特許第6070902号(P6070902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機ホーム機器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6070902-空気清浄機 図000002
  • 特許6070902-空気清浄機 図000003
  • 特許6070902-空気清浄機 図000004
  • 特許6070902-空気清浄機 図000005
  • 特許6070902-空気清浄機 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070902
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/00 20060101AFI20170123BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20170123BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F24F7/00 A
   F24F7/007 B
   F24F11/02 S
   F24F11/02 102H
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-528806(P2016-528806)
(86)(22)【出願日】2014年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2014066840
(87)【国際公開番号】WO2015198421
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】斎木 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】小前 草太
(72)【発明者】
【氏名】久下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】明里 好孝
(72)【発明者】
【氏名】乳井 一夫
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−314365(JP,A)
【文献】 特開2012−97955(JP,A)
【文献】 特開2000−233109(JP,A)
【文献】 特開平6−304427(JP,A)
【文献】 特開2006−46729(JP,A)
【文献】 特開2010−249385(JP,A)
【文献】 特開2009−168433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00
F24F 7/007
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口とを有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に室内の空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風手段と、
前記ケーシングの内部に吸込まれた空気を清浄化する清浄化手段と、
前記吹出口から吹出す空気の風向を変更することが可能な風向可変機構と、
室内に存在する人を検知する人検出手段と、
前記送風手段及び前記風向可変機構を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記人検出手段により人が検出されたときに、前記吹出口から吹出した空気の風向を人の上方に向ける風向制御を実行し、前記風向制御では、水平方向に対する前記風向の仰角を、前記人検出手段により検出された人の位置での風速が予め設定された許容限度以下となる角度に設定する構成とした空気清浄機。
【請求項2】
前記風向制御では、前記吹出口から吹出した空気の風向を水平方向において人がいる方向に向け、かつ、前記風向を上下方向において人の上方に向ける構成としてなる請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記風向制御では、水平方向に対する前記風向の仰角を60〜90°の範囲内に設定してなる請求項1または2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記風向制御では、前記人検出手段により検出された人と空気清浄機との距離が予め設定された近接判定値よりも小さい場合に、水平方向に対する前記風向の仰角を80°以上に設定してなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記人検出手段により室内の人が検出されないときに、水平方向に対する前記風向の仰角を20〜90°の範囲内に設定するか、または、前記風向を前記仰角が20〜90°となる範囲内で上下方向に揺動させてなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
部屋の天井または壁面から空気清浄機までの距離と、室内の空気の汚染度のうち少なくとも一方の情報を含む室内情報を検出する情報検出手段を備え、
前記制御手段は、前記人検出手段により室内の人が検出されないときに、前記室内情報に基いて前記風向を制御してなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記人検出手段は、空気清浄機を部屋の床面に設置した場合において、前記床面から65cm以上の高さに配置してなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項8】
前記風向可変機構は、
前記ケーシングを水平方向に回転させる水平回転機構と、
前記風向を上下方向に揺動可能な可動ルーバーと、
前記可動ルーバーにより設定された前記風向の仰角を保持した状態で前記風向を左右方向に調整可能な整流機構と、
を備えてなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込んだ空気を清浄化して吹出す機能を備えた空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1に記載されているように、吸気口の向きを変更可能な空気清浄機が知られている。従来技術の空気清浄機は、空気清浄機の本体正面に配置された吸気口を人が存在する方向に向けることにより、人の周囲の空気を効率的に清浄化するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開平2−245212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、空気清浄機の吸気口を人が存在する方向に向けることにより、人の周囲の空気を効率的に清浄化するようにしている。しかしながら、この場合には、人に対して空気が吹付けられる違和感(吹かれ感)を与えることがあり、ユーザの快適性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、人に対して吹かれ感を与えることなく、人の周囲の空気を効率的に清浄化することが可能な空気清浄機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る空気清浄機は、吸込口と吹出口とを有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に室内の空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出す送風手段と、ケーシングの内部に吸込まれた空気を清浄化する清浄化手段と、吹出口から吹出す空気の風向を変更することが可能な風向可変機構と、室内に存在する人を検知する人検出手段と、送風手段及び風向可変機構を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、人検出手段により人が検出されたときに、吹出口から吹出した空気の風向を人の上方に向ける風向制御を実行し、風向制御では、水平方向に対する風向の仰角を、人検出手段により検出された人の位置での風速が予め設定された許容限度以下となる角度に設定する構成としている。

【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、室内の人を検出したときには、吹出し空気の風向を人の上方に向けることができる。これにより、人に与える吹かれ感を抑制しつつ、人の周囲の空気を効率的に清浄化することができる。従って、ユーザの快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1による空気清浄機を示す斜視図である。
図2図1中の空気清浄機を示す縦断面図である。
図3】可動ルーバー及び整流機構の作動状態(a),(b)を示す図1中の要部拡大図である。
図4】本発明の実施の形態1による空気清浄機の制御系統を示す構成図である。
図5】風向の仰角、風速及び相対除塵速度の関係を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書で使用する各図においては、共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。また、本発明は以下の実施の形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0010】
実施の形態1.
まず、図1から図5を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1による空気清浄機を示す斜視図である。また、図2は、図1中の空気清浄機を示す縦断面図である。これらの図に示すように、本実施の形態では、床面設置型の空気清浄機1を例示している。空気清浄機1は、ケーシング2、台座3、吸込口4、吹出口5、送風装置6、風路7A,7B、清浄化装置8、可動ルーバー9、ルーバー駆動部10、開口可変機構11、開口駆動部12、整流機構13、整流駆動部14、水平回転機構15、外部検出装置16、汚染検出装置21、制御装置23等を備えている。
【0011】
ケーシング2は、例えば略四角形の角筒状に形成され、床面と垂直な方向に延びる縦長に形成されたタワー型のケーシングにより構成されている。また、ケーシング2は、部屋の床面に設置される台座3により水平方向に回転可能な状態で支持されている。ケーシング2の内部空間のうち、吸込口4から吹出口5に至る空間には、図2に示すように、清浄化装置8、送風装置6及び風路7が上流から下流に向けて順に配置されている。
【0012】
なお、以下の説明では、ケーシング2の側面部のうち、主として室内の空間に面して配置される部分を正面部と表記し、正面部と対向する部分を背面部と表記する。また、ケーシング2の正面部が面した方向を前方と表記し、前方からみたケーシング2の左右両側に対応する方向を左右方向と表記し、更に、場合によっては鉛直方向を上下方向と表記する。空気清浄機1は、例えば部屋の何れかの壁に近い位置で床面上に設置され、ケーシング2の背面部を当該壁面に向けると共にケーシング2の正面部を室内の空間に向けた状態で使用される。
【0013】
吸込口4は、室内の空気をケーシング2の内部に吸込むための開口部であり、例えばケーシング2の正面部に設けられている。吸込口4は、垂直方向に延びた縦長の開口形状を有している。吹出口5は、ケーシング2の内部に吸込んだ空気を外部に吹出すための開口部であり、例えばケーシング2の上面部に開口した2個の吹出口5A,5Bにより構成されている。2個の吹出口5A,5Bは、ケーシング2の左右方向に沿って互いに並行に延びている。なお、以下の説明では、吹出口5(吹出口5A,5B)から吹出す空気を「吹出し空気」と表記する場合がある。また、本発明では、吸込口4を、ケーシング2の背面部、側面部、下面部等に配置してもよいし、吹出口5を、ケーシング2の正面部、側面部等に配置してもよい。さらに、ケーシング2には、1個のみの吹出口5を配置したり、3個以上の吹出口5を配置してもよい。
【0014】
送風装置6は、吸込口4からケーシング2の内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口5から吹出すもので、装置の本体部分であるファン6Aと、ファン6Aを回転させる電動式のモータ6Bとを備えている。ファン6Aの回転数は、制御装置23により制御されるもので、当該回転数に応じて吹出し空気の風量が変更される。即ち、送風装置6は、吹出し空気の風量を変更することが可能な送風変更手段の具体例を示している。ケーシング2の内部には、図2に示すように、例えば2個の送風装置6が前後方向に位置をずらした状態で、上下方向に並べて配置されている。なお、送風装置6は、本実施の形態の送風手段を構成している。
【0015】
また、ケーシング2の内部には、送風装置6と吹出口5とを接続し、送風装置6から吹出された空気を吹出口5に案内する風路7が設けられている。風路7は、ケーシング2の内部に設けられた隔壁2Aにより、正面側の風路7Aと背面側の風路7Bとに分割されている。2つの風路7A,7Bは、ケーシング2の内部で上下方向に伸長し、例えば水平断面で見ると、前後方向に並列に配置されている。
【0016】
風路7A,7Bの下部側は、それぞれ異なる送風装置6に接続され、風路7A,7Bの上部側は、それぞれ吹出口5A,5Bに接続されている。即ち、空気清浄機1は、一方の送風装置6から風路7Aを介して吹出口5Aに到達する第1の送風系統と、他方の送風装置6から風路7Bを介して吹出口5Bに到達する第2の送風系統とを備えており、これらの送風系統では、風量、風向及び風速を別々に制御することができる。
【0017】
このように、実施の形態1では、ケーシング2の内部に隔壁2Aを配置し、2個の風路7A,7Bを前後方向に並列に形成している。また、2個の送風装置6のうち、少なくとも図2中の上側に位置する一方の送風装置6は、ファン6Aの内部にモータ6Bの一部が埋込まれたモータ内臓型の送風装置により構成されている。これにより、ケーシング2の内部に2つの送風系統を効率よく形成しながら、空気清浄機1の設置面積を小型化することができ、小型で高性能な空気清浄機1を実現することができる。また、空気清浄機1を上下方向に細長い縦長な形状とすることができるので、後述のように、外部検出装置16を床面から65cm以上の高さに設置することができる。
【0018】
清浄化装置8は、ケーシング2の内部を通過する空気を清浄化するもので、例えば吸込口4と送風装置6との間に設けられている。清浄化装置8は、ケーシング2の内部で垂直方向に延びた縦長の外形状を有している。ここで、「清浄化」とは、例えば空気中に浮遊する塵埃、煙、花粉、ウイルス、カビ、菌、アレルゲン、臭気分子等からなる汚染物質を除去することを意味するもので、具体的には、これらの汚染物質を捕集したり、不活性化したり、吸着及び分解する動作を意味している。より具体的に述べると、清浄化装置8は、空気中の塵埃等を捕集する集塵フィルタ、臭気成分を吸着する脱臭フィルタ、電極に高電圧を印加することで汚染物質を除去及び分解する電圧印加デバイス等により構成されるか、またはこれらの組み合わせにより構成されている。なお、清浄化装置8は、本実施の形態の清浄化手段を構成している。
【0019】
次に、図3は、可動ルーバー及び整流機構の作動状態(a),(b)を示す図1中の要部拡大図である。可動ルーバー9は、図2及び図3に示すように、吹出し空気の風向を上下方向に揺動させるもので、ケーシング2の吹出口5A,5Bに1個ずつ設けられている。詳しく述べると、可動ルーバー9は、例えばケーシング2の左右方向に延在する細長い平板等により形成されている。そして、可動ルーバー9の基端側は、吹出口5A,5Bにそれぞれ設けられたルーバー駆動部10を介して個々の吹出口5A,5Bに取付けられ、可動ルーバー9の先端側は、ルーバー駆動部10により上下方向に揺動可能となっている。また、2個の可動ルーバー9は、吹出口5A,5Bから吹出す空気の風向をそれぞれ個別に変更可能に構成されている。なお、本実施の形態では、2個の可動ルーバー9を備える場合を例示したが、本発明は、吹出口5の個数に応じて1個のみまたは3個以上の可動ルーバー9を備える構成としてもよい。
【0020】
可動ルーバー9は、上下方向に揺動することにより、当該揺動角に応じて吹出し空気の風向を前方と上方との間で上下方向にスイングする。風向の仰角は、可動ルーバー9の仰角とほぼ等しい角度に変更される。なお、本明細書において、「仰角」とは、床面と平行な水平方向を基準として、上方に傾斜した角度を意味している。即ち、仰角=0°は水平方向を表し、仰角=90°は鉛直方向の真上を表している。
【0021】
ルーバー駆動部10は、可動ルーバー9を揺動可能に支持する支軸と、この支軸を回転させるアクチュエータ(図示せず)とを備えている。可動ルーバー9及びルーバー駆動部10は、吹出し空気の風向を上下方向に変更することが可能な風向可変機構の具体例を構成している。開口可変機構11は、図2に示すように、例えば片方の可動ルーバー9と前後方向で対向する位置に設けられ、当該可動ルーバー9と協働して吹出口5Aの開口面積を変更するものである。なお、図1及び図3では、後述の整流機構13を明示するために、開口可変機構11の図示を省略している。また、図2では、一方の吹出口5Aのみに開口可変機構11を配置する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、他方の吹出口5Bのみ、または両方の吹出口5A,5Bに開口可変機構11を配置する構成としてもよい。
【0022】
開口可変機構11は、例えばケーシング2の左右方向に延在する細長い平板等により形成されている。開口可変機構11の基端部は、ルーバー駆動部10とほぼ同様の構成を有する開口駆動部12を介して吹出口5Aに取付けられている。開口可変機構11の先端部は、開口駆動部12により前後方向に揺動され、可動ルーバー9に対して近接及び離間するように変位する。これにより、開口可変機構11は、吹出口5Aの開口面積を増減させ、当該開口面積に応じて吹出し空気の風速を変更することができる。即ち、開口可変機構11及び開口駆動部12は、吹出し空気の風速を変更することが可能な送風変更手段の具体例を構成している。なお、開口可変機構11は、吹出口5ではなく風路7A,7Bの一方または両方に配置し、風路7の開口面積(流路面積)を変更する機構としてもよい。
【0023】
整流機構13は、可動ルーバー9により設定された風向の仰角を保持した状態で、当該風向を左右方向に調整するものである。整流機構13は、図2及び図3に示すように、例えば略三角形状(扇形状)のフィンにより形成され、各可動ルーバー9の受風面側から突出すると共に、左右方向に間隔をもって複数個配置されている。そして、個々の整流機構13は、図3(a),(b)に示すように、左右方向に揺動し、当該揺動角に応じて吹出し空気の風向を左右方向に変化させる。
【0024】
また、整流機構13の揺動動作は、例えば可動ルーバー9に設けられた整流駆動部14(図4にのみ図示)により実行される。即ち、整流機構13及び整流駆動部14は、吹出し空気の風向を左右方向に変更することが可能な風向可変機構の具体例を構成している。なお、本発明では、必ずしも整流機構13を設ける必要はない。また、整流機構13は、例えば可動ルーバー9の左右両端側にのみ1個ずつ配置する構成としてもよい。
【0025】
水平回転機構15は、図1及び図2に示すように、ケーシング2と台座3との間に設けられ、ケーシング2を台座3上で少なくとも左右方向に回転させるものである。吹出口5の向きは、ケーシング2と共に水平方向に変化するので、水平回転機構15は、吹出し空気の風向を左右方向に変更することが可能な風向可変機構の具体例を構成している。
【0026】
(制御系統)
次に、図4等を参照して、空気清浄機1の制御系統について説明する。図4は、本発明の実施の形態1による空気清浄機の制御系統を示す構成図である。空気清浄機1は、外部検出装置16及び汚染検出装置21を含むセンサ系統と、空気清浄機1を操作するための操作部22と、空気清浄機1の運転状態を制御する制御装置23とを備えている。なお、制御装置23は、本実施の形態の制御手段を構成している。
【0027】
外部検出装置16は、空気清浄機1が設置された部屋の室内情報を検出するもので、例えばケーシング2の正面上部側に設けられている(図1参照)。また、外部検出装置16は、赤外線を利用して室内に存在する人を検出する人検出手段としての赤外線センサ17を備えている。なお、赤外線センサ17の詳細については後述する。また、人検出手段は、必ずしも赤外線センサ17により構成する必要はなく、人の検出が可能な他のセンサにより構成してもよい。また、外部検出装置16は、赤外線センサ17と他のセンサ(図示せず)とを組み合わせることにより構成してもよい。他のセンサは、例えば汚れセンサ、動体センサ、距離センサ、湿度センサ、照度センサ等のうち少なくとも1個のセンサにより構成される。
【0028】
ここで、汚れセンサ(埃センサ)は、半導体素子、光学素子等により構成され、空気中の塵埃、煙、花粉等の濃度を検出する。距離センサは、例えば超音波センサ、光センサ、画像認識センサ等の非接触式センサにより構成され、音波または電磁波を利用して、空気清浄機1と検出対象物との距離を検出する。検出対象物には、室内における壁、天井、家具、人、動物等が含まれる。照度センサは、照度の変化に基いて、室内における人及び動物の有無、動き等を検出する。また、湿度センサの出力は、上記各センサの感度を湿度に応じて補正するときに用いられる。なお、上記各センサの組合わせは一例に過ぎず、本発明は、上記各センサの組合わせによる外部検出装置16に限定されるものではない。
【0029】
また、外部検出装置16は、後述のように、赤外線センサ17及び前記他のセンサの向きをケーシング2に対して水平方向(左右方向の両側)に回転させるセンサ回転機構20を備えている。センサ回転機構20は、例えばステッピングモータ等により構成されている。なお、センサ回転機構20は、少なくとも赤外線センサ17を回転させればよいが、更に、他のセンサのうち指向性を有するセンサを回転させる構成としてもよい。
【0030】
一方、汚染検出装置21は、ケーシング2の内部に吸込んだ空気中の汚染物質の量を検出するもので、空気の流れ方向において清浄化装置8の上流側に配置されている。汚染検出装置21は、例えば埃センサ、ガスセンサ、風速センサ等により構成されるか、または、これらのセンサを組合わせた複合型センサにより構成されている。汚染検出装置21によれば、空気清浄機1により特定の方向に空気を吹出し、この方向から還流してくる空気中の汚染物質の量を検出することにより、前記特定の方向における空気の汚染度を検出することができる。なお、外部検出装置16のうち赤外線センサ17を除く他のセンサと、汚染検出装置21とは、本実施の形態において、部屋の天井または壁面から空気清浄機1までの距離と、室内空気の汚染度のうち少なくとも一方の情報を含む室内情報を検出する情報検出手段の具体例を構成している。
【0031】
一方、操作部22は、空気清浄機1のユーザが各種の設定及び運転の切換を行うときに操作するもので、空気清浄機1を起動及び停止するための電源スイッチと、空気清浄機1の運転状態等を表示する表示部とを備えている。また、操作部22は、制御装置23に対して双方向の通信が可能な状態で接続されている。
【0032】
制御装置23は、空気清浄機1の運転状態を制御するもので、図示しない演算処理装置、入出力ポート及び記憶回路等を備えている。制御装置23の入力側には、図4に示すように、外部検出装置16及び汚染検出装置21を含むセンサ系統が接続されている。制御装置23の出力側には、送風装置6、清浄化装置8、ルーバー駆動部10、開口駆動部12、整流駆動部14、水平回転機構15、センサ回転機構20等を含むアクチュエータが接続されている。そして、制御装置23は、センサ系統の出力に基いてアクチュエータを制御することにより、空気清浄機1を作動させる。
【0033】
次に、空気清浄機1の基本的な動作について説明する。空気清浄機1の作動時には、まず、制御装置23により送風装置6及び清浄化装置8が駆動される。これにより、ケーシング2の吸込口4から内部に空気が吸込まれ、この空気は、清浄化装置8により清浄化される。そして、清浄化された空気は、各送風装置6及び風路7A,7Bを経由して吹出口5A,5Bに到達し、吹出口5A,5Bから外部に送風される。このとき、制御装置23は、外部検出装置16及び汚染検出装置21の出力に基いて、送風装置6(ファン6A)の回転数を変化させる処理と、可動ルーバー9、開口可変機構11、整流機構13、水平回転機構15等を駆動する処理とを必要に応じて実行する。これにより、制御装置23は、後述のように、吹出し空気の風量、風速及び風向のうち少なくとも1つのパラメータを室内の状況等に応じて適切に制御することができる。
【0034】
(赤外線センサ)
外部検出装置16に搭載された赤外線センサ17について説明する。赤外線センサ17は、検出対象物から発生する赤外線を検出するもので、センサ回転機構20を備えている。
【0035】
(人検出制御)
次に、制御装置23により実行される人検出制御について説明する。人検出制御では、赤外線センサ17により室内を左右方向に走査しながら、温度を検出して走査範囲全体の熱画像データを取得する。これにより、室内に存在する人の有無と、空気清浄機1から人までの距離とを検出することができる。また、空気清浄機1は、ケーシング2を回転させる水平回転機構15とは別個のセンサ回転機構20により赤外線センサ17を回転させることができる。この構成によれば、例えば吹出口5を水平方向において一定の向きに保持した状態でも、赤外線センサ17により室内を走査することができ、送風動作に影響を与えることなく、人検出制御を実行することができる。
【0036】
しかも、赤外線センサ17は、複数の受光素子を上下方向に並べて構成しているので、水平方向における特定の角度(後述の人エリア)において、人の有無及び空気清浄機1と人との距離を精度よく検出することができる。
【0037】
ここで、赤外線センサ17の高さ位置は、例えば空気清浄機1が設置される床面から65cm以上、好ましくは75cm以上、更に好ましくは80cm以上に設定されている。この設定は以下の理由によるものである。まず、身長hの人にとって、テーブル、机等のように天面が作業場所となる家具の最適な高さHは、例えば下記数1の式により与えられる。ここで、高さHは、家具の天面と床面との距離であり、h,Hの単位はcmである。
【0038】
[数1]
H=0.433×h−2
【0039】
上記数1の式によれば、身長hが平均的な範囲(例えば、154〜171cm程度)に収まる人にとっては、高さHが65〜72cm程度の家具を用いるのが一般的となる。これに対し、本実施の形態では、赤外線センサ17を家具の天面よりも高い位置に配置することができるので、赤外線センサ17により室内を走査するときに、テーブル、机等の家具が邪魔になって赤外線が遮られるのを回避することができる。これにより、家具が配置された室内においても、人の存在を精度よく検出し、空気清浄機1の性能を安定的に発揮することができる。なお、本発明では、例えば空気清浄機1を使用する国毎に、平均的な身長h及び最適な高さHを求め、赤外線センサ17の高さ位置を国毎に変更してもよい。
【0040】
(風向制御)
次に、制御装置23により実行される風向制御について説明する。制御装置23は、赤外線センサ17により取得した熱画像データに基いて、室内に人が存在すると判定した場合に、風向制御を実行する。風向制御では、まず、空気清浄機1の正面部を人の方向に向けるために必要な水平方向の回転角度θ1を算出する。続いて、水平回転機構15によりケーシング2を回転角度θ1だけ回転させる。これにより、吹出口5は、水平方向において人がいる方向に向いた状態となる。なお、以下の説明では、空気清浄機1の位置を中心として、水平方向において人がいる方向を「人エリア」と表記する。即ち、回転角度θ1は、吹出口5を人エリアに向けるための角度に相当する。また、本発明において、空気清浄機1の正面部(空気の吹出側)を人に向けて設置することを前提とした場合には、水平方向における空気の吹出方向が人エリアとなるので、最初にケーシング2を回転角度θ1だけ回転させる処理は不要となる。
【0041】
次の処理では、上下方向における可動ルーバー9の仰角θ2、即ち、風向の仰角θ2を、人エリアにおいて風向が人の上方に向くように設定する。そして、ルーバー駆動部10により可動ルーバー9を駆動し、当該仰角θ2を実現する。仰角θ2は、図5に示す特性データに基いて、例えば60〜90°の範囲、好ましくは75°に設定される。ここで、図5は、風向の仰角、風速及び相対除塵速度の関係を示す特性線図である。
【0042】
図5において、相対除塵速度とは、送風装置6により発生させる風量によって人エリア内の各測定点の平均除塵速度ηQを規格化した値を表している。測定点は、例えば人エリア内の平均的な除塵速度が測定可能となるような複数個所に適宜設定している。相対除塵速度は、空気の浄化効率が高いほど大きくなるものである。また、図5中の風速は、人エリアでの風速を示している。なお、図5に示す特性データは、広さが16畳の部屋で得られたものであるが、他の広さの部屋においても、図5とほぼ同様の特性データを得られることが確認された。
【0043】
風向制御により仰角θ2が60〜90°の範囲に設定された場合には、図5に示すように、赤外線センサ17により検出した人の位置での風速が0.3m/sec以下に抑制される。特に、仰角θ2が75°に設定された場合には、人の位置での風速が最小となり、かつ、相対除塵速度が最大となる。ここで、0.3m/secとは、人に吹かれ感を与えずに済む風速の許容限度であり、実験等により予め設定される。即ち、人の位置での風速が許容限度を超えると、吹かれ感が生じるようになる。なお、0.3m/secは、許容限度の一例であり、本発明を限定するものではない。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、風向の仰角θ2を60〜90°の範囲に設定することにより、人の上方に向けて空気を吹出すことができ、人に与える吹かれ感を抑制しつつ、人の周囲の空気を効率的に清浄化することができる。特に、仰角θ2を75°に設定した場合には、風速を許容限度以下で最小化し、更に、空気の浄化効率を最大化することができる。しかも、空気清浄機1の正面部分の室内中央部に対して、空気清浄能力を最も発揮することができる。従って、本実施の形態によれば、風向の仰角θ2を適切に設定し、ユーザの快適性を向上させることができる。
【0045】
また、風向制御では、赤外線センサ17により検出された人と空気清浄機1との距離が予め設定された近接判定値よりも小さい場合に、風向の仰角を80°以上、好ましくは90°に設定する。近接判定値は、例えば50〜100cmに設定するのが好ましいが、状況に応じて他の値に設定してもよい。この制御によれば、空気清浄機1の近くに人がいる場合でも、人に吹かれ感を与えることなく、空気を清浄化することができる。
【0046】
(無人時の風向制御)
制御装置23は、赤外線センサ17により室内の人が検出されないときに、無人時の風向制御を実行する。この制御では、例えば風向の仰角θ3を20〜90°の範囲内に設定する。また、無人時の風向制御では、仰角θ3が20〜90°となる範囲内で風向を上下方向に揺動させてもよい。なお、仰角θ3の下限値(例えば、20°)は、吹出し空気により床面の塵埃等を巻き上げない範囲で最も小さい仰角として設定される。この制御によれば、人に対する吹かれ感を考慮する必要がない場合に、風向の仰角θ3を広い範囲に設定したり、風向を広い仰角の範囲で揺動させることができ、部屋全体の空気を効率的に清浄化することができる。
【0047】
また、室内の人が検出されないときには、外部検出装置16及び汚染検出装置21により検出された室内情報に基いて吹出し空気の風量、風速及び風向のうち少なくとも風向の仰角θ3を制御してもよい。ここで、室内情報には、前述の距離センサ等により検出された部屋の天井または壁面から空気清浄機1までの距離と、汚染検出装置21により検出された室内空気の汚染度のうち少なくとも一方の情報が含まれている。
【0048】
制御装置23は、上記室内情報に基いて風向の仰角θ3等を制御することにより、部屋の広さ、汚染度等に応じて室内に適切な気流を形成する。これにより、人が不在の部屋においても、例えば汚染度が高い場所を優先しながら室内全体を効率よく清浄化することができる。なお、本発明では、室内の人が検出されている状態において、風向制御により設定された仰角θ2を、更に、室内情報に基いて補正するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、風向可変機構が可動ルーバー9、整流機構13及び水平回転機構15を備えている。これにより、吹出し空気の風向を、水平方向の回転角度θ1と、上下方向の仰角θ2,θ3とに分けて精度よく設定することができる。また、これらの回転角度θ1及び仰角θ2,θ3により設定された風向を基本的に保持しつつ、整流機構13により風向を左右方向に調整することができる。従って、風向の指向性及び制御精度を更に向上させることができる。
【0050】
なお、前記実施の形態1では、床面設置型の空気清浄機1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、壁掛け式の空気清浄機にも適用することができる。また、実施の形態1では、風向制御において、風向、風量及び風速からなる3つのパラメータのうち、少なくとも風向を制御する場合を例示した。しかし、本発明ではこれに限らず、風向制御では、必要に応じて風量及び風速も制御してもよい。
【0051】
また、実施の形態1では、水平回転機構15により風向を左右方向に変更する構成としたが、本発明では、風向を左方向及び右方向に変化させながら上下方向に往復動させる動作(波打つような動作)が可能な水平回転機構を採用してもよい。また、実施の形態1では、送風装置6により吹出し空気の風量を変更可能な構成としたが、本発明はこれに限らず、他の機構により風量を変更する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 空気清浄機,2 ケーシング,2A 隔壁,3 台座,4 吸込口,5,5A,5B 吹出口,6 送風装置(送風手段),6A ファン,6B モータ,7,7A,7B 風路,8 清浄化装置(清浄化手段)、9 可動ルーバー(風向可変機構),10 ルーバー駆動部(風向可変機構),11 開口可変機構,12 開口駆動部,13 整流機構(風向可変機構),14 整流駆動部(風向可変機構),15 水平回転機構(風向可変機構),16 外部検出装置(情報検出手段),17 赤外線センサ(人検出手段),20 センサ回転機構(回転機構),21 汚染検出装置(情報検出手段),22 操作部,23 制御装置(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5