(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071490
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】表面実装機の部品保持ヘッド
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
H05K13/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-264496(P2012-264496)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-110342(P2014-110342A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】ハンファテクウィン株式会社
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TECHWIN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北田 進
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−176896(JP,A)
【文献】
米国特許第05755471(US,A)
【文献】
特開平02−174299(JP,A)
【文献】
特開平08−279696(JP,A)
【文献】
特開平08−181190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30;13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトがヘッド本体のシャフトハウジングに位置決めされた上で昇降可能かつ軸周りに回転可能に装着され、前記シャフトの下端に部品を保持する部品保持具が装着される表面実装機の部品保持ヘッドにおいて、
前記シャフトは、前記シャフトハウジングを貫通する下部シャフトと、前記シャフトハウジングより上方で前記下部シャフトに接続された上部シャフトとからなり、
前記保持具は前記下部シャフトの下端に固定し、
前記下部シャフトと前記上部シャフトとの接続部分に前記下部シャフトの上昇に対して反発する弾性力を及ぼす緩衝部材を設け、
前記シャフトハウジングは、前記ヘッド本体に対して昇降不可で軸周りに回転可能となるように装着され、前記上部シャフトと前記下部シャフトは、前記シャフトハウジングに対して昇降可能で前記シャフトハウジングと一緒に軸周りに回転可能となるように装着され、前記上部シャフトにベアリングが固定され、前記ベアリングが前記シャフトハウジングの上方に設けられたガイド筒に形成された軸方向に延びるガイド溝に嵌め込まれていることを特徴とする表面実装機の部品保持ヘッド。
【請求項2】
前記下部シャフトの上端部分にジョイントピンが設けられ、前記上部シャフトの下端部分にジョイント溝が設けられ、前記ジョイントピンを前記ジョイント溝に嵌め込むことにより、前記下部シャフトが前記上部シャフトに対して着脱可能に装着され、かつ前記緩衝部材は、前記下部シャフトと前記上部シャフトとの接続部分において前記下部シャフトを前記上部シャフトに対して下方に引っ張る力を及ぼし、これにより前記ジョイントピンが前記ジョイント溝の壁に突き当たる位置に付勢される、請求項1に記載の表面実装機の部品保持ヘッド。
【請求項3】
前記シャフトハウジングが前記ヘッド本体に対して軸周りに回転可能となるように、前記シャフトハウジングとヘッド本体との間に少なくとも一つのベアリングが介在されるとともに、前記シャフトハウジングの外周にギアが設置されており、前記ギアに駆動モータと接続された駆動ギアが噛み合っている、請求項1又は2に記載の表面実装機の部品保持ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等の部品を基板上に実装する表面実装機において、部品を保持する部品保持具を有する部品保持ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装機は、ノズル等の部品保持具を有する部品保持ヘッドにより、部品を部品供給部からピックアップし、そのまま部品を保持して基板上に移送し、基板上の所定位置に実装するように構成されている。
【0003】
かかる部品保持ヘッドとしては、そのヘッド本体に複数のシャフトがそれぞれ軸線周りのT方向に回転可能かつ軸線方向に沿ったZ方向に移動可能に装着され、シャフトの下端にノズル等の部品保持具が装着された構成を有するものが知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
従来、シャフトの下端に部品保持具としてのノズルを装着する構成としては、ノズルをノズルホルダに装着し、そのノズルホルダをシャフトの先端に装着するという構成が知られている(例えば特許文献2)。このようなノズルホルダを使用した構成では、ノズル交換時や部品吸着時などに発生するシャフト軸に沿った上方向の力を緩衝するために、ノズルとノズルホルダとの間、あるいはノズルホルダとシャフト下端との間に緩衝部材として圧縮バネを介在させるようにしている。すなわち、圧縮バネがシャフトの上昇に対して反発する弾性力を及ぼすことで、ノズル交換時や部品吸着時などの過負荷や衝撃を緩衝するようにしている。
【0005】
しかし、上記従来の構成では、シャフトとノズルとの間にノズルホルダが介在するので、その分、部品点数が増えてしまう。また、ノズルとノズルホルダとの間、あるいはノズルホルダとシャフト下端との間に圧縮バネを介在させ、それらの上下方向の動きを許容する必要があるので、ノズルとノズルホルダとの間、あるいはノズルホルダとシャフト下端との間でそれぞれ幾何公差や寸法公差を確保する必要がある。その結果、それぞれの幾何公差や寸法公差が累積し、作動時にガタツキが発生するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−157635号公報
【特許文献2】特開2008−300598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、シャフトに必要な上下方向の緩衝作用を確保しつつ、部品点数を削減でき、ガタツキが発生しにくい表面実装機の部品保持ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、シャフトがヘッド本体のシャフトハウジングに位置決めされた上で昇降可能かつ軸周りに回転可能に装着され、前記シャフトの下端に部品を保持する部品保持具が装着される表面実装機の部品保持ヘッドにおいて、
前記シャフトは、前記シャフトハウジングを貫通する下部シャフトと、前記シャフトハウジングより上方で前記下部シャフトに接続された上部シャフトとからなり、前記保持具は前記
下部シャフトの下端に固定し、
前記下部シャフトと前記上部シャフトとの接続部分に前記
下部シャフトの上昇に対して反発する弾性力を及ぼす緩衝部材を設け
、前記シャフトハウジングは、前記ヘッド本体に対して昇降不可で軸周りに回転可能となるように装着され、 前記上部シャフトと前記下部シャフトは、前記シャフトハウジングに対して昇降可能で前記シャフトハウジングと一緒に軸周りに回転可能となるように装着され、前記上部シャフトにベアリングが固定され、前記ベアリングが前記シャフトハウジングの上方に設けられたガイド筒に形成された軸方向に延びるガイド溝に嵌め込まれていることを特徴とする表面実装機の部品保持ヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品保持具はシャフトの下端に固定しているので、部品保持具とシャフト下端との間に幾何公差や寸法公差を確保する必要がなく、幾何公差や寸法公差の累積によるガタツキの発生を防止できる。また、従来のノズルホルダを省略できるので、部品点数も削減できる。
【0010】
一方、本発明では、シャフトに必要な上下方向の緩衝作用は緩衝部材で確保している。この緩衝部材はシャフトを位置決めするシャフトハウジングより上方に配置しているので、シャフトの位置精度に影響を及ぼすことはなく、シャフト先端の部品保持具のガタツキの原因となることもない。したがって、高い位置決め精度を有する表面実装機の部品保持ヘッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例による部品保持ヘッドの要部を示す断面図である。
【
図2】
図1の部品保持ヘッドにおけるシャフト構造体を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すシャフト構造体の内部構造を示す、一部透視による斜視図である。
【
図4】
図3において上部シャフトと下部シャフトを分離した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例による部品保持ヘッドの要部を示す断面図である。
【0014】
表面実装機の部品保持ヘッドのヘッド本体10に、上部シャフト21と下部シャフト22とからなるシャフト20が、シャフト20の軸方向に沿って昇降可能かつシャフト20の軸周りに回転可能に装着されている。そして、下部シャフト22の下端に、電子部品を吸着し保持する部品保持具としてノズル30がノズルホルダを介することなく直接固定されている。
【0015】
下部シャフト22の内部にはエア通路22aが形成されている。エア通路22aは、その一端が、後述するシャフトハウジング23に設けたエア供給口23aを介してヘッド本体10に設けられた吸排気口11に通じ、他端がノズル30に通じている。また、吸排気口11には、自動制御される吸排気系が接続される。これにより、ノズル30が部品を吸着するときには吸排気口11からエア供給口23a及びエア通路22aを介してノズル30に負圧が供給され、部品を実装するときには微正圧が供給される。
【0016】
図2は、先に説明したシャフト20を主体とするシャフト構造体を示す斜視図、
図3は、そのシャフト構造体の内部構造を示す、一部透視による斜視図、
図4は、
図3において上部シャフト21と下部シャフト22を分離した状態を示す斜視図である。
図1及び
図2〜4を参照してシャフト構造体の構成を説明する。
【0017】
上部シャフト21と下部シャフト22とからなるシャフト20のうち、下部シャフト22がシャフトハウジング23を貫通して装着され位置決めされる。上部シャフト21は、シャフトハウジング23より上方で下部シャフト21に接続される。
【0018】
上部シャフト21には一対のベアリング21aが固定されており、この一対のベアリング21aをシャフトハウジング23の上方に設けたガイド筒24に形成したガイド溝24aに嵌め込んでいる。これにより、シャフト20は、ガイド溝24aの範囲内でシャフトハウジング23に対して摺動可能(昇降可能)となっている。一方、シャフト20は、シャフトハウジング23に対して軸線周りには回転できない。すなわち、シャフト20は、シャフトハウジング23が軸線周りに回転したときに、シャフトハウジング23と一体となって軸線周りに回転する。
【0019】
シャフトハウジング23は、ヘッド本体10に対して、上下方向には移動不可(昇降不可)であるが、シャフト20の軸線周りには回転可能となるように上下2箇所のベアリング25を介して装着されている。シャフトハウジング23をシャフト20の軸線周りに回転させるために、シャフトハウジング23の外周にギア26が設けられている。ギア26は、トーションばねを使用したバックラッシュレスギアであり、シャフト20(下部シャフト22)に固定した固定ギア26aと、この固定ギア26aに重ねられる揺動ギア26bとの間に、トーションばね26cを組み込んだものである。このギア26に、駆動モータに連結された駆動ギアを噛み合わせ駆動ギアを回転させることで、シャフトハウジング23は、ヘッド本体10に対してシャフト20の軸線周りに回転する。これにより、シャフト20もシャフトハウジング23と一体となって軸線周りに回転する。
【0020】
また、シャフトハウジング23には、下部シャフト22に設けたエア通路22aにエアを供給するエア供給口23aが設けられている。エア供給口23aは、ヘッド本体10に設けられた吸排気口11に通じており、エア供給口23bから供給されるエアは、
図4に符号22a−1で示したエア通路の入口を通じてエア通路22aに供給される。
【0021】
なお、シャフトハウジング23がヘッド本体10に対して軸線周りに回転するときの回転摺動面23bは、メカニカルシールされている。また、シャフト20がシャフトハウジング23に対して昇降するときの昇降摺動面20aもメカニカルシールされている。
【0022】
シャフト20の上部シャフト21の上部外周を囲むようにコイルスプリング27が配置されている。コイルスプリング27は、上部シャフト21の外周に設けられたスプリングベース21bに支持されており、
図2に示すシャフト構造体が
図1に示すようにヘッド本体10に装着された状態において、シャフト20にこれを上方に摺動させる方向の力を作用させる。したがって、シャフト20は常時はその上限位置に付勢されている。シャフト20を下降させるときは、上部シャフト21の上端に固定されたシャフトヘッド21cの上方に位置する押圧部材28を押し下げる。これにより、シャフト20がコイルスプリング27の弾性力に抗して下降する。
【0023】
次に、上部シャフト21と下部シャフト22との接続構造について説明する。本発明において、下部シャフト22は上部シャフト21に対して着脱可能に装着される。その具体的な接続構造として、本実施例では
図4に明確に現れているように、下部シャフト22の上端部分に円柱状の挿入部22bを形成し、この挿入部22bの外周面に180度間隔で2箇所にジョイントピン22cを突出して設けている。一方、上部シャフト21の下端部分には、挿入部22bを挿入可能な中空状の受部21dを設け、この受部21dにジョイントピン22cを嵌め込み可能なジョイント溝21eを設けている。ジョイント溝21eの基端は、ジョイントピン22cを嵌め込めるように開放している。
【0024】
以上の構成において、
図3の拡大図に示すように、上部シャフト21の受部21dに下部シャフト22の挿入部22bを挿入し、ジョイントピン22cがジョイント溝21eの基端に嵌り込む位置まで下部シャフト22をA方向に押し込み、次いでB方向に回転させ、更にC方向に引っ張る。これにより、ジョイントピン22cがジョイント溝21eに確実に嵌り込み、上部シャフト21に下部シャフト22が装着される。そして、上記と逆の手順により、上部シャフト21から下部シャフト22を取り外すことができる。
【0025】
本実施例では、下部シャフト22と上部シャフト21との接続部分、具体的には下部シャフト22の挿入部22bの下側に緩衝部材として圧縮バネからなるコイルスプリング29を装着している。このコイルスプリング29は、下部シャフト22を上部シャフト21に上述の手順で装着して接続した状態において、下部シャフト22を上部シャフト21に対して下方に引っ張る力を作用させる。このコイルスプリング29の作用により、下部シャフト22を上部シャフト21に装着した状態では、
図3の拡大図に示すように、ジョイントピン22cがジョイント溝21eの壁に突き当たる位置に付勢される。したがって、上部シャフト21に対する下部シャフト22の軸方向(長手方向)の位置が固定され、シャフト20全体としての長さを一定に保つことができる。
【0026】
一方で、コイルスプリング29は、ノズル交換時や部品吸着時などに発生するシャフト20の軸線に沿った上方向の力を緩衝する作用を奏する。すなわち、コイルスプリング29は、シャフト20(下部シャフト22)の上昇に対して反発する弾性力を及ぼす。これにより、下部シャフト22の下端にノズル30を固定していても、ノズル交換時や部品吸着時などに発生するシャフト20の軸線に沿った上方向の力を緩衝することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 ヘッド本体
11 吸排気口
20 シャフト
20a 昇降摺動面
21 上部シャフト
21a ベアリング
21b スプリングベース
21c シャフトヘッド
21d 受部
21e ジョイント溝
22 下部シャフト
22a エア通路
22a−1 エア通路の入口
22b 挿入部
22c ジョイントピン
23 シャフトハウジング
23a 回転摺動面
23b エア供給口
24 ガイド筒
24a ガイド溝
25 ベアリング
26 ギア
26a 固定ギア
26b 揺動ギア
26c トーションばね
27 コイルスプリング
28 押圧部材
29 コイルスプリング(緩衝部材)
30 ノズル
40 シャフト
41 シャフトヘッド
42 キャップ
43 コイルスプリング(緩衝部材)