特許第6071498号(P6071498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071498
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20170123BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20170123BHJP
   C08L 33/20 20060101ALI20170123BHJP
   C08F 255/04 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08L25/12
   C08L51/06
   C08L33/20
   C08F255/04
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-266289(P2012-266289)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-111687(P2014-111687A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】502163421
【氏名又は名称】ユーエムジー・エービーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】篠原 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】仁位 梨沙
(72)【発明者】
【氏名】長谷 信隆
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−231969(JP,A)
【文献】 特開平08−048731(JP,A)
【文献】 特開平05−222138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/00
C08K 3/00−13/08
C08F 251/00−283/00
C08F 283/02−289/00
C08F 291/00−297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
230℃、21.2Nで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上、1g/10分未満であるエチレン・プロピレン共重合体(a)10〜60質量%と、230℃、21.2Nで測定したメルトフローレートが1〜35g/10分であり、エチレン単位を40〜65質量%、プロピレン単位を35〜60質量%含むエチレン・プロピレン共重合体(b)40〜90質量%とを含むゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを含む単量体混合物を乳化グラフト重合したグラフト重合体(B)と、
芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを含む単量体混合物を重合した共重合体(C)とを含有し、
グラフト重合体(B)と共重合体(C)の合計100質量部に対し、グラフト重合体(B)の含有量が15〜45質量部であり、共重合体(C)の含有量が55〜85質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外装部品等に使用される熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ABS樹脂を成形した成形品は耐衝撃性や機械的性質のバランスのとれた部材として、自動車部品やOA機器、その他の雑貨製品など各種分野で幅広く使用されている。
しかし、ABS樹脂はゴム成分であるポリブタジエンが主鎖に炭素−炭素不飽和結合を多く有する樹脂であるために、その成形品は酸素、オゾンまたは紫外線などによって劣化しやすく耐候性に劣ることが知られている。このため屋外で長期にわたり使用される分野、特に自動車外装部品などに使用することが困難であった。
【0003】
ABS樹脂の耐候性を改良する方法としては、主鎖に炭素−炭素不飽和結合を有さないゴム成分を使用する方法が提案されており、その代表としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体やエチレン・α−オレフィン共重合体を使用するAES樹脂が知られている。
例えば特許文献1には、特定の架橋度のエチレン・プロピレン・非共役ジエンをゴム質重合体として使用したAES樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−193581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車外装部品などの分野では、耐衝撃性や各種機械物性に優れることはもちろんのこと、コスト削減の面から無塗装で使用されることも多く、成形品には平面平滑性などの成形外観に優れることも求められる。さらには、走行時の震動や衝突時などの衝撃で成形品が破壊したときに破片が周囲に飛び散る場合があるため、成形品が破壊するときの破壊形態としては、十分に塑性変形した後に破壊が生じる延性破壊が望まれる。
【0006】
しかしながら、一般的に、AES樹脂を成形した成形品は、ABS樹脂を成形した成形品に比べて耐衝撃性、特に低温環境下における耐衝撃性(低温耐衝撃性)に劣るものであった。しかも、AES樹脂を成形した成形品は、低温環境下における破壊形態が塑性変形をほとんど伴わずに破壊する脆性破壊となりやすかった。
特許文献1に記載のAES樹脂は、特定の架橋度のエチレン・プロピレン・非共役ジエンをゴム質重合体として使用することで低温耐衝撃性には優れるものの、低温環境下における破壊形態を延性破壊とするには至っておらず、さらなる改良が求められていた。
【0007】
本発明は、表面平滑性などの成形外観および低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、2種類以上のエチレン・プロピレン共重合体、具体的には、メルトフローレート(MFR)が低いエチレン・プロピレン共重合体と、MFRが高く、特定量のエチレン単位およびプロピレン単位を含むエチレン・プロピレン共重合体を含むゴム質重合体にビニル系単量体混合物が乳化グラフト重合したグラフト重合体を必須成分とする熱可塑性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 230℃、21.2Nで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上、1g/10分未満であるエチレン・プロピレン共重合体(a)10〜60質量%と、230℃、21.2Nで測定したメルトフローレートが1〜35g/10分であり、エチレン単位を40〜65質量%、プロピレン単位を35〜60質量%含むエチレン・プロピレン共重合体(b)40〜90質量%とを含むゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを含む単量体混合物を乳化グラフト重合したグラフト重合体(B)と、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを含む単量体混合物を重合した共重合体(C)とを含有し、グラフト重合体(B)と共重合体(C)の合計100質量部に対し、グラフト重合体(B)の含有量が15〜45質量部であり、共重合体(C)の含有量が55〜85質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、表面平滑性などの成形外観および低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体(A)に単量体混合物を乳化グラフト重合したグラフト重合体(B)と、共重合体(C)とを含有する。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。なお、以下において、「成形品」とは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形したものである。また、室温環境下における耐衝撃性を「耐衝撃性」といい、低温環境下における耐衝撃性を「低温耐衝撃性」という。ここで、「室温」とは0〜40℃を意味し、「低温」とは0℃未満を意味する。
【0012】
<ゴム質重合体(A)>
ゴム質重合体(A)は、230℃、21.2Nで測定したメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上、1g/10分未満であるエチレン・プロピレン共重合体(a)と、230℃、21.2Nで測定したMFRが1〜35g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(b)とを含む。
【0013】
エチレン・プロピレン共重合体(a)のMFRは、0.1g/10分以上、1g/10分未満である。エチレン・プロピレン共重合体(a)のMFRが0.1g/10分以上であれば、乳化しやすくなる。一方、エチレン・プロピレン共重合体(a)のMFRが1g/10分未満であれば、耐衝撃性および低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品が得られる。
【0014】
エチレン・プロピレン共重合体(a)は、エチレン単位およびプロピレン単位のみで構成されていてもよいし、非共役ジエン単位を含んでいてもよい。
非共役ジエンとしては特に制限はないが、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネンおよびジシクロペンタジエン等が好ましい。
エチレン・プロピレン共重合体(a)を構成する各単量体単位の含有量は、後述するエチレン・プロピレン共重合体(b)との相溶性の点から、エチレン単位が40〜85質量%であることが好ましく、プロピレン単位が15〜60質量%であることが好ましく、非共役ジエン単位が0〜20質量%であることが好ましい。
【0015】
一方、エチレン・プロピレン共重合体(b)のMFRは、1〜35g/10分であり、好ましくは1〜10g/10分である。エチレン・プロピレン共重合体(b)のMFRが1g/10分以上であれば、ゴム質重合体(A)の分散性が良好となり、ブツ等の不良現象を抑制でき、表面平滑性などの成形外観に優れた成形品が得られる。一方、エチレン・プロピレン共重合体(b)のMFRが35g/10分以下であれば、低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品が得られる。
【0016】
エチレン・プロピレン共重合体(b)は、エチレン単位およびプロピレン単位のみで構成されていてもよいし、非共役ジエン単位を含んでいてもよい。
非共役ジエンとしては特に制限されず、エチレン・プロピレン共重合体(a)の説明において先に例示した非共役ジエンが挙げられる。
エチレン・プロピレン共重合体(b)を構成する各単量体単位の含有量は、エチレン単位が40〜65質量%であり、プロピレン単位が35〜60質量%である。エチレン単位およびプロピレン単位の含有量が上記範囲内であれば、低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品が得られる。
なお、エチレン・プロピレン共重合体(b)が非共役ジエン単位を含む場合、非共役ジエン単位の含有量は0〜20質量%であることが好ましい。
【0017】
エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)の融点や結晶化温度等は特に制限されないが、低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品が得られやすくなる傾向にあることから、示差走査熱測定において、23℃から200℃まで10℃/分で昇温したときの融解ピーク(融点(Tm))はそれぞれ60℃以下であることが好ましく、融解熱量(ΔHm)はそれぞれ25J/g以下であることが好ましい。次いで、200℃から−100℃まで−10℃/分で降温したときの結晶化ピーク(結晶化温度(Tc))はそれぞれ25℃以下であることが好ましく、結晶化熱量(ΔHc)はそれぞれ50J/g以下であることが好ましい。
【0018】
エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)は、通常、チーグラー・ナッタ触媒、またはメタロセン触媒を用いて製造される。
チーグラー・ナッタ触媒としては、高活性触媒が好ましく、特にマグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを組み合わせた高活性触媒が好ましい。
一方、メタロセン触媒としては、ジルコニウム、ハフニウム、チタンなどの遷移金属に、シクロペンタジエニル骨格を有する有機化合物、ハロゲン原子などが配位したメタロセン錯体と、アルモキサン化合物、イオン交換性珪酸塩、有機アルミニウム化合物などを組み合わせた触媒が使用できる。
【0019】
また、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)の重合方法としては特に制限されず、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法、またはこれらを組み合わせた多段重合法などが挙げられる。
【0020】
ゴム質重合体(A)は、エチレン・プロピレン共重合体(a)を10〜60質量%と、エチレン・プロピレン共重合体(b)を40〜90質量%(ただし、エチレン・プロピレン共重合体(a)とエチレン・プロピレン共重合体(b)の合計が100質量%)とを含む。ゴム質重合体(A)中のエチレン・プロピレン共重合体(a)の含有量が10質量%以上、エチレン・プロピレン共重合体(b)の含有量が90質量%以下であれば、低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品が得られる。一方、ゴム質重合体(A)中のエチレン・プロピレン共重合体(a)の含有量が60質量%以下、エチレン・プロピレン共重合体(b)の含有量が40質量%以上であれば、表面平滑性などの成形外観に優れた成形品が得られる。
耐衝撃性にも優れる成形品が得られやすくなることから、ゴム質重合体(A)は、エチレン・プロピレン共重合体(a)を40〜60質量%と、エチレン・プロピレン共重合体(b)を40〜60質量%(ただし、エチレン・プロピレン共重合体(a)とエチレン・プロピレン共重合体(b)の合計が100質量%)とを含むことが好ましい。
【0021】
ゴム質重合体(A)の製造方法は、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)が均一に混合される方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)を均一溶液に溶解させる方法、予めエチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)を溶融混練したものを溶液に溶解させる方法、これらを再乳化する方法、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)を同時に機械乳化する方法(機械乳化法)などが挙げられる。これらの中でも、生産性の点から機械乳化法が好ましい。
【0022】
ここで、「機械乳化法」とは、乳化剤およびワックス状重合体の存在下で、塊状またはペレット状のエチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)に機械的剪断力を与え、水中に微細に分散安定化させる方法である。必要に応じて、機械乳化法により得られたラテックスに架橋剤および重合開始剤を加えた後、熱処理してもよく、この方法により架橋されたゴム質重合体(A)が得られる。架橋されたゴム質重合体(A)を用いた場合、得られる成形品の耐衝撃性、特に低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。
【0023】
機械乳化法で使用される乳化剤としては、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の公知の乳化剤が挙げられる。
乳化剤の使用量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱変色性が抑えられ、また機械乳化の際の粒子径制御性に優れることから、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)の合計100質量部に対して、1〜8質量部が好ましい。
【0024】
機械乳化法で使用されるワックス状重合体としては、中和可能であることから、カルボン酸またはその無水物基を含む熱可塑性重合体が好ましい。該熱可塑性重合体としては、例えば、α−オレフィン系重合体にエチレン系不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト重合した酸変性α−オレフィン系重合体が挙げられる。
ワックス状重合体の質量平均分子量は、2,000〜6,000が好ましく、酸価は22〜30mgKOH/gが好ましい。質量平均分子量および酸価がこの範囲にあると、得られる成形品の成形外観がより優れる。
ワックス状重合体の使用量は、機械乳化の際の粒子径制御性に優れることから、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0025】
架橋されたゴム質重合体(A)を得る場合、架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性単量体が挙げられる。これらの中でもジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。これら架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の使用量は、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。架橋剤の使用量が0.1質量部以上であれば、架橋剤を使用する効果が十分に発揮される。一方、架橋剤の使用量が10質量部以下であれば、成形品の低温耐衝撃性を良好に維持できる。
【0026】
ゴム質重合体(A)のラテックスの質量平均粒子径は、目的とする熱可塑性樹脂組成物の成形性や、成形品の低温耐衝撃性に応じて調整することが好ましいが、得られる成形品の耐衝撃性の点からは、200〜600nmであることが好ましい。
なお、本明細書において、「質量平均粒子径」とは、粒度分布測定器を用いて質量基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値である。
【0027】
熱可塑性樹脂組成物100質量%中のゴム質重合体(A)の含有量は、13〜30質量%が好ましく、17〜30質量%がより好ましい。ゴム質重合体(A)の含有量が上記範囲内であれば、成形外観および低温耐衝撃性のバランスに優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品が得られやすくなる。
【0028】
<グラフト重合体(B)>
グラフト重合体(B)は、ゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを含む単量体混合物を乳化グラフト重合したものである。
【0029】
グラフト重合体(B)を構成する単量体混合物は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を必須成分として含み、これら単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を任意成分として含む混合物である。
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、o−ジクロロスチレン、p−ジクロロスチレン等が挙げられる。これらの中でもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
これら芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でもアクリロニトリルが好ましい。
これらシアン化ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
他のビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のマレイン酸誘導体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミドなどが挙げられる。
これら他のビニル系単量体は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
グラフト重合体(B)を構成する単量体混合物の組成は、熱可塑性樹脂組成物の流動性や、成形品の耐衝撃性、熱安定性などの物性バランスに優れることから、芳香族ビニル系単量体が50〜95質量%、シアン化ビニル系単量体が5〜50質量%、他のビニル系単量体が0〜30質量%(ただし、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、他のビニル系単量体の合計が100質量%)であることが好ましい。
【0033】
乳化グラフト重合は、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(a)、(b)を同時に機械乳化して得られたゴム質重合体(A)を攪拌翼ジャケット付き反応容器に仕込み、次に、乳化グラフト重合させる単量体混合物の全量または一部を数回に分けて一括または連続して滴下し、攪拌しながら40〜70℃にて、5〜60分間放置したのち、更にレドックス系開始剤を添加することにより行うことができる。これにより、添加した各単量体がゴム質重合体(A)に含浸し、ゴム質重合体(A)内および表面にて重合して、グラフト重合体(B)となる。
【0034】
レドックス系開始剤としては、油溶性有機過酸化物と硫酸第一鉄−キレート剤−還元剤とが組み合わされたものが好ましい。
油溶性有機過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
特に好ましいレドックス系開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、デキストロースとからなるものである。
【0035】
グラフト重合体(B)は、熱可塑性樹脂組成物の流動性や、成形品の耐衝撃性、熱安定性などの物性バランスに優れ、さらに生産性にも優れることから、ゴム質重合体(A)40〜80質量部に、単量体混合物20〜60質量部(ただし、ゴム質重合体(A)と単量体混合物の合計が100質量部)が乳化グラフト重合してなるものが好ましい。
【0036】
<共重合体(C)>
共重合体(C)は、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを含む単量体混合物を重合したものである。
【0037】
共重合体(C)を構成する単量体混合物は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を必須成分として含み、これら単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を任意成分として含む混合物である。
芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、他のビニル系単量体の具体例としては、グラフト重合体(B)の説明において先に例示した各単量体と同様のものが挙げられる。
【0038】
共重合体(C)を構成する単量体混合物の組成は、熱可塑性樹脂組成物の流動性や、成形品の耐衝撃性、熱安定性などの物性バランスに優れることから、芳香族ビニル系単量体が50〜95質量%、シアン化ビニル系単量体が5〜50質量%、他のビニル系単量体が0〜30質量%(ただし、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、他のビニル系単量体の合計が100質量%)であることが好ましい。
【0039】
共重合体(C)の製造方法としては特に制限されるものではなく、通常行われている方法を使用して製造することができる。一般的な方法としては、塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合、懸濁重合および乳化重合等が挙げられる。
【0040】
<その他の成分>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、グラフト重合体(B)および共重合体(C)の他に、その物性を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂組成物の製造時(混合時)や成形時に慣用の他の添加剤、例えば滑材、顔料、染料、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤を配合してもよい。
【0041】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物を製造する方法には特に制限はなく、通常行われている方法及び装置を使用して製造することができる。一般的に使用されている方法としては溶融混合法があり、その際に用いる装置の例としては押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂組成物の製造は回分式、連続式のいずれでもよい。また、各成分の混合順序にも特に制限はなく、全ての成分が十分に均一混合されればよい。
【0042】
熱可塑性樹脂組成物は、その流動性や、成形品の低温耐衝撃性に優れることから、グラフト重合体(B)と共重合体(C)の合計100質量部に対し、グラフト重合体(B)の含有量が15〜45質量部、共重合体(C)の含有量が55〜85質量部であることが好ましく、グラフト重合体(B)の含有量が25〜40質量部、共重合体(C)の含有量が60〜75質量部であることがより好ましい。特に、グラフト重合体(B)の含有量が増えると成形品の耐衝撃性や低温耐衝撃性が向上する傾向にあり、共重合体(C)の含有量が増えると熱可塑性樹脂組成物の流動性が向上する傾向にある。
【0043】
<作用効果>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エチレン・プロピレン共重合体(a)とエチレン・プロピレン共重合体(b)を含むゴム質重合体(A)にビニル系単量体混合物が乳化グラフト重合したグラフト重合体(B)と、共重合体(C)とを含有するので、表面平滑性などの成形外観および低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である成形品を得ることができる。
【0044】
[成形品]
本発明により得られる成形品は、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形したものであり、表面平滑性などの成形外観および低温耐衝撃性に優れ、低温環境下における破壊形態が延性破壊である。
熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。これらの中でも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明により得られる成形品は、表面平滑性などの成形外観および低温耐衝撃性に優れる。しかも、低温環境下における破壊形態が延性破壊であるため、破壊しても破片が飛び散りにくい。よって、本発明により得られる成形品は、バンパー、ドアミラー、リアスポイラーなどの自動車外装部品等として特に好適であるが、それ以外の用途にも適用できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下のゴム質重合体(A)の製造に用いたエチレン・プロピレン共重合体を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
なお、表1中の「エチレン/プロピレン/ジエン」は、「エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン単位」のことである。
また、エチレン・プロピレン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に準拠し、230℃、21.2Nの条件にて測定した。
また、エチレン・プロピレン共重合体の融点(Tm)、融解熱量(ΔHm)、結晶化温度(Tc)、結晶化熱量(ΔHc)は以下のようにして測定した。
示差走査熱量計(DSC)を使用して、23℃から200℃まで10℃/分で昇温したときの融解ピークを測定し、これを融点(Tm)とした。また、融解ピークと同時に融解熱量(ΔHm)を測定した。次いで、200℃から−100℃まで−10℃/分で降温したときの結晶化ピークを測定し、これを結晶化温度(Tc)とした。また、結晶化ピークと同時に結晶化熱量(ΔHc)を測定した。
【0048】
[ゴム質重合体(A)の製造]
<ゴム質重合体(A1)>
エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン(1,4−ヘキサジエン)単位=51質量%/49質量%/0質量%であり、230℃、21.2Nで測定したMFRが0.5g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(a1)5質量%と、エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン(1,4−ヘキサジエン)単位=53質量%/47質量%/0質量%であり、230℃、21.2Nで測定したMFRが5.2g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(b1)95質量%と、エチレン・プロピレン共重合体(a1)およびエチレン・プロピレン共重合体(b1)の合計100質量部に対し、ワックス状重合体として酸変性α−オレフィン系重合体(無水マレイン酸変性ポリエチレン)12質量部と、乳化剤として長鎖アルキルカルボン酸塩(オレイン酸カリウム)2.5質量部とを加え、同時に機械乳化してラテックスを得た。得られたラテックスに、t−ブチルクミルパーオキサイド0.7質量部およびジビニルベンゼン1.0質量部(いずれもラテックス中の固形分に対する量)を加え、130℃で5時間反応させ、ゴム質重合体(A1)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A1)のラテックスの質量平均粒子径は410nmであった。
なお、ゴム質重合体(A1)のラテックスの質量平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて質量基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出した。
【0049】
<ゴム質重合体(A2)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)10質量%、エチレン・プロピレン共重合体(b1)90質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A2)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A2)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0050】
<ゴム質重合体(A3)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)30質量%、エチレン・プロピレン共重合体(b1)70質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A3)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A3)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0051】
<ゴム質重合体(A4)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)50質量%、エチレン・プロピレン共重合体(b1)50質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A4)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A4)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0052】
<ゴム質重合体(A5)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)70質量%、エチレン・プロピレン共重合体(b1)30質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A5)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A5)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0053】
<ゴム質重合体(A6)>
エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン(1,4−ヘキサジエン)単位=70質量%/28質量%/2質量%であり、230℃、21.2Nで測定したMFRが0.35g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(a2)30質量%、エチレン・プロピレン共重合体(b1)70質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A6)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A6)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0054】
<ゴム質重合体(A7)>
エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン(1,4−ヘキサジエン)単位=44質量%/56質量%/0質量%であり、230℃、21.2Nで測定したMFRが0.95g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(a3)30質量%、エチレン・プロピレン共重合体(b1)70質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A7)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A7)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0055】
<ゴム質重合体(A8)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)30質量%、エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン(1,4−ヘキサジエン)単位=63質量%/37質量%/0質量%であり、230℃、21.2Nで測定したMFRが7.3g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(b3)70質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A8)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A8)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0056】
<ゴム質重合体(A9)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)30質量%、エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン(1,4−ヘキサジエン)単位=61質量%/39質量%/0質量%であり、230℃、21.2Nで測定したMFRが38g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(b4)70質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A9)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A9)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0057】
<ゴム質重合体(A10)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)30質量%、エチレン単位/プロピレン単位/非共役ジエン(1,4−ヘキサジエン)単位=72質量%/27質量%/1質量%であり、230℃、21.2Nで測定したMFRが6.2g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(b2)70質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A10)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A10)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0058】
<ゴム質重合体(A11)>
エチレン・プロピレン共重合体(a1)100質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A11)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A11)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0059】
<ゴム質重合体(A12)>
エチレン・プロピレン共重合体(b1)100質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A12)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A12)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0060】
<ゴム質重合体(A13)>
エチレン・プロピレン共重合体(b2)100質量%とした以外は、ゴム質重合体(A1)と同様の条件で機械乳化を行いゴム質重合体(A13)のラテックスを得た。得られたゴム質重合体(A13)のラテックスの質量平均粒子径を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
[グラフト重合体(B)の製造]
<グラフト重合体(B1)>
撹拌装置を備えた20Lの重合反応器に、ゴム質重合体(A1)のラテックス70質量部(固形分換算)と、蒸留水155質量部(ゴム質重合体(A1)のラテックス中の水も含む)と、ピロリン酸ナトリウム0.15質量部と、硫酸第一鉄七水塩0.006質量部と、フラクトース0.35質量部とを仕込み、内温を80℃に保った。これに、スチレン(St)21質量部およびアクリロニトリル(AN)9質量部からなる単量体混合物と、クメンハイドロパーオキサイド0.6質量部とを、各々別の供給口から140分かけて同時に滴下して重合を行った。この間、内温は80℃で一定に制御した。滴下終了後、さらに100分間80℃のまま保持した後に冷却して乳化グラフト重合を完結させ、反応生成物のラテックスを得た。得られた生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(B1)を得た。
【0063】
<グラフト重合体(B2)〜(B13)>
表3に示す種類のゴム質重合体(A)のラテックスを、グラフト重合体(B1)と同様の条件で乳化グラフト重合し、得られた生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(B2)〜(B13)を得た。
【0064】
【表3】
【0065】
[共重合体(C)の製造]
蒸留水120質量部に、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003質量部と、スチレン68質量%およびアクリロニトリル32質量%を含む単量体混合物100質量部と、t−ドデシルメルカプタン0.35質量部と、過酸化ベンゾイル0.15質量部と、リン酸カルシウム0.5質量部とを添加して、110℃で10時間懸濁重合し、共重合体(C)を得た。
【0066】
[実施例1〜8、比較例1〜8]
グラフト重合体(B)と共重合体(C)とを表4、5に示す組成(質量部)で混合し、30mm二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX−30α」)を用いて230℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物の成形加工性を、以下の方法により評価した。評価結果を表4、5に示す。
また、得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形して100×100mm(厚み2mm、または4mm)の成形品(試験片)を作製し、成形外観、耐衝撃性および低温耐衝撃性、低温環境下における破壊形態を、以下の方法により評価した。評価結果を表4、5に示す。
【0067】
<評価方法>
(成形加工性の評価)
熱可塑性樹脂組成物について、ISO 1133に準拠し、220℃でのメルトボリュームレート(MVR(cm/10分))を測定した。
【0068】
(成形外観の評価)
100×100mm(厚み2mm)の成形品について、表面に観測されたブツの数を目視で確認し、以下に示す評価基準にて成形外観を評価した。なお、ブツが成形品表面にあると不良成形品となることから、「○」の場合を表面平滑性に優れると判断し、合格とした。
○:ブツが観測されない。
△:ブツの数が1〜4個
×:ブツの数が5個以上
【0069】
(耐衝撃性および低温耐衝撃性の評価)
成形品について、ISO 179に準拠し、測定温度23℃または−30℃、成形品の厚さ4mmの条件で、Vノッチ付きシャルピー衝撃強度(KJ/m)を測定した。
【0070】
(破壊形態の評価)
高速衝撃試験機(株式会社島津製作所製、「HTM−1型」)を用い、−30℃において、100mm×100mm(厚み2mm)の成形品の中央に、先端径1/2インチラウンドミサイルを2m/秒の速度で落下させ、破壊試験を行った。10枚の成形品について破壊試験を行い、試験後の成形品の破壊形態を目視にて観測し、延性破壊しているか、脆性破壊しているかを確認し、以下の評価基準にて破壊形態を評価した。なお、「○」または「◎」の場合を延性破壊すると判断し、合格とした。
◎:9〜10枚が延性破壊
○:6〜8枚が延性破壊
△:3〜5枚が延性破壊
×:0〜2枚が延性破壊
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
表4から明らかなように、実施例1〜8の熱可塑性樹脂組成物は成形加工性に優れていた。また、実施例1〜8の熱可塑性樹脂組成物より得られた成形品は、成形外観(表面平滑性)および低温耐衝撃性に優れていた。しかも、低温環境下における破壊形態が延性破壊であった。また、実施例1〜6を比較すると、エチレン・プロピレン共重合体(a)の含有量が50質量%、エチレン・プロピレン共重合体(b)の含有量が50質量%である実施例3の成形品は、耐衝撃性が特に優れていた。
従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品は、バンパー、ドアミラー、リアスポイラーなどの自動車外装部品等に好適であることが示された。
【0074】
一方、表5から明らかなように、比較例1は、エチレン・プロピレン共重合体(a1)の含有量が5質量%と少なく、エチレン・プロピレン共重合体(b1)の含有量が95質量%と多いゴム質重合体(A1)を用いたため、破壊形態の評価において延性破壊を示した成形品は3〜5枚と少なかった。
比較例2は、エチレン・プロピレン共重合体(a1)の含有量が70質量%と多く、エチレン・プロピレン共重合体(b1)の含有量が30質量%と少ないゴム質重合体(A5)を用いたため、成形品は成形外観に劣っていた。
比較例3は、MFRが38g/10分であるエチレン・プロピレン共重合体(b4)を含むゴム質重合体(A9)を用いたため、成形品の低温耐衝撃性が低かった。また、破壊形態の評価において延性破壊を示した成形品は0〜2枚と著しく少なかった。
比較例4は、エチレン単位が72質量%と多く、プロピレン単位が27質量%と少ないエチレン・プロピレン共重合体(b2)を含むゴム質重合体(A10)を用いたため、成形品の低温耐衝撃性が低かった。また、破壊形態の評価において延性破壊を示した成形品は0〜2枚と著しく少なかった。
比較例5は、エチレン・プロピレン共重合体(b)を含まないゴム質重合体(A11)を用いたため、成形品は成形外観に劣っていた。
比較例6は、エチレン・プロピレン共重合体(a)を含まないゴム質重合体(A12)を用いたため、成形品の低温耐衝撃性が低かった。また、破壊形態の評価において延性破壊を示した成形品は3〜5枚と少なかった。
比較例7は、エチレン・プロピレン共重合体(a)を含まず、かつエチレン単位が72質量%と多く、プロピレン単位が27質量%と少ないエチレン・プロピレン共重合体(b2)を含むゴム質重合体(A13)を用いたため、成形品の低温耐衝撃性が低かった。また、破壊形態の評価において延性破壊を示した成形品は0〜2枚と著しく少なかった。
比較例8は、エチレン・プロピレン共重合体(a)とエチレン・プロピレン共重合体(b)が均一に混合されていないため、成形品は成形外観に劣っていた。また、破壊形態の評価において延性破壊を示した成形品は0〜2枚と著しく少なかった。