(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イベント位置推定手段は、所定時間間隔でイベント位置の推定を繰り返し、粒子フィルタを通してイベント位置を推定することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
通信事業者は、携帯電話網に代表される無線通信サービスを提供するために、通信需要に基づいてサービスエリアを設計する。この設計は、日常における需要に対して、十分な通信リソースを供給できるようになされるものである。そのために、非日常の需要に対して、トラヒック需要の集中によっては十分な通信リソースを供給できない場合も生じる。
【0003】
従来、臨時の通信回線増設対策として、車載型基地局を用いた技術がある(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、通信事業者は、例えばお祭りやコンサートのような非日常のイベントに対して、臨時に通信リソースを増強することができる。
【0004】
また、そのようなイベントに、どの程度の規模のユーザ数が集まるかを推定する技術もある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、来場日が限定されていないチケットを販売した後、その日に来場するユーザ数を予測することができる。具体的には、過去の同様のイベントにおけるユーザの来場実績から、販売地域別、販売時期別、年令区分別などに分類した来場パターンを生成している。この過去の来場パターンを用いて、現時点におけるユーザの来場数を推定している。
【0005】
更に、携帯電話機に代表される移動端末が、無線区間の輻輳を監視し、検知した輻輳情報を基地局へ通知する技術がある(例えば特許文献2参照)。また、基地局が、受信帯域使用率を監視し、その輻輳情報を検出する技術もある(例えば特許文献3参照)。このような技術によれば、通信リソースの観点から、突発的なイベントの発生を確認することができる。
【0006】
更に、突発的なイベントを検出するために、サーバが、移動端末の位置情報及び速度情報を収集する技術もある(例えば特許文献4参照)。この技術によれば、所定速度以上で移動する移動端末が集中するエリア内を検出し、そのエリアで何らかのイベントが発生したと推定することができる。
【0007】
更に、所定エリアにおける通常の推定人口を考慮して、その推定人口が増えた際に、イベントが発生したと推定する技術もある(例えば特許文献5参照)。ここで、推定人口は、当該エリアについて、所定時間内に移動端末から要求された位置登録の処理件数から推定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献1に記載の技術によれば、過去の同様のイベントから生成した来場パターンを用いるために、突発的に発生したイベントや、過去に類似のイベントが少ない場合、来場者数の推定が難しくなる。過去に類似のイベント(例えば毎年開催されるイベント)があっても、来場者数は、種々の外因(例えば気候・天候や流行等)に大きく左右され、例年に比して大幅増/減になり得る。
推定来場者数に比して実際の来場者数が多い場合、臨時に通信回線を増設したとしても需要を満たすことが難しく、ユーザに十分な通信リソースを提供することができない。
一方で、推定値に比して実際の来場者数が少ない場合、臨時に通信回線を増設したことが逆に無駄になる。
【0011】
前述した特許文献2〜5に記載の技術によれば、実際に多数のユーザがそのイベント場所へ集まった後にしか検知することができない。そのために、トラヒック集中後に、車載型基地局などを当該会場へ派遣することになり、臨時の通信回線の増設が大幅に遅れる可能性がある。通信事業者としては、実際にユーザがイベント場所へ集まる以前に、その位置を推定し、その位置の通信リソースを予め増強したいと考える。
【0012】
そこで、本発明によれば、多数のユーザの通信履歴から将来的なイベントの発生位置を推定する装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、携帯端末を所持した多数のユーザの通信履歴を用いて、イベント位置を推定する装置であって、
携帯端末の1通信毎に、通信局を記録したログを保存する接続履歴保存手段と、
各所定時間に、通信局の出現頻度を算出する通信局集計手段と、
時間経過に応じて、出現頻度を記録する出現頻度記録手段と、
現時間の出現頻度と、出現頻度記録手段に記録された過去時間の出現頻度とを比較し、その差分に応じて「通常」/「非常」を判定する非常判定手段と、
非常と判定された際に、過去時間の出現頻度に対する現時間の出現頻度の差を用いて、イベント位置を推定するイベント位置推定手段と
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
非常判定手段は、現時間の出現頻度と過去時間の出現頻度とを、同一の時間帯、曜日、平日/休日、月、及び/又は、季節区分で比較することも好ましい。
【0015】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
非常判定手段は、
過去時間の出現頻度に基づいて現時間における移動平均値を予測出現頻度として算出し、
予測出現頻度に対する現時間の出現頻度の乖離数(差分数)sが、所定数以上となる場合に、「非常」と判定することも好ましい。
【0016】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
接続履歴保存手段について、
通信局は、1通信の中で接続した基地局であり、通信開始局及び/又は通信終了局であって、
「通信開始局」は、通信を開始した際に接続した局又はハンドオーバ元局であり、
「通信終了局」は、通信を終了した際に接続していた局又はハンドオーバ先局であることも好ましい。
【0017】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
非常判定手段について、予測出現頻度を移動標準偏差σとして、現時間の出現頻度がσを用いた所定値以上となる場合に、「非常」と判定することも好ましい。
【0018】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
「非常」と判定された全ての出現頻度に係る乖離数sの合計値を、イベント規模数Sとして算出するイベント規模算出手段を更に有することも好ましい。
【0019】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
イベント位置推定手段は、
イベント位置(x,y)を未知として、「非常」と判定された全ての通信局iに対して、ポテンシャル関数を用いて、イベント規模数Sに基づくポテンシャル値Ueiを算出し、
イベント規模数Sと、通信局i毎における乖離数siの関数f(si)との差分である(S−f(si))とポテンシャル値Ueiとの差分の合計値が最も小さくなる、ポテンシャル場としてのイベント位置(x,y)を算出することも好ましい。
【0020】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
通信局集計手段は、通信開始局毎の通信終了局の出現頻度を算出し、
非常判定手段によって非常と判定された際に、イベント位置推定手段は、現時間の出現頻度に係る通信開始局から通信終了局への複数の有向線分が集約されるイベント位置を推定することも好ましい。
【0021】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
「非常」と判定された出現頻度に係る通信開始局の位置を始点とし、その通信終了局の位置を終点とする有向線分を生成する有向線分生成手段を更に有し、
イベント位置推定手段は、
2つ以上の有向線分の終点方向への延長線を含む線分の交点、又は、2つ以上の有向線分の終点方向への延長線を含む線分までの距離の二乗の総和が最小となる点を中心をイベント位置とすることも好ましい。
【0022】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
イベント位置推定手段は、所定時間間隔でイベント位置の推定を繰り返し、粒子フィルタを通してイベント位置を推定することも好ましい。
【0023】
本発明によれば、装置に搭載されたコンピュータを、携帯端末を所持した多数のユーザの通信履歴を用いてイベント位置を推定するように機能させるプログラムであって、
携帯端末の1通信毎に、通信局を記録したログを保存する接続履歴保存手段と、
各所定時間に、通信局毎の出現頻度を算出する通信局集計手段と、
時間経過に応じて、出現頻度を記録する出現頻度記録手段と、
現時間の出現頻度と、出現頻度記録手段に記録された過去時間の出現頻度とを比較し、その差分に応じて「通常」/「非常」を判定する非常判定手段と、
非常と判定された際に、過去時間の出現頻度に対する現時間の出現頻度の差を用いてイベント位置を推定するイベント位置推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば
、携帯端末を所持した多数のユーザの通信履歴を用いてイベント位置を推定する
装置のイベント位置推定方法であって、
装置は、
携帯端末の1通信毎に、通信局を記録したログを保存する第1のステップと、
各所定時間に、通信局の出現頻度を算出する第2のステップと、
時間経過に応じて、出現頻度を記録する第3のステップと、
現時間の出現頻度と、
第3のステップで記録された過去時間の出現頻度とを比較し、その差分に応じて「通常」/「非常」を判定する第4のステップと、
非常と判定された際に、過去時間の出現頻度に対する現時間の出現頻度の差を用いてイベント位置を推定する第5のステップと
を
実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の装置、プログラム及び方法によれば、多数のユーザの通信履歴から将来的なイベントの発生位置を推定することができる。即ち、実際にユーザがイベント場所へ集まる以前に、その位置を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明におけるイベント位置推定装置の機能構成図である。
【0029】
図1によれば、イベント位置推定装置(サーバ)1が、通信事業者の移動通信網に、通信事業設備の1つとして接続されている。移動通信網は、例えば広域をカバーする携帯電話網であって、複数の基地局3a〜3cが接続されている。各基地局3a〜3cは、そのサービスエリア内に位置する携帯端末2a及び2bと通信する。携帯端末2は、例えば携帯電話機やスマートフォンである。本発明におけるイベント位置推定装置1は、携帯端末2を所持した多数のユーザの通信履歴から、地図上におけるユーザの動線の変化をとらえ、その変化情報から近い将来発生するであろうイベント位置を推定する。
【0030】
図1によれば、イベント位置推定装置1は、接続履歴保存部10と、通信局集計部11と、出現頻度記録部12と、非常判定部13と、イベント規模推定部14と、有向線分生成部15と、イベント位置推定部16とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、イベント位置推定装置1は、所定のアプリケーションで、その推定したイベント位置を利用して実行することができる。尚、イベント位置推定装置1は、推定されたイベント位置及びユーザ群の動線の変化を表した地図をオペレータに明示するべく、ディスプレイを備えてもよい。勿論、推定されたイベント位置の情報は、オペレータによって操作される端末2へ、ネットワークを介して転送されるものであってもよい。
【0031】
[接続履歴保存部10]
接続履歴保存部10は、携帯端末の1通信毎に、接続開始時刻と、通信局とを記録したログ(通信履歴)を保存する。通信局は、1通信の中で接続した基地局であり、本実施例では、通信開始局及び/又は通信終了局を指す。
「通信開始局」は、通信を開始した際に接続した局又はハンドオーバ元局である。
「通信終了局」は、通信を終了した際に接続していた局又はハンドオーバ先局である。
通信終了局が、ハンドオーバ先局である場合、携帯端末がハンドオーバする毎に、1通信としてログが保存される。
【0032】
ログは、以下の情報を含む。
(1)携帯端末におけるその1通信の通信開始時刻
(2)通信開始時に接続した基地局識別子(通信開始局の基地局ID)
(3)通信終了時に接続していた基地局識別子(通信終了局の基地局ID)
【0033】
本発明によれば、各ユーザの移動経路を追跡・抽出する必要がないために、当該ログにも、ユーザを識別する情報を含む必要がない。
また、このログは、各基地局3によって取得されるものでもよく、この場合、携帯端末2から制御パケットを受信して保存するようなものではない。即ち、通信事業者設備の中で逐次記録されていくものである。勿論、携帯端末2で取得したログをサーバにて収集したものでもよい。
【0034】
尚、ここでは、接続履歴保存部10は、1通信のログ毎に、接続開始時刻を記録しているが、それに代えて接続終了時刻を保持してもよいし、接続開始時刻及び接続終了時刻の両方を保持してもよい。
【0035】
図1の接続履歴保存部10には、簡単に2つのログが記録されている。
(1)例えば携帯端末2aにおける1通信のログからは、13:40に、基地局3aに接続して通信を開始し(通信開始局=基地局3a)、接続先基地局を変更せずに、基地局3aに接続したまま通信を終了している(通信終了局=基地局3a)。
(2)例えば携帯端末2bにおける1通信のログからは、13:42に、基地局3aに接続して通信を開始し(通信開始局=基地局3a)、移動して、基地局3bへ接続している時に通信を終了している(通信終了局=基地局3b)。
【0036】
[通信局集計部11]
通信局集計部11は、接続履歴保存部10を用いて、各所定時間に、通信局の出現頻度や、通信開始局毎の通信終了局の出現頻度を算出する。「出現頻度」とは、単に「出現回数」であってもよいし、「全通信終了数に対する当該通信終了局の出現割合」であってもよい。また、所定時間とは、例えば1時間単位、3時間単位、1日単位であってもよい。
【0037】
図2は、通信局集計部によって集計された出現頻度を表すテーブルである。
【0038】
図2によれば、各所定時間(例えば1時間毎、13:00〜13:59)について、通信開始局毎の通信終了局の出現回数が表されている。
通信開始局3a->通信終了局3aの出現回数:250回
通信開始局3a->通信終了局3bの出現回数:89回
通信開始局3c->通信終了局3aの出現回数:68回
通信開始局3a->通信終了局3cの出現回数:12回
これら集計されたテーブルは、過去時間の記録として出現頻度記録部12と出力されると共に、現時間の情報として非常判定部13へ出力される。
【0039】
図3は、通信開始局と通信終了局が異なる出現回数情報のみを用いて、ユーザの動線を表す有向線分を地図に重畳した説明図である。
【0040】
図3によれば、出現回数が10回以上となる有向線分(ユーザの動線)のみが表されている。ここでは、通信開始局3a->通信終了局3bのように、通信開始局と通信終了局が異なるもののみが表されている。通信開始局の位置を始点とし、通信終了局の位置を終点とする有向線分は、出現回数に応じた太さで生成する。有向線分の数字は、出現回数を表す。
図3によれば、通信開始局3a->通信終了局3bの有向線分が、最も太く表示されている。
【0041】
[出現頻度記録部12]
出現頻度記録部12は、時間経過に応じて(時系列データとして)、「通信局」毎の出現頻度か、「通信開始局及び通信終了局の組」毎の出現頻度を記録する。「通信局」毎の出現頻度を用いるか、「通信開始局及び通信終了局の組」毎の出現頻度を用いるかは、後述の実施形態に依存し、第1の実施形態はどちらかを選択可能であるが、第2の実施形態では、「通信開始局及び通信終了局の組」毎の出現頻度のみ選択可能となる。ここで、出現頻度記録部12は、時間帯、曜日、平日/休日、月、及び/又は、季節区分の所定区分で記録することも好ましい。これによって、後述する非常判定部13は、この所定区分に応じて「非常」を判定することができる。
【0042】
[非常判定部13]
非常判定部13は、「現時間の出現頻度」と、出現頻度記録部12に記録された「過去時間の出現頻度」とを比較し、その差分に応じて「通常」/「非常」を判定する。その差分が大きいほど、「非常」と判定される。ここで、非常判定部13は、現時間の出現頻度と過去時間の出現頻度とを、同一の時間帯、曜日、平日/休日、月、及び/又は、季節区分で比較することが好ましい。この所定区分は、出現頻度記録部12と共通し、この所定区分に応じて「非常」を判定することができる。
【0043】
図4は、非常判定部における予測出現頻度と乖離数とを表すグラフである。
【0044】
非常判定部13は、大きく以下の2つのステップによって判定する。
(S1)過去時間の出現頻度に基づいて、現時間における移動平均値を「予測出現頻度」として算出する。予測出現頻度は、例えばARIMA(Autoregressive moving average model)(自己回帰和分移動平均)や、カルマンフィルタを用いて算出することも好ましい。
図4によれば、通信局、又は、通信開始局及び通信終了局の1つの組における、経過時間に応じた出現頻度が表されている。ここで、移動平均値としての予測出現頻度が算出されている。
【0045】
(S2)予測出現頻度に対する現時間の出現頻度の乖離数(差分数)sが、所定数以上となる場合に、「非常」と判定する。ここで、予測出現頻度を移動標準偏差σとして、現時間の出現頻度が例えば+1.5σ以上となる場合に、「非常」と判定する。
図4によれば、予測出現頻度に対する乖離数+1.5σが、破線で表されている。
ここで、乖離数+1.5σ以上となる予測出現頻度Aは、「非常」と判定される。
一方で、乖離数+1.5σよりも低い予測出現頻度Bは、「通常」と判定される。
【0046】
例えば通信局3a、又は、通信開始局3a->通信終了局3bの平日13:00〜13:59の予測出現頻度+1.5σが「61回」で、現時間の出現頻度が「89回」である場合、「非常」と判定される。
【0047】
図5は、非常と判定された通信開始局から通信終了局への有向線分の組を表す地図である。非常と判定された通信開始局から通信終了局への有向線分の組の情報は、イベント規模推定部14、有向線分生成部15及びイベント位置推定部16へ出力される。尚、通信局の出現頻度のみを用いて非常と判定された場合、有向線分は表示されず、基地局の位置やセクタの代表点(セクタセンタ等)に点が表示されることとなる。
【0048】
[イベント位置推定部16]
イベント位置推定部16は、非常と判定された際に、過去時間の出現頻度に対する現時間の出現頻度の差からイベント位置を推定する。ここで、イベント位置を推定するために、以下の2つの実施形態がある。
<第1の実施形態:ポテンシャル場をイベント位置とした推定>
イベント規模推定部14から出力されるイベント規模数Sを用いる。
<第2の実施形態:有向線分の延長線の交点を用いたイベント位置の推定>
有向線分生成部15から出力される有向線分を用いる。
【0049】
<第1の実施形態:ポテンシャル場をイベント位置とした推定>
最初に、イベント規模推定部14は、「非常」と判定された全ての出現頻度に係る乖離数sの合計値を、イベント規模数S(=Σs
i)として算出する。出現頻度の算出について、「通信局」毎の出現頻度か又は「通信開始局及び通信終了局の組」毎の出現頻度のいずれも利用可能である。以下では「通信開始局及び通信終了局の組」毎の出現頻度を用いて説明するが、勿論、「通信局」毎の出現頻度を用いる場合も、全く同様の処理によってイベント位置を推定することができる。
例えば、平日13:00〜13:59における通信開始局3a->通信終了局3bの組iについて、例えば以下のようになっているとする。
過去時間に基づく予測出現頻度(+1.5σ)=61回
現時間に基づく出現頻度=89回
乖離数s
i=28回
非常と判定されたi個の差分の合計値Σs
iを、イベント規模数Sとする。
S=Σs
i
【0050】
図6は、ポテンシャル場を表す説明図である。
【0051】
あるイベントが発生した場合、多数のユーザがが遠方から集まってくることとなる。即ち、イベント位置から遠い位置ほど、当該イベントに参加するユーザの密度が低い一方、イベント位置に近づくほど、それらユーザの密度が高くなってくる。
【0052】
イベント位置推定部16は、以下の2つのステップを実行する。
(S1)イベント位置(x,y)を未知として、「非常」と判定された全ての通信開始局及び通信終了局の組iに対して、ポテンシャル関数を用いて、イベント規模数Sに基づくポテンシャル値Ue
iを算出する。ポテンシャル値Ue
iは、例えば以下の式によって算出される。
Ue
i=S*(1−exp(−|C*r
p|))
S:イベント規模数 S=Σ(s
i)*w (w:定数)
C,p:定数
r:イベントからの距離 r=√(|x1−x|
2+|y1−y|
2)
(x,y):未知のイベント位置の座標
(x1,y1):現時間の位置の座標
【0053】
図6(a)によれば、w=1、S=(16+8+12+9)=45、C=1/900、p=2の場合におけるポテンシャル値Uが表されている。各Ue
iは、以下のようになる。
Ue
1=45−45*exp(−r
12/100)
Ue
2=45−45*exp(−r
22/100)
Ue
3=45−45*exp(−r
32/100)
Ue
4=45−45*exp(−r
42/100)
【0054】
(S2)通信開始局及び通信終了局の組i毎における乖離数s
iの関数f(s
i)と、イベント規模数Sとの差分(S−f(s
i))を算出する。次に、その差分(S−f(s
i))と、ポテンシャル値Ue
iと、の差分{S−f(s
i))−Ue
i}の合計値が、最も小さくなる「ポテンシャル場」としてのイベント位置(x,y)を算出する。iは、i=1〜Nとし、非常と判定された通信開始局及び通信終了局の組を意味する。その上で、以下のように最小となるイベント位置を算出する。
min Σ(|S−f(s
i))−Ue
i|
2)
尚、イベント位置を中心とした所定範囲(例えば半径500mの円内)を、イベント位置のエリアと推定することも好ましい。
【0055】
ここで、f(s
i)=s
iとし、各s
iと、その座標(括弧()内;x、y座標とした)を次のようにすると、イベント位置(x,y)は以下のように計算できる。
s
1=16 (5,1)
s
2=8 (6,6)
s
3=12 (4,5)
s
4=9 (3,2)
min Σ(|(S-f(s
i))−Ue
i|
2)
=min Σ(|(S-s
i)−Ue
i|
2)
=min{((45-45*exp(-r
12/100))-(45-16))
2 +
((50-50*exp(-r
22/100))-(50-8))
2+
((50-50*exp(-r
32/100))-(50-12))
2+
((50-50*exp(-r
42/100))-(50-9))
2)}
≒0.34
at (x,y)≒(4.7465,3.49982)
【0056】
図6(b)は、上記式を可視化したものである。最下点が上記(x,y)になる。即ち、この場合、(x,y)=(4.7465, 3.49982)が、イベント位置として推定されたこととなる。
【0057】
<第2の実施形態:有向線分の延長線の交点を用いたイベント位置の推定>
最初に、有向線分生成部15は、「非常」と判定された出現頻度に係る通信開始局の位置を始点とし、その通信終了局の位置を終点とする有向線分を生成する。
【0058】
図7は、非常と判定された出現頻度に係る通信開始局と通信終了局とを結ぶ有向線分を表す地図である。
【0059】
次に、イベント位置推定部16は、2つ以上の有向線分の終点方向への延長線を含む線分の交点、又は、2つ以上の有向線分の終点方向への延長線を含む線分までの距離の二乗の総和が最小となる点を中心をイベント位置とする。
【0060】
図8は、16時台における非常の有向線分を表す地図である。
【0061】
図8によれば、5本の有向線分が表されており、それぞれ延長線が伸びている。有向線分の終点方向への延長線を含む線分までの距離の二乗の総和が最小となる点を算出す。その点を中心とし、半径500mの円内をイベント位置のエリアと推定している。
【0062】
図9は、
図8に続いて、17時台における非常の有向線分を表す地図である。
図10は、
図9に続いて、18時台における非常の有向線分を表す地図である。
【0063】
図9及び
図10のように、所定時間間隔でイベント位置の推定を繰り返し、粒子フィルタを通してイベント位置を推定する。この場合、イベント開始時刻が近づくほど、有向線分がイベント位置付近に集中し始め、徐々に精度の高いイベント位置が推定できる。また、イベント位置推定手段は、所定時間間隔でイベント位置の推定・探索を繰り返した際、「粒子フィルタ」を通してイベント位置を推定することも好ましい。粒子フィルタとは、逐次モンテカルロ法 (Sequential Monte Carlo: SMC)とも称され、ベイズモデルを推定するために、バッチ処理であるマルコフ連鎖モンテカルロ法を逐次に処理したものである。
【0064】
以上、詳細に説明したように、本発明の装置、プログラム及び方法によれば、多数のユーザの通信履歴から将来的なイベントの発生位置を推定することができる。即ち、実際にユーザがイベント場所へ集まる以前に、その位置を推定することができる。また、多数のユーザの動向から、そのイベント規模も推定することができる。これによって、非日常のイベントに基づく通信需要に対し、通信事業者は、例えば車載型基地局などを予め稼動させ、臨時の通信回線の増設対策を実施することができる。
【0065】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。