(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071483
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】速硬剤および速硬性混和材
(51)【国際特許分類】
C04B 22/08 20060101AFI20170123BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20170123BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20170123BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20170123BHJP
C04B 103/14 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
C04B22/08 Z
C04B22/10
C04B22/14 A
C04B22/14 B
C04B24/06 A
C04B103:14
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-261721(P2012-261721)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-105151(P2014-105151A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−302504(JP,A)
【文献】
特開平10−218655(JP,A)
【文献】
特開平04−280845(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/105396(WO,A1)
【文献】
特開平04−170344(JP,A)
【文献】
特開平04−097932(JP,A)
【文献】
特開平08−091894(JP,A)
【文献】
特開2004−210557(JP,A)
【文献】
特開平08−002951(JP,A)
【文献】
特開平09−268037(JP,A)
【文献】
特開2011−051810(JP,A)
【文献】
特開2011−225393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分としてAl2O3とCaOとSiO2とTiO2を合計で95質量%以上含有するアルミン酸カルシウムシリケートであって、化学成分としてのAl2O3とCaOの含有モル比(CaO/Al2O3)が1.4〜1.8であり、化学成分としてのSiO2とTiO2の合計含有量が4〜9.5質量%且つSiO2とTiO2の含有モル比(SiO2/TiO2)が0.7〜4であるアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とする速硬剤。
【請求項2】
アルミン酸カルシウムシリケートのガラス化率が50%以上である請求項1記載の速硬剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の速硬剤と、石膏類と、凝結促進剤及び/又は凝結遅延剤とを含有する速硬性混和材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性物質に速硬性を付与するための速硬剤およびセメント系組成物に混和して速硬性を発現させる速硬性混和材に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント等の水硬性物質の硬化を速める速硬剤の代表的なものとしてアルミン酸カルシウムシリケート(別称として、カルシウムアルミネートシリケート又はアルミノ珪酸カルシウム)が知られている。アルミン酸カルシウムシリケートは化学成分としてCaOとAl
2O
3とSiO
2を主体的に含む結晶若しくは非晶質体又はその混成体の総称であり、これらの化学成分に加えて他の化学成分を含むものも該当する。速硬剤として好適に使用されるものは化学成分としてのCaOとAl
2O
3の含有割合が高いアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とするものであり、また、水和反応活性が高くなることから構造状態が高ガラス化率のものほど強い速硬性を得るには有利である。化学成分としてのAl
2O
3とCaOとSiO
2を特定の割合で含有するアルミン酸カルシウムシリケートにすると、さらに強い速硬性が得られることも知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
しかしながら、含有化学成分のSiO
2とAl
2O
3とCaOを特定の含有割合にするだけでは、速硬性は向上できるものの、例えばSiO
2含有量によって起こり、とりわけ低温になるほど顕著になる凝結の遅延化或いは可使時間不足といったアルミン酸カルシウムシリケートの凝結性を調整するのは困難であり、また更なる早期強度発現性の向上や低迷し易い長期強度発現性等の改善にも十分な効果を得るには至らない。
【0004】
【特許文献1】特開平04−97932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い速硬性を具備し、温度に拘わらず凝結遅延や可使時間不足を防ぐことが可能な程に凝結性の調整が容易にでき、且つ早期強度発現性や長期強度発現性も向上できる速硬剤およびかような特性をモルタルやコンクリートなどのセメント系組成物に付与することに適した速硬性混和材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題解決のため検討した結果、化学成分としてAl
2O
3とCaOとSiO
2とTiO
2を含有し、そのうちのAl
2O
3とCaOを特定の含有モル比にし、且つSiO
2とTiO
2を特定の合計含有量と特定の含有モル比にせしめたアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とする速硬剤が、また該速硬剤を含む速硬性混和材が、前記課題を総じて解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、次の(1)又は(2)で表す速硬剤、(3)で表す速硬性混和材およである。(1)化学成分としてAl
2O
3とCaOとSiO
2とTiO
2を合計で95質量%以上含有するアルミン酸カルシウムシリケートであって、化学成分としてのAl
2O
3とCaOの含有モル比(CaO/Al
2O
3)が1.4〜1.8であり、化学成分としてのSiO
2とTiO
2の合計含有量が4〜9.5質量%且つSiO
2とTiO
2の含有モル比(SiO
2/TiO
2)が0.7〜4であるアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とする速硬剤。(2)アルミン酸カルシウムシリケートのガラス化率が50%以上である前記(1)の速硬剤。(3)前記(1)又は(2)の速硬剤と、石膏類と、凝結促進剤及び/又は凝結遅延剤とを含有する速硬性混和材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セメントペースト、モルタルやコンクリート等のセメント系組成物に強い速硬性を付与でき、しかも、凝結性(凝結始発時間や凝結速度等)を適度な状態に調整することができるため、可使時間の不足や凝結の遅延又は硬化の遅延といった状況を改善し易く、さらにかかる速硬性を具備しつつ、長期強度の伸びも非常に良いセメント系組成物を容易に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の速硬剤の有効成分であるアルミン酸カルシウムシリケートは、Al
2O
3とCaOとSiO
2とを主要含有化学成分とする化合物、固溶体、ガラス質若しくはこれらの何れか複数が共存した状態のものであって、前記主要含有化学成分以外に、化学成分としてTiO
2をアルミン酸カルシウムシリケート中に必須含有するものである。かかるアルミン酸カルシウムシリケートは、化学成分としてAl
2O
3とCaOとSiO
2とTiO
2の合計含有量が95質量%以上であるものとする。合計含有量が95質量%未満では十分な速硬性を具備できないことがあり好ましくない。アルミン酸カルシウムシリケート中の前記含有化学成分以外の残部成分は、本発明の効果を喪失させるものでないない限り特に制限されない。残部該当成分の例として、原料由来や製造過程で混入する不可避不純物等が挙げられ、より具体的には、例えばFe
2O
3、遊離カーボンなどが挙げられるが、記載例に限定されるものではない。
【0010】
また、本発明の速硬剤の有効成分であるアルミン酸カルシウムシリケートは、化学成分としてのAl
2O
3とCaOの含有モル比(CaO/Al
2O
3)が1.4〜1.8、好ましくは1.5〜1.7であることを要する。この含有モル比にすることで、早期強度の良好な発現性を具備しつつ、凝結開始時間を適度に調整し易くなるため可使時間の確保も行い易くなる。含有モル比(CaO/Al
2O
3)が1.4未満では早期強度発現性が低下することがあるので好ましくなく、また1.8を超えると可使時間が確保し難くなるので好ましくない。
【0011】
また、本発明の速硬剤の有効成分であるアルミン酸カルシウムシリケートは、化学成分としてのSiO
2とTiO
2の合計含有量が4〜9.5質量%、好ましくは5〜7.5質量%であり、且つSiO
2とTiO
2の含有モル比(SiO
2/TiO
2)が0.7〜4、好ましくは1.2〜2.2であることを要す。このうち、TiO
2の含有は可使時間確保及び長期強度の伸びの低下を防止する作用がある。特に、SiO
2の含有量が少なくなるほど速硬性は急増し、長期的な水和反応が起こり難く長期強度が低迷するが、TiO
2を適量併用することによって、初期の水和反応に余り影響を及ぼさずに水和反応を長期間継続させることができ、その結果長期強度の伸びが向上する。SiO
2とTiO
2の合計含有量が4質量%未満では可使時間の確保が困難になるので好ましくない。また、SiO
2とTiO
2の合計含有量が9.5質量%を超えると速硬性低下や初期強度が低下する虞があるので好ましくない。また、SiO
2とTiO
2の含有モル比(SiO
2/TiO
2)を上記のような特定範囲にすることで、SiO
2の含有量との相関性が見られるTiO
2の適正含有量を定めることができ、併せてSiO
2の含有量も速硬性を十分具備したアルミン酸カルシウムシリケートを構成するに相応しい量が定まる。含有モル比(SiO
2/TiO
2)が0.7未満では、SiO
2の含有量が相対的に低下し過ぎるため、凝結開始時間を調整して可使時間を確保するのが困難になるので好ましくない。また、含有モル比(SiO
2/TiO
2)が4を超えるとTiO
2の含有量が少なくなり過ぎ、かつSiO
2の含有量多くなり過ぎるため、良好な速硬性が得難くなる虞があると共に、長期強度の伸びも期待できないので好ましくない。
【0012】
また、アルミン酸カルシウムシリケートは、構造的にガラス化率が高いものほど水和反応活性が高いことから、速硬性も強くなる可能性が高い。本発明の速硬剤では、実質的に結晶質からなるアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とするものでも使用できるが、ガラス化率が高いカルシウムアルミネートを有効成分とするものの方が望ましい。好ましくは、速硬性の向上が顕著に現れるため、概ねガラス化率50%以上のアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とする速硬剤が良い。
【0013】
本発明の速硬剤に用いるアルミン酸カルシウムシリケートの製造方法は特に限定されない。また、CaO、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2の各化学成分源となる原料は、何れのものでも良い。具体例として、CaO源として、炭酸カルシウム、石灰石又は生石灰等、Al
2O
3源として、ボーキサイト、水酸化アルミニウム、バン土頁岩又はコランダム等、SiO
2源として、珪砂、白土、珪藻土又は石英等、TiO
2源として、酸化チタン、水酸化チタン、金紅石等が挙げられるが、ここに例示したものに限定されない。製法骨子の一例を示すと、原料を適宜選定の上、所望の配合となるよう調混合し、調合物が概ね溶融する温度、例えば約1300〜1850℃で加熱し、水中急冷法以外の方法で急冷処理するとガラス化率50%以上の高ガラス化率又は非晶質のアルミン酸カルシウムシリケートが容易に得られる。冷却速度を遅くすると結晶相が生成し易くなる。
【0014】
また、本発明の速硬剤の粉末度は特に制限されないが、好ましくは適度な反応活性を具備する上で、粉末度は3000〜8000cm
2/gのブレーン比表面積とする。この粉末度から外れても幾分弱くなるものの本発明による効果を奏することは可能である。ブレーン比表面積3000cm
2/g未満では反応活性が幾分緩慢化し、速硬性や早期強度発現性が低下することがあり、ブレーン比表面積8000cm
2/gを超えると十分な可使時間の確保が行い難くなることがある。
【0015】
また、本発明の速硬剤は、実質的にこのようなアルミン酸カルシウムシリケートのみを含むものでも、他の成分を含有するものの何れであっても良い。含有可能な成分は、本発明の効果を喪失させないものなら種類・量は特に限定されない。
【0016】
また、本発明の速硬性混和材は、前記何れかの本発明の速硬剤と、石膏類と、凝結促進剤及び/又は凝結遅延剤とを含有するものである。使用する石膏類は何れの石膏でも良く、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏の何れであっても、硫酸カルシウムでも良く、またこれらのうち二種以上を併用できる。石膏類の含有により、早期強度発現性を減退させずに、強度発現性を長期にわたって十分持続させることが容易になる。石膏類の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは、速硬剤中のアルミン酸カルシウムシリケートの含有量100質量部に対し、石膏類20〜200質量部とする。石膏類が20質量部未満では長期強度発現性が低迷することがあり、石膏類200質量部を超えると、混和させたモルタルやコンクリートが過膨張を起こす虞があるので、適当ではない。尚、該石膏類含有量を始め、次に説示する凝結促進剤や凝結遅延剤の含有量は、アルミン酸カルシウムシリケート以外の成分含有量が概ね1質量%以下の速硬剤ではアルミン酸カルシウムシリケートの含有量100質量部に代えて速硬剤100質量部に対する値と見なしても実質支障はない。
【0017】
また、本発明の速硬性混和材は、凝結促進剤か凝結遅延剤、又はその両者を含有する。何れも凝結性を調整するために使用するが、凝結性に影響される硬化性状の調整用にも好適である。このうち凝結遅延剤の含有は、十分な可使時間を確保する上で有効である。凝結遅延剤の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは、速硬剤中のアルミン酸カルシウムシリケートの含有量100質量部に対し、1〜6質量部とする。凝結遅延剤が1質量部未満では配合効果が得られないことがあり、6質量部を超えると混和させたセメント組成物が硬化不良を起こすことがあるので適当ではない。凝結遅延剤はモルタルやコンクリートに使用可能なものであれば何れのものでも使用できる。具体的には、例えば、クエン酸や酒石酸などのカルボン酸類やその塩、硼酸塩や燐酸塩などの無機塩を挙げることができるが、記載例に限定されない。また、凝結促進剤を含有すると、凝結時間を所望の時間に調整し易くなり、特に、凝結終結時間の遅れを防ぐには有効である。凝結促進剤の含有量は、制限されないが、好ましくは、速硬剤中のアルミン酸カルシウムシリケートの含有量100質量部に対し、3〜20質量部とする。凝結遅延剤が3質量部未満では配合効果が得られないことがあり、20質量部を超えると可使時間が短くなり過ぎることがあるので適当ではない。凝結促進剤は、モルタルやコンクリートに使用可能なものであれば何れのものでも使用できる。具体的には、例えば、何れもアルカリ金属の硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩および水酸化物の群から選定される何れか1種又は2種以上、硫酸アルミニウム等を挙げられるが、記載例に限定されない。凝結遅延剤と凝結促進剤を併用する場合は、各々の作用効果を同時に得たい場合の他、とりわけ凝結始発時間及び終結時間の詳細な調整を行いたい時に好適であり、硬化発現時期を任意に設定し易くなる。
【0018】
また、本発明の速硬性混和材は、前記本発明に係る速硬剤、石膏類、凝結促進剤及び凝結遅延剤以外の成分(以下、「他成分」と称す。)も、本発明の効果を実質的に喪失させるものでない限り、含有しても良い。このような他成分は、本発明の速硬性混和材中に予め含まさずに、それ自体別の混和材・剤として本発明の速硬性混和材と併用することもできる。また、本発明の速硬性混和材をセメントペースト、モルタル、コンクリート等に混和する際の配合量は特に制限されない。目安の一例を示すと、他成分を実質含まない(概ねトータル含有量で0.1質量%以下)速硬性混和材を混和する場合は、セメント100質量部に対し、33〜66質量部とすることで速硬性と所望の凝結・硬化性状が得易くなる。混和対象となるセメントペースト、モルタル、コンクリート等に使用されるセメントは限定されない。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明は記載された実施例に限定されるものではない。
【0020】
[アルミン酸カルシウムシリケートの作製]
何れも市販粉末試薬の、CaCO
3、Al
2O
3、SiO
2及びTiO
2を用い、ヘンシェル型混合機を使用し、表1に表す化学成分配合量(CaCO
3はCaO換算値)となるよう調合した。尚、0.1質量%未満の化学成分は実質無配合(表記は0質量%)と見なした。調合物は大気雰囲気の電気炉中で約1800℃(±50℃)に加熱し、当該温度で60分間保持した後、直ちに炉外に取出した。取出した加熱物表面に冷却用の窒素ガスを流速約30ml/秒で吹付け、急冷し、高ガラス化率のアルミン酸カルシウムシリケートを作製した。冷却物は全鋼製のボールミルで粉砕し、市販の分級装置にかけ、ブレーン比表面積約5000cm
2/gの粉末を得た。この粉末のガラス化率を、粉末エックス線回折装置を用い、質量;M1のアルミン酸カルシウムシリケートに含まれる各鉱物の質量を内部標準法等で定量し、定量できた含有鉱物相の総和質量;M2を算出し、残部が純ガラス相と見なし、次式でガラス化率を算出した。ガラス化率(%)=(1−M2/M1)×100
ガラス化率の結果も表1に記す。
【0021】
【表1】
【0022】
[速硬性混和材の作製]
前記作製のアルミン酸カルシウムシリケート粉末と、粉砕・分級処理によりブレーン比表面積約8000cm
2/gに調整した市販のII型無水石膏、硫酸ナトリウム(市販粉末試薬)、炭酸リチウム(市販粉末試薬)、クエン酸(市販試薬)、酸化チタン粉末(市販試薬)から選定される材料を表2の配合量となるようヘンシェルミキサで180秒間乾式混合し、粉末状の速硬性混和材を作製した。
【0023】
【表2】
【0024】
[セメント系組成物(モルタル)の作製]
上記のように作製した速硬性混和材と市販の普通ポルトランドセメント及び水を用い、普通ポルトランドセメント100質量部に対して水27質量部と表3で表す速硬性混和材を記載した添加量になるよう調合し、ホバート型ミキサで1分間混練してセメント系組成物を作製した。セメント組成物は、その凝結終結時間をJIS R 5201に準拠した方法で測定した。また、混練終了から約10分経過後の混練物を内径50mm、高さ100mmの円柱形の成形型枠に充填し、6時間大気中又は28日間水中(但し、最初の24時間のみ大気中)で養生した。養生後脱型することで供試体を得た。
【0025】
[硬化性の評価]
脱型後の供試体は直ちにJIS R 5201に準拠した方法で一軸圧縮強度を測定した。以上の、速硬性混和材、セメント系組成物並びに供試体の凝結時間と一軸圧縮強度の測定は全て約20℃の環境下で行った。測定された凝結時間及び材齢6時間及び28日の一軸圧縮強度の結果を表3に表す。
【0026】
【表3】
【0027】
表3で示した結果から、本発明の速硬性混和材は、何れも、可使時間を適度に調整付与することができ、また材齢6時間で高い強度発現性を呈し、優れた速硬性を具備していることに加え、材齢28日の長期強度も伸びが良好であることがわかる。これに対し、本発明外の速硬性混和材では優れた速硬性を有するも凝結時間が短くなり過ぎて可使時間の確保ができ難かったり(比較例11)、また、長い可使時間を保持できても速硬性が十分備わっていなかったり(比較例10、13〜15及び17)、また、適度な可使時間の確保ができても長期強度の伸びが実感できなかったり(比較例12、16及び18)したものもあった。