特許第6071405号(P6071405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071405
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20170123BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H03K17/687 G
   H03K17/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-227679(P2012-227679)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-82566(P2014-82566A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悟朗
【審査官】 小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−086615(JP,A)
【文献】 特開2012−095168(JP,A)
【文献】 特開昭62−150926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/687
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送信号が入力・出力される一対の入出力端子、制御信号が入力される制御端子、高電位電源端子、低電位電源端子、pチャネルMOSトランジスタとnチャネルMOSトランジスタとで構成されるメインスイッチ、およびコントロール回路を備え、前記高電位電源端子に入力される高電位電圧および前記低電位電源端子に入力される低電位電圧で前記メインスイッチおよび前記コントロール回路が作動して、前記コントロール回路が前記制御信号の反転信号を生成すると共に当該制御信号および当該反転信号を前記メインスイッチに出力し、当該メインスイッチの前記各MOSトランジスタが前記制御信号および前記反転信号に基づいてオン状態およびオフ状態のいずれかに同時に移行することにより、前記一対の入出力端子間での前記伝送信号の伝送をオン・オフするアナログスイッチ回路と、
設定された電圧で前記高電位電圧を生成して前記高電位電源端子に出力する高電位電源部と、
設定された電圧で前記低電位電圧を生成して前記低電位電源端子に出力する低電位電源部と、
前記伝送信号の既知の最大電圧および最小電圧に対応して、予め決められた電圧だけ前記最大電圧よりも高い電圧を前記高電位電源部に設定して前記高電位電圧として生成させると共に、予め決められた電圧だけ前記最小電圧よりも低い電圧を前記低電位電源部に設定して前記低電位電圧として生成させる制御部とを備えているスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインスイッチがMOSトランジスタで構成されたアナログスイッチ回路を有するスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチ装置に使用される一般的なアナログスイッチ回路として、下記特許文献1において従来の技術として開示されたアナログスイッチ回路が知られている。このアナログスイッチ回路2は、図3に示すように、伝送信号S1が入力・出力される一対の入出力端子11,12、制御信号S2が入力される1つの制御端子13、高電位電圧Vddが入力される高電位電源端子14、低電位電圧Vssが入力される低電位電源端子15、pチャネルMOSトランジスタQ1およびnチャネルMOSトランジスタQ2で構成されたメインスイッチ16、pチャネルMOSトランジスタQ3およびnチャネルMOSトランジスタQ4で構成されてメインスイッチ16のバックゲートを制御する一方の制御スイッチ17、pチャネルMOSトランジスタQ5およびnチャネルMOSトランジスタQ6で構成されてメインスイッチ16のバックゲートを制御する他方の制御スイッチ18、各MOSトランジスタQ3,Q4,Q5,Q6を介してMOSトランジスタQ2のバックゲート電位を制御するプルダウン用のnチャネルMOSトランジスタQ7、およびコントロール回路19を備えている。
【0003】
このコントロール回路19は、低電位電圧Vssを基準電位とした高電位電圧Vddを作動用電圧として作動すると共に、制御端子13から入力される制御信号S2に基づいて反転信号(制御信号S2と逆相の信号)S3および制御信号S4(制御信号S2と同相の信号)を生成して上記の各MOSトランジスタQ1〜Q7のゲート端子に供給する。これにより、コントロール回路19は、メインスイッチ16をオン・オフ動作させる。この場合、反転信号S3および制御信号S4は、コントロール回路19が低電位電圧Vssを基準電位とした高電位電圧Vddを作動用電圧として作動する構成のため、そのLレベルは低電位電圧Vss近傍の電圧になり、そのHレベルは高電位電圧Vdd近傍の電圧になる。
【0004】
また、このアナログスイッチ回路2を使用するスイッチ装置では、高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssとして、アナログスイッチ回路2の正電源電圧についての最大定格(高電圧側の最大定格)V+および負電源電圧についての最大定格(低電圧側の最大定格)V−を供給する構成が一般的に採用されている。このため、この構成では、コントロール回路19から出力される反転信号S3および制御信号S4は、そのLレベルが最大定格V−近傍の電圧になり、そのHレベルは最大定格V+近傍の電圧になる。
【0005】
このアナログスイッチ回路2では、コントロール回路19にHレベルの制御信号S2が入力されているときには、コントロール回路19は、最大定格V−近傍の電圧(Lレベル)の反転信号S3、および最大定格V+近傍の電圧(Hレベル)の制御信号S4を出力する。これにより、このLレベルの反転信号S3がゲート端子に供給されているpチャネルMOSトランジスタQ1,Q3,Q5はオン状態に移行し、またこのHレベルの制御信号S4がゲート端子に供給されているnチャネルMOSトランジスタQ2,Q4,Q6も同時にオン状態に移行する。一方、Lレベルの反転信号S3がゲート端子に供給されているnチャネルMOSトランジスタQ7はオフ状態に移行する。これにより、アナログスイッチ回路2は、一対の入出力端子11,12間での伝送信号S1の伝送が可能なオン状態に移行する。
【0006】
他方、コントロール回路19にLレベルの制御信号S2が入力されているときには、コントロール回路19は、最大定格V+近傍の電圧(Hレベル)の反転信号S3、および最大定格V−近傍の電圧(Lレベル)の制御信号S4を出力する。これにより、このHレベルの反転信号S3がゲート端子に供給されているpチャネルMOSトランジスタQ1,Q3,Q5はオフ状態に移行し、またこのLレベルの制御信号S4がゲート端子に供給されているnチャネルMOSトランジスタQ2,Q4,Q6も同時にオフ状態に移行する。一方、Hレベルの反転信号S3がゲート端子に供給されているnチャネルMOSトランジスタQ7はオン状態に移行して、メインスイッチ16のMOSトランジスタQ2のバックゲート電位が低電位電圧Vssにプルダウンされる。これにより、アナログスイッチ回路2は、一対の入出力端子11,12間での伝送信号S1の伝送が不能なオフ状態に移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−48520号公報(第2頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の構成のアナログスイッチ回路では、ゲート端子に供給される反転信号S3および制御信号S4のそれぞれの立ち上がり時および立ち下がり時(つまり、制御信号S2の立ち上がり時および立ち下がり時)に、メインスイッチ16を構成する各MOSトランジスタQ1,Q2、およびメインスイッチ16のバックゲートを制御する各制御スイッチ17,18を構成する各MOSトランジスタQ3,Q4,Q5,Q6のそれぞれに固有に存在するゲート・ソース間容量およびゲート・ドレイン間容量を経由して、各ゲート端子と一対の入出力端子11,12との間に電荷の移動が発生し、これに起因して入出力端子11,12の電圧が変動する(入出力端子11,12の電圧が振られる)という現象が必ず発生する。
【0009】
ところが、このアナログスイッチ回路2を使用する上記した従来のスイッチ装置のように、アナログスイッチ回路2の最大定格V+,V−を高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssとする構成では、アナログスイッチ回路2内の各MOSトランジスタQ1〜Q6のゲート端子には、上記したように、最大定格V+近傍の電圧(Hレベル)から最大定格V−近傍の電圧(Lレベル)に変化し、またこのLレベルからこのHレベルに変化する反転信号S3および制御信号S4が供給されるため、常に、最大定格V+,V−の電位差に応じた大きな電圧の変動が入出力端子11,12に生じ、この電圧の変動を低減するのが困難であるという解決すべき課題が存在している。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、制御信号の立ち上がり時および立ち下がり時に入出力端子に発生する電圧の変動を低減し得るスイッチ装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく請求項1記載のスイッチ装置は、伝送信号が入力・出力される一対の入出力端子、制御信号が入力される制御端子、高電位電源端子、低電位電源端子、pチャネルMOSトランジスタとnチャネルMOSトランジスタとで構成されるメインスイッチ、およびコントロール回路を備え、前記高電位電源端子に入力される高電位電圧および前記低電位電源端子に入力される低電位電圧で前記メインスイッチおよび前記コントロール回路が作動して、前記コントロール回路が前記制御信号の反転信号を生成すると共に当該制御信号および当該反転信号を前記メインスイッチに出力し、当該メインスイッチの前記各MOSトランジスタが前記制御信号および前記反転信号に基づいてオン状態およびオフ状態のいずれかに同時に移行することにより、前記一対の入出力端子間での前記伝送信号の伝送をオン・オフするアナログスイッチ回路と、設定された電圧で前記高電位電圧を生成して前記高電位電源端子に出力する高電位電源部と、設定された電圧で前記低電位電圧を生成して前記低電位電源端子に出力する低電位電源部と、前記伝送信号の既知の最大電圧および最小電圧に対応して、予め決められた電圧だけ前記最大電圧よりも高い電圧を前記高電位電源部に設定して前記高電位電圧として生成させると共に、予め決められた電圧だけ前記最小電圧よりも低い電圧を前記低電位電源部に設定して前記低電位電圧として生成させる制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のスイッチ装置によれば、伝送信号の最大電圧および最小電圧によっては、アナログスイッチ回路のメインスイッチの各MOSトランジスタのゲート端子に供給される反転信号および制御信号のHレベルとLレベルとの間の電位差を、アナログスイッチ回路における高電圧側の最大定格と低電圧側の最大定格との電位差よりも小さくすることができる。このため、このスイッチ装置によれば、メインスイッチの各MOSトランジスタが反転信号および制御信号に基づいてオン状態およびオフ状態のいずれかに同時に移行するときに、各MOSトランジスタのそれぞれに固有に存在するゲート・ソース間容量およびゲート・ドレイン間容量を経由して各ゲート端子と一対の入出力端子との間に発生する電荷の移動を充分に軽減することができ、その結果、一対の入出力端子に発生する電圧の変動を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アナログスイッチ回路2を使用したスイッチ装置1の構成を示す構成図である。
図2】スイッチ装置1の動作を説明するための波形図である。
図3】アナログスイッチ回路2の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、アナログスイッチ回路を有するスイッチ装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
最初に、スイッチ装置1の構成について、図1を参照して説明する。スイッチ装置1は、アナログスイッチ回路2、高電位電源部3、低電位電源部4および制御部5を備えている。この場合、高電位電源部3、低電位電源部4および制御部5はスイッチ装置1内に配設された不図示の電源から供給される作動電圧(またはスイッチ装置1の外部から供給される作動電圧)に基づいて作動する。一方、アナログスイッチ回路2は、後述するように、高電位電源部3から供給される高電位電圧Vddおよび低電位電源部4から供給される低電位電圧Vssを作動電圧として作動する。
【0019】
アナログスイッチ回路2は、一対の入出力端子11,12、1つの制御端子13、高電位電源端子14、低電位電源端子15、メインスイッチ16、制御スイッチ17,18、およびコントロール回路19を備えて、従来のアナログスイッチ回路2と同一に構成されている。この場合、入出力端子11,12のいずれか一方の入出力端子には、アナログスイッチ回路2の入力定格内に含まれるように最大電圧Vmaxおよび最小電圧Vminが既知の伝送信号S1が外部から入力され、メインスイッチ16がオン状態のときには、この伝送信号S1がアナログスイッチ回路2内を伝わって他方の入出力端子から出力される。また、制御端子13には、制御信号S2が入力される。また、高電位電源端子14には、高電位電源部3から高電位電圧Vddが供給され、低電位電源端子15には、低電位電源部4から低電位電圧Vssが供給される。
【0020】
メインスイッチ16は、pチャネルMOSトランジスタQ1およびnチャネルMOSトランジスタQ2で構成されている。一方の制御スイッチ17は、pチャネルMOSトランジスタQ3およびnチャネルMOSトランジスタQ4で構成されて、メインスイッチ16のバックゲートを制御する。他方の制御スイッチ18も、pチャネルMOSトランジスタQ5およびnチャネルMOSトランジスタQ6で構成されて、メインスイッチ16のバックゲートを制御する。nチャネルMOSトランジスタQ7は、各MOSトランジスタQ3,Q4,Q5,Q6を介してMOSトランジスタQ2のバックゲート電位を制御する。
【0021】
コントロール回路19は、一例として直列接続された2つのインバータで構成されて、制御端子13から入力された制御信号S2に基づいて、制御信号S2と逆相の反転信号S3と、制御信号S2と同相の制御信号S4を生成して、各MOSトランジスタQ1〜Q6のゲート端子に供給することにより、メインスイッチ16をオン・オフ動作させる。また、コントロール回路19は、反転信号S3をnチャネルMOSトランジスタQ7のゲート端子に供給して、nチャネルMOSトランジスタQ7をオン・オフ動作させる。このコントロール回路19は、高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssを作動電圧として作動する。このため、コントロール回路19は、Hレベルが高電位電圧Vdd近傍の電圧となり、Lレベルが低電位電圧Vss近傍の電圧となる反転信号S3および制御信号S4を出力する。
【0022】
高電位電源部3は、出力する直流電圧が制御部5によって制御される可変電圧電源で構成されている。また、高電位電源部3は、制御部5から出力される高電位データDv1を入力すると共に、この高電位データDv1で規定される電圧値の直流電圧を高電位電圧Vddとして生成して、アナログスイッチ回路2の高電位電源端子14に供給する。低電位電源部4は、出力する直流電圧が制御部5によって制御される可変電圧電源で構成されている。また、低電位電源部4は、制御部5から出力される低電位データDv2を入力すると共に、この低電位データDv2で規定される電圧値の直流電圧を低電位電圧Vssとして生成して、アナログスイッチ回路2の低電位電源端子15に供給する。
【0023】
制御部5は、高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssを示す電圧データDvを外部から入力すると共に、この電圧データDvで示される高電位電圧Vddを表す高電位データDv1と、電圧データDvで示される低電位電圧Vssを表す低電位データDv2とを生成して、高電位データDv1を高電位電源部3に、低電位データDv2を低電位電源部4にそれぞれ出力する。
【0024】
次に、スイッチ装置1の操作方法と共に動作について説明する。なお、スイッチ装置1のアナログスイッチ回路2における一方の入出力端子(一例として入出力端子11)に伝送信号S1を入力して、他方の入出力端子(一例として入出力端子12)から出力する例を挙げて説明する。
【0025】
このスイッチ装置1では、まず、伝送信号S1の入力に先立ち、伝送信号S1の最大電圧Vmaxおよび最小電圧Vmin(いずれも既知)と、アナログスイッチ回路2の正電源電圧についての最大定格V+および負電源電圧についての最大定格V−(いずれも既知)とに基づいて設定されたアナログスイッチ回路2に供給する高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssを示す電圧データDvが制御部5に入力される。この場合、高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssは以下のようにして予め設定された電圧である。
【0026】
図2に示す期間T1のように、伝送信号S1の最大電圧Vmaxと最大定格V+との間に余裕(十分な電位差)があり、かつ伝送信号S1の最小電圧Vminと最大定格V−との間に余裕(十分な電位差)があるときには、高電位電圧Vddについては、最大電圧Vmaxよりも僅かに高い電圧(予め決められた僅かな電圧Vα1(例えば、MOSFETの閾値電圧)だけ高い電圧)であって、かつ最大定格V+よりも低い電圧に設定し、低電位電圧Vssについては、最小電圧Vminよりも僅かに低い電圧(予め決められた僅かな電圧Vα2(例えば、MOSFETの閾値電圧)だけ低い電圧。なお、Vα2=Vα1としてもよい)であって、かつ最大定格V−よりも高い電圧に設定される。
【0027】
一方、図2に示す期間T2のように、伝送信号S1の振幅が大きいために、最大電圧Vmaxと最大定格V+との間の余裕が少ない(電位差が電圧Vα1未満である)場合には、上記の期間T1のときと同様にして高電位電圧Vddを設定したときには、高電位電圧Vddが最大定格V+を超える状態になることから、高電位電圧Vddは最大定格V+と同じ電圧(最大電圧Vmaxよりも僅かに高い電圧の他の例)に設定される。同様にして、最小電圧Vminと最大定格V−との間の余裕が少ない(電位差が電圧Vα2未満である)場合には、上記の期間T1のときと同様にして低電位電圧Vssを設定したときには、低電位電圧Vssが最大定格V−を下回る状態になることから、低電位電圧Vssは最大定格V−と同じ電圧(最小電圧Vminよりも僅かに低い電圧の他の例)に設定される。
【0028】
制御部5は、入力した電圧データDvで示される高電位電圧Vddを表す高電位データDv1と、電圧データDvで示される低電位電圧Vssを表す低電位データDv2とを生成して、高電位電源部3および低電位電源部4に出力する。これにより、高電位電源部3は、この高電位データDv1で規定される電圧値の直流電圧を高電位電圧Vddとして生成して、アナログスイッチ回路2の高電位電源端子14に供給し、低電位電源部4は、この低電位データDv2で規定される電圧値の直流電圧を低電位電圧Vssとして生成して、アナログスイッチ回路2の低電位電源端子15に供給する。これにより、アナログスイッチ回路2は、供給されている高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssに基づいて、作動状態に移行する。
【0029】
このようにしてアナログスイッチ回路2が作動状態に移行し、かつ伝送信号S1がアナログスイッチ回路2の入出力端子11に入力されている状態において、制御信号S2のレベルがHレベルからLレベルに切り替えられてアナログスイッチ回路2の制御端子13に入力されたときには、アナログスイッチ回路2では各構成要素が以下のように作動する。
【0030】
この場合、アナログスイッチ回路2では、コントロール回路19が、反転信号S3のレベルをLレベルからHレベルに切り替えると共に、制御信号S4のレベルをHレベルからLレベルに切り替えて、反転信号S3については、メインスイッチ16および制御スイッチ17,18の各pチャネルMOSトランジスタQ1,Q3,Q5のゲート端子と、nチャネルMOSトランジスタQ7のゲート端子とに出力し、制御信号S4については、メインスイッチ16および制御スイッチ17,18の各nチャネルMOSトランジスタQ2,Q4,Q6のゲート端子に出力する。これにより、メインスイッチ16は、そのMOSトランジスタQ2のバックゲート電位がMOSトランジスタQ7によって低電位電圧Vssにプルダウンされた状態でオフ状態に移行する。したがって、アナログスイッチ回路2は、一対の入出力端子11,12間での伝送信号S1の伝送が不能なオフ状態に移行するため、入出力端子11に入力されている伝送信号S1の入出力端子12からの出力は停止される。
【0031】
次いで、このオフ状態において、制御信号S2のレベルがLレベルからHレベルに切り替えられたときには、アナログスイッチ回路2では各構成要素が以下のように作動する。
【0032】
この場合、アナログスイッチ回路2では、コントロール回路19が、反転信号S3のレベルをHレベルからLレベルに切り替えると共に、制御信号S4のレベルをLレベルからHレベルに切り替えて、メインスイッチ16および制御スイッチ17,18の対応する各MOSトランジスタQ1〜Q6のゲート端子と、nチャネルMOSトランジスタQ7のゲート端子とに出力する。これにより、制御スイッチ17,18と共にメインスイッチ16はオン状態に移行する。なお、MOSトランジスタQ7はオフ状態に移行するため、MOSトランジスタQ2のバックゲート電位がMOSトランジスタQ7によって低電位電圧Vssにプルダウンされる状態は解除されている。したがって、アナログスイッチ回路2は、一対の入出力端子11,12間での伝送信号S1の伝送が可能なオン状態に移行するため、入出力端子11に入力されている伝送信号S1の入出力端子12からの出力が開始される。
【0033】
このように、このスイッチ装置1では、設定された電圧値(高電位データDv1で規定される電圧値)で高電位電圧Vddを生成してアナログスイッチ回路2の高電位電源端子14に出力する高電位電源部3と、設定された電圧値(低電位データDv2で規定される電圧値)で低電位電圧Vssを生成してアナログスイッチ回路2の低電位電源端子15に出力する低電位電源部4と、伝送信号S1の最大電圧Vmaxよりも僅かに高い電圧を高電位電源部3に設定して高電位電圧Vddとして生成させると共に、伝送信号S1の最小電圧Vminよりも僅かに低い電圧を低電位電源部4に設定して低電位電圧Vssとして生成させる制御部5とを備えている。
【0034】
これにより、このスイッチ装置1では、図2に示す期間T1のときのように、伝送信号S1の最大電圧Vmaxと最大定格V+との間に余裕があり、かつ伝送信号S1の最小電圧Vminと最大定格V−との間に余裕があるときには、高電位電圧Vddについては、最大電圧Vmaxよりも僅かに高い電圧(僅かな電圧Vα1だけ高い電圧)であって、かつ最大定格V+よりも低い電圧に設定し、また低電位電圧Vssについては、最小電圧Vminよりも僅かに低い電圧(僅かな電圧Vα2だけ低い電圧)であって、かつ最大定格V−よりも高い電圧に設定することが可能になっている。
【0035】
したがって、このスイッチ装置1によれば、伝送信号S1の最大電圧Vmaxおよび最小電圧Vminによっては、アナログスイッチ回路2のメインスイッチ16および制御スイッチ17,18の各MOSトランジスタQ1〜Q6のゲート端子に供給される反転信号S3および制御信号S4のHレベルとLレベルとの間の電位差を、アナログスイッチ回路2の最大定格V+,V−の電位差よりも小さくすることができる。このため、このスイッチ装置1によれば、反転信号S3および制御信号S4のHレベルからLレベルへの変化時、およびLレベルからHレベルへの変化時に(つまり、制御信号S2の立ち上がり時および立ち下がり時に)、各MOSトランジスタQ1〜Q6のそれぞれに固有に存在するゲート・ソース間容量およびゲート・ドレイン間容量を経由して各ゲート端子と一対の入出力端子11,12との間に発生する電荷の移動を充分に軽減することができ、その結果、入出力端子11,12に発生する電圧の変動を大幅に低減することができる。
【0036】
なお、上記のスイッチ装置1では、伝送信号S1の最大電圧Vmaxおよび最小電圧Vminに対応させて、アナログスイッチ回路2の高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssの双方を任意に設定し得るように、高電位電圧Vdd用の高電位電源部3と低電位電圧Vss用の低電位電源部4の双方を可変電圧電源で構成しているが、伝送信号S1の最小電圧Vminが一定の場合(最小電圧Vminが変更されない場合)には、変更される最大電圧Vmaxにのみ対応させて、アナログスイッチ回路2の高電位電圧Vddのみを任意に設定し得るように、高電位電圧Vdd用の高電位電源部3のみを可変電圧電源で構成し、低電位電圧Vss用の低電位電源部4については固定電圧電源とする構成を採用することもできる。また、逆に、伝送信号S1の最大電圧Vmaxが一定の場合(最大電圧Vmaxが変更されない場合)には、変更される最小電圧Vminにのみ対応させて、アナログスイッチ回路2の低電位電圧Vssのみを任意に設定し得るように、低電位電圧Vss用の低電位電源部4のみを可変電圧電源で構成し、高電位電圧Vdd用の高電位電源部3については固定電圧電源とする構成を採用することもできる。
【0037】
これらの構成を採用したスイッチ装置1においても、伝送信号S1の最大電圧Vmaxまたは最小電圧Vminによっては、アナログスイッチ回路2のメインスイッチ16および制御スイッチ17,18の各MOSトランジスタQ1〜Q6のゲート端子に供給される反転信号S3および制御信号S4のHレベルとLレベルとの間の電位差を、アナログスイッチ回路2の最大定格V+,V−の電位差よりも小さくすることができる。このため、これらのスイッチ装置1によっても、反転信号S3および制御信号S4のHレベルからLレベルへの変化時、およびLレベルからHレベルへの変化時に(つまり、制御信号S2の立ち上がり時および立ち下がり時に)、各MOSトランジスタQ1〜Q6のそれぞれに固有に存在するゲート・ソース間容量およびゲート・ドレイン間容量を経由して各ゲート端子と一対の入出力端子11,12との間に発生する電荷の移動を軽減することができ、その結果、入出力端子11,12に発生する電圧の変動を低減することができる。
【0038】
なお、上記の例では、高電位電源部3および低電位電源部4とは別体に制御部5を配設して、この制御部5が外部から高電位電圧Vddおよび低電位電圧Vssを示す電圧データDvを入力すると共に、高電位電圧Vddを示す高電位データDv1を生成して高電位電源部3に出力し、低電位電圧Vssを示す低電位データDv2を生成して低電位電源部4に出力する構成を採用しているが、この制御部5に相当する構成を高電位電源部3と低電位電源部4がそれぞれに内蔵する構成を採用して、高電位電源部3が外部から高電位データDv1を入力して高電位電圧Vddを生成し、低電位電源部4が外部から低電位データDv2を入力して低電位電圧Vssを生成する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 スイッチ装置
2 アナログスイッチ回路
3 高電位電源部
4 低電位電源部
5 制御部
11,12 入出力端子
13 制御端子
14 高電位電源端子
15 低電位電源端子
16 メインスイッチ
19 コントロール回路
Q1 pチャネルMOSトランジスタ
Q2 nチャネルMOSトランジスタ
S1 伝送信号
S2,S4 制御信号
S3 反転信号
Vdd 高電位電圧
Vss 低電位電圧
図1
図2
図3