(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図6は本実施形態に係る検眼装置の構成について説明する図である。
【0012】
<概要>
本発明の実施形態に係る検眼装置の概要について説明する。例えば、本実施形態に関わる視標呈示装置1は、ディスプレイ50、偏光光学部材55、制御手段(制御部)20、で構成される。ディスプレイ50は、検査視標を表示する。偏光光学部材55は、ディスプレイ50の前面に配置される。
【0013】
例えば、ディスプレイ50としては、カラーの液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、SEDディスプレイ等が挙げられる。
【0014】
例えば、偏光光学部材55は、ディスプレイ50が持つ画素に対応してライン状又は格子状に交互に配置された左眼用光学領域59と及び右眼用光学領域57を持つ。そして、左眼用光学領域59及び右眼用光学領域57がディスプレイ50からの光を透過させるときに、互いに直交する偏光軸の光に変換する。例えば、偏光光学部材55として、位相差機能を持つ1/2波長板で構成されているものが挙げられる。
【0015】
本発明は、視標呈示装置1に用いられる立体視機能検査用の検査視標に関する。例えば、本実施形態において、立体視機能検査用の検査視標は、画面上に形成された背景画像と、背景画像上に配置された左眼用視標65及び右眼用視標63とで構成される。
【0016】
例えば、左眼用視標65及び右眼用視標63は、被検者が両眼視したときに後述するディスプレイ50の画面50aに対して浮き上がり又は沈み込みを有する融像視標67として被検者に見えるように左右方向の間隔が設定されている。
【0017】
例えば、背景画像は、左眼用背景画像61Lと右眼用背景画像61Rで構成される。左眼用背景画像61L及び右眼用背景画像61Rは、被検者が両眼視したときに画面50aに対して所期する浮き上がり又は沈み込みを有する融像背景画像として被検者に見えるように左右方向の間隔が設定されている。
【0018】
例えば、背景画像61L,61R、左眼用視標65及び右眼用視標63は、ステレオグラム画像で構成されている。例えば、ステレオグラム画像としては、ランダムドットパターン、多数の絵柄(複数の絵)によって構成される並び絵パターン等が挙げられる。
【0019】
例えば、制御部20は、左眼用光学領域59に対応する画素領域に左眼用背景画像61L及び左眼用視標65を表示し、右眼用光学領域57に対応する画素領域に右眼用背景画像61R及び右眼用視標63を表示する。
【0020】
例えば、立体視機能検査は、被検者が偏光フィルタを通してディスプレイ50に表示された検査視標を見ることによって行う。例えば、偏光フィルタは、検査時に被検者の左右の眼前にそれぞれ配置され、偏光光学部材55からの互いに直交する偏光軸にそれぞれ一致した偏光軸を持つ。例えば、偏光フィルタを備えるものとしては、偏光フィルタが配置された偏光眼鏡30、左右の検査窓に偏光フィルタを備えた自覚式屈折力検眼装置(ホロプター)200等が挙げられる。
【0021】
被検者が偏光フィルタを通してディスプレイ50に表示された検査視標を見ることによって、左眼と右眼で異なる視標(右眼用視標63及び左眼用視標65)及び背景画像が呈示できるため、左右眼で視差が設定される。すなわち、被検者は左右の眼の視差によって、視標及び背景画像を立体視することが可能となる。
【0022】
このように、視標(右眼用視標63及び左眼用視標65)だけでなく背景画像も右眼用背景画像61Rと左眼用背景画像61Lとで構成し、被検者が両眼視したときに画面に対して所期する浮き上がり又は沈み込みの視差を有する融像背景画像として被検者に見えるように、右眼用背景画像61Rと左眼用背景画像61Lの左右方向の間隔を設定することによって、裸眼時に右眼用視標63及び左眼用視標65を視認しづらくすることができる。これによって、立体視検査を正確に行うことができる。
【0023】
<実施例>
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は視標呈示装置の外観略図である。
【0024】
視標呈示装置1の筐体2の正面(前面)には、視標を呈示するための視標呈示部(呈示部)3が配置されている(詳細は
図2にて後述する)。呈示部3は、5m等の遠方の検査距離に置かれた場合にも、所定サイズの視力検査視標、両眼視機能検査視標等の検査視標10を表示できる。さらに、筐体2は壁掛けで使用できる薄型とされている。
【0025】
筐体2の正面の下方には、リモコン4からの赤外光の通信信号を受信する受信部5が配置されている。呈示部3に表示される視標10は、リモコン4の操作によって切り換えられる。また、1つ文字の視力検査視標を呈示する場合、呈示部3のほぼ中央に視標10が表示される。両眼視機能検査には、それぞれ直交する偏光軸を持つ偏光フィルタ30L及び偏光フィルタ30Rが配置された偏光眼鏡30が使用される。左眼用の偏光フィルタ30Lは135度方向に偏光軸を持ち、右眼用の偏光フィルタ30Rは45度方向に偏光軸を持つ。また、屈折矯正検査のために、左右の検査窓に球面レンズ等の矯正レンズが切り換え配置される自覚式屈折力検眼装置(ホロプター)200が使用される場合において、両眼視機能検査時には、左右の検査窓には偏光眼鏡30と同じく直交する偏光軸を持つ偏光フィルタがそれぞれ切り換え配置される。
【0026】
図2は、視標呈示装置1の制御ブロック図である。制御部20には、呈示部3を構成する液晶ディスプレイ50、受信部5が接続されている。また、制御部20は、様々な視標パターンを記憶するメモリ21、リモコン4からの指令信号を解読するデコーダ回路等が接続されている。制御部20は、リモコン4からの視標切り換え信号等の入力により、ディスプレイ50の表示を制御する。
【0027】
リモコン4には、ディスプレイ50に表示される視標を切り換えるための複数のスイッチと、それらスイッチによる操作の状況を表示する液晶ディスプレイ41が配置されている。また、リモコン4は、視力検査視標の切換スイッチ群42、視力検査視標以外の検査視標の切換スイッチ群43、方向切換ボタン44、視力値増減ボタン45、送信部49、を備える。切換スイッチ群42の視力値に対応するボタンを押すと、ディスプレイ50にその視力値の視標が表示される。このとき、ディスプレイ41にも同じ視標が表示されると共に、その視力値も表示される。スイッチ群43では、ランダムドットステレオグラム視標(RDS視標)を含む両眼視機能検査の様々な視機能を検査するための視標を表示させるスイッチが用意されている。なお、RDS視標は、画像がランダムドットパターンによって構成される立体検査視標を示している。方向切換ボタン44は、視力検査視標であるランドルト環視標の切れ目方向を切換えることができる。視力値増減ボタン45は、呈示部3に表示される視力検査視標の視力値を上下させることができる。送信部49は、リモコン4の指令信号を赤外光にて送信する。
【0028】
次に、呈示部3の構成について説明する。呈示部3は、カラーの液晶ディスプレイ(LCD)50と、ディスプレイ50の少なくとも視標呈示領域に配置されたシート状の偏光光学部材55により構成される。液晶ディスプレイ50は偏光板を備え、液晶ディスプレイ50からは所定の方向(垂直方向、水平方向又は斜め45度方向等)に偏光軸を持つ直線偏光が出射される。本実施形態では、矢印50Yで示される垂直方向の偏光軸(偏光面)を持つ光が出射される。偏光光学部材55は、ディスプレイ50が持つ画素の大きさに対応してライン状又は格子状に交互に配置された2種類の光学領域57,59を持ち、ディスプレイ50からの光を通過させるときに互いに直交する偏光軸を持つ直線偏光に変換する。本実施例では偏光光学部材55として、位相差機能を持つ1/2波長板で構成されている。
【0029】
ここで、1/2波長板は、周知のように入射光の偏光面が1/2波長板の高速軸(或いは低速軸)に対して角度θで入射したときに、その振動方向を2×θ回転させる。すなわち、1/2波長板は、入射光の偏光方向に対して高速軸(或いは低速軸)である光学的主軸方向を傾斜させることにより、入射光の偏光軸方向(振動方向)を回転させる機能を持つものであり、入射光の光量をそのまま維持できる特性を持つ。
【0030】
図2において、ライン状の光学領域57の1/2波長板は右眼用光学領域であり、その光学的主軸方向は、偏光眼鏡30が持つ右眼用の偏光フィルタ30Rの偏光方向45度と一致した偏光方向(矢印57Y)の光に変換するように配置されている。また、ライン状の光学領域59の1/2波長板は左眼用光学領域であり、その光学的主軸方向は、偏光眼鏡30が持つ左眼用の偏光フィルタ30Lの偏光方向135度と一致した偏光方向(矢印59Y)の光に変換するように配置されている。なお、左右眼における偏光方向の構成は逆であっても良く、本実施形態に限定されるものではない。被検者が左右の眼前にそれぞれ配置された偏光フィルタ30L及び30Rを通して呈示部3の表示を見ると、左眼には偏光フィルタ30Lを通過可能な光学領域59からの出射光のみが視認され、光学領域57からの出射光は偏光フィルタ30Lによりカットされ、視認されない。逆に、右眼には偏光フィルタ30Rを通過可能な光学領域57からの出射光のみが視認され、光学領域59からの出射光は偏光フィルタ30Rによりカットされ、視認されない。これにより、被検者の左右でそれぞれ異なる視標を呈示できる。
【0031】
なお、ディスプレイ50から45度方向の偏光軸を持つ光が出射されるときは、光学領域57については、位相差機能(1/2波長板)を持たずに、45度の偏光軸方向を維持したまま通過させる光学部材55として構成すればよい。
【0032】
また、
図2において、光学領域57に対応されるディスプレイ50の領域を表示領域557とし、光学領域59に対応されるディスプレイ50の領域を表示領域559とする。領域557及び559は、それぞれディスプレイ50が持つ1画素の横ラインに一致したものであるが、検査距離だけ離れた被検者眼に光学領域57及び59が区別されないほど微細であれば、ディスプレイ50が持つ1画素の整数倍の領域をカバーするように構成しても良い。ディスプレイ50の1画素の縦方向の長さh50は、例えば、約0.26mmである。光学領域57及び59の縦方向の長さh55も長さh50に略一致している。光学領域57及び59とこれに対応するディスプレイ50の領域557及び559は、横方向ラインとしたが、縦方向ラインであっても良い。さらに、2種類の領域57、59が格子状に配置される構成としても良い。
【0033】
また、ディスプレイ50として液晶ディスプレイを使用したが、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、SEDディスプレイ等も使用可能である。液晶ディスプレイ以外のディスプレイから出射される光が直線偏光の特性を持たない場合、ディスプレイ50と偏光光学部材55との間に偏光板を配置することにより、偏光光学部材55として位相差機能を持つ1/2波長板が使用できる。
【0034】
なお、偏光光学部材55として、特開平7−322304号公報と同じく、光学領域57に45度方向の偏光軸を持つ偏光板を配置し、光学領域59に135度方向の偏光軸を持つ偏光板を配置して構成することもできる。液晶ディスプレイ以外のディスプレイを使用する場合は、特開平7−322304号公報と同じく、偏光光学部材55として偏光板を使用しても良い。
【0035】
<ランダムドットパターン視標>
次に、呈示部3(ディスプレイ50)に表示される立体視検査に用いる検査視標について説明する。立体視検査に用いる検査視標として、所定の画像から成る背景画像上に、背景画像と略同一の画像で構成され、左眼と右眼で異なる視標が配置されるものがある。本実施例において、立体視検査に用いる検査視標のステレオグラム画像として、RDS視標を例に挙げて説明をする。
【0036】
図3は、呈示部3の画面50aに呈示されるRDS視標の構成について説明する模式図である。RDS視標60は、被検者の右眼に呈示される画像(以下、右眼用画像)60Rと、被検者の左眼に呈示される画像(以下、左眼用画像)60Lで構成される。右眼用画像60Rは、右眼のみに視認されるランダムドットパターンから成る背景画像61Rと、右眼のみに視認されるランダムドットパターンで構成された右眼用視標63とにより構成される。左眼用画像60Lは、左眼のみに視認されるランダムドットパターンから成る背景画像61Lと、左眼のみに視認されるランダムドットパターンで構成された左眼用視標65と、により構成される。すなわち、背景画像61R上に右眼用視標63が配置され、背景画像61L上に左眼用視標65が配置されている。制御部20はディスプレイ50を制御し、光学領域59に対応した画素領域に左眼用画像60Lを表示し、光学領域57に対応した画素領域に右眼用画像60Rを表示する。
【0037】
なお、本実施例においては、右眼用視標63と左眼用視標65として、円形状の視標が用いられる場合を例に挙げて説明する。もちろん、視標の形状は、その他の形状のものを用いる構成としてもよい。例えば、四角形状や三角形状の視標を用いてもよい。この場合、例えば、立体検査では、
図6のように、被検者が両眼視したときに画面に対して浮き上がる(又は沈み込み)を有する融像視標67の形状を視認できるか否かによって、検査を行う。また、方向性を持つ視標(例えば、ランドルド環の視標)を用いる構成としてもよい。この場合、例えば、立体検査では、被検者がランドルド環の切り目が、どの方向にあるかを視認できるか否かによって、検査を行う。
【0038】
右眼用画像60Rは、背景画像61R上に右眼用視標63が合成されて配置された画像である。また、左眼用画像60Lは、背景画像61L上に左眼用視標65が合成されて配置された画像である。右眼用視標63及び左眼用視標65は、ほぼ同一の形状、色、サイズの大きさを持つものであり、被検者が両眼視したときに画面50aに対して所期する浮き上がり(又は沈み込み)を有する融像視標67として被検者に見えるように左右方向の間隔W1が設定されている。この例では、融像視標67が画面50aに対して浮き上がって見えるように、右眼用視標63は画面50aの左右中心の基準位置Cに対して左方向にずれて配置され、左眼用視標65は基準位置Cに対して右方向にずれて配置されている。右眼用視標63及び左眼用視標65の間隔W1は、画面50aに対して被検者が離れて位置する検査距離に応じて、融像視標67が所期する浮き上がり量(例えば、3分)となるように、設定されている。
【0039】
このように、左眼と右眼で異なる右眼用視標63及び左眼用視標65を生成することによって、左右眼で視差が設定される。すなわち、被検者は左右の眼の視差によって、視標を立体視することが可能となる。
【0040】
以下、視差について説明する。
図4は、視差の概念について説明する図である。
図4(a)は、ディスプレイ50の画面50aに表示された右眼用視標及び左眼用視標を両眼視したときに、融像視標が沈みこみように視認される場合の構成を示している。
図4(b)は、融像視標が浮きあがるように視認される場合の構成を示している。画面50aには、右眼用視標GRと左側用視標GLが配置される。これらは、基準位置Cに対して左右方向にずれて所定の視差が設定されるように、配置されている。
【0041】
例えば、
図4(a)に示されるように、右眼用視標GRが基準位置Cより右側に配置され、左側用視標GLが基準位置Cより左側に配置されると、融像位置A1にて融像視標が視認できるようになる。すなわち、被検者は、画面50aに対して、融像位置A1が奥側となるため、視標が沈みこんだように視認できる。このとき、視差(視差量)は、融像視標を両眼で観察した際の成す角α1と画面50aの略中心(基準位置)Cを両眼で観察した際の成す角βとの差分で表わされる。すなわち、視差は、α1―βで表わされる。また、
図4(b)に示されるように、右眼用視標GRが基準位置Cより左側に配置され、左側用視標GLが基準位置Cより右側に配置されると、融像位置A2にて融像視標が視認できるようになる。すなわち、被検者は、画面50aに対して、融像位置A2が手前側となるため、視標が浮かびあがったように視認できる。このとき、視差は、視標を両眼で観察した際の成す角α2と画面50aの略中心Cを両眼で観察した際の成す角βとの差分で表わされる。すなわち、視差は、α2―βで表わされる。なお、視差が大きいほど、画面50aに対する融像視標の浮き上がり(浮き上がり量)や沈み込み(沈み込み量)が大きく視認できるようになる。
【0042】
ここで、RDS視標60の背景画像61R及び61Lが左右方向にずれておらず、共に両眼で視認される同一の背景画像である、次のような問題がある。すなわち、右眼用視標63及び左眼用視標65は、背景画像61R、61Lに対して、左右方向にずれて形成されているため、偏光眼鏡30を用いることなく裸眼の状態で、被検者がRDS視標60を観察した場合に、視標(右眼用視標63及び左眼用視標65)と背景画像との境界が認識でき、立体検査を行う以前に、立体視したときの融像視標の形状や方向が視認されやすくなる。また、浮上量や沈入量を区別しやすくなる。
【0043】
図5は、ディスプレイ50に表示されるRDS視標を示す図である。
図5(a)は、背景画像に視差を設定していない場合のRDS視標60を示している。
図5(b)は、背景画像に視差を設定した場合のRDS視標60を示している。
【0044】
例えば、
図5(a)において、背景画像に視差が設定されていないのに対して、視標(右眼用視標及び左眼用視標)に視差が設定されているため、視標部分が左右方向にずれて表示されている。このため、裸眼であっても、視標の形状(円形状)が視認できる。
図5(b)においては、背景画像に視差が設定されているとともに、視標にも視差が設定されているため、背景画像及び視標ともに左右方向にずれて表示されている。
【0045】
以下、背景画像における視差の設定について説明する。背景画像の視差の設定は、視標時と同様にして生成される。
図3Bにおいて、例えば、背景画像61Rの左右方向位置が背景画像60Lの左右方向位置に対して右側にずれるように、背景画像61Rと背景画像60Lが生成される。すなわち、右眼用画像60Rは、背景画像61Rが基準位置Cより右側にずれた画像となる。このとき、例えば、基準位置Cは、右眼用画像60Rの背景画像60Rと左眼用画像60Lの背景画像61Lが同一の画像(背景画像)61である場合の水平方向における中心位置を示している。すなわち、背景画像に視差を設定しない場合の背景画像の水平方向における中心位置を示している。
【0046】
また、左眼用画像60Lは、背景画像61Lが基準位置Cより左側にずれた画像となる。これによって、右眼と左眼で視差の設定された背景画像で構成されるRDS画像60が生成されている。
図3に示すようなRDS視標の場合、
図6のように、被検者が背景画像61R及び背景画像61Lを両眼視したときに見える融像背景画像62は、画面50aに対して沈み込んで見える。すなわち、背景画像61R及び背景画像61Lは、被検者が両眼視したときに画面50aに対して所期する浮き上がり又は沈み込みを有する融像背景画像として被検者に見えるように左右方向の間隔W2が設定されている。このように、左眼と右眼で異なる背景画像を生成することによって、左右眼で視差が設定される。
【0047】
図3のRDS視標60を立体視検査で用いた場合、融像背景画像62がディスプレイ50の画面50aに対して沈み込むように視認され、融像視標67が画面50aに対して浮かびあがるように視認される。このため、被検者がRDS視標60を確認した際に、融像背景画像62に対して融像視標67が大きく浮かびあがるため、融像視標67がディスプレイ50の画面に対して浮かびあがるよりも、融像視標67がより浮きあがって視認される。
【0048】
上記のように、RDS視標60において、背景画像と視標にそれぞれ視差を設定した場合、被検者がRDS視標60を確認した際の視差は、背景画像62の視差と融像視標67の視差に基づいて設定されることになる。以下の説明においては、便宜上、ディスプレイ50の画面に対して、融像背景画像62又は融像視標67が浮き上がる方向の視差をプラス(+)で表わし、ディスプレイ50の画面に対して、背景画像又は融像視標67が沈み込む方向の視差をマイナス(−)で表わす。
【0049】
例えば、融像背景画像62の視差を−4分として設定し、融像背景画像62がディスプレイ50の画面位置に対して、4分沈み込んだように視認できるようにする。また、融像視標67の視差を+4分として設定し、融像視標67がディスプレイ50の画面位置に対して、4分浮きあがったように視認できるようにする。この場合、融像視標67は、融像背景画像62に対して、8分浮き上がったように視認できる。
【0050】
また、融像背景画像62の視差を+4分として設定し、融像背景画像62がディスプレイ50の画面位置に対して、4分浮きあがったように視認できるようにする。また、融像視標67の視差を−4分として設定し、融像視標67がディスプレイ50の画面位置に対して、4分沈み込んだように視認できるようにする。この場合、融像視標67は、融像背景画像62に対して、8分沈んだように視認できる。
【0051】
また、融像背景画像62の視差を+2分として設定し、融像背景画像62がディスプレイ50の画面位置に対して、2分浮きあがったように視認できるようにする。また、融像視標67の視差を+4分として設定し、融像視標67がディスプレイ50の画面位置に対して、4分浮きあがったように視認できるようにする。この場合、融像視標67は、融像背景画像62に対して、2分浮き上がったように視認できる。
【0052】
以上のように、視標(右眼用視標63及び左眼用視標65)だけでなく背景画像も右眼用背景画像61Rと左眼用背景画像61Lとで構成し、被検者が両眼視したときに画面に対して所期する所期する浮き上がり又は沈み込みの視差を有する融像背景画像として被検者に見えるように、右眼用背景画像61Rと左眼用背景画像61Lの左右方向の間隔を設定することによって、裸眼時に右眼用視標63及び左眼用視標65を視認しづらくすることができる。これによって、立体視検査を正確に行うことができる。また、背景画像の視差と視標の視差に基づいて、被検者がRDS視標60を確認した際の視差が設定されるため、右眼用視標及び左眼用視標だけでは設定が困難である、より大きな視差での立体視検査を行うことができる。
【0053】
なお、本実施例において、背景画像のランダムドットパターンと右眼用視標63及び左眼用視標65のランダムドットパターンは、背景画像と視標が裸眼で識別できないものであればよい。例えば、同一のドットパターンを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。
【0054】
なお、本実施例においては、背景画像上に1つの融像視標が立体視可能な検査視標を例に挙げたがこれに限定されない。検査視標は、複数の融像視標が見えるように右眼用視標及び左眼用視標を配置する構成であってもよい。例えば、背景画像に円形状の融像視標と三角形状の融像視標が見えるようにしてもよい。この場合例えば、丸形状の融像視標は、浮かびあがるように視認されるように視差を設定し、三角形状の融像視標は沈み込むように視認されるように視差を設定してもよい。
【0055】
なお、本実施例においては、本発明を適用した立体検査用の検査視標として、RDS視標のステレオグラム画像を挙げたがこれに限定されない。本発明は、背景画像に対して視差を設定した視標で構成される視標に対して適用可能である。例えば、多数の絵柄(複数の絵)によって、構成される並び絵パターンのステレオグラム画像の背景画像及び視標が挙げられる。例えば、絵柄としては、円形、三角形、木、動物等が挙げられる。
【0056】
なお、本実施例においては、本発明が偏光光学部材55をディスプレイ50の前面に配置するようなパッシブ方式の装置を例に挙げたがこれに限定されない。その他の構成による立体視検査にも適用可能である。例えば、アクティブシャッター方式等の装置にも適用可能である。また、偏光方式に変えて赤フィルタ及び緑フィルタを使う方式にも適用できる。赤及び緑フィルタを使う方式では、偏光光学部材55は不要となり、ディスプレイ50に画面に赤フィルタ及び緑フィルタに対応する赤色、緑色及び黒色の視標と背景画像を形成することで立体検査視標が形成される。
【0057】
なお、本実施例においては、ディスプレイ式の視標呈示装置を例として説明したが、ディスクに描かれ検査視標を投影するタイプの視標呈示装置であっても良い。