特許第6070963号(P6070963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6070963磁気共鳴スペクトロスコピーイメージングを行うシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070963
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】磁気共鳴スペクトロスコピーイメージングを行うシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170123BHJP
   G01R 33/32 20060101ALI20170123BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A61B5/05 311
   G01N24/02 530J
   A61B5/05 376
   A61B5/05ZDM
【請求項の数】22
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-501253(P2014-501253)
(86)(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公表番号】特表2014-511727(P2014-511727A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】US2012030176
(87)【国際公開番号】WO2012129433
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】61/466,188
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボトムレイ、ポール エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガブル、リファート
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イ
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−191816(JP,A)
【文献】 特開2001−095773(JP,A)
【文献】 国際公開第01/022879(WO,A1)
【文献】 特開平04−158836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法であって、
被験体の磁気共鳴画像を受信する段階と、
少なくとも1つの対象コンパートメントを含む前記被験体において磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成する複数のC個のコンパートメントを特定する段階と、
少なくとも1つの空間的次元において、前記被験体の前記磁気共鳴画像を前記複数のC個のコンパートメントに分割する段階と、
前記少なくとも1つの空間的次元において適用される、M´≧Cである複数のM´個の位相エンコードを適用することによって、前記複数のC個のコンパートメントから磁気共鳴スペクトロスコピー信号を収集する段階と、
前記少なくとも1つの対象コンパートメントから、空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを算出する段階と、
前記少なくとも1つの対象コンパートメントから、磁気共鳴化学シフトスペクトルの空間的平均に略等しい空間的に局所化された磁気共鳴スペクトルをレンダリングする段階と
を備え
前記少なくとも1つの対象コンパートメントから、前記空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを前記算出する段階は、線形代数法を利用する、空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項2】
前記被験体の前記磁気共鳴画像を受信する段階、前記複数のC個のコンパートメントを特定する段階、および、前記磁気共鳴画像を前記複数のC個のコンパートメントに分割する段階はそれぞれ、前記被験体から前記磁気共鳴スペクトロスコピー信号を収集する段階の前に実行され、
前記複数のM´個の位相エンコードはさらに、前記少なくとも1つの対象コンパートメントの空間的選択または信号ノイズ比の少なくとも一方を最適化するように選択される、請求項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項3】
前記複数のM´個の位相エンコードは、前記被験体の前記磁気共鳴画像のk空間の中央部分から選択される、請求項1又は2に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項4】
前記複数のM´個の位相エンコードのうち少なくとも1つは、ゼロの位相エンコードであり、前記複数のM´個の位相エンコードのうち別の少なくとも1つは、ゼロでない最小位相エンコードの整数倍である、請求項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項5】
前記複数のM´個の位相エンコードのうち少なくとも1つは、ゼロでない最小位相エンコードの非整数倍である、請求項からのいずれか一項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項6】
前記複数のM´個の位相エンコードの選択はさらに、分割後の前記磁気共鳴画像に基づいて行われ、
前記少なくとも1つの対象コンパートメントにおけ信号ノイズ比の最適化は、前記被験体の前記磁気共鳴画像のk空間の中央部分から位相エンコードを選択することを含み、
前記少なくとも1つの対象コンパートメント空間的選択の最適化は、前記対象コンパートメントの外部から発生する磁気共鳴スペクトロスコピー信号、または、前記対象コンパートメント内で発生する非均一な磁気共鳴スペクトロスコピー信号分布から発生するエラー含有信号のうち少なくとも一方を最小限に抑えることを含む、請求項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項7】
前記複数のM´個の位相エンコードの選択は、前記少なくとも1つの対象コンパートメントにおいて前記空間的選択および前記信号ノイズ比の両方を最適化するメトリックに基づいて行われる、請求項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの空間的次元は、2つの空間的次元または3つの空間的次元のうち一方であり、
前記複数のM´個の位相エンコードは、前記2つの空間的次元または前記3つの空間的次元のそれぞれにおいて適用される2つまたは3つのサブセットの位相エンコードから構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項9】
前記2つまたは3つのサブセットの位相エンコードの各サブセットにおける位相エンコードの数は、対応する前記空間的次元において分割されている、磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成する前記被験体のコンパートメントの数以上である、請求項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの対象コンパートメントは、複数の対象コンパートメントである、請求項1からのいずれか一項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項11】
前記方法によると、少なくとも1つの対象コンパートメントにおいて、前記少なくとも1つの対象コンパートメントに寄与する全ての体積要素からの信号が加算される従来の化学シフトイメージングプロセスに比べて、信号ノイズ比において改善が得られ、
前記改善は、前記対象コンパートメントの体積と、前記化学シフトイメージングプロセスの体積分解能との比率の二乗根に略等しい、請求項1から10のいずれか一項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項12】
前記方法は、M個の位相エンコードステップを用いて実行される従来の化学シフトイメージングプロセスよりも、M/M´に略等しい倍数で算出される短い収集時間で、少なくとも1つの対象コンパートメントから空間的に局所化されたスペクトルを提供する、請求項1から11のいずれか一項に記載の空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法。
【請求項13】
磁気共鳴イメージングスキャナと、
前記磁気共鳴イメージングスキャナと通信して、被験体の磁気共鳴スペクトロスコピー信号を受信するデータ処理システムと
を備え、
前記データ処理システムは、
前記被験体の磁気共鳴画像を受信し、
前記磁気共鳴画像を表示して、少なくとも1つの対象コンパートメントを含む、前記被験体において磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成する複数のC個のコンパートメントを特定できるようにし、
少なくとも1つの空間的次元において、前記被験体の前記磁気共鳴画像を前記複数のC個のコンパートメントに分割し、
前記少なくとも1つの空間的次元において複数のM´個の位相エンコードを適用することによって、前記磁気共鳴画像に対応する前記被験体から磁気共鳴スペクトロスコピー信号を受信し、
前記少なくとも1つの対象コンパートメントから、空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを算出し、
前記少なくとも1つの対象コンパートメントから、前記磁気共鳴化学シフトスペクトルの空間的平均に略等しい空間的に局所化された磁気共鳴スペクトルを提供し、
M´≧Cであ
前記少なくとも1つの対象コンパートメントから、前記空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを前記算出することは、線形代数方法を利用する、磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項14】
前記磁気共鳴イメージングスキャナはさらに、
前記被験体から前記磁気共鳴スペクトロスコピー信号を受信する前に、前記複数のC個のコンパートメントの分割および特定を可能とし、
前記磁気共鳴イメージングスキャナはさらに、
前記少なくとも1つの対象コンパートメントにおいて、空間的選択または信号ノイズ比の少なくとも一方について、前記複数のM´個の位相エンコードを最適化する、請求項13に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項15】
前記複数のM´の位相エンコードは、前記被験体の前記磁気共鳴画像の前記少なくとも1つの空間的次元に対応するk空間の中央部分から得られる、請求項13又は14に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項16】
前記複数のM´個の位相エンコードの少なくとも1つは、ゼロでない最小位相エンコードの整数倍である、請求項15に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項17】
前記複数のM´個の位相エンコードの少なくとも1つは、ゼロでない最小位相エンコードの非整数倍である、請求項14から16のいずれか一項に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項18】
分割後の前記磁気共鳴画像から決定される複数のM´個の位相エンコードが提供され、
前記データ処理システムはさらに、
前記被験体の前記磁気共鳴画像のk空間の中央部分からの位相エンコードの選択を含む、前記少なくとも1つの対象コンパートメントにおけ信号ノイズ比の最適化、および、
前記対象コンパートメントの外部から発生する磁気共鳴スペクトロスコピー信号の少なくとも1つを最小限に抑えることによる、または、前記対象コンパートメント内で発生する非均一な磁気共鳴スペクトロスコピー信号分布から発生するエラー含有信号を最小限に抑えることによる、前記少なくとも1つの対象コンパートメント空間的選択の最適化
のうち少なくとも1つを実行する、請求項17に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項19】
前記複数のM´個の位相エンコードは、前記信号ノイズ比および前記空間的選択の両方を最適化するメトリックを前記少なくとも1つの対象コンパートメントに含めることによって提供される、請求項18に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの空間的次元は、2つの空間的次元または3つの空間的次元のうち一方であり、
前記複数のM´個の位相エンコードは、前記2つの空間的次元または前記3つの空間的次元においてそれぞれ適用される2つまたは3つのサブセットの位相エンコードを含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項21】
前記2つまたは3つのサブセットの位相エンコードの各サブセットにおける位相エンコードの数は、対応する前記空間的次元において分割されている、磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成する前記被験体のコンパートメントの数以上である、請求項20に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの対象コンパートメントは、複数の対象コンパートメントである、請求項13から21のいずれか一項に記載の磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本願は、米国仮特許出願第61/466,188号(出願日:2011年3月22日)に基づき優先権を主張する。当該仮特許出願の内容は全て、参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、認可番号R01 EB07829、HL056882、HL61912を持つ米国政府の支援により成された発明である。米国政府は、本発明に関して所定の権利を有する。
【0003】
本明細書で請求する本発明の実施形態は、空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを行うシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
マルチボクセル磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)および化学シフトイメージング(CSI)で大きな課題となっているのは、スキャン時間が長い点である。モデルベースのMRS再構築方法、例えば、SLIM(Hu X, et al. MRM 1988;8:314-322)、GSLIM(Liang ZP, et al. IEEE TMI 1991 ;10:132-137)およびSLOOP(von Kienlin M, et al. JMR 1991 ;94:268- 287)は理論的にはスキャン時間を短縮できるが、生体内への応用は、非常に限定的なままであり、CSIデータセット全てを用いてコンパートメント間の漏れを抑制することに重点を置いている(Dong Z, et al. MRM 2006;55;1447- 1453; Loffler R, et al. JMR 1998;134:287-299)。これらの方法では、我々の知識の及ぶ限りにおいて、生体内または人体内では高速化に関して大きな進展はなく、このような高速化が少なくともCSIと同じ精度で実際に実現され得るか否かは分からない。このため、依然として、磁気共鳴スペクトロスコピーイメージングを行うシステムおよび方法を改善する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る空間的に局所化された磁気共鳴スペクトロスコピーを実行する方法は、被験体の磁気共鳴画像を受信する段階と、少なくとも1つの対象コンパートメントを含む被験体において磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成する複数のC個のコンパートメントを特定する段階と、少なくとも1つの空間的次元において、被験体の磁気共鳴画像をC個のコンパートメントに分割する段階と、少なくとも1つの空間的次元において適用される複数のM´個の位相エンコードを適用することによって、C個のコンパートメントから磁気共鳴スペクトロスコピー信号を収集する段階と、少なくとも1つの対象コンパートメントから、空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを算出する段階と、少なくとも1つの対象コンパートメントから、磁気共鳴化学シフトスペクトルの空間的平均に略等しい空間的に局所化された磁気共鳴スペクトルをレンダリングする段階とを備え、M´≧Cである。
【0006】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステムは、磁気共鳴イメージングスキャナと、磁気共鳴イメージングスキャナと通信して、被験体の磁気共鳴スペクトロスコピー信号を受信するデータ処理システムとを備える。データ処理システムは、被験体の磁気共鳴画像を受信し、磁気共鳴画像を表示して、少なくとも1つの対象コンパートメントを含む、被験体において磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成する複数のC個のコンパートメントを特定できるようにし、少なくとも1つの空間的次元において、被験体の磁気共鳴画像をC個のコンパートメントに分割し、少なくとも1つの空間的次元において複数のM´個の位相エンコードを適用することによって、磁気共鳴画像に対応する被験体から磁気共鳴スペクトロスコピー信号を受信し、少なくとも1つの対象コンパートメントから、空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを算出し、少なくとも1つの対象コンパートメントから、磁気共鳴化学シフトスペクトルの空間的平均に略等しい空間的に局所化された磁気共鳴スペクトルを提供し、M´≧Cである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
その他の目的および利点は、明細書、図面および例を参照することによって明らかになるであろう。
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る磁気共鳴局所化スペクトロスコピーイメージングシステムを示す概略図である。
【0009】
図2】本発明の実施形態に係る、本願で開示している線形代数法によるスペクトロスコピー(SLAM)(左側の進路)および分数SLAM(fSLAM)(右側の進路)の実行方法を説明するためのフローチャートである。
【0010】
図3】モデル胸部の16ステップのリン(31P)1次元(1D)CSIスペクトルのシミュレーションを示す図であり、(A)は骨格筋のボクセルが3つであり、(B)は再構築されたSLAMの胸部のスペクトルであり、(C)心臓のボクセルが4つであり、(D)は再構築されたSLAMの心臓のスペクトルであり、(B)および(D)は元の画像から見分けがつかない。
【0011】
図4】心臓モデル(A)、ならびに、ノイズおよび30%(±15%)の不均一性がCSIに対してSLAM信号再構築の精度に与える影響をモンテカルロシミュレーションしたもの(B−E)であり、胸部−心臓の信号比率は、(A)において濃色の実線曲線で示す(B)および(C)において4で一定に維持されており、DおよびEにおいて、比率は2.5であり、Aにおいて青色の点線曲線で示す実験的な表面コイル感度プロフィールによってスケーリングされ、エラーは胸部(B、D)および心臓(C、E)において平均の±SD(標準偏差)であり、心臓の信号ノイズ比SNR=20で計算しており、心臓におけるエラーが最大になるのは、設定1(2cm胸部、2cm心臓、胸部と心臓との間の分離無し)、設定6(2cm胸部、2cm心臓、1cm間隙)、設定11(3cm、2cm、0cm)、および、設定16(3cm、2cm、1cm)である。
【0012】
図5】心臓におけるSLAMおよびfSLAMについて、許可されている元のM=16の位相エンコードの数(M´)の関数として、体積が同じ場合のSNRゲインを示し(A、B)、総コンパートメント間エラー係数および総コンパートメント内エラー係数である
【数1】
を示し(C、D)、比較として、エラーをゼロと仮定したSNR=1のCSIを示し、3つの傾斜セットについての結果が図示されており(四角はSNRが最大であるfSLAMを示し、米印はコンパートメント間/内エラーが最小限に抑えられているfSLAMを示し、丸はSLAMを示す)、図5の(A)および(C)は、厚みが4個のボクセルの心臓であり、(B)および(D)は、厚みが3個のボクセルの心臓のコンパートメントであり、全て胸部コンパートメントの厚みは2個のボクセルである。
【0013】
図6】3個の胸部のボクセルが4個の心臓のボクセル(黒線は実数部分、赤色の点線が虚数成分)に隣接している構成のモデルについて算出した、16ステップCSI(A)、4ステップCSI(B)(16個のステップについてはゼロで埋める)、4ステップSLAM(C)、および、4ステップfSLAM(D)についての心臓のコンパートメントの空間応答関数SRFを示す図であり、縦の点線は、胸部および心臓のコンパートメントを図示している通りに示しており、各コンパートメントによる信号寄与分は、当該コンパートメントにわたる曲線の積分から導出される。
【0014】
図7】(E)の画像に示すように、底部にあるH3PO4ディスク(A、C)および上部にあるH3PO2ディスク(B、D)から構成される、標準的なPhilips Medical System社の31P試験ファントムから再構築されたCSIスペクトルおよびSLAMスペクトルを示し、CSIスペクトル(A、B)は、ディスクを含むボクセルのスペクトルの合計であり(赤色の横線)、16個の位相エンコード傾斜(−8・・・+7)で収集され、SLAMスペクトル(A、D)は、4個の位相エンコード(−1、−2、0、1)のみで4倍速く収集され、CSIスペクトルのSNRは、660であり(A)、638であり(B)、一方でSLAMの場合には、528(C)および482(D)である。約0ppmにおける信号は、H3PO2ディスクにのみ存在する汚染である。
【0015】
図8】(A)は、同じスキャン時間(2.1分)で同じ6個のボクセルの体積の場合にSLAM(上部)およびCSI(下部)で収集した人間の足の31Pのスペクトルを示し、(B)は、ID CSIを8.4分にわたって利用して同じ4個のボクセルの体積の場合の通常の人間の心臓から収集した31Pのスペクトル、および、4個の中央のK空間位相エンコードのサブセットおよび4コンパートメントモデルで再構築されたSLAMスペクトルを示し、(C)は、2つの位相エンコードのみおよび2コンパートメントモデルで収集したスペクトルを示し(胸部および心臓)、実効SLAM収集時間は、CSIの4分の1および8分の1であった。
【0016】
図9】A−Dは、CSI結果を比較対象として、24人の心臓患者および対照患者から収集した16個のCSI位相エンコードステップのうち4個のCSI位相エンコードステップから成るサブセットからSLAMで再構築されたフィッティング結果を示し、クレアチンリン酸(PCr)(A)およびアデノシン三リン酸のガンマリン酸(γ−ATP)(B)は、ピーク領域が心臓コンパートメントにおいて定量化され、(C)は、心臓コンパートメントおよび胸部コンパートメントの両方からのPCrの合計を示し、(D)は、心臓のPCrと、胸部コンパートメントおよび心臓コンパートメントの両方からのPCrの合計との比率を示し、相関係数は、全ての場合においてr>0.97であり、実線はアイデンティティライン(identity line)である。
【0017】
図10】CSIスペクトル(A)、SLAMスペクトル(B)およびエラーが最小限に抑えられたfSLAMスペクトル(C)を示し、全て、合計スキャン時間および合計ボクセル体積は同じで、同じボランティアで、一定のノイズに対して正規化されており、−8から+7(整数)の傾斜エンコードステップが標準的なCSIに用いられ、整数のステップ、−2、−1、0、1が4回繰り返されたものをSLAMについて利用し、fSLAMは整数でないステップである−2.13、−0.73、+0.73、+2.13を4回繰り返し、(D)は、最初のCSI、SLAM、fSLAMにおいて、そして、繰り返されたCSIスキャン(対応t検定において試験間に大きな差異は見られなかった、線は同じ被験者から得られた測定結果を結んでいる)6人の全ての被験者において事前に31PのMRSを検査した場合の心臓のPCrピーク領域を示す。
【0018】
図11】本発明の一部の実施形態と従来の方法とを比較した表である。
【0019】
図12】(A)および(B)は、1Dの心臓の31PのMRS(体積は同じ、SLAMは4倍速い)の一例を示す。
【0020】
図13】(A)および(B)は、2Dの脳のHのMRSの例を示す(体積は同じ、SLAMは16倍速い)。
【0021】
図14】(A)および(B)は、3Dファントムの31PのMRSの一例を示す図である(体積は同じ、SLAMは100倍速い)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一部の実施形態を以下で詳細に説明する。実施形態の説明にあたっては、分かり易いように具体的な用語を用いる。しかし、本発明は用いられている具体的な用語に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の広義の概念から逸脱することなく、他の均等なコンポーネントを利用し得ると共に、他の方法を開発し得ることを認めるであろう。背景技術および発明を実施するための形態のセクションを含む本明細書で引用する引用文献は全て、各文献を個別に組み込むのと同様に、参照により本願に組み込まれるものとする。
【0023】
速度および信号ノイズ比(SNR)は、低濃度代謝体の局所的磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)において非常に重要な要件である。ボクセルを身体構造上のコンパートメントに一致させることで、収集後に構成単位である化学シフトイメージング(CSI)ボクセルからの信号を合計することによって得られるスペクトルよりも、SNRが改善すると推測される。ここで、このようにさらなるSNRゲインを実現し得る方法として、本発明の実施形態に係る、線形代数モデル化(SLAM)方法を用いる新しい局所的スペクトロスコピー方法が提供される。先行技術に係る方法とは異なり、SLAMは、CSIシーケンスを利用して、身体構造上のC個の信号生成コンパートメントからスペクトルを生成する。尚、SNRが最も高くなるC個の中央のk空間位相エンコード傾斜ステップのみを保持する。MRIに基づいてコンパートメント分割を行った後、標準的なCSIアルゴリズムから得られる連立一次方程式の一部の解を求めることによって、スペクトルを再構築する。SLAMの一部の例は、3T医療用スキャナ上のファントム、人間の足および心臓において、一次元のCSI表面コイルリンMRSが提供される。SNR性能、精度、登録エラーに対する感度、および、不均一性を評価する。1次元CSIに比べると、SLAMでは、24人の心臓病患者および健常な対照被験者について定量的には同じ結果が4倍の速度で得られ、追加で6人の被験者に事前に適用すると心臓SNRが45%高くなった。SLAMは、本発明の実施形態によるとさらに拡張することができ、SNRを最適化し、および/または、コンパートメント間およびコンパートメント内の両方の汚染を最小限に抑える、分数の位相エンコード傾斜の構成とすることもできる。6人の健康な被験者の心臓の31PのMRSにおいて、分数SLAM(fSLAM)の結果はCSIの結果とは見分けがつかず、同じスキャン時間で30%から40%のSNRゲインを維持する。SLAMおよびfSLAMは共に、CSIについて、実施が単純であり、簡単に最小スキャン時間を短縮する。CSIは、そうでなければ、SNRおよびフィールド強度を高くしつつスキャン時間を短縮する効果を限定し得る。しかし、本発明の広義の概念は、これらの特定の実施形態および例に限定されるものではない。
【0024】
本発明の一部の概念は、以下の例に基づいて説明することができる。スキャン時間および信号ノイズ比(SNR)は、低濃度代謝体の生体内空間的局所化磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)において主な問題である。SNRはボクセルサイズに比例するので、ボクセルを身体構造上の所望のコンパートメントに一致させることで、スキャン時間を一定とするとSNRを最適化し得ると推測される[1]。例えば、収集毎に20というSNRでボクセルVをエンコードする第1の化学シフトイメージング(CSI)の実験を考慮されたい[2]。n=4個の収集結果を平均化することで、SNRは√n増加するので、SNRは40となる。ここで、V/4のサイズのボクセルの解像度で4回実行される第2の実験を考慮されたい。SNR/ボクセルは、ノイズがボクセルサイズとは無関係であるので、収集結果毎に5である[1]。位相エンコードは平均化と同じであるので、同じ体積をエンコードするべく4個の傾斜ステップの後、ボクセル毎のSNRは10である。4個の信号を加算してVサイズのボクセルを作成すると、SNRは20となる。これもまた、√nルールである。これを、第1の実施形態で得られる40と比較する。このため、スキャン時間およびボクセルサイズを同じにした場合のSNRは、最初に正しいボクセルサイズを事前に選択しておくことのみで、第1の実験において2倍になる[1]。
【0025】
同じ原理を、概して、CSIボクセルサイズが対象被験体より小さい場合は常に適用する。開始時にコンパートメントを正しくエンコードすることによって得られる一定のスキャン時間についてのSNRゲイン係数は、個々のCSIボクセルからの信号を加算して同じサイズのコンパートメントを収集後に形成する場合に比べて、感度の不均一性および濃度分布の不均一性の影響、または、積分された空間応答関数(SRF)の差異にも関わらず、以下の数2で表される。
【数2】
CSIに対するこのような微分のg倍のSNRゲインは、SNRを低くし、傾斜強度を高くし、k空間信号を高くする際にCSIで失われた時間に起因するものと見ることができる。
【0026】
SLIM[3]、GSLIM[4]およびSLOOP[5]等の先行技術に係る位相エンコード傾斜を利用するMRS局所化方法は、収集前に所望のコンパートメントがスカウトMRIに基づいて予め定められている場合、そして、適切にSNRが最適化された傾斜セットが適用される場合、g倍のSNRゲインを実現することができる。SLIMでは、コンパートメントの信号は、均一であると仮定され、各コンパートメントにおいて位相エンコードされた信号寄与分の積分値としてモデル化される。この方法では、コンパートメント間で[6]および各コンパートメント内で代謝体分布が不均一である場合には、そして、位相エンコード傾斜ステップの数が減るにつれて、コンパートメント間およびコンパートメント内のエラーが発生しやすい。GSLIM[4]およびSLOOP[5]は、コンパートメント間のエラーを最小限に抑えるべく導入された。GSLIMがこの効果を奏するのは、フーリエ変換ではない一般的な時系列モデリングをSLIM結果に適用するためである[4、6]。SLOOPは、所望のコンパートメントについてSRFを最適化することによって、理想的には位相エンコード傾斜セットを収集用に具体的に調整することによって、コンパートメント間エラーを最小限に抑える[5]。その他の幾つかの提案された改善点によると、メイン(B0)フィールド[7から9]、登録エラー[9]、および、マルチエレメントレシーバ[10]の不均一性に対処するべく、制限が追加される。
【0027】
これらの技術が全て、同じデータセットからの複数のコンパートメントからスペクトルを生成できるとしても、人間のMRSにはほとんど事前には利用されない。このため、SLIMは、人間のふくらはぎ[3、11]および脳「9」から収集されたHのCSIデータセットに事後的に適用された。また、GSLIMおよびSLIMは共に、ネズミの脳[12]からのHのMRSのCSI収集に利用された。SLOOPによるHのMRSは当初、事前に最適化された傾斜で、摘出されたウサギの腎臓に実行されていたが[5]、その後の人間の心臓への応用は全て、通常のCSI傾斜で収集した31PのMRSデータに事後的にSLOOPを適用した[13−16]。これらの人間への応用は全て従来のCSI傾斜セットおよび均一なk空間サンプリングを利用しているので、CSIに対するg倍のSNRの改善は、構成単位であるCSIボクセルからの信号を単に合計することによって、または、積分したSRFにおける差異を考慮することによって得られるものを超えた改善は、実現されていないか、または、報告されていなかった。事前に実施することなく、SNRの改善が証明されていないので、一般的なCSIに代えてこれらの方法を利用できない可能性が高い。いずれにしても、所望のコンパートメントに合わせるべく、そして、数2で予測される最大SNRゲインを実現するべく、コンパートメントを予め設定しておくこと、および、傾斜エンコードステップを調整することは、我々の知識が及ぶ限りにおいて、生体内または人体においていまだ実現されていない。
【0028】
本発明の実施形態によると、大幅に低減させた、SNR最適化傾斜セットを適用して、線形代数モデル化(SLAM)を含む局所化スペクトロスコピーを実行して、空間的局所化MRSについて通常収集されるスカウトMRIによって特定される人体構造上のC個の信号生成コンパートメントから平均スペクトルを収集および再構築する。この新しいSLAM方法についてのスペクトル再構築は、SLIM、GSLIMおよびSLOOPとは異なり、マトリクス分析によって、不要な位相エンコードステップを標準的なCSIアルゴリズムから除外することによって、実質的にCに等しい(全ての信号生成組織が含まれていることを前提とする)一セットの連立一次方程式の解を求める。SLAMパルスシーケンスは、位相エンコードステップの数が実質的にCである点で、異なる。そして、位相エンコードステップは常に、SNRが最大になる、CSIの整数のステップのk空間の中心から選択される。このため、数「C」を決定すること以外に、画像で誘導する傾斜最適化が必要になること、および、収集前にスキャナ側で事前設定および実行することが、省略される。SLAMを利用して、30−200%のSNRというg倍のSNRゲインを、有効体積およびスキャン時間が同じ場合の従来の[17−22]1次元(1D)のCSIスペクトルと比較して、人間の足および心臓の生体内の3Tリン(31P)検査で証明する。さらに、心臓病患者およびスカウトMRIに基づく分割で収集された未加工の31Pの1DのCSIデータにSLAMを適用すると、データの75%を破棄した後で、アデノシン三リン酸(ATP)およびクレアチンリン酸(PCr)について、4倍の速度で、実質的に定量的に同じ測定値が得られることを示す。
【0029】
本発明の別の実施形態によると、SLAM方式を拡張して、従来のように、整数単位でCSI傾斜を変化させることに代えて、分数単位での傾斜インクリメントを可能とする。この「fSLAM」方法では、位相エンコード傾斜は、スキャナ側で事前に最適化されて、SNRを最大限まで増加させ、および/または、信号分布が不均一であることに起因するコンパートメント間の漏れおよびコンパートメント内のエラーの両方を最小限に抑える。コンパートメント内エラーは、先行技術に係る方法は対処していない[3−5]。本発明の実施形態に係るfSLAMの一例は、事前の人間の心臓の31Pに関する検査で実証する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る磁気共鳴スペクトロスコピーイメージング(MRSI)システム100を示す概略図である。MRSIシステム100は、磁気共鳴スキャナ101と、データ格納部108と、データ処理システム109とを備える。磁気共鳴スキャナ101は、スキャナベッド103上で観察される実質的に均一のメイン磁界B0を被験者(または被験体)102について提供するメイン磁石105と、観察されている被験者102の構成単位の分子の空間情報をエンコードするべくメイン磁界B0を摂動させる傾斜システム106と、電磁波を送信し被験者102から磁気共鳴信号を受信する無線(RF)コイルシステム107とを有する。
【0031】
データ格納部108は、例えば、ハードディスクドライブ、ネットワークエリアストレージ(NAS)デバイス、RAID(Redundant Array of Independent Disks)、フラッシュドライブ、光ディスク、磁気テープ、光磁気ディスク等であってよい。しかし、データ格納部108は、これらの特定の例に限定されない。本発明の範囲から逸脱することなく他の既に開発されているデータストレージデバイスまたは今後開発されるデータストレージデバイスを含み得る。
【0032】
データ処理システム109は、磁気共鳴スキャナ101と通信して、被験体102の磁気共鳴画像を形成する磁気共鳴信号を受信する。データ処理システム109は、一部または全てが、磁気共鳴スキャナ101を収容する構造の内部に組み込まれているとしてよい。データ処理システム109は、一部または全てが、磁気共鳴スキャナ101とは構造が別であるが通信しているワークステーション内に組み込まれているとしてよい。データ処理システム109は、磁気共鳴スキャナ101とは構造が別であるが通信しているワークステーション内に組み込まれているとしてよい。操作者113は、入出力デバイス112を用いてMRSIシステム100とやり取りを行うとしてよい。
【0033】
データ処理システム109は、被験体の磁気共鳴画像を受信して、磁気共鳴画像を表示して、被験体において磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成する複数のC個のコンパートメントであって、少なくとも1つの対象コンパートメントを含む複数のC個のコンパートメントの特定を可能とし、少なくとも1つの空間的次元において被験体の磁気共鳴画像をC個のコンパートメントに分割し、M´≧Cにおいて複数のM´個の位相エンコードを少なくとも1つの空間的次元において適用することで磁気共鳴画像に対応する被験体から磁気共鳴スペクトロスコピー信号を受信し、少なくとも1つの対象コンパートメントから空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを算出して、少なくとも1つの対象コンパートメントから磁気共鳴化学シフトスペクトルの空間的平均に略等しい空間的局所化磁気共鳴スペクトルを提供する。
【0034】
少なくとも1つの対象コンパートメントから空間的に局所化された磁気共鳴化学シフトスペクトルを算出することは、線形代数方法を利用して行われる。
【0035】
磁気共鳴スペクトロスコピーイメージングスキャナはさらに、被験体から磁気共鳴スペクトロスコピー信号を受信する前に、C個のコンパートメントの特定および分割を可能とするとしてよい。磁気共鳴スペクトロスコピーイメージングスキャナはさらに、少なくとも1つの対象コンパートメントにおいて信号ノイズ比または空間的選択のうち少なくとも1つについてM´個の位相エンコードを最適化するとしてよい。ある実施形態によると、複数のM´個の位相エンコードは、被験体の磁気共鳴画像の少なくとも1つの空間的次元に対応するk空間の中央部分から提供され得る。ある実施形態によると、複数のM´個の位相エンコードのうち少なくとも1つは、最小のゼロでない位相エンコードの整数倍であってよい。ある実施形態によると、複数のM´個の位相エンコードのうち少なくとも1つは、最小のゼロでない位相エンコードの非整数倍であってよい。ある実施形態によると、複数のM´個の位相エンコードは、分割後に磁気共鳴画像から決定し得る。データ処理システムはさらに、(1)被験体の磁気共鳴画像のk空間の中央部分からの位相エンコードの選択を含む、少なくとも1つの対象コンパートメントにおける信号ノイズ比の最適化、または、(2)対象コンパートメントの外部から発生する磁気共鳴スペクトロスコピー信号の少なくとも1つを最小限に抑えることによる、少なくとも1つの対象コンパートメントの空間的選択の最適化、あるいは、対象コンパートメント内で発生する不均一な磁気共鳴スペクトロスコピー信号分布から発生するエラーを含む信号の最適化のうち少なくとも1つを実行するとしてよい。
【0036】
ある実施形態によると、複数のM´個の位相エンコードは、信号ノイズ比および空間的選択の両方を最適化するメトリックを少なくとも1つの対象コンパートメントに含めることによって、提供されるとしてよい。ある実施形態によると、少なくとも1つの空間的次元は、2つの空間的次元または3つの空間的次元のうち1つであり、複数のM´個の位相エンコードは、2つまたは3つの空間的次元において適用される2つまたは3つのサブセットの位相エンコードを含む。ある実施形態によると、各サブセットの位相エンコードにおいて提供される位相エンコードの数は、被験体の対応する空間的次元において分割された磁気共鳴スペクトロスコピー信号を生成するコンパートメントの数以上である。ある実施形態によると、少なくとも1つの対象コンパートメントは、複数の対象コンパートメントであってよい。
【0037】
以下では、理論的な側面をより詳細に説明する。しかし、本発明の広義の概念は特定の理論に限定されるものではない。
【0038】
<理論>
1D CSIについての基本的な数式を考慮する。
【数3】
式中、kは、空間周波数で、s(k,t)は収集した時間ドメイン信号で、ρ(x,f)は再構築すべきスペクトルである。局所化は周波数ドメインとは別個の空間ドメイン内で行われるので、s(k,t)がフーリエ変換(FT)された後の空間的位置xにおけるスペクトルを、空間周波数ドメイン内のρ(x)とする。M個の位相エンコードステップであるk、・・・、kがあると仮定し、数3は以下に示すように離散化される。
【数4】
【0039】
数式の左辺の公知の信号マトリクスSM×Nの各行は、N個のポイントのアレイである。Nは、時間ドメインデータポイントの数である。右辺の最初のマトリクスは、位相エンコードFTオペレータ(PE)であり、未知の空間マトリクスであるρの各項もまた、N個の点のアレイである。簡潔に説明するべく、数4を以下の数5に書き換える。
【数5】
【0040】
<線形代数モデル(SLAM)を利用する局所化スペクトロスコピー>
CSI実験の目的は、M個の異なる位相エンコードで収集したM個の公知の信号(S)から、M個の未知のスペクトルを数4のマトリクスρで再構築することである。しかし、スカウトMRIから、ρが含むのはC(<M)個のMRS対象コンパートメント、および、各コンパートメントの空間的位置のみであることが分かる。理論上、ρの解を一義的に求め、C個のスペクトルを再構築するために必要なのは、C個の位相エンコードステップで得られるC個の測定結果のみである。
【0041】
説明のために、4個のボクセルの1D CSI実験を考える。指数項をeijで表すと、数4は以下のように表わされる。
【数6】
【0042】
ここで、先行情報から、ρの第2行および第3行は同じであると考える(ρ=ρ)。そうすると、以下の数7の解を求めるだけでよい。
【数7】
【0043】
数7は、この時点で過剰決定されており、3つの位相エンコード行で解を求めることができる。必要な位相エンコードステップの最小数は、4から3に減る。
【0044】
同じ理論によると、C個のスペクトルを、k空間のトランケーション(打ち切り)に関係なく、M個のステップではなくC個のみの位相エンコードステップを用いて、C個の均一なコンパートメントから再構築し得ることが分かる。一般的に、先行情報は、各コンパートメントについて1つのスペクトルのみを保持するべくρマトリクスにおいて同一の行をゼロにするbマトリクスを介して組み込まれる。
【数8】
式中、PEは数4から得られる位相エンコードオペレータである。1D CSI実験に基づくSLAMの場合、bマトリクスはρにおいて同一の行をゼロにするべく「−1」エレメントが挿入されている恒等マトリクスである。例えば、2つのコンパートメントのサンプルに対して実行される8ボクセルのCSI実験の場合、第1のコンパートメントはボクセル1−3から延在し、第2のコンパートメントはボクセル4−8から延在している。
【数9】
【0045】
ここで、ボクセル1(コンパートメント1)およびボクセル4(コンパートメント2)におけるスペクトルのみが、次元縮小後に維持される。
【0046】
M´(≧C)個の予め設定された位相エンコードステップを選択して同一行を削除してMからCへと
【数10】
の次元を縮小すると、数8は以下の数11にまで縮小する。
【数11】
式中、
【数12】
は、C個の削除されていない行を保持している
【数13】
のサブマトリクスである。
【数14】
は、C個の削除されていない行に対応するC個の列を保持している
【数15】
のサブマトリクスである。
【数16】
は、M´(<<M)個の位相エンコードステップのサブセットを用いてサンプルから収集した
【数17】
個の信号のサブマトリクスである。数11の解を求めると、各スペクトルが各1D CSIコンパートメントの平均スペクトルに非常に近似している一連のスペクトルが得られる。
【0047】
<SLAMレシピ>
要約すると、SLAMの実施形態は、以下に説明するステップ1からステップ5で実行される。
1.MRIを取得して、コンパートメント数に関する先行情報を抽出(C<<M)、SLAM再構築のために各コンパートメントの空間的位置を取得
2.M´(≧C)個の位相エンコードステップを選択する。理論的には、任意に選択することができるが、選択結果によっては、
【数18】
のマトリクスについてSNRおよび条件数が異なることになり、算出精度[23]に影響が出る。M個の元々のCSI位相エンコードステップのうち、k空間の中心に最も近いM´個のステップを選択すると、一般的にSNRが最良となる。一連のCSIステップは離散値であり、一定であると共に有限であるので、k空間の中央からのみ選択すると、M´またはCのみによって決まるSLAM位相エンコード傾斜セットが得られる。さらに、Cは所与の研究プロトコル(例えば、脂肪、胸筋、心臓、心室血液コンパートメントを持つ心臓病研究についてC=4)について同じであるのが普通なので、全ての研究について同じセットのSLAM傾斜を用いることができ、スキャナ側で傾斜を最適化する必要、または、画像に基づいて傾斜を予め設定する必要はない。
3.選択したM´個のエンコード傾斜を適用して、M´個の信号を収集
4.MRIで特定される各コンパートメントの空間的位置に基づいてbマトリクスを決定
5.M個からC個へと次元を減らして、
【数19】
を用いて、ρrマトリクスにおいてC個のスペクトルを算出。式中、
【数20】
は、
【数21】
の逆数(M´=C)または疑似逆数(M´>Cである。
【0048】
再構築アルゴリズムのフローチャートを図2に図示している。
【0049】
<傾斜が分数であるSLAM(fSLAM)>
M´個の位相エンコードステップの選択は、数4において整数であるkに対応する元々の基本セットのM個のCSIステップに限定する必要はない。M個の位相エンコード傾斜は、再構築の所望の特性を最適化するように選択され得る。例えば、以下で説明するように、傾斜は、SNRを最大限まで大きくするように、および/または、コンパートメント間の信号の汚染を最小限に抑えるように、および/または、不均一な信号ソースによるコンパートメント内のエラーを最小限に抑えるように、最適化される。これは実質的に、その他の全ての実験パラメータを変えることなく、数4のCSIにおいて分数のkを可能にすることを含む。SLAMとは違い、この分数SLAM方法は、fSLAMと呼ばれるが、スキャナ側での傾斜の最適化および事前設定が必要になる。
【0050】
<SNRが最大値となるfSLAM>
SNRを最大限まで大きくするべく、数19を変形して、ノイズ項である
【数22】
を時間ドメイン信号に含める。
【数23】
式中、ξC×Nは、再構築されたスペクトルにおけるノイズである。時間ドメイン信号におけるノイズとスペクトルにおけるノイズとの間の関係は、一次変換である。
【数24】
εM´×Nの標準偏差(SD)であるσが一定であると仮定すると、i番目のコンパートメントから再構築されたスペクトルのSNRは以下の数25で表される。
【数25】
式中、
【数26】
は、m番目の信号に対応するエレメントである。数25におけるi番目のスペクトルのSNRを最大限まで大きくするべく、以下の数27で示すコスト関数を数値的に最小限に抑える。
【数27】
式中、Icondは、
【数28】
の条件数[23]がユーザが予め定めた閾値であるu未満である場合には「1」であり、u以上である場合には「0」である。この論理関数によって、方程式系は良条件となる。Гを最小限に抑えることによって、fSLAM実験において、または、
【数29】
における傾斜が整数のステップに限定される場合にはSLAM実験において、i番目のスペクトルのSNRが最良値となる。
【0051】
比較のため、CSI実験のSNRを以下の数30で表す。
【数30】
式中、Liは、平均スペクトルを持つi番目のコンパートメントのサイズである。尚、平均スペクトルは以下の数31で表される。
【数31】
数25および数30の商は、スキャン時間の差異を考慮して
【数32】
を乗算する場合、SLAMおよびfSLAMについて数2に近似する。
【0052】
<コンパートメント間の漏れを最小限に抑えるfSLAM>
これまでのところ、各コンパートメントが均一であると仮定している。しかし、コンパートメントの平均から逸脱するCSI基本セットにおけるスペクトルは、再構築後、各コンパートメントの間、および、各コンパートメント内を伝搬する信号を発生させる可能性がある。漏れを抑制するべくM´個の位相エンコードステップのfSLAM実験を最適化することを目的として、数8を書き直して、元々のρマトリクスを平均部分および不均一部分に分割する。
【数33】
式中、
【数34】
における各行は、コンパートメントの平均スペクトルである。
【数35】
における各行は、コンパートメントの平均からの真のスペクトルの偏差である。例えば、マグニチュードが[1.1,1.0,0.9]の一点スペクトルを持つ3つのボクセルのコンパートメントがあると仮定する。このコンパートメントにおける平均スペクトルは、「1」であり、不均一性は[0.1,0,−0.1]である。尚、定義により、同じコンパートメントの不均一項の合計はゼロになる。
【0053】
数33の右辺の最初の部分は以下の式で表される。
【数36】
数36は、SLAMの理想的な均一性の仮定を満たす。
二番目の部分は以下の式で表される。
【数37】
数37は、信号の漏れおよびエラーの原因である。次元縮小の後の数33の解は、以下の式で表される。
【数38】
【0054】
明らかに、漏れを抑制するためには
【数39】
を最小限に抑える必要がある。
【数40】
に関して制御が無い場合、
【数41】
における係数を最小限に抑えることが妥当である。同じコンパートメントにおける不均一項は、合計はゼロになるので、平均を減算することができる。上記の例では、不均一性[0.1,0,−0.1]に対応する3つの係数が[1/2,1/3,1/6]である場合、平均値である1/3を減算した後、係数[1/6,0,−1/6]と同じエラーを発生させる。この係数のセットは、二乗の和が小さくなり、各コンパートメントの平均係数の差異の影響を受けない。
【0055】
各コンパートメントについて、
【数42】
から平均を減算したことで得られる新しい係数のマトリクスを以下の数式で表す。
【数43】
そして、i番目のコンパートメントへのコンパートメント間の漏れを最小限に抑えるべく、SLOOP[5]と同様に、i番目のコンパートメントの外部から導出した
【数44】
における係数の二乗の和を最小限に抑える。
【数45】
【0056】
ここで、wijは、j番目のコンパートメントからi番目のコンパートメントへのコンパートメント間の漏れの重みである。wijは、例えば、コンパートメント間の代謝体の濃度の本質的な差異を反映している。
【0057】
<fSLAMにおけるコンパートメント内のエラーを最小限に抑える方法>
fSLAM実験においてi番目のコンパートメント内の不均一性に起因するエラーを最小限に抑えるべく、i番目のコンパートメント自体の内側から発生する係数の二乗和を最小限に抑える。
【数46】
式中、wiiは、i番目のコンパートメント内のコンパートメント内エラーの重みを表す。
【0058】
コンパートメント間エラーおよびコンパートメント内エラーの両方を最小限に抑える数値最適化を実行するべく、実際には、i番目のコンパートメントについて以下に示すコスト関数を最小限に抑える。
【数47】
【0059】
<fSLAM方法の要約>
要約すると、fSLAM実験は、ステップ2の位相エンコード傾斜が数27のSNRコスト関数または数47のエラーコスト関数を最小限に抑えることによって取得されることを除いて、SLAMプロトコル(図2)と同じステップ1−ステップ5を用いて実施される。概して、最適化方法が異なると、得られる位相エンコード傾斜のセットも異なる。SNRおよび最小エラーの両方について最適化された傾斜のセットが求められている場合、数27および数47のコスト関数の合計の最小化は、スケーリングが異なるので、利用できない。これに代えて、fSLAMのコスト関数のSLAMのコスト関数に対する比率の加重和を最小限に抑えれば、十分である。重み付けは、用途およびエラー許容範囲に応じて選択される。ステップ2の位相エンコード傾斜は通常、分数である。
【0060】
【数48】
はbから得られたものなので、コンパートメントの位置およびサイズの情報が必要であり、傾斜の選択はCSIの整数傾斜ステップに限定されないので、fSLAMの傾斜のセットの最適化および選択は、コンパートメントの体積が同じ場合のCSIスペクトルの合計に比べてSNRを改善するべく、MRSの設定の一環としてスキャナ側で実行する必要がある。
【0061】
<空間応答関数>
参考文献[13]の数19および参考文献[23]の数27に応じて、行
【数49】
に対応する心臓コンパートメントの空間応答関数を以下の数50として定義する。
【数50】
【0062】
心臓コンパートメントスペクトルは以下の数式で表される。
【数51】
式中、f(x)は真の連続信号である。f(x)は、胸部からの信号f(x)およびそれ以外f(x)に分解される。
【数52】
数52における最初の積分値は胸部から心臓への漏れ「ε」である。
【0063】
(x)は、平均値と不均一性との合計として表す。平均値は数53で表し、不均一性はΔf(x)とする。
【数53】
すると、以下の式が得られる。
【数54】
【0064】
数54の最後の行の右辺は、胸部信号から心臓スペクトルへの汚染の上限である。
【0065】
<方法>
<コンピュータシミュレーション>
SLAMを人間の心臓の31P MRSに適用した場合の精度について調べるべく、コンピュータシミュレーションを実行した。われわれの研究室では[17−21]1D CSIが主であった。3つのコンパートメントを仮定した。心臓、胸部の骨角筋、および、その他である。実際には、「その他」コンパートメントが必要なのは、コンパートメントが割り当てられていない指定コンパートメントの外部で生成した任意の信号は胸部および心臓で止まり、大きさによってはエラーを発生させるためである。胸部スペクトルおよび心臓スペクトルは、図3の(A)および(C)に示す。16ボクセルで1cmの分解能の1D CSIモデルを用いて、所定のコンパートメント分布を持つこれらのスペクトルから信号が生成される。
【0066】
このモデルについての均一性の仮説における欠陥に起因するSLAMにおけるエラーを定量化するべくモンテカルロシミュレーションが実施された。経験から[17−20]、代謝体の胸部の筋肉の厚みは2−3ボクセルであり、心筋の厚みは2−6ボクセルであり、胸部コンパートメントと心臓コンパートメントとの間の距離は1ボクセルまたは0ボクセルであり、「その他」コンパートメントでは信号がゼロであると仮定した。これによって、人体構造上は20個の組み合わせが可能となった。濃度の相違および表面コイル感度が組み合わせられて発生する影響に対処するべく、2つのシナリオについて調べられた。シナリオ1では、胸部−心臓信号比が4で一定であると仮定した。シナリオ2では、胸部のPCr濃度は心臓よりも2.5倍高い[21]と仮定し、図4の(A)に示すように、実験の表面コイル空間感度プロフィールで結果をスケーリングした。両方のシナリオについて、結果として得られる信号においてランダム不均一性が±15%(合計30%)であるとシミュレーションされた。各コンパートメントについて、完全CSIセットの対応するボクセルからの信号を加算することで、基準として、平均信号を決定した。そして、心臓コンパートメントにおけるSNRが20になるように、ホワイトノイズを追加した。データセットのFTを用いて、時間ドメインCSI収集結果のセットを生成した。この中から、M´=4個の中央のk空間の収集結果を選択した。これら4つの位相エンコードステップからのSLAM再構築を実行し、基準CSI値に対して相対的にパーセントエラーを算出した。平均エラーおよびエラーのSDは、モンテカルロシミュレーションを1000回実行した後で決定した。
【0067】
モンテカルロシミュレーションはさらに、登録エラーに関して、SLAMの感度とSLIM[3]を比較するために実行された。胸部が−60mmから−30mm、心臓が−30mmから10mm、そして、胸部−心臓信号比が4である1D 心臓31Pモデルを上述したシナリオ1において仮定した(図4の(A))。−2mmと+2mmとの間のランダム分割エラーが、一方のコンパートメントのエッジに導入された。
(i)胸部および心臓は静止している(部分体積エラーなし)
(ii)胸部および心臓は共に±2mm移動(部分体積エラーあり)胸部は、絶対に心臓と重ならないように、制限された。SLAMおよびSLIMの両方について、中央のk空間から4つのCSI位相エンコードを用いて、シミュレーションを行った。SLIM再構築は、先述したように[3]、位相エンコード係数を、心臓、胸部およびその他の3つのコンパートメントのモデルにわたって積分して、4×3のGマトリクスを生成する[3]することによって、実行された。再構築された信号と、真の結果またはCSI結果との平均(±SD)パーセントエラーは、1000回実行した場合について算出された。
【0068】
SNRおよびコンパートメント間エラーおよびコンパートメント内エラーの二乗和の根である
【数55】
は、SLAMおよびfSLAMの両方について3つのボクセルおよび4つのボクセルの心臓コンパートメントおよび2つのボクセルの胸部コンパートメントを仮定して、心臓モデルについて算出された。両方ともコンパートメントの平均が同じであった。SLAMについてはM´=3から16個の中央のk空間の収集結果を用いて、fSLAMについては分数(低いk空間の)位相エンコードを用いて、16個のボクセルの1D CSI(数30)のコンパートメントの平均SNRに対してSNRを計測した。数27および数47においてしきい値u=50として、数45および数46において全ての漏れ重み付け係数wijを「1」に設定して、ラップトップコンピュータでMatlab「fminsearch」ルーチンを介して実行されたシンプレックス方法を用いて最適化を実行した(The MathWorks、Natick、MA)。
【0069】
3ボクセルの胸部/4ボクセルの心臓のモデルについて、4ステップのSLAM、4ステップのfSLAM、16ステップのCSIおよび4ステップのCSI(16ステップまでゼロで埋める)について、数50からSRFを算出した。これら4つのケースについて心臓スペクトルの胸部の汚染の上限を、実質的な胸部−心臓比を4と仮定して、胸部についてコンパートメント内の不均一性を±15%(合計30%)と仮定して、数54から算出した。
【0070】
<実験>
31P 1D CSI、SLAMおよびfSLAMを、フィリップス(Philips)社の3T Achieva MRI/MRSシステムにおいて、ファントム、人間の脚、および、人間の心臓に対して実施した。ファントムの検査は、直径が14cmの1つのループ状の送受信コイルで実行され、人間に対する検査は、上述したように[22]、直径が17cm/11cmの二重ループ送信コイルおよび直径が8cmの単一ループ受信31Pコイルのセットを利用した。人間に対する検査は全て、ジョンズ・ホプキンス・メディシン・インスティシューショナル・レビュー・ボード(ジョンズ・ホプキンス医療機関審査委員会)によって承認されており、全ての被験者はインフォームドコンセントを得た。各コンパートメントを構成している体積要素の全てからのそれぞれのCSIスペクトルは、SLAMおよびfSLAMを用いて再構築された均等な体積からのスペクトルと全て比較するべく、収集後に加算された。
【0071】
ファントムの検査は、2つの標準的なフィリップス(Philips)社の直径が15cmで厚みが2.5cmの31Pテストディスクに対して実施された。一方は300mMのH3PO2を含み、他方は300mMのH3PO4を含んでいた。周波数スイープサイクル(FSC)の断熱ハーフパッセージ(AHP)パルスを利用する標準的な1DのCSIプロトコルを適用した(視野FOV=160mm、ボクセル/スライス厚みSL=10mm、繰り返し時間TR=6s、CSI位相エンコードステップk=−8、−7、−6、−5、−4、−3、−2、−1、0、1、2、3、4、5、6、7、収集遅延1.4ms)[22]。SLAMプロトコル(図2)はこの後、同じステップのうち一部である4個まで減らされる(−2、−1、0、1)位相エンコード傾斜を除いて同じCSIパラメータで実行される。2つのディスクと「その他」コンパートメントとから構成される3個のコンパートメントのモデルを仮定した。
【0072】
脚は、上に300mMのH3PO4のディスク状のファントムを載せて検査し、追加コンパートメントを作成した。1D CSIは最初に、FSC AHP励起(FOV=160mm、SL=10mm、TR=8s、位相エンコードステップk=−8、−7、7)で実行した。この後に、合計スキャン時間および傾斜ステップのインクリメントは同じままで、しかし、4つの中央のk空間のステップのみを用いて(−2、−1、0、1、4回繰り返す)、SLAMを実行した。
【0073】
SLAMとCSIとを比較する人間の心臓の31PのMRSの研究を、同じプロトコルを用いて(FOV=160mm、SL=10mm、TR=15.7s、心臓誘因)8人の健常なボランティアおよび16人の非虚血性心筋症患者に対して実行した。各被験者について、全ての16個の位相エンコードステップから再構築されたCSIデータを、同じCSIデータセットのうち中心の4個の位相エンコードステップのみを利用するSLAM再構築と比較した。これによって、スキャン時間が4分の1に減るという効果が得られた。胸部コンパートメントおよび心臓コンパートメントのみに対応する中心のk空間からの2つの位相エンコードステップのみを利する効果についても調査した。得られるスペクトルは、円適合方法[25]によって適合させて、SLAMによって測定されたPCrおよびγ−ATPのピーク領域を、従来のCSIで測定されたものと定量的に比較した(局所化方法およびスペクトル分析方法は別個)。スペクトルを指数フィルタリングして(15Hz線広がり)、2048点まで4回ゼロで埋めた。
【0074】
SNRおよびコンパートメント漏れに関するfSLAMの性能は、追加で6人の健常なボランティアについての事前の心臓の31P MRS検査におけるCSIおよびSLAMと比較した。連続して、第1のCSI、SLAM、fSLAM、および、再度最後となるCSIスキャンを被験体毎に収集した。CSIは、−8から7の標準的な16個の位相エンコードステップを利用した(FOV=160mm、SL=10mm、TR=15.7s、心臓誘因)。SLAMは、各検査について同じ4つの中心のk空間の位相エンコードステップを利用して、CSIと同じ合計スキャン時間の間に4回繰り返した。fSLAMの位相エンコードは、4個の通常は分数である傾斜ステップを利用した。具体的には、スキャナのカーソル機能を利用してスカウトMRIを手動で分割した後に、各ボランティアについて心臓コンパートメントにおけるコンパートメント漏れを最小限に抑えるよう最適化した傾斜ステップを利用した。シミュレーションと同様に、最適化は、重み付け係数を単位元に設定して、スキャナ側でラップトップコンピュータでMatlabを用いて実行された。4つの傾斜値は、スキャナにおいてfSLAMパルスシーケンスにおける実験パラメータとして手動で入力された。4つのステップを、CSIと同じ合計スキャン時間の間に、4回繰り返した。
【0075】
<結果>
<コンピュータシミュレーション>
図3の(A)から(D)は、元々の16個の位相エンコードステップのうち中央の(k空間)3つの位相エンコードステップのみを用いて再構成された胸部および心臓のSLAMスペクトルが、不均一性またはノイズが無い場合には、元々のシミュレーションされたスペクトルと見分けがつかないことを示す。ノイズおよび不均一性を加えた場合に多岐にわたる胸筋および心臓のコンパートメント分布について再構成されたSLAMスペクトルへの影響は、図4の(A)から(E)に示す濃度のばらつきおよび感度のばらつきの両方のモデルについてのモンテカルロシミュレーションによって図示している。これらによると、再構成の精度は、エラーの平均によって示されているように、全ての胸部/心臓の人体構造上の組み合わせについて10%未満であることが分かる。予想されるかもしれないが、濃度が高くなるほど、または、コンパートメントサイズが大きくなるほど、エラーSDは小さくなる。心臓について、シミュレーションからは、心臓コンパートメントの実効的な範囲が最も小さくなる場合にエラーが最も高くなると予想される。
【0076】
CSI、SLAMおよびSLIMについて、真の値およびCSIに比べて、コンパートメントの登録においてエラーが小さいことの影響について、表1にまとめている。モンテカルロシミュレーションによると、±2mmというわずかな分割エラーによって、SLIMでは、被験体が静止状態である場合には10%に迫るランダムエラーが発生する可能性があることが分かる。一方で、SLAMは実質的に影響がなく、部分体積エラーに対する感度もより低い。相対的に小さい分割エラーに対してSLAMが影響を受けにくい特性は、完璧な分割は実際には、特に心臓31P MRSでは、ほとんど不可能であるので、実際に適用する場合には重要になる。
【0077】
表1:30mm胸部/40mm心臓モデルについて±2mmの登録エラーが心臓PCr測定の精度に与える影響についてのモンテカルロ分析
【表1】
【0078】
SNRゲイン、ならびに、コンパートメント間エラー係数およびコンパートメント内エラー係数の合計(数55)の分析の結果は、SLAMおよびfSLAMについて、心臓の16ボクセルの1D CSIと比較しつつ、3ボクセルおよび4ボクセルの厚みの心臓コンパートメントと共に図5に図示されている。
【数55】
SNRが最大値を取るのは、中央のk空間に最も近い位相エンコードステップを選択した場合である。SLAMはCSIの整数の位相エンコードのセットに限定されるので、SNRに関する利点は、利用される高いk空間位相エンコードが多くなるほどに小さくなる。SLAMにおいて、SNR性能が最適な値を取るのは、位相エンコードの数がコンパートメントの数と同等である場合である。この場合、SLAMは性能がfSLAMに近くなる。このため、SLAMについて、k空間の中心またはk空間の中心に最も近接しているM´個(M´はCに略等しい)の同一でないCSI位相エンコードステップを選択して、高いk空間位相エンコードを追加するのではなく、割り当てられたスキャン時間まで収集処理を繰り返すか、または、収集結果を平均化するのが最良の選択である。一方、fSLAMは、許可されている位相エンコードステップの数に関係なく、標準CSIのSNRの1.5倍から1.8倍を常に実現する。これは、fSLAMは、全て中央のk空間に近い一連の分数の位相エンコードを自由に選択するという事実を反映している。fSLAMについて、位相エンコードを追加すると、シグナルブリード(signal bleed)が低減するという効果がさらに得られる(図5の(C)および(D))。fSLAMの場合、
【数55】
で表されるエラーは、位相エンコードが追加されるとSLAMよりも高速に小さくなる。つまり、エラー抑制効果が優れており、コンパートメントが大きくなると、小さいものに比べて、発生するエラーが少なくなる。
【0079】
図6の(A)から(D)は、16ステップおよび4ステップのCSI、4ステップのSLAM、および、4ステップのfSLAMについて、SRFを図示している。信号は各コンパートメントにわたる曲線の積分値から導出されるものと認めることが重要である。この結果、心臓の外部の信号がキャンセルされる。胸部信号が均一である場合、キャンセルは、SLAMおよびfSLAMについては実質的に完璧であるが、CSIについてはそうではない(表2、第1行)。胸部コンパートメントにおける信号がピーク・ツー・ピークで最大30%変動すると、心臓コンパートメントの汚染の上限は、SLAMおよびfSLAMについて、12−14%に上る。これに比べて、16ステップのCSIについては9%となり、4ステップのCSIは基本的に利用できない(表2、第2行)。
【0080】
表2:CSI、SLAMおよびfSLAMの場合の、SRFの積分およびCSIについての胸部汚染の上限
【表2】
a:3スライス胸部/4スライス心臓モデルについて算出
b:胸部/心臓信号比は4で胸部の不均一性は±15%(合計30%)の場合について算出
【0081】
<実験>
CSIおよびSLAMを用いて再構築された2つのディスク状の無機リン酸塩のファントムからのスペクトルを図7に示す。H3PO4は、2.9ppmにおいて31Pの単一ピークがあり、H3PO2の共鳴は、水素との異核結合であるので、13.5ppmを中心とした三重項である(結合定数、545Hz)。スキャン時間を4分の1に縮小できるが、2つのディスクからのSLAMスペクトルは、コンパートメントの体積が同じ場合の加算CSIスペクトルと非常に類似しており、シミュレーションに見られる漏れは無視してよい(図4)。
【0082】
CSI(平均でn=6個のボクセル)およびSLAM(同じ体積)によって収集された同じサイズの脚のコンパートメントからのスペクトルを、一定ノイズに対して正規化されて、図8の(A)に示す。SLAMスペクトルは、SNRがCSIに比べて2.1倍良好であり、脚の上に置いたH3PO4のファントムによる信号汚染またはシグナルブリードが無視できる程度である。図8の(B)は、同じ体積の場合の16ステップの1D SCI(平均して4ボクセル)、4ステップのSLAMおよび2ステップのSLAMで得られる31P心臓のスペクトルを示す。ベースラインロール(baseline roll)は、位相エンコード傾斜についての収集遅延のためである。繰り返しになるが、4ステップのSLAMのスペクトルでは、隣接する胸部骨格筋または埋め込まれたコイルマーカー(約23ppm)の一方からのシグナルブリードが無視できる程度であるのが明らかである。重要な点として、CSIおよびSLAMの再現性およびSNRはここでは同等である一方、SLAMのスペクトルは4分の1の速度で収集された。ステップが2つのみであっても、SLAM再構成は、図8の(C)に示すように、驚くほど高品質のままである。2段階エンコードでは、胸筋および心臓という2つの信号生成コンパートメントのみを許可した。この結果、CSI規格の8分の1の時間で収集されたスペクトルでは外部コイルマーカーからのシグナルブリードが見られた。
【0083】
8人の健常な被験者および16人の患者から得られた心臓の4ステップのSLAMおよび16ステップのCSIのスペクトルに基づく適合結果の比較を、図9に示す。これらのデータセットでは、胸部におけるPCr信号の心臓コンパートメントにおけるPCr信号に対する比率は、約5以下であった。SLAM再構築で見られるPCrおよびγ−ATPのピーク領域は、CSI再構築で見られるものと一致している(図9の(A)および(B))。プールした患者および健常な被験者について、心筋のPCr/ATP比は同じであり(CSIでは1.94±0.60対SLAMでは1.90±0.67)、PCr/ATP比が約4と大幅に高い([19])胸筋からの無視してよい汚染と一致している。このデータによるとさらに、SLAMが測定した胸部におけるPCrと心臓コンパートメントにおけるPCrとの合計は、CSIの総合測定結果に等しい(図9の(C))ことが分かる。このため、合計信号が保持される。さらに、SLAMで測定された心臓のPCrと総PCrとの比もまた、CSIの測定結果に等しい(図9の(D))。これは、SLAMにおける胸筋からの心臓のスペクトルの汚染がCSIの場合と比べても見分けがつかないことを意味する。この結果は表2の内容に一致している。重要なことに、これらのSLAM結果はすべて、CSIのスキャン時間の4分の1で実質的に収集される。
【0084】
図10の(A)から(D)は、CSI、SLAM、および、fSLAMによって、同じ総スキャン時間において、同じ体積サイズから、同じ健常なボランティアについて、事前に収集された31Pの心臓のスペクトルを比較している。fSLAMをスキャナ側で実行するのにかかった時間は、スカウトMRIを手動で分割するためにかかった1−2分と、ラップトップコンピュータで傾斜のセットを最適化するための数秒との合計であった。SLAMおよびfSLAMによるスペクトルは共に、同じ体積の場合においてCSIよりもSNRが高いが、SLAMスペクトルにおけるコイルマーカーからのブリードシグナルは、fSLAMスペクトルでは見られない。表3は、CSI、SLAMおよびfSLAMについて、同じスキャン時間で6人のボランティアから得られた、同じサイズのボクセルにおける人間の心臓のPCrのSNRを示している。6人の検査の結果見られたSNRの改善幅の平均は、SLAM対CSIで見ると、1.42±0.23である。6人の検査の結果見られたSNRの改善幅の平均は、fSLAM対CSIで見ると、1.34±0.19である。数2によると、再構築では4つのボクセルの心臓コンパートメントを仮定していたが、このSNRゲインは、1cmのCSIボクセルの2つに等しい心臓コンパートメントと一致すると思われる。これは、表面コイル感度の減少と深さとが組み合わさった影響、および、前方心筋壁の1−2cmの厚みを反映していると考えられる。図9に示すように、SLAMスペクトルまたはfSLAMスペクトルのいずれにおいても胸筋の汚染の証拠はない。SLAMおよびfSLAMの場合、PCr/ATP比は、最初のCSIスキャンまたは繰り返して最後に行われたCSIスキャンのいずれかで測定されたものとは大きく異なっておらず、絶対代謝信号レベルは変化しない(図10の(D))。
【0085】
表3:心臓のボクセル体積およびスキャン時間が同じ場合の、CSI、SLAMおよびfSLAMを用いて収集したn=6人の健常なボランティア(左から右)におけるPCrについての心臓の31PのMRS SNR
【表3】
【0086】
<説明>
PRESS[26]、STEAM[27]またはISIS[28]等の単一ボクセル方法は、単一のコンパートメントのMRSを実行する場合の局所化方法としては良い選択であるが、複数のコンパートメントのMRSについてスキャン時間を一定とした場合にはSNRが最適な値とならない。また、緩和効果(T1およびT2の両方)および動きに対する感度は、特に31PのMRSにおいて[1、26]、定量化に関して大きな問題を呈する。CSIは、全サンプル、全タイミングからの全信号を収集する単純なパルス−収集実験であって、現時点において定量的MRSに対して最もクリーンな方式であり、SNR効率も最も高い可能性がある。しかし、感度を持つ全体積または検出コイルの全FOVをエンコードするために必要な最小スキャン時間によって制限がある。これによって、例えばB0磁界強度が高くなることによって得られるSNRゲインがスキャン時間の短縮に直接つながる可能性が制限され得る。
【0087】
また、CSIのSNR効率が最も高くなるのは、収集の際の空間分解能が所望のコンパートメントサイズに一致する場合のみである[1]。残念なことに、CSIの空間分解能は通常、所望のコンパートメントのサイズに応じて設定されるのではなく、区別すべき対象の組織(例えば、心臓または肝臓の検査では胸部、脳の検査の場合には頭皮)の形状によって決まる。人体構造に関するMRI情報に基づいてスペクトルを予め選択したコンパートメントに局所化する別の方法は、新しいものではない。SLIM法、GSLIM法およびSLOOP法は、元々20年ほど前に提案された[3−5]が、CSIに比べると、さらにはPRESS、STEAMまたはISISと比べても、今日ではほとんど利用されていない。SLIM法、GSLIM法およびSLOOP法が通常のCSI収集処理に適用されると、大抵の場合がそうであるようにSNRに重点を置く事前実施または傾斜選択基準がなければ[3、4、6−16]、事前に分解能をコンパートメントに一致させることで得られるSNRの最大値は得られない。上記の説明では触れなかったが、数2における差「g」の値は実質的に、構成要素であるCSIボクセルからの信号を加算することで得られるSNRよりも大幅に高くなる。同様に、位相エンコード傾斜セットを削減すれば、最短CSIスキャン時間が大幅に高速化される。
【0088】
ここで、初めて、所望のMRSコンパートメントとCSI分解能との間の体積サイズの差異を利用して、新しいMRS局所化方法であるSLAMに基づき、数2に一致するg倍のSNRゲインを実現および証明した。SLAMは、適用されるパルスシーケンスおよびMRS再構築方法の両方について、SLIM、GSLIM、SLOOPとは異なっている。簡単にまとめると、他の方法とは違って、SLAMのパルスシーケンスは、CSIシーケンスに基づいており、CSIシーケンスから、中央のk空間に最も近いC個の位相エンコードステップ以外、高次の傾斜位相エンコードステップを実質的に全て削除する。CSI傾斜セットは離散化しているので、つまり、当該シーケンスを実行するために必要な先行情報はC個のみである。この数は一般的には、所与の検査プロトコルについて一定である。SLOOPの事前実施[5]に比べると、この方法は、画像に誘導される傾斜最適化、事前設定、および、収集前のスキャナ側での実施を回避するという利点がある。一方、SLIMおよびGSLIMは、標準的なCSIシーケンスを利用する[3、4、6、11、12]。
【0089】
先行技術に係る方法と同様に、SLAMによるスペクトル再構築は、均一であると仮定されるコンパートメントを特定および分割するべくスカウトMRIを必要とする。しかし、SLAM再構築は、不要な位相エンコードステップを標準的なCSIアルゴリズムから削除することによってC個の連立一次方程式の解を求める点で、SLIM、GSLIMおよびSLOOPとは異なる。SLAMは、最良であってもコンパートメントの平均CSIスペクトルに等しいスペクトルを生成することを目的としている。一方、SLIM、GSLIMおよびSLOOPは、最適に局所化されたコンパートメントスペクトルを取得するべく、MRIベースの制限がある再構築またはSRF最適化を利用する。CSIの分解能は比較的粗いので、SLAMは、例えば、SLIMに比べると、コンパートメントを分割する際の登録エラーに対する感度が比較的低く(表1)、この問題については上述した[11、29]。
【0090】
SLAMで、理論上(図5)、そして、実際に(図8図9)、3テスラで動作する標準的な医療用MRI/MRSスキャナ(図10、表3))を利用した場合に、CSIに比べて最短スキャン時間を大幅に短縮すること、そして、人間の体内検査において大きなSNRゲインが実現されることを証明する。重要なこととして、1Dの31Pの人間の心臓の場合、SLAMは、4倍に高速化され、SNRが高くなったこと(図3図7から図10)以外は、従来のCSIから得られる結果と実質的に見分けがつかない定性的結果および定量的結果(図10)を実現する。そうだとしても、隣接するコンパートメントからの信号が大きく異なるか、または、分割されていない場合には、コンパートメント間で大きな汚染が発生する可能性がある。これは、例えば、胸部の骨格筋コンパートメントの信号が、筋肉の代謝体の濃度が高いこと、および/または、その厚み、および/または、感度が不均一である表面コイル検出部に近接していることにより、心臓の信号よりも何倍も高い(例えば、5倍以上)である場合に、31P MRSの心臓の検査で発生し得る問題である。従来のCSIも、本明細書では標準として利用されているが、この問題からは逃れられない(表2)[30]。コンパートメントが均一であると仮定しているにもかかわらず、数値的結果(図4、表1、2)および実験(図7図10)の両方からは、SLAMが実用の際、例えば、心臓の表面コイルのMRSで発生し得る信号のばらつきに対して比較的ロバストであることがうかがえる。
【0091】
整数のk空間の位相エンコードを利用するSLAMの収集パルスシーケンスは、少なくとも1Dの場合には、驚くほど実施が簡単であった。本願の心臓の31PのMRSの検査の場合、最大で4つのコンパートメントに適した固定SLAM収集シーケンスを提供するべく同じ4つの中央の傾斜ステップを選択し、標準の16ステップのCSIシーケンスから抽出し、他の12個のステップは破棄した。Cをさらに減らして、例えば、位相エンコードの数を2にすると(図8の(C))、指定したコンパートメントの外部に位置する信号ソースのために、不明箇所からの漏れの恐れがある。これは、漏れが対象スペクトル領域に干渉しなければ、許容されるとしてよい。検証または試験を目的として、SLAMは、単にアルゴリズムを各CSIデータセットにおけるフレームのサブセットに適用することによって、スカウトMRIを伴う未加工のデータセットに対して事後的に実行され得る。この結果は、図9と同様の同じサイズのコンパートメントからの加算CSIと比較され得る。
【0092】
fSLAMは、位相エンコードは整数ステップのCSI傾斜のセットから選択される、という制限を無くすことによって、SLAMを拡張する。これに代えて、位相エンコードは、不均一性による漏れまたはエラーを最小限に抑え、および/または、SNRを最大限に大きくするように調整される。SNRを最大限に大きくすることのみでは、k空間の中心における位相エンコードのクラスタ化を確認しない場合には、発生するエラーは許容範囲を超えてしまうことが分かった(図5)。コンパートメント間エラーおよびコンパートメント内エラーを最小限に抑えるのみとすると、SNRがわずかに減少するが(図10、表3)、得られる結果は許容範囲である。このため、コンパートメント間エラーおよびコンパートメント内エラーは、4つの位相エンコード傾斜ステップのみを用いても、fSLAMにおいて大幅に除去される。SNRが低い場合も、コンパートメント間の漏れは、コンパートメント信号に対して問題となる可能性がある。本明細書で用いる単位元の値に基づいて数47における重み付け係数を調整することで、特定の用途に応じて、特定の隣接するコンパートメントからのブリードを抑制し得る。fSLAMにおける傾斜の最適化は、再構築プロセスにおける追従エラーから導出され、コンパートメント間およびコンパートメント内の両方の信号不均一性に起因する追従エラーを含む。これは、SLOOPにおいてコンパートメント間の漏れのみ[5]を最小限に抑えることを目的としてSRFを利用することとは異なる。SLIMおよびGSLIMは、最適化された結果を利用しない。
【0093】
また、SRFは広範囲にわたるものではなく、心臓モデルに固有であることに留意されたい。コンパートメント間およびコンパートメント内の漏れは、コンパートメント全体の積分値がゼロではない場合、または、不均一性が大きい場合のみに発生する。コンパートメント分割によって、SLAMではSRFの積分値が他のコンパートメントではゼロになり、fSLAMでは対象コンパートメント内の不均一性の影響を最小限に抑える。しかし、最終的には、SLAMおよびfSLAMの空間応答およびコンパートメント汚染は、解の精度および漏れのエラーを決定することによって、特徴付けられる。解の精度および漏れのエラーの決定は、現在の研究では標準としてCSIが用いられている(図5図7から図10、表1および2)。
【0094】
このように、SLAM法およびfSLAM法によると、同じサイズのCSIの場合のコンパートメントの平均と同等のスペクトルが得られ、当該スペクトルは、スキャン時間の大幅な短縮、SNRゲインを実現し、および、無視できないレベルであれば管理可能な範囲のブリードアーチファクトを含む。数2が予測するSNRゲインは、実際には表面コイル感度の深さ依存性および実際の代謝体の分布(本願の場合は、心筋壁の厚み)によって加減される。SNRゲインとは無関係に、SLAMおよびfSLAMでは、CSIにおけるM回の収集処理からCまたはM´(<<M)へと、局所化に必要な最小スキャン時間が短縮される。単一ボクセル方法が緩和、動きまたはその他の留意事項によって限定される場合、または、心筋症[15−20]、大きい病巣等の広範囲にわたる疾患のためにCSIを利用したMRS検査を受ける患者について、このような効率の改善のみでMRSのスキャン時間を大幅に短くすることが出来ると考えられる。また、CSIと比較してSLAM法およびfSLAM法で最小スキャン時間が大幅に短縮されることで、実際に、磁界強度の増加によって得られるSNRの改善が、MRS検査の高速化につながる。
【0095】
1D以上への拡張を含む本発明の実施形態もまた、以下に記載するように、含まれる。このような一例を挙げると、SLAMは以下のステップで実施される。
(i)MRIを収集
(ii)MRIをC個のコンパートメントに分割して、CSIグリッドに重ねる
(iii)M´個の中央のk空間の位相エンコードを適用
(iv)SLAMを用いてスペクトルを再構築
2Dおよび3DのSLAM実験はそれぞれ、フィリップス(Philips)社の3T MRIシステムで人間の脳(H)およびリン酸のファントム(31P)に対して実施された。コンパートメントは、頭皮、脳、側脳室およびバックグラウンド(2D)、および、H3PO4、H3PO2のディスク状のファントムおよびバックグラウンド(3D)であった。追加で、胸部、心臓およびバックグラウンド(1D)のコンパートメントを含む31Pの心臓の検査も図示している。SLAMスペクトルは、中央の4個(1D)、7×7個(2D)、2×4×2個(3D)の位相エンコードで再構築され、16個(1D)、32×25個(2D)、および、10×20×8個(3D)の位相エンコードを含む全データセットから取得されたコンパートメントの平均CSIスペクトルと比較した。心臓の検査は、ECGゲーティングされ(TR=15.7s)、脳の検査は、脂質/水分が抑制され(TE/TR=0.144/3s)、ファントムの検査は、TR=0.72sであった。
【0096】
2Dおよび3Dの場合、全ての位相エンコードM´(≦C)個の一部を、2つまたは3つの空間的次元のそれぞれについて選択しなければならない。例えば、3Dの場合には、MRI/MRSスキャナの空間エンコード傾斜システムで実行されるように、サブセットであるM´個、M´個およびM´個の傾斜をそれぞれ、デカルト座標系におけるx方向、y方向およびz方向において位相エンコードを適用するべく選択しなければならない。この場合、M´+M´+M´=M´である。SLAMまたはfSLAMの2Dの場合、どの次元をエンコードするかに応じて、M´、M´またはM´のうち1つを省略する。任意の1つの方向において用いられる位相エンコードの数であるM´、M´またはM´は、少なくとも信号生成コンパートメントC、CおよびCの数以上でなければならない。信号生成コンパートメントは、対応する次元において分割することができるので、つまり、M´≧C、M´≧C、M´≧C等となる。概して、各次元についての一部の位相エンコード傾斜であるM´、M´またはM´を選択する際の特定の方法は、上述した各次元に適用されるものと同じである。SNRの最適化については、傾斜は中央のk空間(各次元について、k、kおよびk)から選択され、SLAMの場合には整数倍であってよく、fSLAMの場合は分数倍であってよい。尚、ゼロの位相エンコードは繰り返さない(信号平均化を目的とする場合を除く)。同様に、fSLAMの傾斜の最適化は、次元毎にM´、M´およびM´のそれぞれについて最適化アルゴリズムを別々に適用する。
【0097】
図12の(A)および(B)は、1DのCSIおよびSLAMから再構築された同じサイズの胸部コンパートメント(A)および心臓コンパートメント(B)について、31Pのスペクトルを示す図である。図13の(A)および(B)は、同じ体積の脳(A)および側脳室(B)の2DのSLAMおよびCSIによるスペクトルを示す図である。図14の(A)および(B)は、3DのCSIおよびSLAMから再構築されたH3PO2(A)およびH3PO4(B)のファントムのスペクトルを示す図である。CSIと比較した場合の1D、2Dおよび3DのSLAMの高速化はそれぞれ、4倍、16倍および100倍である。SNRコストは、14%、30%未満および50%である。
【0098】
上述した新しいSLAM方法は、1D、2Dおよび3Dで適用されると、従来のCSIで得られるコンパートメント平均スペクトルとはほとんど見分けがつかないスペクトルが得られる一方、以前には見られなかったようなスキャン時間の大幅な短縮を実現する。
【0099】
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【0100】
本明細書で図示および説明した実施形態は、本発明の利用方法および作成方法を当業者に教示することのみを目的としたものである。本発明の実施形態を説明するにあたって、分かり易いように具体的な用語を用いている。しかし、本発明は選択した具体的な用語に限定されるものではない。上述した本発明の実施形態は、上記の教示内容を参照すれば当業者には明らかであるが、本発明から逸脱することなく、変形または変更され得る。このため、特許請求の範囲およびその均等物の範囲において、本発明は具体的に説明した内容以外の方法で実施し得るものと理解されたい。
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