特許第6071229号(P6071229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クニミネ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6071229-ボーリング孔用遮水造粒物 図000003
  • 特許6071229-ボーリング孔用遮水造粒物 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071229
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ボーリング孔用遮水造粒物
(51)【国際特許分類】
   E21B 33/13 20060101AFI20170123BHJP
   C01B 33/40 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
   E21B33/13
   !C01B33/40
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-79691(P2012-79691)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209817(P2013-209817A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104814
【氏名又は名称】クニミネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 恵一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 温知
(72)【発明者】
【氏名】松戸 博道
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−036295(JP,A)
【文献】 特表2008−538122(JP,A)
【文献】 特開平08−169712(JP,A)
【文献】 特開2000−073333(JP,A)
【文献】 特開昭61−006119(JP,A)
【文献】 特開2011−105578(JP,A)
【文献】 特開2009−150076(JP,A)
【文献】 特開平11−023393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 33/13
C01B 33/00−39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膨潤性粒体表面が、疎水性の、粉末または薄膜で被覆されていて、前記粉末または前記薄膜による、前記水膨潤性粒体表面の被覆率が70%以上100%未満であり、前記水膨潤性粒体は、液性限界が100〜1,000%の水膨潤性粘土の成形体であることを特徴とするボーリング孔用遮水造粒物。
【請求項2】
前記疎水性粉末の粒径が1mm以下であることを特徴とする請求項記載のボーリング孔用遮水造粒物。
【請求項3】
前記水膨潤性粘土がベントナイト、スメクタイト、膨潤性雲母から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項または記載のボーリング孔用遮水造粒物。
【請求項4】
前記水膨潤性粒体の粒径が3〜50mmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のボーリング孔用遮水造粒物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔、及び、ボーリング孔内壁とボーリング孔に挿入されるストレーナパイプとの空隙に用いられる遮水材に関する。詳しくは、本発明は、高含水比において低流動性粘土を成形した、ボーリング孔用遮水造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木分野において、ボーリング孔、及び、ボーリング孔内壁とそのボーリング孔に挿入されるストレーナパイプなどの外壁との空隙に用いられる遮水材は地下水の地表への漏出防止や、雨水のストレーナパイプ内への浸入を防ぐことを目的として使用されてきた。その方法として、(1)水膨張性組成物をストレーナパイプに巻きつけ、水膨張性組成物を膨張させることで体積を増加させ、空隙を閉塞する方法、(2)薬液およびセメントミルクを泥水中に注入し、不透水性の固化体を形成することにより遮水する方法、及び、(3)ベントナイト造粒品をボーリング孔の泥水に投入し、底部に堆積させ遮水層を形成することにより遮水する方法、などが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記(1)の遮水方法では、水膨張性組成物を巻きつけたストレーナパイプをボーリング孔に挿入すると、水膨潤性組成物の膨張が始まり、水膨張性組成物が変形するため、水膨張性組成物の固定が完全でない場合、ストレーナパイプから水膨張性組成物が剥離して落下する恐れがあり、所定箇所の空隙を閉塞出来ない場合がある。
また、リング状などに成形することで、水膨張性組成物が剥離して落下する恐れはなくなる。しかし、ボーリング孔中心とストレーナパイプ中心がずれ、ボーリング孔内壁とストレーナパイプ外壁の間隔が偏り空隙が大きくなると、膨張しても空隙を閉塞することが出来ないという問題がある。
【0004】
前記(2)の遮水方法では、薬液およびセメントミルクなどを泥水中に注入する設備が必要である。大規模な装置が必要となることや、注入直後はボーリング孔内壁および挿入するストレーナパイプ外壁と密着した不透水性固化物が、地震などの外力により一旦剥離するとその壁面を容易に通水してしまうため、遮水機能がなくなるという問題がある。
【0005】
前記(3)の遮水方法では、ボーリング孔にベントナイト造粒品を投入し泥水中を落下させ、底部に堆積させることで遮水層を形成する。そのため、特別な装置を必要とせず、ストレーナパイプを挿入後に投入し底部に堆積させるため、ボーリング孔内壁とストレーナパイプ外壁との空隙がどのような場合も対応することが可能である。
しかし、ボーリング孔深度が深い場合(「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」において「大深度地下」と定義されている、地表から40mより深い地下である場合)には、投入したベントナイト造粒品の膨潤した粒表面がボーリング孔底部に到達する前に水中に分散してしまうため、比較的深度の浅いボーリング孔にしか対応出来なかった。
また、粒径を大きくすることで必要量を底部に到達させることは可能であるが、ボーリング孔内壁とストレーナーパイプ間の隙間が狭いため、膨潤した粒表面の粘着性により、ストレーナーパイプ等に付着し、底部に到達せずに、地表からボーリング孔底部までの途中で堆積してしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、大深度のボーリングにおいても使用できる、孔内壁とストレーナパイプ等との空隙を充填する遮水材に関し、泥水中落下時に分散することが無く、且つ、ストレーナパイプ等への付着の無い粘土の造粒物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究により、低流動性粘土を成形した水膨潤性粒体の表面を、疎水性物質により所定の被覆率でコーティングすることにより作製した、ボーリング孔用遮水造粒物は、泥水中落下時の分散が抑制され、かつ、ストレーナパイプ等へ付着せず、更には、ボーリング孔底部到達後、所定時間内に遮水機能を発揮することを見出した。本発明は、この知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明の課題は以下の手段により達成された。
(1)水膨潤性粒体が、疎水性の、粉末または薄膜で被覆されていて、前記粉末または前記薄膜による、前記水膨潤性粒体表面の被覆率が70%以上100%未満であり、前記水膨潤性粒体は、液性限界が100〜1,000%の水膨潤性粘土の成形体であることを特徴とするボーリング孔用遮水造粒物
)前記疎水性の粉末の粒径が1mm以下であることを特徴とする(1)記載のボーリング孔用遮水造粒物。
前記水膨潤性粘土がベントナイト、スメクタイト、膨潤性雲母から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする(1)または(2)に記載のボーリング孔用遮水造粒物。
前記水膨潤性粒体の粒径が3〜50mmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のボーリング孔用遮水造粒物
本願明細書において、「疎水性」とは、水に対する親和性が小さいことをいい、「疎水性の粉末または薄膜」とは、水膨潤性粒体表面を被覆率100%で被覆した場合、ボーリング孔用遮水造粒物が膨潤しないことにより、後述の遮水機能を24時間経過しても発揮させない粉末または薄膜をいう。
「水膨潤性粒体表面の被覆率」は、(被覆面積/水膨潤性粒体表面積)×100(%)により得られる。
水膨潤性粒体表面に、粉末または薄膜を被覆することによりできる層の厚さは好ましくは、0.01〜1mmである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のボーリング孔用遮水造粒物は、ボーリング孔の所定深度まで到達し、かつ、到達後、所定時間以内に膨潤し十分な遮水機能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、遮水機能時間確認試験を行うための装置の模式図である。
図2図2は、本発明のボーリング孔用遮水造粒物の好ましい使用態様の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明において、水膨潤性粒体には、天然もしくは合成の水膨潤性粘土から選ばれた少なくとも1種類の粘土が用いられる。このような粘土としては、未変性のものでも変性したものでもよいが、ベントナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土、および膨潤性雲母から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
このうち、ベントナイトは天然に産出する無機系の粘土であるため安全性に優れ、かつ土中の微生物に分解されることがなく長期的に安定で、高い止水効果を保持できる。また、低価格であるため、特に好ましい粘土である。本発明において、前記水膨潤性粘土から選ばれた1種の粘土を単独で、または2種以上の粘土を用いることができる。
本発明において水膨潤性粒体の形状は、特に制限するものではないが、球状、円筒状、楕円状、略立方体状、多角体状、円柱状、板状、針状などが挙げられる。これらの中で好ましくは、球状、楕円状、円柱状であり、より好ましくは球状、楕円状などが、最密充填かつ比表面積の減少による残存率の向上に寄与するため、適している。
【0012】
水膨潤性を調製する方法は特に制限されない。具体例としては、回転ドラム型や回転皿型などに原料の粘土粉末を投入し、この粘土粉末を転がしながら加液し、粉末を凝集させ造粒する転動造粒法が挙げられる。加液する液体は水、アルコール、糖蜜、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、温度・湿度等の条件はバインダー等の添加物に合せ適宜選択できる。
また、原料の粘土粉末に加液混練し、可塑性を付与した後、多数の孔を持つダイやスクリーン面から押出し成形する押出し造粒する方法が挙げられる。温度・湿度等の製造条件はバインダー等の添加物に合せ適宜選択できる。さらに、原料の粘土粉末を型に充填したり、回転する2個のロール間に供給して、粘土粉末に圧力をかけ成型する圧縮造粒法などの造粒方法が挙げられる。また、数種類の水膨潤性粘土を用いる場合や着色剤などを配合する場合は、事前に均一に混合しておくことが好ましい。
【0013】
ボーリング孔用遮水造粒物の粒密度(g/cm)は、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.7以上であることがさらに好ましい。粒密度が1.0より小さい場合は泥水に浮いてしまい底部へ落下させることが出来ない。また、1.0〜1.3程度の粒密度の低い造粒物は泥水中落下時に容易に分散し、粒中心への水浸透性も高いため、粒が崩壊し易い。粒密度の上限に特に制限はないが、5以下であることが実際的である。
また、粒強度は好ましくは10N以上、より好ましくは20N以上である。粒強度が低すぎる場合は輸送中にボーリング孔用遮水造粒物が破損してしまう恐れがある。粒強度の上限に特に制限はないが、300N以下であることが実際的である。
【0014】
水膨潤性粒体の粒径は、小さすぎると底部到達前に泥水中に分散する可能性が高くなり、コーティングを施した際には水膨潤性粒体に対する疎水性物質の割合が増加するため、一定以上の粒径が必要となる。そのため、水膨潤性粒体の粒径は、5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることがより好ましく、9mm以上であることが特に好ましい。
水膨潤性粒体の粒径は、水膨潤性粒体の形状が球状以外の、円筒状、略立方体状及び角のとれた略立方体状等である場合は、その粒の中心を通る径の内で最大の径(長径又は粒長)をいうものとする。
【0015】
また、ボーリング孔とストレーナパイプ等との間隔が狭いことも多く、粒径の大きいボーリング孔用遮水造粒物を使用すると所定深度に到達するまでに詰まってしまう恐れもある。そのため水膨潤性粒体の粒径の上限は、30mm以下であること好ましく、20mm以下であることがより好ましく、15mm以下であることがさらに好ましい。
【0016】
水膨潤性粒体の粒径が大きいと、投入するボーリング孔用遮水造粒物の比表面積が減るため、分散抑制効果は高くなるが、充填時の粒子間空隙が広くなるため、所定深度に到達した後、膨潤により粒子間の空隙を閉塞するのに時間を必要とし、遮水機能を発揮するのに時間がかかる。
【0017】
本発明において、ボーリング孔用遮水造粒物をボーリング孔に投入してから遮水機能を発揮するまでの時間は、ボーリング孔の深度や使用時の泥水温度等に応じて定まるので、一義的に定まるものではない。
しかし、本発明のボーリング孔用遮水造粒物は、ボーリング孔の深度等を考慮し、疎水性の、粉末または薄膜の被覆率等を調整することにより、ボーリング孔の底部に到達してからできるだけ早く、例えば遅くとも約5時間以内に遮機能水機能を発揮するように調節することができる。
【0018】
このボーリング孔用遮水造粒物の使用の一例について図2において図示を参照して説明する。図示していないが、ボーリング孔15に水が溜っている。膨潤した本発明のボーリング孔用遮水造粒物21が、水脈層17よりも浅い深度まで堆積していることにより、水脈層17からの水の表面流出を防止することができる。よって、水脈層17からの水のボーリング孔15への流出を伴うことなく、濾過砂19、井戸スクリーン20、及びストレーナパイプ18を通して地下水を取水することができる。
【0019】
ボーリング孔用遮水造粒物の形状に特に制限はないが、球形であると比表面積が減少するため、膨潤し難く、泥水中落下時の抵抗が少ないため、好ましい。
【0020】
本発明において、水膨潤性粒体に用いる水膨潤性粘土の液性限界(JIS A 1205 土の液性限界、塑性限界試験方法)は、100%以上1,000%以下であることが好ましく、200%以上1,000%以下であることがより好ましく、300%以上1,000%以下であることがさらに好ましく、500%以上1,000%以下であることが最も好ましい。
液性限界が低すぎる水膨潤性粘土は、低含水比で流動性が発現するため、泥水中落下時の分散が早く、崩壊し易い。また、逆に液性限界が高すぎる場合は、底部到達後に膨潤によってボーリング孔用遮水造粒物同士の空隙を閉塞する時間が長くなり遮水機能を発揮するまでの時間が長くなってしまう場合がある。
【0021】
水膨潤性粒体のコーティングに用いる疎水性物質はポリスチレンやポリエチレンなどの汎用プラスチック、固形パラフィン、ステアリン酸カルシウム等の金属脂肪酸、活性炭等のカーボンや有機修飾により疎水性にした鉱物(有機化ベントナイトなどと呼ばれるもの)などが挙げられる。
コーティング方法としては、水膨潤性粒体表面にバインダーを塗布し、その粘性により粉末を付着させる方法、粉末で水膨潤性粒体を覆い、圧力などの外力により圧着させる方法やアルコールや鉱物油、動物油、植物油等に溶解・分散させた疎水性物質や溶融させた疎水性物質を塗布し、水膨潤性粒体表面に薄膜を形成する方法、界面活性剤により表面修飾することで表面を100%でなく部分的にコーティングし、疎水性を付与する方法などが挙げられる。
【0022】
疎水性の、粉末または薄膜による水膨潤性粒体の被覆は、被覆率80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。また、100%被覆してしまうと遮水機能が発揮されないため、被覆率は100%未満である。
水膨潤性粒体の被覆率が低すぎる場合、粒残存率が低下し、泥水中落下時に膨潤してしまうため使用量を算出することが困難となる場合がある。さらに、付着性が強くなり泥水中落下時に堆積してしまい、孔底部に到達しない恐れがある。本発明において、粒残存率が80%以上であれば、使用上ほぼ問題はない。
【0023】
水膨潤性粒体に疎水性でない、水溶性高分子をコーティングし耐水性を付与した場合、湿度の高い環境で保管すると、水溶性高分子の粘着性が発現し、造粒物が互いに接着し、固着してしまう可能性がある。また、泥水中落下時にもストレーナパイプ等に付着し、底部に到達せずに堆積してしまう恐れがあるため、水溶性高分子による耐水性付与は好ましくない。
【0024】
粉末を水膨潤性粒体の表面に塗布する場合、疎水性物質の粉末が大きすぎるとコーティングした後の粉末間の空隙が大きくなり、水膨潤性粒体に耐水性を付与し難い場合がある。また、粒径の大すぎる粉末はコーティングした後に付着しにくいため、容易に剥離してしまう場合がある。そのため、粉末の粒径は1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。粉末の粒径の下限に特に制限はないが、1μm以上であることが実際的である。
【0025】
また、疎水性物質の、温度20℃の水に対する比重は1未満であることが好ましい。1未満であると、泥水中落下時や底部到達後にボーリング孔用遮水造粒物が膨潤し、疎水性物質は水膨潤性粒体から剥離し、ボーリング孔上部まで浮上する。そのため、疎水性物質を回収することができ、土中に疎水性物質が残ることを防止出来る。
【0026】
上記材料及びコーティング方法は限定されるものではない。本発明において、疎水性物質は水膨潤性粒体に耐水性を付与する目的で用いられ、前記疎水性物質の中から1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のボーリング孔用遮水造粒物は、水膨潤性粒体100質量部に対し、疎水性物質が、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。疎水性物質の下限は特に制限されないが、0.1質量部以上であることが実際的である。疎水性物質が多すぎるとコーティング皮膜強度が強くなり、ボーリング孔用遮水造粒物が遮水効果を発揮する時間が著しく長くなる場合がある。
【0027】
本発明において、ボーリング孔用遮水造粒物は効果を損なわない範囲で、必要に応じ従来造粒に用いられている種々の添加成分を任意成分として配合することが出来る。例えば、バインダー(結合剤)といわれるような造粒性を向上させる剤や粒比重調整のためのバライトなどの加重剤、さらには着色剤、防腐剤などが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
粒残存率および遮水機能発揮時間確認試験、付着性、保管試験を下記方法により実施し、下記表1にその結果を示す。
【0030】
(粒残存率測定方法)
水膨潤性粒体を疎水性物質で被覆して得たボーリング孔用遮水造粒物100gを、温度20℃の水に30分間浸漬させた。浸漬させた造粒物を温度20℃のエタノールに移し表面の膨潤した造粒物を凝集させ分離した。中心に残った膨潤しなかった造粒物を回収した。膨潤しなかった造粒物を105℃で24時間乾燥し、固形物の残存量(g)を測定した。
粒残存率は、下記式により得られる。

粒残存率(%)=[(水に浸漬させる前の造粒物100(g)−水に浸漬させても膨潤しなかった造粒物の乾燥させた固形物(g))/100(g)]×100
【0031】
(遮水機能発揮時間確認試験方法)
遮水機能発揮時間確認試験において、図1に示す透水試験装置により通水時間による透水係数の変化を測定した。内径10cm、高さ10cmの円柱状アクリルケース1の内部にボーリング孔用遮水造粒物(試料2)を充填し、アクリルケース1の上下に金属製蓋3を設置し、アクリルケース1をフランジ4で固定する。また、注水口5および排水口6の内側には、試料2が注水管7および排水管8に詰まらないように、ろ紙9およびステンレス製焼結フィルター10を設置した。蒸留水をいれたタンク11に窒素ボンベ12を用いて加圧し、レギュレーター13にて圧力を調整した。注水開始時はバルブ14を開け、注水管7内部にたまった空気を排出した。
注水後は排出管8より排出された水を回収し、透水性が非常に低いとされる透水係数1×10−7m/sec以下(JIS A 1218 土の透水試験法)となるまでの時間を測定した。圧力は試料の流失が起こらないように0.5kgf/cmずつ増加させ、最大5.0kgf/cmとした。
また施工箇所において、24時間程度で投入したボーリング孔用遮水造粒物間の空隙が閉塞しない場合、埋め戻し材がボーリング孔用遮水造粒物の空隙に侵入し、遮水機能が発揮出来なくなる恐れがあるため、24時間後までの10−7m/sに達しない試料は、下記表1において「遮水せず」とした。
【0032】
(付着性確認試験方法)
付着性は水中に水平に設置した長さ30cmのステンレス鋼板の端部に下記各試料を静置し、30分間静置した。その後、ステンレス鋼板の試料を載せた端部を持ち上げ、45度に傾け静置した試料が自重で反対側の端部までの30cm移動するか確認した。移動したものを「○」、付着して動かないもの、途中で止まったものを「×」とした。
【0033】
(保管試験方法)
保管試験は空気穴を設けたポリエチレン袋に包装した下記各試料を室温20℃±3℃、相対湿度100%に調整した部屋に1kgf/cmの圧力を掛け、保管した後、試料の固着有無を確認した。固着しなかったものを「○」、固着したものを「×」とした。
【0034】
上記に示す方法により、粒残存率及び遮水機能発揮時間、付着性、保管試験を実施した結果を下記表1に示す。
【0035】
(実施例1〜5、参考例1)
液性限界を200に調整したベントナイトを押出造粒機(不二パウダル製F−5)にてφ2、3、5、10、20、50mmの粒を成形し、粒径と同じ目開きの篩で粒長を調整した円柱状の水膨潤性粒体を得た。
粒長を調整した各水膨潤性粒体に被覆率85%となるようにウルシロウを溶融コーティングしたものを試料1、2、3、4、5、6とした。
【0036】
(実施例6〜10、参考例2、3)
液性限界を50、100、200、500、700、1,000、1,200に調整したベントナイトを押出造粒機(不二パウダル製F−5)によりφ10mmの粒を成形し、粒径と同じ目開きの篩で粒長を調整した円柱状の水膨潤性粒体を得た。
粒長を調整した各水膨潤性粒体に被覆率85%となるようにウルシロウを溶融コーティングしたものを試料7、8、9、10、11、12、13とした。
【0037】
(実施例11〜13、参考例4〜6)
液性限界を200に調整したベントナイトを押出造粒機(不二パウダル製F−5)にてφ5mmの粒を成形し、粒径と同じ目開きの篩で粒長を調整した円柱状の水膨潤性粒体を得た。
粒長を調整した各水膨潤性粒体に被覆率50、60、70、80、90、100%となるようにウルシロウを溶融コーティングしたものを試料14、15、16、17、18、19とした。
【0038】
(比較例1〜5)
液性限界を200に調整したベントナイトを押出造粒機(不二パウダル製F−5)にてφ5mmの粒を成形し、粒径と同じ目開きの篩で粒長を調整した円柱状の水膨潤性粒体を得た。
粒長を調整した各水膨潤性粒体に2wt%、20℃での粘度が100、500、800、1,000、1,200mPa・sの水溶性高分子を被覆率85%コーティングしたものを試料20、21、22、23、24とした。
【0039】
(実施例14〜16、参考例7)
液性限界を200に調整したベントナイトを押出造粒機(不二パウダル製F−5)にてφ5mmの粒を成形し、粒径と同じ目開きの篩で粒長を調整した円柱状の水膨潤性粒体を得た。
粒長を調整した各水膨潤性粒体に粒径0.1、0.5、1、2mmに調整した金属脂肪酸粉末(日油社製 オーラブライトCA−65)を水膨潤性粒体表面の全面にコーティングしたものを試料25、26、27、28とした。
なお、各試料の水膨潤性粒体の被覆率は電子顕微鏡を用い、表面の同一視野の元素分布を確認し、Cは金属脂肪酸のみに含まれることから(C元素分布面積/視野全面積)×100とし算出した。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1〜5及び参考例1の結果から、粒径が2mmの場合、粒残存率が70%と低く更に付着性を示すことから、泥水中落下時の崩壊もしくは孔壁への付着により、ボーリング孔底部まで到達出来ず、所定の遮水性能を得られないことが確認された。また、粒径が大きいものほど遮水機能発揮時間が長くかかることが確認された。
【0042】
実施例6〜10及び参考例2及び3の結果から、原料として使用する水膨潤性粘土の液性限界が50%の場合、粒残存率が71%と低く、泥水中落下時の崩壊によりボーリング孔底部まで到達出来ず、所定の遮水性能を得られないことが確認された。また、液性限界が1,200%の場合、空隙を所定時間内に閉塞出来ず、遮水性機能を発揮しないことが確認された。
【0043】
実施例11〜13及び参考例4〜6の結果から、被覆率が低くなると遮水機能発揮時間は短くなった。しかし、被覆率50%では粒残存率が71%と低く、泥水中落下時の崩壊によりボーリング孔底部まで到達できないことが確認された。また被覆率60%では付着性を示すことから、泥水中落下時の孔壁への付着によりボーリング孔底部まで到達できないことが確認された。また、被覆率を100%とすると空隙を所定時間内に閉塞出来ず、所定の遮水性能を得られないことが確認された。
【0044】
比較例1〜5の結果より、水溶性高分子を用いて耐水性を付与した場合、保管試験において吸湿により粘着性を発現し、造粒体同士が固着して使用困難となることが確認された。
【0045】
実施例14〜16及び参考例7の結果から、粒表面を被覆する金属脂肪酸粉末の粒径が2mmの場合、粒残存率が67%以下と低く、泥水中落下時の崩壊によりボーリング孔底部まで到達できず、所定の遮水性能を得られないことが確認された。
【符号の説明】
【0046】
1 アクリルケース
2 試料
3 金属製蓋
4 フランジ
5 注水口
6 排水口
7 注水管
8 排水管
9 ろ紙
10 ステンレス製焼結フィルター
11 タンク
12 窒素ボンベ
13 レギュレーター
14 バルブ
15 ボーリング孔
16 地表層
17 水脈層
18 ストレーナパイプ
19 濾過砂
20 井戸スクリーン
21 ボーリング孔用遮水造粒物
図1
図2