【実施例】
【0027】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0028】
実施例1
厚み6.5μmのアルミニウム箔(1N30軟質箔)の一方面と紙(大王製紙株式会社製、商品名「バーガーラップ」、坪量21g/m
2)の一方面とを水ガラス(乾燥後塗布量3g/m
2)を用いてウエットラミネート法により貼り合わせた。紙の他方面にアイオノマー水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールS300」、乾燥後塗布量1g/m
2)をコーティングした後、100℃で乾燥した。さらにポリオレフィン系水性ディスパージョンのコーティング面上にシリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「TPR6722/CM670」、乾燥後塗布量0.5g/m
2)をコーティングした後、150℃で乾燥し、実施例1の包紙を作製した。
【0029】
実施例2
アイオノマー水性ディスパージョンを、アクリル変性アイオノマー水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールSA100」、乾燥後塗布量1g/m
2)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例2の包紙を作製した。
【0030】
実施例3
アイオノマー水性ディスパージョンを、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールV300」、乾燥後塗布量1g/m
2)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例3の包紙を作製した。
【0031】
実施例4
アイオノマー水性ディスパージョンを、低密度ポリエチレン水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールM200」(ポリエチレンの密度:0.92g/cm
3)、乾燥後塗布量1g/m
2)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例4の包紙を作製した。
【0032】
実施例5
アイオノマー水性ディスパージョンを、低分子量ポリエチレン水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールW300」、乾燥後塗布量1g/m
2)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例5の包紙を作製した。
【0033】
比較例1
厚み6.5μmのアルミニウム箔(1N30軟質箔)の一方面と紙(大王製紙株式会社製、商品名「バーガーラップ」、坪量21g/m
2)の一方面とを水ガラス(乾燥後塗布量3g/m
2)を用いてウエットラミネート法により貼り合わせ、比較例1の包紙を作製した。(コート剤なし)
【0034】
比較例2
ポリオレフィン系水性ディスパージョンに替えて、市販のPVA(ポリビニルアルコール)コート液(大成化薬株式会社製、商品名「マルタイトTX−320」、乾燥後塗布量1g/m
2)とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の包紙を作製した。
【0035】
比較例3
ポリオレフィン系水性ディスパージョンに替えて、市販のPVA(ポリビニルアルコール)コート液(大成化薬株式会社製、商品名「NL−05水溶液」、乾燥後塗布量1g/m
2)とした以外は、実施例1と同様にして比較例3の包紙を作製した。
【0036】
比較例4
厚み6.5μmのアルミニウム箔(1N30軟質箔)の一方面と紙(大王製紙株式会社製、商品名「バーガーラップ」、坪量21g/m
2)の一方面とを水ガラス(乾燥後塗布量3g/m
2)を用いてウエットラミネート法により貼り合わせた。紙の他方面にシリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「TPR6722/CM670」、乾燥後塗布量0.5g/m
2)をコーティングした後、150℃で乾燥し、比較例4の包紙を作製した。
【0037】
試験例1<剥離性試験>
実施例1〜5及び比較例1〜4で作製した包紙(縦50mm×横72mm)に、江崎グリコ株式会社製「ウォータリングキスミントガム(ライチ&レモン、マスカット&マスカット)」を、包紙のアルミニウム箔が外面側になるように直に包み、上方から1kPaの圧力をかけた状態で、温度40℃・湿度90%RHの雰囲気下で3日間保存した後、手指で包紙と当該ガムの離型性を調べた(n=3)。その結果を表1に示す。評価方法は、ガムが包紙に付着/粘着することなく、容易にガムを取り出せた場合は「○」とし、ガムが包紙に付着/粘着し、包紙の一部が破けた場合は「×」と評価した。
【0038】
試験例2<付着強度試験>
試験体Xの作製:A4判のアルミニウム製の平板の上に、A4判程度の普通紙を載せてセロハンテープで端部を固定し、長手方向の中央で半分にカットしたソフトキャンディ(森永製菓株式会社製「ハイチュウ(グレープ))」のカット面を上(天方向)にして普通紙の上に6列×8行(=48個)並べた。さらにソフトキャンディのカット面上列方向に実施例1〜5及び比較例1〜4で作製した包紙(幅25mm×長さ300mm)を、包紙のアルミニウム箔が上(天方向)になるように載せ、包紙がたるまないように端部をセロハンテープで固定した。ここまで準備した試験体をXとする。
【0039】
試験補助体Yの作製:別に用意したA4判のアルミニウム製の平板の上に、A4判程度のグラシンシリコン紙の剥離面を上(天方向)にして載せ、端部をセロハンテープで固定した。ここで準備した試験補助体をYとする。
【0040】
付着強度試験体Zの作製:前記で準備した試験体Xの上(アルミニウム箔の上)に、前記で準備した試験補助体Yの剥離面を下(地方向)になるよう試験補助体Yを天地逆さにして載せ、さらに上(天方向)から錘(500gの分銅×4個)をA4判アルミニウム板の四隅付近に載せた。
【0041】
この状態の付着強度試験体ZをA3版程度のポリエチレン製のチャック付き袋内に挿入した後、チャックを閉じて密閉した。この状態で温度40℃の恒温槽内で24時間保持した後、付着強度試験体Zを袋から取り出し、錘を取外した後、室温で5時間程度放置した。
【0042】
その後、試験補助体Yも取り外し、さらに試験体X中のソフトキャンディ1列分とその上の包紙のセットを1列毎に分離し、ソフトキャンディと包紙の付着強度について引張試験機を用いて90°剥離方向で測定した(引張速度100mm/分、N=3の平均値)。その結果を表1に示す。なお、付着強度は1.5N/25mm幅以下で問題のないレベルであり、「剥離不能」とは、ソフトキャンディ又は包紙が破壊ないし破断したため、測定できなかったことを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
試験例3<過マンガン酸カリウム消費量の測定>
過マンガン酸カリウム消費量の測定は、「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の第3のDの2合成樹脂製の器具又は容器包装(区分:使用温度100℃以下)」に準拠して、実施例1〜5及び比較例2〜4で作製した各包紙について次に示す試験方法により測定を行った。なお、比較例1は、溶出面が紙のため、この測定は実施していない。その結果を表2に示す。
【0045】
包紙の片面面積が50cm
2になるよう切り出し、アルミニウム箔面側を予め60℃に予熱しておいた金属製の治具に密着固定させ、続いて、予め60℃に予熱しておいた水100ml中に浸漬し、30分保持することにより、溶出を行い、各試験溶液を得る。
【0046】
三角フラスコに水100ml、濃硫酸1容量に対して2容量の水で希釈した硫酸水溶液5ml及び0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液5mlを入れ、5分間煮沸した後、液を捨て水で洗う。この三角フラスコに試験溶液100mlを採り、前記と同じ硫酸水溶液5mlを加え、更に0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液10mlを加え、加熱して5分間煮沸する。次いで、加熱を止め、直ちに0.005mol/lシュウ酸ナトリウム溶液10mlを加えて脱色した後、0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液で微紅色が消えずに残るまで滴定する。
【0047】
別に同様な方法で空実験を行い、次式により過マンガン酸カリウム消費量(Kと略称)を求める。
K(μg/ml)=((a−b)×0.316×f×1000)/100
a:本試験の0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液の滴定量(ml)
b:空試験の0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液の滴定量(ml)
f:0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液のファクター
【0048】
【表2】
【0049】
実施例1〜5及び比較例4は、昭和34年厚生省公示第370号の合成樹脂一般規格(10μg/ml以下)に適合していることがわかる。
【0050】
以上の結果から、本発明の実施例1〜5は、剥離性、付着強度、過マンガン酸カリウム消費量の全てが問題のない良好な結果を示し、包紙に適していることがわかる。これに対し、比較例1の包紙は、剥離性及び付着強度の点で問題があり、包紙に適していない。比較例2及び比較例3は、過マンガン酸カリウム消費量の点で問題があり、菓子等の食品の包紙には向いていない。比較例4の包紙は、初期の剥離性や過マンガン酸カリウム消費量の点では問題ないが、長期間保存後又は気温(温度)が高い環境下では剥離性が持続しないことを示しており、これもまた菓子類等の食品の包紙としては不向きである。
【0051】
このように、本発明の包紙は、初期の剥離性はもとより、長期間保管後あるいは気温(温度)が高い環境下であっても剥離性を維持し、併せて、過マンガン酸カリウム消費量が少なく人体に悪影響を及ぼす有機物の溶出が少ないという特長を有している。