特許第6071580号(P6071580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000002
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000003
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000004
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000005
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000006
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000007
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000008
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000009
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000010
  • 特許6071580-微生物検出システム及び微生物検出方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071580
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】微生物検出システム及び微生物検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20170123BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C12M1/34 B
   C12Q1/04
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-9465(P2013-9465)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-140314(P2014-140314A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 信介
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−005381(JP,A)
【文献】 特開2004−305173(JP,A)
【文献】 特開2010−252747(JP,A)
【文献】 特開2012−127727(JP,A)
【文献】 特開2012−217382(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0315666(US,A1)
【文献】 特開2011−097861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/00
C12Q 1/00−3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液体中に取り込み、前記可溶性の粒子を前記液体中に溶かす取り込み装置と、
照射光を発する光源、
前記照射光の焦点に前記微生物を取り込んだ液体を通過させる配管、及び
前記光を照射された微生物が発する蛍光及び前記微生物で生じる散乱光の少なくとも一方を検出する検出器
を備える液中微生物検出装置(ただし、前記液体中において前記微生物を濃縮させる装置を除く)と、
を備える、微生物検出システム。
【請求項2】
前記液中微生物検出装置が前記微生物が発する蛍光及び前記微生物で生じる散乱光の両方を検出する、請求項1に記載の微生物検出システム。
【請求項3】
前記液中微生物検出装置が前記微生物が発する蛍光を検出し、前記蛍光の蛍光強度に基づき、前記微生物の種類を特定する、請求項1に記載の微生物検出システム。
【請求項4】
前記液中微生物検出装置が前記微生物が発する蛍光を検出し、前記蛍光のスペクトルに基づき、前記微生物の種類を特定する、請求項1に記載の微生物検出システム。
【請求項5】
前記微生物検出装置が前記微生物で生じる散乱光を検出し、前記散乱光に基づき、前記微生物の種類を特定する、請求項1に記載の微生物検出システム。
【請求項6】
前記取り込み装置が、前記気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を前記液体中に取り込むインピンジャーを備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微生物検出システム。
【請求項7】
前記取り込み装置が、前記気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液滴又は液膜中に捕集し、前記液滴又は液膜を前記液体中に取り込むスクラバーを備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微生物検出システム。
【請求項8】
前記取り込み装置が、前記気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を分離する粉体分離器と、前記分離された微生物及び可溶性の粒子が落下する場所に配置された前記液体の容器と、を備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微生物検出システム。
【請求項9】
前記取り込み装置が、前記気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を前記液体中に捕集するインパクタを備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微生物検出システム。
【請求項10】
前記取り込み装置が、フィルターで捕集された前記微生物及び可溶性の粒子を前記液体中に取り込む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微生物検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境評価技術に関し、特に微生物検出システム及び微生物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオクリーンルーム等のクリーンルームにおいては、微生物検出装置を用いて、飛散している微生物が検出され、記録される(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。微生物の検出結果から、クリーンルームの空調機器の劣化具合を把握可能である。また、クリーンルームで製造された製品に、参考資料として、クリーンルーム内の微生物の検出記録が添付されることもある。光学式の微生物検出装置は、例えば、クリーンルーム中の気体を吸引し、吸引した気体に光を照射する。気体に微生物が含まれていると、光を照射された微生物が蛍光を発するため、気体に含まれる微生物の数や大きさ等を検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−83214号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】長谷川倫男他,「気中微生物リアルタイム検出技術とその応用」,株式会社山武,azbil Technical Review 2009年12月号,p.2-7,2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、気体に蛍光を発する非微生物粒子が含まれていると、微生物検出装置が、非微生物粒子を誤って微生物として検出する場合があることを、本発明者は見出した。そこで、本発明は、誤検出の少ない微生物検出システム及び微生物検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、(a)気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液体中に取り込み、可溶性の粒子を液体中に溶かす取り込み装置と、(b)液体中に取り込まれた微生物に光を照射して微生物が発する蛍光及び微生物で生じる散乱光の少なくとも一方を検出する液中微生物検出装置と、を備える、微生物検出システムが提供される。
【0007】
また、本発明の態様によれば、(a)気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液体中に取り込み、可溶性の粒子を液体中に溶かすことと、(b)液体中に取り込まれた微生物に光を照射して微生物が発する蛍光及び微生物で生じる散乱光の少なくとも一方を検出することと、を含む、微生物検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誤検出の少ない微生物検出システム及び微生物検出方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る微生物検出システムが配置されるクリーンルームの模式図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るインピンジャーの模式図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る微生物の種類毎の蛍光強度を示すグラフである。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る液体中の微生物の粒径と、蛍光強度と、の関係を模式的に示すグラフである。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るスクラバーの模式図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る粉体分離器の模式図である。
図7】本発明の第4の実施の形態に係るインパクタの模式図である。
図8】本発明の第5の実施の形態に係る取り込み装置の模式図である。
図9】本発明の第5の実施の形態に係るフィルターの模式図である。
図10】本発明の第5の実施の形態に係る取り込み装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る微生物検出システムは、図1に示すように、気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液体中に取り込み、可溶性の粒子を液体中に溶かす取り込み装置50と、液体中に取り込まれた微生物に光を照射して微生物が発する蛍光及び微生物で生じる散乱光の少なくとも一方を検出する液中微生物検出装置1と、を備える。取り込み装置50及び液中微生物検出装置1は、例えば、クリーンルーム70内に配置されている。クリーンルーム70には、ダクト71、並びにHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)及びULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)等の超高性能エアフィルタを有する噴き出し口72を介して、清浄な空気等の気体が送り込まれる。
【0012】
クリーンルーム70内には、生産ライン81、82が配置されている。生産ライン81、82は、例えば精密機器、電子部品、又は半導体装置の生産ラインである。あるいは生産ライン81、82は、食品、飲料、又は医薬品の生産ラインである。例えば、生産ライン81、82において、輸液が点滴や注射器に充填される。あるいは、生産ライン81、82において、経口剤や漢方薬が製造される。またあるいは、生産ライン81、82において、栄養ドリンクやビールが容器に充填される。
【0013】
生産ライン81、82は、通常、微生物及び非微生物粒子等をクリーンルーム70内の気体に飛散させないよう管理されている。しかし、生産ライン81、82は、何らかの事情で、クリーンルーム70内の気体に飛散する微生物及び非微生物粒子の発生源になる。また、生産ライン81、82以外の要因で、クリーンルーム70内の気体に微生物及び非微生物粒子が飛散することもある。
【0014】
クリーンルーム70内の気体に飛散しうる微生物の例としては細菌が含まれる。細菌の例としては、グラム陰性菌、グラム陽性菌、及びカビ胞子を含む真菌が挙げられる。グラム陰性菌の例としては、大腸菌が挙げられる。グラム陽性菌の例としては、表皮ブドウ球菌、枯草菌芽胞、マイクロコッカス、及びコリネバクテリウムが挙げられる。カビ胞子を含む真菌の例としては、アスペルギルスが挙げられる。ただし、クリーンルーム70内の気体に飛散しうる微生物はこれらに限定されない。また、クリーンルーム70内の気体に飛散しうる非微生物粒子の例としては、化学物質、薬品及び食品の飛沫、ごみ、ちり、並びに埃等のダスト等が挙げられる。
【0015】
ここで、微生物は、光を照射されると、微生物に含まれるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、及びリボフラビン等が、蛍光を発する。従来、気体中の微生物を検出する装置は、光を照射されて蛍光を発する気体中の粒子を、微生物とみなしている。しかし、非微生物粒子であっても、例えばクリーニングしたガウンから飛散した蛍光粒子、並びに生産ライン81、82から飛散したビタミンを含む輸液、経口剤、漢方薬、栄養ドリンク、及びビールの飛沫や結晶粒子は、光を照射されると蛍光を発する場合がある。そのため、従来の気体中の微生物を検出する装置は、気体中を飛散する、蛍光を発する非微生物粒子を、微生物と誤って検出する場合がある。
【0016】
これに対し、第1の実施の形態に係る取り込み装置50は、例えば、気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液体中に取り込む図2に示すインピンジャー51を備える。インピンジャー51は、液体516を含む容器511と、クリーンルーム70内の気体を吸引し液体516中に散気するための吸引パイプ512と、を備える。気体が液体516中に散気された場合、気体に含まれる微生物517は、不溶性であるため、液体516中に溶けない。しかし、気体に含まれる可溶性の蛍光粒子は、液体516中に溶ける。液体516の体積は、気体に含まれる可溶性の蛍光粒子の体積より充分大きいため、液体516に溶けた蛍光粒子は希釈され、検出可能な程度に蛍光を発しなくなる。
【0017】
液体516は、純水又は溶液である。容器511には、容器511内に液体516を供給するための供給パイプ514が設けられている。また、容器511には、図1に示す液中微生物検出装置1に図2に示す容器511内の液体516を通すための連結パイプ515が設けられている。ただし、容器511内の液体516を液中微生物検出装置1に供給する機構はこれに限定されない。容器511内の余計な気体は、排気パイプ513を介して排出される。
【0018】
図1に示す液中微生物検出装置1としては、米国特許第7430046号公報あるいは米国特許第8218144号公報に開示された装置が使用可能であるが、これに限定されない。例えば、液中微生物検出装置1は、レーザ等の光源を備える。光源は、取り込み装置50から来た液体に向けてレーザ光等の光を照射する。光は、可視光であっても、紫外光であってもよい。光が可視光である場合、光の波長は、例えば400乃至550nmの範囲内であり、例えば405nmである。光が紫外光である場合、光の波長は、例えば310乃至380nmの範囲内であり、例えば340nmである。また、液中微生物検出装置1は、照射光を焦点に結ぶ光学系、及び焦点に液体を通過させる配管等を備える。
【0019】
液中微生物検出装置1は、蛍光検出器をさらに備える。蛍光検出器は、微生物が発した蛍光を検出し、蛍光強度を計測する。蛍光検出器が蛍光を検出した回数から、液体に含まれる微生物の数を計測することが可能である。また、図3に示すように、微生物が発する蛍光の強度は、微生物の種類によって異なる。そのため、図1に示す液中微生物検出装置1の蛍光検出器が検出した蛍光の強度から、液体に含まれる微生物の種類を特定することが可能である。なお、光を照射された液体でラマン散乱が生じる場合は、ラマン散乱光をカットするフィルターを蛍光検出器に設けてもよい。
【0020】
液中微生物検出装置1は、散乱光検出器をさらに備えていてもよい。散乱光検出器は、液体に含まれる粒子によって散乱した光を検出する。散乱光検出器が散乱光を検出した回数から、粒子の数を計測することが可能である。また、粒子による散乱光の強度は、粒子の粒径と相関する。したがって、散乱光検出器で散乱光の強度を検出することにより、液体に含まれる粒子の粒径を求めることが可能である。また、微生物の粒径は、微生物の種類によって異なる。そのため、散乱光検出器が検出した散乱光の強度から、液体に含まれる微生物の種類を特定することが可能である。
【0021】
なお、散乱光検出器が散乱光を検出し、かつ蛍光検出器が蛍光を検出しなかった場合、液体に含まれる粒子が非生物粒子であることが分かる。散乱光検出器が散乱光を検出し、かつ蛍光検出器が蛍光を検出した場合、液体に微生物が含まれていることが分かる。また、上述したように、可溶性の蛍光粒子は、図2に示すインピンジャー51の容器511内の液体516に溶け、希釈されるため、液中微生物検出装置1で検出可能な程度に蛍光を発しなくなる。そのため、図1に示すクリーンルーム70内を飛散していた可溶性の蛍光粒子を、液中微生物検出装置1が微生物として誤って検出することはない。
【0022】
液中微生物検出装置1は、検出した蛍光強度、及び散乱光強度に基づく粒径の少なくとも一方を用いて、液体に含まれる微生物の種類を特定する。蛍光強度及び散乱光強度の両方に基づいて微生物の種類を特定する方法は、これらに限定されないが、米国特許6885440号公報及び米国特許7106442号公報に開示されている。例えば図4に示すように、微生物の種類によって、粒径と、蛍光強度と、は相関がみられる。したがって、図4に示すようなグラフを予め取得することによって、蛍光強度及び粒径から微生物の種類を特定することが可能である。
【0023】
液中微生物検出装置1は、蛍光を検出せず、散乱光のみによって微生物を検出し、微生物の種類を特定してもよい。同心円状の散乱光検出器を用いて、角度毎の散乱光強度を検出し、サポートベクターマシン(SVM: Support Vector Machine)等の統計手法により、微生物種類を特定することが可能である(例えば、Murugesan Venkatapathiら著、「High speed classification of individual bacterial cells using a model−based light scatter system and multivariate statistics」、APPLIED OPTICS、米国、Optical Society of America、2008年2月10日、Vol.47、No.5、678ないし686頁参照。)。
【0024】
あるいは、液中微生物検出装置1は、取り込み装置50から来た液体に向けて複数の波長の励起光を照射して蛍光スペクトルを検出し、液体に含まれる微生物を特定してもよい。例えば、波長が266nm及び355nmの励起光を微生物に照射し、波長が350nm、450nm、及び550nmの蛍光スペクトルを検出することによって、微生物を特定することが可能である(例えば、Vasanthi Sivaprakasamら著、「Multiple UV wavelength excitation and fluorescence of bioarerosols」、OPTICS EXPRESS、米国、Optical Society of America、2004年9月20日、Vol.12、No.19、4457ないし4466頁参照。)。
【0025】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態においては、図1に示す取り込み装置50が、図2に示すインピンジャー51を備える例を示した。これに対し、図1に示す取り込み装置50は、気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液滴又は液膜中に捕集し、微生物及び可溶性の粒子を捕集した液滴又は液膜を液体中に取り込む図5に示すスクラバー52を備えていてもよい。
【0026】
スクラバー52は、クリーンルーム70内から吸引した気体が流れ、底に液体526が溜まるパイプ521と、パイプ521に設けられた液滴供給装置528と、を備える。液滴供給装置528は、パイプ521内に液滴を含むミストを噴霧する。この際、気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子は液滴で捕集され、微生物及び可溶性の粒子を捕集した液滴は、パイプ521の底に溜まっている液体526に滴下する。
【0027】
気体に含まれていた微生物527は、不溶性であるため、液体526中に溶けない。しかし、気体に含まれていた可溶性の蛍光粒子は、液体526中に溶ける。液体526の体積は、気体に含まれる可溶性の蛍光粒子の体積より充分大きいため、液体526に溶けた蛍光粒子は希釈され、検出可能な程度に蛍光を発しなくなる。
【0028】
液体526は、純水又は溶液である。パイプ521には、パイプ521内に液体526を供給するための供給パイプ524が設けられている。また、パイプ521には、図1に示す液中微生物検出装置1に図5に示すパイプ521内の液体526を通すための連結パイプ525が設けられている。ただし、パイプ521内の液体526を液中微生物検出装置1に供給する機構はこれに限定されない。
【0029】
なお、パイプ521には、液膜供給装置が設けられていてもよい。この場合、液膜供給装置は、パイプ521の内壁に液膜を供給し、気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子は液膜で捕集され、微生物及び可溶性の粒子を捕集した液膜は、パイプ521の底に溜まっている液体526に流れ落ちる。第2の実施の形態に係る微生物検出システムのその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0030】
(第3の実施の形態)
図1に示す取り込み装置50は、図6に示すように、クリーンルーム70内から吸引した気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を分離する粉体分離器53と、分離された微生物及び可溶性の粒子が落下する場所に配置された液体の容器54と、を備えていてもよい。
【0031】
粉体分離器53においては、漏斗状又は円筒のサイクロンの円周方向から、微生物及び可溶性の粒子を含む気体が、渦を描く様に流し込まれる。ここで、微生物及び可溶性の粒子は遠心分離され、重力により容器54に含まれる液体531に向かって落下する。また、微生物及び可溶性の粒子が除去された気体は、サイクロンの円の中心から上方向に排出される。
【0032】
気体に含まれていた微生物532は、不溶性であるため、液体531中に溶けない。しかし、気体に含まれていた可溶性の蛍光粒子は、液体531中に溶ける。液体531の体積は、気体に含まれる可溶性の蛍光粒子の体積より充分大きいため、液体531に溶けた蛍光粒子は希釈され、検出可能な程度に蛍光を発しなくなる。液体531は吸引され、図1に示す液中微生物検出装置1に供給される。第3の実施の形態に係る微生物検出システムのその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0033】
(第4の実施の形態)
図1に示す取り込み装置50は、図7に示すように、クリーンルーム70内から吸引した気体に含まれる微生物及び可溶性の粒子を液体中に捕集するインパクタ55を備えていてもよい。インパクタ55は、クリーンルーム70内から吸引した気体が流れるノズル551を備える。ノズル551の下方には、液体553を含む捕集容器552が配置されている。
【0034】
クリーンルーム70内から吸引された気体は、ノズル551のオリフィスから捕集容器552に向かって噴射される。この際、所定の大きさの慣性を有する微生物及び可溶性の粒子は、捕集容器552上で偏向される気流に追従できず、捕集容器552に含まれる液体553に衝突する。これにより、所定の大きさの慣性を有する微生物及び可溶性の粒子が液体553で捕集される。
【0035】
気体に含まれていた微生物554は、不溶性であるため、液体553中に溶けない。しかし、気体に含まれていた可溶性の蛍光粒子は、液体553中に溶ける。液体553の体積は、気体に含まれる可溶性の蛍光粒子の体積より充分大きいため、液体553に溶けた蛍光粒子は希釈され、検出可能な程度に蛍光を発しなくなる。液体553は吸引され、図1に示す液中微生物検出装置1に供給される。第4の実施の形態に係る微生物検出システムのその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0036】
(第5の実施の形態)
図1に示す取り込み装置50は、フィルターで捕集された微生物及び可溶性の粒子を液体中に取り込んでもよい。例えば、取り込み装置50は、図8に示すように、液体501を含む容器500を備える。また、図9に示すように、クリーンルーム70内から吸引した気体をパイプ503で吸引し、フィルター504で微生物及び可溶性の粒子を捕集する。さらに、図10に示すように、液体501を含む容器500内に微生物及び可溶性の粒子を捕集したフィルター504を搬送する。
【0037】
この際、フィルター504に捕集されていた微生物554は、不溶性であるため、液体501中に溶けない。しかし、フィルター504に捕集されていた可溶性の蛍光粒子は、液体501中に溶ける。液体501の体積は、気体に含まれる可溶性の蛍光粒子の体積より充分大きいため、液体501に溶けた蛍光粒子は希釈され、検出可能な程度に蛍光を発しなくなる。液体501は吸引され、図1に示す液中微生物検出装置1に供給される。第5の実施の形態に係る微生物検出システムのその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0038】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、液中微生物検出装置としては、実施の形態では、米国特許第7430046号公報あるいは米国特許第8218144号公報に開示された装置が使用可能であると説明したが、その他にも、特開平07−140148号公報で開示されているフローサイトメータ、特表2012−507283号公報に開示されているラマン分光を用いる液中微生物検出手段、特表2012−507711号公報で開示されている質量分析計、特開昭63−053447号公報に開示されているメンブレンフィルターで微生物を捕集し、レーザを照射する手段、及び特開2008−249628号公報に開示されている発光測定装置等が、液中微生物検出装置として使用可能である。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0039】
1 液中微生物検出装置
50 取り込み装置
51 インピンジャー
52 スクラバー
53 粉体分離器
54 容器
55 インパクタ
70 クリーンルーム
71 ダクト
72 噴き出し口
81 生産ライン
500 容器
501 液体
503 パイプ
504 フィルター
511 容器
512 吸引パイプ
513 排気パイプ
514 供給パイプ
515 連結パイプ
516、526、531、553 液体
517、527、532、554 微生物
521 パイプ
524 供給パイプ
525 連結パイプ
528 液滴供給装置
551 ノズル
552 捕集容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10