(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る非水電解質二次電池用電極について、以下に詳述する。
【0018】
(a)焼結体
本発明に係る非水電解質二次電池用電極は、所定の質量割合で混合したアルミニウム粉末と電極合材の混合物を加圧成形した後に、その加圧成形体を不活性雰囲気中で熱処理して焼き固めた焼結体から成る。また、この混合物を金属板と複合化した焼結体としてもよい。なお、このような焼結体は、正極と負極のいずれにも適用できるものである。
【0019】
(b)アルミニウム粉末
本発明で用いるアルミニウム粉末には、純アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末又はこれらの混合物が用いられる。使用環境下において合金成分が耐食性劣化の原因となるような場合には、純アルミニウム粉末を用いるのが好ましい。純アルミニウムとは、純度99.0mass%以上のアルミニウムである。
【0020】
一方、より高い強度を得たいといった場合には、アルミニウム合金粉末又はこれと純アルミニウム粉末の混合物を用いるのが好ましい。アルミニウム合金としては、1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系のアルミニウム合金が用いられる。
【0021】
アルミニウム粉末の粒径は1〜50μmが好ましい。アルミウム粉末同士が結合することによって連続して強固に繋がった小構造体を形成するには、アルミニウム粉末の粒径はより小さい方が好ましく、1〜10μmが更に好ましい。アルミニウム粉末の粒径は、レーザー回折散乱法(マイクロトラック法)で測定したメジアン径で規定する。
【0022】
(c)添加元素粉末
純アルミニウム粉末に添加元素粉末を加えた混合物を用いてもよい。このような添加元素には、マグネシウム、珪素、チタン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛等から選択される単独又は二以上の任意の組み合わせからなる複数の元素が好適に用いられる。このような混合物は、熱処理によりアルミニウムと添加元素との合金を形成する。また、添加元素の種類によっては、アルミニウムと添加元素との金属間化合物が更に形成される。このようなアルミニウムの合金や金属間化合物の含有により、様々な効果が得られる。例えば、珪素や銅などの添加元素とアルミニウムとのアルミニウム合金では、アルミニウム粉末の融点が低下し、熱処理に必要な温度を下げることができるので製造に必要なエネルギーを削減できると共に、合金化によって強度が向上する。また、アルミニウムとニッケルなど添加元素との金属間化合物が形成される際に発熱が起こって焼結が促進されると共に、金属間化合物が分散した組織が形成されることで高強度化が図れる。
【0023】
アルミニウム合金粉末に添加元素粉末を加えてもよく、アルミニウム合金粉末と純アルミニウム粉末との混合物に、添加元素粉末を加えてもよい。これらの場合には、新たな合金系や金属間化合物が形成される。更に、添加元素粉末として、複数の添加元素粉末同士を合金化した添加元素合金粉末を用いてもよい。
【0024】
アルミニウム合金粉末や純アルミニウム粉末に対する添加元素粉末や添加元素合金粉末の添加量は、形成される合金や金属間化合物の化学式量に基づいて適宜決定される。
また、添加元素粉末の粒径は、1〜50μmが好ましい。添加元素粉末の粒径は、アルミニウム粉末と同様にレーザー回折散乱法(マイクロトラック法)で測定したメジアン径で規定する。
【0025】
(d)電極合材
本発明に係る非水電解質二次電池用電極としては、正極と負極のいずれも適用可能できる。このような電極は、リチウムを吸蔵放出可能な活物質を含む電極合材を含有する。電極合材に含有される活物質が、上述のアルミウム粉末同士が結合することによって連続的に繋がった小構造体において配置が固定される。電極合材は、活物質に加えて導電助剤と結着剤とを含んでいてもよい。
【0026】
電極が正極の場合、用いられる正極活物質は、非水電解質二次電池に使用できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム等のリチウム金属酸化物が用いられる。電極が負極の場合、用いられる負極活物質は非水電解質二次電池に使用できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、リチウムチタン複合酸化物、リチウムタングステン複合酸化物、リチウムニオブ複合酸化物、リチウムモリブデン複合酸化物などが挙げられる。これらのリチウム含有複合酸化物の中でも、非水電解質二次電池のレート特性、サイクル特性及び安全性の観点から、リチウムチタン複合酸化物を用いることが好ましい。
【0027】
混合物の全質量に対する活物質の混合割合は50〜99質量%とするのが好ましく、同じくアルミニウム粉末の混合割合は1〜50質量%とするのが好ましい。活物質の混合割合が50質量%未満の場合や、アルミニウム粉末の混合割合が50%を超える場合には、電極に占める活物質の割合が低く十分な電極容量が得られない場合がある。一方、活物質の混合割合が99質量%を超える場合や、アルミニウム粉末の混合割合が1質量%未満の場合には、電極に占めるアルミニウム粉末の割合が低下してアルミウム粉末同士が結合することによって形成される連続して繋がった小構造体の分布密度が低くなり、多量の活物質の配置を固定することができない場合がある。その結果、電極からの活物質の脱落などにより、サイクルを重ねた際に容量低下を招く。
【0028】
正極でも負極においても電極合材に導電助剤を加えることにより、電極全体としての導電性が向上するので、添加するのが好ましい。導電助剤としては特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛炭素繊維、導電性金属酸化物等を挙げることができる。
【0029】
更に、アルミニウム粉末焼結時の熱処理を経ることで炭化する材料を導電助剤として用いることもできる。このような材料としては、例えば、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂や;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、スチロール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フッ化ビニル、クロロプレン、ビニルピリジン及びその誘導体、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、セルロース類、環状ジエン(例えばシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等)、スチレン−ブタジエンゴム等の重合体及び共重合体等の熱可塑性樹脂;糖類や澱粉などの炭水化物;パラフィン、タール、ピッチ、コークス等の炭化水素;などが挙げられる。
【0030】
正極でも負極においても電極合材に結着剤を加えることにより、結着剤を介しての成分の結合、すなわち活物質同士、導電助剤同士、活物質と導電助剤との結合が強固になって、電極からの活物質の脱落がより起こり難くなる。従って、結着剤を添加するのが好ましい。用いる結着剤としては特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0031】
以上のように、電極合材に導電助剤と結着剤の少なくとも一方を加えるのが好ましい。添加する場合は、正極でも負極においても混合物の全質量に対する導電助剤と結着剤の割合を、20質量%以下とするのが好ましい。この質量割合は、導電助剤と結着剤のいずれか一方を加える場合はその割合であり、両方を加える場合は両方の合計の割合である。この割合が20質量%を超えると、活物質の質量割合が相対的に低下し高電極容量化が達成できず、また、アルミニウム粉末の質量割合も相対的に低下して、アルミウム粉末同士が結合することによって連続して繋がった小構造体が十分に形成できない場合がある。なお、本発明では、電極全体の導電性や電極合材成分の結合力が問題とならない場合には、導電助剤や結着剤を電極合材に含有させる必要はないことは勿論である。
【0032】
(e)金属板
本発明においては、アルミニウム粉末と電極合材との混合物を金属板と複合化した状態で用いてもよい。金属板とは無孔の板や箔及び、有孔の金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の網状体である。金属板が支持体となり焼結体の強度が向上し、更に導電性が向上する。金属板としては、熱処理時に蒸発又は分解しない素材、具体的にはアルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、銅等の金属やその合金製のものが好適に用いられる。
【0033】
混合物と金属板との複合化とは、例えば金属板に金網を用いた場合には、網目の中に混合物を充填しつつ網全体を混合物で覆うような一体化状態をいう。金属板の両側に混合物を充填する場合、金属板が有孔の網状体であれば金属板で分けられる領域の片側からの充填であっても、もう一方の領域にまで充填することができるため、金属板は網状体であることが好ましい。ここで、有孔とは、金網の網目部分、パンチングメタルのパンチ部分、エキスパンドメタルの網目部分、金属繊維の繊維と繊維との隙間部分を言う。網状体の有孔の孔径は、アルミニウム粉末や電極合材の粒径に応じて適宜選択される。
【0034】
(f)混合方法
アルミニウム粉末と電極合材を混合する混合手段としては、振動攪拌機、容器回転混合機といったものが用いられるが、十分な混合状態が得られるのであれば特に限定されるものではない。
なお、混合物と金属板を複合化する場合には、混合物の間に金属板を挟んでも、混合物を金属板で挟んでも構わない。また、混合物と金属板の複合化を繰り返して多段にすることもできる。複合化の際にはアルミニウム粉末や電極合材の粒径、混合割合の異なる混合物や、種類の異なる複数の金属板を組み合わせることもできる。
【0035】
(g)加圧成形方法
次に、上記混合物は加圧成形によって加圧成形体とされる。加圧成形時の圧力は、200MPa以上とするのが好ましい。十分な圧力を加えて成形することでアルミニウム粉末同士が擦れ合い、アルミニウム粉末同士の結合を阻害するアルミニウム粉末表面の強固な酸化皮膜が破壊される。この酸化皮膜は融解したアルミニウムを閉じ込め、互いに接触することを妨げると共に、融解アルミニウムとの濡れ性に劣り、液体状のアルミニウムを排斥する作用がある。そのため、加圧成形の圧力が200MPa未満の場合にはアルミニウム粉末表面の酸化皮膜の破壊が不十分で、加熱時に融解したアルミニウムが成形体の外に滲み出し玉状のアルミニウムの塊が形成される場合がある。このようなアルミニウム塊の形成によって形状が崩れるので、これを除去しなければならなくなる。成形圧力は、使用する装置や金型が許容する限り大きい方が焼結体が強固になるので好ましい。しかしながら、400MPaを超えると効果が飽和する傾向がある。なお、加圧成形体の離型性を高める目的でステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、各種ワックス、合成樹脂、オレフィン系合成炭化水素等の潤滑剤を使用することが好ましい。
【0036】
(h)熱処理方法
上記加圧成形体を熱処理することによって、電極合材とアルミニウム粉末との混合物が焼き固められた焼結体が得られる。熱処理は、使用するアルミニウム粉末の融点以上の温度で行う。これにより、少なくとも一部のアルミニウム粉末同士が結合することによって連続的に繋がった小構造体が形成される。混合物と金属板との複合体では、金属板の融点がアルミニウム粉末より低い場合には金属板も溶融して、アルミニウム粉末と共に連続した小構造体を形成する。金属板の融点がアルミニウム粉末より高い場合は、加熱温度が金属板の融点以上の場合には金属板も溶融して、アルミニウム粉末と共に連続した小構造体を形成する。一方、加熱温度が金属板の融点未満の場合には金属板は溶融せず、アルミニウム粉末のみによって連続した小構造体が形成される。ここで、アルミニウム粉末の融点とは、純アルミニウム又はアルミニウム合金の液相が生じる温度であり、金属板の融点とは、同様に液相が生じる温度である。液相が生じる温度まで加熱することで、アルミニウム粉末、或いは、これと金属板から液相が滲み出し、液相同士が接触することでアルミニウム粉末同士、或いは、これと金属板が金属的に結合する。
【0037】
熱処理温度をアルミニウム粉末の融点以上とすることにより、アルミウム粉末同士、或いは、複合体の場合にはアルミニウム粉末と共に金属板が結合することによって連続して繋がった小構造体が形成され、その中において活物質が配置されその配置状態が強固に固定される。一方、熱処理温度がアルミニウム粉末の融点未満の場合には、アルミニウム粉末同士の結合が不十分となり、アルミウム粉末同士が結合することによって繋がった小構造体の形成密度が低くなる。その結果、電極における活物質の配置が十分に固定されない。また、複合体ではアルミニウム粉末と金属板との結合も不十分となる。
【0038】
加熱温度は、800℃以下とするのが好ましく、700℃以下とするのが更に好ましい。800℃を超える温度で加熱した場合には、融解したアルミニウムの粘度が低下し、加圧成形体の外側にまで融解したアルミニウムが滲み出て、凸状のアルミニウム塊が形成される。このようなアルミニウム塊の形成によって形状が崩れるので、これを除去しなければならなくなる。熱処理における加熱保持時間は、1分〜24時間が好ましい。1分未満では、アルミニウム粉末の融解が十分でなく、アルミウム粉末同士が結合することによって繋がった小構造体の形成密度が低くなる場合がある。一方、24時間を超えても、それ以上変化が無いことから、生産性の観点から24時間以内であることが好ましい。また、熱処理時に加圧成形体に荷重を掛け、加圧成形体の圧縮を行ったり、加熱と冷却の繰り返しを複数回行ってもよい。
【0039】
熱処理は、不活性雰囲気で行うのが好ましい。不活性雰囲気はアルミニウムの酸化を抑制する雰囲気であり、真空;窒素、アルゴン、水素、分解アンモニア及びこれらの混合ガス;の雰囲気が好適に用いられ、真空雰囲気が好ましい。真空雰囲気は、好ましくは2×10
−2Pa以下、更に好ましくは1×10
−2Pa以下である。2×10
−2Paを超える場合、アルミニウム粉末表面に吸着した水分の除去が不十分となり、熱処理時にアルミニウム表面の酸化が進行する。前述のとおりアルミニウム表面の酸化皮膜は液体状のアルミニウムとの濡れ性に劣り、その結果、融解したアルミニウムが滲み出し玉状の塊が形成される。窒素等の不活性ガス雰囲気の場合は、酸素濃度を1000ppm以下、露点を−30℃以下にすることが好ましい。
【0040】
(i)焼結体の密度
以上のような熱処理によって得られる焼結体は、1.8〜4.3g/cm
3の密度を有するのが好ましい。この密度が1.8g/cm
3未満では、電極とした際において単位体積当たりの十分な電極容量が得られない。また、焼結体において活物質同士が十分に接触しておらず、電極から脱落する活物質が多くなる。その結果、サイクル容量維持率の低下など電池特性が低下する。一方、上記密度が4.3g/cm
3を超えると活物質同士が圧密化し、電解液が電極の厚さ方向の内部にまで十分に浸透できない。その結果、厚さ方向の内部に存在する活物質の利用率が低くなり、それら活物質の単位質量当たりの電極容量が低下する。
【0041】
(j)非水電解質二次電池
本発明に係る非水電解質二次電池は、上記のようにして製造される焼結体から成る電極と、電間に配置されたセパレータと、非水電解質とを用いて非水電解質二次電池に組み立てられる。なお、正極及び負極の両方、又は、正極のみを上記焼結体によって構成するのが好ましいが、負極のみを上記焼結体によって構成してもよい。
【0042】
セパレータとしては、一般的に用いられているポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの高分子膜が用いられる。非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの有機溶媒に溶解させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)を用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下に本発明例及び比較例により、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の本発明例及び比較例に限定されるものではない。
【0044】
(本発明例
2、4、7〜10、13及び比較例1〜6)
まず、本発明に係る非水電解質二次電池用正極を以下のようにして作製した。
【0045】
(正極の作製)
アルミニウム粉末として、下記アルミニウム粉末(A1、A2)を用いた。正極活物質として、表1に示すリチウム金属酸化物を用いた。更に、下記導電助剤(B1、B2、B3)と下記結着材(C1)を用いた。表1に示すように、各材料を所定の質量割合で混合し、混合物を調製した。なお、表1に示す正極活物質、アルミニウム粉末、ならびに、導電助剤と結着剤の少なくとも一方の質量割合はそれぞれ、混合物の全質量を100質量%として、それに対する質量割合とした。
【0046】
【表1】
【0047】
φ13mmの穴を有する金型に、所定質量の上記混合物を充填し200MPaの圧力で加圧成形した。この加圧成形体をアルゴン雰囲気中で、表1に示す温度で1時間で熱処理することで焼結体を作製した。このようにして、φ13mm、厚さ0.5mmの焼結体を作製して非水電解質二次電池用正極試料とした。なお、正極試料の厚さは、マイクロメータによって測定した。
【0048】
A1:アルミニウム純度99.9mass%の純アルミニウム粉末、メジアン径:3μm(融点:660℃)
A2:Al−7.5%Si−1%Mgのアルミニウム合金粉末、メジアン径:27μm(融点:555℃)
B1:アセチレンブラック
B2:砂糖
B3:ポリ酢酸ビニル樹脂
C1:CMC
【0049】
(正極密度)
上記焼結体から成る正極試料の質量を測定し、その体積で割って正極密度とした。
【0050】
(評価セルの作製)
上記正極試料を作用極に用いた2極式評価セルを作製した。対極にはリチウム金属を用いた。電解液として、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比で3:7)にLiPF
6を1.3mol/L溶解させた非水電解液を用い、セパレータとして、微多孔質ポリエチレン膜を用いた。外装体には、ポリプロピレンブロックを加工した樹脂製容器を用い、作用極及び対極に設けた各端子の開放端部が外部露出するように電極群を収納封口した。
【0051】
(電池試験)
上述のように作製した評価セルを用いて性能試験を行い、単位体積あたりの電極容量、ならびに、正極活物質の単位質量当たりの電極容量を以下のようにして求めた。
【0052】
正極活物質としてLiFePO
4を用いた正極試料の場合は、作製した評価セルを0.2Cで4Vまで充電した後、0.2Cで電圧が2Vを下回るまで放電した。それ以外の正極活物質を用いた場合は、作製した評価セルを0.2Cで4.2Vまで充電した後、0.2Cで電圧が2.75Vを下回るまで放電した。そして、放電時に流れた電流と放電に要した時間の積を電極容量とした。
【0053】
(単位体積当たりの電極容量)
上記電極容量を正極試料の体積で割った値を単位体積当たりの電極容量とした。この単位体積当たりの電極容量が、140mAh/cm
3以上を○、130mAh/cm
3以上140mAh/cm
3未満を△、130mAh/cm
3未満を×とした。
○を合格とし、
△及び×を不合格とした。
【0054】
(正極活物質の単位質量当たりの電極容量)
上記電極容量を正極試料に充填された活物質の質量で割った値を、正極活物質の単位質量当たりの電極容量とした。この正極活物質の単位質量(1g)当たりの電極容量が、120mAh/g以上を○、100mAh/g以上120mAh/g未満を△、100Ah/g未満を×とした。○及び△を合格とし、×を不合格とした。
【0055】
単位体積当たりの電極容量、ならびに、正極活物質の単位質量当たりの電極容量の結果を表1に示す。
【0056】
(サイクル試験後の電極容量の維持率)
正極活物質としてLiFePO
4を用いた正極試料の場合は、0.2Cで4Vまで充電した後、0.2Cで電圧が2Vを下回るまで放電する過程を1サイクルとし、それ以外の正極活物質を用いた場合は、0.2Cで4.2Vまで充電した後、0.2Cで電圧が2.75Vを下回るまで放電する過程を1サイクルとした。10サイクルの試験後の電極容量を測定し、サイクル試験前の電極容量と比較した。サイクル試験後の電極容量の試験前の電極容量に対する割合を電極容量維持率として、表1に示す。電極容量維持率が、90%以上を○、80%以上90%未満を△、80%未満を×とした。○及び△を合格とし、×を不合格とした。
【0057】
(総合評価)
総合評価として単位体積当たりの電極容量
が○で構成され、かつ、正極活物質の単位質量当たりの電極容
量及びサイクル試験後の容量維持率の各評価が○と△で構成されている場合を合格(○)、
それ以外の場合を不合格(×)とした。
【0058】
本発明例
2、4、7〜10、13では、アルミニウム粉末と正極活物質の質量割合がそれぞれ、本発明で規定する範囲内にあり、また、加熱温度がアルミニウム粉末の融点以上であった。その結果、単位体積当たりの電極容量、正極活物質の単位質量当たりの電極容量、ならびに、サイクル試験後の容量維持率が合格であり、総合評価も合格となった。
【0059】
これに対して比較例1では、焼結体にアルミニウム粉末が含まれていなかったため、単位体積当たりの電極容量、正極活物質の単位質量当たりの電極容量、ならびに、サイクル試験後の容量維持率が不合格であり、総合評価も不合格となった。
【0060】
比較例2では、焼結体に導電助剤は含まれていたがアルミニウム粉末が含まれていなかったため、サイクル試験後の容量維持率が不合格であり、総合評価も不合格となった。
【0061】
比較例3では、混合物の熱処理温度が低過ぎたため、サイクル試験後の容量維持率が不合格であり、総合評価も不合格となった。
【0062】
比較例4では、混合物の熱処理温度が低過ぎたため、正極活物質の単位質量当たりの電極容量、ならびに、サイクル試験後の容量維持率が不合格であり、総合評価も不合格となった。
【0063】
比較例5
、6では、導電助剤の割合が多かったために電極に占める電極活物質の割合が少なくなり、単位体積当たりの電極容量が不合格であり、総合評価も不合格となった。