特許第6070984号(P6070984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070984
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】内燃機関の上部の構造
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20170123BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20170123BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F01M13/00 J
   F02B67/00 M
   F02F1/24 H
   F02F1/24 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-239657(P2012-239657)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88837(P2014-88837A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】小矢 健太郎
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−220521(JP,A)
【文献】 実開昭60−175812(JP,U)
【文献】 実開平06−008715(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00−13/06
F02F 1/00− 1/42
F02F 7/00
F02B 61/00−79/00
F01M 1/00− 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸方向に並列させた状態でシリンダヘッドカバーに複数取り付けられた点火コイルと、
シリンダヘッドカバー上面の前記点火コイルの後方に接続されたPCV配管と、
シリンダヘッドカバー上面の前記PCV配管近傍を除く点火コイルの周囲又は前後の部位に設けられた隆起部と、
前記点火コイルと前記PCV配管との間に前記隆起部との間に隙間を形成した状態で配され走行風を点火コイル取付部へ導く整流壁とを備えている内燃機関の上部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられ、シリンダヘッドの上面を被覆するシリンダヘッドカバーを備えた内燃機関の上部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリンダヘッドカバー上面にクランク軸方向に並列させて複数取り付けられた点火コイルと、シリンダヘッドカバー上面の前記点火コイルの車両の進行方向に対して後方に接続されたPCV配管とを備えた内燃機関において、PCV配管に低温の走行風が当たることによりPCV配管に氷が付着する不具合を解消すべく、以下のような構成を採用することが考えられている。すなわち、シリンダヘットカバーの上面において点火コイルの上方に対応する位置に周囲の部位よりも上方に起立した防水カバーを設け、その後方にPCV配管を配することが考えられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、特許文献1記載の構成では、前記防水カバーのさらに上方にエアクリーナを設けることから高さ寸法が大きくなるという不具合や、シリンダヘッドカバー上方における吸気管を含む吸気系の配置が難しくなるという不具合が新たに発生する。また、走行風に含まれる水滴が前記防水カバーに衝突して滴下し、滴下した水滴が表面張力によりシリンダヘッドカバー上上面を伝って点火コイルを取り付けるためのプラグホール内に侵入することにより点火コイルや点火プラグの電気配線に水が付着するという不具合が新たに発生する。さらに、点火コイルのメンテナンスを行う際に防水カバーを取り外す必要があることからメンテナンス性が低下するという不具合も新たに発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−8715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に着目し、限られたエンジン室内の寸法でエンジンの設計の自由度及びメンテナンス性を確保しつつPCV配管への氷の付着を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上に述べた課題を解決すべく、本発明に係る内燃機関の上部の構造は以下に述べるように構成している。すなわち本発明に係る内燃機関の上部の構造は、クランク軸方向に並列させた状態でシリンダヘッドカバーに複数取り付けられた点火コイルと、シリンダヘッドカバー上面の前記点火コイルの後方に接続されたPCV配管と、シリンダヘッドカバー上面の前記PCV配管近傍を除く点火コイルの周囲又は前後の部位に設けられた隆起部と、前記点火コイルと前記PCV配管との間に、前記隆起部との間に隙間を形成した状態で配され走行風を点火コイル取付部へ導く整流壁とを備えている。
【0007】
このようなものであれば、走行風は、前記整流壁により一旦点火コイル取付部へ導かれ、その後、この整流壁と前記隆起部との間の隙間を経て後方に流れる。従って、特別な部品を設けることなく、PCV配管に低温の走行風が直接当たることによりPCV配管に氷が付着する不具合の発生を抑制することができる。また、このような構成を採用すれば、点火コイル取付部から前記隆起部と前記整流壁との隙間を経て走行風が後方に流れることとなるので、前記隙間を通る走行風の流速が増し、この走行風によりシリンダヘッドカバーの上面から水滴を吹き飛ばし、プラグホール内に水が侵入する不具合の発生も防ぐことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、限られたエンジン室内の寸法でエンジンの設計の自由度及びメンテナンス性を確保しつつPCV配管への氷の付着を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における内燃機関及びブローバイガス還流装置の構成を示す概略図。
図2】同実施形態に係る内燃機関の上部を示す平面図。
図3図2におけるA−A断面図。
図4図2におけるB−B断面の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。この内燃機関は、火花点火式の4ストロークエンジンである。図示例の内燃機関は、筒内直接噴射式のもので、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを概略的に図示している)と、各気筒1内に燃料を噴射するインジェクタ11と、各気筒1に吸気を供給するための吸気通路3と、各気筒1から排気を排出するための排気通路4とを具備している。前記複数の気筒1は、本実施形態ではクランク軸方向に複数並列して配されている。すなわち、この内燃機関は横置きエンジンである。また、このエンジンは、内部にシリンダボアを備えたシリンダブロック1aと、このシリンダブロックの上方を被覆するシリンダヘッド1bと、前記シリンダブロックの下方に配されたクランクケース1cと、前記シリンダヘッド1bのさらに上方を被覆するシリンダヘッドカバー1dとを備えている。
【0011】
気筒1の燃焼室の天井部には、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイル121にて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイル121は、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵された状態で、シリンダヘッドカバー1dに取り付けられている。また、この点火コイル121は、クランク軸方向に並列させて複数取り付けられている。
【0012】
吸気通路3は、外部から空気を取り入れて気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ33、サージタンク34、吸気マニホルド35を、上流からこの順序に配置している。
【0013】
排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させることで発生した排気を気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気ガス浄化用の三元触媒41を配置している。
【0014】
また、本実施形態では、内燃機関のクランク室7内及びカム室8内のブローバイガスを吸気通路3に送り出すためのブローバイガス還流装置6を備えている。このブローバイガス還流装置6は、PCV配管たるPCV通路61、及びPCVバルブ62を要素として備えている。
【0015】
PCV通路61は、その一端がシリンダヘッドカバー1d内のカム室8に接続し、他端が吸気通路3におけるスロットルバルブ33の下流側(特に、サージタンク34)に接続しており、カム室8を吸気通路3に連通せしめる。前記カム室8及びクランクケース1c内のクランク室7内にあるブローバイガスは、このPCV通路61を経由して吸気通路3に排出される。このPCV通路61の上流側端部は、シリンダヘッドカバー1d上面において、前記点火コイル121の後方に接続されている。なお、前記カム室8及び前記クランク室7は、図示しない管路を介して連通している。
【0016】
PCVバルブ62は、PCV通路61を流通するブローバイガスの流量を増減させるものであり、PCV通路61中に設置している。本実施形態において、このPCVバルブ62は、弾性付勢されて弁座に押し付けられている弁体が、ブローバイガスの圧力により(弾性付勢力に抗して)弁座から離反する方向に変位する態様の、機械式(差圧作動形)のバルブである。
【0017】
PCVバルブ62が開いているとき、カム室8及びクランク室7内のブローバイガスが、PCVバルブ62及びPCV通路61を経由して吸気通路3に送り出される。同時に、吸気通路3から図示しないブローバイ通路を経由してカム室8及びクランク室7に新気が流れ込み、カム室8及びクランク室7内が換気される。吸気通路3のサージタンク34に還流したブローバイガスは、気筒1に充填されて再燃焼される。
【0018】
しかして本実施形態では、内燃機関の上部は以下のような構造を有する。すなわち、この内燃機関は、シリンダヘッド1bの上方をシリンダヘッドカバー1dにより被覆している。このシリンダヘッドカバー1dの上面1d1には、上述したように、また図2に示すように、点火コイル取付部1d5を設定しており、この点火コイル取付部1d5に点火コイル121がクランク軸方向に並列した状態で複数取り付けられている。また、このシリンダヘッドカバー1dの上面1d1の前記PCV通路61近傍を除く点火コイル12の前後の部位には、図2図4に示すように、他の部位(特に点火コイル取付部1d5)よりも上方に隆起した隆起部1d2を設けている。さらに、前記点火コイル121と前記PCV配管61との間には、走行風を点火コイル取付部1d5へ導く第1の整流壁1d3を備えている。この整流壁1d3と前記隆起部1d2との間には、走行風を後方に流すための隙間1d4を形成している。
【0019】
さらに本実施形態では、図4に示すように、シリンダヘッドカバー1dの上方にエアクリーナ31を配しており、このエアクリーナ31の下面から、前記シリンダヘッドカバー1dと前記第1の整流壁1d3との間に対応する箇所に第2の整流壁311を垂下させて設けている。ここで、前記第1の整流壁1d3の上端とエアクリーナ31との間には、エンジンの振動に伴いこれらが接触し騒音を発することを防ぐべく隙間を設けている。また、前記第2の整流壁311の下端とシリンダヘッドカバー1dとの間にも同様に、エンジンの振動に伴いこれらが接触し騒音を発することを防ぐべく隙間を設けている。
【0020】
すなわち、本実施形態の内燃機関の上部にエンジンルーム内を流通する走行風が達し、さらにこの走行風が、第1又は第2の整風壁1d3、311に達すると、走行風は、図2の矢印W及びW2、並びに図4の矢印Wに示すように、一旦点火コイル取付部1d5に導かれる。点火コイル取付部1d5に導かれた走行風は、その後、前記PCV通路61に当たることなく、図2の矢印W2に示すように、第2の整風壁311と隆起部1d2との間の隙間1d4を経て後方に流れる。よって、前記第1又は第2の整風壁1d3、311を利用して、特別な部品を設けることなく、低温の走行風がPCV配管61に直接当たることによりPCV配管61が冷却されることを抑制できる。換言すれば、PCV配管61内部を流通するブローバイガス中の水分が冷却されることによりPCV配管61の内部に氷が付着する不具合の発生を抑制することができる。加えて本実施形態では、点火コイル121を上方から被覆する防水カバーを設ける特許文献1記載の態様と比較して、限られたエンジン室内の寸法でエンジンの設計の自由度及びメンテナンス性を確保しつつ、より低コストで前述した効果を得ることができる。さらに、点火コイル取付部1d5から前記隆起部1d2と前記整流壁1d3との隙間1d4を経て走行風が後方に流れることとなるので、前記隙間1d4を通る走行風の流速が増し、この走行風によりシリンダヘッドカバー1dの上面1d1から水滴を吹き飛ばし、点火コイル121を取り付けるためのプラグホール内に水が侵入する不具合の発生も防ぐことができる。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0022】
例えば、上述した実施形態では、シリンダヘッドカバー1dの上面から起立する整風壁は下端から上端までシリンダヘッドカバー1dの上面と垂直であるが、整風壁の上端部の形状を、上端に向かうにつれPCV通路から離間する、換言すれば点火コイル取付部に向かうような傾斜を有する形状をしてもよい。
【0023】
また、上述した実施形態における第2の整風壁すなわちエアクリーナの下面から垂下する整風壁は、省略してもよい。
【0024】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0025】
1d…シリンダヘッドカバー
1d2…隆起部
1d3…第1の整流壁
121…点火コイル
311…第2の整流壁
61…PCV配管(PCV通路)
図1
図2
図3
図4