特許第6070959号(P6070959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6070959制振装置、および当該制振装置を備えたエレベータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070959
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】制振装置、および当該制振装置を備えたエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20170123BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20170123BHJP
   B66B 5/18 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B66B11/02 D
   B66B5/02 P
   B66B5/18 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-2870(P2014-2870)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-131695(P2015-131695A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 晋治
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−152033(JP,A)
【文献】 特開平03−013481(JP,A)
【文献】 特開2011−042411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 5/02
B66B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ロープで吊り下げられ上下方向に敷設されたガイドレールに案内されて昇降するかごを有するエレベータの前記かごに設けられる制振装置であって、
前記かごに取り付けられる減衰器一対と、
前記かごの停止中に、前記一対の減衰器の各々を介して前記ガイドレールに押圧され、当該ガイドレールとの間で生じる摩擦力によって前記ガイドレールに固定される固定部材一対と、
平面視でX字状に交差された第1アームと第2アームとが交差部分において、相対的に回転可能に軸支されると共に、当該軸支部分が前記かごに対し上下方向に不動に取り付けられる開閉機構と、
前記第1アームと前記第2アームの前記軸支部分に対して同じ側に在る一端部同士を近接させることにより、当該第1アームおよび第2アームを前記軸支部分を中心として回転させ、他端部同士が閉じる向きに近接させるアクチュエータと、
を有し、
前記一対の固定部材の各々が、それぞれ、前記第1アームと前記第2アームの前記他端部に、前記一対の減衰器の各々を介して連結されて、当該一対の固定部材が前記ガイドレールを間に挟んで対向配置され、
前記かごの停止中に、前記アクチュエータが作動されると、前記他端部同士が近接されて、前記固定部材の各々が前記ガイドレールに押圧され、
前記減衰器は、前記主ロープの横振動に伴う前記かごの上下方向の運動に抵抗を与えることを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記固定部材は金属板にゴム層が積層されたものであり、前記ゴム層の前記金属板とは反対側の主面が前記ガイドレールに押圧されることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記減衰器の各々はシリンダとピストンロッドを有するオイルダンパであって、その軸心が上下方向となる姿勢で、それぞれ設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記減衰器の各々は、シリンダと当該シリンダの両端部から一部が突出してなるピストンロッドとを有し、前記シリンダが前記ピストンロッドに対し軸心方向に相対的にスライド自在になっていると共に前記シリンダが前記軸心を中心として前記ピストンロッドに対し回転自在に構成されているオイルダンパであって、
前記第1アームと前記第2アーム各々の前記他端部に前記各オイルダンパの前記ピストンロッドの軸心が上下方向となるように前記シリンダが接合されていると共に、前記ピストンロッドに前記固定部材が取着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項5】
主ロープで吊り下げられ、上下方向に敷設されたガイドレールに案内されて昇降するかごを有し、
前記かごに請求項1〜4のいずれか1項に記載された制振装置が設けられていることを特徴とするエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主ロープで吊るされて昇降するかごにより人や荷物を運搬するエレベータにおいて、地震等により当該エレベータが設置された建物が揺れるのに起因して生じる主ロープの振れに対する制振技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高層化が進むにつれ、ロープ式エレベータにおいて、地震や強風による建物の揺れに伴う主ロープの振れが問題になっている。
【0003】
ロープ式エレベータの多くは、かごの昇降路最上部よりも上に機械室が設けられ、かごを駆動する巻上機が当該機械室に設置されている。巻上機を構成する綱車には、主ロープが掛けられており、主ロープの一端側にはかごが、他端側には釣合おもりが連結されて、それぞれが主ロープによって吊下げられている。そして、原動機によって前記綱車を正転または逆転することにより、鉛直方向に敷設されたガイドレールに案内されたかごが昇降される構成となっている。
【0004】
このような構成のエレベータにおいて、例えば、長周期地震動により建物が揺れると、建物最上部からかごを吊下げている主ロープが水平方向に振れる(以下、この水平方向の主ロープの振れを「横振動」と称する。)。この場合、横振動する主ロープに引っ張られて(引き上げられて)、かごは前記横振動の2倍の周波数で上下動する。建物の揺れが収まった後は、かごがその自重により、主ロープを鉛直方向下方に引っ張る力が、主ロープの横振動を減衰させるように作用することとなる。
【0005】
地震による揺れを検知すると、所定の避難階までかごを昇降させ、当該避難階でかごを停止させた状態で、主ロープの横振動が十分に減衰するのを待って、運転を再開するようにしている。
【0006】
ところが、長周期地震動は、その周波数が高層建物の固有振動数に近い場合が多いので、建物が大きく揺れ、これにより主ロープの横振動の振幅も増大するため、地震が収まった後も、当該横振動はなかなか収束せず運転再開までに多くの時間を要してしまうこととなる。
【0007】
これに対処するため、特許文献1には、停止中におけるかごの鉛直方向の変位を拘束するかご用拘束装置を備えたエレベータが開示されている。具体的には、前記かご用拘束装置は、かごに設けられた摩擦材をガイドレールに押付けることにより、かごの鉛直方向の変位を拘束するものである。これによれば、『主ロープの弛みが発生せず、主ロープの水平方向の振れを小さく抑えることができる。』とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−284217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、引用文献1に記載された従来のエレベータでは、主ロープの横振動に伴って上下動するかごが最も高い位置に至った時に当該かごが拘束されてしまうと、主ロープは弛んだままの状態となる。この場合、主ロープがそれ以上弛むのは抑制される可能性はあるものの(すなわち、主ロープの横振動がそれ以上増幅されるのは抑制される可能性があるものの)、建物の揺れが収まったとしても、かごは拘束されている関係上、当該かごの自重が主ロープの横振動を制振するようにはほとんど作用しないため、前記横振動はなかなか減衰しないこととなる。
【0010】
また、かごが最も低い位置に至った時に当該かごが拘束された場合でも、主ロープの振れの勢いによって、ガイドレールに押付けられた摩擦材がずり上がってしまうと思われるため、かごの上方への変位を完全に止める(拘束する)ことは困難であると考えられる。この場合においても、主ロープが弛んだままの状態でかごが拘束されてしまうこととなるので、上述した場合と同様、主ロープの横振動はなかなか減衰しないこととなる。
【0011】
本発明は、上記した課題に鑑み、上記従来のエレベータよりも主ロープの横振動の収束を早めることができる制振装置、および当該制振装置を備えたエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る制振装置は、主ロープで吊り下げられ上下方向に敷設されたガイドレールに案内されて昇降するかごを有するエレベータの前記かごに設けられる制振装置であって、前記かごに取り付けられる減衰器一対と、前記かごの停止中に、前記一対の減衰器の各々を介して前記ガイドレールに押圧され、当該ガイドレールとの間で生じる摩擦力によって前記ガイドレールに固定される固定部材一対と、平面視でX字状に交差された第1アームと第2アームとが交差部分において、相対的に回転可能に軸支されると共に、当該軸支部分が前記かごに対し上下方向に不動に取り付けられる開閉機構と、前記第1アームと前記第2アームの前記軸支部分に対して同じ側に在る一端部同士を近接させることにより、当該第1アームおよび第2アームを前記軸支部分を中心として回転させ、他端部同士が閉じる向きに近接させるアクチュエータと、を有し、前記一対の固定部材の各々が、それぞれ、前記第1アームと前記第2アームの前記他端部に、前記一対の減衰器の各々を介して連結されて、当該一対の固定部材が前記ガイドレールを間に挟んで対向配置され、前記かごの停止中に、前記アクチュエータが作動されると、前記他端部同士が近接されて、前記固定部材の各々が前記ガイドレールに押圧され、前記減衰器は、前記主ロープの横振動に伴う前記かごの上下方向の運動に抵抗を与えることを特徴とする。
【0013】
また、前記固定部材は金属板にゴム層が積層されたものであり、前記ゴム層の前記金属板とは反対側の主面が前記ガイドレールに押圧されることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記減衰器の各々はシリンダとピストンロッドを有するオイルダンパであって、その軸心が上下方向となる姿勢で、それぞれ設けられることを特徴とする。
【0015】
また、前記減衰器の各々は、シリンダと当該シリンダの両端部から一部が突出してなるピストンロッドとを有し、前記シリンダが前記ピストンロッドに対し軸心方向に相対的にスライド自在になっていると共に前記シリンダが前記軸心を中心として前記ピストンロッドに対し回転自在に構成されているオイルダンパであって、前記第1アームと前記第2アーム各々の前記他端部に前記各オイルダンパの前記ピストンロッドの軸心が上下方向となるように前記シリンダが接合されていると共に、前記ピストンロッドに前記固定部材が取着されていることを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明に係るエレベータは、主ロープで吊り下げられ、上下方向に敷設されたガイドレールに案内されて昇降するかごを有し、前記かごに上記した制振装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成からなる制振装置によれば、かごの自重に加え、減衰器によって与えられるかごの上下の運動に対する抵抗が主ロープに加わることとなるため、主ロープ下端の上下方向の移動が単に拘束されるにすぎない上記従来技術よりも、主ロープの横振動の収束を早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るエレベータの概略構成を示す図である。
図2】上記エレベータのかごに設置されている制振装置および当該制振装置の近傍の概略構成を示す正面図である。
図3】上記制振装置およびその近傍の概略構成を示す平面図である。
図4】上記制振装置を構成する第1アームおよび第2アームの基台への取付部分の概略構成を示す断面図である。
図5】(a)は、図3において矢印Aの向きに第1および第2固定部材、第1および第2オイルダンパ等を視た図であり、(b)は、第1および第2アームの先端部およびその近傍を拡大した平面図である。
図6】上記制振装置において、第1アームと第2アームが閉じられて、第1固定部材と第2固定部材でかご用ガイドレールが把持された状態を示す平面図である。
図7】上記制振装置における第1および第2オイルダンパの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、実施形態に係るエレベータ10は、駆動方式としてトラクション方式を採用したロープ式エレベータである。かご12の昇降路14最上部よりも上の建物16部分に機械室18が設けられており、機械室18には、巻上機20とそらせ車22が設置されていて、巻上機20を構成する綱車24とそらせ車22には、主ロープ26が巻き掛けられている。巻上機20は、綱車24が取着されたシャフト23を回転駆動する巻上機モータ(不図示)とシャフト23を制動して綱車24の回転を停止させるブレーキ(不図示)とを有している。
【0020】
主ロープ26の一端部にはかご12が連結されており、他端部には釣合いおもり28が連結されている。建物16内には、一対のかご用ガイドレール30,32と一対の釣合いおもり用ガイドレール34,36とが敷設されている。ガイドレール30,32,34,36の各々は、鉄鋼材料からなり、上下方向に敷設されている。
【0021】
かご12の上下端部には、それぞれ一対のガイドローラ38,40、および一対のガイドローラ42,44が取り付けられており、これらガイドローラ38,40,42,44によって、かご12がガイドレール30,32に沿って案内される。同じく、釣合いおもり28の上下端部には、それぞれ一対のガイドローラ46,48、および一対のガイドローラ50,52が取り付けられており、これらガイドローラ46,48,50,52によって、釣合いおもり28がガイドレール34,36に沿って案内される。
【0022】
昇降路14最下部の図外のピットには、地震による初期微動(P波)や主要動(S波)を感知する加速度式地震感知器(不図示)が設置されており、機械室18には、地震や強風に伴って生じる建物16の長周期揺れを検知する長周期センサ(不図示)が設置されている。
【0023】
機械室18には、また、巻上機20の前記巻上機モータや前記ブレーキなどの駆動制御をおこなう制御装置54が設置されている。制御装置54は、CPUにROM、RAMが接続された構成を有している。CPUは、ROMに格納された各種制御プログラムを実行することにより、前記巻上機モータや前記ブレーキなどを統括的に制御して、円滑なかごの昇降動作等による通常運転を実現する一方、前記加速度式地震検知器や前記長周期センサの感知結果に基いて管制運転を実現する。
【0024】
上記構成からなるエレベータ10において、制御装置54により前記巻上機モータが駆動制御されて、綱車24が正転あるいは逆転されると、綱車24に巻き掛けられた主ロープ26が走行し、主ロープ26で吊り下げられたかご12が、ガイドレール30,32に案内されて昇降する。
【0025】
また、例えば、前記長周期センサによって建物16の長周期揺れが検知されると、制御装置54は、巻上機20などの各種機器を制御して、かご12を所定の避難階に停止させる。そして、既述したように、避難階にかごを停止させた状態で、主ロープ26の横振動が十分に減衰するのを待って、運転が再開される。
【0026】
この場合に、可能な限り主ロープ26の横振動の増幅を抑制すると共に、当該横振動の減衰を促進するための制振装置56,58がかご12に付設されている。
【0027】
制振装置56,58は、それぞれ、かご12上部に設置されており、一方の制振装置56は、ガイドローラ38の近傍に、もう一方の制振装置58は、もう一方のガイドローラ40の近傍に設けられている。制振装置56と制振装置58とは同様の構成なので、制振装置56を代表にし、図2図3を参照しながら説明する。
【0028】
制振装置56は、かご12に対し一対の脚60,62(脚62は図3にのみ現れている。)を介して固定された基台64上面に取り付けられている。
【0029】
制振装置56は、第1アーム66と第2アーム68からなる一対のアーム66,68を有している。両アーム66,68は「X」字状に立体交差された状態(重ねられた状態)で、当該交差部分が、回転軸(ピボット)としての六角穴付きボルト70(以下、単に「ボルト70」と言う。)によって連結されると共に、ボルト70を介して基台64に取り付けられている。
【0030】
両アーム66,68の基台64への取付部分について、図4を参照しながら説明する。基台64の上面には、鍔付き円筒部材からなる支柱72が取り付けられている。支柱72は、その鍔部72Aが不図示のボルト複数本によって、基台64に固定されている。支柱72の内周面には、雌ねじ72Bが形成されている。第1アーム66と第2アーム68には、それぞれ、貫通孔66A、68Aが開設されている。貫通孔66A,68Aに挿入されたボルト70が雌ねじ72Bに螺合されて、両アーム66,68が基台64に取り付けられている。また、第1アーム66と支柱72の間のボルト70部分には、平ワッシャ74とスラストベアリング76が嵌め込まれており、第2アーム68とボルト70頭部70Aとの間のボルト70部分には、平ワッシャ78とスラストベアリング80とが嵌め込まれている。
【0031】
上記の取付構造により、第1アーム66と第2アーム68とは、基台64、ひいてはかご12に対し、矢印Bで示す鉛直方向(上下方向)には不動に固定されると共に、鉛直方向(上下方向)に向いたボルト70の軸心と直交する仮想水平面内で、ボルト70の軸心を中心として回転可能となっている。
【0032】
図3に戻り、当該図において、ボルト70に対して、第1および第2アーム66,68各々の右側端部を「先端部66F,68F」とし、左側端部を「後端部66R,68R」とする。
【0033】
第1アーム66の後端部66Rと第2アーム68の後端部68Rとは、公知のプル型ソレノイド82(以下、単に「ソレノイド82」と言う。)で連結されている。ソレノイド82は、有底円筒状をしたメインフレーム84と中空円板状をしたフロントフレーム88とからなるフレーム内壁にコイル(不図示)が配されてなるソレノイド本体89を有しており、前記コイルに通電することにより、可動子であるプランジャ86がメインフレーム84側へ後退する構成となっている。ここで、前記コイルに通電して、プランジャ86をメインフレーム84側へ後退させることを、ソレノイド82をオンすると言い、前記コイルへの通電を遮断することを、ソレノイド82をオフすると言うこととする。
【0034】
図2図3に示すように、プランジャ86の先端部分は、いわゆる二面取り加工により、平板部86Aが形成されている。平板部86Aには、その厚み方向に貫通孔(不図示)が開設されており、第1アーム66の後端部66Rにも貫通孔(不図示)が開設されている。そして、両貫通孔に挿入された鍔付きシャフト90によって、第1アーム66の後端部66Rとプランジャ86とが、鍔付きシャフト90の軸心を中心として相対的に回転自在となる状態で連結されている。なお、鍔付きシャフト90の鍔部90Aとは反対側の端部部分には、E型止め輪92が嵌入されていて、鍔付きシャフト90の第1アーム66およびプランジャ86からの抜け止めがなされている。
【0035】
図3に示すように、有底円筒状をしたメインフレーム84の外底部には、平板部94Aを有する連結部材94が取り付けられている。平板部94Aと第2アーム68の後端部68Rとは、プランジャ86と第1アーム66の後端部66Rとの上記した連結態様と同様に連結されている。すなわち、平板部94Aには、その厚み方向に貫通孔(不図示)が開設されており、第2アーム68の後端部68Rにも貫通孔(不図示)が開設されていて、両貫通孔に挿入された鍔付きシャフト96によって、第2アーム68の後端部68Rと平板部94Aとが、鍔付きシャフト96の軸心を中心として相対的に回転自在となる状態で連結されている。なお、鍔付きシャフト96の鍔部とは反対側の端部部分に嵌め込まれているE型止め輪は図に現われていない。
【0036】
第1アーム66の後端部66Rとソレノイド82のフロントフレーム88との間には、プランジャ86と平行に圧縮コイルばねからなるリターンスプリング98が設けられている。
【0037】
図2に示すように、ソレノイド82の下部には、フロントフレーム88に固定されたブラケット100を介して、公知のボールローラ102が取り付けられている。ボールローラ102は、主としてソレノイド82の自重を支持すると共に、基台64上面(水平面)と平行な任意の方向のソレノイド82の移動を可能にする。なお、ソレノイド82の自重を支持すると共に、基台64上面(水平面)と平行な任意の方向のソレノイド82の移動を可能するものであれば、ボールローラ102に限らず、例えば、キャスター(脚輪)を用いても構わない。
【0038】
また、基台64上面(水平面)と平行な任意の方向に移動可能とされているソレノイド82を、基台64に対し図3に示す位置に保持する保持手段93が設けられている。保持手段93は、基台64に立設されたL字アングル材からなる一対のブラケット95,97を有している。一方のブラケット95は、フロントフレーム88の近傍に設けられ、もう一方のブラケット97は、メインフレーム84の外底部近傍に設けられている。ブラケット95とフロントフレーム88との間には、プランジャ86の軸心と平行に圧縮コイルばね99が設けられており、ブラケット97とメインフレーム84の外底部との間には、同じくプランジャ86の軸心と平行に圧縮コイルばね101が設けられている。両圧縮コイルばね99,101は、同じ仕様のものであり、各々、自由長から同じ長さ分だけ圧縮された状態で設けられている。これにより、両圧縮コイルばね99,101の復元力によって、ソレノイド本体89が図3に示す位置に保持されている。なお、ソレノイド本体89を図3に示す位置に保持するための弾性部材は、圧縮コイルばねに限らず、引張コイルばねを用いても構わない。
【0039】
上記の構成において、ソレノイド82がオンされると、プランジャ86がメインフレーム84に向かって後退し、これに伴い、第1アーム66の後端部66Rと第2アーム68の後端部68Rが相対的に接近すると共に、ボルト70の軸心を中心として、第1アーム66は時計方向に、第2アーム68は反時計方向にそれぞれ回転する。その結果、第1アーム66の先端部66Fと第2アーム68の先端部68F同士が接近する。また、フロントフレーム88と第1アーム66の後端部66Bとの距離が短縮されて、リターンスプリング98が圧縮される。
【0040】
ソレノイド82がオフされると、リターンスプリング98の復元力によって、プランジャ86が、図3に示す位置に復帰する。これに伴い、第1アーム66の後端部66Rと第2アーム68の後端部68Rが相対的に離間すると共に、ボルト70の軸心を中心として、第1アーム66は反時計方向に、第2アーム68は時計方向にそれぞれ回転して、図3に示す位置に復帰する。その結果、第1アーム66の先端部66Fと第2アーム68の先端部68F同士も離間して、図3に示す位置に復帰する。
【0041】
第1および第2アーム66,68の各々において、ボルト70の軸芯から先端部までの距離は後端部までの距離よりも短く設定されている。これにより、ボルト70を支点、両後端部を作用点、両先端部を力点とする第1種てこ(レバー)が構成されている。ここで、ソレノイド82がオンされて、第1アーム66,68の先端部66F,68F同士が近接されることを「アームが閉じられる」と称し、ソレノイド82がオフされて、リターンスプリング98の復元力により第1アーム66,68の先端部66F,68F同士が離間されて元の位置に復帰されることを「アームが開かれる」と称することとする。また、前記各動作が完了して、その状態が継続していることを、それぞれ、「アームが閉じられた状態」、「アームが開かれた状態」と称することとする。なお、ソレノイド82のオン・オフ制御も不図示の信号線を介して制御装置54(図1)によりなされる。
【0042】
第1アーム66の先端部66Fには、第1オイルダンパ104を介して第1固定部材106が連結されており、第2アーム68の先端部には、第2オイルダンパ108を介して第2固定部材110が連結されている。
【0043】
図5(a)を参照しながら、第1および第2オイルダンパ104,108、並びに第1および第2固定部材106,110について説明する。なお、図5(a)において、第1オイルダンパ104は、断面図で表している。また、第1オイルダンパ104と第2オイルダンパ108、第1固定部材106と第2固定部材110とは、同様の構成なので、対応する構成部分には、同じ符号を付し、第1オイルダンパ104と第1固定部材106を代表に説明する。
【0044】
第1オイルダンパ104は、油の粘性抵抗を利用した減衰器であり、シリンダ112内にピストン114が収納され、ピストン114に取着されたピストンロッド116の両端部部分の一部が、シリンダ112から露出した構成を有するものである。シリンダ112内には、作動油118が充填されており、ピストンロッド116とシリンダ112との間には、作動油118がシリンダ112内から漏出しないようにシール材(不図示)が設けられている。また、ピストン114には、オリフィス114Aが設けられている。
【0045】
上記の構成において、言うまでもなく、ピストン114およびピストンロッド116とシリンダ112とは、ピストンロッド116の軸心方向に相対的にスライドする。また、シリンダ112は、ピストン114およびピストンロッド116に対し、ピストンロッド116の軸心を中心として相対的に回転可能となっている。
【0046】
ピストンロッド116の両端部には、一対の取付板120,122が接合されており、両取付板120,122に第1固定部材106が接合されている。
【0047】
第1固定部材106は、鋼板などからなる金属板106Aにゴム層106Bが積層されてなるものであり、ゴム層106Bとは反対側の金属板106A主面に両取付板120,122が接合されている。ゴム層106Bは、例えば、合成ゴムまたはネオプレーンゴムからなり、接着剤(不図示)により金属板106Aに強固に接着されている。
【0048】
また、シリンダ112と上側の取付板120との間のピストンロッド116部分には、圧縮コイルばね124が外挿されている。
【0049】
図3に戻り、第1オイルダンパ104のシリンダ112の周面に第1アーム66の先端部66Fが接合されており、図2にも示すように、第2オイルダンパ108のシリンダ112の周面に第2アーム68の先端部68Fが接合されている。
【0050】
以上により、第1固定部材106と第2固定部材110が、かご用ガイドレール30を間に挟んで対向配置されることとなる。ここで、ピストンロッド116に取付板120,122を介して取着されている第1および第2固定部材106,110は、シリンダ112(ピストンロッド116)の軸心を中心として揺動自在となっているため、揺動範囲を規制するためのストッパ128が第1および第2オイルダンパ104,108のシリンダ112に取着されている。図5(b)に示すように、ストッパ128は、略台形状を成し、円形の貫通孔を有する板体からなる。ストッパ128は、前記貫通孔にシリンダ112が挿入されてシリンダ112外周に固着されており、ストッパ128は、シリンダ112に対し回転不能となっている。
【0051】
これにより、第1および第2固定部材106,110が揺動しても、図5(b)に一点鎖線で示すように、平面視で金属板106A,110Aの角がストッパ128の一辺に当接してそれ以上の揺動が規制される。なお、第1および第2固定部材106,110の揺動範囲を規制する理由については後述する。
【0052】
次に、上記の構成からなる制振装置56の動作について説明する。通常運転の際には、ソレノイド82がオフされてアームが開かれた状態が維持され、図3図5(a)に示すように、第1固定部材106と第2固定部材110は、かご用ガイドレール30から離間している(かご用ガイドレール30とは非接触状態となっている。)。
【0053】
この場合、図5(a)に示すように、圧縮コイルばね124によって、第1固定部材106、第2固定部材110等の自重が支持され、シリンダ112が上部取付板120と下部取付板122の間の中央に位置する状態が維持される。すなわち、シリンダ112の上端と上部取付板120の下面との間の距離L1とシリンダ112の下端と下部取付板122の上面との間の距離L2とが略等しい状態が維持されている。
【0054】
そして、管制運転の一環として、かご12(図1)の停止中に、ソレノイド82がオンされてアームが閉じられると、第1固定部材106と第2固定部材110とが、それぞれ、第1オイルダンパ104および第2オイルダンパ108を介して、相反する向きにかご用ガイドレール30に押圧され、図6図7(a)に示すように、第1固定部材106と第2固定部材110とでかご用ガイドレール30が把持される。なお、図7においては、便宜上、圧縮コイルばね124とストッパ128の図示は省略している。
【0055】
押圧された第1固定部材106と第2固定部材110とは、かご用ガイドレール30との間で生じる摩擦力(本例では、かご用ガイドレール30とゴム層106B,110Bとの間で生じる摩擦力)によって、かご用ガイドレール30に固定される。ここで、「固定される」とは、前記摩擦力によって、第1固定部材106および第2固定部材110が、ガイドレール30に対し(特に上下方向に)不動となることを言う。特に、本例では、かご用ガイドレール30と接触する部分を、ゴム材料からなるものを用いているため、高い摩擦力が得られる。このため、かご用ガイドレール30と接触する部分を金属材料からなるもので構成した場合と比較して、第1および第2固定部材106,110を確実にかご用ガイドレール30に固定することができる。
【0056】
また、仮に、かご用ガイドレール30と接触する部分を金属材料で形成した場合、不測の外力が加わって、固定部材がかご用ガイドレール対してスリップすると不快な金属音が発生するおそれがあるが、本例では、ゴム材料で形成しているため、そのような不快な音の発生を可能な限り抑制することができる。
【0057】
なお、押圧状態における第1固定部材106および第2固定部材110とかご用ガイドレール30との間で生じる摩擦力(本例では、ゴム層106B,110Bとかご用ガイドレール30との間で生じる摩擦力)は、減衰器である第1オイルダンパ104および第2オイルダンパ108)の抵抗力(本例では、粘性抵抗力)よりも大きくなるように設定されている。
【0058】
また、図3に示す、第1固定部材106とかご用ガイドレール30の間のクリアランスC1(以下、単に「C1」とする)と、第2固定部材110とかご用ガイドレール30の間のクリアランスC2(以下、単に「C2」とする)とは、昇降や主ロープ26の横振動に伴うかご12の揺れ等によって変動するため、C1とC2とが常に等しいとは限らない。C1とC2との間に差が生じている場合であっても、以下に記すように、第1および第2固定部材106,110の両方で、確実に、かご用ガイドレール30が把持されるようになっている。
【0059】
例えば、C1の方がC2よりも短い場合(C1<C2)、アームが閉じられると、先ず、第1固定部材106がかご用ガイドレール30に当接する。このとき、第1固定部材106は、シリンダ112の軸心を中心として揺動自在となっているため、当接直前における第1固定部材106の当接面がかご用ガイドレール30の被当接面と平行でなくても、かご用ガイドレール30に一部(角部)が当接した後、第1固定部材106は、適度に揺動して、かご用ガイドレール30と全面で面接触することとなる。
【0060】
第1固定部材106が、かご用ガイドレール30に当接すると、第1アーム66のボルト70を中心とする回転は止まる。ソレノイド82においてプランジャ86がソレノイド本体89側へ引き込まれるのに伴って、圧縮コイルばね99の付勢力に抗してプランジャ本体89が第1アーム66の後端部66Rの方向に移動する。プランジャ本体89の上記移動によって、第2アーム68がボルト70を中心として反時計方向へ回転し、第2固定部材110がかご用ガイドレール30に当接する。第2固定部材110は、第1固定部材106と同様、かご用ガイドレール30と全面接触する。そして、アームが閉じられた状態で、かご用ガイドレール30に全面接触状態で第1固定部材106と第2固定部材110とが略均等に押圧されて、第1固定部材106と第2固定部材110とでかご用ガイドレール30が把持される。
【0061】
上述したように、第1および第2固定部材106,110をかご用ガイドレール30に全面接触させることができるのは、第1および第2固定部材106,110が、シリンダ112の軸心を中心として揺動自在となっているからである。しかし、揺動範囲(角度)を無制限にすると、振動などによって、例えば、第1および第2固定部材106,110がかご用ガイドレール30とは反対側を向いてしまうおそれがあり、この場合には、アームが閉じられても、第1および第2固定部材106,110でかご用ガイドレール30が把持できない。そこで、第1および第2固定部材106,110の揺動範囲(角度)をストッパ128によって適切な範囲に規制しているのである。
【0062】
なお、C1よりもC2の方が短い場合(C1>C2)においても確実にかご用ガイドレール30が把持されるのは、C1の方がC2よりも短い場合(C1<C2)と同様なので、その説明については省略する。
【0063】
通常運転から管制運転に移行し、かご12(図1)が避難階に停止されるまでの間に、建物16の揺れに伴って主ロープ26に既に横振動が生じている場合がある。この場合、かご12の停止後においても、既述した通り、かご12は主ロープ26の横振動に起因して上下に変動している。また、建物16の揺れが収束するまでの間、主ロープ26には、横振動を生じさせる加振力が加わる。
【0064】
このような状況において、例えば、(A)上下運動するかご12が最も上がった時、すなわち、綱車24とかご12との間の主ロープ26部分(以下、単に「主ロープ26部分」と言う。)が水平方向に振れて最も撓んだ時に、第1固定部材106と第2固定部材110とでかご用ガイドレール30が把持された局面(以下、「第1の局面」とする。)と、(B)上下運動するかご12が最も下がった時、すなわち、主ロープ26部分が緊張した時に、第1固定部材106と第2固定部材110とでかご用ガイドレール30が把持された局面(以下、「第2の局面」とする。)と、を想定する。
【0065】
(A)第1の局面
この場合、第1および第2固定部材106,110でかご用ガイドレール30が把持された直後に、主ロープ26部分が反対方向に振れようとして一旦撓みが解消される際に、かご12は自重により下方へ変位する。かご12の下方への変位に伴って、図7(a)において一点鎖線で示すように、シリンダ112も下方へ変位する。そして、主ロープ26部分が前記反対方向へ振れる際には、かご12が主ロープ26部分によって引き上げられる。
【0066】
ここで、上述した通り、第1および第2アーム66,68はかご12に対し、上下方向には不動に取り付けられており、管制運転においてかご12が停止された際には、第1および第2固定部材106,110は、かご用ガイドレール30に固定される。そして、第1および第2固定部材66,68は、それぞれ、ピストン114とシリンダ112が上下方向に相対移動する第1および第2オイルダンパ104,108によって、第1および第2アーム66,68と連結されている。
【0067】
これにより、かご12の自重に加え、第1および第2オイルダンパ104,108が、かご12の上方への運動の抵抗となるため、単に、主ロープ部分26下端の上下方向の移動が拘束されるにすぎない特許文献1に記載された従来技術を採用した場合よりも、主ロープ26部分の横振動の増幅を抑制することができる。
【0068】
また、建物16の揺れが収束した後においても、第1および第2オイルダンパ104,108が、かご12に対する上下運動の抵抗、ひいては、主ロープ26部分の横振動の抵抗となるため、上記従来技術を採用した場合よりも、主ロープ26部分の横振動の収束を早めることができる。これにより、地震等が発生した後におけるエレベータの運転再開までに要する時間を、従来よりも短縮することができる。
【0069】
(B)第2の局面
この場合、把持した次の瞬間には、主ロープ26部分が水平方向へ振れようとして(主ロープ26部分の振れの勢いによって)、かご12が引き上げられる。かご12の上方への変位に伴って、図7(b)において一点鎖線で示すように、シリンダ112も上方へ変位する。
【0070】
この際、かご12の自重に加え、第1および第2オイルダンパ104,108が、かご12の上方への運動の抵抗となるのは、「(A)第1の局面」と同様であり、これにより、可能なかぎり、主ロープの横振動の増幅が抑制される。
【0071】
また、建物16の揺れが収束した後においても、第1および第2オイルダンパ104,108がかご12の上下運動の抵抗、ひいては、主ロープ26部分の横振動の抵抗となるため、単に、主ロープ部分下端の上下方向の移動が拘束されるにすぎない特許文献1に記載された従来技術を採用した場合よりも、主ロープ26部分の横振動の収束を早めることができるのは「(A)第1の局面」の場合と同様である。
【0072】
ここで、シリンダ112のピストンロッド116に対するストロークは、主ロープ26部分が最長となる場合のその長さ(通常、かご12が建物16の最低階に停止しているときの主ロープ26部分の長さ)等、すなわち、主ロープ26部分に想定される最大の横振動が生じた場合の主ロープ26部分の最下端(すなわち、かご12との連結部分)の上下動の変動幅に応じて設定される。例えば、主ロープ26部分が最も長くなるときのその長さが200[m]の場合、図5(a)に示すL1とL2は、10[mm]程度に設定される。
【0073】
なお、言うまでもなく、第1の局面と第2の局面の中間の局面、すなわち、上下運動するかご12が最も上がった位置と最も下がった位置の中間の位置にある時に、第1固定部材106と第2固定部材110とでかご用ガイドレール30が把持された局面においても、かご12の自重に加え、かご12の上下運動に対し第1および第2オイルダンパ104,108が与える抵抗によって、主ロープ26部分の横振動の増幅が抑制され、当該横振動の収束が早められる。
【0074】
また、いずれの局面にしろ、上記したように第1固定部材106および第2固定部材110とかご用ガイドレール30との間で生じる摩擦力が、第1オイルダンパ104および第2オイルダンパ108の抵抗力と比べて大きいため、かごが上下運動する際は、通常、第1オイルダンパ104および第2オイルダンパ108が作動し、第1固定部材106および第2固定部材110がかご用ガイドレール30に対して摺動することはない(第1固定部材106および第2固定部材110のかご用ガイドレール30に対する固定状態が維持される。)。
【0075】
以上、本発明を実施形態に基いて説明してきたが、本発明は、上記した実施形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態とすることもできる。
【0076】
(1)第1および第2アーム先端部と第1および第2固定部材とを連結する減衰器はオイルダンパに限らず、例えば、エアダンパを用いても構わない。
【0077】
(2)第1アーム66と第2アーム68を開閉するアクチュエータとして、ソレノイドを用いたが、これに限らず、例えば、油圧、空圧、または電動による動力シリンダ、あるいは、リニアモータによる往復駆動装置を用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る制振装置は、例えば、主ロープで吊るされて昇降するかごにより人や荷物を運搬するエレベータにおいて、地震等により当該エレベータが設置された建物が揺れるのに起因して生じる主ロープの振れに対する制振装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 エレベータ
12 かご
26 主ロープ
30,32 かご用ガイドレール
56,58 制振装置
104 第1オイルダンパ
106 第1固定部材
108 第2オイルダンパ
110 第2固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7