特許第6071437号(P6071437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6071437凹凸伸縮性トリコット編地と、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071437
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】凹凸伸縮性トリコット編地と、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/18 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   D04B21/18
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-243981(P2012-243981)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91888(P2014-91888A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】393018358
【氏名又は名称】福井経編興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598012072
【氏名又は名称】澤村株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】高木 義秀
(72)【発明者】
【氏名】山本 延広
(72)【発明者】
【氏名】田口 慎一
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−144288(JP,A)
【文献】 実公昭50−035172(JP,Y1)
【文献】 特開平07−048766(JP,A)
【文献】 特開昭58−163765(JP,A)
【文献】 特開2006−265785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 21/00−21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非伸縮編成糸のシンカーループが伸縮編成糸のシンカーループより外側に位置して、非伸縮編成糸と伸縮編成糸とが、それぞれ編み込み組織で編成されてなる伸縮性トリコット編地であって、非伸縮編成糸が所要複数本数毎に区分され、それぞれの区分内において、所要コース数間隔毎に、所要コース数に渡って、非伸縮編成糸のシンカーループの長さを前記所要コース数間隔におけるシンカーループの長さに比して増長することによるシンカーループの膨出及び該シンカーループの下側に位置する伸縮編成糸の収縮力とにより凸部が形成されていると共に、互いに隣接する区分の凸部が互い違いに形成されていることにより凸部が市松状に配されてなり、所要複数本数が3本〜8本であり、区分内における所要コース数間隔が6コース〜14コースであり、所要コース数が6〜14コースであることを特徴とする表面に凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地。
【請求項2】
非伸縮編成糸の編み込み組織がコード組織(1−0/2−3)で、伸縮編成糸の編み込み組織がデンビー組織(1−2/1−0)であることを特徴とする請求項1記載の表面に凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地。
【請求項3】
市松状に配された凸部が同寸、同形状であることを特徴とする請求項1記載の表面に凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地。
【請求項4】
非伸縮編成糸が8〜84dtexの合成繊維であり、伸縮編成糸が8〜78dtexのポリウレタン糸であることを特徴とする請求項1記載の表面に凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地。
【請求項5】
非伸縮編成糸と伸縮編成糸とを編み込み組織により編成する際、非伸縮編成糸によるシンカーループを伸縮編成糸によるシンカーループより外側にして編成すると共に非伸縮編成糸を所要本数毎に区分し、それぞれの区分内の非伸縮編成糸の送り出し長を所要コース数間隔おきに所要コース数に渡って、前記所要コース数間隔における送り出し長に比して増長させて編成して、増長させた所要コース数分の前記非伸縮編成糸のシンカーループを外側へ膨出させると共に非伸縮編成糸の下側に位置する伸縮編成糸の収縮作用とで凸部を形成させて表面に凹凸を形成し、所要複数本数が3本〜8本であり、区分内における所要コース数間隔が6コース〜14コースであり、所要コース数が6〜14コースであることを特徴とする凹凸伸縮性トリコット編地の編成方法。
【請求項6】
表面に凸部を形成することを区分毎に互い違いに行って、凸部を市松状に配して表面に凹凸を形成することを特徴とする請求項記載の凹凸伸縮性トリコット編地の編成方法。
【請求項7】
所要コース数に渡って増長させる送り出し長が、所要コース数間隔における送り出し長に比して15%〜30%増の範囲であることを特徴とする請求項記載の凹凸伸縮性トリコット編地の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有するトリコット編地に関し、詳しくは、表面に凸部を細かく配して、表面が着用者の身体に密着することを防ぐと共に、凸部内や着用者の身体との間に空気層を形成して断熱効果を得ることが可能な凹凸伸縮性トリコット編地に関する。
【0002】
〔背景技術〕
各種ファッション衣料やスポーツ衣料等に使用される素材の一つとしてトリコット編地がある。トリコット編地は、経編地に分類され、その組織構造上、薄手、軽量が可能であり、その利点により水着や女性用インナーとして広く用いられている。
【0003】
そして、昨今は、薄手、軽量に加えて高い伸縮性が要求され、高伸縮性を有するトリコット編地が開発されて汎用化している。
この高伸縮性トリコット編地の特徴は、薄手、軽量、表面平滑、身体への充分なフィット性である。
【0004】
高伸縮性の付与については、例えば、特許文献1に示されるように、ナイロン等の非弾性糸とポリウレタン糸等の弾性糸を同組織で併せて編成し、高伸縮性経編地を得ている。
非弾性糸の送り出し長を弾性糸のそれよりも大きくして被覆効果を得て、美しい編目の表面を有し、しかも裁断しても解れない高伸縮性トリコット編地を提案している。
【0005】
また、特許文献2では、光沢感を有し、薄地であると共に防風性に優れたストレッチ性を有する28ゲージ以上のトリコット編地を提案している。弾性糸としてはポリウレタン糸を用いていて、非弾性糸にはポリエステル糸を用いている。
【0006】
そして、特許文献3では、非弾性糸と弾性糸と熱融着糸を用いて、裁断した際の解れ防止を可能にした伸縮性トリコット編地が提案されている。
【0007】
更に、特許文献4では、更なる高伸縮性を得るために、編成糸としてポリウレタン糸のような高弾性糸のみを使って、ウエール方向とコース方向の伸長率の和が600%以上であるトリコット編地が提案されている。
【0008】
このように、多くの高伸縮性トリコット編地が提案され、スポーツ衣料やインナー衣料等の分野で使用されてきた。これら高伸縮性トリコット編地は、いずれも組織構造が極めてシンプルで、薄手、軽量で表面が平滑であり、美しい光沢感を有していて、身体にフィットする特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−201654号
【特許文献2】特許第4427709号
【特許文献3】特開2008−240183号
【特許文献4】特開2012−144836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、高伸縮性トリコット編地については多くの提案がなされてきた。しかし、これらの高伸縮性トリコット編地は、インナー衣料やスポーツ衣料等の素材としては、薄手、軽量、表面が平滑で、しかもフィット性に優れている長所を発揮してきたが、消費者の要望が多様化している現在、解決すべき更なる機能要求が出てきた。
【0011】
それは、薄手、軽量で高伸縮性によるフィット性を維持しつつ、身体に触れる面積を極力減らし、良い着用感を得ると言う、相反する要求である。
また、従来の高伸縮性トリコット編地の利点を維持しつつ、身体と素材の間に空気層を作り、断熱効果を得るという要求である。
【0012】
上記要求の内、身体に触れる面積を減らす要求は、高伸縮性トリコット編地は、その高伸縮性により、例えばこれを女性用のインナー衣料に使用した場合、時には肌に素材が密着して良好な着心地を得られるが、時には密着することが不快になる場合がある。
蒸し暑く、汗が出るような状態ではインナー衣料が肌に触れることが不快となる場合などである。
【0013】
また、従来の高伸縮性トリコット編地は薄地であり、例えばインナー衣料がその良好なフィット性により肌に密着している場合、外気温が直接、肌に伝わってしまう問題がある。
これは、あまりにフィット性が高いと、肌とインナー衣料との間に空気層が形成されず、断熱効果が発揮されないことに起因する。
断熱効果は、寒い季節においても暑い季節においても必要な機能である。
空気層は、寒い時には冷気を、暑い時には暖気を遮断する効果を持つ。
特に寒いときには、温かい空気層を維持して心地よい暖かさを維持する効果を発揮する。
そして適度な通気性も求められる。
【0014】
このような要求の観点から従来技術を見てみると、特許文献1〜特許文献4における伸縮性トリコット編地は、いずれも充分な伸縮性と、薄手、軽量、更には表面が平滑で美しい長所を有してはいるものの、身体に密着し易いことや空気層の形成に配慮されていない等の解決すべき問題がある。
【0015】
本発明は、以上のような諸事情を背景になされたものである。
すなわち、本発明の目的とするところは、身体にフィットするための高い伸縮性を有しつつ、身体に密着する部分を可能な限り少なくして着用感の向上をはかると共に、身体と生地との間や生地自体に空気層を形成することを可能とした従来にない高伸縮性トリコット編地を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、鋭意、研究した結果、発明者等は、非伸縮編成糸と伸縮編成糸とで伸縮性トリコット編地を編成し、その際、非伸縮編成糸を所要本数毎に区分し、互いに隣接する区分の非伸縮編成糸の送り出し長を互い違いに増減することを繰り返して、表面に市松状に凸部を付与し、その凸部によって表面が着用者の身体に密着することを防ぐと共に、凸部内や身体と生地の間に空気層を形成して断熱効果を得た凹凸伸縮性トリコット編地を開発したものである。
【0017】
即ち、本発明は、(1)、非伸縮編成糸のシンカーループが伸縮編成糸のシンカーループより外側に位置して、非伸縮編成糸と伸縮編成糸とが、それぞれ編み込み組織で編成されてなる伸縮性トリコット編地であって、非伸縮編成糸が所要複数本数毎に区分され、それぞれの区分内において、所要コース数間隔毎に、所要コース数に渡って、非伸縮編成糸のシンカーループの長さを前記所要コース数間隔におけるシンカーループの長さに比して増長することによるシンカーループの膨出及び該シンカーループの下側に位置する伸縮編成糸の収縮力とにより凸部が形成されていると共に、互いに隣接する区分の凸部が互い違いに形成されていることにより凸部が市松状に配されてなり、所要複数本数が3本〜8本であり、区分内における所要コース数間隔が6コース〜14コースであり、所要コース数が6〜14コースである表面の凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地に存する。
【0018】
即ち、本発明は、(2)、 非伸縮編成糸の編み込み組織がコード組織(1−0/2−3)で、伸縮編成糸の編み込み組織がデンビー組織(1−2/1−0)である上記(1)記載の表面に凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地に存する。
【0020】
即ち、本発明は、()、市松状に配された凸部が同寸、同形状である上記(1)記載の表面に凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地に存する。
【0021】
即ち、本発明は、()、非伸縮編成糸が8〜84dtexの合成繊維であり、伸縮編成糸が8〜78dtexのポリウレタン糸である上記(1)記載の表面に凹凸を有する凹凸伸縮性トリコット編地に存する。
【0022】
即ち、本発明は、()、非伸縮編成糸と伸縮編成糸とを編み込み組織により編成する際、非伸縮編成糸によるシンカーループを伸縮編成糸によるシンカーループより外側にして編成すると共に非伸縮編成糸を所要本数毎に区分し、それぞれの区分内の非伸縮編成糸の送り出し長を所要コース数間隔おきに所要コース数に渡って、前記所要コース数間隔における送り出し長に比して増長させて編成して、増長させた所要コース数分の前記非伸縮編成糸のシンカーループを外側へ膨出させると共に非伸縮編成糸の下側に位置する伸縮編成糸の収縮作用とで凸部を形成させて表面に凹凸を形成し、所要複数本数が3本〜8本であり、区分内における所要コース数間隔が6コース〜14コースであり、所要コース数が6〜14コースである凹凸伸縮性トリコット編地の編成方法に存する。
【0023】
即ち、本発明は、()、表面に凸部を形成することを区分毎に互い違いに行って、凸部を市松状に配して表面に凹凸を形成する上記()記載の凹凸伸縮性トリコット編地の編成方法に存する。
【0024】
即ち、本発明は、()、所要コース数に渡って増長させる送り出し長が、所要コース数間隔における送り出し長に比して15%〜30%増の範囲である上記()記載の凹凸伸縮性トリコット編地の編成方法に存する。
【0025】
なお、本発明の目的に沿ったものであれば上記(1)〜()を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の凹凸伸縮性トリコット編地は、非伸縮編成糸と伸縮編成糸とで編成されていて、身体にフィットする高伸縮性を維持しつつ、表面に市松状に配された凸部により表面に凹凸が形成されているので、これを例えばインナー衣料に用いた場合、身体との接触が点接触に近い状態となり、密着することがなく極めて良好な着用感を得ることができる。
また、凸部内や凹凸と身体の間に空気層が形成され断熱効果が得られて冬温かく、夏涼しい利点がある。
【0027】
そして、本発明の凹凸伸縮性トリコット編地は、非伸縮編成糸を区分する本数や、送り出し長、並びに送り出し長を変化させるコース数等を自在に規格設計、設定できるので、凸部の幅や長さ、その高さ等を常に確実に再現でき、消費者の多様な要望に応じた製品展開が可能である利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、トリコット機の編機説明図(一部省略)である。
図2図2は、ハーフ組織の組織図である。
図3図3は、ハーフ組織の内、コード組織のみを記載し、且つオサL1とオサL2のガイドG1、G2への通糸状態を示した組織編成説明図である。
図4図4は、凸部が市松状に配された状態を示す表面模式図である。
図5図5は、凹凸伸縮性トリコット編地の断面説明図である。
図6図6は、凹凸伸縮性トリコット編地と着用者の肌との接触状態を示す着用断面説明図である。
図7図7は、略正方形に近い凸部Fが市松状に配置された凹凸伸縮性トリコット編地Kの表面模式図(一部省略)である。
図8図8は、一定送り出しの部分が交叉して格子形状をなした凹凸伸縮性トリコット編地の表面模式図(一部省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、図1の編機説明図(一部省略)に示すトリコット機M(28ゲージ)を使用している。
ここにゲージとは1インチ間にセットされるニードルNの本数を言う。
3枚のオサL1、L2、L3を擁し、機上には3本のビームシャフトR1、R2、R3が設けられている。
それぞれのビームシャフトR1、R2、R3にはビームB1、B2、B3がセットされていて編成糸Yが巻かれている。
【0031】
ビームB1には編成糸Y1が巻かれていて、オサL1を通してニードルNに案内されて編成される。そして、ビームB2には編成糸Y2が巻かれていて、オサL2を通してニードルNに案内されて編成される。
そして、ビームB3に巻かれた編成糸Y3は、オサL3を通してニードルNに案内されて編成される。
そして、オサL1、L2、L3には、トリコット機のゲージと同様に1インチ間に28枚の密度で、それぞれガイドG1、G2、G3が取り付けられている。
【0032】
編成糸Y1には、非伸縮編成糸であるポリエステル糸8〜84dtexを、編成糸Y2には、同じく非伸縮編成糸であるポリエステル糸8〜84dtexを用い、編成糸Y3には、伸縮編成糸であるポリウレタン糸8〜78dtexを用いる。
本実施の形態では、編成糸Y1と編成糸Y2はいずれも同一規格のものを使用している。
ここに、非伸縮編成糸とは、ポリエステル糸のように合成繊維としての一定の弾性は有するものの、ポリウレタン糸のような高伸縮性は有しない編成糸を言う。
そして、伸縮編成糸T3とは、ポリウレタン糸のような高伸縮性を有する編成糸を言う。
【0033】
こうして準備されたトリコット機Mにより、図2の組織図に示す編み込み組織であるハーフ組織Hで編成が行われる。
ここで、編み込み組織とはニードルループNLを形成する組織であり、ニードルループNLを形成しない挿入組織に相対する用語である。
ハーフ組織は、コード組織C(1−0/2−3)とデンビー組織D(1−2/1−0)で形成され、ここでは、オサL1とオサL2でコード組織C(1−0/2−3)を、オサL3でデンビー組織D(1−2/1−0)を編成する。
【0034】
図2の組織図について説明を容易にするために、図3の組織説明図にコード組織C(1−0/2−3)のみを示す。
図3に基づき、編成について説明する。編成糸Yを、3本〜8本の範囲内で所要複数本数に区分する。
例えば本実施の形態では5本、3本、5本、3本・・・と区分する。
そして、この内、5本に区分された編成糸Yを編成糸Y1とし、3本に区分された編成糸Yを編成糸Y2として、2系列に区分する。
こうして区分された編成糸Y1は、ビームB1に巻かれてオサL1で、編成糸Y2は、ビームB2に巻かれてオサL2で編成されるのである。
【0035】
そのために、編成糸Y1は、5イン3アウトでオサL1のガイドG1に通糸される。
5イン3アウトとは、ガイドの列に5本の編成糸を通糸して、次の3本のガイドには通糸しないことを繰り返す意味である。
そして、オサL2のガイドG2には、オサL1に対応して5アウト3インで編成糸Y2が通糸される。
図3の下方枠に、○印を付けて通糸したガイドを示している。
【0036】
そして、オサL1とオサL2は、いずれもコード組織C(1−0/2−3)を編成し、オサL1とオサL2は、互いに通糸してない部分を補完し合うので、結果的に1枚のオサのガイドにすべて通糸した場合と同様のコード組織C(1−0/2−3)が編成される。
つまり、オサL1とおさL2の2枚のオサで、一枚のオサの役割を果たしている。
【0037】
次に、上記のように通糸された編成糸Y1、Y2の編成の際の送り出し長について説明する。
編成糸Y1についてはビームシャフトR1の回転を制御して、送り出し長を所要コース数間隔毎に所要コース数に渡って変化させる。
所要コース数間隔は6〜14コース数の範囲内であり、所要コース数は6〜14コース数の範囲内である。
編成糸Y1に関して、例えば8コース分を一定の送り出し長で編成し、次の、例えば12コース分の編成の送り出し長を、先の8コース編成時の一定送り出し長よりも15%〜30%増長して編成する。
そして、次の、8コース分を、再び先の8コースの場合の一定の送り出し長に戻すことを繰り返す。
【0038】
つまり、8コースを一定送り出し長、12コースを例えば20%増長した送り出し長として、一定、増長、一定、増長・・・と繰り返す。
そして、編成糸Y2については、ビームシャフトR2の回転を制御して送り出し長を編成糸Y1の送り出しとは反対に変化させる。
つまり、送り出し長を8コースは20%増長、次の12コースは一定、再び次の8コースは増長と繰り返し変化させて、編成糸Y1の送り出しとは互い違いに変化させる。
【0039】
こうすることで、編地表面には送り出し長を20%増加した部分が凸部Fとなって市松状に配置される。
この20%増加することにより、非伸縮編成糸Y1のシンカーループSLが編地表面に膨出して凸部Fを形成する。
この凸部Fの形成については、シンカーループSLの膨出に加えて、該シンカーループSLの下側に位置する編成糸Y3のポリウレタン糸の高い収縮作用が働き、生地表面に凸部Fを形成するのである。
この結果、詳細には図4の表面模式図(一部省略)に示すように、7ウエール×12コースの大きさの凸部F1が8コース間隔で、また、5ウエール×8コースの凸部F2が12コース間隔で1列おきに互い違いに配されて、凸部F1、F2とが市松状に配されて表面が凹凸状態の凹凸伸縮性トリコット編地Kが形成される。
【0040】
そして、図5の断面説明図(図4におけるX−Xの断面図)に示すように、凸部FのシンカーループSLとニードルループNLの間には空間部A1が形成され、この空間部A1に保たれる空気が断熱効果を生み、外気の温度変化を遮断するので快適な着用感を生む。
また、図6の着用断面説明図(一部省略)に示すように、本凹凸伸縮性トリコット編地KのシンカーループSL側を内側にして、例えば女性用インナーを製造すれば、着用時には凸部Fが身体Vに触れて、身体Vと凹凸伸縮性トリコット編地Kが密着することがない。
このことにより着用感の向上が図られると共に、身体Vとの間に空気層A2が形成され、上記の空気層A1と相まって断熱効果を生み、快適な着用感を得ることができる。
また、空気層A1と空気層A2は、衣料内雰囲気の温度や湿度が一定以上に達した場合は、空気層A1、A2内の空気が排出、入れ替えされる通風機能性をも有し、更なる着用感の向上が図られる。
【0041】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、凸部Fを大きさが7ウエール×12コースの凸部F1と5ウエール×8コースの凸部F2の2種類として、これを交互に市松状に配置しているが、本実施の形態では、1種類の凸部Fを市松状に配置する。
具体的には、編成糸Y1をオサL1に3ン3アウトで通糸し、編成糸Y2をオサL2に3アウト3インで通糸する。そして、送り出し長を編成糸Y1に関しては、6コースを一定長で、次の6コースを25%増加して送り出して、これを繰り返す。
【0042】
こうすることで、凸部F1、F2の大きさは5ウエール×6コースの大きさとなり、図7の表面模式図(一部省略)に示すように、略正方形に近い凸部F1と凸部F2とが互い違いに市松状に配置される。
編成糸Y2については編成糸Y1の送り出しとは反対に行うのは第1の実施の形態と同様である。
このように凸部Fを小さめの同寸法、同形状とすることでデザイン的にシンプル化するとともに、身体Vとの接触において、均一な点接触に近い状態が得られる。
【0043】
そして、編成糸Y1として非伸縮編成糸であるポリエステル糸の例えば44dtex/24fを用い、編成糸Y2として非伸縮編成糸であるポリエステル糸の例えば22dtex/12fを用いる。
つまり、編成糸Y2を編成糸Y1の半分の太さとしている。
こうすることで、編成糸Y1と編成糸Y2とがより対称的になって縦方向のストライブが強調されて視覚的な変化が得られると共に、編成糸Y2部分の通気性が良くなる効果が得られて、使用目的の多様化が図られる。
【0044】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、その設定は第2の実施の形態と同様とし、編成糸Y1の送り出し長のみを一定、増加、一定、増加・・・と繰り返し変化させる。
編成糸Y2の送り出し長は、一定のままとして凸部Fを有しない平面列Pを形成するこうすることで、編成糸Y1については、6コースおきに5ウエール×6コースの凸部F1が形成され、編成糸Y2による平面列Pを挟んで配置される。
その結果、図8の表面模式図(一部省略)に示すように、一定送り出しの部分が交叉して格子形状となり、凸部Fとの間に縦横の空気層A2の形成が図られると共に、空気の通気路となって、空気の排出、入れ換えに機能し、一層の着用感の向上が図られる。
【0045】
以上、本発明をその実施の形態を例に説明したが、本発明は、その本質に変更のない限り、実施の形態のみに限定されるものではなく多様な変形例が可能である。
例えば、本実施の形態では、編み込み組織がハーフ組織の凹凸伸縮性トリコット編地Kについて説明したが、編み込み組織は、ハーフ組織に限らず、逆ハーフ組織やダブルデンビー組織等、その他、多くの変化組織の採用が可能である。
また、トリコット機のゲージについても28ゲージに限るものではない。
【0046】
そして、3枚オサに限らず、それ以上のオサを使用することで挿入組織やの他の編み込み組織を加えて、製品の多様化を図ることが可能である。
また、薄手、軽量の製品に限らず、太い編成糸を使用して表面変化に富んだ厚手の製品を得ることも可能である。
更に、編成糸Y1、編成糸Y2の送り出し長を一斉に一定長にする、或いは一斉に増加させることにより横ストライプを付与して表面効果を得ること等も可能である。
【0047】
そして、送り出し長の変化については、一定長に対する増加分を、例えば10%、20%、30%と混在させて設定することが可能である。
こうすることで凸部Fの高さが変化して、更に高い表面効果を得ることができる。
【0048】
また、非伸縮編成糸としては、ポリエステル糸等の合成繊維にクリンプを付与した加工糸などもその範疇に入れることが可能であり多様な製品展開が図ることが可能である。
そして、編成糸Y1、編成糸Y2については異繊度の採用のみならず、異色とすること、或いはナイロン糸とポリエステル糸の組み合わせと言ったように異素材とする事等が可能である。
そして、凸部Fの形状についても、編成糸Y1、編成糸Y2の送り出し長の組み合わせによって多様な形状の形成が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明における凹凸伸縮性トリコット編地Kは、スポーツ衣料やファンション衣料等に使用されるのみならず、布団やベッドカバー等の寝具、そして、椅子やソファのシート、車両用シート等、更には、医療用のサポーターや副資材等の幅広い分野に使用可能である。
【符号の説明】
【0050】
A1、A2・・・空気層
B1、B2、B3・・・ビーム
C・・・コード組織
D・・・デンビー組織
F、F1、F2・・・凸部
G1、G2、G3・・・ガイド
H・・・ハーフ組織
K・・・凹凸伸縮性トリコット編地
L、L1、L2、L3・・・オサ
M・・・トリコット機
N・・・ニードル
NL・・・ニードルループ
P・・・平面列
R1、R2、R3・・・ビームシャフト
SL・・・シンカーループ
V・・・身体
Y、Y1、Y2、Y3・・・編成糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8