特許第6070935号(P6070935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070935
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】電動モータ及び電動モータの油冷却方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   H02K9/19 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-542338(P2012-542338)
(86)(22)【出願日】2010年1月26日
(65)【公表番号】特表2013-513354(P2013-513354A)
(43)【公表日】2013年4月18日
(86)【国際出願番号】CN2010000119
(87)【国際公開番号】WO2011069313
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2012年6月7日
【審判番号】不服2015-12006(P2015-12006/J1)
【審判請求日】2015年6月24日
(31)【優先権主張番号】200910252069.2
(32)【優先日】2009年12月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン−ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】サイ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,イ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,シンリエン
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 藤井 昇
【審判官】 久保 竜一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−180376(JP,A)
【文献】 特開2009−195082(JP,A)
【文献】 特開平8−130856(JP,A)
【文献】 特開2002−186557(JP,A)
【文献】 特開昭62−240067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19- 9/20
H02K 5/20
H02K 1/20
H02K 1/32
H02K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、固定子組立体とを含み、
前記ケーシングは、ケーシング本体(1)と、油導入孔(7)と、油通路(2)と、 油導出孔(3)と、固定子固定台(8)と、ケーシングのエンドカバー(10)とを有し、その内、前記油導入孔(7)がケーシング本体(1)に位置し、前記油導出孔(3)が固定子固定台(8)に位置し、前記油通路(2)がケーシング本体(1)の内部に位置するとともに、前記油導入孔(7)及び油導出孔(3)と連通するように設けられ、
前記固定子組立体は、固定子コア(5)と、巻線コイル(6)と、絶縁(12)とを有し、前記油導出孔(3)が巻線コイル(6)の上方に位置するように設けられる電動モータであって、
さらに、該電動モータは、
導出孔(3)と巻線コイル(6)との間に位置する導引段差を含み、前記導引段差は、前記固定子固定台(8)に固定されているか又は前記固定子固定台(8)と一体的に形成されており、油導入孔(7)から入った冷却油が、油通路(2)を流通し、油導出孔(3)から流出してから、前記導引段差によって導引されて、巻線コイル(6)に直接かかり、ケーシング本体(1)の円周壁に流失しないように設けられ、
前記導引段差の形状がV字形であり、該V字形導引段差の二つのアームが基端から上に延びて構成されており
前記油導出孔(3)の出口は、前記V字形導引段差の二つのアームの中間であって前記基端に近い位置に配置されていることを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
記導引段差と前記固定子固定台(8)とが一体的な鋳造品であることを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記固定子固定台(8)が前記ケーシング本体(1)に固定されるか、または前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体(1)とが一体的な鋳造品であるか、
または前記固定子固定台(8)がケーシング本体のエンドカバー(10)に固定されるか、または前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体のエンドカバー(10)とが一体的な鋳造品であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
複数の油導出孔(3)が前記固定子固定台(8)の円周壁に分布しており、前記固定子固定台(8)の最上部から順次に下方に向かって、それぞれの油導出孔(3)の孔径が順次に増大することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動モータ。
【請求項5】
ケーシングと、固定子組立体とを含み、
前記ケーシングは、ケーシング本体(1)と、油導入孔(7)と、油通路(2)と、 油導出孔(3)と、固定子固定台(8)と、ケーシングのエンドカバー(10)とを有し、前記油導入孔(7)がケーシング本体(1)に位置し、前記油導出孔(3)が固定子固定台(8)に位置し、前記油通路(2)がケーシング本体(1)の内部に位置するとともに、前記油導入孔(7)及び油導出孔(3)と連通するように設けられ、
前記固定子組立体は、固定子コア(5)と、巻線コイル(6)と、絶縁(12)とを有し、前記油導出孔(3)が巻線コイル(6)の上方に位置するように設けられる電動モータに適用する電動モータの油冷却方法であって、
前記油導出孔(3)と前記巻線コイル(6)との間に、前記固定子固定台(8)に固定されているか又は前記固定子固定台(8)と一体的に形成された導引段差を設け、冷却油が前記油導入孔(7)から入り、前記油通路(2)を流通して前記油導出孔(3)から流出するとき、前記導引段差が油導出孔(3)から流出した冷却油を導引して、ケーシング本体(1)の円周壁に流失させずに巻線コイル(6)に直接かけ
前記導引段差の形状がV字形であり、該V字形導引段差の二つのアームが基端から上に延びて構成されており
前記油導出孔(3)の出口は、前記V字形導引段差の二つのアームの中間であって前記基端に近い位置に配置されていることを特徴とする電動モータの油冷却方法。
【請求項6】
記導引段差と前記固定子固定台(8)とが一体的な鋳造品であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固定子固定台(8)がケーシング本体(1)の上に固定されるか、または前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体(1)とが一体的な鋳造品であるか、
または前記固定子固定台(8)が前記ケーシング本体のエンドカバー(10)に固定されるか、または前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体のエンドカバー(10)とが一体的な鋳造品であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の油導出孔(3)が前記固定子固定台(8)の円周壁に分布しており、前記固定子固定台(8)の最上部から順次に下方に向かって、それぞれの油導出孔(3)の孔径が順次に増大することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機械製造の技術に関し、特に電動モータ及び電動モータの油冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、冷却油を用いて電動モータにおける巻線コイルを冷却する。電動モータの巻線コイルに対する冷却方法における殆どの油通路デザインでは、油導入孔から油導出孔までの油通路には、通常、複数の90度の曲がり角が設けられ、ひいては冷却油に圧力損失を生じるため、冷却油が油導出孔から巻線コイルへ噴出せず、重力によって自然に流出する。
【0003】
図1は従来の技術における電動モータのケーシング及び固定子組立体を示す説明図である。図1に示すように、電動モータのケーシング11の内部弧線に沿って複数の巻線コイル6が配列されている。図1にはケーシングのエンドカバーが示されていない。
【0004】
図2図1の線AA’に沿った断面図である。図2に示すように、電動モータのケーシング11は、ケーシング本体1と、油導入孔7と、油通路2(油の導引通路)と、油導出孔3と、固定子固定台8と、ケーシングのエンドカバー10とを含む。図2に示す電動モータは、さらに、ケーシングに接続され、固定子コア5、巻線コイル6及び絶縁からなる固定子組立体を含む。図2に示す断面図において、絶縁が見られないので、図2に示されていない。また、図2において、矢印で冷却油が油導入孔7から油通路2を介して油導出孔3までに至る経路は模式的に示されている。
【0005】
図3図2の示した線BB’に沿った断面図である。図3において、ケーシング本体1、油通路2、油導出孔3、巻線コイル6、固定子固定台8及び絶縁12を示すとともに、矢印で冷却油が油導入孔7から油通路2を介して油導出孔までに至る経路を模式的に示している。それとともに、表面張力によって冷却油がケーシングの円周壁に流失する経路も模式的に示されている。これは、円周のある角度に位置する油導出孔に対して、油が孔から流出するときに、油の表面張力により、ケーシングの円周壁及びエンドカバーに沿って流失してしまい、直接、巻線コイルにかからないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、種々のデザインにおいて、巻線コイルの下に溝が設けられている。これらの溝に油が溜められるようになり、その目的は巻線コイルを油に浸漬して冷却するためである。しかし、これらの溝の実装又は製造は容易ではなく、特に溝が実装される際、コイルの絶縁性を破壊してしまうことを防ぐためにコイルに接触してはならない。また、コイルの下の辺は通常は電動モータのエアギャップに近いが、溝はエアギャップの空間にも影響を与えてはいけない。さらに、冷却油は最上方の巻線コイルを冷却した後、巻線コイルからの熱を吸収して温度が上昇した油は円周の溝に沿って次の巻線コイルのところに流れて冷却を行う。このように類推していくと、各巻線コイルの冷却程度にばらつきが生じてしまう。
【0007】
以上まとめると、従来の巻線コイルの冷却技術方法においては冷却効率が良くないので、ひいては電動モータの耐熱性が良くないことになる。
【0008】
本発明は、効率よく自らの巻線コイルを冷却でき、高い耐熱性を持つ電動モータを提供する。また、本発明は電動モータの冷却方法を提供する。この方法により、効率よく自らの巻線コイルを冷却でき、電動モータが高い耐熱性を持つ。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の技術方法は以下のように実現させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ケーシングと固定子組立体とを含み、前記ケーシングは、ケーシング本体(1)と、油導入孔(7)と、油通路(2)と、油導出孔(3)と、固定子固定台(8)と、ケーシングのエンドカバー(10)とを有し、その内、前記油導入孔(7)がケーシング(1)に位置し、前記油導出孔(3)が固定子固定台(8)に位置し、前記油通路(2)がケーシング本体(1)の内部に位置するとともに、油導入孔(7)及び油導出孔(3)と連通するように設けられ、前記固定子組立体は、固定子コア(5)と、巻線コイル(6)と、絶縁(12)とを有し、前記油導出孔(3)が巻線コイル(6)の上方に位置するように設けられる電動モータであって、さらに、該電動モータは、油導出孔(3)と巻線コイル(6)との間に位置する導引段差を含み、前記導引段差は、前記固定子固定台(8)に固定されているか又は前記固定子固定台(8)と一体的に形成されており、油導入孔(7)から入った冷却油、油通路(2)を流通し、油導出孔(3)から流出してから前記導引段差によって導引され、巻線コイル(6)に直接かかり、ケーシング本体(1)の円周壁に流失しないように設けられ、前記導引段差の形状がV字形であり、該V字形導引段差の二つのアームが基端から上に延びて構成されており前記油導出孔(3)の出口は、前記V字形導引段差の二つのアームの中間であって前記基端に近い位置に配置されていることを特徴とする電動モータが開示されている。
【0011】
前記導引段差が前記固定子固定台(8)に固定されるか、または、前記導引段差と前記固定子固定台(8)とが一体になるように鋳造される。
【0012】
前記固定子固定台(8)が前記ケーシング本体(1)に固定されるか、または、前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体(1)とが一体になるように鋳造されるか、または、前記固定子固定台(8)がケーシング本体エンドカバー(10)に固定されるか、または、前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体のエンドカバー(10)とが一体になるように鋳造される。
【0014】
複数の油導出孔(3)は、固定子固定台(8)の円周壁に分布しており、固定子固定台(8)のトップから順次に下に向き、それぞれの油導出孔(3)の孔径が順次に増大する。
【0015】
さらに、本発明は、ケーシングと、固定子組立体とを含み、前記ケーシングは、ケーシング本体(1)と、油導入孔(7)と、油通路(2)と、油導出孔(3)と、固定子固定台(8)と、ケーシングのエンドカバー(10)とを有し、前記油導入孔(7)がケーシング(1)に位置し、前記油導出孔(3)が固定子固定台(8)に位置し、前記油通路(2)がケーシング本体(1)の内部に位置するとともに、前記油導入孔(7)及び油導出孔(3)と連通するように設けられ、前記固定子組立体は、固定子コア(5)と、巻線コイル(6)と、絶縁(12)とを有し、前記油導出孔(3)が巻線コイル(6)の上方に位置するように設けられる電動モータに適用する電動モータの油冷却方法であって、前記油導出孔(3)と前記巻線コイル(6)との間に、前記固定子固定台(8)に固定されているか又は前記固定子固定台(8)と一体的に形成された導引段差を設け、冷却油が油導入孔(7)から入前記油通路(2)を流通して前記油導出孔(3)から流出するとき、前記導引段差が油導出孔(3)から流出した冷却油を導引して、ケーシング本体(1)の円周壁に流失させずに巻線コイル(6)に直接かけ、前記導引段差の形状がV字形であり、該V字形導引段差の二つのアームが基端から上に延びて構成されており前記油導出孔(3)の出口は、前記V字形導引段差の二つのアームの中間であって前記基端に近い位置に配置されていることを特徴とする。
【0016】
前記導引段差が前記固定子固定台(8)に固定されるか、または、前記導引段差と前記固定子固定台(8)とが一体になるように鋳造される。
【0017】
前記固定子固定台(8)がケーシング本体(1)の上に固定されるか、または、前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体(1)とが一体になるように鋳造されるか、または、前記固定子固定台(8)がケーシング本体のエンドカバー(10)に固定されるか、または、前記固定子固定台(8)と前記ケーシング本体のエンドカバー(10)とが一体になるように鋳造される。
【0019】
複数の油導出孔(3)が固定子固定台(8)の円周壁に分布しており、固定子固定台(8)のトップから順次に下に向き、それぞれの油導出孔(3)の孔径が順次に増大する。
【発明の効果】
【0020】
上記の技術方法から分かるように、本発明のように、電動モータの油導出孔と巻線コイルとの間に導引段差が設置され、冷却油が油導入孔から入り、油通路を流通して、油導出孔から流出する際、油導出孔から流出した冷却油が前記導引段差に導引され、巻線コイルにかけるという方法によれば、冷却油が油導出孔から流出した後、表面張力でケーシングの円周壁及びケーシング本体のエンドカバーに流失することを避けて、冷却油を直接に巻線コイルにかけることにより、巻線コイルを均一的に冷却することができる。このことは電動モータの巻線コイルの冷却効率を大きく高め、ひいては電動モータの耐熱性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来の技術における電動モータのケーシング及び固定子組立体を示す説明図である。
図2図1に示す線AA’に沿った断面図である。
図3図2の線BB’に沿った断面図である。
図4】本発明における電動モータの参考例の模式図である。
図5図4の線CC’に沿った断面図である。
図6】本発明における電動モータの実施形態の模式図である。
図7図6に示す実施形態におけるV字形の導引段差の構成模式図である。
図8図6の線DD’に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の核心的主旨とは、電動モータにおいて、冷却油を導引して巻線コイルへ流すための導引段差を増設することで、導引段差の作用によって、冷却油がケーシングの円周壁及びケーシングのエンドカバーに流失することなく、直接、巻線コイルにかけることができることである。
【0023】
本発明の目的、技術方法及びメリットをさらに明瞭にするために、以下、図面及び具体的な参考例及び実施形態に合わせて本発明を詳しく説明する。
【0024】
図4は、本発明における電動モータの参考例を示す説明図である。図4は断面図であり、図1に示す線AA’に沿った断面図である。図4を参照するように、電動モータは、ケーシング及び固定子組立体を含む。ケーシングは、ケーシング本体1と、油導入孔7と、油通路2と、油導出孔3と、固定子固定台8及びケーシングのエンドカバー10とを含む。その内、前記油導入孔7がケーシング1に位置し、前記油導出孔3が固定子固定台8に位置し、前記油通路2がケーシング本体1の内部に位置するとともに、前記油導入孔7及び導前記油導出孔3と連通する。前記固定子組立体は、固定子コア5と、巻線コイル6と、絶縁12とを含む。ここで、図4に示す断面図においては絶縁12が見られないが、後の図5には絶縁12の位置を示す。前記油導出孔3が巻線コイル6の上方に位置する。上記の構成は従来の技術と同じである。
【0025】
本発明の参考例及び後述する実施形態において、図4に示す電動モータは、さらに、油導出孔3と巻線コイル6との間に位置する導引段差4を含む。図4に示す参考例において、該導引段差は円筒状である。このように、油導入孔7から入ってきた冷却油は 、油通路2を流通して、油導出孔3から流出した後、円筒形の導引段差4に導引され、導引段差4の内側に沿って流出して、ケーシングの円周壁に流失することなく、直接、巻線コイル6にかかる。
【0026】
図4に示す参考例において、円筒形の導引段差4は、前記固定子固定台8に固定されてもよい。または、前記円筒形の導引段差4と前記固定子固定台8とが一体になるように鋳造されてもよい。ここで、前記固定子固定台8がケーシング本体1の上に固定されてもよい。または、前記固定子固定台8と前記ケーシング本体1とが一体になるように鋳造されてもよい。なお、前記固定子固定台8がケーシング本体のエンドカバー10に固定されてもよい、または、前記固定子固定台8と前記ケーシング本体のエンドカバー10とを一体になるように鋳造されてもよい。
【0027】
図4に示す参考例において、前記油通路2は、ケーシング本体1の内部に溝切り、ボーリングまたは鋳造によって形成される。
【0028】
図5は、図4に示す線CC’に沿った断面図である。図5において、図4に示していない絶縁12が示されており、且つ矢印で冷却油が油導入孔7から油通路2を流通して油導出孔3に到達し、及び油導出孔3から円筒形の導引段差4を流通して巻線コイル6に到達する経路が示されている。
【0029】
図5を参照すると、複数の油導出孔3は固定子固定台8の円周壁に分布しているが、油導入孔7は1つしかないとともに、ケーシング本体1の上端に位置する。従来の技術において、各油導出孔3の寸法が一致しているので、固定子固定台8の最上端に位置する油導出孔3からの油導出量は最大となるが、固定子固定台8のトップ端から順次に下方に向かって、各油導出孔3の油導出量は徐々に減少するので、各巻線コイル6の冷却にばらつきが生じてしまう。そのため、本発明の参考例及び後述する実施形態において、固定子固定台8の上端から順次に下方に向かって、各油導出孔3の孔径を順次に増大させる。したがって、どの油導出孔3でも油導出量がほぼ一致することが保証でき、大部分の油が1つの油導出孔3から1つのコイルに流れ、他の油導出孔3からの油導出量が減少してしまうことを避けることができる。
【0030】

図6は、本発明における電動モータの実施形態を示す説明図である。図6は断面図であって、図1に示す線AA’に沿った断面図である。図6を参照するように、電動モータは、ケーシング及び固定子組立体を含む。ケーシングは、ケーシング本体1と、油導入孔7と、油通路2と、油導出孔3と、固定子固定台8と、ケーシングのエンドカバー10とを含む。その内、前記油導入孔7がケーシング1に位置し、前記油導出孔3が固定子固定台8に位置し、前記油通路2がケーシング本体1の内部に位置するとともに、前記油導入孔7及び導前記出孔3と連通する。前記固定子組立体は、固定子コア5と、巻線コイル6と、絶縁12とを含む。ここで、図6に示す断面図においては絶縁12が見られないが、後の図8には絶縁12の位置を示す。前記油導出孔3が巻線コイル6の上方に位置する。上記の構成は従来の技術と同じである。
【0031】
本発明の実施形態において、図6に示す電動モータは、さらに、油導出孔3と巻線コイル6との間に位置しているV字形の導引段差9を含む。このように、油導入孔7から入ってきた冷却油が 、油通路2を流通して、油導出孔3から流出した後、V字形の導引段差9に導引され、ケーシングの円周壁に流失することなく、直接、巻線コイル6にかかる。図7は、図6に示す実施形態におけるV字形の導引段差の構成を示す模式図である。図7においては、矢印で油導出孔3から流出した冷却油がV字形の導引段差9を介して流通する経路が示されている。
【0032】
図6に示す実施形態において、V字形の導引段差9は、前記固定子固定台8に固定されてもよい、または、前記V字形の導引段差9と前記固定子固定台8とが一体になるように鋳造されてもよい。ここで、前記固定子固定台8がケーシング本体1の上に固定されてもよい、または、前記固定子固定台8と前記ケーシング本体1とが一体になるように鋳造されてもよい。なお、前記固定子固定台8が前記ケーシング本体のエンドカバー10に固定されてもよい、または、前記固定子固定台8と前記ケーシング本体のエンドカバー10とを一体になるように鋳造されてもよい。
【0033】
図6に示す実施形態において、前記油通路2は、ケーシング本体1の内部に溝切り、ボーリングまたは鋳造によって形成される。
【0034】
図8は、図6に示す線DD’に沿った断面図である。図8において、図6に示されていない絶縁12が示されており、且つ矢印で冷却油が油導入孔7から油通路2を流通して油導出孔3に到達し、及び油導出孔3からV字形の導引段差9を流通して巻線コイル6に到達する経路が示されている。
【0035】
上記の参考例及び実施形態において、円筒形の導引段差4とV字形の導引段差9が提供されたが、他の参考例においては、導引段差が半円形、半楕円形又は三面矩形にしてもよいので、ここで一々取り上げない。
【0036】
以上まとめると、従来の電動モータに対する冷却方法で、ケーシング本体に1つの油導出孔又は円周壁に沿って複数の油導出孔をボーリングすることのみであり、導引段差を実装することがない。従って、これらの油導出孔から流出した後、油の表面張力及び低圧の原因により、大部分の油はケーシング本体の円周壁の壁面又はエンドカバーに流失してしまい、巻線コイルを直接冷却していない。これに対して、本発明において、電動モータの油導出孔と巻線コイルとの間に導引段差を設置して、冷却油が油導入孔から入り、油通路を流通して、油導出孔から流出する際、前記導引段差が油導出孔から流出した冷却油を導引して、巻線コイルにかける技術方法では、冷却油が油導出孔から流出した後、表面張力でケーシングの円周壁及びケーシング本体のエンドカバーに流失することを回避して、冷却油を巻線コイルに直接かけることにより、巻線コイルを均一に冷却することができる。これにより、電動モータの巻線コイルの冷却効率を大きく高め、ひいては電動モータの耐熱性を向上させる。
【0037】
上記は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明を限定するものではない。本発明の主旨及び原則を逸脱しない限り、本発明に対する如何なる補正、同等な入れ替え、改良など、いずれも本発明の保護範囲内に属するべきである。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8