特許第6071326号(P6071326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三笠産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6071326-冷却水吸込防止キャップ 図000002
  • 特許6071326-冷却水吸込防止キャップ 図000003
  • 特許6071326-冷却水吸込防止キャップ 図000004
  • 特許6071326-冷却水吸込防止キャップ 図000005
  • 特許6071326-冷却水吸込防止キャップ 図000006
  • 特許6071326-冷却水吸込防止キャップ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071326
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】冷却水吸込防止キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   B65D47/08 100
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-183192(P2012-183192)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-40259(P2014-40259A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】南 健太
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025424(JP,A)
【文献】 特開2003−341703(JP,A)
【文献】 特開平08−053152(JP,A)
【文献】 特開平11−035061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体と該キャップ本体にヒンジ結合された上蓋とを備え、
該キャップ本体は、頂壁と、該頂壁の下面に垂設される内筒と、該頂壁の外周縁部と連続するシール筒と、該シール筒の下端部と連続する外筒と、該シール筒の上端部に立設された係合筒と、を有し、該内筒と該シール筒との間に嵌入溝が形成されており、
該係合筒は、外周面に係合凹部が形成されると共に内周面に切欠部が形成され、
該上蓋は、天壁と、該天壁の外周縁部と連続するスカート壁と、該上蓋が閉蓋された際に該切欠部と対向する様に該天壁の内面に立設された中足(但し、打栓時に頂壁と当接するものを除く)と、を有しており、
該上蓋が閉蓋された際に、該スカート壁が該係合筒及び該シール筒に圧接され、
該シール筒と該スカート壁との圧接部は、該嵌入溝の上端よりも高い位置であって、該係合凹部の下端よりも低い位置に設けられている冷却水吸込防止キャップであって、
該中足は、該上蓋は閉蓋され且つ該冷却水吸込防止キャップが容器本体の口部に打栓された際に、該係合筒に打栓力を伝えると共に該切欠部に圧接されることによって該係合筒に水平方向の力を伝え、それによって、該係合筒の倒れ込みを防止するためのものであることを特徴とする冷却水吸込防止キャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体のシール筒と前記上蓋のスカート壁との圧接部は、前記係合凹部の下端と前記嵌入溝の上端の中点よりも低い位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷却水吸込防止キャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体のシール筒には、環状凸起が径方向外方に向かって突出して形成され、
前記上蓋が閉蓋された際に、該上蓋のスカート壁は、該環状凸起と圧接されることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却水吸込防止キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水吸込防止キャップに関し、より詳細には、キャップ本体にシール筒が形成された冷却水吸込防止キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製キャップが装着された容器(以下、キャップ付き容器と謂う)は、衛生管理等の観点から、容器本体に内容物が比較的高温の状態で充填され、その後、上蓋が被着されたキャップ本体を容器本体に打栓装着されるものがある。
【0003】
この様なキャップ付き容器は、キャップが打栓された後に、外部から冷却水(シャワー水)を浴びせ、内容物を冷ます必要があるが、この際に上蓋内の圧力が急激に低下して負圧となり、冷却水が上蓋内に吸い込まれる可能性があった。冷却水が上蓋内に吸い込まれると、衛生管理上問題となるばかりでなく、需要者が「内容物が漏れている」と誤認する要因となる。
【0004】
従来、この冷却水の上蓋内への吸い込みを防止するため、閉蓋の際に、上蓋のスカート壁をキャップ本体の係合筒とキャップ本体の外面に形成された下係止部で係合させた冷却水吸込防止キャップがある(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−67647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の冷却水吸込防止キャップにおいても、冷却水の上蓋内への吸い込みを十分に防止することができる。しかしながら、当該キャップが打栓装着される容器本体は大量生産されるため、中にはその口部が成形不良のもの、例えば、通常、略正円形に成型(接合)されるはずの容器口部が径方向にずれた状態で成型(接合)されたものが混在する可能性がある。この様な口部が成形不良の容器に当該キャップが打栓装着された場合、打栓による当該キャップの変形が当初の予測を超えるものとなり、下係合部とスカート壁の当接がバラついてしまい、設計通りに下係止部での係合がされず、冷却水の上蓋内への吸い込まれる可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、冷却水の上蓋内への吸い込みをより改善した冷却水吸込防止キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キャップ本体と該キャップ本体にヒンジ結合された上蓋とを備え、該キャップ本体は、頂壁と、該頂壁の下面に垂設される内筒と、該頂壁の外周縁部と連続するシール筒と、該シール筒の下端部と連続する外筒と、該シール筒の上端部に立設された係合筒と、を有し、該内筒と該シール筒との間に嵌入溝が形成されており、該係合筒は、外周面に係合凹部が形成されると共に内周面に切欠部が形成され、該上蓋は、天壁と、該天壁の外周縁部と連続するスカート壁と、該上蓋が閉蓋された際に該切欠部と対向する様に該天壁の内面に立設された中足(但し、打栓時に頂壁と当接するものを除く)と、を有しており、該上蓋が閉蓋された際に、該スカート壁が該係合筒及び該シール筒に圧接され、該シール筒と該スカート壁との圧接部は、該嵌入溝の上端よりも高い位置であって、該係合凹部の下端よりも低い位置に設けられている冷却水吸込防止キャップであって、該中足は、該上蓋は閉蓋され且つ該冷却水吸込防止キャップが容器本体の口部に打栓された際に、該係合筒に打栓力を伝えると共に該切欠部に圧接されることによって該係合筒に水平方向の力を伝え、それによって、該係合筒の倒れ込みを防止するためのものであることを特徴とする冷却水吸込防止キャップである。
【0009】
又、本発明は、前記キャップ本体のシール筒と前記上蓋のスカート壁との圧接部は、前記係合凹部の下端と前記嵌入溝の上端の中点よりも低い位置に設けられていることを特徴とする冷却水吸込防止キャップである。
【0010】
、本発明は、前記キャップ本体のシール筒には、環状凸起が径方向外方に向かって突出して形成され、前記上蓋が閉蓋された際に、該上蓋のスカート壁は、該環状凸起と圧接されることを特徴とする冷却水吸込防止キャップである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、係合筒とシール筒を設けたことによって、上蓋が閉蓋された際に、上蓋のスカート壁を、キャップ本体の係合筒とシール筒との2箇所で圧接させ、そして、スカート壁とシール筒の圧接部を、容器口部が嵌入される嵌入溝の上端よりも高い位置であって、該係合筒よりも低い位置に設けることによって、当該圧接部が、キャップが容器口部に打栓される際のキャップ本体の変形の影響を受け難いものとなり、許容できるキャップ本体の変形の範囲を広げることができる。従って、キャップ本体が、打栓時に通常以上に変形したとしても、冷却水の上蓋内への吸い込みを防止することができる。
【0012】
更に、上蓋の天壁の内面に中足を立設し、上蓋が閉蓋された際に、中足をキャップ本体の係合筒に圧接することによって、係合筒の倒れ込み等のキャップ本体の変形を軽減することができるため、スカート壁とシール筒の圧接部が、キャップが容器口部に打栓される際のキャップ本体の変形の影響をより受け難いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態を示す閉蓋時における断面図である。
図2】本発明の第1実施形態のキャップ本体の側面図である。
図3図1の要部拡大図である。
図4】本発明の第2実施形態を示す開蓋時における断面図である。
図5】本発明の第2実施形態のキャップ本体の側面図である。
図6図4の要部拡大図である。
【0014】
本発明の第1実施形態を図1乃至図3に基づき説明する。先ず、本実施形態の構成について説明する。
【0015】
合成樹脂製キャップ1は、上蓋2及びキャップ本体3を備え、上蓋2とキャップ本体3はヒンジ部4によって回動可能に連結されている。
【0016】
上蓋2は、天壁5と天壁5の外周縁5aより垂下する略円筒形のスカート壁6を有する。天壁5の内面5bからはインナーリング7及び中足8が同心円上に垂下している。スカート壁6の内周面には、キャップ本体2の係合筒12に形成された係合凹部12aに係止される係止凸部6aが環状に形成されており、係止凸部6aの下方に連続する内周面には、キャップ外方に向かうテーパー面6cが形成されている。又、スカート壁6はヒンジ部3によってキャップ本体3の外筒9に連結されている。
【0017】
インナーリング7は、上蓋2が閉蓋された際に、キャップ本体3の注出筒13の内周面と当接し、容器23が再封された時に容器本体22内の内容物が上蓋2内への流出することを防止するために設けられている。又、中足8は、後述する様に、上蓋2が閉蓋された際に、キャップ本体3の係合筒12の内周面(本実施形態においては、切欠12b)を圧接する様に形成された筒状のものである。
【0018】
キャップ本体3は、頂壁10、シール筒11及び外筒9を備えている。外筒9は、シール筒11よりも径大に形成された筒壁であり、その上端部はシール筒11の下端部11bと連続している。又、外筒9の下端部の内周面には係合突起18が環状に形成されている。
【0019】
頂壁10は、外周縁部10aがシール筒11の上端部11aと連続している。その上面には、係止筒12と同心円上に略ラッパ状の注出筒13が立設されている。又、注出筒9よりも内方の頂壁10には、無端状且つ環状のスコア15により区画され、プルリング16を有する開口予定部17が形成されている。
【0020】
そして、頂壁11のスコア15よりも外方の下面には内筒14が垂設されている。内筒14は、シール筒11と共に、その間に、合成樹脂製キャップ1が容器本体22に装着された際に、容器口部21bが嵌入される嵌入溝20を形成するために設けられている。
【0021】
シール筒11は、上端部11aにシール筒11よりも僅かに径小の係合筒12が立設されていると共にその下端部11bの内面下方に嵌合突起19が形成された筒壁である。上端部11aには、上蓋2のスカート壁6の内周面を圧接するシール部が形成される。本実施形態において、該シール部は、上端角部11cがその役割を担っている。
【0022】
係合筒12は、外周面に係合凹部12aが形成されると共にその内周面には切欠12bが形成される。切欠12bは、上蓋2が閉蓋された際に、上蓋2の中足8によって圧接される位置に形成されている。尚、切欠12bの形状、大きさ等は、閉蓋時に中足8が圧接可能な範囲で適宜形成される。
【0023】
次に、本実施形態の打栓工程及び冷却工程について調味液等の食料品の容器を例として説明する。
【0024】
[打栓工程]
合成樹脂製キャップ1は、比較的高温の内容液が充填された容器本体22の口部22aに上蓋2が閉蓋された状態で打栓され、口部22aが嵌入溝20に嵌入されることで装着される。
【0025】
そして、キャップ本体3は、容器本体22の口部22aによって、略ハ字状に広げられる。これに伴い、キャップ本体3の係合筒12も内方に倒れ込もうとするが、上蓋2の中足8の圧接によって、換言すれば、中足8が突っ張りとなり、この倒れ込みは最低限に留められる。
【0026】
この際に、係合筒12に切欠12bが形成されていることが好ましい。この場合、上記打栓工程の際に、先ず、係合筒12には、中足8によって、垂直方向の力(打栓力)が伝えられる。そして、キャップ本体3の変形に伴い、中足8は、係合筒12に圧接されることによって、係合筒12に水平方向の力(反作用力)を伝える。
【0027】
その結果として、傾斜方向にそれらの合成力が生じ、中足8は、打栓時に反作用力のみが働く場合と比較してより大きな力を係合筒12に伝えることができるため、より効果的に係合筒12の倒れ込みを防止することができる。尚、中足8は、打栓時に係合筒12の切欠12bに圧接すればよく、打栓時以外は、切欠12bに当接(圧接)していなくともよい。
【0028】
[冷却工程]
その後、内容液を冷ますために、容器23(合成樹脂製キャップ1及び容器本体22)はその外部より冷却水(シャワー水)が当てられる。その際、上蓋2内の空気は急激に冷却されて収縮し、上蓋2内は負圧となる。
【0029】
合成樹脂製キャップ1においては、上蓋2は、キャップ本体3と、係合筒12の係合凹部12a及びシール筒11の上端角部11cの2箇所で圧接されており、そして、上蓋2とキャップ本体3のシール筒11との圧接部(本実施形態においては、上端角部11c)は、キャップ本体3の打栓による変形の影響を受け難い位置で且つ効果的に冷却水の吸込みを防止できる位置、つまり、嵌入溝20の上端の高さhより高い位置であって係合筒12の下端の高さhよりも低い位置(本実施形態においては、高さhの位置)に形成されているので、容器口部22aが多少成型不良であったとしても上蓋2内への冷却水の吸込みが防止される。
【0030】
尚、図面上で、上蓋2とキャップ本体3が重なりあっている箇所について、実際には、閉蓋時に上蓋2が動くため重なり合うことはない。重なりあっているラップ分において、閉蓋時に反発力が生じて圧接されることとなる。
【0031】
又、当該圧接部は、高さhと高さhの中点よりも低い位置、つまり、嵌入溝20の上端側(高さh側)に形成されていることが好ましい。この部分はシール筒11と頂壁10とが連続している部分である肩部21に該当し肉厚に設計されているため、より打栓時の変形が生じ難いからである。
【0032】
又、本実施形態では、前述の打栓工程において、中足8によって、係合筒12の内方への倒れ込みが防止されるため、キャップ本体3のシール筒11との圧接部は、よりキャップ本体3の打栓による変形の影響を受け難いものとなっており、冷却水による冷却により上蓋2内が負圧になった際に冷却水が上蓋2内に吸い込まれることが更に防止される。
【0033】
本発明の第2実施形態について、図4乃至図6に基づき説明する。第1実施例との相違は、シール筒11の上端部11a外周面に環状凸起24を形成し、上蓋2が閉蓋された際に、上蓋2が、上端角部11cの替わりに環状凸起24に圧接される様にしたものである。尚、他の構成については、第1実施例と同様であるので説明を省略する。
【0034】
環状凸起24は、上記圧接部と同様の位置に形成され、シール筒11の上端部11a外周面から突出するように形成された環状の凸部である。本実施形態では、上蓋2が閉蓋された際に、環状凸起24が係合凹部12aと共に上蓋2のスカート壁6に圧接することによって、冷却水による冷却により上蓋2内が負圧になった際に冷却水が上蓋2内に吸い込まれることを防止することができる。
【0035】
本発明を上記実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、中足8は、必須の構成ではなく、容器本体22に打栓装着の際のキャップ本体3の変形が、上蓋2が閉蓋された際のシール筒11及び係合筒12による上蓋2のスカート壁6の圧接の問題とならない範囲であれば、形成する必要がないものである。又、中足8は、打栓時以外も係合筒12の切欠12bを圧接又は当接させる様にすることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 合成樹脂製キャップ 2 上蓋 3 キャップ本体
4 ヒンジ部 5 天壁 5a 外周縁
5b 内面 6 スカート壁 6a 係止凸部
6b 下端面 6c テーパー面 7 インナーリング
8 中足 9 外筒 9a 上端面
10 頂壁 10a 外周縁部 10b 上面
10c 下面 11 シール筒 11a 上端部
11b 下端部 11c 上端角部 12 係合筒
12a 係合凹部 12b 切欠 13 注出筒
14 内筒 15 スコア 16 プルリング
17 開口予定部 18 係合突起 19 嵌合突起
20 嵌入溝 21 肩部 22 容器本体
22a 口部 23 容器 24 環状凸起
図1
図2
図3
図4
図5
図6