(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の断熱排気管は、内燃機関からの排気を流通するものであり、内燃機関を備えた種々のものに適用することが可能であるが、ここではトラックやバスといった自動車に適用した例を説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
[1.吸排気系の全体構成]
はじめに、
図3を用いて、本実施形態の断熱排気管が適用される自動車(以下、車両とも言う)における、内燃機関の吸排気系の全体構成を説明する。
【0017】
エンジン1は、車両の駆動源として搭載された内燃機関である。ここでは、エンジン1は、直列6気筒のディーゼルエンジンであり、各気筒には燃料噴射弁1aが設けられている。各燃料噴射弁1aにはコモンレール2が接続されている。コモンレール2は、燃料の高圧蓄圧室であり、このコモンレール2に蓄えられた高圧の燃料は各燃料噴射弁1aに供給され、各燃料噴射弁1aの開弁に伴って対応する気筒の内部に燃料が噴射される。なお、エンジン1の気筒の配列及び数は直列6気筒に限定されない。
【0018】
エンジン1の吸気側には、吸気マニホールド3が装着されている。この吸気マニホールド3に接続された吸気通路4には、上流側からエアクリーナ5、ターボチャージャ6のコンプレッサ6a及びインタークーラ7が設けられている。
【0019】
エンジン1の排気側には、排気マニホールド8が装着されている。この排気マニホールド8の下流に接続された排気通路9には、コンプレッサ6aと同軸に連結されたターボチャージャ6のタービン6bが介装されている。また、排気通路9におけるタービン6bよりも下流には、詳細を後述する断熱排気管10及び排気浄化装置30が設けられている。なお、これらの断熱排気管10及び排気浄化装置30は、図示しない車体フレームに固定されている。
【0020】
断熱排気管10は、上流側の上流部排気管10Aと下流側の下流部排気管10Bとを有する。また、排気浄化装置30は、上流側の上流部排気浄化装置30Aと下流側の下流部排気浄化装置30Bとを有する。
上流部排気管10Aは、排気通路9におけるタービン6bの下流部と上流部排気浄化装置30Aとを接続し、排気通路9の一部を形成するものである。この上流部排気管10Aの上流端及び下流端には延在方向に直交して外方に突設されたフランジ部が設けられ、これらのフランジ部により排気通路9のタービン6bの下流部及び上流部排気浄化装置30Aのそれぞれと上流部排気管10Aとが接続されている。
図3では、図示簡略化して上流部排気管10Aを直線形状で示しているが、配置スペースの制約等により、実際の上流部排気管10Aは湾曲した部分を有している。
【0021】
下流部排気管10Bは、上流部排気浄化装置30Aと下流部排気浄化装置30Bとを接続し、これらの排気浄化装置30A,30B間の排気通路9を形成するものである。つまり、下流部排気管10Bは、上流部排気浄化装置30Aと下流部排気浄化装置30Bとを連通する連通路を形成している。この下流部排気管10Bの上流端及び下流端には延在方向に直交して外方に突設されたフランジ部が設けられ、これらのフランジ部により上流部排気浄化装置30A及び下流部排気浄化装置30Bのそれぞれと下流部排気管10Bとが接続されている。
図3では、図示簡略化して下流部排気管10Bを直線形状で示しているが、例えば小型トラックといった配置スペースの制約が厳しい車両では、実際の下流部排気管10Bは湾曲した部分を有している。
【0022】
上流部排気浄化装置30Aには、上流側に配置される前段酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst、以下、DOCと略称する)31と、下流側に配置されるパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、フィルタと略称する)32とが収容され、このフィルタ32の下流側には尿素水インジェクタ33が設けられている。
【0023】
DOC31は、排気中の成分に対する酸化能をもった触媒であり、金属或いはセラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。DOC31によって酸化される排気中の成分としては、NO(一酸化窒素),未燃燃料中のHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)等が挙げられる。例えば、NOがDOC31で酸化されるとNO
2(二酸化窒素)が生成される。
【0024】
フィルタ32は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する多孔質フィルタである。なお、PMとは、C(炭素)からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。
【0025】
このフィルタ32では、上流側と下流側とを連通する通路が壁体を介して多数並設されているとともに、通路の上流側開口と下流側開口とが交互に閉鎖されている。フィルタ32の壁体には、PMの大きさに見合った大きさ多数の細孔が形成されている。このため、PMを含んだ排気がフィルタ32を流通すると、壁体内や壁体表面にPMが捕集され、排気が濾過される。
フィルタ32で捕集されたPMは、上流側のDOC31で生成されたNO
2と反応して酸化し、これによりフィルタ32の連続再生が行なわれる。
【0026】
尿素水インジェクタ33は、排気中に尿素水を噴射供給するものである。この尿素水インジェクタ33は、図示しない尿素水タンクから尿素水が供給され、図示しない制御装置からの指令に応じて尿素水を供給するように構成されている。
この尿素水インジェクタ33により噴射された尿素水は、排気中で霧化し、排気の熱により加水分解されてアンモニアとなる。このアンモニアは、下流部排気浄化装置30Bに、詳細には、選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCR触媒と略称する)34に供給される。
【0027】
下流部排気浄化装置30Bには、上流側に配置される選択還元型触媒34と、下流側に配置される後段酸化触媒(Clean Up Catalyst、以下、CUCと略称する)35とが収容されている。
SCR触媒34は、供給されるアンモニアと排気中に含まれるNOx(窒素酸化物)との脱硝反応を促進することにより、NOxをN
2(窒素)に還元して排気を浄化するものである。このSCR触媒34に還元剤として供給されるアンモニアは、尿素水インジェクタ33により噴射供給された尿素水が排気の熱により加水分解されて生成されるものである。
【0028】
CUC35は、SCR触媒34から流出した余剰なアンモニアを排気中から除去するものである。また、CUC35は、フィルタ32でPMが酸化焼却される際に発生するCOを酸化し、CO
2(二酸化炭素)として排気中に排出する機能も有している。
【0029】
[2.断熱排気管の構成]
次に、
図1を参照して、断熱排気管10の全体構成を説明する。ここでは、上流部排気管10Aに着目して断熱排気管10の構成の詳細を説明する。この断熱排気管10は、排気管11,12と、排気管12の外側に設けられる外管20とを有する。つまり、外管20の配設箇所は、排気管12及び外管20の二重管として構成されている。なお、
図1は、車両に装備された断熱排気管10を取り出して示すものであり、
図1の上下方向が車両の鉛直方向に対応している。
【0030】
[2−1.排気管の構成]
断熱排気管10は、上流側の第1排気管11及び下流側の第2排気管12と、第2排気管12の外側に離隔して設けられた外管20とを有する。なお、これらの管11,12,20には、溶接可能な金属材料を用いており、ここでは、耐食性を確保する観点からステンレス鋼を用いている。ただし、管11,12,20に用いられる材料はステンレス鋼に限定されない。なお、排気管11,12には、内部を排気が流通するため、耐熱性や耐食性等の性能が要求される一方、外管20に要求される性能は比較的低い。このため、外管20には、溶接可能であれば、広汎な金属材料のものを適用することができる。
排気管11,12は、それぞれ直線形状の単管のパイプが曲げ加工された湾曲形状の中空管であり、その内部を排気が流通する。
【0031】
第1排気管11は、湾曲部11aとフレキシブルジョイント11bとを有し、上流端及び下流端にはそれぞれフランジ部11c,11dが形成されている。
湾曲部11aは、第1排気管11に形成されるパイプが曲げ加工された部位である。
図1中では、湾曲部11aは、水平方向と鉛直方向とを連続する湾曲形状のものである。
【0032】
フレキシブルジョイント11bは、断熱排気管10が接続されるエンジン1(
図3参照)と断熱排気管10が固定される車体フレーム(図示略)との相対変位を吸収するものである。このフレキシブルジョイント11bは、ゴム,樹脂,金属又はこれらの複合材料等からなるベローズ、或いは、ベローズ及びこの外周に配置されたアウターブレードを備えて構成され、可撓性を有している。
第1排気管11の上流端に形成されたフランジ部11cは、排気通路9におけるタービン6bの下流部と第1排気管11とを接続するためのものである。一方、下流端に形成されたフランジ部11dは、第2排気管12と第1排気管11とを接続するためのものである。
【0033】
第2排気管12は、上流側から順に第1湾曲部12a,第2湾曲部12b及び第3湾曲部12cを有し、上流端及び下流端にそれぞれフランジ部12d,12eが形成されている。
第2排気管12に形成された湾曲部12a,12b,12cはそれぞれ、第2排気管12に形成されるパイプが曲げ加工された部位である。
図1中では、第1湾曲部12aは、鉛直方向と水平方向とを連続する湾曲形状であり、第2湾曲部12bは、水平方向と水平方向に対して傾斜する方向とを連続する湾曲形状であり、第3湾曲部12cは、水平方向に対して傾斜する方向と水平方向とを連続する湾曲形状である。
【0034】
第2排気管12の上流端に形成されたフランジ部12dは、第1排気管11のフランジ部11dと接合され、第1排気管11と第2排気管12とが接続される。一方、第2排気管12の下流端に形成されたフランジ部12eは、上流部排気浄化装置30A(
図3参照)といった第2排気管12の下流側に隣接して排気通路9を形成する部材と第2排気管12とを接続するためのものである。
【0035】
[2−2.外管の構成]
外管20は、第2排気管12の延在中心軸と同心に設けられ、第2排気管12の外径よりも大きい内径を有している。したがって、外管20の配設箇所では、外管20と第2排気管12との間に筒状の空間を有する二重管が構成されている。
図1では、外管20は、第2排気管12の第1湾曲部12aよりも下流側であって、第2排気管12の下流端と第3湾曲部12cとの間よりも上流側の第2排気管12の外側に延在している。
なお、第2排気管12と外管20との間の筒状の空間には、後述する断熱材(図示略)が介装されている。
【0036】
外管20は、曲げ加工後のパイプを二つに分割して形成された分割部材21,22どうしが、後述する接続クランプ(接続部材)23により接続されることで構成されているものである。以下、
図2を参照して、外管20の構成及び外管20の製造方法を説明する。
図2(a)に示すように、外管20は、単管であって直線形状のパイプPを加工することで製造される。このパイプPは、第2排気管12の外径よりも大きい内径を有する中空管である。
【0037】
まず、直線形状のパイプPに曲げ加工を行なう曲げ工程を実施する。この曲げ加工は、第2排気管12(
図1参照)の湾曲形状に沿った湾曲形状を形成するものである。具体的には、第2排気管12の第2湾曲部12b及び第3湾曲部12cに対応するパイプPの箇所P1及びP2に、これらの湾曲部12b,12cの曲率と同じ曲率で曲げ加工を行なう。このようにして、
図2(b)に示す湾曲形状のパイプPを形成する。
【0038】
次に、湾曲形状のパイプPをレーザ切断で二つ割れに分割する分割工程を実施する。この分割は、排気流通方向に沿って行なわれる。これにより、湾曲形状のパイプPは二つに分割される。このようにして、
図2(c)に示す二つの分割部材21,22を形成する。
図2(c)に示す例では、パイプPは、上方の分割部材21と下方の分割部材22とに分割される。なお、排気流通方向とは、加工後のパイプPを外管20として装着した際に第2排気管12の内部を流通する排気の方向を意味する。
【0039】
そして、一方(ここでは上方)の分割部材21の両側下端(分割線に沿った箇所)の一部を切り欠いて、切り欠き部21a,21aを形成する。各切り欠き部21aは、後述する位置決めクランプ40を用いた第2排気管12に対する外管20の位置決めのためのものである。なお、各切り欠き部21aの形成箇所は、ここでは分割部材21の延在方向の一端近傍としているが、分割部材21の両側下端であれば、分割部材21の延在方向位置は、
図2(d)に示す箇所に限定されない。
【0040】
そして、二つの分割部材21,22を第2排気管12の外側に組み付ける組付工程を実施する。この組付工程では、後述の接続クランプ23により、二つの分割部材21,22どうしを接続する接続工程が実施される。
上記のように、外管20は、第2排気管12の湾曲形状に沿って湾曲形状に形成されたパイプPを、排気流通方向に沿って二つに分割して形成された分割部材21,22を有する。
【0041】
[2−2−1.接続クランプの構成]
図1に示すように、外管20は、一方の分割部材21と他方の分割部材22とを接続する複数の接続クランプ(接続部材)23を有する。
各接続クランプ23は、分割部材21,22どうしを接続する同一構造のものであり、所定の間隔で複数箇所に設けられる。各接続クランプ23には、溶接可能な金属材料を用いており、ここでは、耐食性を確保する観点からステンレス鋼を用いている。このため、ここでは一つの接続クランプ23に着目して説明する。
【0042】
図4(a)及び(b)に示すように、接続クランプ23は、帯板を折り曲げたものであり、半円形状の湾曲板である中央部23aと、この中央部23aの両端に連続する端部23b,23bを有する。各端部23bは、直線形状の平板であり、断熱排気管10に組み付けた際に外管20の接線に沿う。例えば、接続クランプ23は、直線形状の帯板において端部23b,23bになる箇所を把持し、折り曲げることで形成することができる。
【0043】
接続クランプ23の中央部23aの内径は、一方の分割部材21の外径と略等しく形成されている。また、接続クランプ23の中央部23aの内周は、外管20を構成する一方の分割部材21の外周と略等しい長さに設定されている。つまり、中央部23及び端部23b,23bからなる接続クランプ23の内周は、外管を構成する一方の分割部材21の外周よりも長く設定されている。なお、
図4は、理解容易のため、クランプ23,第2排気管12及び外管20の厚みを拡大して示しており、同様に、後述する
図5,
図6及び
図9のクランプ,第2排気管12及び外管20の厚みも拡大して示している。
【0044】
図1のX−X矢視断面図である
図4(b)に示すように、接続クランプ23は、その中央部23aの内周面が一方の分割部材21の外周面と接触するとともに、両端部23b,23bが他方の分割部材22の外周面から僅かに浮いて配置される。
接続クランプ23及び一方の分割部材21は、中央部23aの所定の箇所がスポット溶接されることで互いに固着される。また、接続クランプ23及び他方の分割部材22は、各端部23bの所定の各箇所において、接続クランプ23の各端部23bの側面と他方の分割部材22の外周面とが隅肉溶接されることで互いに固着される。なお、接続クランプ23の各端部23bは他方の分割部材22の外周面に対して浮いているが、これらを互いに固着する隅肉溶接により、両者は隙間なく固着される。
【0045】
これによって、接続クランプ23を介して一方の分割部材21と他方の分割部材22とが固着され、接続クランプ23により互いに固着された両分割部材21,22は、第2排気管12の外側に設けられる外管20を構成する。
【0046】
第2排気管12と外管20との間の筒状の空間には、断熱材80が介装されている。この断熱材80は、ガラス繊維やシリカ繊維、アルミナ繊維、ロックウール等の無機材料からなることが好ましく、例えばグラスウールやセラミックファイバーといった断熱材料が用いられる。なお、断熱材80は、外管20の両端部を除く一端部から他端部まで、第2排気管12と外管20との間に介装されている。
例えば、断熱材80が各分割部材21,22の内側に敷き詰められた後に、これらの分割部材21,22が第2排気管12の外側に離隔して組み付けられることで、第2排気管12と外管20との間に断熱材80を介装する介装工程が実施される。
【0047】
[2−2−2.位置決めクランプの構成]
図1に示すように、外管20には、第2排気管12に対する外管20の位置決めを行なう位置決めクランプ(位置決め部材)40が設けられている。
図5に示すように、位置決めクランプ40は、第2排気管12と他方の分割部材22とに接触する内側クランプ41と、一方の分割部材21と内側クランプ41とに接触する外側クランプ42とから構成される。
【0048】
図5(a)及び(c)に示すように、内側クランプ41は、帯板が湾曲されて形成された中央部41aと、中央部41aと端部41c,41cとの間に形成された段部41b,41bとを有する。各段部41bは、各端部41cを筒状の空間の厚み及び外管20の厚み分だけ中央部41aよりも外側にシフトするように屈曲形成されている。これにより、内側クランプ41の装着時に、各端部41cは一方の分割部材21の切り欠き部21aを通って、外管20(他方の分割部材22)の外側に位置する。
なお、内側クランプ41の各端部41cを、直線形状の平板とし、断熱排気管10に組み付けた際に外管の接線に沿うように形成してもよい。
【0049】
図5(b)及び(c)に示すように、外側クランプ42は、帯板が湾曲されて形成された中央部42aと、中央部42aと各端部42c,42cとの間に形成された屈曲部41b,41bとを有する。各屈曲部42bは、各端部42cを内側クランプ41の各端部41cの厚み分だけ中央部42aよりも外側にシフトするように屈曲して形成されている。これにより、外側クランプ42の装着時に、各端部42cは内側クランプ41の端部41cの外側に位置する。
【0050】
図1のY−Y矢視断面図である
図5(c)に示すように、内側クランプ41は、中央部41aの内周面が第2排気管12の外周面に接触し、各段部41bが外管20の内側と外側とを連通し、各端部41cの内周面が他方の分割部材22の外周面の一部(上端部)と接触するように配置される。なお、各端部41cが直線形状に形成される場合には、各端部41cは、他方の分割部材22の外周面から僅かに浮いて配置される。
また、外側クランプ42は、中央部42aの内周面が一方の分割部材21の外周面に接触し、各屈曲部42bが各端部42cを外側にシフトし、各端部42cの内周面が内側クランプ41の各端部41cの外周面と接触するように配置される。
【0051】
図5(c)〜(e)に示すように、内側クランプ41及び第2排気管12は、所定の箇所が隅肉溶接されることで互いに固定される。
また、内側クランプ41及び他方の分割部材22は、所定の箇所において、内側クランプ41の側面と他方の分割部材22の外周面とが隅肉溶接されることで互いに固着される。なお、内側クランプ41の各端部41aが他方の分割部材22の外周面から浮いて配置される場合には、これらの隙間を埋めるように隅肉溶接が行なわれる。
外側クランプ42及び一方の分割部材21は、所定の箇所がスポット溶接されることで互いに固定される。また、外側クランプ42及び内側クランプ41は、所定の箇所において、外側クランプ42の側面と一方の分割部材21の外周面とが隅肉溶接されることで互いに固定される。
【0052】
このように、内側クランプ41と、第2排気管12,他方の分割部材22及び外側クランプ42とが溶着され、外側クランプ42と一方の分割部材21とが溶着されることにより、第2排気管12と外管20とが接続され、第2排気管12に対して、両分割部材21,22を有する外管20の位置決めを行なう位置決め工程が実施される。
【0053】
[2−2−3.メタルメッシュの構成]
図1のZ−Z矢視断面図である
図6に示すように、外管20の端部と第2排気管12との間には、第2排気管12に対して摺動自在に外管20に固定されたメタルメッシュ(端部部材)50が設けられる。なお、
図1のZ’−Z’矢視断面図も
図6に示すように構成されている。このため、ここでは、外管20の一端(ここでは下流側)に設けられるメタルメッシュ50に着目して説明する。
【0054】
具体的には、メタルメッシュ50は、一方の分割部材21及び他方の分割部材22と対応するように2つ(ここでは上下)設けられ、一方の分割部材21及び一方のメタルメッシュ50は、所定の箇所がスポット溶接されることで互いに固定される。同様に、他方の分割部材22及び他方のメタルメッシュ50は、所定の箇所がスポット溶接されることで互いに固定される。これらのメタルメッシュ50は、何れも第2排気管12とは固定されていない。このため、内部を流通する排気の熱により第2排気管12が伸縮すれば、外管20に固定されたメタルメッシュ50は、第2排気管12に対して摺動する。なお、一方のメタルメッシュ50の形成と、他方のメタルメッシュ50の形成とは同様である。
このようにメタルメッシュ50を設けることにより、第2排気管12と外管20の端部との間を処理する処理工程が実施される。
【0055】
メタルメッシュ50は、
図7(a)に示す直方体形状のメタルメッシュを加工することで形成される。このメタルメッシュは、ステンレス鋼等の金属繊維をメリヤス編みといった編み加工を行なって成形したものである。
【0056】
まず、直方体形状のメタルメッシュにつぶし型を押し付けるプレス加工を行ない、
図7(b)に示すように複数の凹部50aを形成する。各凹部50aは、メタルメッシュ50が取り付けられた際に、内周側で且つ外管20の端部から外側に露出しない箇所に形成される。また、各凹部50aは、外管20とスポット溶接が行なわれる箇所に対応した所定箇所に形成される。なお、凹部50aは、
図6及び
図7に示す直方体形状に限らず、少なくともメタルメッシュ50の一部がつぶされてスポット溶接が可能な薄さに形成されていればよい。
そして、凹部50aが形成されたメタルメッシュを、
図7(c)に示すように湾曲させる。このようにメタルメッシュ50は形成される。
【0057】
[3.作用・効果]
本発明の第1実施形態に係る断熱排気管は、上述のように構成される。したがって、第1実施形態に係る断熱排気管及びその製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の断熱排気管は、曲げ工程において、第2排気管12及び外管20のそれぞれが単管のパイプの曲げ加工で湾曲形状に形成されたものであり、分割工程においてパイプPを排気流通方向に沿って二つに分割して形成された分割部材21,22は、組付工程に含まれる接続工程において、接続クランプ23により互いに接続されて外管20を構成するため、第2排気管12及び外管20の曲げ加工を同時に行なうことなく、或いは、プレス金型(プレス加工)を用いることなく製造することができる。よって、断熱排気管の製造にかかるコストの上昇を抑制することができる。
【0058】
また、第2排気管12と外管20との間の筒状の空間を有し、これらの管12,20により二重管が構成されているため、第2排気管12の内部を流通する排気の温度低下を抑制することができる。延いては、排気の熱による尿素水の分解を促進し、SCR触媒34へのアンモニアの供給を良好に行なうことができる。また、CUC35等の触媒温度の低下を抑制し、排気浄化装置30の機能を確保することができる。
【0059】
また、分割工程ではパイプPが二つ割れに分割され、接続工程では二つの分割部材21,22どうしが接続され、これにより外管20が構成されるため、パイプが三つ以上に分割されて形成された分割部材どうしを接続して外管を構成するよりも、分割部材21,22どうしを接続する接続工程(接続作業)にかかる負荷を低減することができる。
【0060】
また、介装工程では第2排気管12と外管20との間の筒状の空間に断熱材80を介装する、即ち、第2排気管12と外管20との間には断熱材80が介装されるため、第2排気管12の内部を流通する排気の温度低下を高効率に抑制することができる。
【0061】
また、位置決め工程では、内側クランプ41及び外側クランプ42から構成される位置決めクランプ40により、第2排気管12に対する外管20の位置決めを行なうため、外管20の取付位置を確立することができ、排気管12に対して外管20を固定することができる。
また、処理工程では、第2排気管12と外管20の端部との間に、第2排気管12に対して摺動自在にメタルメッシュ50を外管20に固定し、第2排気管12と外管20の端部との間を処理するとともに、第2排気管12と外管20とは位置決めクランプ40でのみ固定されているため、例えば排気の熱により第2排気管12が伸縮した場合であっても、外管20の各端部では、第2排気管12と外管20とは互いに固定されていない。よって、第2排気管12と外管20との伸縮の差を許容することができる。さらに、外管20の各端部に固定されたメタルメッシュ50により、断熱材80の脱落を防止することができる。
【0062】
また、分割工程ではパイプPをレーザ切断により分割して分割部材21,22を形成するため、パイプPに加工力を及ぼすことがなく、切断領域が非常に小さい。このため、効率よくパイプPを切断することができる。さらに、分割部材21,22どうしが接続された外管20を、湾曲形状のパイプPと略同じ形状にすることができる。
【0063】
接続クランプ23の各端部23bは、直線形状の平板であり、断熱排気管10に接続クランプ23を組み付けた際に外管20の接線に沿うため、他方の分割部材22の外周面から僅かに浮いている。このため、接続クランプ23の組付時には、各端部23bと他方の分割部材22との隙間が形成される。つまり、接続クランプ23の各端部23bと他方の分割部材22との間にクリアランスが確保される。したがって、他方の分割部材22への引っ掛かり等の干渉を回避して接続クランプ23を外管20に組み付けることができる。
また、内側クランプ41の各端部41cが直線形状に形成されていれば、同様に、他方の分割部材22への引っ掛かり等の干渉を回避して組み付けることができる。
【0064】
さらに、接続クランプ23の各端部23bと他方の分割部材22とは、これらの間の隙間を埋めるように溶接金属が流れ込んで隅肉溶接されるため、接続クランプ23と他方の分割部材22との固着を確実に行なうことができる。
また、内側クランプ41の各端部41cが他方の分割部材に対して浮いている場合には、これらの隙間を埋めるように溶接金属が流れ込んで隅肉溶接されるため、同様に、内側クランプ41と他方の分割部材22との固着を確実に行なうことができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
次に、
図8及び
図9を参照して本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態にかかる断熱排気管は、適用される排気管の形状と、二本の外管を連結する点が第1実施形態と異なる。なお、ここで説明する点を除いては第1実施形態と同様の構成になっており、これらについては、同様の符号を使用し、各部の説明を省略する。なお、
図8の上下方向が車両の鉛直方向に対応している。
【0066】
図8に示すように、本実施形態の断熱排気管10’は、第3排気管13と、この排気管13の外側に離隔して設けられた二本の外管20A,20Bとを有する。これらの外管20A,20Bは、後述する連結クランプ60により連結されており、一端側の外管20A及び他端側の外管20Bの配設箇所では、これらの外管20A,20Bと第3排気管13との間に筒状の空間を有する二重管が構成されている。
【0067】
外管20A,20Bと第3排気管13との間には、断熱材80が介装されている。なお、断熱材80は、外管20Aの一端部及び外管20Bの他端部と第3排気管13との間には、メタルメッシュ50が介装されている。
第3排気管13は、第1湾曲部13a,第2湾曲部13b,第3湾曲部13c及び第4湾曲部13dとを有し、両端部にはそれぞれフランジ部13e,13fが形成されている。
【0068】
第3排気管13に形成された湾曲部13a〜13dはそれぞれ、第3排気管13に形成されるパイプが曲げ加工された部位である。
図8では、第1湾曲部13a及び第2湾曲部13bは水平面内で湾曲する形状であり、第3湾曲部13cは水平方向と鉛直方向とを連続する湾曲形状であり、第4湾曲部13dは鉛直方向と鉛直方向に対して傾斜する方向とを連続する湾曲形状である。
【0069】
第3排気管13の一端側に形成されたフランジ部13eは、第3排気管13の一端側に隣接して排気通路9を形成する部材と第3排気管13とを接続するものである。また、第3排気管13の他端側に形成されたフランジ部13fは、第3排気管13の他端側に隣接して排気通路9を形成する部材と第3排気管13とを接続するものである。
【0070】
次に、二本の外管20A,20Bの構成を説明する。
一端側の外管20Aは、曲げ加工後のパイプが二つ割れに分割されて形成された二つの分割部材21A,22Aどうしが接続クランプ23により接続されることで構成されているものである。この外管20Aには、第1湾曲部13aの湾曲形状に沿った湾曲形状が形成されている。
【0071】
同様に、他端側の外管20Bは、曲げ加工後のパイプを二つに分割して形成された二つの分割部材21B,22Bどうしが接続クランプ23により接続されることで構成されているものである。この外管20Bには、第2湾曲部13bの湾曲形状に沿った湾曲形状が形成されている。
【0072】
一端側の外管20Aを構成する一方の分割部材21Aには、両側下端(分割線に沿った箇所)の一部を切り欠いた切り欠き部21aが形成されており、第1実施形態と同様に、第3排気管13及び外管20Aには、内側クランプ41と外側クランプ42から構成される位置決めクランプ40が設けられている。つまり、位置決めクランプ40により、外管20Aは、第3排気管13に対して位置決めされ固定される。
【0073】
一端側の外管20Aの他端部と他端側の外管20Bの一端部との接続部分には、連結クランプ(連結部材)60が設けられる。この連結クランプ60は、継ぎ目Cを介して一端側の外管20Aと他端側の外管20Bとを連結するものである。
連結クランプ60は、一方の分割部材21A,21B側に設けられる第1連結クランプ61と、他方の分割部材22A,22B側に設けられる第2連結クランプ62とから構成される。なお、各連結クランプ61,62には何れも、溶接可能な金属部材材料を用いており、ここでは、耐食性を確保する観点からステンレス鋼を用いている。
【0074】
図9(a)及び(c)に示すように、第1連結クランプ61は、帯板が湾曲されて形成された中央部61aと、中央部61aと各端部61c,61cとの間に形成された屈曲部61b,61bとを有する。各屈曲部61bは、第2連結クランプ62の厚み分だけ中央部61aよりも外側にシフトするように屈曲して形成されている。
【0075】
図9(b)及び(c)に示すように、第2連結クランプ62は、帯板を半円形状に湾曲させたものである。第2連結クランプ62の内径は、一方の分割部材21A,22Aの外径と略等しく形成され、また、第2連結クランプ62の内周は、外管20A,20Bの外周(他方の分割部材22A,22Bの外周)と略同じ長さ或いは僅かに長く形成されている。
【0076】
図8の継ぎ目Cに沿ったW−W矢視断面図である
図9(c)に示すように、第1連結クランプ61の中央部61aの内周面は、一端側の外管20Aを構成する一方の分割部材21Aの外周面と接触するとともに、図示しないが他端側の外管20Bを構成する一方の分割部材21Bの外周面とも接触する。また、第1連結クランプ61の各端部61cの内周面は、第2連結クランプ62の一部(上端部)の外周面と接触するように設けられる。
第2連結クランプ62の内周面は、一端側の外管20Aを構成する他方の分割部材22Aと接触するとともに、図示しないが他端側の外管20Bを構成する他方の分割部材22Bと接触する。
【0077】
図9(c)に示すように、第1連結クランプ61と一端側の外管20Aを構成する一方の分割部材21Aとは、所定の箇所(破線で示す)で隅肉溶接されることで互いに固定される。同様に、第1連結クランプ61と他端側の外管20Bを構成する一方の分割部材21B(図示略)とは、所定の箇所で隅肉溶接されることで互いに固定される。これらの隅肉溶接により、両分割部材21A,21Bが第1連結クランプ61を介して連結される。
第1クランプ61の各端部61cと第2クランプ62の各端部の外周面とが溶着される。つまり、第1連結クランプ61と第2連結クランプ62とは、所定の箇所(実線で示す)で隅肉溶接されることで互いに固定される。
【0078】
また、第2連結クランプ62と一端側の外管20Aを構成する他方の分割部材22Aとは、所定の箇所(破線で示す)で隅肉溶接されることで互いに固定される。同様に、第2連結クランプ62と他端側の外管20Bを構成する他方の分割部材22B(図示略)とは、所定の箇所で隅肉溶接されることで互いに固定される。これらの隅肉溶接により、両分割部材22A,22Bが第2連結クランプ62を介して連結される。
【0079】
このように、一方の分割部材21A,21Bが連結され、他方の分割部材22A,22Bが連結され、これらの分割部材21A,21B,22A,22Bを連結する第1連結クランプ61と第2連結クランプ62とが互いに溶着され固定されることにより、外管20Aと外管20Bとを連結する連結工程が実施される。
なお、外管20Bの他端側に二点鎖線で示すように、第1連結クランプ61と第2連結クランプ62とから構成される連結クランプ60をさらに設け、外管20Bにもう一本の外管を接続してもよい。
その他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0080】
本発明の第2実施形態に係る断熱排気管は、上述のように構成され、上述の方法で製造されるため、第1実施形態で上述の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
外管20A,20Bは第3排気管13よりも径が大きいため曲げ加工が困難であり、曲げ加工時にパイプを掴むための直線部分を、第3排気管13のそれよりも長く必要とする場合がある。例えば、排気管の径のパイプでは連続曲げ加工が可能な湾曲形状であっても、排気管の径よりも大きい外管の径のパイプを連続曲げ加工することが困難な場合がある。このような場合には、各外管20A,20Bを湾曲部ごとに形成して、例えばパイプを掴むための直線部分を切断し、各外管20A,20Bを連結することにより、二重管構造の断熱排気管を構成することができる。すなわち、本発明の断熱排気管は、二本の外管20A,20Bを連結クランプ60により連結する連結工程を有するため、外管の径のパイプを連続曲げ加工することが困難な場合であっても、二重管構造の断熱排気管を製造することができる。
【0081】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態に示す断熱排気管の湾曲部の形状や湾曲部の数は例示であり、本発明の断熱排気管は、種々の湾曲形状や湾曲部の数のものに適用することができる。
上述の第1実施形態では、上流部排気管に断熱排気管が適用されるものに着目して説明したが、もちろん下流部排気管にも断熱排気管を適用することができる。
ただし、下流部排気管10Bはなくてもよい。例えば、上流部排気浄化装置と下流部排気浄化装置とが一体に形成され、下流部排気管10Bが形成されない車両に、本発明の断熱排気管を適用してもよい。
【0082】
上述の第2実施形態に示す連結クランプの第1連結クランプには、位置決めクランプの外側クランプを流用してもよく、第2連結クランプには接続クランプを流用してもよい。この場合には、用いるクランプの種類を少なくすることができるため、製造コストの上昇を抑制することに寄与する。
また、本発明の断熱排気管は、上流部排気管又は下流部排気管に適用するものに限らず、下流部排気浄化装置よりも上流側の排気通路を形成する排気管に適用することができる。
【0083】
また、外管に形成されるパイプの分割にはレーザ切断を用いたが、これに限らず、刃物等による機械的切断や、ウォータージェット等による高圧流体エネルギーによる切断、ガスやアーク等の熱エネルギーによる切断を用いてもよい。
また、外管に形成されるパイプを二つ割れに分割するものを示したが、これに限らず、三つ以上に分割してもよい。
【0084】
また、排気管と外管との間に断熱材が介装されるものを説明したが、断熱材を介装せずに、排気管と外管との間に空気層が形成されてもよい。この場合、外管は、位置決めクランプ及びメタルメッシュにより、排気管の外側に離隔して配設される。
また、エンジンは、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンでもよい。この場合、ガソリンエンジンの排気流路に三元触媒やNOxトラップ等の触媒が介装されていれば、かかる触媒の温度が活性温度以下に低下することを抑制することができる。