特許第6071446号(P6071446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071446
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   B66F9/24 W
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-246978(P2012-246978)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-94802(P2014-94802A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】中澤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】小林 太
(72)【発明者】
【氏名】水口 裕朗
(72)【発明者】
【氏名】古荘 弘志
(72)【発明者】
【氏名】中盛 義正
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 祐太
(72)【発明者】
【氏名】宮本 拓
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−247478(JP,A)
【文献】 特開2012−121664(JP,A)
【文献】 特開昭62−218262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体上に設けられて作業装置を昇降移動させる昇降装置とを有する高所作業車であって、
前記昇降装置を昇降駆動する電動式の昇降モータと、
前記昇降モータに駆動用の電力を供給するバッテリと、
前記昇降装置の操作を行う昇降操作手段と、
前記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段と、
前記昇降操作手段の操作および前記充電状態検出手段により検出される結果に基づいて、前記バッテリから前記昇降モータに電力を供給する制御を行って前記昇降モータの駆動制御を行う駆動制御手段とを有し、
前記駆動制御手段は、
前記充電状態検出手段により前記バッテリの充電状態が満充電未満であることが検出されている状態において前記昇降操作手段により前記昇降装置を降下させる操作が行われたときに、当該操作に応じた速度で降下移動させるように前記昇降モータを回転させて回生発電を行い前記回生発電により得られた電力を前記バッテリに蓄電させる第1駆動制御を行い
前記充電状態検出手段により前記バッテリの充電状態が略満充電であることが検出されている状態において前記昇降操作手段により前記昇降装置を降下させる操作が行われたときに、前記第1駆動制御よりも回生発電効率を抑えた第2駆動制御を行うことを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記バッテリが略満充電で前記昇降装置を降下させる操作がされたときに、当該操作に対応した回転速度よりも低い回転速度で前記昇降モータを駆動させる制御を行うことにより前記第2駆動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、励磁電流およびトルク電流を用いたベクトル制御により前記昇降モータに電力を供給する制御を行うように構成されるとともに、前記励磁電流と前記トルク電流との比率に応じた複数の制御マップを備え、
前記駆動制御手段は、
前記バッテリが満充電未満で前記昇降装置を降下させる操作がされたときに、前記複数の制御マップのうちで当該操作に応じた速度で降下移動させながら前記昇降モータで回生発電させる回生制御マップに基づいて、前記昇降モータに電力を供給する制御を行い、
前記バッテリが略満充電で前記昇降装置を降下させる操作がされたときに、前記複数の制御マップのうちで前記回生制御マップよりも回生発電効率が低く設定された低効率制御マップに基づいて、前記昇降モータに電力を供給する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置により作業装置を昇降させるように構成された高所作業車に関し、さらに詳細には、この昇降装置を昇降駆動する昇降モータの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の高所作業車の一例として、複数のマスト部材を入れ子式に且つ伸縮自在に組み合わせて構成された垂直マスト式の昇降装置により、作業者が搭乗可能に構成された作業装置としての作業台を垂直昇降させるタイプの高所作業車が知られている。このように構成される高所作業車は、屋内作業に使用されることが多いため排気ガスを排出しない電動式のものが多い。この電動式の高所作業車としては、例えば特許文献1に、チェーン駆動により昇降マストを伸縮させる構成とし、バッテリから電動モータ(昇降モータ)に電力を供給してチェーンが巻き掛けられたスプロケットを回転駆動して、作業床(作業台)を昇降させる構成が開示されている。
【0003】
作業台には昇降装置の操作を行うための昇降操作手段が設けられており、この昇降操作手段の操作に基づいて昇降モータの駆動制御が行われる。例えば昇降操作手段が昇降側に操作されると、その操作量に応じた上昇速度となるように昇降モータの回転駆動が制御され、一方、昇降操作手段が降下側に操作されると、その操作量に応じた降下速度となるように、昇降モータの回転駆動が制御される。ところで近年、昇降操作手段が降下側に操作されて作業台を降下移動させるときに、作業台や作業台に搭乗した作業者等の自重に抗するように(制動力を作用させるように)昇降モータの回転制御を行い、作業台や作業台に搭乗した作業者等の位置エネルギーを電力に変換する技術(回生発電)が開発されている。このように回生発電を行って得られた電力をバッテリに蓄えることで、高所作業車の稼働時間を延ばすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−45999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリは略満充電状態でさらに電力が供給されると過充電状態となり、劣化して寿命が短くなるという問題がある。そこで、この問題の解決方法として、例えば電動モータ等を備えた電力消費回路を設けておき、バッテリが略満充電状態のときには、回生発電によって得られた電力をバッテリに供給するのではなく電力消費回路に供給して消費させる方法が考えられる。しかし、この方法の場合には、電力消費回路を追加して設ける分だけ、製造コストが増加したり装置構成が複雑になるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、製造コストを増加させることなく且つシンプルな構成でありながら、回生発電電力を小さくしてバッテリの劣化を防止可能な高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る高所作業車は、走行可能な車体(例えば、実施形態における走行台車2)と、前記車体上に設けられて作業装置(例えば、実施形態における作業台4)を昇降移動させる昇降装置(例えば、実施形態における昇降マスト3)とを有する高所作業車であって、前記昇降装置を昇降駆動する電動式の昇降モータと、前記昇降モータに駆動用の電力を供給するバッテリと、前記昇降装置の操作を行う昇降操作手段(例えば、実施形態における昇降操作レバー36)と、前記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段(例えば、実施形態におけるバッテリ電圧検出器19)と、前記昇降操作手段の操作および前記充電状態検出手段により検出される結果に基づいて、前記バッテリから前記昇降モータに電力を供給する制御を行って前記昇降モータの駆動制御を行う駆動制御手段(例えば、実施形態における車両コントローラ12、昇降インバータ13a)とを有する。そして、前記駆動制御手段は、前記充電状態検出手段により前記バッテリの充電状態が満充電未満であることが検出されている状態において前記昇降操作手段により前記昇降装置を降下させる操作が行われたときに、当該操作に応じた速度で降下移動させるように前記昇降モータを回転させて回生発電を行い前記回生発電により得られた電力を前記バッテリに蓄電させる第1駆動制御を行い、前記充電状態検出手段により前記バッテリの充電状態が略満充電であることが検出されている状態において前記昇降操作手段により前記昇降装置を降下させる操作が行われたときに、前記第1駆動制御よりも回生発電効率を抑えた第2駆動制御を行うことを特徴とする。
【0008】
上述の高所作業車において、前記駆動制御手段は、前記バッテリが略満充電で前記昇降装置を降下させる操作がされたときに、当該操作に対応した回転速度よりも低い回転速度で前記昇降モータを駆動させる制御を行うことにより前記第2駆動制御を行う構成としてもよい
【0009】
上述の高所作業車において、前記駆動制御手段は、励磁電流およびトルク電流を用いたベクトル制御により前記昇降モータに電力を供給する制御を行うように構成されるとともに、前記励磁電流と前記トルク電流との比率に応じた複数の制御マップを備え、前記駆動制御手段は、前記バッテリが満充電未満で前記昇降装置を降下させる操作がされたときに、前記複数の制御マップのうちで当該操作に応じた速度で降下移動させながら前記昇降モータで回生発電させる回生制御マップに基づいて、前記昇降モータに電力を供給する制御を行い、前記バッテリが略満充電で前記昇降装置を降下させる操作がされたときに、前記複数の制御マップのうちで前記回生制御マップよりも回生発電効率が低く設定された低効率消費制御マップに基づいて、前記昇降モータに電力を供給する制御を行う構成も好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高所作業車は、バッテリが略満充電であることが検出されている状態で昇降装置を降下させる操作がされたときに、昇降モータにおける回生発電量を抑制、あるいは消費電力を発生するように、駆動制御手段により昇降モータの駆動制御が行われる。このように、駆動制御手段による昇降モータの駆動制御によってバッテリの過充電を防止できるので、バッテリの過充電を防止するために例えば電力消費回路等を追加して設ける必要がない。よって、製造コストを増加させることなく且つシンプルな構成でありながら、回生発電電力を小さくしてバッテリの劣化を防止できる。
【0011】
なお、バッテリが略満充電で降下させる操作がされたときに、当該操作に対応した回転速度よりも低い回転速度で昇降モータを駆動させる構成が好ましい。このように構成すれば、バッテリの充電状態に応じて昇降モータの回転速度を制御するという簡単な方法により、回生発電電力を小さくしてバッテリの劣化を防止できる。
【0012】
上述の高所作業車において、励磁電流とトルク電流との比率に応じた複数の制御マップを備え、略満充電で降下操作されたときに、満充電未満のときに用いられる回生制御マップよりも回生発電効率が低く設定された低効率制御マップに基づいて、昇降モータを制御する構成も好ましい。このように構成した場合、例えば複雑な演算処理等を行うことなく、バッテリの充電状態に対応した制御マップを選択し、選択された制御マップに基づいて昇降モータを制御すれば、バッテリの過充電(過充電による劣化)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した一例としての高所作業車を示す側面図である。
図2】昇降マストの内部構造、および昇降マストを昇降させる伸縮駆動機構を示す概略図である。
図3】上記高所作業車の制御系統を示すブロック図である。
図4】(a)は誘導電動機の等価回路を、(b)はトルク電流 i2と励磁電流imと一次電流i1との関係のグラフを、(c)はトルク一定の場合のトルク電流i2と励磁電流imとの関係のグラフをそれぞれ示す。
図5】昇降インバータの構成を示すブロック図である。
図6】回生発電時のバッテリ端子電圧と降下時間との関係を示すグラフである。
図7】バッテリ電流と昇降モータの回転数との関係を示すグラフである。
図8】バッテリ電流と昇降モータの回転数との関係を示すグラフであって、(a)は回生発電効率の高い制御マップに基づくものを、(b)は回生発電効率の低いマップに基づくものである。
図9】降下操作されたときの昇降モータの制御を示すフローチャートである。
図10】降下操作されたときの昇降モータの制御を示す別のフローチャートである。
図11】複数の制御マップ毎のバッテリ電流と昇降モータの回転数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態においては、本発明を、複数のマスト部材を入れ子式に組み合わせて構成された昇降マスト3により作業台4を昇降させる、垂直昇降式の高所作業車1に適用した例について説明する。まず、図1図3を参照しながら、高所作業車1の概略構成について説明する。なお、以下においては説明の便宜のため、図1に付記する矢印方向を前後および上下と定義して説明を行なう。
【0015】
図1に高所作業車1を左側方から見た状態を示しており、この図1に示すように、高所作業車1は、走行可能な走行台車2と、走行台車2から上方に突出する伸縮式の昇降マスト3と、昇降マスト3の上部から後方に突出する作業者搭乗用の作業台4と、昇降マスト3を伸縮作動させる伸縮駆動機構5(図2参照)と、高所作業車1の作動を制御する制御ユニット6(図3参照)とを有して構成される。走行台車2は、台車本体10と、台車本体10の前後左右に設けられた走行車輪11と、走行車輪11を駆動して台車本体10を走行させる電動式の走行モータ20(図3参照)とを有して構成される。なお、走行モータ20には、走行モータ20の出力軸の回転速度を検出する走行モータ回転検出器22が設けられている(図3参照)。
【0016】
図2に昇降マスト3の内部構造を示しており、この図2に示すように、昇降マスト3は、走行台車2に立設された第1マスト部材23と、第1マスト部材23の外側に上下に移動可能に配置された第2マスト部材24と、第2マスト部材24の外側に上下に移動可能に配置された第3マスト部材25と、第3マスト部材25の外側に上下に移動可能に配置された第4マスト部材26とを有し、上下に伸縮可能に構成される。第1マスト部材23の上部には回転自在な上部スプロケット27が軸支されており、第2マスト部材24の下部に固着された無端状のチェーン28が、この上部スプロケット27と駆動軸17aに取り付けられた下部スプロケット17bとに掛け回されている。第2マスト部材24の上部には回転自在なシーブ29が軸支され、第1マスト部材23の上部に一端が固着されたワイヤ30がシーブ29に掛け回され、このワイヤ30の他端は第3マスト部材25の下部に固着されている。第3マスト部材25の上部には回転自在なシーブ31が軸支され、第2マスト部材24の上部に一端が固着されたワイヤ32がシーブ31に掛け回され、このワイヤ32の他端は第4マスト部材26の下部に固着されている。
【0017】
図2には昇降マスト3を昇降させる伸縮駆動機構5も示しており、この図2に示すように、伸縮駆動機構5は、三相交流誘導電動機からなる昇降モータ16と、昇降モータ16の出力軸の回転駆動を減速して駆動軸17aに出力する減速機17と、昇降モータ16に一体に取り付けられた保持ブレーキ18と、昇降モータ16の出力軸の回転速度を検出する昇降モータ回転検出器21とから構成される。保持ブレーキ18は、ソレノイド(図示せず)を内蔵するいわゆる無励磁作動型の電磁ブレーキである。駆動電流が供給されずソレノイドが励磁されないときにはバネ力等によりブレーキが作動して制動力により昇降モータ16の出力軸の回転を防止する。一方、駆動電流の供給を受けてソレノイドが励磁されると、その励磁力により上記バネ等の力に抗してブレーキを解除して昇降モータ16の出力軸の回転を許容する。上述したように、駆動軸17aには、チェーン28と噛合する下部スプロケット17bが取り付けられている。
【0018】
作業台4は、図1および図2に示すように、第4マスト部材26の後側壁部に後方に突出して設けられ、搭乗した作業者が操作する操作装置35を備える。操作装置35は、図3に示すように、例えば前後に傾動操作可能に設けられて昇降マスト3を昇降させる操作を行う昇降操作レバー36と、例えば前後に傾動操作可能に設けられて走行台車2を走行させる操作を行う走行操作レバー37と、例えば左右に回動操作可能に設けられて走行車輪11を転舵させる操作を行う操舵ダイヤル38とを備えて構成される。
【0019】
図3に高所作業車1の制御系統に関するブロック図を示しており、この図3に示すように、制御ユニット6は、制御ユニット6の中枢としての車両コントローラ12と、直流電力を交流電力に変換可能な昇降インバータ13a,走行インバータ13bと、複数の電源バッテリが直列に接続された直流電源であって充電状態に応じて電圧が変化するバッテリ14とから構成される。車両コントローラ12には、図6に示すように、バッテリ14が略満充電のときの満充電電圧V2と、この満充電電圧V2よりも若干低い判断電圧V1とが記憶されている。バッテリ14には、バッテリ14の端子電圧(充電状態)を検出するバッテリ電圧検出器19が設けられており、このバッテリ電圧検出器19により検出された結果は検出信号として車両コントローラ12に出力される。
【0020】
車両コントローラ12には、昇降操作レバー36、走行操作レバー37および操舵ダイヤル38から出力された操作信号が入力されるとともに、バッテリ14からの保持ブレーキ18を励磁するための駆動電流が昇降インバータ13aまたは走行インバータ13bを介して入力される。車両コントローラ12は、昇降操作レバー36から入力された操作信号に基づいて、バッテリ14からの駆動電流を保持ブレーキ18に供給する制御を行う。
【0021】
昇降インバータ13aには、昇降操作レバー36の操作に対応した操作信号(目標とする昇降モータ回転速度)が車両コントローラ12を介して入力されるとともに、昇降モータ回転検出器21からの検出信号(実際の昇降モータ回転速度)が入力される。また、昇降インバータ13aには、バッテリ14からの直流電力が入力される。昇降インバータ13aは、原則として実際の昇降モータ回転速度が目標とする昇降モータ回転速度となるように、バッテリ14からの直流電力を交流電力に変換して昇降モータ16に供給する制御を行う(詳しくは後述)。
【0022】
走行インバータ13bには、走行操作レバー37の操作に対応した操作信号(目標とする走行モータ回転速度)が車両コントローラ12を介して入力されるとともに、走行モータ回転検出器22からの検出信号(実際の走行モータ回転速度)が入力される。また、走行インバータ13bには、バッテリ14からの直流電力が入力される。走行インバータ13bは、実際の走行モータ回転速度が目標とする走行モータ回転速度となるように、バッテリ14からの直流電力を交流電力に変換して走行モータ20に供給する制御を行う。
【0023】
このように構成される高所作業車1においては、作業者が作業台4に搭乗して、昇降操作レバー36および走行操作レバー37を前後に傾動操作したり、操舵ダイヤル38を左右に回動操作することにより、走行台車2により高所作業車1を前後に走行させたり、昇降マスト3を昇降作動させて、作業者が搭乗する作業台4を所望の高所に移動させることができる。例えば、走行操作レバー37を中立位置から前後に傾動操作することにより、走行モータ20をその傾動操作量に応じた回転速度で正逆回転させて走行台車2を前進走行および後進走行させることができる。また、操舵ダイヤル38を中立位置から左右に回動操作することにより、走行車輪11を左旋回側および右旋回側に転舵させることができる。このため、走行操作レバー37の傾動操作および操舵ダイヤル38の回動操作を組み合わせて行い、高所作業車1を所望の場所に移動させることができる。
【0024】
また、例えば昇降操作レバー36を中立位置から前方に傾動操作すると、昇降モータ16がその傾動操作量に応じた回転速度で正回転されてチェーン28が回転駆動され、第1マスト部材23に対して第2マスト部材24、第2マスト部材24に対して第3マスト部材25、第3マスト部材25に対して第4マスト部材26がそれぞれ引き上げられる。このようにして昇降マスト3全体を伸長させることができ、作業者は、作業台4とともに所望の高所に移動することができる。
【0025】
一方、昇降操作レバー36が中立位置から後方に傾動操作されると、原則として昇降モータ16がその傾動操作量に応じた回転速度で逆回転されてチェーン28が回転駆動され、第1マスト部材23に対して第2マスト部材24、第2マスト部材24に対して第3マスト部材25、第3マスト部材25に対して第4マスト部材26がそれぞれ引き下げられる。このようにして昇降マスト3全体を縮小させることができ、作業者は、作業台4とともに高所から下方に移動することができる。
【0026】
以上ここまでは、高所作業車1の概略構成について説明した。次に、作業台4の昇降作動に関連する昇降インバータ13aおよび昇降モータ16について、図4および図5を参照しながら詳しく説明する。
【0027】
昇降モータ16のような三相交流誘導電動機への電流供給制御の方法としてベクトル制御が知られており、このベクトル制御について図4を参照しながら説明する。図4(a)には誘導電動機の等価回路を示しており、励磁電流をimと表し、トルク電流をi2と表したとき、ベクトル制御による誘導電動機への供給電流(一次電流i1)は、図4(b)に示す関係から次式(1)により求まる。
1=(im2+i221/2…(1)
【0028】
また、比例定数をKとしたとき、ベクトル制御により誘導電動機に電流供給制御を行って得られるトルクTは、次式(2)により求まる。
T=Kim×i2…(2)
【0029】
この式(2)から、所定のトルクを得るための励磁電流imとトルク電流i2とは反比例の関係にあり、そのため、所定のトルクを得るための励磁電流imおよびトルク電流i2は、図4(c)のように図示できる。つまり、励磁電流imとトルク電流i2とを調整すれば、異なる一次電流i1に基づいて所定のトルクを得る制御が可能になる。図4(c)に図示した点Aと点Bとを比較すると、どちらも所定のトルクを得ることができるが、それぞれの励磁電流imとトルク電流i2とが異なる。
【0030】
点A、点Bにおいて、それぞれの一次電流i1が式(1)から計算可能であり、点A、点Bの一次電流i1の大きさは、式(1)および図4(b)から、原点からの点A、点Bまでの距離となる。点Bに対して点Aは、原点からの距離が小さい、即ち一次電流i1が小さいことから、点Aでモータ駆動すれば所定のトルクを得るための一次電流i1を小さくできる。従って、点Aでモータ駆動すれば、小さな電力消費でありながら所定のトルクを出力させる駆動が可能になる(以下、この駆動状態を「効率が高い」と称す)。一方、点Aでモータ駆動する場合と比較して点Bでモータ駆動する場合には、所定のトルクを得るために一次電流i1を大きくする必要があり、電力消費が大きくなる(以下、この駆動状態を「効率が低い」と称す)。
【0031】
図5には昇降インバータ13aのブロック図を示しており、この図5から分かるように、昇降インバータ13aは、比較器41と、インバータコントローラ42とを備えて構成される。比較器41は、昇降モータ16で出力する複数のトルクそれぞれについて好ましい励磁電流imとトルク電流i2との組み合わせからなる制御マップ43を、複数記憶している。制御マップ43は、作業台4を上昇移動させるときにそのときの作動条件等(例えば、作動速度や作業台荷重等)に応じて読み出される複数の制御マップと、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときにそのときの作動条件等に応じて読み出される複数の制御マップとからなる。なお、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときに読み出される複数の制御マップには、後述するように回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップが含まれる。
【0032】
比較器41には、車両コントローラ12からの指令信号と、昇降モータ回転検出器21からの検出信号(実際のモータ回転速度)と、昇降モータ16の三相巻線の駆動電流とが入力される。車両コントローラ12からの指令信号には、要求トルク値(昇降マスト3を昇降させるのに必要なトルク)に対応する励磁電流imとトルク電流i2との組み合わせを、制御マップ43から選択する選択信号が含まれる。ここで、要求トルク値とは、昇降操作レバー36の操作量に応じた回転速度で昇降モータ36を回転させるために必要なトルク値であり、車両コントローラ12において算出される。比較器41は、昇降モータ16の三相巻線の駆動電流および昇降モータ16の回転速度がモニターされて入力され、入力された三相巻線の駆動電流および回転速度を基にして、パーク変換やクラーク変換を用いて励磁電流imおよびトルク電流i2を算出する。このようにして算出された励磁電流imおよびトルク電流i2が、所定のトルクを得るための励磁電流imおよびトルク電流i2と一致するように、インバータコントローラ42をフィードバック制御する。
【0033】
インバータコントローラ42は、例えばパーク変換やクラーク変換等を用いて、バッテリ14から供給される直流電流(一次電流i1)を基にして、昇降モータ16の三相巻線の駆動電流を生成する。
【0034】
以上、昇降インバータ13aおよび昇降モータ16について説明した。次に、このように構成される高所作業車1の作動制御について、昇降操作レバー36を操作して作業台4を昇降移動させる場合を例示して説明する。まず、昇降操作レバー36を操作して作業台4を上昇移動させる場合の作動制御ついて説明する。
【0035】
昇降操作レバー36が中立位置から前方に傾動操作されると、その操作に対応した操作信号(操作方向および操作量)が車両コントローラ12に入力される。車両コントローラ12は比較器41に対して、作業台4を上昇移動させるときの制御マップ43のうちからこのときの作動条件等に応じて最適もしくは最も効率が高くなる制御マップを選択する選択信号を出力し、要求トルク値に対応する励磁電流imとトルク電流i2との組み合わせを決定する。比較器41は、比較器41において算出された励磁電流imおよびトルク電流i2が、所定のトルクを得るための励磁電流imおよびトルク電流i2と一致するように、インバータコントローラ42をフィードバック制御する。これにより、バッテリ14に蓄えられた電流を、昇降操作レバー36の操作に応じて昇降モータ16に供給することで、昇降操作レバー36の操作に応じて作業台4を上昇移動させる。このように、作業台4を上昇移動させるときに、作業台4を上昇移動させるときの制御マップ43のうちからこのときの作動条件等に応じて最適もしくは最も効率が高くなる制御マップを選択すれば、電力消費を抑えて高所作業車1の稼動時間を延ばすことができる。
【0036】
以上ここまで、昇降操作レバー36を操作して作業台4を上昇移動させる場合の作動制御ついて説明した。次に、昇降操作レバー36を操作して作業台4を降下移動させる場合の作動制御について、図9に示すフローチャート50に従って説明する。
【0037】
昇降操作レバー36が中立位置から後方に傾動操作されると、その操作に対応した操作信号(操作方向および操作量)が車両コントローラ12に入力されるが、車両コントローラ12は、この操作信号を検出した場合にはステップS52に進み、この操作信号を検出しない場合にはこのフローを終了する。ステップS52に進むと、車両コントローラ12は、バッテリ電圧検出器19から入力された検出信号(バッテリ電圧V)を検出してステップS53に進む。
【0038】
続いてステップS53において、車両コントローラ12に記憶された判断電圧V1(図6参照)とステップS52で検出されたバッテリ電圧Vとを比較し、バッテリ電圧Vが判断電圧V1以下の場合にはステップS54に進み、一方、バッテリ電圧Vが判断電圧V1を超える場合にはステップS57に進む。ステップS53からステップS54に進むのは、バッテリ14が満充電未満で、作業台4等の自重により昇降モータ16で回生発電させて得られた電力を蓄える余裕がある場合である。よって、ステップS54に進んだ場合には、車両コントローラ12は、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、このときの作動条件等に応じて最適もしくは最も効率が高くなる制御マップを選択し、要求トルク値に対応する励磁電流imとトルク電流i2との組み合わせを決定する。これにより、昇降モータ16に制動トルクを発生させながら、昇降操作レバー36の操作量に応じた回転速度で昇降モータ16を回転させて回生発電を行い、作業台4を降下移動させる。このとき回生発電により得られた電力は、バッテリ14に蓄えられる。
【0039】
ステップS54が実行された後ステップS55に進み、ステップS55においては、昇降操作レバー36からの降下操作に対応する操作信号の入力を判断し、入力がある場合にはステップS56に進み、一方、入力がない場合には降下操作が終了したものと判断して、このフローを終了する。ところで、図6に点線で示す回生充電曲線aに示すように、降下開始時にはバッテリ電圧Vが判断電圧V1未満であっても、回生発電によりその降下操作の途中で満充電電圧V2を超える場合がある。この場合には、バッテリ14は過充電となり寿命を縮めることになり得る。そこで、ステップS55からステップS56に進むと、ステップS54を実行した後にバッテリ電圧検出器19から入力されたバッテリ電圧Vと、車両コントローラ12に記憶された満充電電圧V2とを比較し、バッテリ電圧Vが満充電電圧V2以下の場合にはステップS54に戻り、一方、バッテリ電圧Vが満充電電圧V2を超える場合にはステップS57に進む。このように、バッテリ電圧Vが満充電電圧V2以下である限り、降下操作に応じてステップS54を繰り返して昇降モータ16で回生発電を行い、バッテリ14に電力を蓄える。
【0040】
ここで、ステップS53からステップS57に進むのは、バッテリ電圧Vが判断電圧V1以上で且つ満充電電圧V2以下の場合、もしくはバッテリ電圧Vが満充電電圧V2よりも大きい場合である。バッテリ電圧Vが判断電圧V1以上で且つ満充電電圧V2以下の場合には、バッテリ14に電力を蓄える余裕が僅かに残っているが、この状態で作業台4を降下移動させながら回生発電を行うと、バッテリ電圧Vがすぐに満充電電圧V2に達することが予想される。また、バッテリ電圧Vが満充電電圧V2よりも大きい場合には、バッテリ14に電力を蓄える余裕が残っておらず、この状態で回生発電を行うと過充電となりバッテリ14の寿命を縮めることになり得る。また、ステップS56からステップS57に進むのも、バッテリ電圧Vが満充電電圧V2よりも大きい場合であり、この状態で回生発電を行うと過充電となりバッテリ14の寿命を縮めることになり得る。
【0041】
そこで、ステップS57においては、バッテリ14の過充電を防止するため車両コントローラ12は、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップを選択し、要求トルク値に対応する励磁電流imとトルク電流i2との組み合わせを決定する。これにより、回生電力よりも消費電力が上回るように昇降モータ16の効率を低くして駆動させる制御が行われ、バッテリ14に蓄えられた電力が昇降モータ16において消費されるので、バッテリ電圧Vを低下させることができる。
【0042】
図7には、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、作動条件等に応じて回生発電効率が高くなる制御マップを選択した場合のバッテリ電流と昇降モータ16の回転数との関係を示したグラフHと、回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップを選択した場合のバッテリ電流と昇降モータ16の回転数との関係を示したグラフLとを示している。グラフHとグラフLとを例えば回転数N1で比較すると、グラフLにおいてはA1の電力が消費されるのに対し、グラフHにおいてはA2(<A1)の電力が消費されることが分かる。このように、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときに、回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップを選択すれば、昇降モータ16においてバッテリ14の電力を効率良く消費させることができる。
【0043】
ところで、ステップS57において消費モードで駆動する場合、昇降モータ16をバッテリ電流が正となる回転速度域で駆動する必要がある。図8(a)にはグラフHのバッテリ電流が正となる回転速度域H1を示し、図8(b)にはグラフLのバッテリ電流が正となる回転速度域L1を示している。これらの図から分かるように、回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップを選択すれば、この例では回転数N2から回転数N3にバッテリ電流が正となる回転速度域の上限を拡大することができる。昇降操作レバー36の操作量が回転数N3に対応する操作量よりも大きい場合には、昇降操作レバー36の操作量に拘らず昇降モータ16が回転数N3以下の回転速度で駆動されることになる。ここで図8(b)に示すように、回転速度域L1を上限側に拡大させることで、昇降操作レバー36の操作量と昇降モータ16の回転速度(作業台4の降下速度)とのギャップを小さくすることができる。また、この消費モードにおける制御は、昇降操作レバー36の操作に拘らず昇降モータ16の回転速度を低下させる制御であるため支障はない。
【0044】
ステップS57が実行された後ステップS58に進み、ステップS58においては、昇降操作レバー36からの降下操作に対応する操作信号の入力を判断し、入力がある場合にはステップS57に戻り、一方、入力がない場合には降下操作が終了したものと判断して、このフローを終了する。
【0045】
上述の実施形態で説明したフローチャート50では、ステップS51で降下操作信号の入力の有無を判断した後、ステップS52でバッテリ電圧Vを検出したが、これら2つのステップの実行順序を入れ替えても良い。
【0046】
上述のフローチャート50のステップS54において、昇降操作レバー36の操作量に応じた回転速度で昇降モータ16を回転させて回生発電を行う制御について説明したが、これに代えて、例えば昇降操作レバー36の操作量に拘らず一定の回転速度で昇降モータ16を回転させて回生発電を行う制御も可能である。
【0047】
上述のフローチャート50のステップS57において消費モードで駆動する場合に、昇降操作レバー36が最大量操作されたときにバッテリ電流が正となる回転速度域の最大回転速度(例えば、図8(b)に示すグラフLでは回転数N3)で駆動させても良く、または、バッテリ電流が正となる回転速度域の最大回転速度以上のレバー操作がされた場合には、一律に当該最大回転速度で駆動させても良い。さらには、昇降操作レバー36の操作量に拘らず一定の回転速度(例えば、バッテリ電流が正となる回転速度域の最大回転速度)で昇降モータ16を駆動させても良い。
【0048】
上述のフローチャート50のステップS57において、回生電力よりも消費電力が上回りバッテリ14に蓄えられた電力を消費させる制御を例示したが、これに代えて、次のような制御も可能である。すなわち、比較器41に、回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップとして、回生電力よりも消費電力が上回りバッテリ14に蓄えられた電力を消費させる制御マップ、および消費電力よりも回生電力が上回るが回生モード(ステップS54)で選択される制御マップよりも回生発電効率の低い制御マップを、それぞれ複数記憶させておく。そして、ステップS57において、例えばバッテリ電圧Vに応じて、バッテリ14に蓄えられた電力を消費させる制御マップを選択したり、回生電流を抑えてバッテリ14への充電電流を減少させる、もしくは充電電流が略零となる制御マップを選択しても良い。
【0049】
上述の実施形態においては、作業台4を降下移動させる場合の作動制御について、フローチャート50に示すように、満充電電圧V2と判断電圧V1とに基づいて作動モード(回生モードおよび消費モード)を切り換える例について説明したが、これに代えて図10に示すフローチャート60による制御も可能である。フローチャート60による制御が行われる場合には、車両コントローラ12に、作業台4を上端部から下端部まで降下移動させて最大の回生発電を行っても、バッテリ14が略満充電に達しない基準電圧V3(<満充電電圧V2)が予め記憶されている。すなわち、回生発電開始時のバッテリ電圧Vが基準電圧V3以下であれば、作業台4を降下移動させながら回生発電を行っても、バッテリ14が略満充電状態に達することはない。
【0050】
以下、図10に示すフローチャート60について説明する。まず、ステップS61において、ステップS51と同様に、降下操作信号の入力の有無を判断する。次にステップS62に進み、ステップS52と同様に、バッテリ電圧検出器19から入力されたバッテリ電圧Vを検出する。続いてステップS63において、車両コントローラ12に記憶された基準電圧V3とステップS62で検出されたバッテリ電圧Vとを比較し、バッテリ電圧Vが基準電圧V3以下の場合にはステップS64に進み、一方、バッテリ電圧Vが基準電圧V3を超える場合にはステップS66に進む。
【0051】
ステップS63からステップS64に進むのは、作業台4を上端部から下端部まで降下移動させて最大の回生発電を行っても、バッテリ14が略満充電に達しない場合である。よって、ステップS64に進んだ場合には、車両コントローラ12は、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、このときの作動条件等に応じて最適もしくは最も効率が高くなる制御マップを選択し、要求トルク値に対応する励磁電流imとトルク電流i2との組み合わせを決定する。これにより、昇降モータ16に制動トルクを発生させながら、昇降操作レバー36の操作に応じて昇降モータ16を回転させて回生発電を行い、作業台4を降下移動させる。このとき回生発電により得られた電力は、バッテリ14に蓄えられる。
【0052】
ステップS64が実行された後ステップS65に進み、ステップS65においては、ステップS55と同様に、降下操作信号の入力の有無を判断し、入力がある場合にはステップS64に戻り、一方、入力がない場合には降下操作が終了したものと判断して、このフローを終了する。このように、降下操作信号が検出される限り、ステップS64を繰り返して昇降モータ16で回生発電を行い、バッテリ14に電力を蓄える。
【0053】
ここで、ステップS63からステップS66に進むのは、バッテリ電圧Vが基準電圧V3以上で且つ満充電電圧V2以下の場合、もしくはバッテリ電圧Vが満充電電圧V3よりも大きい場合である。バッテリ電圧Vが基準電圧V3以上で且つ満充電電圧V2以下の場合には、バッテリ14に電力を蓄える余裕が残っているが、この状態で作業台4を降下移動させて回生発電を行うと、バッテリ14が略満充電に達することが予想される。また、バッテリ電圧Vが満充電電圧V2よりも大きい場合には、バッテリ14に電力を蓄える余裕が残っておらず、この状態で回生発電を行うと過充電となりバッテリ14の寿命を縮めることになり得る。
【0054】
そこで、ステップS66においては、ステップ57と同様に、昇降モータ16で回生発電しながら作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップを選択し、要求トルク値に対応する励磁電流imとトルク電流i2との組み合わせを決定する。これにより、回生電力よりも消費電力が上回るように昇降モータ16の効率を低くして駆動させる制御が行われ、バッテリ14に蓄えられた電力が昇降モータ16において消費されるので、バッテリ電圧Vを低下させることができる。
【0055】
ステップS66が実行された後ステップS67に進み、ステップS67においては、ステップS58と同様に、降下操作信号の入力の有無を判断し、入力がある場合にはステップS66に戻り、一方、入力がない場合には降下操作が終了したものと判断して、このフローを終了する。このように、降下操作信号が検出される限り、ステップS66を繰り返して昇降モータ16を回生電力よりも消費電力が上回るように駆動して、バッテリ電圧Vを低下させる。以上のように、フローチャート60によれば、フローチャート50に従って昇降モータ16を制御する場合よりも制御構成をシンプルにすることができる。
【0056】
上述の実施形態においては、作業台4を降下移動させるときにそのときの作動条件に対応する制御マップを読み出す制御について説明したが、作動条件の一つである作業台荷重と制御マップ43との関係の一例を図11に示している。図11に示すグラフbは、作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、例えば作業台4に質量M1の荷重積載をした状態で回生発電効率が高くなる制御マップを選択した場合の、バッテリ電流と昇降モータ16の回転数との関係を示している。一方、グラフcは、作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、例えば作業台4に質量M2(>M1)の荷重積載をした状態で回生発電効率が高くなる制御マップを選択した場合の、バッテリ電流と昇降モータ16の回転数との関係を示している。グラフbとグラフcとを比較すると分かるように、積載荷重が増加するとそれに応じて作業台4の位置エネルギーが増加するため、この図で負の電流として示される回生電流が増加する。
【0057】
一方、図11に示すグラフdは、作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、例えば作業台4に質量M1の荷重積載をした状態で回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップを選択した場合の、バッテリ電流と昇降モータ16の回転数との関係を示している。一方、グラフeは、作業台4を降下移動させるときの制御マップ43のうちから、例えば作業台4に質量M2の荷重積載をした状態で回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップを選択した場合の、バッテリ電流と昇降モータ16の回転数との関係を示している。グラフdとグラフeとを比較すると分かるように、積載荷重が増加して作業台4の位置エネルギーが増加すると、それに応じてバッテリ電流が正(消費モード)となる回転速度域が減少する。このため、回生発電効率を意図的に低く設定した制御マップ43のうちから、作業台4の積載荷重に応じてバッテリ電流が正となる回転速度域が確保される制御マップを選択することが好ましい。例えばグラフeの制御マップ43よりも回生発電効率がさらに低く設定された制御マップを選択すれば、グラフfに示すバッテリ電流と昇降モータ16の回転数との関係になり、バッテリ電流が正となる回転速度域を確保できる。
【0058】
上述の実施形態においては、バッテリ14の電圧に基づいて充電状態を検出する構成を例示して説明したが、これに代えて、例えばバッテリ14への電流の入出力管理を行ってSOC(State Of Charge:充電率)を算出し、このSOCに基づいて充電状態を検出するようにしても良い。
【0059】
上述の実施形態においては、垂直マスト式の昇降装置により作業台4を垂直昇降させる高所作業車1に本発明を適用した例を説明したが、本発明はこのタイプの高所作業車に限定して適用されるものではなく、電動モータを用いて昇降装置を駆動する高所作業車全般に適用可能である。
【0060】
上述の実施形態においては、バッテリ14の充電状態に応じて制御マップ43を選択して昇降モータ16の駆動制御を行う例について説明したが、本発明はこの制御例に限定されるものではない。例えば、バッテリ14が略満充電状態で降下操作されたときに、昇降操作レバー36の操作量に拘らず、昇降モータ16における回生発電により得られる電力よりも消費される電力が大きくなる回転速度領域(例えば、図8(b)における回転数N3以下の領域)で昇降モータ16を駆動する制御を行っても良い。
【0061】
上述の実施形態においては、第3マスト部材25および第4マスト部材26の昇降を、シーブ29,31に掛け回されたワイヤ30,32により行う構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えばシーブに代えてスプロケットを設け、このスプロケットにチェーンを掛け回して構成された昇降マストにも、本発明を適用することができる。
【0062】
上述の実施形態において、例えばバッテリ電圧Vと基準電圧V3との差に応じて、段階的に回生発電量を抑制、あるいは消費電力量を増加させるように昇降モータ16を制御しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 高所作業車
2 走行台車(車体)
3 昇降マスト(昇降装置)
4 作業台(作業装置)
12 車両コントローラ(駆動制御手段)
13a 昇降インバータ(駆動制御手段)
14 バッテリ
16 昇降モータ
19 バッテリ電圧検出器(充電状態検出手段)
36 昇降操作レバー(昇降操作手段)
43 制御マップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11