【0018】
例えば、チェーンは、複数のプレートを有するものであれば如何なるものでもよく、具体的には、ローラチェーン、ブシュチェーン、サイレントチェーン等が挙げられる。
また、後述する実施形態では、ガイド部の曲率半径に応じて背面高さを設定された3種類のプレートからチェーンが構成されるものとして説明するが、本発明では、2種類以上のプレートからチェーンを構成すればよく、例えば、第1〜3プレートに加えて背面高さの異なる第4プレートを用いてもよい。
また、チェーンを構成する各種プレートの具体的な配置については、各ガイド部の曲率半径やチェーン速度等に応じて、適宜決定すればよい。
また、後述する実施形態では、互いに曲率半径が異なる第1ガイド部と第2ガイド部とが、異なる部材(揺動ガイド、固定ガイド)に形成されているものとして説明するが、第1ガイド部と第2ガイド部とが、同一の部材に形成されていてもよい。
また、後述する実施形態では、チェーン案内機構が、互いに曲率半径の異なる2種類のガイド部を有するものとして説明するが、曲率半径の異なる3種類以上のガイド部を設けてもよい。
また、後述する実施形態では、チェーン伝動装置がタイミングシステムとして構成されているものとして説明するが、チェーン伝動装置の具体的態様は、チェーンとチェーン案内機構を備えるものであれば、如何なるものでもよい。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態であるチェーン伝動装置100について、図面に基づいて説明する。
【0020】
チェーン伝動装置100は、
図1に示すように、自動車エンジン用のタイミングシステムとして構成され、エンジンルーム内のクランク軸およびカム軸に設けたスプロケット180と、スプロケット180に懸回されたチェーン110と、チェーン110を摺動案内するチェーン案内機構170とを備えている。
【0021】
チェーン案内機構170は、
図1に示すように、エンジンブロックに固定されチェーン110を案内する固定ガイド171と、エンジンブロックに揺動可能に取り付けられチェーン110を案内する揺動ガイド172と、チェーン110に適切なテンションを付与するために揺動ガイド172を押圧するテンショナ173とから構成されている。
【0022】
固定ガイド171は、
図3や
図4に示すように、チェーン110を摺動案内するシュー面として構成された第1ガイド部171aを有している。揺動ガイド172は、
図5や
図6に示すようにチェーン110を摺動案内するシュー面として構成された第2ガイド部172aを有している。第2ガイド部172aの曲率半径は、第1ガイド部171aの曲率半径よりも小さく設定されており、本実施形態ではR150mm以下に設定されている。
【0023】
チェーン110は、所謂ローラチェーンとして構成され、
図2に示すように、前後一対のブシュ120の両端を左右一対の内プレート130のブシュ孔に固定してなる複数の内リンクと、前後一対の連結ピン140の両端を左右一対の外プレート150のピン孔に固定してなる複数の外リンクと、ブシュ120に外嵌されたローラ160とを備えている。これら内リンクおよび外リンクは、ブシュ120内に連結ピン140を挿入することで、チェーン長手方向に交互に連結されている。
【0024】
本実施形態では、内プレート130として、背面高さが異なる2種類の第1内プレート130Aおよび第2内プレート130Bが用いられている。
同種の内プレート130(第1内プレート130Aまたは第2内プレート130B)は、
図2に示すように、チェーン幅方向に並べて配置され、すなわち、チェーン幅方向において同列に配置されている。
また、チェーン長手方向においては、
図3や
図5に示すように、第1内プレート130Aと第2内プレート130Bとが、交互に配置されている。
なお、チェーン長手方向における、第1内プレート130Aおよび第2内プレート130Bの配列については、上記に限定されず、2つの第1内プレート130Aと1つの第2内プレート130Bとを交互に配置する等、如何なるものでもよい。
【0025】
本実施形態では、
図3〜6に示すように、各プレート(第1内プレート130A、第2内プレート130B、外プレート150)のチェーン案内機構170側に面する端面が、平坦状に形成されている。
なお、チェーン110を構成するプレートの形状は、上記に限定されず、前記端面が凸状に湾曲したプレートを用いてチェーン110を構成してもよく、また、平坦状のプレートおよび凸状に湾曲したプレートの両方を用いてチェーン110を構成してもよい。また、平坦状のプレートと凸状に湾曲したプレートの両方を用いてチェーン110を構成した場合、各ガイド部171a、172aの曲率半径やチェーン速度等に応じて、ガイド部171a、172aに対する接触面積が小さいプレートおよび接触面積が大きいプレートの配置を調整することが可能であるため、チェーン案内機構170やチェーン110の耐久性の維持およびフリクションロスの低減の効果を向上することができるため、より好ましい。
【0026】
つぎに、各プレート(第1内プレート130A、第2内プレート130B、外プレート150)の背面高さについて、
図4および
図6を用いて説明する。
【0027】
ここで、本明細書における用語「背面高さ」とは、チェーン110のピッチラインPの法線方向における、ピッチラインPからチェーン案内機構170側に面するプレートの最外端面までの寸法を意味している。また、チェーン110のピッチラインPとは、各連結ピン140(ブシュ120)の中心をチェーン長手方向に結んだラインのことである。
【0028】
まず、第1内プレート130Aの背面高さH(130A)は、
図4の符号S1に示すように、曲率半径が大きい第1ガイド部171aによる案内時に第1ガイド部171aに接触しないとともに、
図6の符号S3に示すように、曲率半径が小さい第2ガイド部172aによる案内時に第2ガイド部172aに接触するように設定されている。
【0029】
また、第2内プレート130Bの背面高さH(130B)は、
図4の符号S2に示すように、曲率半径が大きい第1ガイド部171aによる案内時に第1ガイド部171aに接触するとともに、
図6の符号S4に示すように、曲率半径が小さい第2ガイド部172aによる案内時に第2ガイド部172aに接触するように設定されている。
【0030】
また、外プレート150の背面高さH(150)は、
図4に示すように、曲率半径が大きい第1ガイド部171aによる案内時に第1ガイド部171aに接触しないとともに、
図6に示すように、曲率半径が小さい第2ガイド部172aによる案内時に第2ガイド部172aに接触しないように設定されている。
【0031】
言い換えると、各プレート(第1内プレート130A、第2内プレート130B、外プレート150)間の背面高さの関係については、第2内プレート130Bの背面高さH(130B)が、第1内プレート130Aの背面高さH(130A)より長く、また、第1内プレート130Aの背面高さH(130A)が、外プレート150の背面高さH(150)より長い。
【0032】
このようにして得られた本実施形態のチェーン伝動装置100では、チェーン110を構成する複数のプレートに、第1ガイド部171aによる案内時に第1ガイド部171aに接触しないとともに第2ガイド部172aによる案内時に第2ガイド部172aに接触するように背面高さが設定された第1内プレート130Aが含まれている。
これにより、曲率半径が大きくチェーン110との接圧が小さくなる第1ガイド部171aによる案内時には、接触するプレート枚数を少なくしてフリクションロスを低減し、一方、曲率半径が小さくチェーン110との接圧が大きくなる第2ガイド部172aによる案内時には、接触するプレート枚数を増やして接触面積あたりの接圧の低減を図り、チェーン案内機構170やチェーン110の耐久性が損なわれることを防止することが可能であるため、チェーン案内機構170やチェーン110の耐久性を損なうことなく、動力伝達時に生じるフリクションロスを低減することができる。
【0033】
また、チェーン110を構成する複数のプレートに、第1ガイド部171aによる案内時に第1ガイド部171aに接触するとともに第2ガイド部172aによる案内時に第2ガイド部172aに接触するように背面高さが設定された第2内プレート130Bが含まれている。
これにより、第2内プレート130Bが第1ガイド部171aおよび第2ガイド部172aのいずれについても接触するため、安定したチェーン走行を実現できる。
【0034】
また、チェーン110を構成する複数のプレートに、第1ガイド部171aによる案内時に第1ガイド部171aに接触しないとともに第2ガイド部172aによる案内時に第2ガイド部172aに接触しないように背面高さが設定された外プレート150が含まれることにより、ガイド部171a、172aに対するチェーン110の接触面積を低減して、動力伝達時のフリクションロスを低減できる。
【0035】
また、同種のプレート(第1内プレート130A、第2内プレート130B、または、外プレート150)がチェーン幅方向において同列に配置されていることにより、チェーン幅方向におけるガイド部171a、172aとチェーン110との接触状態の左右バランスを良好に維持することが可能であるため、安定したチェーン走行を実現できる。
【0036】
また、連結ピン140に固定されるプレートでは、連結ピン140を軸受する必要がないことからピン孔の径を小さくすることが可能であり、これに伴って背面高さHを低く設定することができる。そのため、他のプレート130A、130Bよりも背面高さHが低い外プレート150を連結ピン140に固定することにより、チェーン高さ方向におけるチェーン小型化が容易になる。