(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る測定治具10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明する場合があるものとし、X方向を測定治具10の長手方向とし、X1側は
図1において手前側かつ右端側、X2側は
図1において奥側かつ左端側とする。またZ方向を測定治具10の上下方向とし、Z1側は上側、Z2側は下側とする。またY方向はX方向およびY方向に直交する方向とし、Y1側は奥側かつ右側、Y2側はそれとは逆の手前側かつ左側とする。
【0019】
<測定治具10の構成について>
図1に示すように、測定治具10は、全体を支持する基台20を備えていて、この基台20には、上方押さえ機構30と、本体接続用コネクタ40と、プロービングユニット50とが取り付けられている。
【0020】
上方押さえ機構30は、プロービングユニット50のテンプレート70のガイド穴71に存在する被測定物を上方側から押圧するものであるが、このときには、被測定物は下方側からプローブ80で押し上げられる状態となる。なお、上方押さえ機構30は、被測定物以外にもテンプレート70の上面を上方から押圧する。また、上方押さえ機構30は、押さえ機構に対応する。
【0021】
図1に示すように、上方押さえ機構30はアーム部材31を備え、そのアーム部材31にはスタンプ部材33が上下動可能に設けられている。アーム部材31は、上下方向(Z方向)に延伸する上下アーム部31aと、その上下アーム部31aの上端側から垂直に折れ曲がる水平アーム部31bとを備えている。なお、
図1に示す構成では、水平アーム部31bは、X方向に沿って延伸する部分と、Y方向に沿って延伸する部分とを有している。
【0022】
水平アーム部31bの延伸の先端側には、挿通孔31b1が設けられていて、この挿通孔31b1にはスタンプ部材33のロッド部331が挿通されている。また、水平アーム部31bの挿通孔31b1から近接する位置には、ストッパピン32が設けられている。ストッパピン32は、スタンプ部材33の上下方向(Z方向)の位置を規定するものであり、水平アーム部31bの上面から上方側に向かって所定の長さだけ延伸している。
【0023】
すなわち、操作ノブ333の通し穴にストッパピン32が入り込む場合には、スタンプ部材33は、その自重によって下方に移動し、プッシャー332がテンプレート70の上面および/または被測定物を押圧する。しかしながら、ストッパピン32が操作ノブ333の通し穴に入り込んでいないときには、ストッパピン32の上端は操作ノブ333の下面に当接して、スタンプ部材33が下方に移動するのを妨げる。この当接状態では、プッシャー332はテンプレート70から遠ざけられ、それらの間には十分な隙間が確保されている。
【0024】
図1に示すように、スタンプ部材33は、上述のロッド部331の他に、プッシャー332と、操作ノブ333とを備えている。プッシャー332および操作ノブ333は、いずれも挿通孔31b1よりも大径に設けられていて、スタンプ部材33が水平アーム部31bから外れないように設けられている。プッシャー332は被測定物を押圧可能とするべくロッド部331の下端側(Z2側)に取り付けられている。一方、操作ノブ333は、ユーザが把持してスタンプ部材33の上下動や回転といった操作を行う部分であり、ロッド部331の上端側(Z1側)に取り付けられている。本実施の形態では、操作ノブ333の方がプッシャー332よりも大径に設けられていて、操作ノブ333の把持性を向上させている。
【0025】
操作ノブ333には、図示を省略する通し穴が設けられている。通し穴は、上述したストッパピン32が入り込む穴であり、その穴深さは、プッシャー332がテンプレート70に当接する際にストッパピン32の上端が穴上方の底部につっかえないような十分な深さを有している。なお、操作ノブ333の上面には、通し穴の位置を示すマーキング333aが設けられていて、通し穴の回転位置を認識可能となっている。
【0026】
図1に示すように、基台20には本体接続用コネクタ40が取り付けられている。本体接続用コネクタ40は、
図1に示す構成では4つ設けられている。そして、それぞれの本体接続用コネクタ40は、特定の位置決め凹部64(後述)に突出可能な4本のプローブ80のいずれかと電気的に接続されている。本体接続用コネクタ40には、図示を省略する外部ケーブルの一端側の接続部(図示省略)が連結される。なお、外部ケーブルの他端側の接続部は、測定装置に連結される。
【0027】
なお、
図1に示すように、基台20の側面には、後述するカムシャフト112を挿通させる貫通孔21が設けられていて、この貫通孔21を介して外部に延出したカムシャフト112の先端側に、プローブ80を上下動させるための操作用ノブ120が取り付けられている。
【0028】
<プロービングユニット50について>
続いて、プロービングユニット50について説明する。
図1に示すように、プロービングユニット50は基台20に取り付けられるが、その取り付けにおいては、基台20の上面からプロービングユニット50のテンプレート70が突出する状態で取り付けられている。そのため、プロービングユニット50の上方側以外の部分は、基台20に入り込んで外部から視認できない状態となっている。
【0029】
図2は、プロービングユニット50の全体を示す斜視図である。
図2に示すように、プロービングユニット50は、フレーム部60と、テンプレート70と、プローブ80と、上下可動部90と、付勢機構100と、カム機構110(
図7参照)とを主要な構成要素としている。なお、上下可動部90、カム機構110は、移動手段に対応する。しかしながら、上下可動部90とカム機構110に対して、付勢機構100とフレーム部60のうちの少なくとも1つを加えたものが、移動手段に対応するとしても良い。なお、フレーム部60が移動手段を構成する場合、ガイドシャフト61が移動手段を構成するものとしても良く、ガイドシャフト61に支持ブロック62を加えたものが移動手段を構成するものとしても良い。
【0030】
図3は、プロービングユニット50のフレーム部60の半断面の状態を示す斜視図である。
図4は、フレーム部60の側面断面図である。
図3および
図4に示すように、フレーム部60は、ガイドシャフト61、支持ブロック62、上部固定部63を備えている。ガイドシャフト61は、支持ブロック62よりも下方側(Z2側)に延伸して支持ブロック62を支持する部材である。このガイドシャフト61は、上下可動部90を構成する第1可動板92および第2可動板93の挿通孔92a(
図8参照)および挿通孔93a(
図7参照)に挿通されている。また、ガイドシャフト61の外周側であって第1可動板92の下方には、付勢機構100が配置されている。そして、第1可動板92および第2可動板93には、付勢機構100の付勢バネ101によって支持ブロック62に向かう付勢力が与えられる。なお、付勢機構100は、付勢手段に対応する。
【0031】
図2に示すように、支持ブロック62は、その外周壁が四角形状をなすような筒型形状に設けられている。この支持ブロック62には、下側の端面62fから上方側(Z1側)に向かい、ガイドシャフト61を挿通させてガイドシャフト61を受け止めるための差込穴62aが形成されている。この差込穴62aの上方側の底部ではガイドシャフト61が受け止められ、それによりガイドシャフト61の途中部分より下方側が外部に露出する。また、支持ブロック62には差込穴62aに連通するネジ孔62bが設けられている。そのため、ネジ孔62bにネジS1を捻じ込むと、ガイドシャフト61が差込穴62aから抜けないように固定することが可能となっている。
【0032】
なお、ガイドシャフト61には、その下端側(Z2側)からネジS2が捻じ込まれる。それによりガイドシャフト61の直径よりも大きな直径のネジS2の頭部S2aにより、後述するバネ受金具102を介して付勢バネ101を受け止めることが可能となっている。
【0033】
また、支持ブロック62には、その上縁側から下方側(Z2側)に向かってネジ孔62cが形成されていて、このネジ孔62cに捻じ込まれるネジS3を介して上部固定部63が固定される。
図3に示すように、上部固定部63は2枚の上部固定板631,632が重ねられて構成されている。それぞれの上部固定板631,632の中央部分には、下方側から上方に向かうように繰り抜き凹部631a,632aが設けられていて、その繰り抜き凹部631a,632aの存在により、上部固定板631,632の中央部分には薄肉部631b,632bが存在している。このような薄肉部631b,632bを設けることにより、上部固定板631,632には小径の貫通孔631d,632dを、たとえばドリル等を用いて形成し易くなっている。
【0034】
なお、上部固定板632は、位置決め部材に対応するが、上部固定部63の全体が位置決め部材に対応するものとしても良い。
【0035】
また、上方側(Z1側)に位置する上部固定板631,632の上面の中央部分には、嵌合凹部632cが設けられている。嵌合凹部632cは、テンプレート70を嵌め込むための凹部であり、テンプレート70の嵌合に対応した大きさを有している。
【0036】
図2に示すように、嵌合凹部632cには、
図5に示すようなテンプレート70が取り付けられる。なお、
図5は、テンプレートの構成を示す斜視図である。テンプレート70は、上部固定板631,632よりもはるかに薄い板状部材であるが、そのテンプレート70には、ガイド穴71が設けられている。ガイド穴71はテンプレート70を打ち抜いて形成される四角形状の穴であり、被測定物の大きさに対応した大きさを有している。
【0037】
図6は、テンプレート70が嵌合凹部632cに取り付けられた状態における、ガイド穴71付近の構成の半断面を拡大して示す部分的な斜視図である。
図6に示すように、テンプレート70が嵌合凹部632cに取り付けられることで、ガイド穴71の下方側は嵌合凹部632cの底部によって塞がれる。以下の説明では、ガイド穴71と、そのガイド穴71の下方側に位置する嵌合凹部632cの底部とから構成される凹形状の部分を、位置決め凹部64と称呼する場合がある。この位置決め凹部64は、位置決め部に対応する。
【0038】
図2および
図5に示すように、ガイド穴71は、テンプレート70に複数(
図2および
図5では4つ)設けられている。しかも、全てのガイド穴71が、プッシャー332によって覆われる位置に設けられている。なお、本実施の形態では、テンプレート70のうち最も手前側(Y2側)に位置するガイド穴71が最も小さなサイズの被測定物に対応した大きさとなっていて、その手前側のガイド穴71から奥側(Y1側)に向かうにつれて、ガイド穴71は徐々に大きなサイズの被測定物に対応した大きさに設けられている。
【0039】
図3、
図4および
図6に示すように、位置決め凹部64には、上部固定板632を貫通する貫通孔632dが連通している(
図4。なお、上部固定板631にも同様の貫通孔631dが設けられている。貫通孔631d,632dは、上部固定板631,632を上下方向(Z方向)に沿って貫く孔部分であり、その貫通孔632dにはプローブ80が挿通される。なお、本実施の形態では、被測定物を4端子法にて測定するために、それぞれの位置決め凹部64には4つの貫通孔632dが設けられていて、4つのプローブ80が貫通孔632dから位置決め凹部64へと出没可能となっている。
【0040】
なお、本実施の形態では、テンプレート70によって4つの位置決め凹部64が構成されるので、4つの位置決め凹部64に対応させるべく、4つのプローブ80を1組とするものが、4組設けられている。同じく4つの位置決め凹部64に対応させるべく、4つの貫通孔631dを1組とするものが4組設けられていると共に、4つの貫通孔632dを1組とするものが4組設けられている。
【0041】
本実施の形態では、それぞれの位置決め凹部64に連通する4つの貫通孔632dは、次のような並びとなっている。すなわち、貫通孔632dはY方向に沿って2つ並び、そのY方向に沿う並びがX方向で所定間隔を隔てて2組存在し、それによって貫通孔632dが合計4つとなっている。また、4つの貫通孔632dは、位置決め凹部64のコーナーに比較的近い側に存在する状態となっている。なお、上部固定板631に形成されている貫通孔631dも、貫通孔632dと同様に設けられている。
【0042】
テンプレート70の説明に戻る。
図5に示すように、テンプレート70のコーナー部分には、固定用孔72が設けられている。固定用孔72は、テンプレート70を嵌合凹部632cに固定する固定用のネジS4を挿通させるための孔部分である。そのため、嵌合凹部632cには、固定用のネジS4を捻じ込むためのネジ孔(図示省略)が形成されている。
【0043】
図7は、プロービングユニット50から支持ブロック62を取り除いた状態を上方側から見た状態を示す斜視図である。
図8は、プロービングユニット50から支持ブロック62を取り除いた状態を下方側から見た状態を示す斜視図である。
【0044】
図7および
図8に示すように、被測定物に電気信号を供給または検出するためのプローブ80は、針状に設けられていて、当該プローブ80は上下可動部90から上方側(Z1側)に向かって延伸している。そして、上下可動部90の上下動に伴って、プローブ80も一体的に上下動する。このプローブ80は、その上方側が薄肉部631b,632bの貫通孔631d,632dを通過し、さらには上下可動部90の高さ次第ではプローブ80の上端側が位置決め凹部64に突出する突出状態となる。ただし、上下可動部90が下方に移行する場合には、プローブ80の上端側は位置決め凹部64には突出しない退避状態となる。
【0045】
なお、プローブ80の下端側は、上下可動部90の基底部材91の接続用凹部91b(
図8参照)から下方に突出して、導電部材(図示省略)等を介して本体接続用コネクタ40に電気的に接続するように設けられている。
【0046】
プローブ80は、接触子に対応し、このプローブ80は、バネ性を有する金属を材質として形成されている。バネ性を有する金属としては、たとえばSUP材等のバネ鋼、SUSバネ材、リン青銅、ベリリウム銅等が挙げられる。ただし、プローブ80には座屈方向での荷重が付加されるため、座屈の際のバネ特性に優れる材質であれば、上述の材質には限られない。
【0047】
本実施の形態のプローブ80は、直線状から若干湾曲するように形成されている。すなわち、プローブ80に座屈方向の荷重が付加されることに鑑みて、プローブ80の座屈変形が安定的となるように、プローブ80は、直線状から若干湾曲する湾曲部分を有するように形成されている。ただし、プローブ80は貫通孔631d,632dに挿通させられるため、湾曲度合が大きくなると、プローブ80の貫通孔631d,632dにおける貫通および移動に支障が生じる。そのため、プローブ80は、最大に湾曲している部分が、プローブ80の直径の5倍程度ずれる位置の範囲内となっていることが好ましい。
【0048】
また、プローブ80は、その両端側(上端側と下端側)を除いて、絶縁コーティングされている。すなわち、プローブ80の上端側と下端側とは、絶縁コーティングが施されない導電部となっていて、それ以外の部分は外周側が絶縁コーティングによる絶縁被膜で覆われた状態となっている。
【0049】
上下可動部90は、プローブ80を上下方向(Z方向)に移動可能とするための部分である。この上下可動部90は、基底部材91と、第1可動板92と、第2可動板93とを有している。なお、これら基底部材91、第1可動板92、第2可動板93は、一体的に設けられていても良い。
【0050】
図2、
図7および
図8に示すように、基底部材91は、四隅の部分を切り落とした略十字形状に設けられていて、その切り落とした部分(切り落とし部91a)に付勢バネ101およびガイドシャフト61が配置される。このため、基底部材91と付勢バネ101とは干渉しない配置となっている。なお、第1可動板92および第2可動板93には、挿通孔92a,93aが設けられていて、その挿通孔92a,93aにガイドシャフト61が挿通される。このとき、第1可動板92および第2可動板93は、ガイドシャフト61に対して移動自在な状態となっている。
【0051】
図8に示すように、基底部材91には、その下面側から上方に向かうように窪んでいる接続用凹部91bが設けられていて、この接続用凹部91bの上面側から下方に向かうように、プローブ80の下端側が突出している。そして、プローブ80には、導電部材(図示省略)等を介して本体接続用コネクタ40に電気的に接続するように設けられている。
【0052】
基底部材91には、ネジ等の固定手段(図示省略)を介して、第1可動板92および第2可動板93が固定されている。それにより、基底部材91、第1可動板92および第2可動板93が一体的に上下動するように設けられている。第1可動板92および第2可動板93には、上述した挿通孔92a,93a以外に、上述した薄肉部631b,632bと同様の薄肉部(図示省略)をそれぞれ有している。
【0053】
図2、
図7および
図8に示すように、ガイドシャフト61には、付勢機構100が取り付けられている。付勢機構100は、付勢バネ101と、バネ受金具102とを備えている。付勢バネ101は、一対のバネ受金具102を介してガイドシャフト61に取り付けられている。バネ受金具102はリング状に設けられていて、その中心側のリング孔にはガイドシャフト61が挿通される。この挿通では、バネ受金具102がガイドシャフト61に対して移動自在な状態となっている。また、ガイドシャフト61の外周側には付勢バネ101が配置されているが、この付勢バネ101は一対のバネ受金具102の間に配置されている。この付勢バネ101により、第2可動板93(上下可動部90)には上方側(Z1側)に向かう付勢力が常時与えられる。
【0054】
第1可動板92は、基底部材91の上面に重ねられて配置されている。この第1可動板92の上面には第2可動板93が重ねられて配置されている。第2可動板93の上面93bには、カム機構110のカム部材111が摺動可能となっている。カム部材111は、カムシャフト112に取り付けられていて、カムシャフト112の回転に従ってカム部材111が回転する。このカム部材111の外周面には、円周部111a以外に平坦部111bが設けられていて、その平坦部111bは円周部111aよりもカムシャフト112の回転中心からの半径が小さく設けられている。なお、カム部材111は円周部111aと平坦部111bとを有することによって、側面視した形状が略D字形を呈している。
【0055】
なお、カム部材111と、第2可動板93の上面93bと、支持ブロック62の位置関係は、次のように設定されている。すなわち、カム部材111の平坦部111bが第2可動板93の上面93bとが平行となるように対向する状態となるとき、付勢バネ101によって上下可動部90は上方に移動させられるが、その移動により、第2可動板93の上面93bの外周縁部は、支持ブロック62の下端側の端面62fに衝突する。ただし、支持ブロック62の端面62fに上面93bの外周縁部が衝突しても、第2可動板93の上面93bは、平坦部111bとは直接接触せず、若干の隙間を有する状態で対向する。
【0056】
ここで、支持ブロック62の端面62fに上面93bの外周縁部が衝突している状態のとき、プローブ80の上端側は、
図9(A)に示すように、貫通孔632dを通過して位置決め凹部64の内部へと突出する。このプローブ80上端側の突出状態では、当該プローブ80の突出量は、テンプレート70の上面よりも突出しない状態となっている。なお、支持ブロック62(端面62f)は、プローブ80が突出する向きへの上下可動部90の移動を規制する規制手段に対応する。
【0057】
そして、カム部材111がカムシャフト112によって所定の角度回転させられると、カム部材111の円周部111aが第2可動板93の上面93bに接触する。その接触後、さらにカム部材111が同じ向きに回転させられると、その回転が進行するにつれ、上下可動部90は下方に向かうように押し下げられる。なお、この押し下げは、円周部111aがカムシャフト112の回転中心の下方に位置するまで継続され、それ以降はカム部材111を回転させても、上下可動部90はしばらくは押し下げられない状態となる。円周部111aが上面93bに接触する場合、カムシャフト112の回転中心から円周部111bまでの径はしばらく一定となるためである。
【0058】
なお、上述のように、上下可動部90が押し下げられて、円筒部がカムシャフト112の回転中心の下方に位置する場合(押し下げ状態の場合)には、プローブ80の上端側は、
図9(B)に示すように、位置決め凹部64の内部へは突出せずに、貫通孔632dの内部へと退避させられた状態(退避状態)となっている。そのため、押し下げ状態では、プローブ80は被測定物とは接触せず、被測定物の測定が不能な状態となっている。
【0059】
カムシャフト112についての説明に戻る。カムシャフト112は、その一端側(X2側)の端部の小径部112aが支持ブロック62の軸受孔62dで軸支され、その一端側から他端側(X1側)に進むと、支持ブロック62の抜き孔62eを通って支持ブロック62の外部に到達し、さらに他端側(X1側)に進行すると、基台20の側面の貫通孔21を介して外部へ到達する。なお、カムシャフト112の他端側(X1側)には、略D型の断面の係合部112bが設けられていて、その係合部112bが操作用ノブ120の略D型の穴に嵌まり込んでいる。
【0060】
<動作について>
以上のような構成を有する測定治具10の動作について、以下に説明する。
【0061】
まず、ユーザは、プローブ80が、
図9(B)に示すような退避状態となっていることを確認する。退避状態となっていない状態で、被測定物を位置決め凹部64にセットし、さらにプッシャー332を落下させると、プローブ80や被測定物が破損してしまう虞があるためである。プローブ80が退避状態となっていない場合には、ユーザは操作用ノブ120を把持し、操作用ノブ120の回転を介してプローブ80が退避位置となるまでカム部材111を回転させる。なお、退避状態では、カム部材111の円周部111aがテンプレート70に当接して、プローブ80が貫通孔632dから突出しない状態となっている。
【0062】
また、ユーザは、操作ノブ333の下面にストッパピン32が当接して、プッシャー332が上方へ退避させられている状態であることを確認する。この確認は、通し穴の位置を示すマーキング333aを視認することによって行うことが可能である。なお、プッシャー332が上方へ退避させられている状態では、プッシャー332とテンプレート70との間には十分な隙間が確保され、被測定物の位置決め凹部64へのセットが容易となる。
【0063】
次に、ユーザは、テンプレート70の位置決め凹部64に、被測定物をセットする。このとき、被測定物は、複数の位置決め凹部64の中から適した大きさの位置決め凹部64にセットされる。それにより、被測定物の向きが定まる。
【0064】
その後に、ユーザは、操作ノブ333を回転させて通し穴にストッパピン32を挿通させて、プッシャー332を下方に移動させる。そして、プッシャー332が位置決め凹部64の上方に位置する状態とする。それにより、被測定物の上方への移動が規制される。このとき、被測定物はプッシャー332に押される状態であっても良いし、プッシャー332に押されずに所定の隙間を有する状態であっても良い。
【0065】
続いて、ユーザは操作用ノブ120を把持して当該操作用ノブ120を回転させる。すると、その回転によってカムシャフト112を介してカム部材111が回転させられる。このとき、カム部材111の円周部111aがテンプレート70の上面と当接する状態から、カム部材111の平坦部111bがテンプレート70の上面と対向する状態へと移行するにつれて、上下可動部90は付勢バネ101の付勢力によって上方へと押し上げられる。そして、プローブ80の上端側は、被測定物の電極へと当接する。
【0066】
なお、被測定物の電極にプローブ80の上端側が当接した後に、さらに同じ向きに操作用ノブ120を回転させると、プローブ80は更に突出して被測定物を持ち上げるが、プローブ80の突出量は、プッシャー332との間で被測定物を挟み込む位置で最大となる。ただし、その後もさらにプローブ80が突出する向きに操作用ノブ120を回転させると、プローブ80が座屈変形する。この座屈変形では、プローブ80が直線状から若干湾曲するように形成されていることから、安定的な座屈変形が可能となっている。
【0067】
<効果>
以上のような構成の測定治具10によると、プロービングユニット50は、位置決め凹部64を備えている。このため、被測定物の位置決めを容易に行うことが可能となる。特に、微小なサイズのチップ部品等のような被測定物は、被測定物をセットする位置や、被測定物の角度を正確にコントロールして、その被測定物の電極に、プローブ80等のような接触子を適切に接触させることが困難となっている。しかしながら、上述のような位置決め凹部64を用いて被測定物をセットすれば、被測定物をセットする位置や、被測定物がセットされるべき角度を正確にコントロールすることが可能となる。その結果、被測定物の電極に対して、本来接触させるべきプローブ80等のような接触子を適切に接触させることが可能となる。なお、被測定物の幅や高さといった寸法は、規格によって定められている。そのため、被測定物の厚さが異なるものであっても、被測定物の位置決めを正確に行うことができ、位置決め凹部64を利用してプロービングが実現可能となる。
【0068】
また、本実施の形態では、測定治具10は、上下可動部90とカム機構110とを備えることにより、プローブ80の上端側を位置決め凹部64に対して突出させる突出状態と、プローブ80を位置決め凹部64から退避させる退避状態とに、プローブ80を移動させることを可能としている。
【0069】
このため、退避状態とした後に被測定物を位置決め凹部64にセットし、その後にプローブ80を移動させて位置決め凹部64へプローブ80が突出する状態とすれば、被測定物が安定した姿勢となる状態で被測定物へプローブ80を接触させることが可能となる。また、プローブ80は、その突出方向への移動が自在となっている。そのため、プローブ80は、突出方向での移動が自在となるような長さを有しており、その長さに対応して生じるプローブ80の撓み(座屈等)を利用すれば、接触させるべきプローブ80の全てを、被測定物の電極へ確実に接触させることが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態では、被測定物の位置決めは、テンプレート70のガイド穴71と、上部固定部63(上部固定板632)とによって、被測定物の位置決めを行う位置決め凹部64が構成される。このため、この位置決め凹部64を利用して被測定物をセットすれば、被測定物の位置決めを確実に行うことが可能となる。また、上部固定部63(上部固定板632)に対して、ガイド穴71が形成されているテンプレート70を取り付けるだけで位置決め凹部64が形成されるので、位置決め凹部64を容易に形成することが可能となる。しかも、他のサイズのガイド穴71が形成されているテンプレート70に取り替えることにより、様々なサイズの被測定物の測定を行うことが可能となる。また、テンプレート70に位置決め凹部64を寸法を変えて複数設けてあるので、異なるサイズの被測定物もその大きさに合わせて適宜の位置にセットすることができる。
【0071】
さらに、本実施の形態では、カム機構110を用いて位置決め凹部64へプローブ80を突出させる場合のプローブ80の最大突出量は、テンプレート70の上面から突出させない程度に設けられている。このため、プローブ80を突出させた状態で、プッシャー332等のような重量物が誤って落下しても、その重量物は、テンプレート70の上面で受け止められる。そのため、重量物の落下によってプローブ80に衝撃が加わり、プローブ80が折れ曲がるような破損が生じるのを防止可能となる。
【0072】
また、本実施の形態では、テンプレート70の上方側には、上方押さえ機構30が設けられている。このため、上方押さえ機構30のプッシャー332を位置決め凹部64を塞ぐように位置させることで、位置決め凹部64にセットされた被測定物が当該位置決め凹部64から外れるのを防止可能となる。また、位置決め凹部64にセットされた被測定物を、プッシャー332と上部固定板632との間で挟持可能となる。そして、かかる挟持状態で、プローブ80の上端を位置決め凹部64に突出させる向きに移動させれば、一層確実に被測定物の電極にプローブ80の上端を接触させることが可能となる。
【0073】
また、この場合には、被測定物の上方がプッシャー332で定められるため、プローブ80を位置決め凹部64へ突出させる場合に、当該プローブ80の先端の位置が定まり、確実性の高い接触を実現可能となる。さらに、プッシャー332を押し付ける方式を採用することにより、被測定物の厚みの違いを吸収して一定の荷重を被測定物に与えることが可能となり、良好なプロービングを実現可能となる。
【0074】
さらに、本実施の形態で用いられるプローブ80は、座屈変形により被測定物への押し付けの推力を得る構成のため、プローブ80の直径にある程度(プラスα)の寸法を加えた間隔となるような短い間隔で、プローブ80同士を配置することが可能となる。そのため、たとえば0402といった非常に小さな寸法の被測定物でも4端子法にて電気的特性を測定することが可能となる。また、プローブ80には、当該プローブ80の延伸方向の荷重が付与された際に変形を容易とするための湾曲部分が設けられている。このため、被測定物の電極にプローブ80を接触させる場合に、プローブ80に安定的な座屈変形を生じさせることが可能となる。すなわち、プローブ80の変形の際の挙動を安定化させることが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態では、プロービングユニット50は、上下可動部90と、カム機構110とを備えている。このため、カム機構110のカム部材111を回転させるだけで、上下可動部90を上下動させることが可能となり、プローブ80を位置決め凹部64に対して容易に出没させることが可能となる。また、カム機構110を用いてプローブ80を出没させる方式のため、プローブ80が上下動する範囲が定まっており、誤操作等によってプローブ80が予期せず非常に大きく突出するのを防止可能となる。それにより、予期せぬプローブ80の破損を防止可能となる。
【0076】
さらに、本実施の形態では、支持ブロック62の端面62fに第2可動板93の上面93bの外周縁部が衝突することで、プローブ80の最大突出量を確実に定めることが可能となっている。このようにして、プローブ80の突出上限を規制することにより、プローブ80の上端側が、テンプレート70の上面よりも突出してしまうのを防ぐことが可能となる。
【0077】
加えて、上述のように、付勢バネ101の付勢力によって支持ブロック62の端面62fに第2可動板93の上面93bの外周縁部が衝突し、プローブ80の突出上限が規制されている状態のとき、カム部材111の平坦部111bは、第2可動板93の上面93bとの間で隙間を有している。
【0078】
このため、わずかなカム部材111の回動によってプローブ80の突出量が突出上限付近で変動するのを防止することが可能となる。すなわち、カム部材111が若干回転しても、プローブ80の突出上限を一定に維持することが可能となり、プローブ80の突出量を安定化させることが可能となる。また、上述のような隙間の存在により、カム部材111やカムシャフト112等のガタの影響によって、プローブ80の突出量が変動するのを防止可能となる。
【0079】
また、本実施の形態では、上部固定板632には、テンプレート70を嵌め込むための嵌合凹部632cが設けられている。このため、テンプレート70を取り付ける際の位置決め固定が容易となる。加えて、上部固定板631,632の下面側には繰り抜き凹部631a,632aが設けられ、その繰り抜き凹部631a,632aの上方には、薄肉部631b,632bが存在し、その薄肉部631b,632bには貫通孔631d,632dが設けられている。このため、上部固定板631,632においては、小径の貫通孔631d,632dの孔長さを短くすることが可能となり、たとえばドリル等を用いての貫通孔631d,632dの形成が容易となる。
【0080】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0081】
上述の実施の形態においては、被測定物の位置決めを行う位置決め部の一例として、テンプレート70と上部固定板632の底部とで構成される位置決め凹部64について説明している。しかしながら、位置決め部は位置決め凹部64に限られるものではない。たとえば、被測定物の位置決めを行うための凸状部分を上部固定板632に形成し、その凸状部分によって被測定物の位置決めを行うようにしても良い。
【0082】
また、テンプレート70と上部固定板632の底部とで構成される位置決め凹部64以外にも、たとえば上部固定板632のようなプレート部材を窪ませるように加工することで、被測定物の位置決めのための位置決め凹部を構成するようにしても良い。
【0083】
また、上述の各実施の形態では、接触子の一例として、プローブ80について説明している。しかしながら、接触子はプローブ80には限られない。たとえば、導電性を有する薄板状のプレート部材を接触子として用いるようにしても良い。この場合、貫通孔631d,632dは、円孔形状ではなく、スリット状の孔形状として、薄板状のプレート部材を位置決め凹部64に出没させるように構成することが可能である。
【0084】
また、上述の実施の形態では、移動手段を構成するものとして、カム機構110が用いられている。しかしながら、移動手段を構成するものとして、カム機構110以外の物を用いるようにしても良い。そのようなものとしては、たとえば、ギヤやボールネジを用いてプローブ80を上下動させる機構としても良い。
【0085】
また、上述の実施の形態では、カム機構110においては、上下可動部90の上方にカム部材111が位置して、プローブ80を上下動させる構成を採用している。しかしながら、上下可動部90の下方側にカム部材111を配置して、プローブ80を上下動させる構成を採用しても良い。この場合には、
図7および
図8に示す構成よりも、上下可動部90を上方側に位置させる構成としても良い。このように構成すると、プローブ80の長さを短くすることができる。特にプローブ80の小径化を進展させる場合には、その小径化に対応してプローブ80の長さも短くなる。この場合、カム部材111を上下可動部90の下方側に位置させる配置として、プローブ80を短くすることに対応させるようにしても良い。
【0086】
また、上述の実施の形態では、それぞれの位置決め凹部64に4つのプローブ80を突出させて、四端子法にて被測定物の電気的特性の測定を行うようにしている。しかしながら、被測定物の電気的特性の測定は四端子法には限られない。たとえば、位置決め凹部64に2つのプローブ80を突出させて、二端子法にて被測定物の電気的特性の測定を行うようにしても良い。
【0087】
また、上述の実施の形態では、貫通孔632dはY方向に沿って2つ並び、そのY方向に沿う並びがX方向で所定間隔を隔てて2組存在し、それによって貫通孔632dが合計4つとなっている。しかしながら、貫通孔632dの並びは、このような配置には限定されず、被測定物の電極の位置や形状に応じて、適宜の位置に配置するようにしても良い。また、この貫通孔632dの位置に合わせて、貫通孔631dの位置や、プローブ80の位置も変えるようにしても良い。