特許第6071534号(P6071534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071534
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】安全計装システムおよびPST起動方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20170123BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G05B23/02 E
   F16K51/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-282324(P2012-282324)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-126975(P2014-126975A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 賢司
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−075302(JP,A)
【文献】 特表2004−533681(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0215488(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00−23/02
F16K 39/00−51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、
前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナと、
前記上位システムとを備え、
前記ポジショナは、
前記上位システムからの起動指令または前記ポジショナが設置された現場の入力装置からの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行するPST実行手段と、
前記緊急遮断弁のPSTが完了してからの経過時間を計測する計時手段と、
前記上位システムまたは前記入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を判断するPST起動禁止判断手段とを有し、
前記PST起動禁止判断手段は、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を許可し、前記PST実行手段に前記緊急遮断弁のPSTを実行させることを特徴とする安全計装システム。
【請求項2】
プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、
前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナと、
前記上位システムとを備え、
前記ポジショナは、
このポジショナが設置された現場の入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、PST起動の可否を前記上位システムへ問い合わせる照会手段と、
前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行手段と、
PST完了を前記上位システムに通知する通知手段とを有し、
前記上位システムは、
予め定められたPSTのスケジュールを記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶されているスケジュールに従ってPSTの起動指令を前記ポジショナに送信するPST起動指令手段と、
前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時手段と、
前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PSTの起動の可否を前記ポジショナに通知するPST起動禁止判断手段とを有し、
前記PST起動禁止判断手段は、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知することを特徴とする安全計装システム。
【請求項3】
プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、
前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナと、
前記上位システムとを備え、
前記ポジショナは、
このポジショナが設置された現場の入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、PST起動の可否を前記上位システムへ問い合わせる照会手段と、
前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行手段と、
PST完了を前記上位システムに通知する通知手段とを有し、
前記上位システムは、
予め定められたPSTのスケジュールを記憶する記憶手段と、
PSTの起動指令を前記ポジショナに送信するPST起動指令手段と、
前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時手段と、
前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を前記ポジショナに通知し、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、前回のPSTからの経過時間と前記PST最小周期とを比較して、PSTの起動を許可する場合に前記PST起動指令手段に対して前記ポジショナへのPST起動指令の送信を指示するPST起動禁止判断手段とを有し、
前記PST起動禁止判断手段は、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知し、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁の前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁に対応するポジショナへのPST起動指令の送信を前記PST起動指令手段に対して指示することを特徴とする安全計装システム。
【請求項4】
請求項3記載の安全計装システムにおいて、
前記上位システムの記憶手段に記憶されたスケジュールは、前記緊急遮断弁のPSTを定期的に起動させるものであり、
さらに、前記上位システムは、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、このPSTの起動が前記PST起動禁止判断手段によって禁止された場合に、前回のPSTの完了時点を起点とするように前記スケジュールを修正するスケジュール修正手段を有することを特徴とする安全計装システム。
【請求項5】
プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁のPSTの起動の可否を判断するPST起動方法であって、
前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナが、前記緊急遮断弁のPSTが完了してからの経過時間を計測する計時ステップと、
前記ポジショナが、前記緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムまたは前記ポジショナが設置された現場の入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を判断するPST起動禁止判断ステップと、
前記ポジショナが、前記PSTの起動が許可されたときに前記緊急遮断弁のPSTを実行するPST実行ステップとを含み、
前記PST起動禁止判断ステップは、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を許可するステップを含むことを特徴とするPST起動方法。
【請求項6】
プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁のPSTの起動の可否を判断するPST起動方法であって、
前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナが、このポジショナが設置された現場の入力装置から前記緊急遮断弁のPSTの起動指令を受けたときに、前記上位システムにPST起動の可否を問い合わせる照会ステップと、
前記ポジショナが、前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行ステップと、
前記ポジショナが、PST完了を前記上位システムに通知する通知ステップと、
前記上位システムが、予め定められたPSTのスケジュールに従ってPSTの起動指令を前記ポジショナに送信するPST起動指令ステップと、
前記上位システムが、前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時ステップと、
前記上位システムが、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PSTの起動の可否を前記ポジショナに通知するPST起動禁止判断ステップとを含み、
前記PST起動禁止判断ステップは、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知するステップを含むことを特徴とするPST起動方法。
【請求項7】
プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁のPSTの起動の可否を判断するPST起動方法であって、
前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナが、このポジショナが設置された現場の入力装置から前記緊急遮断弁のPSTの起動指令を受けたときに、前記上位システムにPST起動の可否を問い合わせる照会ステップと、
前記ポジショナが、前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行ステップと、
前記ポジショナが、PST完了を前記上位システムに通知する通知ステップと、
前記上位システムが、前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時ステップと、
前記上位システムが、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を前記ポジショナに通知し、予め定められたPSTのスケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、前回のPSTからの経過時間と前記PST最小周期とを比較して、PSTの起動を許可する場合に前記ポジショナにPSTの起動指令を送信するPST起動禁止判断ステップとを含み、
前記PST起動禁止判断ステップは、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知し、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁の前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁に対応するポジショナにPSTの起動指令を送信するステップを含むことを特徴とするPST起動方法。
【請求項8】
請求項7記載のPST起動方法において、
前記スケジュールは、前記緊急遮断弁のPSTを定期的に起動させるものであり、
さらに、前記上位システムが、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、このPSTの起動が前記PST起動禁止判断ステップで禁止された場合に、前回のPSTの完了時点を起点とするように前記スケジュールを修正するスケジュール修正ステップを含むことを特徴とするPST起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの安全を守る安全計装システムおよびPST起動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントの安全を守る安全計装システム(Safety Instrument System、以下SIS)への要求が高まっている。SISは、緊急遮断弁を設け、プラントに異常が生じたときに緊急遮断弁を遮断して安全を確保するようになっている。通常時、緊急遮断弁は全開状態で保持されており、仮に緊急遮断弁が固着して、緊急時に動作しない状態にあったとしても、緊急遮断弁の固着を検知することは難しい。
【0003】
このような故障を検知するために、オフラインでの緊急遮断弁の全閉テストが定期的に実施される。全閉テストは、プラントを停止した定期点検時に実施しなければならず、高コストである。パーシャルストロークテスト(Partial Stroke Test、以下PST)は、緊急遮断弁を全閉する代わりに、プラントの稼働中に少しだけ作動させ、その初動動作を確認するテストである。PSTにより全閉テストの間隔を伸ばし、保守メンテナンス費用の削減が可能となる(非特許文献1参照)。
【0004】
安全計装は、PFD(Probability of Failure on Demand;故障率)によって管理される。PSTの効果は、緊急遮断弁の全閉テスト間のPFD平均値を変えずに、全閉テストの間隔を伸ばすことができることである。PFDの平均値を計画値に抑えるためには、PSTを事前にスケジュールされた計画にしたがって実施することが必要となる。その一方で、現場で緊急遮断弁の動作を目視確認しながらPSTを起動したいという要求もある。特許文献1に開示された技術では、スイッチなどにより現場からPSTを起動する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4121378号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】西田純,“安全計装システムの最新動向〜PSTソリューションと統合ソリューション”,計装2006,vol.49,No.11,工業技術社,2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された従来技術では、現実的には不必要と思われるPSTも現場操作によって起動できてしまう。PSTの起動回数が過度に増えれば、プラントが生産する製品の生産状態への悪影響も無視できなくなることが起こり得る。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、不必要なPST起動によるプラントへの悪影響を抑えることができる安全計装システムおよびPST起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナと、前記上位システムとを備え、前記ポジショナは、前記上位システムからの起動指令または前記ポジショナが設置された現場の入力装置からの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行するPST実行手段と、前記緊急遮断弁のPSTが完了してからの経過時間を計測する計時手段と、前記上位システムまたは前記入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を判断するPST起動禁止判断手段とを有し、前記PST起動禁止判断手段は、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を許可し、前記PST実行手段に前記緊急遮断弁のPSTを実行させることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナと、前記上位システムとを備え、前記ポジショナは、このポジショナが設置された現場の入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、PST起動の可否を前記上位システムへ問い合わせる照会手段と、前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行手段と、PST完了を前記上位システムに通知する通知手段とを有し、前記上位システムは、予め定められたPSTのスケジュールを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されているスケジュールに従ってPSTの起動指令を前記ポジショナに送信するPST起動指令手段と、前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時手段と、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PSTの起動の可否を前記ポジショナに通知するPST起動禁止判断手段とを有し、前記PST起動禁止判断手段は、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナと、前記上位システムとを備え、前記ポジショナは、このポジショナが設置された現場の入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、PST起動の可否を前記上位システムへ問い合わせる照会手段と、前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行手段と、PST完了を前記上位システムに通知する通知手段とを有し、前記上位システムは、予め定められたPSTのスケジュールを記憶する記憶手段と、PSTの起動指令を前記ポジショナに送信するPST起動指令手段と、前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時手段と、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を前記ポジショナに通知し、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、前回のPSTからの経過時間と前記PST最小周期とを比較して、PSTの起動を許可する場合に前記PST起動指令手段に対して前記ポジショナへのPST起動指令の送信を指示するPST起動禁止判断手段とを有し、前記PST起動禁止判断手段は、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知し、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁の前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁に対応するポジショナへのPST起動指令の送信を前記PST起動指令手段に対して指示することを特徴とするものである。
また、本発明の安全計装システムの1構成例において、前記上位システムの記憶手段に記憶されたスケジュールは、前記緊急遮断弁のPSTを定期的に起動させるものであり、さらに、前記上位システムは、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、このPSTの起動が前記PST起動禁止判断手段によって禁止された場合に、前回のPSTの完了時点を起点とするように前記スケジュールを修正するスケジュール修正手段を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁のPSTの起動の可否を判断するPST起動方法であって、前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナが、前記緊急遮断弁のPSTが完了してからの経過時間を計測する計時ステップと、前記ポジショナが、前記緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムまたは前記ポジショナが設置された現場の入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を判断するPST起動禁止判断ステップと、前記ポジショナが、前記PSTの起動が許可されたときに前記緊急遮断弁のPSTを実行するPST実行ステップとを含み、前記PST起動禁止判断ステップは、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を許可するステップを含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁のPSTの起動の可否を判断するPST起動方法であって、前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナが、このポジショナが設置された現場の入力装置から前記緊急遮断弁のPSTの起動指令を受けたときに、前記上位システムにPST起動の可否を問い合わせる照会ステップと、前記ポジショナが、前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行ステップと、前記ポジショナが、PST完了を前記上位システムに通知する通知ステップと、前記上位システムが、予め定められたPSTのスケジュールに従ってPSTの起動指令を前記ポジショナに送信するPST起動指令ステップと、前記上位システムが、前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時ステップと、前記上位システムが、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PSTの起動の可否を前記ポジショナに通知するPST起動禁止判断ステップとを含み、前記PST起動禁止判断ステップは、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知するステップを含むことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、プラントの配管に設けられた緊急遮断弁のPSTを、この緊急遮断弁のPSTを管理する上位システムからの起動指令と現場の入力装置からの起動指令とを受けて実行する安全計装システムにおいて、前記緊急遮断弁のPSTの起動の可否を判断するPST起動方法であって、前記緊急遮断弁の開度を制御するポジショナが、このポジショナが設置された現場の入力装置から前記緊急遮断弁のPSTの起動指令を受けたときに、前記上位システムにPST起動の可否を問い合わせる照会ステップと、前記ポジショナが、前記上位システムからの起動指令に応じて前記緊急遮断弁のPSTを実行すると共に、前記入力装置からの起動指令による前記緊急遮断弁のPSTを、前記上位システムからのPST起動可否通知に応じて実行するPST実行ステップと、前記ポジショナが、PST完了を前記上位システムに通知する通知ステップと、前記上位システムが、前記ポジショナからのPST完了通知に応じてPSTが完了してからの経過時間を計測する計時ステップと、前記上位システムが、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を前記ポジショナに通知し、予め定められたPSTのスケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、前回のPSTからの経過時間と前記PST最小周期とを比較して、PSTの起動を許可する場合に前記ポジショナにPSTの起動指令を送信するPST起動禁止判断ステップとを含み、前記PST起動禁止判断ステップは、前記ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、問い合わせのあったポジショナによる前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動禁止を通知し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、問い合わせのあったポジショナにPSTの起動許可を通知し、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁の前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期よりも小さい場合は、前記緊急遮断弁のPSTの起動を禁止し、前回のPSTからの経過時間が前記PST最小周期以上の場合は、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁に対応するポジショナにPSTの起動指令を送信するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明のPST起動方法の1構成例において、前記スケジュールは、前記緊急遮断弁のPSTを定期的に起動させるものであり、さらに、前記上位システムが、前記スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、このPSTの起動が前記PST起動禁止判断ステップで禁止された場合に、前回のPSTの完了時点を起点とするように前記スケジュールを修正するスケジュール修正ステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポジショナが、上位システムまたは入力装置からPSTの起動指令を受けたときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否を判断するようにしたので、不必要なPSTの起動を禁止することができ、不必要なPSTの起動によるプラントへの悪影響を抑えることができる。
【0016】
また、本発明では、上位システムが、ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PSTの起動の可否をポジショナに通知するようにしたので、不必要なPSTの起動を禁止することができ、不必要なPSTの起動によるプラントへの悪影響を抑えることができる。
【0017】
また、本発明では、上位システムが、ポジショナからPST起動の可否の問い合わせがあったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PST起動の可否をポジショナに通知し、スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、前回のPSTからの経過時間と予め規定されたPST最小周期とを比較して、PSTの起動を許可する場合にPST起動指令手段に対してポジショナへのPST起動指令の送信を指示するようにしたので、上位システムからの起動指令によるPSTと現場の入力装置からの起動指令によるPSTとを区別することなく不必要なPSTの起動を禁止することができ、不必要なPSTの起動によるプラントへの悪影響を抑えることができる。
【0018】
また、本発明では、上位システムが、スケジュールに基づくPSTの起動タイミングになったときに、このPSTの起動が禁止された場合に、前回のPSTの完了時点を起点とするようにスケジュールを修正するようにしたので、PSTの実行状況に応じてPSTのスケジュールを修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る安全計装システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る安全計装システムのポジショナと上位システムの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る安全計装システムの動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る安全計装システムのポジショナと上位システムの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る安全計装システムの動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る安全計装システムのポジショナと上位システムの構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係る安全計装システムの動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施の形態に係る安全計装システムによるPST実行の様子を示す図である。
図9】本発明の第4の実施の形態に係る安全計装システムのポジショナと上位システムの構成を示すブロック図である。
図10】本発明の第4の実施の形態に係る安全計装システムの動作を示すフローチャートである。
図11】本発明の第4の実施の形態に係る安全計装システムによるスケジュール修正の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理]
目安になるPSTの周期は、例えば安全認証に基づいて予め設定できる。したがって、PST起動後に特定の起動禁止期間を設けることで、現場事情でのPST起動の自由度を確保しつつ、現場での無制約なPST起動による不具合も低減できる。現場判断を軽視したトップダウン的なPST起動に偏らないことと、逆に生産状態へ悪影響が出てしまうような無秩序なPST起動に偏らないことを、両立させることができる。
【0021】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る安全計装システムの構成を示すブロック図である。
プラントの事故を未然に防ぐために設置された緊急遮断弁1は、プラントの配管に設けられ、空気圧によって駆動されるようになっている。緊急遮断弁1の開度を制御するポジショナ2は、プラントの各フィールド機器のメンテナンスを管理する上位システム3からポジショナ制御信号を受信し、このポジショナ制御信号が示す開度指示値に応じて、空気供給配管4からの空気を使用して、必要な操作器空気圧を緊急遮断弁1に送るようにする。ポジショナ2からの操作器空気圧は、空気配管5を介して緊急遮断弁1に供給される。また、ポジショナ2は、開度フィードバック機構によって緊急遮断弁1の開度を計測することができる。
【0022】
プラントに異常が生じた緊急遮断時には、ポジショナ2と緊急遮断弁1との間の空気配管5に設置された電磁弁6に上位システム3から緊急遮断信号が送られる。この緊急遮断信号に応じて電磁弁6は、空気配管5の経路を排気管7の方向へ開き、操作器空気圧を開放する。これにより、緊急遮断弁1が閉じる。
【0023】
PSTの実行時には、ポジショナ2によって緊急遮断弁1の開度を例えば100%→90%→100%と変化させ、緊急遮断弁1の初動動作を確認することができる。PSTは、上位システム3からのポジショナ制御信号によって起動することができ、ポジショナ2に備えつけられた入力装置である操作パネルなどからも起動することができる。このような緊急遮断弁1はプラントに1台もしくは複数台設置される。
【0024】
図2は本実施の形態におけるポジショナ2と上位システム3の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、ポジショナ2の内部にPSTの起動の可否を判断する機能を設けるものである。
ポジショナ2は、緊急遮断弁毎に設けられる。各ポジショナ2は、対応する緊急遮断弁1のPSTが完了してからの経過時間を計測する計時手段であるタイマー20と、タイマー20が計測している経過時間に基づいて、対応する緊急遮断弁1のPSTの起動の禁止/許可を判断するPST起動禁止判断部21と、対応する緊急遮断弁1のPSTを実行し、PSTの完了判定、緊急遮断弁1の異常判定などを行うPST実行部22とを備えている。ポジショナ2は、図示しない入力装置である操作パネルから入力されるPST起動指令信号と上位システム3から送信されるPST起動指令信号の2つを受けることができる。
【0025】
上位システム3は、予め定められたPSTのスケジュールを緊急遮断弁毎に記憶する記憶部30と、スケジュールに従ってPSTを起動させるPST起動指令部31とを備えている。
【0026】
以下、図3を参照して本実施の形態の安全計装システムの動作を説明する。各ポジショナ2のPST起動禁止判断部21は、ポジショナ2の操作パネルまたは上位システム3からPST起動指令信号を受けたとき(図3ステップS100においてYES)、タイマー20によって計測されている、前回のPSTからの経過時間と予め設定されたPST最小周期とを比較して、対応する緊急遮断弁1のPSTの起動を禁止するか否かを判断する(図3ステップS101)。なお、PST最小周期は、上位システム3の記憶部30に記憶されているスケジュールで定められているPST周期以下の値に設定される。
【0027】
PST起動禁止判断部21は、前回のPSTからの経過時間がPST最小周期よりも小さい場合、対応する緊急遮断弁1のPSTの起動を禁止する(図3ステップS102においてYES)。そして、PST起動禁止判断部21は、PSTの起動が禁止されている旨のメッセージをポジショナ2の操作パネルなどの出力装置に表示させる(図3ステップS103)。あるいは、PST起動禁止判断部21は、PSTの起動が禁止されている旨のメッセージを上位システム3に送るようにしてもよい。この場合、上位システム3の表示画面にメッセージが表示されることになる。
【0028】
PST起動禁止判断部21は、前回のPSTからの経過時間がPST最小周期以上の場合、対応する緊急遮断弁1のPSTの起動を許可し(図3ステップS102においてNO)、PST実行部22にPSTを実行させる(図3ステップS104)。上記のとおり、PST実行部22は、緊急遮断弁1の開度を例えば100%→90%→100%と変化させて、緊急遮断弁1の動作を確認する。
【0029】
タイマー20は、PSTが完了した場合(図3ステップS105においてYES)、PSTの結果(緊急遮断弁1が正常であるか異常であるか)には依らずに経過時間を0にリセットする(図3ステップS106)。タイマー20は、PSTのキャンセルなど、なんらかの原因でPSTが完了しなかった場合には(図3ステップS105においてNO)、経過時間をリセットせずに、経過時間の計測を継続する。
【0030】
以上のように、本実施の形態では、PSTの起動の周期が予め設定されたPST最小周期よりも短い場合、PSTの起動を許可しないようにしたので、不必要なPSTの起動によるプラントへの悪影響を抑えることができる。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図4は本実施の形態におけるポジショナ2と上位システム3の構成を示すブロック図である。本実施の形態においても、安全計装システム全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。第1の実施の形態では、ポジショナ2がPSTの起動周期を管理し、個別にPSTの起動の可否を判断するようにしていた。一方、本実施の形態は、上位システム3が複数の緊急遮断弁1のPSTの起動周期を管理し、PSTの起動の可否を判断するものである。
【0032】
上位システム3は、記憶部30と、PST起動指令部31と、各緊急遮断弁1のPSTの起動の禁止/許可を判断するPST起動禁止判断部32と、ポジショナ2の操作パネルからのPST起動指令信号によるPSTが完了してからの経過時間を計測するタイマー33とを備えている。タイマー33は、ポジショナ毎に設けられている。上位システム3から各ポジショナ2へは、PST起動指令信号に加え、PST起動の可否を通知する信号(PST起動許可/禁止メッセージ)が送信される。
【0033】
各ポジショナ2は、上位システム3から送信されるPST起動許可/禁止メッセージに応じて、対応する緊急遮断弁1のPSTを実行するPST実行部22aと、操作パネルからPST起動指令信号を受けたときに、PST起動の可否を上位システム3へ問い合わせる照会部23と、PST完了を上位システム3に通知する通知部24とを備えている。ポジショナ2から上位システム3へは、実行されたPSTの結果情報、つまり、PSTの完了時刻の情報と、PSTの完了/未了を示す情報とが送信される。
【0034】
以下、図5を参照して本実施の形態の安全計装システムの動作を説明する。上位システム3のPST起動指令部31は、記憶部30に記憶されているスケジュールに従って定期的に各緊急遮断弁1のPST起動指令信号を対応するポジショナ2に送信する。各ポジショナ2のPST実行部22aは、上位システム3からPST起動指令信号を受信した場合、対応する緊急遮断弁1のPSTを実行する。
【0035】
また、各ポジショナ2の照会部23は、ポジショナ2の操作パネルからPST起動指令信号を受けたとき(図5ステップS200においてYES)、PSTの起動の可否を上位システム3へ問い合わせる(図5ステップS201)。
【0036】
上位システム3のPST起動禁止判断部32は、問い合わせのあったポジショナ2が操作パネルからのPST起動指令信号に応じて前回PSTを実行したときからの経過時間の値を、このポジショナ2に対応するタイマー33から取得し、この経過時間と予め設定されたPST最小周期とを比較して、問い合わせのあったポジショナ2のPSTの起動の可否を判断し、判断結果を問い合わせのあったポジショナ2へ送信する(図5ステップS202)。PST起動禁止判断部32は、前回のPSTからの経過時間がPST最小周期よりも小さい場合、PST起動禁止メッセージを送信し、前回のPSTからの経過時間がPST最小周期以上の場合、PST起動許可メッセージを送信する。
【0037】
上位システム3に問い合わせを行ったポジショナ2のPST実行部22aは、上位システム3からPST起動禁止メッセージを受信した場合(図5ステップS203においてYES)、PSTの起動が禁止されている旨のメッセージをポジショナ2の操作パネルなどの出力装置に表示させる(図5ステップS204)。PST実行部22aは、上位システム3からPST起動許可メッセージを受信した場合(図5ステップS203においてNO)、対応する緊急遮断弁1のPSTを実行する(図5ステップS205)。そして、通知部24は、PSTの結果情報を上位システム3へ送信する(図5ステップS206)。
【0038】
上位システム3のPST起動禁止判断部32は、ポジショナ2からPST結果情報を受信し、この情報が操作パネルからのPST起動指令信号に応じて実行されたPSTの結果情報である場合、このPST結果情報に基づいて、このポジショナ2に対応するタイマー33をリセットするか否かを決定する(図5ステップS207)。具体的には、PST起動禁止判断部32は、PSTが完了したことを示すPST結果情報を受信した場合、タイマー33が計測している経過時間を0にリセットし、PSTが完了しなかったことを示すPST結果情報を受信した場合、経過時間の計測を継続させる。
【0039】
以上のように、本実施の形態では、現場事情による自由度のあるPSTの起動と、安全計装で予定されている周期でのPSTの起動(トップダウンによるPSTの管理)とを両立させる仕組みを提供することができる。例えば、次回予定されているPSTの時期のプラントの運転条件(原料の質など)が悪く、その期間でのPSTの実施を避けたいと現場の担当者が判断した場合、PSTを前倒しで実施する方針が考えられる。このような現場判断であっても、PSTの前回からの経過時間が短いと、PFDの平均値の維持に効果のない余計なPSTになる場合がある。本実施の形態では、現場で操作パネルを操作してPSTを起動しようとするときに、現場操作による前回のPST起動からの経過時間がPST最小周期よりも短い場合、PSTの起動を許可しないようにしたので、現場の担当者はPSTの起動時期を再考することができる。
【0040】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図6は本実施の形態におけるポジショナ2と上位システム3の構成を示すブロック図である。本実施の形態においても、安全計装システム全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。第2の実施の形態では、上位システム3からの指令によるPSTが、現場の操作パネルからの指令によるPSTとは無関係に定期的に実行されていた。これに対し、本実施の形態は、上位システム3からの指令によるPSTと現場の操作パネルからの指令によるPSTとを連携させるものである。
【0041】
現場操作によるPSTが完了した後、十分な時間をおかずに、もともと予定されていたPSTが上位システム3のPST起動指令信号によって起動される場合、このPSTは起動しなくてもよい不要なPSTとなる。したがって、現場操作によるPSTがあった場合には、上位システム3からのPST起動指令信号によるPSTを省くことで、不要なPSTの起動を回避することができる。
【0042】
上位システム3は、記憶部30と、PST起動指令部31aと、PST起動禁止判断部32aと、タイマー33aとを備えている。第2の実施の形態のタイマー33は、現場の操作パネルからの指令によるPSTが完了してからの経過時間を計測していたが、本実施の形態のタイマー33aは、現場の操作パネルからの指令によるPSTと上位システム3からの指令によるPSTとを区別することなく、PSTが完了してからの経過時間を計測する。タイマー33aは、ポジショナ毎に設けられている。各ポジショナ2は、PST実行部22aと、照会部23と、通知部24とを備えている。
【0043】
以下、図7を参照して本実施の形態の安全計装システムの動作を説明する。図7のステップS300,S301,S303〜S306の処理は、それぞれ図5のステップS200,S201,S203〜S206と同じである。
【0044】
上位システム3のPST起動禁止判断部32aは、ポジショナ2から問い合わせがあった場合、このポジショナ2が前回PSTを実行したときからの経過時間の値を、このポジショナ2に対応するタイマー33aから取得し、この経過時間とPST最小周期とを比較して、問い合わせのあったポジショナ2のPSTの起動の可否を判断し、判断結果を問い合わせのあったポジショナ2へ送信する(図7ステップS302)。この処理は、図5のステップS202と同様であるが、上記のとおり、タイマー33aが、現場の操作パネルからのPST起動指令信号によるPSTと上位システム3からのPST起動指令信号によるPSTとを区別することなく経過時間を計測する点が異なる。
【0045】
また、PST起動禁止判断部32aは、記憶部30に記憶されているスケジュールを参照し、ある緊急遮断弁1についてPSTの起動タイミングになったと判断した場合(図7ステップS308においてYES)、この緊急遮断弁1に対応するポジショナ2が前回PSTを実行したときからの経過時間の値を、このポジショナ2に対応するタイマー33aから取得し、この経過時間とPST最小周期とを比較して、PSTの起動の可否を判断する(図7ステップS309)。PST起動禁止判断部32aは、前回のPSTからの経過時間がPST最小周期よりも小さい場合、PSTの起動を禁止する。また、PST起動禁止判断部32aは、前回のPSTからの経過時間がPST最小周期以上の場合、PSTの起動を許可し、PST起動指令部31aに対してPST起動指令信号の送信を指示する。この指示に応じて、PST起動指令部31aは、PSTの起動タイミングになった緊急遮断弁1に対応するポジショナ2にPST起動指令信号を送信する。
ポジショナ2のPST実行部22aは、上位システム3からPST起動指令信号を受信した場合、対応する緊急遮断弁1のPSTを実行する。
【0046】
また、PST起動禁止判断部32aは、ポジショナ2からPST結果情報を受信した場合、PST結果情報に基づいて、このポジショナ2に対応するタイマー33aをリセットするか否かを決定する(図7ステップS307)。この処理は、図5のステップS207と同様であるが、ポジショナ2の操作パネルからのPST起動指令信号によるPSTの結果情報であるか、上位システム3からのPST起動指令信号によるPSTの結果情報であるかを区別することなく行う点が異なる。
【0047】
図8は本実施の形態によるPST実行の様子を示す図である。図8の例では、上位システム3のスケジュールによってPST100−1,100−2,100−3・・・・が定期的に実行されることになっている。この上位システム3のスケジュールによるPSTの周期はT1である。時刻t1において上位システム3のスケジュールによってPST100−1が実行され、このPSTが完了したときに、対応するタイマー33aがリセットされ、経過時間の計測が開始される。
【0048】
次に、現場の担当者が時刻t2において現場の操作パネルを操作してPST101−1を実行しようとしたが、前回のPST100−1からの経過時間がPST最小周期T0よりも小さいため、上位システム3のPST起動禁止判断部32aは、このPST101−1の起動を禁止する。上記のとおり、PST最小周期T0は、上位システム3のスケジュールで定められているPSTの周期T1以下の値に設定されている。時刻t3においてはタイマー33aによって計測されている経過時間がPST最小周期T0以上になったため、PST起動禁止判断部32aは、現場の操作パネルからの指令によるPST101−2の実行を許可する。このPSTが完了したときに、対応するタイマー33aがリセットされ、経過時間の計測が開始される。
【0049】
次に、上位システム3のスケジュールによってPST100−2を実行しようとするが、前回のPST101−2からの経過時間がPST最小周期T0よりも小さいため、PST起動禁止判断部32aは、このPST100−2の起動を禁止する。第2の実施の形態では、上位システム3からの指令によるPSTが、現場の操作パネルからの指令によるPSTとは無関係に定期的に実行されていた。これに対して、本実施の形態では、上位システム3からの指令によるPSTと現場の操作パネルからの指令によるPSTとを区別することなくPSTの起動の可否を判断するようにしたので、PST100−2を省くことができ、不要なPSTの起動を回避することができる。
【0050】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図9は本実施の形態におけるポジショナ2と上位システム3の構成を示すブロック図である。本実施の形態においても、安全計装システム全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。第3の実施の形態では、上位システム3からの指令によるPSTを不要と判断したときには、このPSTを省くことができるが、上位システム3のスケジュールについては修正することなく、予め設定されたスケジュールでPSTを定期的に実行していく。これに対し、本実施の形態は、PSTの実行状況に応じて上位システム3のスケジュールを修正するものである。
【0051】
上位システム3は、記憶部30と、PST起動指令部31aと、PST起動禁止判断部32aと、タイマー33aと、スケジュール修正部34とを備えている。各ポジショナ2は、PST実行部22aと、照会部23と、通知部24とを備えている。
【0052】
以下、図10を参照して本実施の形態の安全計装システムの動作を説明する。図10のステップS400〜S409の処理は、それぞれ図7のステップS300〜S309と同じである。
上位システム3のスケジュール修正部34は、スケジュールの修正が必要かどうかを判断する(図10ステップS410)。スケジュール修正部34は、ステップS409において上位システム3のスケジュールによるPSTの起動が禁止された場合、スケジュールの修正が必要と判断する。
【0053】
スケジュール修正部34は、スケジュールの修正が必要と判断した場合(図10ステップS410においてYES)、記憶部30に記憶されている各緊急遮断弁1のPSTのスケジュールのうち、PSTの起動が禁止された緊急遮断弁1のスケジュールを、当該緊急遮断弁1の前回のPSTの完了時点を起点とするように修正する(図10ステップS411)。
【0054】
図11は本実施の形態によるスケジュール修正の様子を示す図である。図8で説明したとおり、第2の実施の形態では、PST100−2の起動が禁止された場合でも上位システム3のスケジュールが修正されることはない。これに対して、本実施の形態のスケジュール修正部34は、PST100−2の起動が禁止された場合、このPST100−2の起動が禁止された緊急遮断弁1のスケジュールを、前回のPST101−2の完了時点を起点とするように修正する。すなわち、PST101−2の完了時点t3から周期T1だけ経過した後に次のPST100’−3が実行されるようにスケジュールをずらして修正する。こうして、本実施の形態では、PSTの実行状況に応じてPSTのスケジュールを修正することができる。
【0055】
第1〜第4の実施の形態で説明したポジショナ2と上位システム3の各々は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。各々の装置のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、プラントの事故を未然に防ぐために設置された緊急遮断弁のパーシャルストロークテストに適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…緊急遮断弁、2…ポジショナ、3…上位システム、4…空気供給配管、5…空気配管、6…電磁弁、7…排気管、20,33,33a…タイマー、21,32,32a…PST起動禁止判断部、22,22a…PST実行部、23…照会部、24…通知部、30…記憶部、31,31a…PST起動指令部、34…スケジュール修正部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11