特許第6071471号(P6071471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071471
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】アップグレード計画支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20170123BHJP
【FI】
   G06Q10/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-257700(P2012-257700)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-106627(P2014-106627A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】野村 真澄
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆
(72)【発明者】
【氏名】立石 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】豊田 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 慎一
【審査官】 宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−003442(JP,A)
【文献】 特開平11−327626(JP,A)
【文献】 特開2002−323922(JP,A)
【文献】 特開2003−058234(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0194160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントのアップグレード計画を支援するアップグレード計画支援装置であって、
プラントに用いられている種々のユニットを構成する複数種類の現行部品の価格及び寿命を含む現行部品情報、および前記現行部品と交換されるアップグレード部品の価格を含むアップグレード部品情報を記憶する第1記憶手段と、
前記現行部品の各々について、累計使用時間を含むカレント情報を記憶する第2記憶手段と、
定期点検を行う定期点検時期、前記現行部品と前記アップグレード部品とを入れ替えるアップグレード時期に関する情報、及び評価期間を入力するための入力手段と、
部品ローテーション計画の自動作成を指示する計画作成指示手段と、
前記計画作成指示手段から前記部品ローテーション計画の自動作成が指示された場合に、前記入力手段からの入力情報及び前記第1記憶手段並びに前記第2記憶手段に格納されている情報を用いて、前記評価期間における経済性評価値が最も高い前記部品ローテーション計画を作成する部品ローテーション計画作成手段と
を備え、
前記部品ローテーション計画作成手段は、
前記ユニット毎に各前記現行部品が交換されるタイミングが異なることを含む予め設定された所定のアルゴリズムに従って、アップグレードに必要な全ての部品について複数通りの部品ローテーション案を設定する部品ローテーション案設定手段と、
前記部品ローテーション案のそれぞれについて、前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段に記憶されている情報を用いて、前記経済性評価値を算出する経済性評価手段と、
前記経済性評価値が最も高い前記部品毎の前記部品ローテーション案に基づいて、前記部品ローテーション計画を作成する計画作成手段と
を具備するアップグレード計画支援装置。
【請求項2】
前記評価期間を入力する評価期間入力手段と、
前記部品ローテーション計画に基づいて、該評価期間入力手段から入力された該評価期間における前記経済性評価値を算出する前記経済性評価手段と、
前記経済性評価手段によって算出された前記経済性評価値を出力する出力手段とを具備する請求項1に記載のアップグレード計画支援装置。
【請求項3】
前記経済性評価手段は、アップグレードがされなかった場合の前記経済性評価値を算出し、
前記出力手段は、前記部品ローテーション計画に基づく前記経済性評価値と、アップグレードがされなかった場合の前記経済性評価値とを比較した表示態様で出力する請求項2に記載のアップグレード計画支援装置。
【請求項4】
前記経済性評価値は、前記評価期間における前記定期点検に要するトータルコストである請求項1から請求項3のいずれかに記載のアップグレード計画支援装置。
【請求項5】
前記経済性評価値は、前記評価期間における前記定期点検に要するトータルコスト、前記評価期間における運転コスト、及び売電収入をパラメータとして含む演算式を用いて算出される請求項1から請求項3のいずれかに記載のアップグレード計画支援装置。
【請求項6】
前記定期点検に要する前記トータルコストには、前記アップグレード部品と交換された前記現行部品の残存価格が収入要素として含まれる請求項または請求項に記載のアップグレード計画支援装置。
【請求項7】
前記経済性評価値は、アップグレード時期における前記現行部品の残存価格として算出される請求項1から請求項3のいずれかに記載のアップグレード計画支援装置。
【請求項8】
前記入力手段から前記アップグレード時期に関する情報として、複数のアップグレード時期候補が指定された場合に、
前記部品ローテーション案設定手段は、前記アップグレード時期候補のそれぞれについて、複数通りの前記部品ローテーション案を設定し、
前記経済性評価手段は、前記部品ローテーション案のそれぞれについて、前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段に記憶されている情報を用いて、前記経済性評価値を算出し、
前記計画作成手段は、前記経済性評価値が最も高い前記部品ローテーション案に基づいて前記部品ローテーション計画を作成する請求項1から請求項7のいずれかに記載のアップグレード計画支援装置。
【請求項9】
前記定期点検時期、各前記定期点検時期における部品ローテーション情報、及び前記現行部品と前記アップグレード部品とを入れ替える前記アップグレード時期を入力するための基本情報入力手段を備え、
前記基本情報入力手段から前記情報が入力された場合に、前記部品ローテーション計画作成手段は、前記基本情報入力手段から入力された前記情報に基づいて前記部品ローテーション計画を作成する請求項1から請求項8のいずれかに記載のアップグレード計画支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップグレード計画支援装置に係り、特に、プラントにおける部品のアップグレード計画を支援するアップグレード計画支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントにおける定期点検の部品ローテーション計画を支援する装置として、特許文献1に開示されるものがある。特許文献1には、部品毎に余寿命を管理し、点検時において部品を取り外すときには、余寿命が次の点検までもつような予備品と取り換えるように部品ローテーション計画を作成する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−63977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、効率向上、出力増加、NOx等のエミッション量低減、部品寿命延長、定期検査インターバル延長など、プラントの経済性を向上するため、アップグレード部品に取換え、アップグレード運用をしたい場合がある。そのような場合には、アップグレード部品への交換をどの時期に行うかということが部品ローテーション計画立案の上で重要な事項の一つとなる。
従来は、部品ローテーション計画を立案する担当者が、部品のアップグレード時期を決定していたため、決定したアップグレード時期が適切な時期なのかを判断することが難しかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、経済性を考慮した部品のアップグレード時期の決定及び部品ローテーション計画の立案に関するユーザの負担を軽減させることのできるアップグレード計画支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プラントのアップグレード計画を支援するアップグレード計画支援装置であって、プラントに用いられている種々のユニットを構成する複数種類の現行部品の価格及び寿命を含む現行部品情報、および前記現行部品と交換されるアップグレード部品の価格を含むアップグレード部品情報を記憶する第1記憶手段と、前記現行部品の各々について、累計使用時間を含むカレント情報を記憶する第2記憶手段と、定期点検を行う定期点検時期、前記現行部品と前記アップグレード部品とを入れ替えるアップグレード時期に関する情報、及び評価期間を入力するための入力手段と、部品ローテーション計画の自動作成を指示する計画作成指示手段と、前記計画作成指示手段から前記部品ローテーション計画の自動作成が指示された場合に、前記入力手段からの入力情報及び前記第1記憶手段並びに前記第2記憶手段に格納されている情報を用いて、前記評価期間における経済性評価値が最も高い前記部品ローテーション計画を作成する部品ローテーション計画作成手段とを備え、前記部品ローテーション計画作成手段は、前記ユニット毎に各前記現行部品が交換されるタイミングが異なることを含む予め設定された所定のアルゴリズムに従って、アップグレードに必要な全ての部品について複数通りの部品ローテーション案を設定する部品ローテーション案設定手段と、前記部品ローテーション案のそれぞれについて、前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段に記憶されている情報を用いて、前記経済性評価値を算出する経済性評価手段と、前記経済性評価値が最も高い前記部品毎の前記部品ローテーション案に基づいて、前記品ローテーション計画を作成する計画作成手段とを具備するアップグレード計画支援装置を提供する。
【0007】
このような構成によれば、入力手段から入力されたアップグレード時期にアップグレードを行った場合に、経済性評価値が最も高い部品ローテーション案に基づいて部品ローテーション計画が自動的に作成されることとなる。これにより、部品ローテーション計画に要するユーザの労力を軽減することができるとともに、経済性が約束された部品ローテーション計画を得ることが可能となる。
【0008】
前記アップグレード時期は、部品毎に個別に指定可能とされていることが好ましい。このように、部品毎にアップグレード時期を指定可能とすることで、ユーザの選択の自由度を確保することが可能となり、ユーザの意思がより一層反映された部品ローテーション計画を作成することが可能となる。
【0009】
上記アップグレード計画支援装置は、前記評価期間を入力する評価期間入力手段と、前記部品ローテーション計画に基づいて、該評価期間入力手段から入力された該評価期間における前記経済性評価値を算出する前記経済性評価手段と、前記経済性評価手段によって算出された前記経済性評価値を出力する出力手段とを具備することとしてもよい。
このような構成によれば、部品ローテーション計画に従って部品交換が実施された場合にどの程度の経済性が得られるのかを把握することが可能となる。
【0010】
上記アップグレード計画支援装置において、前記経済性評価手段は、アップグレードがされなかった場合の前記経済性評価値を算出し、前記出力手段は、前記部品ローテーション計画に基づく前記経済性評価値と、アップグレードがされなかった場合の前記経済性評価値とを比較した表示態様で出力することとしてもよい。
このように、アップグレードした場合としなかった場合の経済性評価値を比較する形でユーザに提示するので、ユーザはアップグレードした場合の効果を容易に理解することができる。
【0011】
上記アップグレード計画支援装置において、前記経済性評価値は、例えば、前記評価期間における前記定期点検に要するトータルコストである。
【0012】
これにより、定期点検に要するトータルコストの観点から、部品ローテーション計画の適否を検討することが可能となる。
【0013】
上記アップグレード計画支援装置において、前記経済性評価値は、例えば、前記評価期間における前記定期点検に要するトータルコスト、前記評価期間における運転コスト、及び売電収入をパラメータとして含む演算式を用いて算出される評価値である。
【0014】
これにより、定期点検に要するトータルコスト、運転コスト、売電収入の観点から総合的に部品ローテーション計画の適否を検討することが可能となる。
【0015】
上記アップグレード計画支援装置において、前記定期点検に要する前記トータルコストには、前記アップグレード部品と交換された前記現行部品の残存価格が収入要素として含まれていてもよい。
【0016】
定期点検に要するコストに現行部品の残存価格を収入要素と含めることにより、より一層細やかな経済性評価を行うことが可能となる。
【0017】
上記アップグレード計画支援装置において、前記経済性評価値は、例えば、アップグレード時期における前記現行部品の残存価格として算出されてもよい。
【0018】
これにより、アップグレード時期における現行部品の残存価値の観点から部品ローテーション計画の適否を検討することが可能となる。
【0019】
上記アップグレード計画支援装置において、経済性評価値を上記いずれかの中からユーザが指定できるように構成されていてもよい。このように、ユーザが経済性評価値の詳細を指定できるようにすることで、ユーザの意向を反映させた部品ローテーション計画を作成することが可能となる。
【0022】
上記アップグレード計画支援装置において、前記入力手段から前記アップグレード時期に関する情報として、複数のアップグレード時期候補が指定された場合に、前記部品ローテーション案設定手段は、前記アップグレード時期候補のそれぞれについて、複数通りの前記部品ローテーション案を設定し、前記経済性評価手段は、前記部品ローテーション案のそれぞれについて、前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段に記憶されている情報を用いて、前記経済性評価値を算出し、前記計画作成手段は、前記経済性評価値が最も高い前記部品ローテーション案に基づいて前記部品ローテーション計画を作成することとしてもよい。
【0023】
このように、複数のアップグレード時期候補を指定することで、アップグレード時期についても最適な時期を選択することが可能となる。これにより、より一層経済性の高い部品ローテーション計画を作成することが可能となる。
【0024】
上記アップグレード計画支援装置は、前記定期点検時期、各前記定期点検時期における部品ローテーション情報、及び前記現行部品と前記アップグレード部品とを入れ替える前記アップグレード時期を入力するための基本情報入力手段を備え、前記基本情報入力手段から前記情報が入力された場合に、前記部品ローテーション計画作成手段は、前記基本情報入力手段から入力された前記情報に基づいて前記部品ローテーション計画を作成することとしてもよい。
【0025】
このように、基本情報入力手段を備えることにより、アップグレード時期及び部品ローテーションの詳細をユーザに指定させることが可能となる。これにより、ユーザの意向を反映させた部品ローテーション計画を作成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、経済性を考慮した部品のアップグレード時期の決定及び部品ローテーション計画の立案に関するユーザの負担を軽減させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るアップグレード計画支援装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るアップグレード計画支援装置の機能ブロック図である。
図3図2に示した第1記憶部に記憶される情報の一例を示した図である。
図4】現行部品の寿命情報の一例を示す。
図5】価格情報の一例を示した図である。
図6】補修費情報の一例を示した図である。
図7】部品の累計使用時間と各補修レベルの補修比率との関係について示した図である。
図8】アップグレード部品の価格情報の一例を示した図である。
図9】部品ローテーション計画の一例を示した図である。
図10】下取り価格情報の一例を示した図である。
図11】本発明の第2実施形態に係るアップグレード計画支援装置の機能ブロック図である。
図12】発電量劣化率と累計使用時間との関係について示した図である。
図13】ヒートレートと累計使用時間との関係について示した図である。
図14】アップグレードが行われた場合とアップグレードが行われなかった場合との経済性の時間的推移を比較して示した図である。
図15】本発明の第3実施形態に係るアップグレード計画支援装置の機能ブロック図である。
図16】本発明の第3実施形態に係るアップグレード計画支援装置の部品ローテーション計画作成部によって実行される処理手順の一例について示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係るアップグレード計画支援装置1について、図面を参照して説明する。本発明のアップグレード計画支援装置1は、火力発電プラント等のプラントで用いられている設備部品に対して広く適用されるものである。以下に詳述する各実施形態では、説明の便宜上、火力発電プラントに用いられる種々の部品のうち、ガスタービンの高温部品に係る部品ローテーションに適用される場合を例示して説明する。また、一般的に、1つの火力発電プラントには、複数台のガスタービンが設置されているが、以下においては、そのうちの1台のガスタービンの高温部品(燃焼器、動翼、静翼、分割環)を例示して説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態に係るアップグレード計画支援装置1のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。図1に示すように、アップグレード計画支援装置1は、例えば、中央演算処理装置11、各プログラム実行時のワーク領域として機能する主記憶装置12、補助記憶装置13、キーボードやマウスなどの入力装置14、ディスプレイやプリンタなどの出力装置15、及び外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置16などを備えている。
【0030】
補助記憶装置13は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。この補助記憶装置13には、各種プログラム(例えば、アップグレード計画支援プログラム)が格納されており、中央演算処理装置11が補助記憶装置13から主記憶装置12にプログラムを読み出し、実行することにより後述の各部の処理を実現させる。
【0031】
図2は、アップグレード計画支援装置1が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、アップグレード計画支援装置1は、第1記憶部21、第2記憶部22、基本情報入力部23、部品ローテーション計画作成部24、評価期間入力部25、経済性算出部26、及び表示部27を備えている。
【0032】
第1記憶部21には、図3に示すように、現行部品に関する現行部品情報211および現行部品と交換されるアップグレード部品に関するアップグレード部品情報212が格納されている。
【0033】
現行部品情報211は、例えば、現行部品の寿命情報、価格情報、及び補修費情報を含んでいる。例えば、ガスタービンの高温部品である燃焼器、動翼、静翼、分割環は、それぞれ複数の部品で構成されている。以下、燃焼器、動翼、静翼、分割環を複数部品から構成されるという意味で「ユニット」といい、これら各ユニットの構成部品それぞれを「部品」という。
【0034】
図4に、現行部品の寿命情報の一例を示す。図4に示すように、燃焼器、動翼、静翼、分割環のそれぞれのユニットについて、これらユニットを構成する部品の寿命が登録されている。例えば、燃焼器は、内筒、尾筒、ノズル、TPノズル、連結管などの部品により構成されており、これらの部品毎に寿命[H]が登録されている。また、動翼、静翼、分割環については、それぞれ1段から4段まであり、それぞれの段についての寿命が登録されている。
【0035】
また、図5は、価格情報の一例を示した図である。このように、現行部品のそれぞれについて単価が登録されている。図6は、補修費情報の一例を示した図である。図6に示すように、現行部品のそれぞれについて、補修費が登録されている。補修費は、補修のレベルに応じて複数の補修費が登録されている。例えば、図6では、軽度の補修(L補修)、中度の補修(M補修)、重度の補修(H補修)の3段階に区分した場合を示している。
【0036】
また、図7には、部品の累計使用時間と各補修レベルの補修比率との関係について示した図である。図7において、横軸は部品の累計使用時間、縦軸は補修比率であり、各累計使用時間における各補修レベルの比率を足し合わせた値が100%となるように表されている。図7から、累計使用時間が長いほど、重度補修の割合が増加するとともに、補修なしの割合が低下することがわかる。
【0037】
アップグレード部品情報212は、アップグレード部品の価格情報を含んでいる。例えば、アップグレード部品の価格情報は、図8に示すように、各アップグレード部品のそれぞれについて単価が登録されている。なお、アップグレード部品情報212には、現行部品同様、寿命情報、補修費情報も登録しても良い。
【0038】
第2記憶部22には、現行部品の各々について、累計使用時間を含むカレント情報が格納されている。ここで、現行部品は、現在プラントに搭載されて使用されている部品と、ある定期点検時期において現在使用中の部品と交換されるために保管されている予備品とを含む。すなわち、定期点検時期において、使用中であった部品は一旦取り外され点検に回される。このとき、寿命がつきている部品については廃棄処分が決定され、寿命がつきていない部品については、点検の結果補修が必要であれば補修が行われ、補修後に予備品として保管される。補修が不要であれば、そのまま予備品として保管される。
【0039】
このように、第2記憶部22には、現在使用中の全ての部品及び予備品として保管されている部品についての累計使用時間が格納されている。
【0040】
基本情報入力部23は、定期点検時期、各定期点検時期における部品ローテーション情報、及び現行部品とアップグレード部品とを入れ替えるアップグレード時期等の部品ローテーション計画を定義するのに必要となる基本情報を入力するための入力部である。
評価期間入力部25は、評価期間及び該評価期間における経済性評価値の算出指示を入力するための入力部である。
【0041】
上記基本情報入力部23及び評価期間入力部25は、例えば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)により具現化される。具体的には、上記情報の入力に際しては、例えば、表示部27の表示画面に、定期点検時期、各定期点検時期における部品ローテーション情報、及び各ユニットについてのアップグレード時期(現行部品とアップグレード部品とを交換する時期)、評価期間等を入力するための各種入力欄を表示させ、ユーザが、ポインティングデバイスやキーボード等を操作することにより、これらの入力欄に必要事項を入力するような形態をとることが可能である。また、評価期間における経済性評価値の算出指示については、経済性評価値の算出を指示するためのボタンを表示画面に表示させ、これをクリックするような形態をとることが可能である。
【0042】
上記定期点検時期は、定期点検を行う年月日を入力する。例えば、ガスタービンの高温部品における定期点検は、燃焼器だけを点検するC点検、燃焼器とタービン(動翼・静翼・分割環)を点検するT点検、圧縮機を含むガスタービン一式を点検するM点検の3つに区分されている。本実施形態では、C点検、T点検、M点検のそれぞれについてその点検の実施日(年月日)が入力される。各部品が交換されるタイミングは、原則として定期点検時期となるため、燃焼器、動翼、静翼、及び分割環で、点検時期及び部品の交換時期が異なる。例えば、C点検のときには、燃焼器の部品について交換可能であるが、動翼、静翼、及び分割環については交換できないこととなる。
【0043】
各定期点検時期における部品ローテーション情報については、C点検、T点検、M点検のタイミングにおいて、現在使用中の部品を予備品のどの部品と交換するのかなど、部品交換に関する詳細な情報が入力される。また、高温部品のように、部品によっては、同一部品が複数点数搭載されている場合があることから、それら各搭載数なども考慮した部品交換の情報が入力される。
【0044】
アップグレード時期については、上記定期点検時期に合わせて、現行部品からアップグレード部品に交換する部品、変更数などが入力される。アップグレードは、例えば、ユニット一式が一時期に交換されるものと、ユニットを構成する部品毎にアップグレードが可能な場合がある。このような場合も考慮して、各部品におけるアップグレード時期が入力される。
評価期間については、経済性評価値を算出する期間の始点と終点が入力される。
【0045】
部品ローテーション計画作成部24は、基本情報入力部23から入力された上述の如き基本情報に基づいて部品ローテーション計画を作成する。図9に部品ローテーション計画の一例を示す。図9に示すように、部品ローテーション計画は、各定期点検時期における部品のローテーション情報が登録されたものである。なお、図9に示した部品ローテーション計画では、複数のガスタービンGT1−1〜GT2−3における部品ローテーション計画がまとめられて示されているが、ガスタービン1台毎に部品ローテーション計画を作成することとしてもよい。なお、図9のような例では、予備品は複数のガスタービンで共用されることも可能である。
【0046】
経済性算出部26は、評価期間入力部25から評価期間及び経済性評価値の算出指示が入力された場合に、基本情報入力部23から入力された情報と第1記憶部21及び第2記憶部22に記憶されている情報とを用いて、評価期間入力部25から入力された評価期間における経済性評価値を算出する。
経済性評価値は、部品ローテーション計画に従って部品交換を実施した場合における評価期間の経済性を評価する値であり、例えば、評価期間における定期点検に要するトータルコストが挙げられる。
定期点検に要するトータルコストは、例えば、現行部品の購入費、アップグレード部品の購入費、補修費、及び廃棄される現行部品の下取り価格をパラメータとした演算式を用いて算出される。例えば、定期点検に要するトータルコストは、以下の(1)式を用いて算出される。
【0047】
定期点検に要するトータルコスト
=現行部品の購入費+アップグレード部品の購入費+補修費−下取り価格 (1)
【0048】
現行部品の購入費は、例えば、寿命が尽きた現行部品と現行部品の新品とを交換する場合に発生する費用であり、部品単価と部品数とを乗算することにより部品毎の費用を算出し、これらを足し合わせることで全ての交換部品の費用が算出される。
アップグレード部品の購入費は、アップグレード時期において現行部品と交換されるアップグレード部品にかかる費用と、寿命の尽きたアップグレード部品とアップグレード部品の新品とを交換する場合に発生する費用の和であり、各アップグレード部品について、部品単価と交換部品数とを乗算した値を足し合わせることにより算出される。
【0049】
補修費は、定期点検時期において予備品と交換される部品の補修費であり、例えば、その部品の累計使用時間に対応する補修比率を図7に示した補修比率テーブルから取得し、この補修比率と図6に示した各部品の各補修レベルに応じた補修費単価とを参照して推定される。例えば、図7の補修比率テーブルから取得した各補修レベルの比率と図6に示した各補修レベルにおける補修費単価とを乗算した値を足し合わせることで推定される。あるいは、各部品について、累計使用時間と補修費とを関連付けたテーブルを予め用意しておき、このテーブルを用いて累計使用時間から直接的に補修費を取得することとしてもよい。
【0050】
下取り価格は、アップグレード部品と交換される現行部品の下取り価格である。例えば、経済性算出部26は、残存寿命と下取り価格とが関連付けられた下取り価格情報を部品毎に有しており、この下取り価格情報を用いて、アップグレード部品と交換される現行部品の残存寿命に応じた下取り価格を下取り価格情報から取得する。図10に下取り価格情報の一例を示す。この下取り価格情報については、経済性算出部26が保有していてもよいし、第1記憶部21に記憶させておくこととしてもよい。
【0051】
なお、定期点検に要するトータルコストの算出において、更に、予備品保管費、アップグレード時期における改造費、及び現行部品の廃却時の金属価値を考慮することとしてもよい。
予備品保管費は、例えば、年間の予備品保管費を第1記憶部21に登録しておき、評価期間の日数に応じた予備品保管費を算出するようにすればよい。また、アップグレード時期における改造費は、例えば、第1記憶部21にアップグレード部品毎の改造費を登録しておけばよい。現行部品の廃却時の金属価値については、例えば、残存寿命が短く、上述した下取り価格がつかない部品であっても、金属くずとしての価値が発生する場合ある。したがって、このような金属くずとしての収入を考慮してもよい。例えば、第1記憶部21に、部品毎の廃却時の金属価値を登録しておけばよい。
【0052】
表示部27は、例えば、部品ローテーション計画作成部24によって作成された部品ローテーション計画及び経済性算出部26によって算出された評価期間における経済性評価値を表示画面に表示させることにより、ユーザにこれらの情報を提示する。
【0053】
次に、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置1の動作内容について説明する。
まず、ユーザにより、基本情報入力部23から、定期点検時期、各定期点検時期における部品ローテーション情報、及び現行部品とアップグレード部品とを入れ替えるアップグレード時期が入力されると、この情報に基づいて部品ローテーション計画が部品ローテーション計画作成部24によって作成される。作成された部品ローテーション計画は表示部27により表示画面に表示され、ユーザに提示される。
【0054】
また、ユーザにより、評価期間入力部25から経済性評価値を算出する評価期間及び経済性評価値の算出指示が入力された場合には、経済性算出部26によって評価期間における経済性評価値が算出される。例えば、第1記憶部21、第2記憶部22及び部品ローテーション計画作成部24によって作成された部品ローテーション計画の情報並びに上述した演算式を用いて、評価期間における経済性評価値、すなわち、定期点検に要するトータルコストが算出される。算出された定期点検に要するトータルコストは、表示部27により表示画面に表示され、ユーザに提示される。
【0055】
以上、説明してきたように、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置1によれば、ユーザから入力された基本情報に基づいて部品ローテーション計画作成部24が部品ローテーション計画を作成するので、部品ローテーション計画の作成に関するユーザの労力を低減させることが可能となる。
更に、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置1によれば、ユーザによって指定された評価期間における経済性評価値として、定期点検に要するトータルコストを算出し、ユーザに提示する。これにより、ユーザが入力した部品ローテーション計画に基づいて部品交換を行った場合に、どの程度のコストが必要となるのかを容易に把握することができる。これにより、評価期間におけるトータルコストを一つの評価材料として、自身が作成した部品ローテーション計画が妥当かどうかを検討することが可能となる。
なお、本実施形態では、部品の寿命情報として使用時間を用い、また使用時間に対する補修比率テーブルを用いて補修費を算出しているが、起動回数のような他の情報を用いても良い。また、複数台のガスタービンの高温部品であっても、高温部品以外の部品であっても適用できることは言うまでもない。
【0056】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るアップグレード計画支援装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係るアップグレード計画支援装置は、上述した第1実施形態に係るアップグレード計画支援装置と同様の構成を有するが、経済性算出部26によって算出される経済性評価値が異なる。すなわち、上述した第1実施形態では、経済性評価値として、定期点検に要するトータルコストを算出していたが、例えば、部品のアップグレードが一通り行われ、プラントがアップグレード運用になった場合には、現行部品よりも例えば効率が向上するため、燃料コストや売電価格の上昇など、経済性が増すこととなる。
従って、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置では、このようなアップグレード部品への交換による経済性の影響を加味して、評価期間の経済性評価値を算出することとしている。なお、アップグレードには複数の種類があり、アップグレードの内容により必要な部品が異なり、その効果も異なる。例えば効率の他に、出力増加、NOx等のエミッション量低減、部品寿命延長、定期検査インターバル延長などがあり、これらについても経済性が増すことになる。
【0057】
図11は、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置2の機能ブロック図である。図11に示すように、上述した第1実施形態に係るアップグレード計画支援装置1に対して、第1記憶部21´に格納される情報及び経済性算出部26´による算出処理内容が異なる。
【0058】
具体的には、本実施形態に係る経済性算出部26´は、部品に関するコスト、アップグレード前の燃料コスト、アップグレード後の燃料コスト、アップグレード前の売電収入、及びアップグレード後の売電収入をパラメータとして含む経済性評価値の演算式を保有しており、この演算式を用いて経済性評価値を算出する。
【0059】
演算式は、例えば、以下の(2)式で表わされる。
【0060】
経済性評価値=利益=売電収入−燃料コスト−定期点検コスト−部品コスト (2)
【0061】
また、本実施形態においては、以下に説明する通り、経済性評価値を算出するために必要となる情報については、予め第1記憶部21´に登録されているものとする。
【0062】
売電収入は、発電量に売電価格を乗算することで算出される。例えば、第1記憶部21´に、アップグレード前とアップグレード後の発電量の情報を予め記憶させておくことで、売電収入を算出することが可能となる。具体的には、発電量は、例えば、1時間あたりの発電量に稼働時間を乗算することで算出される。従って、アップグレード前の単位時間当たりの発電量と、アップグレード後の単位時間当たりの発電量とを第1記憶部21´に格納しておく。そして、評価期間におけるアップグレード前の稼働時間をアップグレード前の単位時間当たりの発電量に乗算することで、アップグレード前の発電量を算出し、同様に、評価期間におけるアップグレード後の稼働時間をアップグレード後の単位時間当たりの発電量に乗算することでアップグレード後の発電量が算出される。なお、図12に示すように、ガスタービンの累計使用時間に応じて発電量劣化率が変化する。従って、図12に示すようなガスタービン累計使用時間に応じた発電量劣化率を考慮して発電量を算出することとしてもよい。
【0063】
燃料コストは、発電量にヒートレートと燃料価格とを乗算することで算出される。すなわち、燃料コストは、以下の(3)式で表わされる。
【0064】
燃料コスト=発電量×ヒートレート×燃料価格 (3)
【0065】
ここで、ヒートレート[kJ/kWh]とは、1kWh発電するのに要する燃料消費量[kJ/kWh]であり、以下の(4)式で示される。
【0066】
ヒートレート=燃料消費量×(1+α)/発電量 (4)
【0067】
(4)式においてαは、ヒートレート劣化率であり、例えば、図13に示すように、ガスタービンの累計使用時間が長いほど大きくなる値である。例えば、図13に示すようなヒートレート劣化率の情報を第1記憶部21´に格納しておくことで、ヒートレートを算出することができる。また、ガスタービン累計使用時間に対するヒートレート劣化率がアップグレード前後で変わる場合には、アップグレード前後におけるヒートレート劣化率の情報を第1記憶部21´に格納しておけばよい。
【0068】
定期点検トータルコストは、上述した第1実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
本実施形態に係るアップグレード計画支援装置2においては、評価期間入力部25から評価期間が入力されるとともに、経済性評価の指示する旨の情報が入力されると、経済性算出部26´は、第1記憶部21´及び第2記憶部22に格納されている情報及び部品ローテーション計画並びに上記(2)式を用いて、評価期間入力部25から入力された評価期間における経済性評価値を算出する。
算出された経済性評価値は、表示部27に出力され、表示画面などに表示されることによってユーザに提示される。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置2によれば、アップグレードした場合の経済性の増加を加味して経済性評価値(上記例では、利益)が算出され、この情報がユーザに提示される。従って、ユーザは、部品のアップグレードを含む部品ローテーション計画に基づいて部品交換が行われた場合に、どの程度の利益を得ることができるのかを容易に把握することができる。
【0071】
ここで、本実施形態においては、更に、アップグレードが行われなかった場合の経済性評価値を算出し、アップグレードが行われた場合と行われなかった場合の経済性評価値を比較してユーザに提示するような構成としてもよい。
例えば、アップグレードが行われない場合の部品ローテーション計画は、残存寿命が次回の定期点検時まで持たない部品については廃棄するとともに、現行部品の新品を投入するようにすればよい。
このような場合の部品トータルコストの算出式は、以下の(5)式で表わされる。
【0072】
トータルコスト=現行部品の購入費+現行部品の新規購入費+補修費 (5)
【0073】
また、上記(5)式に更に、廃棄する部品の金属くずとしての価格を収入として加えることとしてもよい。
【0074】
図14は、アップグレードが行われた場合(実線)とアップグレードが行われなかった場合(破線)との経済性の時間的推移を比較して示した図である。図14では、コスト(累積)(図14(a))、売上(累積)(図14(b))、利益(累積)(図14(c))の3つに分けて時間的推移を示している。例えば、コスト(累積)は、(2)式における燃料コストと定期点検コスト(部品交換含む)とを加算した値である。
【0075】
図14に示した例では、図14(c)に示されるように、評価期間(運用年数)の最後の方において、アップグレードした場合の方が経済性評価値が高くなっていることから、部品ローテーション計画及びアップグレード時期が適切であることがわかる。
これに対し、例えば、図14(c)に示された経済性評価値が、アップグレードしない場合の方がアップグレードした場合よりも高かった場合には、現在の部品ローテーション計画に従って部品交換及びアップグレードを行うと損をすることがわかる。従って、この場合には、アップグレード時期の変更及びそれに伴う部品ローテーション計画の練り直しが行われることとなる。
【0076】
このように、アップグレードを行った場合の経済性評価値を、アップグレードを行わない場合の経済性評価値と比較した形でユーザに提示することとにより、現在の部品ローテーション計画が適切か否かをユーザに瞬時に把握させることが可能となる。
【0077】
また、本実施形態においては、経済性評価値を(2)式による演算式に基づいて算出していたが、経済性評価値として、例えば、正味現在価値NPV(Net Present Value)や内部収益率IRR(Internal Rate of Return)を用いることとしても良い。
正味現在価値NPVは、将来のキャッシュ・インフローの現在価値から投資であるキャッシュ・アウトフローの現在価値を差し引いた正味の金額を意味し、NPVがプラスであれば投資価値がある、すなわち、現在の部品ローテーション計画が適切であると判断することができる。
正味現在価値NPVは、例えば、以下の(6)式で表わされる。
【0078】
【数1】
【0079】
ここで、(6)式において、CFは、評価期間の開始点における初期投資であり、本実施形態では0(ゼロ)として取り扱われる。CFは、時間tによって定義される時点(例えば、各年度など)でのキャッシュフローであり、rは割引率、nは評価期間を示す。
【0080】
また、内部収益率IRRは、投資効果を評価するために使用される指標の一つであり、一定の投資期間を通じた投資額の現在価値の累計と、将来的な収益額の現在値の累計が等しくなる利率(割引率)を意味する。すなわち、上記正味現在価値NPVがゼロとなる割引率を示す。
【0081】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係るアップグレード計画支援装置について図面を参照して説明する。上述した第1及び第2実施形態においては、ユーザが部品ローテーション計画を作成する元となる情報を基本情報入力部23から入力し、この情報に基づいて部品ローテーション計画が作成されていたが、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置3は、ユーザはアップグレード時期を指示するだけであり、このアップグレード時期に合わせて適切な部品ローテーション計画を自動的に作成する点で、上記第1実施形態と異なる。
以下、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置3について、第1実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0082】
図15に本実施形態に係るアップグレード計画支援装置3の機能ブロック図を示す。図15に示すように、アップグレード計画支援装置3は、第1記憶部21、第2記憶部22、入力部31、計画作成指示部32、部品ローテーション計画作成部33、経済性算出部26´、及び表示部27を備えている。
第1記憶部21、第2記憶部22、表示部27は、上記第1実施形態と同様である。また、経済性算出部26´は、上記第2実施形態と同様である。
【0083】
入力部31は、アップグレード時期に関する情報、アップグレードに必要なアップグレード部品に関する情報、定期点検に関する情報、稼働率及び評価期間等を入力するための入力部である。入力部31は、例えば、上述のように、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)により具現化される。
【0084】
アップグレード時期は、ユーザがアップグレードを希望する時期を入力する。例えば、アップグレード時期は、いずれかの定期点検時期に設定される。アップグレードに必要なアップグレード部品は、ユーザがアップグレードに必要な部品を選択して設定する。アップグレードには複数の種類があり、アップグレードの内容により必要な部品が異なるためである。具体的には、例えば燃焼器の内筒、尾筒と1段動翼、1段静翼というように複数の部品を選択する。これらが全てアップグレード品に交換されることで、アップグレード運用が開始可能となり効率が向上する。定期点検時期に関する情報については第1実施形態と同様である。稼働率は、各部品の累計使用時間を推定するために用いられる情報である。
計画作成指示部32は、部品ローテーション計画の自動作成を指示する入力部である。
【0085】
部品ローテーション計画作成部33は、計画作成指示部32から部品ローテーション計画の自動作成が指示された場合に、入力部31から入力されたアップグレード時期にアップグレードを行った場合に、最も経済性評価値が高くなる部品ローテーション計画を作成する。ここで、経済性評価値は、上述したいずれかの経済性評価値を用いることが可能である。或いは、アップグレード時期における現行部品の下取り価格が最も安くなるような部品ローテーション計画を作成することとしてもよい。
【0086】
以下、部品ローテーション計画作成部33によって実行される処理手順の一例について図16を参照して説明する。
まず、入力部31から入力された定期点検に関する情報、具体的には、各定期点検の種類、実施時期(年月日)、定期点検の日数、及び稼働率に基づいて、アップグレード時期までの定期点検インターバルの稼働時間を算出する(ステップSA1)。
【0087】
次に、アップグレードに必要な全ての部品について、複数通りのローテーション案をそれぞれ作成する(ステップSA2:部品ローテーション案設定手段)。ここで、ローテーション案は、予め登録されている条件に従って作成される。例えば、条件としては以下の1)〜4)が一例として挙げられる。なお、以下の条件は一例であり、それぞれのプラントに応じてユーザが適切なルールを決定し定義することが可能である。
【0088】
1)定期点検時には、原則として、現在使用中の部品(以下「使用部品」という。)は他の部品(例えば、予備品、新規現行部品)と取り換えられる。
2)定期点検時において、現在使用中である部品(以下「使用部品」という。)の残存寿命を算出し、その残存寿命が次の定期点検までの稼働時間未満である場合には、その使用部品は廃棄される。廃棄部品数に合わせて新品が補充される。
3)アップグレード時期までには、使用部品及び予備品の全てがアップグレード部品と交換される。
4)アップグレード時期前における部品のアップグレードは許可する。ただし、一度アップグレード部品に代えた後は、継続してアップグレード部品が使用されることとし、再度現行部品に戻すことは禁止する。
【0089】
上記条件に合わせて、複数のローテーション案が作成される。次に、このようなローテーション案がアップグレードに必要な部品毎に作成されたか否かを判定し(ステップSA3)、されていた場合には、ステップSA4に進む。
【0090】
次に、アップグレードに必要な部品毎に、ステップSA2において作成したローテーション案についての経済性評価値を算出する(ステップSA4:経済性評価手段)。経済性評価値の算出手法については、第1実施形態または第2実施形態で説明した通りである。続いて、全ての部品に対して、各ローテーション案の経済性評価値が算出されたか否かを判定し(ステップSA5)、全て算出した場合には、ステップSA6に進む。ステップSA6では、部品毎に、経済性評価値が最も高いローテーション案を特定する(ステップSA6)。このようにして各部品についての最適なローテーション案が特定されると、特定されたローテーション案に基づいて部品ローテーション計画を作成する(ステップSA7:計画作成手段)。これにより、アップグレードに必要な各部品について最適な部品ローテーション案に基づく部品ローテーション計画が作成されることとなる。
【0091】
以上のように、本実施形態に係るアップグレード計画支援装置3によれば、入力部31から、アップグレード時期、アップグレードに必要なアップグレード部品、稼働率、定期点検に関する情報及び部品ローテーション作成指示等が入力されると、部品ローテーション計画作成部33により、評価期間中の部品ローテーション計画が自動的に作成される。ここで、作成された部品ローテーション計画は、経済性評価値が最も高い部品ローテーション計画とされているので、担当者の労力を低減することができるとともに、適切な部品ローテーション計画を提供することが可能となる。
【0092】
なお、上述した第3実施形態では、ユーザが入力部31からアップグレード時期を指定していたが、これに代えて、複数のアップグレード時期候補を指定することができるようにしてもよい。或いは、ユーザが評価期間を指定した場合に、評価期間内における全ての定期点検時期をアップグレード時期候補として自動的に設定することとしてもよい。
【0093】
このように、複数のアップグレード時期候補を指定することにより、アップグレード時期についても最適な時期に設定することが可能となる。これにより、より一層経済性の高い部品ローテーション計画を作成することが可能となる。更に、ユーザによる入力情報を少なくすることができ、アップグレードに関する部品ローテーション計画の作成としての包括的なサービスをユーザに提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0094】
1、2、3 アップグレード計画支援装置
21、21´ 第1記憶部
22 第2記憶部
23 基本情報入力部
24、33 部品ローテーション計画作成部
25 評価期間入力部
26、26´ 経済性算出部
27 表示部
31 入力部
32 計画作成指示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16