特許第6071339号(P6071339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071339
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】熱転写記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/36 20060101AFI20170123BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20170123BHJP
   B41J 17/04 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B41J3/36 Z
   B41J2/325 A
   B41J17/04
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-190194(P2012-190194)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-46517(P2014-46517A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】切田 浩治
(72)【発明者】
【氏名】倉田 宏
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−172016(JP,A)
【文献】 特開昭64−018672(JP,A)
【文献】 特開昭58−193169(JP,A)
【文献】 特開2004−017609(JP,A)
【文献】 特開2004−202987(JP,A)
【文献】 実開昭61−168955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/36
B41J 2/325
B41J 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテン上に重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを前記プラテンに対して押さえ付け、印字データに基づいて前記インクリボンからインクを前記用紙に転写するサーマルヘッドを有し、送られる用紙にその送り方向に順次配列された複数の印字領域部分のそれぞれに前記サーマルヘッドが印字する過程で、1つの印字領域部分に対する印字終了後に、前記用紙を、該1つの印字領域部分が位置付けられるべき所定の停止位置に達するまで空送りし、当該1つの印字領域部分が前記停止位置に位置付けられた後、前記用紙を、次の印字領域部分が前記サーマルヘッドによる印字位置に位置付けられるまで戻すようにした熱転写記録装置であって、
前記1つの印字領域部分に対する印字終了後の前記用紙の前記空送り中に、前記用紙が、サーマルヘッドを前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持すべき当該用紙の送り距離として予め定めた維持距離送られている間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるように、前記サーマルヘッドの押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、
前記サーマルヘッドの押さえ解除開始から押さえ解除完了までの押さえ解除動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ解除動作中送り距離と前記サーマルヘッドの押さえ開始から押さえ完了までの押さえ動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ動作中送り距離との和であるヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であると判定され、前記1つの印字領域部分が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記停止位置と前記印字位置との間の距離から前記ヘッド押さえ解除動作中送り距離を差し引いた距離となったときに、前記サーマルヘッドの押さえ復帰を開始させる、熱転写記録装置。
【請求項2】
プラテン上に重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを前記プラテンに対して押さえ付け、印字データに基づいて前記インクリボンからインクを前記用紙に転写するサーマルヘッドを有し、送られる用紙にその送り方向に順次配列された複数の印字領域部分のそれぞれに前記サーマルヘッドが印字する過程で、1つの印字領域部分に対する印字終了後に、前記用紙を、該1つの印字領域部分が位置付けられるべき所定の停止位置に達するまで空送りし、当該1つの印字領域部分が前記停止位置に位置付けられた後、前記用紙を、次の印字領域部分が前記サーマルヘッドによる印字位置に位置付けられるまで戻すようにした熱転写記録装置であって、
前記1つの印字領域部分に対する印字終了後の前記用紙の前記空送り中に、前記用紙が、サーマルヘッドを前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持すべき当該用紙の送り距離として予め定めた維持距離送られている間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるように、前記サーマルヘッドの押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、
前記サーマルヘッドの押さえ解除開始から押さえ解除完了までの押さえ解除動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ解除動作中送り距離と前記サーマルヘッドの押さえ開始から押さえ完了までの押さえ動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ動作中送り距離との和であるヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離より大きいと判定され、前記1つの印字領域が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記ヘッド押さえ動作中距離となったタイミングにて、前記サーマルヘッドの押さえ復帰を開始させる、熱転写記録装置。
【請求項3】
前記予め定めた維持距離は、前記サーマルヘッドの前記プラテンに対する押さえ状態が維持されつつ前記用紙が戻される距離を含む請求項1または2記載の熱転写記録装置。
【請求項4】
前記予め定めた維持距離は、前記停止位置と前記印字位置との間の距離を含む請求項1または2記載の熱転写記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記印字終了直後に前記サーマルヘッドの押さえ解除を開始させる押さえ解除制御手段を有する請求項1または2記載の熱転写記録装置。
【請求項6】
プラテン上に重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを該インクリボン側から前記プラテンに対して押さえ付け、印字データに基づいて前記インクリボンからインクを前記用紙に転写するサーマルヘッドを有し、送られる用紙にその送り方向に順次配列された複数の印字を印字位置に位置付ける領域部分のそれぞれに前記サーマルヘッドが印字する過程で、1つの印字領域部分に対する印字終了後に、前記用紙を、該1つの印字領域部分が位置付けられるべき所定の停止位置に達するまで空送りし、当該1つの印字領域部分が前記停止位置に位置付けられた後、前記用紙を、次の印字領域部分が前記サーマルヘッドによる前記印字位置に位置付けられるまで戻すようにした熱転写記録装置であって、
前記サーマルヘッドの押さえ解除開始から押さえ解除完了までの押さえ解除動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ解除動作中送り距離と、前記サーマルヘッドの押さえ開始から押さえ完了までの押さえ動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ動作中送り距離とに基づいて、前記用紙の前記空送り中にサーマルヘッドを前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持すべき前記用紙の送り距離である維持距離を設定する維持距離設定手段と、
前記1つの印字領域部分に対する印字終了後の前記用紙の前記空送り中に、前記用紙が前記維持距離設定手段により設定された前記維持距離送られる間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるように、前記サーマルヘッドの押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、
前記ヘッド押さえ解除動作中送り距離と前記ヘッド押さえ動作中送り距離との和であるヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であると判定され、前記1つの印字領域部分が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記停止位置と前記印字位置との間の距離から前記ヘッド押さえ解除動作中送り距離を差し引いた距離となったときに、前記サーマルヘッドの押さえ復帰を開始させる熱転写記録装置。
【請求項7】
プラテン上に重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを該インクリボン側から前記プラテンに対して押さえ付け、印字データに基づいて前記インクリボンからインクを前記用紙に転写するサーマルヘッドを有し、送られる用紙にその送り方向に順次配列された複数の印字を印字位置に位置付ける領域部分のそれぞれに前記サーマルヘッドが印字する過程で、1つの印字領域部分に対する印字終了後に、前記用紙を、該1つの印字領域部分が位置付けられるべき所定の停止位置に達するまで空送りし、当該1つの印字領域部分が前記停止位置に位置付けられた後、前記用紙を、次の印字領域部分が前記サーマルヘッドによる前記印字位置に位置付けられるまで戻すようにした熱転写記録装置であって、
前記サーマルヘッドの押さえ解除開始から押さえ解除完了までの押さえ解除動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ解除動作中送り距離と、前記サーマルヘッドの押さえ開始から押さえ完了までの押さえ動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ動作中送り距離とに基づいて、前記用紙の前記空送り中にサーマルヘッドを前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持すべき前記用紙の送り距離である維持距離を設定する維持距離設定手段と、
前記1つの印字領域部分に対する印字終了後の前記用紙の前記空送り中に、前記用紙が前記維持距離設定手段により設定された前記維持距離送られる間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるように、前記サーマルヘッドの押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、
前記ヘッド押さえ解除動作中送り距離と前記ヘッド押さえ動作中送り距離との和であるヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離より大きいと判定されたときに、前記1つの印字領域部分が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記ヘッド押さえ動作中送り距離となったタイミングにて、前記サーマルヘッドの押さえ復帰を開始させる熱転写記録装置。
【請求項8】
前記ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であるか否かを判定する距離判定手段を有し、
前記距離判定手段により前記ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であると判定されたときに、前記維持距離設定手段は、前記停止位置と前記印字位置との間の距離を前記維持距離として設定する請求項または記載の熱転写記録装置。
【請求項9】
前記距離判定手段により前記ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離より大きいと判定されたときに、前記維持距離設定手段は、前記ヘッド動作中送り距離を前記維持距離として設定する請求項記載の熱転写記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記印字終了直後に前記サーマルヘッドの押さえ解除を開始させる押さえ解除制御手段と、
前記距離判定手段での判定結果に応じて、前記サーマルヘッドの押さえ解除後における当該サーマルヘッドの押さえ復帰の開始タイミングを制御する押さえ復帰制御手段とを有する請求項またはに記載の熱転写記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを該インクリボン側からプラテンに対して押さえ付け、印字データに応じて前記インクリボンからインクを前記用紙に熱転写して印字するサーマルヘッドを有する熱転写記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるプリンタ(熱転写記録装置)が知られている。このプリンタでは、順次配列されるラベルが台紙に仮着されてなる用紙及びインクリボンが重ねられた状態で送られ、サーマルヘッドが、その重ねられた状態で送られる前記用紙及び前記インクリボンを該インクリボン側からプラテンローラに対して押さえ付け、印字データに応じて前記インクリボンからインクを前記用紙の各ラベルに熱転写して印字している。そして、インクリボンの無駄な消費を低減させるために、各ラベルに対して所定長さ以上において印字が行われないときに、サーマルヘッドの前記押さえを解除して、用紙を送るとともに、サーマルヘッドの前記押さえ解除の動作中に僅かに送られてしまうインクリボンを更に巻き戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−210276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、台紙に連続的に仮着された複数のラベルのそれぞれにサーマルヘッドにて順次印字がなされる過程で、例えば、図1(a)に示すようにラベルLb1(1つの印字領域部分)に対する印字が終了した後に、図1(b)に示すように、用紙Sを、その印字済みのラベルLb1が台紙から剥離されるべき剥離位置Pc(位置付けられるべき停止位置)に達するまで空送りし、その印字済みのラベルLb1を台紙から剥離した後、用紙Sを、今度は、図1(c)に示すように、次のラベルLb2(次の印字領域部分)がサーマルヘッドによる印字位置Ppに位置付けられるまで戻すようにしたサーマルプリンタ(熱転写記録装置)が知られている。この種のサーマルプリンタでは、サーマルヘッドの押さえ状態を維持していると、図1(a)に示すようにラベルLb1に対する印字が終了した時点でのインクリボンIRbの印字終了端Ieは、図1(b)に示す前記用紙Sの剥離位置Pcまでの空送り時に、用紙Sとともに送られ、その後、図1(c)に示す前記用紙Sの戻し時に、用紙Sとともに戻される。このとき、ラベルLb1の剥離後、ラベルLb2が印字位置Ppに位置付けられるまでのインクリボンIRb(用紙S)の戻り距離(剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dに対応)は、印字終了後、ラベルLb1が剥離位置Pcに達するまでのインクリボンIRb(用紙S)の送り距離よりΔだけ小さい。このため、次のラベルLb2が印字位置Ppに位置付けられたときに、インクリボンIRbの印字終了端Ieは、印字位置Ppより距離Δだけ下流側にあり、印字位置Ppまで戻りきっていない。
【0005】
このように、ラベルLb1の印字終了後における用紙Sの空送り及びその戻しによって、インクリボンIRbの本来使用可能な部分(距離Δの部分)が使用できなくなってしまう。そのうえ、複数のラベルに対する印字が順次なされる間に、その使用できなくなる部分が累積され、インクリボンIRbの無駄が増大してしまう。
【0006】
そこで、ラベルLb1に対する印字終了後に、サーマルヘッドの押さえを解除して、用紙Sが送られる際のインクリボンIRbの送りを停止させること、更に、前述したように、インクリボンIRbを巻き戻すことが考えられる。この場合、インクリボンIRbの送りを停止させるために、通常、そのインクリボンIRbの送りを停止させるべき時間、あるいは、そのインクリボンIRbを停止させるべき時間に用紙Sが送られる距離に基づいてサーマルヘッドの押さえ解除とその押さえ復帰が制御される。
【0007】
しかしながら、インクリボンIRbの送りを停止させるべき時間、あるいは、そのインクリボンIRbを停止させるべき時間に用紙Sが送られる距離は、各ラベルLbにおける最終印字位置とラベルLbの後端位置との距離に依存する。このため、印字内容を種々切り替える場合や、種々のサイズのラベルに対する印字を行う場合等では、ラベルサイズやその印字内容に応じた最終印字位置を管理しなければならず、サーマルヘッドの押さえ解除とその押さえ復帰の制御が複雑になる傾向にある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ラベル等の印字領域部分のサイズや印字内容が種々変化しても、サーマルヘッドの押さえ解除及びその押さえ復帰の簡単な制御によりインクリボンの無駄を極力防止することのできる熱転写記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る熱転写記録装置は、プラテン上に重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを前記プラテンに対して押さえ付け、印字データに基づいて前記インクリボンからインクを前記用紙に転写するサーマルヘッドを有し、送られる用紙にその送り方向に順次配列された複数の印字領域部分のそれぞれに前記サーマルヘッドが印字する過程で、1つの印字領域部分に対する印字終了後に、前記用紙を、該1つの印字領域部分が位置付けられるべき所定の停止位置に達するまで空送りし、当該1つの印字領域部分が前記停止位置に位置付けられた後、前記用紙を、次の印字領域部分が前記サーマルヘッドによる印字位置に位置付けられるまで戻すようにした熱転写記録装置であって、
前記1つの印字領域部分に対する印字終了後の前記用紙の前記空送り中に、前記用紙が、サーマルヘッドを前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持すべき当該用紙の送り距離として予め定めた押さえ状態維持距離送られている間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるように、前記サーマルヘッドの押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングを制御する制御手段を有する構成となる。
【0010】
このような構成により、1つの印字領域部分に対する印字終了後の、その1つの印字領域部分が停止位置に達するまでの用紙の空送り中に、その用紙が予め定めた押さえ状態維持距離送られる間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるように、サーマルヘッドの押さえ解除及びその押さえ復帰のタイミングが制御される。これにより、1つの印字領域部分に対する印字終了後にインクリボンが用紙とともに送られる距離を前記押さえ状態維持距離に制御することができる。
【0011】
前記押さえ状態維持距離は、次の印字領域部分が印字位置に位置付けられるまでの用紙の戻し中にサーマルヘッドが押さえ状態を維持しつつ用紙の戻される距離により近いほうが好ましい。この場合、印字終了後の用紙の空送り中に送られるインクリボンの送り距離と、次の印字領域部分を印字位置に位置付けるまでの用紙の戻し中に戻されるインクリボンの戻し距離をより良くバランスさせることができる。より好ましくは、前記押さえ状態維持距離は、前記サーマルヘッドの前記プラテンに対する押さえ状態が維持されつつ前記用紙が戻される距離に設定さすることができる。
【0012】
また、前記押さえ状態維持距離は、前記停止位置と前記印字位置との間の距離に設定されている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、1つの印字領域部分に対する印字が終了した後、次の印字領域部分が印字位置に位置付けられるまで用紙が戻される間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持される場合には、印字終了後の用紙の空送り中に送られるインクリボンの送り距離と、次の印字領域部分を印字位置に位置付けるまでの用紙の戻し中に戻されるインクリボンの戻し距離を良くバランスさせることができる。
【0014】
本発明に係る熱転写記録装置において、前記制御手段は、前記印字終了直後に前記サーマルヘッドの押さえ解除を開始させる押さえ解除制御手段を有する構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、1つの印字領域部分に対する印字の終了直後にサーマルヘッドの押さえ解除が開始されるので、サーマルヘッドの押さえ解除のタイミングの制御が容易である。
【0016】
また、本発明に係る熱転写記録装置において、前記制御手段は、前記1つの印字領域部分が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記停止位置と前記印字位置との間の距離から前記サーマルヘッドの押さえ解除から押さえ解除完了までの押さえ解除動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ解除動作中送り距離を差し引いた距離となったときに、前記サーマルヘッドの押さえ復帰を開始させる押さえ復帰制御手段を有する構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、1つの印字領域部分の印字が終了した後での、サーマルヘッドの押さえ解除動作中にインクリボンが送られてしまう送り距離を考慮して、印字済みの印字領域部分が停止位置に達するまでの用紙の空送り中に、用紙とともにインクリボンが停止位置と印字位置との間の距離だけ送られるようにすることができる。
【0018】
更に、前記押さえ状態維持距離は、前記サーマルヘッドの押さえ解除開始から押さえ解除完了までの押さえ解除動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ解除動作中送り距離と前記サーマルヘッドの押さえ開始から押さえ完了までの押さえ動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ動作中送り距離との和であるヘッド動作中送り距離に設定されることができる。
【0019】
この場合、押さえ状態維持距離がヘッド動作中送り距離に設定されるので、1つの印字領域部分の印字が終了した後の用紙の空送り中に、サーマルヘッドの押さえ解除動作と押さえ復帰動作とによって、用紙とともにインクリボンが前記ヘッド動作中送り距離送られる。
【0020】
また、本発明に係る熱転写記録装置において、前記制御手段は、前記印字終了直後に前記サーマルヘッドの押さえ解除を開始させる押さえ解除制御手段と、前記1つの印字領域部分が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記ヘッド押さえ動作中送り距離となったときに、前記サーマルヘッドの押さえ復帰を開始させる押さえ復帰制御手段とを有する構成とすることができる。
【0021】
このような構成により、1つの印字領域部分の印字終了直後のサーマルヘッドの押さえ解除動作により、用紙とともにインクリボンがヘッド押さえ解除動作中送り距離送られ、サーマルヘッドの押さえ復帰動作により、用紙とともにインクリボンがヘッド押さえ動作中送り距離送られて、前記印字済みの印字領域部分が停止位置に達する。
【0022】
本発明に係る熱転写記録装置は、プラテン上に重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを該インクリボン側から前記プラテンに対して押さえ付け、印字データに基づいて前記インクリボンからインクを前記用紙に転写するサーマルヘッドを有し、送られる用紙にその送り方向に順次配列された複数の印字を印字位置に位置付ける領域部分のそれぞれに前記サーマルヘッドが印字する過程で、1つの印字領域部分に対する印字終了後に、前記用紙を、該1つの印字領域部分が位置付けられるべき所定の停止位置に達するまで空送りし、当該1つの印字領域部分が前記停止位置に位置付けられた後、前記用紙を、次の印字領域部分が前記サーマルヘッドによる前記印字位置に位置付けられるまで戻すようにした熱転写記録装置であって、前記サーマルヘッドの押さえ解除開始から押さえ解除完了までの押さえ解除動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ解除動作中送り距離と、前記サーマルヘッドの押さえ開始から押さえ完了までの押さえ動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られる距離であるヘッド押さえ動作中送り距離とに基づいて、前記用紙の前記空送り中にサーマルヘッドを前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持すべき前記用紙の送り距離である押さえ状態維持距離を設定する押さえ状態維持距離設定手段と、前記1つの印字領域部分に対する印字終了後の前記用紙の前記空送り中に、前記用紙が前記押さえ状態維持距離設定手段により設定された前記押さえ状態維持距離送られる間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるように、前記サーマルヘッドの押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングを制御する制御手段を有する構成となる。
【0023】
このような構成により、例えば、印字速度に依存するヘッド押さえ解除動作中送り距離と、ヘッド押さえ動作中送り距離とに基づいて、サーマルヘッドを前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持すべき前記用紙の送り距離である押さえ状態維持距離が設定され、1つの印字領域部分に対する印字終了後の、その印字済みの印字領域部分が停止位置に達するまでの用紙の空送り中にその用紙が前記押さえ状態維持距離送られる間、前記サーマルヘッドが前記用紙とともに前記インクリボンの送りが可能な状態に維持されるようにサーマルヘッドの押さえ解除及びその押さえ復帰のタイミングが制御される。従って、1つの印字領域部分に対する印字終了後にインクリボンが用紙とともに送られる距離を、前記ヘッド押さえ解除動作中送り距離と前記ヘッド押さえ動作中送り距離とに基づいて設定された前記押さえ状態維持距離に制御することができる。
【0024】
本発明に係る熱転写記録装置において、前記ヘッド押さえ解除動作中送り距離と前記ヘッド押さえ動作中送り距離との和のであるヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であるか否かを判定する距離判定手段を有し、前記距離判定手段により前記ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であると判定されたときに、前記押さえ状態維持距離設定手段は、前記停止位置と前記印字位置との間の距離を前記押さえ状態維持距離として設定する構成とすることができる。
【0025】
このような構成により、サーマルヘッドの押さえ解除動作中及び押さえ動作(押さえ復帰動作)中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られるヘッド動作中送り距離が停止位置と印字位置との間の距離以下である場合、前記押さえ状態維持距離が前記停止位置と印字位置との間の距離に設定される。従って、1つの印字領域部分に対する印字終了後にインクリボンが用紙とともに送られる距離を、前記停止位置と前記印字位置との間の距離に制御することができる。
【0026】
また、本発明に係る熱転写記録装置において、前記距離判定手段により前記ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離より大きいと判定されたときに、前記押さえ状態維持距離設定手段は、前記ヘッド動作中送り距離を前記押さえ状態維持距離として設定する構成とすることができる。
【0027】
このような構成により、サーマルヘッドの押さえ解除動作中及び押さえ動作(押さえ復帰動作)中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られるヘッド動作中送り距離が停止位置と印字位置との間の距離より大きい場合、前記押さえ状態維持距離が前記ヘッド動作中送り距離に設定される。従って、1つの印字領域部分に対する印字終了後にインクリボンが用紙とともに送られる距離を、サーマルヘッドの押さえ解除動作中に用紙とともにインクリボンが送られるヘッド押さえ解除動作中送り距離と、前記サーマルヘッドの押さえ動作中に前記用紙とともに前記インクリボンが送られるヘッド押さえ動作中送り距離との和であるヘッド送り動作中送り距離に制御することができる。
【0028】
更に、本発明に係る熱転写記録装置において、前記制御手段は、前記印字終了直後に前記サーマルヘッドの押さえ解除を開始させる押さえ解除制御手段と、前記距離判定手段での判定結果に応じて、前記サーマルヘッドの押さえ解除後における当該サーマルヘッドの押さえ復帰の開始タイミングを制御する押さえ復帰制御手段とを有する構成とすることができる。
【0029】
このような構成により、1つの印字領域部分の印字終了直後に、サーマルヘッドの押さえ解除が開始され、その後、サーマルヘッドの前記押さえ解除動作中に用紙とともにインクリボンが送られるヘッド押さえ解除動作送り距離とサーマルヘッドの前記押さえ動作中に用紙とともにインクリボンが送られるヘッド押さえ動作中送り距離との和であるヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であるか否かの判定結果に応じて、前記サーマルヘッドの押さえ復帰の開始タイミングが制御される。
【0030】
また、本発明に係る熱転写記録装置において、前記押さえ復帰制御手段は、前記距離判定手段により前記ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離以下であると判定されたときに、前記1つの印字領域部分が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記停止位置と前記印字位置との間の距離から前記ヘッド押さえ解除動作中送り距離を差し引いた距離となったときに、前記サーマルヘッドの押さえ復帰を開始させる構成とすることができる。
【0031】
このような構成により、ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離(D)以下であるときに、1つの印字領域部分の印字が終了した後での、サーマルヘッドの押さえ解除動作中にインクリボンが送られてしまう送り距離を考慮して、印字済みの印字領域部分が停止位置に達するまでの用紙の空送り中に、用紙とともにインクリボンが停止位置と印字位置との間の距離だけ送られるようにすることができる。
【0032】
更に、本発明に係る熱転写記録装置において、前記押さえ復帰制御手段は、前記距離判定手段により前記ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離より大きいと判定されたときに、前記1つの印字領域が前記停止位置に達するまでに前記用紙を送るべき残り距離が、前記ヘッド押さえ動作中送り距離となったタイミングにて、前記サーマルヘッドの押さえ復帰開始させる構成とすることができる。
【0033】
このような構成により、ヘッド動作中送り距離が前記停止位置と前記印字位置との間の距離より大きいときに、1つの印字領域部分の印字終了直後のサーマルヘッドの押さえ解除動作により、用紙とともにインクリボンがヘッド押さえ解除動作中送り距離送られ、サーマルヘッドの押さえ復帰動作により、用紙とともにインクリボンがヘッド押さえ動作中送り距離送られて、前記印字済みの印字領域部分が停止位置に達する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る熱転写記録装置によれば、1つの印字領域部分に対する印字終了後の、その1つの印字領域部分が停止位置に達するまでの用紙の空送り中に、インクリボンの送りを停止させる時間等を制御するのではなく、インクリボンが用紙とともに送られる距離を押さえ状態維持距離に制御することができるので、ラベル等の印字領域部分のサイズや印字内容が種々変化しても、サーマルヘッドの押さえ解除及びその押さえ復帰の簡単な制御によりインクリボンの無駄を極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】複数のラベルが配列された用紙とインクリボンの従来の送りと戻しの状態を示す図である。
図2】本発明の実施の一形態に係るサーマルプリンタ(サーマルヘッド押さえ状態)を示す図である。
図3】本発明の実施の一形態に係るサーマルプリンタ(サーマルヘッド押さえ解除状態)を示す図である。
図4図2及び図3に示すサーマルプリンタにおいてなされる複数のラベルが配列された用紙とインクリボンの送りと戻しの状態を示す図である。
図5】ヘッド押さえ解除動作中送り距離A、ヘッド押さえ動作中送り距離B及びヘッド動作中送り距離(A+B)と印字速度の関係を示す図である。
図6A】サーマルヘッドによる印字動作の処理手順を示すフローチャート(その1)である。
図6B】サーマルヘッドによる印字動作の処理手順を示すフローチャート(その2)である。
図7】サーマルヘッドの押さえ解除処理の手順を示すフローチャートである。
図8】サーマルヘッドの押さえ復帰処理の手順を示すフローチャートである。
図9】用紙の戻し処理の手順を示すフローチャートである。
図10】印字済みのラベルの送られる位置と、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作との関係(その1)を示す図である。
図11】印字済みのラベルの送られる位置と、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作との関係(その2)を示す図である。
図12】印字済みのラベルの送られる位置と、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作との関係(その3)を示す図である。
図13】印字済みのラベルの送られる位置と、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作との関係が図12に示すようになる場合における、複数のラベルが配列された用紙とインクリボンの送りと戻しの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0037】
本発明の実施の一形態に係るサーマルプリンタ(熱転写記録装置)は、図2及び図3に示すように構成される。
【0038】
図2において、所定間隔にて配列された複数のラベルLbが台紙Mに仮着されてなる用紙Sが、供給リール11から繰り出されて、ガイドローラ12、プラテンローラ13(プラテン)及び一対の挟持ローラ14a、14bを通り、挟持ローラ14a、14bの回転により搬送される。挟持ローラ14a、14bの下流側の所定位置に剥離板18が設けられている。また、供給リール15から繰り出されるインクリボンIRbがガイドローラ16及びプラテンローラ13を通って巻き取りリール17に巻き取られている。
【0039】
プラテンローラ13に対向してサーマルヘッド20が配置され、サーマルヘッド20は、基端部が軸22によって搖動自在に支持された支持部材21の先端部に固定されている。支持部材21の先端部に固定されたサーマルヘッド20とプラテンローラ13との間を重ねられた状態の用紙S及びインクリボンIRbが通っている。支持部材21の先端には、押さえプレート26が設けられており、サーマルヘッド20(支持部材21)とプラテンローラ13との間を通過したインクリボンIRbが押さえプレート26によって押さえ付けられるようになっている。
【0040】
支持部材21のプラテンローラ13側の面と逆側の面にカム23の弧状カム面が当接している。カム23は、軸24によって搖動自在に支持されている。アクチュエータ31(例えば、モータ)の動力が動力伝達系(図示略)を介して軸24に回転力として伝達し、その回転力によりカム23が軸24を中心にして搖動するようになっている。支持部材21は、スプリング25の引っ張り力によってカム23の弧状カム面への当接状態が維持されている。カム23が図2に示す状態にあるときには、カム23によって押さえ付けられる支持部材21の先端部に固定されたサーマルヘッド20が、重ねられた状態で送られる用紙S及びインクリボンIRbを該インクリボンIRb側からプラテンローラ13に押え付ける。このサーマルヘッド20の位置を、例えば、押さえ位置という。カム23が図3に示す状態にあるときには、スプリング25によってカム23への当接状態が維持される支持部材21の先端部に固定されたサーマルヘッド20がプラテンローラ13から離間され、支持部材21の先端に設けられた押さえプレート26に接するインクリボンIRbが、サーマルヘッド20から離れつつ、用紙Sからも離れた状態となる。このサーマルヘッド20の位置を、例えば、退避位置という。制御ユニット30は、カム23が図2に示す状態と、図3に示す状態との間で回動するように、即ち、サーマルヘッド20が押さえ位置と退避位置との間で移動するように、アクチュエータ31の駆動制御を行う。
【0041】
剥離板18は、挟持ローラ14a、14bを通って搬送される用紙Sにおける台紙Mの搬送方向を鋭角に変更させて、台紙Mに仮着されたラベルLbを台紙Mから剥離させる。なお、図示は省略されているが、剥離板18により搬送方向が鋭角に変更された台紙Mは、巻き取りリールによって巻き取られるようになっている。印字済みのラベルLbが位置付けられて剥離板18により当該ラベルLbが台紙Mから剥離される位置である剥離位置(停止位置)Pcとサーマルヘッド20がラベルLbに印字する位置である印字位置Ppとの間の距離が所定距離Dに設定されている。
【0042】
制御ユニット30は、サーマルヘッド20を押さえ位置と退避位置との間で移動させるようにアクチュエータ31を駆動制御するとともに、用紙S(台紙M)の搬送制御及びインクリボンIRbの送り制御を行う。この用紙Sの搬送制御は、例えば、挟持ローラ14a、14bを回転させるモータ、台紙Mの巻き取りリールを回転させるモータ及びプラテンローラ13を回転させるモータ等の用紙S(台紙M)を送るためのモータの駆動制御によりなされる。インクリボンIRbの送り制御は、供給リール15及び巻き取りリール17の駆動制御によりなされる。用紙S(台紙M)の搬送制御により、例えば、図4(a)に示すように印字が終了したラベルLb1が、図4(b)に示すように剥離位置Pcに達するまで用紙Sが空送りされ、その印字済みのラベルLb1が剥離された後、図4(c)に示すように次のラベルLb2が印字位置Ppに位置付けられるように用紙Sが戻される。その後、再び、用紙Sが送られつつ次のラベルLb2に対する印字位置Ppでの印字がなされ、図4(d)に示すようにラベルLb2の印字が終了する。以後、同様に、ラベルLbに対する印字の終了後における用紙S(台紙M)の空送り、ラベルLbの剥離後の用紙S(台紙M)の戻し、次のラベルLbの印字動作中における用紙Sの送りが、繰り返し行われる。
【0043】
サーマルヘッド20が図2に示すような押さえ位置にある状態において、用紙Sの送りとともにインクリボンIRbが送られ、サーマルヘッド20が、その重ねられて送られる用紙SのラベルLb及びインクリボンIRbを該インクリボンIRb側からプラテンローラ13に押さえ付け、印字データに応じてインクリボンIRbからインクをラベルLbに熱転写して印字する。
【0044】
用紙SとともにインクリボンIRbが送られている際に、サーマルヘッド20が押さえ位置(図2参照)から退避位置(図3参照)に移動する(ヘッド・アップ)、即ち、押さえ解除開始から押さえ解除完了までの、サーマルヘッド20の押さえ解除動作(ヘッド・アップ動作)中は、インクリボンIRbの送りは停止されずに、インクリボンIRbは、用紙Sとともにある距離だけは送られる。また、サーマルヘッド20が退避位置(図3参照)から押さえ位置(図2参照)に移動する(ヘッド・ダウン)、即ち、押さえ開始から押さえ完了までの、サーマルヘッド20の押さえ復帰動作(ヘッド・ダウン動作)中も、インクリボンIRbは、用紙Sとともにある距離送られる。サーマルヘッド20の押さえ解除動作中の用紙S及びインクリボンIRbの送り距離を、ヘッド押さえ解除動作中送り距離Aといい、サーマルヘッド20の押さえ復帰動作中の用紙S及びインクリボンIRbの送り距離を、ヘッド押さえ動作中送り距離Bといい、それらの和を、ヘッド動作中送り距離(A+B)という。これら、ヘッド押さえ解除動作中送り距離A、ヘッド押さえ動作中送り距離B及びヘッド動作中送り距離(A+B)は、例えば、図5に示すように、用紙Sの送り速度、即ち、印字速度に依存している。図5において、例えば、印字速度(用紙Sの送り速度)が毎秒4インチの場合、ヘッド押さえ解除動作中送り距離A及びヘッド押さえ動作中送り距離Bのそれぞれは4mmであって、ヘッド動作中送り距離(A+B)が8mmである。また、印字速度(用紙Sの送り速度)が毎秒10インチの場合、ヘッド押さえ解除動作中送り距離A及びヘッド押さえ動作中送り距離Bのそれぞれは8mmであって、ヘッド動作中送り距離(A+B)が16mmである。
【0045】
制御ユニット30は、用紙S(台紙M)の送り及び戻し制御とともに、前述した印字速度に依存したヘッド解除動作中送り距離A及びヘッド押さえ動作中送り距離Bを考慮して、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作(押さえ動作)の制御(アクチュエータ31の駆動制御)を行いつつ、印字データに基づいた各ラベルLbに対する印字制御を、例えば、図6A及び図6Bに示す手順に従って実行する。
【0046】
図6Aにおいて、制御ユニット30は、巻き取りリール17でのインクリボンIRbの巻き取りによる当該インクリボンIRbの送りを開始させ(S10)、その後、例えば、ラベルセンサ(図示略)からの検出信号に基づいて、送られる用紙SのラベルLbが印字位置Ppに位置付けられたことを検出すると、印字データに基づいて、ラベルLbに対して1ライン分の印字がなされる(S11)毎に用紙Sが1ライン分送られる(S12)ように、サーマルヘッド20を制御するとともに用紙Sの送り用モータを制御する。そして、その動作が、ラベルLbに対する最終ラインの印字が終了する(S13)まで継続される。ラベルLbに対する最終ラインの印字が終了すると(S13でYES)、制御ユニット30は、印字済みラベルLbが剥離位置Pc(停止位置)に達するまでの用紙Sの空送り中にサーマルヘッド20を用紙SとともにインクリボンIRbの送りが可能な状態に維持すべき当該用紙Sの送り距離として定義される押さえ状態維持距離(X)を設定する(S14:押さえ状態維持距離設定手段)。サーマルヘッド20の用紙SとともにインクリボンIRbの送りが可能な状態は、サーマルヘッド20が押さえ解除動作(ヘッド・アップ動作)中である状態、サーマルヘッド20が押さえ復帰動作(ヘッド・ダウン動作)中である状態、及びサーマルヘッド20が押さえ位置(図2参照)にある状態を含む。
【0047】
例えば、前述したように印字速度に依存するヘッド押さえ解除動作中送り距離Aとヘッド押さえ動作中送り距離Bとの和であるヘッド動作中送り距離(A+B)と、剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離D(図2図3図4参照)との関係に基づいて、前記押さえ状態維持距離Xが、
(A+B)≦Dの場合、X=D ・・・(1)
(A+B)>Dの場合、X=A+B ・・・(2)
のように設定される。
【0048】
次いで、制御ユニット30は、押さえが解除されたサーマルヘッド20の押さえ復帰動作(押さえ動作)を開始すべき時点での、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまでに用紙Sを送るべき残り距離として定義されるヘッド押さえ復帰開始距離Yを設定する(S15)。例えば、前記ヘッド動作中送り距離(A+B)と、剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dとの関係に基づいて、ヘッド押さえ復帰開始距離Yが、
(A+B)≦Dの場合、Y=D−A ・・・(3)
(A+B)>Dの場合、Y=B ・・・(4)
のように設定される。
【0049】
上記の場合、図4(a)、(b)、(c)に示すように、印字済みのラベルLb1が剥離位置Pcにて剥離された後、次のラベルLb2が印字位置Ppに位置付けられるまでの用紙Sの戻しの距離が、剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dに相当し、その用紙Sが戻される間、サーマルヘッド20が押さえ位置(図2参照)に維持され、インクリボンIRbが用紙Sとともに、距離D戻されることを前提としている。
【0050】
従って、ヘッド動作中送り距離(A+B)が剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離D以下の場合((1)式参照)、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまでの用紙Sの空送り中にサーマルヘッド20を用紙SとともにインクリボンIRbの送りが可能な状態に維持させておくべき押さえ状態維持距離Xが、剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離D(X=D)、即ち、用紙Sの戻しの際に、インクリボンIRbがその用紙Sとともに戻される距離に対応するように設定される。この場合((3)式参照)、ヘッド押さえ復帰開始距離Yが(D−A)に設定される。これは、ラベルLbに対する印字が終了した直後に押さえ解除動作が開始されて退避位置になったサーマルヘッド20の押さえ復帰動作が、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまでに用紙Sを送るべき残り距離(ヘッド押さえ復帰開始距離Y)がD−A(Y=D−A)となった時点で開始されるように、サーマルヘッド20の当該押さえ復帰動作の制御がなされることを意味する。
【0051】
また、ヘッド動作中送り距離(A+B)が剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dを越えている場合((2)式参照)、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまでの用紙Sの空送り中にサーマルヘッド20を用紙SとともにインクリボンIRbの送りが可能な状態に維持させておくべき押さえ状態維持距離Xが、ヘッド動作中送り距離(A+B)に、即ち、サーマルヘッド20の押さえ位置から退避位置への押さえ解除動作中及び退避位置から押さえ位置への押さえ復帰動作中に用紙Sとともに送られるインクリボンIRbの送り距離に対応するように設定される。この場合((4)式参照)、ヘッド押さえ復帰開始距離Yがヘッド押さえ動作中送り距離Bに設定される。これは、ラベルLbに対する印字が終了した直後に押さえ解除動作が開始されて退避位置となったサーマルヘッド20の押さえ復帰動作が、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまでに用紙Sを送るべき残り距離(ヘッド押さえ復帰開始距離Y)が、ヘッド押さえ動作中送り距離B(Y=B)と同じ距離になった時点で開始されるように、サーマルヘッド20の当該押さえ復帰動作の制御がなされることを意味する。
【0052】
図6Aに戻って、制御ユニット30は、上述したように押さえ状態維持距離X及びヘッド押さえ復帰開始距離Yを設定する(S14、S15)と、ラベルLbに対する印字が終了した時点(現時点)から当該ラベルLbが剥離位置Pcに達するまで用紙Sを送るべき距離を残り空送り距離Eの初期値Eo(最大値:図4参照)として設定する(S16)。その後、制御ユニット30は、図6Bに示す手順に従って処理を実行する。
【0053】
図6Bにおいて、制御ユニット30は、前記押さえ状態維持距離Xが、前記残り空送り距離Eの初期値Eo以下であるか否かを判定する(S17)。前記押さえ状態維持距離Xが、前記残り空送り距離Eの初期値Eo以下であると(S17でYES)、制御ユニット30は、サーマルヘッド20の押さえ解除のための処理を開始する(S18:押さえ解除制御手段)。これにより、サーマルヘッド20は、ラベルLbの印字が終了した(図6AのS13でYES)直後に、押さえ解除動作(ヘッド・アップ動作)を開始する。
【0054】
制御ユニット30による、サーマルヘッド20の押さえ解除のための処理(S18)は、具体的に、図7に示す手順に従ってなされる。即ち、制御ユニット30は、サーマルヘッド20の退避位置を検出するための退避位置センサ(図示略)からの検出信号に基づいて、サーマルヘッド20が退避位置(図3参照)にないと、判定すると(S41でNO)、アクチュエータ31を起動させる(S42)。そして、制御ユニット30は、前記退避位置センサからの検出信号がオンであるか否かを監視する状態となり(S43)、退避位置センサからの検出信号がオンになると(S43でYES)、制御ユニット30は、アクチュエータ31を停止させ(S44)、インクリボンIRbの送りを停止させる(S45)。このようにして、制御ユニット30の制御のもと、サーマルヘッド20は、ラベルLbの印字が終了した直後から押さえ解除動作(ヘッド・アップ動作)を行う。なお、サーマルヘッド20が当初から退避位置にあると(S41でYES)、制御ユニット30は、サーマルヘッド20の押さえ解除のための処理を行うことなく、インクリボンIRbの送りを停止させて、処理を終了させる。
【0055】
図6Bに戻って、制御ユニット30は、サーマルヘッド20の押さえ解除に係る処理(図7参照)を開始した(S18)後、現時点から印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまでに用紙Sを送るべき距離である残り空送り距離Eが、前記ヘッド押さえ復帰開始距離Yに達したか(下まわったか)否かを監視しつつ(S20)、用紙Sの送り用のモータを1ステップずつ駆動制御する(S19)。そして、用紙Sの送りによって順次低減していく前記残り空送り距離Eが前記ヘッド押さえ復帰開始距離Yに達すると(S20でYES)、制御ユニット30は、この時点で既に押さえ解除の動作が完了して退避位置にあるサーマルヘッド20の押さえ復帰のための処理を開始する(S21:押さえ復帰制御手段)。これにより、サーマルヘッド20は、押さえ復帰動作(ヘッド・ダウン動作)を開始する。
【0056】
制御ユニット30による、サーマルヘッド20の押さえ復帰のための処理(S21)は、具体的に、図8に示す手順に従ってなされる。即ち、制御ユニット30は、巻き取りリール17でのインクリボンIRbの巻き取りによる当該インクリボンIRbの送りを開始させて(S50)、サーマルヘッド20の押さえ位置を検出するための押さえ位置センサ(図示略)からの検出信号に基づいて、サーマルヘッド20が押さえ位置(図2参照)にないと、判定すると(S51でNO)、アクチュエータ31を起動させる(S52)。そして、制御ユニット30は、前記押さえ位置センサからの検出信号がオンであるか否かを監視する状態となり(S53)、押さえ位置センサからの検出信号がオンになると(S53でYES)、制御ユニット30は、アクチュエータ31を停止させる(S54)。このようにして、制御ユニット30の制御のもと、サーマルヘッド20は、前記残り空送り距離Eが前記ヘッド押さえ復帰開始距離Yに達すると、押さえ復帰動作(ヘッド・ダウン動作)を行う。なお、サーマルヘッド20が当初から押さえ位置にあると(S51でYES)、制御ユニット30は、サーマルヘッド20の押さえ復帰のための処理を行うことなく、処理を終了させる。
【0057】
図6Bに戻って、制御ユニット30は、サーマルヘッド20の押さえ復帰に係る処理(図8参照)を開始した(S21)後、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達したか否か、即ち、前記残り空送り距離Eがゼロになったか否かを監視しつつ(S23)、用紙Sの送り用のモータを1ステップずつ駆動制御する(S22)。そして、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達する(S23でYES)と、即ち、前記残り空送り距離Eがゼロになると、制御ユニット30は、インクリボンIRbの送りを停止させて(S24)、1枚のラベルLbに対する印字処理を終了する。
【0058】
上記のようにして、印字済みのラベルLb(Lb1)が剥離位置Pcに達すると(図4(b)参照)、この印字済みのラベルLbが台紙Mから剥離される。その後、制御ユニット30は、サーマルヘッド20を押さえ位置に維持させつつ、次のラベルLb(Lb2)が印字位置Ppに位置付けられるまで用紙Sを戻すように(図4(c)参照)、アクチュエータ31及び用紙Sの送り用のモータの駆動制御を行う。用紙Sについては、具体的には、図9に示すように、次のラベルLb(Lb2)が印字位置Ppに位置付けられたか否かを監視しつつ(S32)、用紙Sの送り用のモータを前記用紙Sの空送りの場合(図6BのS19、S22と参照)と逆方向に1ステップずつ駆動制御する(S31)。そして、次のラベルLb(Lb2)が印字位置Ppに位置付けられると(図4(c)参照)、制御ユニット30は、用紙Sの戻しに係る制御を終了する。なお、このとき、インクリボンIRbについても、用紙Sの戻しと同期して巻き戻される。
【0059】
上述したようにして、ラベルLbへの印字、印字終了後における印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまでの用紙Sの空送り、ラベルLbの剥離後における次のラベルLbが印字位置Ppに位置付けられるまでの用紙Sの戻し、の一連の動作が終了する。そして、上述した処理が繰り返されることにより、台紙Mに配列された各ラベルLbに印字がなされ、その印字済みのラベルLbが台紙Mから順次剥離される。
【0060】
なお、図6Bに示す手順に従った処理において、前記押さえ状態維持距離Xが、前記残り空送り距離Eの初期値Eoを越えていると(S17でNO)、印字終了後の用紙Sの空送りの間にサーマルヘッド20を用紙SとともにインクリボンIRbの送りが可能な状態に維持させておくべき距離(X)が、その空送りの最大値である残り空送り距離Eの初期値Eoを越えているとして、制御ユニット30は、印字終了後に、サーマルヘッド20の押え解除動作(S18)及び押さえ復帰動作(S21)をさせることなく、サーマルヘッド20を押さえ位置に維持させた状態で、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまで用紙Sを空送りさせるように、用紙Sの送り用のモータの制御(S22、S23)を行う。
【0061】
上述したようなサーマルプリンタでは、ヘッド動作中送り距離(A+B)が剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dより小さい場合(上記(1)式及び(3)式参照)、印字済みのラベルLb(斜線部分が印字部分)の送られる位置と、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作との具体的な関係は、例えば、図10に示すようになる。
【0062】
図10において、ラベルLbに対する印字が終了した直後に、押さえ位置にあるサーマルヘッド20の押さえ解除動作(ヘッド・アップ動作)が開始され、ラベルLbとともにインクリボンIRbが距離A(ヘッド押さえ解除動作中送り距離)送られる間に、サーマルヘッド20は、退避位置になる。この状態で、用紙S(ラベルLb)の送りは継続される一方、インクリボンIRbの送りは停止する。その後、ラベルLb(例えば、その後端)が、剥離位置Pcから上流側にヘッド押さえ復帰開始距離Y(=D−A)の位置に達すると、サーマルヘッド20の押さえ復帰動作(ヘッド・ダウン動作)が開始され、その押さえ復帰動作が完了してサーマルヘッド20が押さえ位置になるまでに、インクリボンIRbが用紙S(ラベルLb)とともに距離B(ヘッド押さえ動作中送り距離)送られる。そして、サーマルヘッド20は押さえ位置に維持された状態で、ラベルLbが剥離位置Pcに達するまで、インクリボンIRbが用紙S(ラベルLb)とともに送られる。
【0063】
上記の過程で、用紙Sが距離Eo(残り空送り距離Eの初期値)送られて印字済みのラベルLbが剥離距離Pcに達するまでに、インクリボンIRbが用紙Sとともに距離X(=Y+A=D−A+A=D)送られるように、サーマルヘッド20の押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングが制御される。即ち、例えば、図4(a)、(b)に示すように、印字済みラベルLb1が剥離位置Pcに達するまで用紙Sが距離Eo送られる間に、インクリボンIRbが距離X=D送られる。そして、サーマルヘッド20が押さえ位置を維持された状態で、例えば、図4(c)に示すように、用紙SとともにインクリボンIRbが距離D戻されて次のラベルLb2が印字位置Ppに位置付けられる。この場合、印字終了後の用紙Sの空送りの際のインクリボンIRbの送り距離X=Dと、用紙Sを戻す際のインクリボンIRbの戻し距離=Dが同じなので、ラベルLb1の印字が終了した時点でのインクリボンIRbの印字終了端Ie1は、次のラベルLb2が印字位置Ppに位置付けられた時点で、実質的に印字位置Ppまで戻っており、次のラベルLb2に対する印字のために、インクリボンIRbを無駄なく使用することができる。
【0064】
ヘッド動作中送り距離(A+B)が剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dに等しい場合(上記(1)式及び(3)式参照)、印字済みのラベルLb(斜線部分が印字部分)の送られる位置と、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作との具体的な関係は、例えば、図11に示すようになる。
【0065】
この場合も、用紙Sが距離Eo(残り空送り距離Eの初期値)送られて印字済みのラベルLbが剥離距離Pcに達するまでに、インクリボンIRbが用紙Sとともに距離X(=Y+A=D−A+A=D=A+B)送られるように、サーマルヘッド20の押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングが制御される。従って、図4(a)、(b)、(c)に示すように、印字後の用紙Sの空送りの際のインクリボンIRbの送り距離X=Dと、用紙Sを戻す際のインクリボンIRbの戻し距離=Dが同じになり、ラベルLb1の印字が終了した時点でのインクリボンIRbの印字終了端Ie1は、次のラベルLb2が印字位置Ppに位置付けられた時点で、実質的に印字位置Ppまで戻っており、次のラベルLb2に対する印字の際に、インクリボンIRbを無駄なく使用することができる。
【0066】
ヘッド動作中送り距離(A+B)が剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dを越える場合(上記(2)式及び(4)式参照)、印字済みのラベルLb(斜線部分が印字部分)の送られる位置と、サーマルヘッド20の押さえ解除動作及び押さえ復帰動作との具体的な関係は、例えば、図12に示すようになる。
【0067】
図12において、ラベルLbに対する印字が終了した直後に、押さえ位置にあるサーマルヘッド20の押さえ解除動作(ヘッド・アップ動作)が開始され、ラベルLbとともにインクリボンIRbが距離A(ヘッド押さえ解除動作中送り距離)送られる間に、サーマルヘッド20は、退避位置になる。この状態で、用紙S(ラベルLb)の送りは継続される一方、インクリボンIRbの送りは停止する。その後、ラベルLb(例えば、その後端)が、剥離位置Pcから上流側にヘッド押さえ復帰開始距離Y(=B)の位置に達すると、サーマルヘッド20の押さえ復帰動作(ヘッド・ダウン動作)が開始され、その押さえ復帰動作が完了してサーマルヘッド20が押さえ位置になるまでに、インクリボンIRbが用紙S(ラベルLb)とともに距離B(ヘッド押さえ動作中送り距離)送られる。その時点で、印字済みのラベルLbは、剥離位置Pcに達している。
【0068】
上記の過程で、用紙Sが距離Eo(残り空送り距離Eの初期値)送られて印字済みのラベルLbが剥離距離Pcに達するまでに、図13(a)、(b)に示すように、インクリボンIRbが用紙Sとともに距離X(=A+B>D)送られるように、サーマルヘッド20の押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングが制御される。この場合、図13(b)、(c)に示すように、印字終了後の用紙Sの空送りの際のインクリボンIRbの送り距離X=A+Bは、用紙Sを戻す際のインクリボンIRbの戻し距離=Dより大きく、その差が距離Δとなる。このため、ラベルLbの印字が終了した時点でのインクリボンIRbの印字終了端Ie1は、図13(c)に示すように、次のラベルLbが印字位置Ppに位置付けられた時点で、印字位置Ppの下流側の距離Δの位置までしか戻っておらず、次のラベルLbに対する印字の際に、インクリボンIRbに距離Δの未使用部分が生じ得る。
【0069】
しかし、この未使用部分の距離Δ(=(A+B)−D)は、印字済みラベルLbが剥離位置Pcに達するまで用紙Sを送る際にサーマルヘッド20の押さえ解除を行わない場合(図1参照)における、インクリボンIRb(用紙S)の送り距離EoとインクリボンIRb(用紙S)の戻し距離Dとの差により生じるインクリボンIRbの未使用部分の距離(Eo−D)よりも小さい。従って、図12に示す場合であっても、次のラベルLbに対する印字の際に、インクリボンIRbの無駄を低減させることができる。
【0070】
上述したようなサーマルプリンタでは、サーマルヘッド20の押さえ解除動作中に用紙SとともにインクリボンIRbが送られる距離(ヘッド押さえ解除動作中送り距離)A、サーマルヘッド20の押さえ動作中に用紙SとともにインクリボンIRbが送られる距離(ヘッド押さえ動作中送り距離)B、及び剥離位置Pcと印字位置Ppとの間の距離Dに基づいて、印字済みのラベルLbが剥離位置Pcに達するまで用紙Sが空送りされる際に、用紙とともにインクリボンIRbの送り距離が、押さえ状態維持距離Xになるように、サーマルヘッド20の押さえ解除及び押さえ復帰のタイミングが制御される。このように、インクリボンIRbの送りを停止させる時間等を制御するのではなく、インクリボンIRbが用紙Sとともに送られる距離を押さえ状態維持距離(X)に制御することができるので、ラベルLbのサイズや印字内容が種々変化しても、サーマルヘッド20の押さえ解除及びその押さえ復帰の簡単な制御によりインクリボンの無駄を極力防止することができる。
【0071】
なお、前述したサーマルプリンタでは、台紙Mに仮着されたラベルLbを剥離位置Pcにて剥離するものであったが、印字済みのラベルLbを用紙Sから分離するために用紙S(ラベル)をカットするものであってもよい。この場合、用紙(ラベル)のカット位置が、前述した剥離位置Pcに対応する分離位置(停止位置)として、用紙Sの送り及びサーマルヘッド20の制御に用いられる。用紙をカットする場合、その用紙は、剥離可能なラベルではなく、印字領域部分が順次配列された構成のものであってもよい。
【0072】
前述したサーマルプリンタ(熱転写記録装置)では、サーマルヘッド20のプラテンローラ13に対する押え、及びその解除は、サーマルヘッド20を移動させるものであったが、プラテンローラ13を移動させるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明に係る熱転写記録装置は、ラベル等の印字領域部分のサイズや印字内容が種々変化しても、サーマルヘッドの押さえ解除及びその押さえ復帰の簡単な制御によりインクリボンの無駄を極力防止することができるという効果を有し、重ねられた状態で送られる用紙及びインクリボンを該インクリボン側からプラテンに対して押さえ付け、印字データに応じて前記インクリボンからインクを前記用紙に熱転写して印字するサーマルヘッドを有する熱転写記録装置として有用である。
【符号の説明】
【0074】
11 供給リール
12 ガイドローラ
13 プラテンローラ
14a、14b 挟持ローラ
15 供給リール
16 ガイドローラ
17 巻き取りリール
18 剥離板
20 サーマルヘッド
21 支持部材
22 軸
23 カム
24 軸
25 スプリング
26 押さえプレート
30 制御ユニット
31 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13