向の高さ)の40%〜60%であることが好ましく、45%〜55%であることがより好ましく、第1の間詰めフーチングブロック16の上部張出し部16Aの厚さ(上下方向の高さ)は、第1の間詰めフーチングブロック16の厚さ(上下方向の高さ)の40%〜60%であることが好ましく、45%〜55%であることがより好ましく、第2の間詰めフーチングブロック18の上部張出し部18Aの厚さ(上下方向の高さ)は、第2の間詰めフーチングブロック18の厚さ(上下方向の高さ)の40%〜60%であることが好ましく、45%〜55%であることがより好ましい。
【0053】
なお、アンカーボルト40の径および設置本数については、重力式プレキャスト防潮堤10が法直方向の外力を受けて法直方向に滑動しようとするときに、壁体連結フーチングブロック14と、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18との間に加わるせん断力(想定される法直方向の外力によって生じるせん断力)を伝達するのに必要な鋼材断面積を算出して、定めればよい。
【0054】
図2および
図3に示すように、壁体連結フーチングブロック14は、上方に開口した上方開口孔32を有し、該上方開口孔32の内面には壁体連結フーチングブロック14のコンクリート部30の上面よりも上方の位置まで延伸している突出さや管24が備えられている。
【0055】
壁体連結フーチングブロック14のフーチング鋼材20は、
図6に示すように、水平方向骨格部材22と、突出さや管24と、ダイヤフラム26とを有してなる。水平方向骨格部材22のプレキャスト壁体60側の端部には、ダイヤフラム26を介して突出さや管24が取り付けられている。具体的には、ダイヤフラム26は突出さや管24の外周面に水平方向に突出するように溶接で取り付けられており、水平方向骨格部材22のプレキャスト壁体60側の端部は、ダイヤフラム26に溶接で取り付けられている。
【0056】
水平方向骨格部材22は、断面形状がI形の鋼材であり、その長手方向が略法直方向となるように配置されているため、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10が大津波等から受けた外力を地盤に伝達する上で大きな役割を果たし、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10が防潮堤としての機能を発揮する上で重要な部材である。また、突出さや管24は鋼管である。
【0057】
水平方向骨格部材22は、必要な機械的特性(強度、剛性等)を有していれば、断面形状がI形の鋼材でなくてもよく、材質および形状は特には限定されない。また、突出さや管24は、必要な機械的特性(強度、剛性等)を有していれば、鋼管でなくてもよく、材質および形状は特には限定されない。
【0058】
プレキャスト壁体60は、
図8に示すように、面内方向に貫通する壁体貫通孔72を有し、壁体貫通孔72の内面に壁体さや管64を有しており、プレキャストフーチング12の上方に配置されて、防潮堤の壁体となる部材である。
【0059】
プレキャスト壁体60は、工場で製作されるプレキャスト部材であり、
図9に示す壁体鋼材62の周囲に所定の型枠を配置して工場でコンクリートを打設してコンクリート部70を形成して製作されるプレキャスト部材である。
【0060】
プレキャスト壁体60の壁体鋼材62は、
図9に示すように、壁体さや管64と、法線方向部材66とを有してなる。
図9に示すように、法線方向部材66の両端部に壁体さや管64が配置され、壁体さや管64と法線方向部材66とは溶接で連結されている。壁体さや管64は鋼管であり、法線方向部材66はI形の鋼材である。
【0061】
壁体さや管64は、必要な機械的特性(強度、剛性等)を有していれば、鋼管でなくてもよく、材質および形状は特には限定されない。また、法線方向部材66は、必要な機械的特性(強度、剛性等)を有していれば、断面形状がI形の鋼材でなくてもよく、材質および形状は特には限定されない。
【0062】
プレキャスト壁体60は、
図1および
図8に示すように、その法線方向の両端部の壁厚がそれ以外の部位の壁厚よりも厚くなっており、プレキャスト壁体60の両端部に壁体さや管64が備えられている。プレキャスト壁体60は、壁体さや管64を設ける両端部のみ壁厚を厚くしており、それ以外の部位は壁厚が厚くなっていないので、プレキャスト壁体60全体の重量が増加することが抑制されている。
【0063】
プレキャスト壁体60は、壁体貫通孔72同士が連結するように鉛直方向に4段積み重ねられ、鉛直方向に4段積み重ねられたプレキャスト壁体60のうち少なくとも最下段のプレキャスト壁体60の壁体さや管64には突出さや管24が差し込まれ、該突出さや管24には芯材80が差し込まれている。
【0064】
また、プレキャスト壁体60は、想定される外力を直接に受ける外面を、想定される外力の進行方向(例えば、大津波が進行してくると予想される方向)に向けるように配置されており、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10においては、
図1の左側上方が海側となっており、
図2の左側が海側となっている。
図1に示すように、複数の重力式プレキャスト防潮堤10を水平方向に連続するように配置することで、例えば海岸線に沿って延びる防潮堤を構築することができる。
【0065】
突出さや管24に差し込まれた芯材80は、突出さや管24の上端よりも上方に延伸していて壁体さや管64の内部を挿通して、鉛直方向に4段積み重ねられたプレキャスト壁体60の最上段のプレキャスト壁体60の天端付近に達している。
【0066】
突出さや管24と該突出さや管24が差し込まれた壁体さや管64との間隙にはグラウト材が充填されて一体化され、芯材80と該芯材80が差し込まれた突出さや管24との間隙にはグラウト材が充填されて一体化され、芯材80と該芯材80が内部を挿通する壁体さや管64との間隙にはグラウト材が充填されて一体化されており、これにより、プレキャストフーチング12の壁体連結フーチングブロック14および4段に積まれたプレキャスト壁体60は一体化されている。この構造物にさらに第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18を加えた構造物が、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10である。なお、実際の施工においては、後に施工方法のところで詳述するように、法線方向に間隔を開けて隣り合う壁体連結フーチングブロック14同士の間に第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18を配置して、それらを壁体連結フーチングブロック14と所定の連結状態となるようにアンカーボルト40で連結してプレキャストフーチング12を完成させた後に、芯材80を突出さや管24内に設置し、突出さや管24内に設置した芯材80に壁体さや管64を挿通させてプレキャストフーチング12の上方にプレキャスト壁体60を所定の段数積み上げ、さらに前述したようにそれらをグラウト材で一体化させて、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10を構築している。
【0067】
本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10においては、壁体連結フーチングブロック14と最下段のプレキャスト壁体60との連結部の水平断面には、突出さや管24、壁体さや管64、および芯材80が存在して多重管構造となっており、壁体連結フーチングブロック14と最下段のプレキャスト壁体60との連結部の鋼材量が多くなっているため、壁体連結フーチングブロック14と最下段のプレキャスト壁体60との連結部において、プレキャスト壁体60の厚さを厚くしなくても、壁体連結フーチングブロック14とプレキャスト壁体60との間の断面力伝達は十分に行われる。したがって、壁体連結フーチングブロック14は、プレキャスト壁体60との間で断面力の十分な伝達を可能にする連結部を有する。
【0068】
芯材80は、壁体連結フーチングブロック14および4段に積まれたプレキャスト壁体60を連結する役割を有する。芯材80は鋼管である。芯材80は、壁体連結フーチングブロック14および4段に積まれたプレキャスト壁体60を連結するのに十分な断面力伝達能力を有していれば、鋼管でなくてもよく、その材質や形状は特には限定されない。具体的には例えば、芯材80として、鋼板からビルドアップして製作された鋼材または形鋼を用いることもできる。鋼板からビルドアップして製作された鋼材や形鋼を芯材80に用いる場合、その断面形状も特には限定されないが、例えば断面がH形のものを用いることもできる。また、芯材80は、1つの部材のみで形成されていなくてもよく、想定される断面力の伝達を十分になすことができるのであれば、複数の部材を溶接や機械的な接合により連結させたものであってもよい。
【0069】
なお、プレキャストフーチング12の下面に、プレキャスト壁体60の略法線方向に延びる、下方に突出した突出部(図示省略)を設けてもよい。このような突出部を設けることにより、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10が大津波等の外力を受けた際の滑動を防止する機能を強化することができる。
【0070】
また、以上説明した本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10においては、プレキャスト壁体60を鉛直方向に4段積むように構成したが、プレキャスト壁体60を積む段数は4段に限定されているわけではなく、設置する場所や要求される性能等に応じて、1〜3段にしてもよく、あるいは5段以上にしてもよい。
【0071】
また、壁体連結フーチングブロック14において、突出さや管24を水平方向骨格部材22のプレキャスト壁体60側の端部に配置するようにしたが、突出さや管24を配置する位置はこの位置に限定されるわけではなく、設計条件に応じて適宜に設定することができ、水平方向骨格部材22の端部以外(例えば、水平方向骨格部材22の中央部付近)に突出さや管24を配置してもよい。水平方向骨格部材22の端部以外(例えば、水平方向骨格部材22の中央部付近)に突出さや管24を配置する場合、突出さや管24は、例えば
図11(フーチング鋼材20の変形例であるフーチング鋼材21を示す斜視図)に示すように、2つの水平方向骨格部材22の間に挟まれるように配置されることになる。
【0072】
また、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を壁体連結フーチングブロック14に伝達するのに必要な量の鉄筋(例えば、
図1および
図7に示すかみ合わせ構造におけるかみ合わせ部位で破壊が起こることを防止する鉄筋)を、壁体連結フーチングブロック14、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の中の所定の位置に配置している。
【0073】
また、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10においては、工場製作の段階で、壁体連結フーチングブロック14、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18にそれぞれ連結用孔14B、16B、18Bを設けたが、安全が確認できれば、アンカーボルト40を挿通させる孔は工場製作時には設けず、現場削孔で設けるようにしてもよい。
【0074】
(本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10の効果)
本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10は、フーチング部(壁体連結フーチングブロック14)と壁体部(最下段のプレキャスト壁体60)との連結部に多重管構造を採用してスリムな構造を実現するとともに、プレキャストフーチング12を法線方向に分割して複数のフーチングブロック(壁体連結フーチングブロック14、第1の間詰めフーチングブロック16、第2の間詰めフーチングブロック18)とすることにより、重力式プレキャスト防潮堤10のフーチング部および壁体部の両方を運搬可能な状態にプレキャスト化することを実現した。
【0075】
一方、スリムな構造を実現することで重量が小さくなっており、また、プレキャストフーチング12を法線方向に分割することでフーチング部の一体性が損なわれているので、外力作用時の重力式防潮堤としての安定度に欠ける可能性があることが懸念される。
【0076】
この懸念に対しては、
図1および
図7に示すかみ合わせ構造を採用することにより、重力式プレキャスト防潮堤10が転倒しようとする際に、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重が壁体連結フーチングブロック14に十分に伝達されるようにして、重力式プレキャスト防潮堤10の転倒に対する安定モーメントの算出に際して第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を計算に見込めるようにした。
【0077】
また、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18をアンカーボルト40を介して壁体連結フーチングブロック14と連結させた。これにより、アンカーボルト40を介して、壁体連結フーチングブロック14と第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18との間で、法直方向の力がせん断力として伝達されるようにして、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を、重力式プレキャスト防潮堤10の滑動に対する抵抗として計算に見込むことができるようにした。
【0078】
以上説明したように、法直方向の外力がプレキャスト壁体60に作用して、重力式プレキャスト防潮堤10が転倒または滑動しようとする際に生じる力を相互に伝達できるように、法線方向に隣り合う壁体連結フーチングブロック14と間詰めフーチングブロック16、18とを連結することで、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18の自重を重力式プレキャスト防潮堤10の転倒と滑動に対する設計計算(想定される法直方向の外力(例えば津波の水平波力)に対する転倒と滑動についての設計計算)に見込むことができるようにし、重力式防潮堤としての一定の安定度も確保した。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10は、フーチング部および壁体部の両方を運搬可能な状態にプレキャスト化することを実現することで、生コン使用量の低減に寄与するとともに、現場での施工性の向上と工期の短縮に寄与することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10は、フーチングブロック(壁体連結フーチングブロック14、第1の間詰めフーチングブロック16および第2の間詰めフーチングブロック18)同士のかみ合わせ構造およびアンカーボルト40を介しての連結構造を採用することにより、重力式防潮堤としての一定の安定度も確保した。
【0081】
(重力式プレキャスト防潮堤10の設置手順)
次に、重力式プレキャスト防潮堤10の設置手順の一例について説明する。ここまでの重力式プレキャスト防潮堤10についての説明では、プレキャスト壁体60を4段に積んだものとして説明を行ってきたが、以降の重力式プレキャスト防潮堤10の設置手順の一例についての説明では、プレキャスト壁体60を3段に積むものとして説明を行う。また、ここまでの重力式プレキャスト防潮堤10についての説明では、壁体連結フーチングブロック14において、突出さや管24を水平方向骨格部材22のプレキャスト壁体60側の端部に配置した場合について説明を行ってきたが、以降の重力式プレキャスト防潮堤10の設置手順の一例についての説明では、水平方向骨格部材22の中央部付近に突出さや管24を配置(例えば
図11参照)したものとして説明を行う。重力式プレキャスト防潮堤10を設置する際には、例えば、次のような手順で施工を行うことができる。
【0082】
(1)重力式プレキャスト防潮堤10の設置予定地点において、重力式プレキャスト防潮堤10の設置に支障となる既設物の撤去を行う。
【0083】
(2)重力式プレキャスト防潮堤10の設置予定地点に捨てコンクリート90を敷設する(
図12参照)。
【0084】
(3)捨てコンクリート90の上に壁体連結フーチングブロック14を設置する(
図13参照)。
【0085】
(4)間詰めフーチングブロック16、18をクレーン92で吊り上げて、壁体連結フーチングブロック14の間に設置し、さらに、アンカーボルト40を用いて壁体連結フーチングブロック14と第1および第2の間詰めフーチングブロック16、18とを連結して、プレキャストフーチング12を完成させる(
図14参照)。
【0086】
(5)埋め戻しを行う(
図15参照)。
【0087】
(6)芯材80をクレーン92で吊り上げて、芯材80の設置を行う(
図16参照)。
【0088】
(7)芯材80と該芯材80が差し込まれた突出さや管24との間隙にグラウト材を充填する(
図17参照)。
【0089】
(8)1段目のプレキャスト壁体60を搬入して、クレーン92で吊り上げて、1段目のプレキャスト壁体60の設置を行う(
図18参照)。
【0090】
(9)突出さや管24と該突出さや管24が差し込まれた壁体さや管64との間隙にグラウト材を充填するとともに、1段目のプレキャスト壁体60の壁体さや管64と芯材80との間隙にグラウト材を充填する(
図19参照)。
【0091】
(10)2段目のプレキャスト壁体60を搬入して、クレーン92で吊り上げて、2段目のプレキャスト壁体60の設置を行う(
図20参照)。
【0092】
(11)2段目のプレキャスト壁体60の壁体さや管64と芯材80との間隙にグラウト材を充填する(
図21参照)。
【0093】
(12)3段目のプレキャスト壁体60を搬入して、クレーン92で吊り上げて、3段目のプレキャスト壁体60の設置を行う(
図22参照)。
【0094】
(13)3段目のプレキャスト壁体60の壁体さや管64と芯材80との間隙にグラウト材を充填する(
図23参照)。
【0095】
(14)必要に応じて嵩上げを行う(
図24参照)。
【0096】
なお、充填するグラウト材の材質は、想定される断面力を伝達するのに十分な連結状態が得られて、プレキャストフーチング12および3段に積まれたプレキャスト壁体60が十分に一体化されるのであれば特に限定されず、例えば、セメント(モルタル)系グラウト材、ガラス系グラウト材、合成樹脂系グラウト材等を用いることができる。
【0097】
また、前記の説明では、各段のプレキャスト壁体60を設置するごとにグラウト材の充填を行ったが、プレキャスト壁体60を複数段設置する場合のグラウト材の充填時期は特には限定されず、プレキャスト壁体60を複数段積んだ後に複数段の分のグラウト材を一度に充填してもよい。
【0098】
以上のように施工することにより、本実施形態に係る重力式プレキャスト防潮堤10を得ることができる。
【0099】
このような施工を繰り返し行うことにより、複数の重力式プレキャスト防潮堤10を水平方向に連続するように配置(例えば
図1参照)して、例えば海岸線に沿って延びる重力式プレキャスト防潮堤を構築することができる。
【0100】
(プレキャストフーチング12および連結構造についての変形例)
以上説明した重力式プレキャスト防潮堤10は本発明の具体例の1つであり、本発明の具体例は重力式プレキャスト防潮堤10以外にも多数存在する。
【0101】
以下では、本発明の具体例の1つである重力式プレキャスト防潮堤10の変形例について説明する。
【0102】
(変形例1)
変形例1は、間詰めフーチングブロック16、18を、法直方向に細長い直方体形状の間詰めフーチングブロック100にした変形例である。
【0103】
本変形例1における壁体連結フーチングブロック14と間詰めフーチングブロック100との連結態様を
図25(法線方向と平行な鉛直面で壁体連結フーチングブロック14と間詰めフーチングブロック100との連結部位を切断して得られた鉛直断面図)に示す。
【0104】
本変形例1においては、
図25に示すように、間詰めフーチングブロック100の側面上部に、アンカーボルト102を間詰めフーチングブロック100の側面と直交する方向に突出するように設けるとともに、壁体連結フーチングブロック14の上部の部位の側面に、該側面と直交する方向に突出するように、アンカーボルト104を設ける。そして、壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aの上方に現場打ちコンクリート106を打設してアンカーボルト102、104の突出部位を現場打ちコンクリート106の中に埋め込んで一体化して、間詰めフーチングブロック100を壁体連結フーチングブロック14と連結する。
【0105】
本変形例1においては、間詰めフーチングブロック100と現場打ちコンクリート106との境界面を挿通するように略法線方向にアンカーボルト102が設けられており、さらに、壁体連結フーチングブロック14と現場打ちコンクリート106との境界面を挿通するように略法線方向にアンカーボルト104が設けられている。
【0106】
本変形例1においては、間詰めフーチングブロック100の形状が法直方向に細長い直方体形状であり単純な形状であるので、間詰めフーチングブロック100の製作の点では有利であるが、現場打ちコンクリート106を少量ではあるが現場で打設する必要がある点で不利(生コン使用量の面および現場での施工性と工期の面で不利)である。
【0107】
(変形例2)
変形例2は、
図26(A)、(B)に示すように、壁体連結フーチングブロック14の下部張出し部14Aの上面に略鉛直方向に突出した凸部110A1を設け、間詰めフーチングブロック16、18の上部張出し部16A、18Aの下面に、凸部110A1と嵌合する凹部112A1、114A1を設けた変形例である。
図26(A)、(B)においては、本変形例2の壁体連結フーチングブロックに符号110を付し、その下部張出し部に符号110Aを付している。また、壁体連結フーチングブロック110の法線方向の両隣に配置される本変形例2の間詰めフーチングブロックにそれぞれ符号112、114を付し、その上部張出し部にそれぞれ符号112A、114Aを付している。なお、
図26(A)においては突出さや管24の記載は省略している。
【0108】
壁体連結フーチングブロック110においては凸部110A1を補強する鉄筋(図示せず)が配置されており、間詰めフーチングブロック112、114においては凹部112A1、114A1を補強する鉄筋(図示せず)が配置されていて、嵌合した凸部110A1と凹部112A1、114A1との間で、想定される断面力の伝達が安全になされるようにしている。
【0109】
本変形例2においては、壁体連結フーチングブロック110を所定の位置に配置した後、壁体連結フーチングブロック110の下部張出し部110Aの上面に設けられた凸部110A1の表面に目地材を塗っておき、凹部112A1、114A1を凸部110A1に嵌め込むように間詰めフーチングブロック112、114を配置し、凸部110A1と凹部112A1、114A1との間隙に目地材が配置されるようにする。
【0110】
本変形例2では、壁体連結フーチングブロック110の下部張出し部110Aの上面に凸部110A1を設け、間詰めフーチングブロック112、114の上部張出し部112A、114Aの下面に、凸部110A1と嵌合する凹部112A1、114A1を設けたが、それに代えて、壁体連結フーチングブロック110の下部張出し部110Aの上面に略鉛直方向に凹んだ凹部を設け、間詰めフーチングブロック112、114の上部張出し部112A、114Aの下面に、下部張出し部110Aの上面に設けた前記凹部に嵌合する略鉛直方向に突出した凸部を設けるように構成してもよい。
【0111】
(変形例3)
変形例3は、壁体連結フーチングブロック14に代えて、法直方向に細長い略直方体形状の壁体連結フーチングブロック120を用い、間詰めフーチングブロック16、18に代えて、法直方向に細長い略直方体形状の間詰めフーチングブロック122、124を用いた変形例である。
図27(A)に変形例3の壁体連結フーチングブロック120を示し、
図27(B)に変形例3の間詰めフーチングブロック122、124を示す。なお、
図27(A)においては突出さや管24の記載は省略している。
【0112】
壁体連結フーチングブロック120は側面の下部に、該側面と略直交する方向に突出した凸部120Aが設けられており、間詰めフーチングブロック122、124は側面の下部に、凸部120Aと嵌合する凹部122A、124Aが設けられている。
【0113】
壁体連結フーチングブロック120においては凸部120Aを補強する鉄筋(図示せず)が配置されており、間詰めフーチングブロック122、124においては凹部122A、124Aを補強する鉄筋(図示せず)が配置されていて、嵌合した凸部120Aと凹部122A、124Aとの間で十分に力の伝達がなされるようにしている。
【0114】
本変形例3においては、壁体連結フーチングブロック120を所定の位置に配置した後、壁体連結フーチングブロック120の側面の下部に設けられた凸部120Aの表面に目地材を塗っておく。そして、凹部122A、124Aを凸部120Aに嵌め込むように間詰めフーチングブロック122、124を配置し、凸部120Aと凹部122A、124Aとの間隙に目地材が配置されるようにする。
【0115】
(変形例4)
変形例4は、法線方向に隣り合う壁体連結フーチングブロックと間詰めフーチングブロックとのつなぎ目を貫通するようにPC鋼材を配置して、プレストレスを導入して一体化させる変形例である。変形例4の図示は省略する。
【解決手段】プレキャストフーチング12は法線方向に分割されていて、プレキャストフーチング12は、プレキャスト壁体60との連結部を有する壁体連結フーチングブロック14と、壁体連結フーチングブロック14同士の間に配置される間詰めフーチングブロック16、18とを有してなり、法線方向に隣り合う壁体連結フーチングブロック14と間詰めフーチングブロック16、18とは、法直方向の外力がプレキャスト壁体60に作用して重力式プレキャスト防潮堤10が転倒または滑動しようとする際に生じる力を相互に伝達できるように連結されている。