(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1フィードバック素子群は、前記第1スイッチ素子がオフして前記第2スイッチ素子がオンし、前記第1貫通電流検出素子が前記第1貫通電流を検出したとき、前記第1インバータの入力における電荷を放電し、
前記第2フィードバック素子群は、前記第1スイッチ素子がオンして前記第2スイッチ素子がオフし、前記第2貫通電流検出素子が前記第2貫通電流を検出したとき、前記第1インバータの入力における電荷を充電する、
ことを特徴とする請求項5に記載の量子化器。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本実施例に係る量子化器,比較回路および半導体集積回路を詳述する前に、
図1〜
図6を参照して、量子化器,比較回路および半導体集積回路の例、並びに、その問題点を説明する。
【0016】
前述したように、携帯電話などのワイヤレス電子機器には、リチウムイオン二次電池等が広く用いられている。このような機器内には、例えば、電源電圧が十分得られているかどうかを知らせるためのパワーオンリセット(POR)信号を生成するための回路、或いは、それを管理するパワーマネジメントIC(半導体集積回路)が搭載されている。
【0017】
このPOR信号を生成する回路は、例えば、電源電圧が十分得られている場合は高レベル『H』、そうでない場合は低レベル『L』を出力するというように、通常、ある規定電位に基づいて電圧比較を行う比較回路が適用されている。
【0018】
図1は、パワーマネジメントIC(半導体集積回路)の中に搭載される一般的な比較回路を示すブロック図であり、
図2は、
図1に示す比較回路の一例を示す回路ブロック図である。
【0019】
パワーマネジメントICは、例えば、電源電圧VDDが十分得られているかどうかを知らせるパワーオンリセット信号PORを生成するための比較回路100を有し、比較回路100は、
図1に示されるように、増幅器101および量子化器102を含む。
【0020】
図2に示されるように、比較回路100は、規定電位(基準信号)VPと、電源電圧VDDを分圧した電位(入力信号)VMの電位差をアナログ増幅器101によって増幅し、後段の量子化器102によってH/Lのデジタル信号に変換する。
【0021】
ここで、規定電位VPは、例えば、バンドギャップリファレンスなどによって回路内部で生成することができる。そして、例えば、入力信号の電位が規定電位よりも高くなるVM>VPの時、出力のPOR信号は『H』となり、これにより、十分な電源電圧VDDが得られていることを認識することができる。
【0022】
すなわち、
図2に示されるように、比較回路100は、アナログ回路部ACPおよびデジタル回路部DCP(量子化器102)を含み、アナログ回路部ACPは、抵抗R101,R102、および、増幅器101を含む。
【0023】
増幅器101は、抵抗R101,R102により電源電圧VDDを分圧した電位VMと規定電位VPを比較し、アナログの出力電圧(信号Q)を出力する。量子化器102は、pMOSトランジスタM101およびnMOSトランジスタM102によるインバータであり、信号Qの電位がインバータの閾値電圧を超えるか否かによりデジタルの出力信号XQ(POR信号)を出力する。
【0024】
図3は、
図2に示す比較回路の動作を説明するための図であり、
図3(a)は、時間の経過に伴う電源の分圧電位VMと規定電位VPの関係を示し、
図3(b)は、時間の経過に伴うインバータ(量子化器)102を流れる電流Iの変化を示す。
【0025】
図3(a)に示されるように、電源の分圧電位VMは、電源電圧VDDに従って変化、すなわち、時間の経過に伴って上昇し、時間t11で規定電位VPよりも高くなる。さらに、分圧電位VMは、上昇を続けた後、時間t12から下降に転じて、時間t13で規定電位VPよりも低くなる。
【0026】
従って、時間t11〜t13の期間、パワーオンが可能となるPOR信号が『H』になる。このとき、
図3(b)に示されるように、量子化器(インバータ)102を流れる電流Iは、電源の分圧電位VMと規定電位VPの大小関係が変化する時間t11およびt13で大きく変化する。
【0027】
すなわち、VPとVMの大小関係が入れ替わり、出力のPOR信号が反転する時間t11およびt13において、増幅器101の出力信号Qが中間電位になるため、量子化器102には貫通電流Iが発生し、大きな電流を消費する。
【0028】
ここで、貫通電流Iの発生時間が非常に短い場合、或いは、電源(VDD)に蓄えられている電荷量が非常に多い(電力リソースが十分にある)場合、
図2に示す比較回路は、なんら問題を生じることなく動作することができる。
【0029】
しかしながら、電源VDDに蓄えられている電荷量が非常に少ない(電力リソースが限られている)場合、例えば、環境発電のような微小電力の電源に適用する場合には、問題が生じる虞がある。
【0030】
図4は、微小電力の電源に適用した一般的な比較回路の一例を示す図であり、
図5は、
図4に示す比較回路における課題を説明するための図である。ここで、
図5は、
図4に示す比較回路によるシミュレーション波形を理想的な波形と共に示すものである。
【0031】
図4において、参照符号103は、電力リソースの限られた微小電流供給部を示す。微小電流供給部103の電流源は、例えば、2μA程度の電流を供給し、キャパシタ(入力容量)104は、例えば、100μF程度の容量を有する。
【0032】
すなわち、
図4に示す比較回路において、入力が2μA、入力容量が100μF、すなわち、SR=20mV/secの入力スルーレートで電源電圧が徐々に上昇して変化する場合、シミュレーション波形は、
図5のように変化する。
【0033】
ここで、
図5(a)は、時間の経過に伴う電源電圧VDDと増幅器101の出力信号Qを示し、
図5(b)は、時間の経過に伴う量子化器102を流れる貫通電流Iを示す。
【0034】
なお、
図5(a)において、破線L101は理想的な電源電圧の変化を示し、実線L102は
図4の比較回路における電源電圧VDDの変化を示し、L103は増幅器101の出力信号Qの変化を示す。また、
図5(b)において、破線L201は理想的な量子化器102を流れる貫通電流の変化を示し、実線L202は
図4の比較回路(量子化器102)における貫通電流Iの変化を示す。
【0035】
図5(a)に示されるように、
図4に示す比較回路をリソースの限られた電源に適用した場合、電源電圧VDDは、理想的な電源電圧の曲線L101のように上昇することなく、例えば、時間t20以降、一定の電位を維持する。そのため、電源電圧VDDにより動作する増幅器101の出力信号Qも、時間t20以降、一定の電位となる。
【0036】
このとき、
図5(b)に示されるように、量子化器102を流れる貫通電流Iは、理想的な曲線L201のように変化することなく、時間t20以降、一定の電流を流し続けることになる。
【0037】
すなわち、VMとVPの大小関係が入れ替わる時には貫通電流が発生するが、電力リソースの限られた電源においては、蓄えられている電荷が貫通電流のパスによって放電され、反転するために必要な電荷が十分確保できない。そのため、電源電圧VDDがアナログ的な中間電位になり、量子化器102に定常電流が流れて平衡状態になる。
【0038】
その結果、
図4に示す比較回路は、例えば、入力電流2μAで決まる電位にバランスされ、電源電圧VDDおよび増幅器101の出力信号Q等が一定の中間電位になってしまう。
【0039】
図6は、従来の比較回路の一例を示す回路図であり、上述した課題を解決するために提案されたものである。
図6に示す比較回路では、貫通電流が発生したことを検知すると、貫通電流に相当する電流を増幅器のテイル電流にフィードバックし、増幅器の増幅動作を高速化させるようになっている。
【0040】
図6において、参照符号11Aは電流源、Q21〜Q23,Q33およびQ71,Q72はpMOSトランジスタ、そして、Q14,Q24,Q25,Q34,Q73およびQ74はnMOSトランジスタを示す。
【0041】
通常動作時において、増幅器101のテイル電流Itは、トランジスタQ21とカレントミラー接続されたトランジスタQ71、および、トランジスタQ74によって制御される。
【0042】
すなわち、増幅器101の出力電位(ノードN11の電位)が中間電位になり、貫通電流IpがトランジスタQ72およびQ73で発生すると、トランジスタQ71に流れる電流Itが増加し、その電流Itが増幅器101のテイル電流としてフィードバックされる。
【0043】
これにより、増幅器101の駆動能力が大きくなり、ノードN11の電位を高速に高レベル『H』または低レベル『L』に変化させることが可能になり、入力電位が反転する際に発生する貫通電流の影響を低減することができるようになっている。
【0044】
しかしながら、上述した
図6に示す従来の比較回路では、例えば、増幅器101とは別に、トランジスタQ71およびQ74に流れる追加のテイル電流を使用するため、消費電流が増加する。
【0045】
また、ノードN11が『L』の時には、トランジスタQ72がオンするため、量子化器102の入力(ノードN13)は、バイアス中間電位(ノードN12の電位)と等しくなる。そのため、量子化器102に定常電流が流れることになり、消費電流が増加する。
【0046】
以下、量子化器,比較回路および半導体集積回路の実施例を、添付図面を参照して詳述する。
図7は、第1実施例の量子化器(比較回路)を示す回路図である。
【0047】
なお、以下では、主として比較回路に注目して説明するが、本実施例の量子化器は、増幅器および量子化器を有する比較回路への適用に限定されるものではなく、アナログ信号を入力して二値化(量子化)した信号を出力する様々な用途に適用することができる。
【0048】
図7に示されるように、比較回路1は、増幅器11および量子化器12を含む。量子化器12は、増幅器11の出力(Q)に接続された2段のインバータ121,122、並びに、インバータ(第1インバータ)121と電源/グランド間に貫通電流が発生したことを検知するトランジスタM1,M2を含む。
【0049】
量子化器12は、インバータ(第2インバータ)122の出力信号SSを受けてトランジスタM1,M2の検知動作を制御するスイッチM3,M4、並びに、貫通電流の発生をインバータ121の入力にフィードバックするカレントミラー回路M5〜M10を含む。
【0050】
ここで、トランジスタM1,M2は貫通電流検出部に対応し、トランジスタM1は第1貫通電流検出素子に対応し、トランジスタM2は第2貫通電流検出素子に対応する。また、トランジスタM4は第1スイッチ素子に対応し、トランジスタM3は第2スイッチ素子に対応する。
【0051】
さらに、カレントミラー回路M5〜M10は、フィードバック部に対応し、トランジスタM5〜M7は第1フィードバック素子群に対応し、トランジスタM8〜M10は第2フィードバック素子群に対応する。
【0052】
図8〜
図10は、
図7に示す比較回路の動作を説明するための図である。ここで、
図8(a),
図9(a)および
図9(b)は増幅器11の出力信号Qの立ち上がり時の動作を説明するためのものであり、
図8(b),
図10(a)および
図10(b)は増幅器11の出力信号Qの立ち下がり時の動作を説明するためのものである。
【0053】
増幅器11の出力信号Qが立ち上がる前は、
図8(a)に示されるように、Qの電位(ノードN1の電位)は『L』になっている。従って、インバータ122の出力SS(
図7のノードN3の電位)も同様に『L』になっている。
【0054】
これにより、スイッチ(nMOSトランジスタ)M3はオフし、スイッチ(pMOSトランジスタ)M4はオンし、インバータ121は、トランジスタM2を介してグランド(グランドGND)に接続され、また、電源(電源電圧VDD)とは直接接続される。
【0055】
ここで、スイッチM4がオンすると、トランジスタM1は貫通電流の発生を検知することができなくなるため、トランジスタM5〜M7は動作せず、量子化器12は、
図8(a)のように、トランジスタM2およびM8〜M10のみが動作できる状態になる。
【0056】
すなわち、
図8(a)および
図9(a)に示されるように、信号Qが立ち上がり中間電位になると、インバータ121に貫通電流(第2貫通電流)が流れ始める。このとき、トランジスタM2によって検知された貫通電流は、トランジスタM10,M9およびM8の順にミラーされ、ノードN1(信号Q)に電荷が充電されるようにフィードバックが掛かる。
【0057】
このブースト動作により、
図9(a)および
図9(b)に示されるように、ノードN1(信号Q)の電位上昇が加速される。そして、トランジスタM2によって検知される貫通電流は、信号Qの電位上昇によって徐々に小さくなり、状態が『L』から『H』に遷移するとゼロになり、トランジスタM8〜M10のカレントミラー回路にも電流が流れなくなる。
【0058】
一方、ノードN1(信号Q)の電位が『H』に遷移した後、ノードN3(出力SS)の電位が『H』になると、スイッチM3がオンして、スイッチM4がオフする。このとき、インバータ121は、トランジスタM1を介して電源(VDD)に接続され、また、グランド(GND)とは直接接続されることになる。
【0059】
ここで、スイッチM3がオンすると、トランジスタM2は貫通電流の発生を検知することができなくなるため、トランジスタM8〜M10は動作せず、量子化器12は、
図8(b)のように、トランジスタM1およびM5〜M7のみが動作できる状態になる。
【0060】
すなわち、
図8(b)および
図10(a)に示されるように、信号Qが立ち下がり中間電位になると、インバータ121に貫通電流(第1貫通電流)が流れ始める。このとき、トランジスタM1によって検知された貫通電流は、トランジスタM5,M6およびM7の順にミラーされ、ノードN1(信号Q)の電荷が放電されるようにフィードバックが掛かる。
【0061】
このブースト動作により、
図10(a)および
図10(b)に示されるように、ノードN1(信号Q)の電位降下が加速される。そして、トランジスタM1によって検知される貫通電流は、信号Qの電位降下によって徐々に小さくなり、状態が『H』から『L』に遷移するとゼロになり、トランジスタM5〜M7のカレントミラー回路にも電流が流れなくなる。
【0062】
上述したように、増幅器11の出力信号Qの立ち上がりおよび立ち下がり時に動作させる回路を適切に切り替え、量子化器12の入力信号(Q)の電荷の充放電をブーストすることにより加速させることで、貫通電流発生時の動作を高速化させることが可能になる。
【0063】
なお、貫通電流が発生するとカレントミラー分の消費電流が増加することになるが、即座に量子化器12の入力信号(Q)の電位が変化して貫通電流が小さくなる方向にフィードバックが掛かるため、消費電流の増加の時間を短くすることができる。
【0064】
また、量子化器12の各トランジスタのサイズは、インバータ121の貫通電流およびカレントミラーによって充放電させる電荷量が、電源VDDに蓄えられている電荷量を超えないように適切に選択することができる。
【0065】
図9(a)および
図9(b)、並びに、
図10(a)および
図10(b)に示されるように、本第1実施例の比較回路によれば、電力リソースの限られた電源に適用した場合でも、信号Q(ノードN1)が中間電位に留まることなく、変化点で『H』または『L』に遷移する。
【0066】
このように、本第1の実施例の比較回路によれば、貫通電流の発生を検知すると、量子化器12の入力ノードN1の電荷が、状態の遷移が加速されるように充放電されるため、量子化器内の各ノードは中間電位に留まることなく高速に遷移する。
【0067】
これにより、電源電圧VDDの立ち上がりまたは立ち下がり時に貫通電流が定常的に流れることを防ぎ、低消費電流で正確な動作を行うことのできる比較回路を提供することが可能になる。
【0068】
なお、上述した効果は、第1実施例の比較回路に限定されるものではなく、以下に説明する第2〜第5実施例の比較回路でも同様である。また、本実施例の比較回路は、例えば、電源電圧が十分得られているかどうかを知らせる回路やパワーマネジメントICを始めとする様々な半導体集積回路に対して幅広く適用することができる。
【0069】
図11は、第2実施例の量子化器を示す回路図である。
図11と
図7の比較から明らかなように、この量子化器は、
図7に示す第1実施例の比較回路(量子化器)において、インバータ121の貫通電流の発生を検知するトランジスタM1およびM2の代わりに、抵抗R1およびR2を適用したものである。
【0070】
この量子化器によれば、貫通電流量が抵抗R1およびR2の抵抗値によって制限できるため、例えば、貫通電流のピークを規定して設計する場合に適したものである。
【0071】
具体的に、例えば、VDD=2Vで、貫通電流を1mA以下に抑えたいときには、抵抗R1およびR2の抵抗値を2kΩに選べばよい。ここで、貫通電流が1mA流れると、スイッチM3がオンしていれば、ノードNaが瞬時に2Vから0V付近まで変化し、また、スイッチM4がオンしていれば、ノードNbが瞬時に0Vから2V付近まで変化することになる。
【0072】
このように、本第2実施例の量子化器(比較回路)によれば、インバータ121の貫通電流を瞬時に停止させる時間を設けることができるため、貫通電流のピークを抵抗値によって規定することが可能になる。
【0073】
なお、貫通電流の発生は、ノードNaの電圧降下またはノードNbの電圧上昇によって検知することができ、この電圧変動を第1実施例と同様のカレントミラーによりノードN1にフィードバックさせることで、変化のブースト動作を加速させることが可能になる。
【0074】
図12は、第3実施例の量子化器を示す回路図である。
図12と
図7の比較から明らかなように、この量子化器は、
図7に示す第1実施例の比較回路(量子化器)において、カレントミラー接続された各トランジスタのサイズを調整してカレントミラー比を変え、ノードN1に充放電される電荷量を制御したものである。
【0075】
例えば、
図8(b)に示すトランジスタM1およびM5〜M7において、トランジスタM1とM5のサイズ(ゲート幅)を1:K
1とし、トランジスタM6とM7のサイズを1:K
2とする。これにより、トランジスタM7から放電する電荷量は、トランジスタM1で得られた電荷量のK
1×K
2倍となる。
【0076】
また、例えば、
図8(a)に示すトランジスタM2およびM8〜M10において、トランジスタM2とM10のサイズを1:K
3とし、トランジスタM9とM8のサイズを1:K
4とする。これにより、トランジスタM8から充電できる電荷量は、トランジスタM2で得られた電荷量のK
3×K
4倍となる。
【0077】
ここで、各トランジスタのミラー比を規定する定数K
1〜K
4は、例えば、全て1以上にすることで、ノードN1において充放電を行う電荷量を多く設定することができ、ブースト動作をより一層加速させることが可能になる。ただし、充放電を行う電荷量は、電源の容量(VDD)によって制限されるため、動作速度と使用可能な電荷量を考慮してミラー比の定数K
1〜K
4を設定することになる。
【0078】
図13は、第4実施例の比較回路(量子化器)を示す回路図である。
図13に示されるように、この比較回路は、増幅器11および量子化器12を含む。増幅器11は、規定電位VPと、電源(VDD)の分圧電位VMの電位差を増幅するアナログ増幅器であり、このアナログ増幅器11の出力信号Qを後段の量子化器12によってH/Lのデジタル信号に変換する。
【0079】
ここで、規定電位VPは、例えば、バンドギャップリファレンスなどのアナログ規定電位生成回路、或いは、電源電圧VDDとグランドGNDの間に挿入した抵抗ラダーの分圧電位で生成することができる。このように、増幅器11を適用することで、微小なアナログ電位差(VP−VM)を増幅して、2値化することが可能になる。
【0080】
図14は、第5実施例の比較回路(量子化器)を示す回路図であり、
図15は、
図14に示す比較回路の動作を説明するための図である。
図14において、参照符号13はヒステリシス生成部を示す。
【0081】
図14と
図7の比較から明らかなように、本第5実施例の比較回路は、
図7に示す第1実施例の比較回路に対して、ヒステリシス生成部13を追加したものに相当する。ヒステリシス生成部13は、直列接続された3つの抵抗R11〜R13、並びに、抵抗R11とR12の接続ノードおよび抵抗R12とR13の接続ノードからそれぞれ規定電位VP1,VP2を取り出すスイッチSW1,SW2を含む。
【0082】
ヒステリシス生成部13は、インバータ122の出力信号SSに従って電位の異なる規定電位VPを選択して出力する。すなわち、
図14に示す第5の実施例の比較回路は、増幅器11の入力(規定電位)VP1,VP2を、量子化器12の出力信号SSに従って異なる電位とするようになっている。
【0083】
具体的に、
図15に示されるように、VM>VPの時、SSの電位は『L』であるため、スイッチSW2がオンしてスイッチSW1がオフし、規定電位VPとしては、電位の低いVP2が選択されて増幅器11に入力される。
【0084】
そして、VMの電位が徐々に下がってVPに到達する時間t30になると、量子化器12には貫通電流が流れ、信号Qの電位は電源(VDD)から電荷が充電されることにより高速に『H』に持ち上げられる。
【0085】
このとき、SSの電位は『H』に変化するため、スイッチSW1がオンしてスイッチSW2がオフし、規定電位VPとしては、抵抗ラダーの分圧電位だけ高いVP1が選択されて増幅器11に入力される。
【0086】
このように、入力信号の電位VMの電位が徐々に下がって規定電位VPに到達したとき(t30)、VMとの差が大きくなるようにVPを切り替えることで、チャタリングの発生を防止して比較回路1の動作を安定させるようになっている。
【0087】
チャタリングとは、例えば、信号Qの電位が『L』から『H』に変化するとき、ノードN1に電荷を充電しブーストしても、増幅器11の入力の変化が遅いためノードN1の電位を前の『L』状態に戻そうとして、一時的に『H』と『L』を繰り返す現象である。
【0088】
すなわち、本第5実施例の比較回路は、チャタリングの発生を防止するために、一般にヒステリシス制御と言われているような、変化点に到達すると増幅器11の入力にその変化が助長されるような電位変化を加えるフィードバック制御を与えている。
【0089】
これにより、量子化器12を安定させることができる。なお、規定電位VPではなく、入力信号の電位VMにヒステリシスを持たせてもよい。また、信号Qの電位が『H』から『L』に変化するときも同様に動作できることはいうまでもない。
【0090】
上述したように、各実施例の比較回路は、比較回路内の量子化器に流れる貫通電流を検知し、その情報を量子化器の入力端子の電位調節にフィードバックすることによって、2値化の遷移を高速に行うことができ、消費電力を低減することが可能になる。
【0091】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載した全ての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではない。また、明細書のそのような記載は、発明の利点および欠点を示すものでもない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【0092】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
アナログ信号を入力して二値化した信号を出力する量子化器であって、
前記量子化器を流れる貫通電流を検出する貫通電流検出部と、
前記貫通電流検出部からの信号をフィードバックして、前記量子化器の入力の電荷を制御するフィードバック部と、を有する、
ことを特徴とする量子化器。
【0093】
(付記2)
前記量子化器は、pチャネル型MOSトランジスタおよびnチャネル型MOSトランジスタを有する第1インバータを含み、
前記貫通電流検出部は、
前記二値化した信号が第1の値に遷移する場合の、前記第1インバータを流れる第1貫通電流を検出する第1貫通電流検出素子と、
前記二値化した信号が第2の値に遷移する場合の、前記第1インバータを流れる第2貫通電流を検出する第2貫通電流検出素子と、を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の量子化器。
【0094】
(付記3)
前記第1貫通電流検出素子は、第1電源線と前記第1インバータの間に設けられ、
前記第2貫通電流検出素子は、前記第1インバータと第2電源線の間に設けられている、
ことを特徴とする付記2に記載の量子化器。
【0095】
(付記4)
前記フィードバック部は、
前記第1貫通電流検出素子により検出された前記第1貫通電流をカレントミラーする第1フィードバック素子群と、
前記第2貫通電流検出素子により検出された前記第2貫通電流をカレントミラーする第2フィードバック素子群と、を含む、
ことを特徴とする付記3に記載の量子化器。
【0096】
(付記5)
前記第1フィードバック素子群は、前記第1貫通電流検出素子で検出された前記第1貫通電流に相当する電荷を、前記量子化器の入力に与えて放電させ、
前記第2フィードバック素子群は、前記第2貫通電流検出素子で検出された前記第2貫通電流に相当する電荷を、前記量子化器の入力に与えて充電させる、
ことを特徴とする付記4に記載の量子化器。
【0097】
(付記6)
前記第1フィードバック素子群は、前記第1貫通電流検出素子で検出された前記第1貫通電流に相当する電荷よりも大きい電荷を、前記量子化器の入力に与えて放電させ、
前記第2フィードバック素子群は、前記第2貫通電流検出素子で検出された前記第2貫通電流に相当する電荷よりも大きい電荷を、前記量子化器の入力に与えて充電させる、
ことを特徴とする付記4に記載の量子化器。
【0098】
(付記7)
前記第1貫通電流検出素子および前記第1フィードバック素子群は、トランジスタサイズを調整してカレントミラー比が制御され、
前記第2貫通電流検出素子および前記第2フィードバック素子群は、トランジスタサイズを調整してカレントミラー比が制御されている、
ことを特徴とする付記6に記載の量子化器。
【0099】
(付記8)
前記量子化器は、さらに、
前記第1インバータの出力を受け取り、pチャネル型MOSトランジスタおよびnチャネル型MOSトランジスタを有する第2インバータを含み、
前記第2インバータは、前記第1インバータの出力を反転して前記二値化した信号を出力する、
ことを特徴とする付記2乃至付記7のいずれか1項に記載の量子化器。
【0100】
(付記9)
前記量子化器は、さらに、
前記第1貫通電流検出素子と並列に設けられ、前記二値化した信号により制御される第1スイッチ素子と、
前記第2貫通電流検出素子と並列に設けられ、前記二値化した信号により制御される第2スイッチ素子と、
を含む、ことを特徴とする付記8に記載の量子化器。
【0101】
(付記10)
前記第1フィードバック素子群は、前記第1スイッチ素子がオフして前記第2スイッチ素子がオンし、前記第1貫通電流検出素子が前記第1貫通電流を検出したとき、前記第1インバータの入力における電荷を放電し、
前記第2フィードバック素子群は、前記第1スイッチ素子がオンして前記第2スイッチ素子がオフし、前記第2貫通電流検出素子が前記第2貫通電流を検出したとき、前記第1インバータの入力における電荷を充電する、
ことを特徴とする付記9に記載の量子化器。
【0102】
(付記11)
入力信号と基準信号のレベルを比較増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力アナログ信号を入力して二値化した信号を出力する量子化器と、
前記量子化器を流れる貫通電流を検出する貫通電流検出部と、
前記貫通電流検出部からの信号をフィードバックして、前記量子化器の入力の電荷を制御するフィードバック部と、を有する、
ことを特徴とする比較回路。
【0103】
(付記12)
前記量子化器は、付記2乃至付記10のいずれか1項に記載の量子化器である、
ことを特徴とする比較回路。
【0104】
(付記13)
さらに、
前記二値化した信号に従って、前記入力信号と前記基準信号のレベルの差を広げるように、前記入力信号および前記基準信号の少なくとも一方のレベルを制御するヒステリシス生成部、を有する、
ことを特徴とする付記11または付記12に記載の比較回路。
【0105】
(付記14)
付記11乃至付記13のいずれか1項に記載の比較回路を含み、
前記比較回路は、前記入力信号のレベルが前記基準信号のレベルよりも高いときに前記二値化した信号を出力する、
ことを特徴とする半導体集積回路。
【0106】
(付記15)
前記入力信号は、微小電力の電源出力から生成され、
前記半導体集積回路は、前記入力信号の電位が前記基準信号の電位よりも高いときにパワーオンリセット信号である前記二値化した信号を出力する、パワーマネジメントICである、
ことを特徴とする付記14に記載の半導体集積回路。